説明

電池用セパレータとこれを用いる電池の製造方法

【課題】電池を効率よく製造することができ、しかも、電池の製造後は、イオン透過性と電気絶縁性のいずれにもすぐれるのみならず、電極シートとの間に強い接着を有する電極シート/セパレータ接合体として機能して、高性能で、しかも、安全性にすぐれる電池を与える電池用セパレータとそのような電池用セパレータの製造方法を提供する。更に、そのような電池用セパレータを用いる電池の製造方法を提供する。
【解決手段】エポキシ基を有し、更に、エポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルを含有していると共に、架橋構造を有する反応性ポリマーからなる一対のフィルム1が離れて対向しており、これらの一対のフィルムの少なくとも一方の上に絶縁性微粒子2が反応性ポリマー3によって被覆されつつ、その間に空隙4を有するよう接着担持されており、上記一対のフィルムが上記絶縁性微粒子を介して貼り合わされている電池用セパレータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の製造に有用であると共に、これを用いて製造した電池において、使用時の安全性に寄与することができる電池用セパレータとその製造方法に関する。更に、本発明は、そのような電池用セパレータを用いる電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電池の製造方法として、正極シートと負極シートとの間にこれら電極シート間の短絡を防止するためのセパレータを挟んで積層し、又は正(負)極シート、セパレータ、負(正)極シート及びセパレータをこの順序に積層し、捲回して、電極シート/セパレータ積層体とし、この電極シート/セパレータ積層体を電池容器内に仕込んだ後、この電池容器内に電解液を注入して、封口する方法が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
しかし、このような電池の製造方法においては、電極シート/セパレータ積層体の保管時や搬送時に電極シートとセパレータが相互にずり移動を起こしやすく、その結果、電池製造の生産性が低く、また、不良品が発生しやすい等の問題があった。また、このようにして得られた電池によれば、その使用時に電極が膨張又は収縮して、電極シートとセパレータとの間の密着性が悪くなって、電池特性が低下したり、また、内部短絡を生じて、電池が発熱昇温し、場合によっては、破壊するおそれさえあった。
【0004】
他方、電池用セパレータのための多孔質フィルムは、従来、種々の製造方法によって製造されている。例えば、一つの方法として、ポリオレフィン樹脂からなるシートを製造し、これを高倍率延伸する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。しかし、このように高倍率延伸して得られる多孔質膜からなる電池用セパレータは、電池が内部短絡等によって異常昇温した場合のような高温環境下においては、著しく収縮し、場合によっては、電極間の隔壁として機能しなくなるという問題がある。
【0005】
そこで、電池の安全性を向上させるために、このような高温環境下での電池用セパレータの熱収縮率の低減が重要な課題とされている。この点に関して、高温環境下での電池用セパレータの熱収縮を抑制するために、例えば、超高分子量ポリエチレンと可塑剤を溶融混練し、ダイスからシート状に押し出した後、可塑剤を抽出、除去して、電池用セパレータに用いる多孔質膜を製造する方法も知られている(特許文献4参照)。しかし、この方法によれば、上記の方法と反対に、得られる多孔質膜は、延伸を経ていないので、強度において十分でない問題がある。また、副資材として用いた可塑剤が廃棄物として残る問題や、抽出溶媒の再生の問題もある。
【0006】
このように、電池用セパレータは、その要求特性から、通気性の樹脂多孔質フィルムからなり、従来、種々の副資材を用いて、延伸や抽出等の多くの複雑な工程を経て製造されており、製造費用の嵩むものであった。
【特許文献1】特開平09−161814号公報
【特許文献2】特開平11−329439号公報
【特許文献3】特開平09−012756号公報
【特許文献4】特開平05−310989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の電池の製造における上述したような問題を解決するためになされたものであって、電池の製造に際しては、電極シートとセパレータとを仮接着して、電極シート/セパレータ積層体として、電極シートとセパレータの相互のずり移動なく、電池を効率よく製造することができ、しかも、電池の製造後は、イオン透過性と電気絶縁性のいずれにもすぐれるのみならず、電極シートとの間に強い接着を有する電極シート/セパレータ接合体として機能して、高性能で、しかも、安全性にすぐれる電池を与える電池用セパレータとそのような電池用セパレータの製造方法を提供することを目的とする。更に、本発明は、そのような電池用セパレータを用いる電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、エポキシ基を有し、更に、エポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルを含有していると共に、架橋構造を有する反応性ポリマーからなる一対のフィルムが離れて対向しており、これらの一対のフィルムの少なくとも一方の上に絶縁性微粒子が反応性ポリマーによって被覆されつつ、その間に空隙を有するよう接着担持されており、上記一対のフィルムが上記絶縁性微粒子を介して貼り合わされていることを特徴とする電池用セパレータが提供される。
【0009】
また、本発明によれば、ヒドロキシ基とエポキシ基とを有する架橋性ポリマーの溶液に多官能イソシアネートとエポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルと絶縁性微粒子を混合し、得られた架橋性ポリマーの溶液を剥離性フィルム上に塗布し、乾燥させて、上記多官能イソシアネートを含み、上記エポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルと絶縁性微粒子を分散担持させた架橋性ポリマーからなるフィルムを上記剥離性フィルム上に形成し、次いで、このようにして得られた剥離性フィルム上の架橋性ポリマーからなるフィルムの一対を、その絶縁性微粒子の担持面を対面させつつ、重ね合わせて貼り合わせた後、加熱して、前記架橋性ポリマーを多官能イソシアネートとの反応によって架橋させ、反応性ポリマーとし、かくして、エポキシ基を有し、更に、エポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルを含有していると共に、架橋構造を有する反応性ポリマーからなる一対のフィルムが離れて対向しており、これらの一対のフィルムの上に絶縁性微粒子が反応性ポリマーによって被覆されつつ、その間に空隙を有するように接着担持されており、上記一対のフィルムが上記絶縁性微粒子を介して貼り合わされている電池用セパレータの製造方法が提供される。
【0010】
別の方法として、ヒドロキシ基とエポキシ基とを有する架橋性ポリマーの溶液に多官能イソシアネートとエポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルと絶縁性微粒子を混合し、得られた架橋性ポリマーの溶液を剥離性フィルム上に塗布し、乾燥させて、上記多官能イソシアネートを含み、上記エポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルと絶縁性微粒子を分散担持させた第1の架橋性ポリマーからなるフィルムを上記剥離性フィルム上に形成し、別に、ヒドロキシ基とエポキシ基とを有する架橋性ポリマーの溶液に多官能イソシアネートとエポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルとを混合し、得られた架橋性ポリマーの溶液を剥離性フィルム上に塗布し、乾燥させて、上記多官能イソシアネートとエポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルを含む第2の架橋性ポリマーからなるフィルムを上記剥離性フィルム上に形成し、次いで、このようにして得られた剥離性フィルム上の架橋性ポリマーからなるフィルムの一対を、上記第1の架橋性ポリマーからなるフィルムの絶縁性微粒子の担持面を上記第2の架橋性ポリマーからなるフィルムに対面させつつ、重ね合わせて貼り合わせた後、加熱して、上記第1及び第2の架橋性ポリマーを多官能イソシアネートとの反応によって架橋させ、それぞれを反応性ポリマーとし、かくして、エポキシ基を有し、更に、エポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルを含有していると共に、架橋構造を有する反応性ポリマーからなる一対のフィルムが離れて対向しており、これらの一対のフィルムの一方の上に絶縁性微粒子が反応性ポリマーによって被覆されつつ、その間に空隙を有するように接着担持されており、上記一対のフィルムが上記絶縁性微粒子を介して貼り合わされている電池用セパレータの製造方法が提供される。
【0011】
更に、本発明によれば、前述した電池用セパレータに電極シートを積層し、圧着して、電極シート/セパレータ積層体を形成し、この積層体を電池容器に仕込んだ後、この電池容器内に電解液を注入し、好ましくは、加熱して、エポキシ樹脂硬化剤を活性化して、反応性ポリマーをそのエポキシ基によって架橋、硬化させて、電極シートをセパレータに接着することを特徴とする電池の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電池用セパレータは、エポキシ基を有し、更に、エポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルを含有していると共に、架橋構造を有する反応性ポリマーからなる一対のフィルムが離れて対向しており、これらの一対のフィルムの少なくとも一方の上に絶縁性微粒子が反応性ポリマーによって被覆されつつ、その間に空隙を有するよう接着担持されており、上記一対のフィルムが上記絶縁性微粒子を介して貼り合わされてなるものであるので、正極と負極を相互に物理的に隔離することができ、従って、すぐれた絶縁性を有し、しかも、電池反応に寄与するイオンは、セパレータを形成する反応性ポリマーからなるフィルムに担持接着された絶縁性微粒子間の空隙を透過しやすく、従って、本発明の電池用セパレータは、すぐれたイオン透過性をも同時に有する。
【0013】
更に、本発明の電池用セパレータによれば、反応性ポリマーからなるフィルムに電極シートを必要に応じて加熱下に圧着することによって、容易にセパレータに電極シートを仮接着して、電極シート/セパレータ積層体を得ることができ、また、電池の組立てに際して、セパレータ内に電解液が速やかに浸透し、性能にすぐれる電池を得ることができるので、電池の製造においても有用である。
【0014】
また、本発明の電池用セパレータにおける反応性ポリマーは、予め、架橋されているので、電極シート/セパレータ積層体を電解液中に浸漬しても、電解液中への反応性ポリマーの溶出が防止され、又は低減されるので、電極シートの接着に有効に用いられる。しかも、反応性ポリマーは高い膨潤度を有するから、電解液中において、セパレータとこれに仮接着した電極シートの界面でこれらを内包するように膨潤しつつ、活性化させたエポキシ樹脂硬化剤によって反応性ポリマーが更に架橋して、電極シートをセパレータに一層強固に接着させて、電極シート/セパレータ接合体を与え、かくして、得られる電池は、高温環境下に置かれても、セパレータを形成する反応性ポリマーが収縮することなく、絶縁性を維持するので、安全性にすぐれるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明において、架橋性ポリマーとは、ヒドロキシ基と共にエポキシ基を有し、上記ヒドロキシ基に対して反応性を有する多官能架橋剤、例えば、多官能イソシアネートと反応することによって架橋し得るポリマーをいう。また、反応性ポリマーとは、エポキシ基を有し、更に、エポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルを含有していると共に、架橋構造を有するポリマーをいい、好ましくは、本発明に従って、上記架橋性ポリマーをそのヒドロキシ基によって上記多官能イソシアネートと反応させて、架橋性ポリマーを架橋させることによって得ることができる。
【0016】
本発明による電池用セパレータは、好ましくは、エポキシ樹脂硬化剤を内包させたマイクロカプセルを含有する架橋性ポリマーをこのように架橋させて得られる反応性ポリマーからなる一対のフィルムが離れて対向しており、これらの一対のフィルムの少なくとも一方の上に絶縁性微粒子が反応性ポリマーによって被覆されつつ、その間に空隙を有するように接着担持されており、上記一対のフィルムが上記絶縁性微粒子を介して相互に貼り合わされてなるものである。
【0017】
また、本発明において、電極シート/セパレータ積層体とは、上述したようなセパレータに電極シートを圧着し、仮接着し、貼り合わせたものをいう。電極シート/セパレータ接合体とは、マイクロカプセルに内包させたエポキシ樹脂硬化剤を活性化させて、上記電極シート/セパレータ積層体中の反応性ポリマーの有するエポキシ基を架橋させることによって、電極シートをセパレータに接着したものをいう。
【0018】
即ち、本発明によれば、前述したように、例えば、架橋性ポリマーに多官能イソシアネートを反応させることによって、反応性ポリマーを得ることができる。従って、反応性ポリマーは、既に架橋構造を有すると共に、エポキシ基を有するので、電解液中において、膨潤し、他方、エポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルが電解液中において破壊され、かくして、反応性ポリマーは活性化されたエポキシ樹脂硬化剤によって架橋し、このような架橋反応によって、電極シートをセパレータの反応性ポリマーからなるフィルムに接着して、電極シート/セパレータ接合体を形成する。
【0019】
本発明において、上記架橋性ポリマーは、ヒドロキシ基を有するラジカル重合性モノマーとエポキシ基を有するラジカル重合性モノマーとこれらの官能基をもたないその他のラジカル重合性モノマーとを常法に従ってラジカル共重合させることによって得ることができる。
【0020】
このようなヒドロキシ基を有するラジカル重合性モノマーとエポキシ基を有するラジカル重合性モノマーと上記官能基をもたないその他のラジカル重合性モノマーをラジカル共重合させるには、例えば、これらのモノマーを酢酸エチル、トルエン等の適宜の有機溶媒に溶解させ、重合開始剤として過酸化ベンゾイルやアゾビスイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤を用いて溶液重合を行えばよい。また、上記モノマーを水中でエマルション重合させてもよい。本発明によれば、このようにして得られる架橋性ポリマーは、その重量平均分子量が、通常、20万から300万の範囲にあることが好ましい。
【0021】
上記ヒドロキシ基を有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。また、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0022】
他方、上記官能基をもたないその他の共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールアルキルエーテル等の(メタ)アクリルモノマーのほか、種々のビニルモノマー、例えば、スチレン、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、ビニレンカーボネート等を挙げることができる。
【0023】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等のように、アルキル基における炭素原子数が1〜12のアルキルエステルが好ましく用いられる。
【0024】
上記のほか、例えば、(メタ)アクリル酸のイソボルニルエステル、ジシクロペンテニルエステル、テトラヒドロフルフリルエステル、ベンジルエステル、シクロヘキシルエステル等のような環状基を有するエステル、マレイミド基を有する(メタ)アクリル酸エステル、イミド基のような高極性基を有するイミド(メタ)アクリレート等、そのホモポリマーのガラス転移温度が約40℃以上である(メタ)アクリル酸エステル類や(メタ)アクリルアミド類は、得られる架橋性ポリマーのガラス転移温度を高める必要があるときに好適に用いられる。
【0025】
また、上記(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイルピロリドン、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン等を挙げることができる。
【0026】
特に、本発明においては、架橋性ポリマーの好ましい一例として、上述した官能基を有するアクリル系モノマー成分と共に、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミドのようなアクリル系モノマー成分からなる架橋性ポリマーを挙げることができる。例えば、(メタ)アクリロニトリル成分を80重量%まで、好ましくは、5〜30重量%の範囲にて有する架橋性ポリマーは、耐熱性と耐溶剤性にすぐれるので、本発明において用いる好ましい架橋性ポリマーの一例である。
【0027】
本発明において、(メタ)アクリルはアクリル又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイルはアクリロイル又はメタクリロイルを意味し、(メタ)アクリロニトリルはアクリロニトリル又はメタクリロニトリルを意味するものとする。
【0028】
本発明において、架橋性ポリマーの製造において、上記エポキシ基を有するラジカル重合性モノマーは、全モノマー中の0.1〜30重量%の割合を占めることが好ましい。全モノマー中、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマーの割合が0.1重量%よりも少ないときは、得られる架橋性ポリマーにエポキシ樹脂硬化剤を内包させたマイクロカプセルを分散させて電池用セパレータを形成し、これに電極シートを積層して、電極シート/セパレータ積層体を形成し、この積層体中の反応性ポリマーに電解液中でエポキシ樹脂硬化剤を作用させても、反応性ポリマーが十分に架橋、硬化しないので、電極シートをセパレータに強く接着させることができない。他方、全モノマー中、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマーの割合が30重量%よりも多いときは、架橋性ポリマーの製造時にゲルが生成しやすいほか、上記電極シート/セパレータ中の反応性ポリマーを電解液中でエポキシ硬化剤にて架橋、硬化させる際に、架橋が過度となるためであるとみられるが、得られる電池の特性が低下する。
【0029】
また、ヒドロキシ基を有するラジカル重合性モノマーは、全モノマー中、0.1〜10重量%の範囲であることが好ましい。モノマー全量中、ヒドロキシ基を有するラジカル重合性モノマーの割合が0.1重量%よりも少ないときは、得られる架橋性ポリマーに多官能イソシアネートを反応させても、得られる反応性ポリマーにおける架橋度が小さすぎて、得られるセパレータ電極シートを積層し、これを電解液に接触させたとき、反応性ポリマーが電解液中に溶出しやすく、電極シート/セパレータが分離するおそれがある。他方、10重量%を越えるときは、得られる架橋性ポリマーに多官能イソシアネートを反応させたとき、得られる反応性ポリマーにおける架橋度が過多であって、得られるセパレータに電極シートを圧着することが困難となるおそれがある。
【0030】
本発明によれば、架橋性ポリマーは、通常、ガラス転移温度が−30℃から100℃の範囲にあることが好ましく、特に、0℃から80℃の範囲にあることが好ましい。架橋性ポリマーのガラス転移温度が0℃以下であるときは、このような架橋性ポリマーから得られる反応性ポリマーのフィルムを含むセパレータに常温にて電極シートを圧着すれば、電極シートをセパレータに仮接着して、直ちに電極シート/セパレータ積層体を得ることができる。
【0031】
架橋性ポリマーのガラス転移温度が0〜100℃の範囲にあるときは、このような架橋性ポリマーから得られる反応性ポリマーのフィルムを含むセパレータに電極シートを仮接着するには、通常、セパレータを加熱し、これに電極シートを圧着することが必要である。しかし、架橋性ポリマーのガラス転移温度が0〜100℃の範囲にあるときは、特に、常温以上、最も好ましくは、40℃以上であるときは、セパレータは常温においてブロッキング性をもたないので、セパレータを積層したり、ロールに捲回したりする際にその間に剥離シートを挟む必要がない利点や、また、電極シートをセパレータに貼り合わせる際に関連する設備、例えば、ガイドロール等に付着することがなく、作業性や取扱い性にすぐれる利点がある。
【0032】
本発明によれば、このような架橋性ポリマーを架橋させて、反応性ポリマーとするには、多官能イソシアネートが架橋剤として用いられる。このような多官能イソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等の芳香族、芳香脂肪族、脂環族、脂肪族のジイソシアネートのほか、これらのジイソシアネートをトリメチロールプロパンのようなポリオールを付加させた所謂イソシアネートアダクト体も好ましく用いられる。このような多官能イソシアネートは、通常、架橋性ポリマー100重量部当たり、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。
【0033】
本発明による電池用セパレータは、前述したように、エポキシ基を有すると共に、エポキシ樹脂硬化剤を内包させたマイクロカプセルを含有する反応性ポリマーからなる一対のフィルムが離れて対向しており、これらの一対のフィルムの少なくとも一方の上に絶縁性微粒子が反応性ポリマーによって被覆されつつ、その間に空隙を有するように接着担持されていると共に、上記一対のフィルムが上記絶縁性微粒子を介して相互に貼り合わされてなるものである。但し、本発明において、すべての絶縁性微粒子がその間に空隙を有する必要はなく、一部の絶縁性微粒子は相互に接触し、又は付着していてもよい。
【0034】
電子顕微鏡写真に基づいて、図1に模式的に示せば、本発明による電池用セパレータは、反応性ポリマーからなる一対のフィルム1、1が離れて対向しており、これらの一対のフィルム上に、絶縁性微粒子2が反応性ポリマー3に被覆されつつ、接着担持されており、絶縁性微粒子の間に空隙4を有していると共に、上記一対のフィルムは絶縁性微粒子を介して相互に接着され、貼り合わされている。ここに、反応性ポリマーが接着剤の役割を果たしている。
【0035】
このような電池用セパレータを得るには、本発明に従って、所定の平均粒子径を有する絶縁性微粒子を用いること、このような絶縁性微粒子を架橋性ポリマーに対して所定の割合で用いること、多官能イソシアネートと絶縁性微粒子とエポキシ樹脂硬化剤を内包させたマイクロカプセルを含む架橋性ポリマーを剥離性フィルム上に塗布し、乾燥させて、その上に絶縁性微粒子がその間に空隙を有しつつ、担持されるように、架橋性ポリマーからなるフィルムの厚みを0.3〜5.0μmの範囲とすることが好ましい。後述するように、このような多官能イソシアネートとエポキシ樹脂硬化剤を内包させたマイクロカプセルと絶縁性微粒子を含む架橋性ポリマーからなるフィルムに多官能イソシアネートとエポキシ樹脂硬化剤を内包させたマイクロカプセルを含む架橋性ポリマーからなるフィルムを重ね合わせ、貼り合わせて、本発明による電池用セパレータを得る場合には、後者のフィルムの厚みも0.3〜5μmの範囲とすることが好ましい。
【0036】
本発明によれば、絶縁性微粒子は、得られる電池用セパレータのディメンジョン、特に、有効な厚みを有し、これによって、正負の電極を物理的に隔離して、すぐれた絶縁性を有すると共に、えられる電池が特性にすぐれ、更に、取扱いに容易であるように、平均粒子径が1〜100μmの範囲にある球状粒子であることが好ましい。絶縁性微粒子の平均粒子径が1μmよりも小さいときは、絶縁性微粒子を反応性ポリマーからなるフィルム上に接着担持させても、得られるセパレータが正負の電極シートを物理的に隔離し難く、絶縁効果に乏しいので、得られる電池が性能に劣るおそれがある。他方、平均粒子径が100μmを超えるときは、得られるセパレータの厚みが過大となって、同様に、得られる電池が性能に劣るおそれがある。
【0037】
更に、本発明によれば、このような絶縁性微粒子は、その比重にもよるが、架橋性ポリマー100重量部に対して、通常、20〜2000重量部の範囲で用いられる。絶縁性微粒子の使用量が架橋性ポリマー100重量部に対して、20重量部よりも少ないときは、絶縁性微粒子間の間隔が大きすぎて、得られるセパレータが正負の電極シートを物理的に隔離する効果に乏しくなり、場合によっては、電池において、正負の電極が相互に接触して、短絡等の不良を生じるおそれがある。しかし、絶縁性微粒子の使用量が架橋性ポリマー100重量部に対して、2000重量部よりも多いときは、得られるセパレータにおいて、反応性ポリマーからなるフィルムへの絶縁性微粒子の接着性が低下し、延いては、対向する一対の反応性ポリマーからなるフィルム相互の接着性も低下ので好ましくない。特に、本発明によれば、絶縁性微粒子は、架橋性ポリマー100重量部に対して、好ましくは、30〜1000重量部の範囲で、最も好ましくは、40〜500重量部の範囲で用いられる。
【0038】
以上に加えて、本発明によれば、前述した絶縁性微粒子を担持させた架橋性ポリマーからなるフィルムを得るには、上記絶縁性微粒子を含む架橋性ポリマーの溶液を剥離性フィルム上に塗布し、乾燥させて、厚み0.3〜5.0μm、好ましくは、0.5〜3.0μmのフィルムとすることが好ましい。絶縁性微粒子を含まない架橋性ポリマーの溶液をフィルムとする際も、そのフィルムは、上記範囲の厚みを有することが好ましい。
【0039】
特に、本発明によれば、用いる絶縁性微粒子の平均粒子径よりも、架橋性ポリマーからなるフィルムの厚みを小さくすることが好ましい。なかでも、本発明によれば、例えば、平均粒子径5〜75μm、より好ましくは、10〜50μmの絶縁性微粒子を架橋性ポリマー100重量部に対して40〜500重量部の範囲で用いると共に、架橋性ポリマーからなるフィルムの厚みを0.5〜3.0μmの範囲とすることが好ましい。
【0040】
架橋性ポリマーからなるフィルムの厚みが0.3μmよりも小さいときは、そのフィルムが絶縁性微粒子との接着性に劣るうえに、得られるセパレータが電極シートとの接着性にも劣ることとなる。他方、架橋性ポリマーからなるフィルムの厚みが5.0μmよりも大きいときは、このようなフィルムを用いて最終的に得られる電池がその特性において劣ることとなる。
【0041】
本発明において、絶縁性微粒子を担持させた架橋性ポリマーからなるフィルムの厚みや、また、絶縁性微粒子を担持させた反応性ポリマーからなるフィルムの厚みは、それぞれ走査型電子顕微鏡(SEM)写真による観察から正確に求めることができる。前述したように、架橋性ポリマーを架橋させることによって、反応性ポリマーとするので、架橋性ポリマーからなるフィルムの厚みと反応性ポリマーからなるフィルムの厚みは実質的に同じである。
【0042】
本発明において、絶縁性微粒子を担持させた反応性ポリマーからなるセパレータにおける上記反応性ポリマーからなるフィルムの厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)写真による観察から正確に求めることができるが、他方、架橋性ポリマーからなるフィルムの厚みは、その調製に用いる架橋性ポリマーの溶液中の架橋性ポリマーの濃度と剥離性フィルム上への塗布量とから概ね、算出することができる。
【0043】
本発明においては、上記絶縁性微粒子は、電池の製造に用いる電解液に溶解しないものであれば、有機物でも無機物でもよい。有機物である絶縁性微粒子としては、例えば、フッ素樹脂、ポリスチレン、三次元架橋したアクリル樹脂等のポリマー粒子を挙げることができ、無機物である絶縁性微粒子とては、例えば、アルミナ、シリカ等のセラミック微粒子、シリカバルーン等を挙げることができるが、しかし、これらに限定されるものではない。
【0044】
本発明による電池用セパレータは、上述した条件の下に、例えば、次のようにして得ることができる。架橋性ポリマーの溶液に前記多官能イソシアネートと絶縁性微粒子とエポキシ樹脂硬化剤を内包させたマイクロカプセルを加え、混合、攪拌して、上記多官能イソシアネートとエポキシ樹脂硬化剤を内包させたマイクロカプセルと共に絶縁性微粒子を含む架橋性ポリマーの溶液を得、次いで、この溶液を剥離性フィルム、例えば、剥離処理したポリエステルフィルム上に塗布し、乾燥させて、上記多官能イソシアネートとエポキシ樹脂硬化剤を内包させたマイクロカプセルを含み、上記絶縁性微粒子がその上に分散され、担持された架橋性ポリマーからなるフィルムを上記剥離性フィルム上に形成する。次いで、このようにして得られた剥離性フィルム上の架橋性ポリマーからなるフィルムの一対を、その絶縁性微粒子の担持面を対面させつつ、必要に応じて、加熱下に重ね合わせて貼り合わせた後、更に、加熱して、架橋性ポリマーを架橋させ、反応性ポリマーとすることによって、エポキシ基を有し、更に、エポキシ樹脂硬化剤を内包させたマイクロカプセルを含有する反応性ポリマーからなる一対のフィルムが離れて対向しており、これらの一対のフィルムの上に絶縁性微粒子が反応性ポリマーによって被覆されつつ、その間に空隙を有するように、接着担持されていると共に、上記一対のフィルムが絶縁性微粒子を介して相互に貼り合わされてなる電池用セパレータを得ることができる。
【0045】
このように、本発明によれば、絶縁性微粒子は、架橋性ポリマーの溶液に混合、分散される間に架橋性ポリマーにて被覆され、従って、このような架橋性ポリマーの溶液を剥離性フィルム上に塗布し、乾燥させることによって、前述したように、絶縁性微粒子は、架橋性ポリマーによって被覆されたまま、架橋性ポリマーからなるフィルム上に分散され、担持され、従って、このような架橋性ポリマーを架橋させることによって、絶縁性微粒子は、反応性ポリマーによって被覆されつつ、反応性ポリマーからなるフィルム上に接着担持される。
【0046】
本発明によれば、別の態様として、前記架橋性ポリマーの溶液に前記多官能イソシアネートとエポキシ樹脂硬化剤を内包させたマイクロカプセルを加え、混合、攪拌して、上記多官能イソシアネートとエポキシ樹脂硬化剤を内包させたマイクロカプセルを含む架橋性ポリマーの溶液を得、次いで、この溶液を剥離性フィルム上に塗布し、乾燥させて、上記多官能イソシアネートとエポキシ樹脂硬化剤を内包させたマイクロカプセルを含む第2の架橋性ポリマーからなるフィルムを上記剥離性フィルム上に形成し、次いで、このようにして得られた剥離性フィルム上の第2の架橋性ポリマーからなるフィルムと前述した剥離性フィルム上の多官能イソシアネートと上記絶縁性微粒子を含む第1の架橋性ポリマーからなるフィルムとを、上記第1の架橋性ポリマーからなるフィルムの絶縁性微粒子の担持面を上記第2の架橋性ポリマーからなるフィルムに対面させつつ、重ね合わせて貼り合わせた後、更に、加熱して、上記第1及び第2の架橋性ポリマーを架橋させ、それぞれを反応性ポリマーとすることによって、エポキシ樹脂硬化剤を内包させたマイクロカプセルを含有する反応性ポリマーからなる一対のフィルムが離れて対向しており、これらの一対のフィルムの一方のみの上に絶縁性微粒子が反応性ポリマーによって被覆されつつ、相互の間に空隙を有しながら、接着担持されていると共に、上記一対のフィルムが絶縁性微粒子を介して相互に接着され、貼り合わされてなる電池用セパレータを得ることができる。
【0047】
架橋性ポリマーに上述したような多官能イソシアネートを反応させ、架橋させて、反応性ポリマーからなるフィルムとするには、前述したように、架橋性ポリマーの溶液に前記多官能イソシアネートを加え、フィルムとした後、これを加熱すればよい。多官能イソシアネートの量は、架橋性ポリマーにおける官能基の量、用いる多官能イソシアネートの種類、加熱温度等によって異なるが、実験的に容易に定めることができる。通常、架橋性ポリマーを架橋させて、反応性ポリマーとするには、架橋性ポリマー100重量部に対して、多官能イソシアネートを0.1〜10重量部の範囲で配合し、例えば、50℃の温度で2〜7日間、加熱して、反応させればよい。
【0048】
また、本発明において、エポキシ樹脂硬化剤マイクロカプセルは、架橋性ポリマー溶液を形成する溶媒に安定であり、また、架橋性ポリマーからなるフィルムや反応性ポリマーからなるフィルムの形成時に安定であって、好ましくは、50℃以上の温度でエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤、即ち、50℃以上の温度で活性化する硬化剤を内包しており、このような硬化剤を電解液中で溶出させるものである。本発明において、このようなエポキシ樹脂硬化剤マイクロカプセルは、粒子径が100nm以下であることが好ましい。
【0049】
このようなエポキシ樹脂硬化剤マイクロカプセルとして、例えば、旭化成(株)製のノバキュアHX−3722やHX−3748が好ましく用いられる。本発明において、マイクロカプセル中のエポキシ樹脂硬化剤が電解液中で溶出する機構は必ずしも明らかではないが、電解液によってマイクロカプセル壁が溶解し、亀裂を生じて、マイクロカプセル内の硬化剤が電解液中に溶出するか、又はマイクロカプセル内に電解液が浸透し、マイクロカプセル内に浸透した電解液によって硬化剤が膨潤し、マイクロカプセル壁を破壊して、硬化剤が電解液中に溶出するものとみられる。上記マイクロカプセルに内包する硬化剤としては、例えば、酸無水物が用いられる。
【0050】
更に、本発明による電池用セパレータにおいては、上記反応性ポリマーは、20〜100%の範囲のゲル分率を有し、好ましくは、25〜90%の範囲のゲル分率を有する。ここに、ゲル分率とは、架橋性ポリマーA重量部と多官能イソシアネートB重量部とを含む溶液を剥離性支持体上に流延し、溶媒を除去した後、50℃の温度で3日間加熱し、架橋性ポリマーを架橋させて、反応性ポリマーからなるフィルムとし、このフィルムを電池において用いる電解液のための非水溶媒に温度23℃で7日間浸漬し、次いで、上記非水溶媒を酢酸エチルやテトラヒドロフランのような易揮発性溶媒で置換して乾燥させた後、残存する反応性ポリマーをC重量部とすれば、(C/(A+B))×100(%)として定義される値である。
【0051】
本発明において、20〜100%の範囲のゲル分率を有する反応性ポリマーのフィルムを得るには、限定されるものではないが、前述したように、通常、架橋性ポリマー100重量部に対して、多官能イソシアネートを0.1〜10重量部の範囲で配合し、加熱して、得られる反応性ポリマーが特性的に安定化するまで、架橋反応を行わせることによって得ることができる。架橋性ポリマーの架橋のための加熱温度やそのための反応時間は、用いる架橋性ポリマーや多官能イソシアネートやその種類等にもよるが、実験によってこれら反応条件を定めることができる。例えば、50℃の温度で2〜7日間、加熱、反応させれば、通常、架橋性ポリマーの多官能イソシアネートによる架橋反応を完結させて、得られる反応性ポリマーが特性的に安定化する。
【0052】
更に、本発明によれば、反応性ポリマーは、膨潤度が5倍以上、特に、10倍以上であることが好ましい。ここに、膨潤度とは、架橋性ポリマーA重量部と多官能イソシアネートB重量部とを含む溶液を剥離性支持体上に流延し、溶媒を除去した後、50℃の温度で7日間加熱し、架橋性ポリマーを架橋させて、反応性ポリマーのフィルムとし、このフィルムを電池において用いる電解液のための非水溶媒に温度23℃で7日間浸漬したときの膨潤状態での重量をDとし、次いで、このフィルム中の上記非水溶媒を酢酸エチルやテトラヒドロフランのような易揮発性の溶媒で置換し、この溶媒を乾燥、除去した後、残存する反応性ポリマーをC重量部とすれば、D/Cとして定義される値である。この膨潤度は、架橋性ポリマーのモノマー組成や分子量分布、また、架橋性ポリマーの有する官能基量や用いる多官能イソシアネート量等によって適宜に調節することができる。本発明によれば、反応性ポリマーの膨潤度が5倍よりも小さいときは、得られる電池が特性に劣る場合がある。
【0053】
かくして、本発明による電池用セパレータにおいては、反応性ポリマーは20〜100%の範囲のゲル分率と5倍以上の膨潤度を有し、この反応性ポリマーからなるフィルムは0.3〜5.0μmの範囲の厚みを有し、絶縁性微粒子が1〜100μmの範囲の平均粒子径を有し、この絶縁性微粒子が上記反応性ポリマー100重量部に対して20〜1000重量部の範囲で含まれている。
【0054】
このように、本発明による電池用セパレータは、反応性ポリマーからなる一対のフィルムが離れて対向しており、これらの一対のフィルムの少なくとも一方の内側の表面上に絶縁性微粒子が反応性ポリマーによって被覆されつつ、その間に空隙を有するように、接着担持されていると共に、上記一対のフィルムが上記絶縁性微粒子を介して相互に貼り合わされてなるものであるから、正負の電極を相互に物理的に隔離することができ、従って電極シート間の絶縁性にすぐれており、しかも、対向するフィルム内の空間において、フィルム上の絶縁性微粒子の間に空隙があって、イオン透過性にすぐれる。更に、電池の組立てに際しては、電解液がセパレータ内部の上記空隙に速やかに浸透するので、電池の生産性にすぐれている。また、電池においては、電解液がセパレータ内部の上記空隙を電解液で満たしているので、得られる電池は、性能にすぐれている。
【0055】
しかも、本発明による電池用セパレータは、多官能イソシアネートの不存在下においては、また、電解液と接触して、マイクロカプセル中のエポキシ樹脂硬化剤が活性化されるまでは、それ以上は、反応、架橋しないので、安定であって、長期間にわたって保存しても、変質することがない。
【0056】
本発明によれば、このようなセパレータにおける反応性ポリマーからなるフィルムに、必要に応じて加熱下に、電極シートを圧着すれば、電極シートをセパレータに容易に仮接着して、貼り合わせることができ、かくして、電極シート/セパレータ積層体を得ることができる。
【0057】
本発明によれば、セパレータの表裏両面に電極シート、即ち、負極シートと正極シートをそれぞれ圧着し、仮接着し、貼り合わせて、電極シート/セパレータ積層体としてもよく、また、セパレータの一方の表面にのみ、電極シート、即ち、負極シート又は正極シートのいずれかを圧着し、仮接着して、電極シート/セパレータ積層体としてもよい。勿論、正(負)極シート/セパレータ/負(正)極シート/セパレータの構成を有する積層体とすることもできる。
【0058】
本発明において、電極シート、即ち、負極シートと正極シートは、電池によって相違するが、一般に、導電性基材に活物質と、必要に応じて、導電剤とを樹脂バインダーを用いて、担持させてなるシート状のものが用いられる。
【0059】
本発明によれば、このような電極シート/セパレータ積層体を用いることによって、電極シートとセパレータの相互のずり移動がなく、しかも、電池を効率よく製造することができ、電池の製造後は、上記セパレータは、電極シートと接合した電極シート/セパレータ接合体として、電池の安全性に寄与する。
【0060】
即ち、上記電極シート/セパレータ積層体を電池容器内に仕込んだ後、この電池容器内に電解液を注入し、加熱することによって、電極シート/セパレータ積層体の仮接着を維持したまま、反応性ポリマーを膨潤させると共に、反応性ポリマー中に分散させたマイクロカプセルからエポキシ樹脂硬化剤を溶出させ、活性化させて、反応性ポリマーをそのエポキシ基によって架橋、硬化させて、電極シートとセパレータとの間に一層強い接着を形成させ、かくして、電極シート/セパレータ接合体を有する電池を得ることができる。
【0061】
本発明によれば、反応性ポリマーは、前述したように、20〜100%の範囲のゲル分率を有するように、予め、架橋しているので、電極シート/セパレータ積層体を電解液中に浸漬しても、電解液中への反応性ポリマーの溶出が防止され、又は低減されるので、電極シートの接着に有効に用いられる。しかも、反応性ポリマーは5倍以上の膨潤度を有することから、セパレータとこれに仮接着した電極シートの界面でこれらを内包するように膨潤しつつ、反応性ポリマーがそれが有するエポキシ基とエポキシ樹脂硬化剤との反応によって架橋するので、電極シートがセパレータに一層強固に接着されて、電極シート/セパレータ接合体を与える。本発明によれば、反応性ポリマーは、このように、架橋した後も、膨潤度は架橋前とほぼ等しい。得られる電池の特性は、膨潤度が大きいほどすぐれている。
【0062】
本発明によれば、セパレータをなす反応性ポリマーのフィルムの表面に電極シートを沿わせ、セパレータの変形等が生じないような温度に加熱しつつ、加圧し、好ましくは、電極シートを反応性ポリマーからなるセパレータ中に一部、圧入して、いわば、電極シートをセパレータに仮接着して、電極シート/セパレータ積層体とし、その後、この積層体を電池容器に仕込んだ後、電解液をこの電池容器中に注入し、加熱して、マイクロカプセルに内包させたエポキシ樹脂硬化剤を活性化させ、上記セパレータを形成する反応性ポリマーの有するエポキシ基を反応させ、反応性ポリマーを更に架橋させて、電極シート/セパレータ接合体を得る。即ち、電極シートをセパレータにいわば本接着させるものである。
【0063】
前述した電極シート/セパレータ積層体と同様に、本発明において、電極シート/セパレータ接合体は、負極シート/セパレータ/正極シート接合体のみならず、負極シート又は正極シートのいずれか一方の電極シート/セパレータ接合体や、また、正(負)極シート/セパレータ/負(正)極シート/セパレータなる構成をも含むものとする。
【0064】
電解液は、電解質塩を溶剤に溶解してなる溶液である。電解質塩としては、例えば、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属、第三級又は第四級アンモニウム塩等をカチオン成分とし、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、六フッ化リン酸、過塩素酸等の無機酸、有機カルボン酸、有機スルホン酸、フッ素置換有機スルホン酸等の有機酸をアニオン成分とする塩を用いることができる。しかし、これらのなかでは、特に、アルカリ金属イオンをカチオン成分とする電解質塩が好ましく用いられる。
【0065】
電解液のための溶剤としては、上記電解質塩を溶解するものであれば、どのようなものも用いることができるが、非水系の溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状エステル類が用いられる。これらの溶剤は、単独で、又は2種以上の混合物として用いられる。
【実施例】
【0066】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0067】
(架橋性ポリマーのガラス転移温度の測定)
架橋性ポリマーの溶液を剥離紙上にキャスティングし、乾燥させた後、厚さ0.2〜0.5mm、幅5mmのシートを得、このシートをチャック間距離10mmとし、セイコー電子工業(株)製DSM120を用いて、温度範囲は−50℃から200℃、昇温速度5℃/分で曲げモードにて10Hzで貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E”)を測定し、tanδ(E"/E')のピーク温度をガラス転移温度とした。
【0068】
(電極の調製)
平均粒径15μmのコバルト酸リチウム(LiCoO2) と黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデン樹脂を重量比85:10:5で混合し、これをN−メチル−2−ピロリドンに加えて、固形分濃度15重量%のスラリーを調製した。このスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔の表面に厚み200μmに塗布した後、80℃で1時間乾燥させた。その後、このアルミニウム箔の裏面にも、同様に、上記スラリーを厚み200μmに塗布し、120℃で2時間乾燥させた後、ロールプレスを通して、厚み200μmの正極シートを調製した。
【0069】
黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデン樹脂を重量比95:5で混合し、これをN−メチル−2−ピロリドンに加えて、固形分濃度15重量%のスラリーを調製した。このスラリーを厚さ20μmの銅箔の表面に厚み200μmに塗布した後、80℃で1時間乾燥させた。その後、この銅箔の裏面にも、同様に、上記スラリーを厚み200μmに塗布し、120℃で2時間乾燥させた後、ロールプレスを通して、厚み200μmの負極シートを調製した。
【0070】
(反応性ポリマーのゲル分率)
各実施例又は各比較例における操作に従って、架橋性ポリマーA重量部と多官能イソシアネートB重量部を含む溶液を剥離処理したポリエステルフィルム上に流延し、溶媒を除去した後、50℃の温度で7日間加熱し、架橋性ポリマーを架橋させて、反応性ポリマーからなるフィルムとし、このフィルムを電池において用いる電解液のための非水溶媒に温度23℃で7日間浸漬し、次いで、上記非水溶媒を酢酸エチルで置換して乾燥させた後、残存する反応性ポリマーをC重量部とするとき、(C/(A+B))×100(%)をゲル分率とした。
【0071】
(反応性ポリマーの膨潤度)
各実施例又は各比較例における操作に従って、架橋性ポリマーA重量部と多官能イソシアネートB重量部を含む溶液を剥離処理したポリエステルフィルム上に流延し、溶媒を除去した後、50℃の温度で7日間加熱し、架橋性ポリマーを架橋させて、反応性ポリマーのフィルムとし、このフィルムを電池において用いる電解液のための非水溶媒に温度23℃で7日間浸漬したときの膨潤状態での重量をDとし、次いで、このフィルム中の上記非水溶媒を酢酸エチルで置換し、この溶媒を乾燥、除去した後、残存する反応性ポリマーをC重量部とするとき、D/Cを膨潤度とした。
【0072】
実施例1
(架橋性ポリマーの調製)
N,N−ジメチルアクリルアミド 35 重量部
ブチルアクリレート 50 重量部
アクリロニトリル 10 重量部
グリシジルメタクリレート 5 重量部
4−ヒドロキシブチルアクリレート 0.5重量部
アゾビスイソブチロニトリル 0.2重量部
酢酸エチル 150 重量部
【0073】
上記モノマーと重合開始剤と溶媒とを攪拌機と窒素導入管とコンデンサを備えた四つ口フラスコに仕込み、攪拌下にフラスコ内を窒素置換した。次いで、温水浴中、攪拌しながら、60〜65℃で8時間重合を行い、更に、75℃に昇温して、この温度で3時間保持した後、酢酸エチルを加えて、濃度20重量%の架橋性ポリマー溶液を得た。この架橋性ポリマーの重量平均分子量は6.0×105 であり、ガラス転移温度は8℃であった。
【0074】
上記架橋性ポリマー溶液にその固形分100重量部に対して、トリメチロールプロパン1モル部にヘキサメチレンジイソシアネート3モル部を付加させてなる3官能イソシアネート0.2重量部とエポキシ樹脂硬化剤マイクロカプセル(旭化成(株)製ノバキュアHX3722)5.0重量部と平均粒子径7〜11μmの球状のアルミナ粒子100重量部を加え、攪拌、混合して、多官能イソシアネートとエポキシ樹脂硬化剤マイクロカプセルとアルミナ粒子を含む架橋性ポリマー溶液を得た。
【0075】
この架橋性ポリマー溶液を剥離処理した厚さ40μmのポリエステルフィルム上にアプリケーターを用いて塗布した後、70℃に加熱し、乾燥させて、厚み1.5μmの架橋性ポリマーからなるフィルム上にアルミナ粒子が架橋性ポリマーに被覆されつつ、分散、担持されてなる坪量(1m2 当たりの重量、以下、同じ。)4g/m2 のアルミナ粒子を担持させた架橋性ポリマーからなるフィルムをポリエステルフィルム上に得た。
【0076】
このようにポリエステルフィルム上にアルミナ粒子を担持させた架橋性ポリマーからなるフィルムの一対を離れて対向するように重ね合わせた後、温度85℃の加熱ゴムロールを通して貼り合わせ、次いで、温度50℃の恒温室内に7日間置いて、前記架橋性ポリマーを架橋させて、反応性ポリマーとし、かくして、一対の反応性ポリマーフィルム間にこの反応性ポリマーで被覆されつつ、反応性ポリマーからなるフィルム上にアルミナ粒子が分散、担持されてなる複合フィルム、即ち、本発明による電池用セパレータをポリエステルフィルムに挟まれた積層体として得た。このセパレータは坪量8g/m2、平均厚み40μmであった。また、このセパレータにおいて、反応性ポリマーからなるフィルムの厚みは1.5μmであった。このセパレータは、前述した図1に示すような断面構造を有するものであった。
【0077】
上記ポリエステルフィルムに挟まれた積層体から一方のポリエステルフィルムを剥離して、上記セパレータの表面(即ち、反応性ポリマーからなるフィルムの表面)を露出させ、このセパレータの表面に前記正極シートを重ね合わせ、温度85℃の加熱貼り合わせロールを用いて、正極シートをセパレータの表面に圧着した。次いで、他方のポリエステルフィルムをセパレータから剥離して、セパレータの裏面を露出させ、このセパレータの裏面に前記負極シートを重ね合わせ、同様にして、温度85℃の加熱貼り合わせロールを用いて、負極シートをセパレータの裏面に圧着し、かくして、負極シート/セパレータ/正極シート積層体(以下、電極シート/セパレータ積層体ということがある。)を得た。
【0078】
(電解液の調製)
アルゴン置換したグローブボックス中、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート混合溶媒(容量比1/2)に1.2モル/L濃度となるように電解質塩六フッ化リン酸リチウム(LiPF6) を溶解させて、電解液を調製した。
【0079】
(電池の組み立て)
上記電極シート/セパレータ積層体を正負電極板を兼ねる2016サイズのコイン型電池用缶に仕込み、上記電解液をこのコイン型電池の缶内に注入した後、電池用缶を封口して、仕掛品を製作した。この後、この仕掛品を温度50℃の恒温室中に7日間投入して、前記エポキシ樹脂硬化剤を活性化させ、電極/セパレータ積層体中の反応性ポリマー中のエポキシ基を架橋反応させ、正負の電極シートをセパレータに接着、一体化させ、かくして、負極シート/セパレータ/正極シート接合体(以下、電極シート/セパレータ接合体ということがある。)を有するコイン型リチウムイオン二次電池を得た。
【0080】
このようにして得られたコイン型リチウムイオン二次電池の特性は、以下のようにして評価した。
【0081】
(放電負荷特性の評価)
得られた電池について、0.2CmAのレートにて5回充放電を行った後、0.2CmAのレートで充電し、更にその後、2.0CmAのレートで放電を行って、2.0CmAのレートでの放電容量/0.2CmAのレートでの放電容量の比にて放電負荷特性を評価した。
【0082】
(電池の耐熱性)
得られた電池を150℃で1時間加熱した後、その電池特性を調べた。短絡が認められるときを×(電池は耐熱性に劣る)とし、短絡が認められないときを○(電池は耐熱性にすぐれる)とした。
【0083】
(セパレータの絶縁性)
電極シート/セパレータ積層体を作製する際に、セパレータの表面に正極シートを貼り合わせ、85℃の加熱ロールで圧着し、得られた正極シート/セパレータ積層体を2cm角に裁断した。この正極シート/セパレータ積層体の裏面に同様に負極シートを貼り合わせ、85℃の加熱ロールで圧着して、電極シート/セパレータ積層体の接着性を得た。このようにして得た電極シート/セパレータ積層体の正極シートと負極シートをテスターの端子に接続して、電極シート間に導通があるかどうかを調べた。電極シート間に導通がないときを○(セパレータは絶縁性にすぐれる)とし、電極シート間に導通があるときを×(セパレータは絶縁性に劣る)とした。
【0084】
(電極シート/セパレータの接着性)
電極シート/セパレータ積層体を10mm幅に切断し、電池の製造に用いたものと同じ3官能イソシアネートを含む電解液中に温度50℃で7日間浸漬した後、湿った状態で多孔質フィルムを剥離したときに、抵抗があるときを○(接着性にすぐれる)、既に剥れていて、抵抗の殆どないときを×(接着性に劣る)とした。
【0085】
実施例2〜5
表1に示す平均粒子径を有する球状のアルミナ粒子を表1に示す割合にて用いると共に、実施例1におけると同じエポキシ樹脂硬化剤マイクロカプセルを表1に示す量にて用いた以外は、実施例1と同様にして、セパレータを得、これを用いてコイン型リチウムイオン二次電池を得た。得られたセパレータの坪量、得られた電池の放電負荷特性と耐熱性、セパレータの絶縁性及び電極シート/セパレータの接着性を表1に示す。
【0086】
実施例6
実施例1で得られた架橋性ポリマー溶液にその固形分100重量部に対して実施例1と同じ3官能イソシアネート0.2重量部と実施例1と同じエポキシ樹脂硬化剤マイクロカプセル2.5重量部と平均粒子径7〜11μmの球状のアルミナ粒子100重量部を加え、攪拌、混合して、3官能イソシアネートとエポキシ樹脂硬化剤マイクロカプセルとアルミナ粒子を含む架橋性ポリマー溶液を得た。
【0087】
この架橋性ポリマー溶液を剥離処理した厚さ40μmのポリエステルフィルム上にアプリケーターを用いて塗布した後、70℃に加熱し、乾燥させて、厚み2.0μmの架橋性ポリマーからなるフィルム上にアルミナ粒子が架橋性ポリマーに被覆されつつ、分散、担持されてなる坪量4g/m2 のアルミナ粒子を担持させた架橋性ポリマーからなるフィルムをポリエステルフィルム上に得た。
【0088】
別に、実施例1で得られた架橋性ポリマー溶液にその固形分100重量部に対して実施例1と同じ3官能イソシアネート1重量部を加え、加え、攪拌、混合して、3官能架橋剤を含む架橋性ポリマー溶液を得た。この架橋性ポリマー溶液を実施例1と同じポリエステルフィルム上にアプリケーターを用いて塗布した後、70℃に加熱し、乾燥させて、ポリエステルフィルム上に厚み1.0μmの架橋性ポリマーからなるフィルムを形成させた。
【0089】
このポリエステルフィルム上の架橋性ポリマーからなるフィルムと前記アルミナ粒子担持架橋性ポリマーフィルムとを相互に対面するように重ね合わせた後、温度85℃の加熱ゴムロールを通して、上記一対のフィルムを貼り合わせ、次いで、温度50℃の恒温室内に7日間置いて、前記架橋性ポリマーを一部、架橋させて、反応性ポリマーとし、かくして、一対の反応性ポリマーフィルム間にこの反応性ポリマーで被覆されつつ、一方の反応性ポリマーフィルム上にアルミナ粒子が分散、担持されてなる複合フィルム、即ち、セパレータをポリエステルフィルムに挟まれた積層体として得た。このセパレータの平均厚みは40μmであった。また、このセパレータにおいて、アルミナ粒子を担持させた反応性ポリマーからなるフィルムの厚みは2.0μmであり、アルミナ粒子を担持しない反応性ポリマーからなるフィルムの厚みは1.0μmであった。
【0090】
以下、このセパレータを用いて、実施例1と同様にして、コイン型リチウムイオン二次電池を得た。得られたセパレータの坪量、得られた電池の放電負荷特性と耐熱性、セパレータの絶縁性及び電極シート/セパレータの接着性を表1に示す。
【0091】
実施例7
実施例1において、アルミナ粒子に代えて、平均粒子径15μmの球状のポリスチレン粒子50重量部を用いた以外は、同様にして、セパレータを得、これを用いて、コイン型リチウムイオン二次電池を得た。得られたセパレータの坪量、得られた電池の放電負荷特性と耐熱性、セパレータの絶縁性及び電極シート/セパレータの接着性を表1に示す。
【0092】
実施例8
(架橋性ポリマーの調製)
エチルメタクリレート 45 重量部
ベンジルメタクリレート 20 重量部
テトラヒドロフルフリルメタクリレート 30 重量部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 0.5重量部
グリシジルメタクリレート 5 重量部
過酸化ベンゾイル 0.3重量部
酢酸エチル 125 重量部
【0093】
上記モノマーと重合開始剤と溶媒とを攪拌機と窒素導入管とコンデンサを備えた四つ口フラスコに仕込み、攪拌下にフラスコ内を窒素置換した。次いで、温水浴中、攪拌しながら、60〜65℃で8時間重合を行い、更に、75℃に昇温して、この温度で3時間保持した後、酢酸エチルを加えて、濃度20重量%の架橋性ポリマー溶液を得た。この架橋性ポリマーの重量平均分子量は4.5×105 であり、ガラス転移温度は52℃であった。
【0094】
この架橋性ポリマー溶液を用いて、実施例1と同様にして、セパレータを調製し、これを用いて、コイン型リチウムイオン二次電池を得た。得られたセパレータの坪量、得られた電池の放電負荷特性と耐熱性、セパレータの絶縁性及び電極シート/セパレータの接着性を表2に示す。
【0095】
セパレータの調製において、架橋性ポリマーからなるフィルムの厚みは1.5μmとし、反応性ポリマーからなるフィルムの厚み1.5μmのセパレータを得た。
【0096】
比較例1
実施例1において、架橋性ポリマー溶液にアルミナ粒子を加えなかった以外は、同様にして、架橋性ポリマー溶液を得た。実施例1と同様にして、この架橋性ポリマー溶液を用いて、実施例1と同様にして、セパレータを調製し、これを用いて、コイン型リチウムイオン二次電池を得た。得られたセパレータの坪量、得られた電池の放電負荷特性と耐熱性、セパレータの絶縁性及び電極シート/セパレータの接着性を表2に示す。
【0097】
比較例2
実施例1において、架橋性ポリマー溶液にエポキシ樹脂硬化剤マイクロカプセルを加えなかった以外は、同様にして、架橋性ポリマー溶液を得た。実施例1と同様にして、この架橋性ポリマー溶液を用いて、実施例1と同様にして、セパレータを調製し、これを用いて、コイン型リチウムイオン二次電池を得た。得られたセパレータの坪量、得られた電池の放電負荷特性と耐熱性、セパレータの絶縁性及び電極シート/セパレータの接着性を表2に示す。
【0098】
比較例3
実施例1において、架橋性ポリマー溶液に3官能イソシアネートを加えなかった以外は、同様にして、架橋性ポリマー溶液を得た。実施例1と同様にして、この架橋性ポリマー溶液を用いて、実施例1と同様にして、セパレータを調製し、これを用いて、コイン型リチウムイオン二次電池を得た。得られたセパレータの坪量、得られた電池の放電負荷特性と耐熱性、セパレータの絶縁性及び電極シート/セパレータの接着性を表2に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
表1及び表2に示すように、本発明による電池用セパレータはいずれも、放電負荷特性と耐熱性にすぐれると共に、セパレータの絶縁性と電極シート/セパレータの接着性にもすぐれる電池を与える。
【0102】
これに対して、比較例1においては、反応性ポリマーからなるフィルム上に絶縁性微粒子が分散、担持されていないので、得られた電池は、セパレータの絶縁性に劣り、電極間で短絡を起こした。比較例2によれば、架橋性ポリマーが電池の組立ての段階で架橋しないので、電極シート/セパレータの接着性が悪い結果、セパレータが耐熱性に劣る。比較例3においては、架橋性ポリマーが架橋していないために、架橋性ポリマーが電池の組立ての段階で電解液中に溶出し、その結果、電極シート/セパレータの接着性が悪く、セパレータが耐熱性に劣っている。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明による電池用セパレータの一例を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0104】
1…反応性ポリマーからなるフィルム
2…絶縁性微粒子
3…反応性ポリマー
4…空隙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基を有し、更に、エポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルを含有していると共に、架橋構造を有する反応性ポリマーからなる一対のフィルムが離れて対向しており、これらの一対のフィルムの少なくとも一方の上に絶縁性微粒子が反応性ポリマーによって被覆されつつ、その間に空隙を有するよう接着担持されており、上記一対のフィルムが上記絶縁性微粒子を介して貼り合わされていることを特徴とする電池用セパレータ。
【請求項2】
反応性ポリマーが20〜100%の範囲のゲル分率と5倍以上の膨潤度を有し、この反応性ポリマーからなるフィルムが0.3〜5.0μmの範囲の厚みを有すると共に、絶縁性微粒子が1〜100μmの範囲の平均粒子径を有し、この絶縁性微粒子が上記反応性ポリマー100重量部に対して20〜1000重量部の範囲で含まれている請求項1に記載の電池用セパレータ。
【請求項3】
ヒドロキシ基とエポキシ基とを有する架橋性ポリマーの溶液に多官能イソシアネートとエポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルと絶縁性微粒子を混合し、得られた架橋性ポリマーの溶液を剥離性フィルム上に塗布し、乾燥させて、上記多官能イソシアネートを含み、上記エポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルと絶縁性微粒子を分散担持させた架橋性ポリマーからなるフィルムを上記剥離性フィルム上に形成し、次いで、このようにして得られた剥離性フィルム上の架橋性ポリマーからなるフィルムの一対を、その絶縁性微粒子の担持面を対面させつつ、重ね合わせて貼り合わせた後、加熱して、前記架橋性ポリマーを多官能イソシアネートとの反応によって架橋させ、反応性ポリマーとし、かくして、エポキシ基を有し、更に、エポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルを含有していると共に、架橋構造を有する反応性ポリマーからなる一対のフィルムが離れて対向しており、これらの一対のフィルムの上に絶縁性微粒子が反応性ポリマーによって被覆されつつ、その間に空隙を有するように接着担持されており、上記一対のフィルムが上記絶縁性微粒子を介して貼り合わされている電池用セパレータの製造方法。
【請求項4】
架橋性ポリマーの溶液に多官能イソシアネートとエポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルと架橋性ポリマー100重量部に対して平均粒子径1〜100μmの絶縁性微粒子20〜2000重量部を混合し、得られた架橋性ポリマーの溶液を剥離性フィルム上に塗布し、乾燥させて、上記多官能イソシアネートを含み、上記エポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルと絶縁性微粒子を分散担持させた架橋性ポリマーからなる厚み0.3〜5.0μmのフィルムを上記剥離性フィルム上に形成する請求項3に記載の電池用セパレータの製造方法。
【請求項5】
ヒドロキシ基とエポキシ基とを有する架橋性ポリマーの溶液に多官能イソシアネートとエポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルと絶縁性微粒子を混合し、得られた架橋性ポリマーの溶液を剥離性フィルム上に塗布し、乾燥させて、上記多官能イソシアネートを含み、上記エポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルと絶縁性微粒子を分散担持させた第1の架橋性ポリマーからなるフィルムを上記剥離性フィルム上に形成し、別に、ヒドロキシ基とエポキシ基とを有する架橋性ポリマーの溶液に多官能イソシアネートとエポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルとを混合し、得られた架橋性ポリマーの溶液を剥離性フィルム上に塗布し、乾燥させて、上記多官能イソシアネートとエポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルを含む第2の架橋性ポリマーからなるフィルムを上記剥離性フィルム上に形成し、次いで、このようにして得られた剥離性フィルム上の架橋性ポリマーからなるフィルムの一対を、上記第1の架橋性ポリマーからなるフィルムの絶縁性微粒子の担持面を上記第2の架橋性ポリマーからなるフィルムに対面させつつ、重ね合わせて貼り合わせた後、加熱して、上記第1及び第2の架橋性ポリマーを多官能イソシアネートとの反応によって架橋させ、それぞれを反応性ポリマーとし、かくして、エポキシ基を有し、更に、エポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルを含有していると共に、架橋構造を有する反応性ポリマーからなる一対のフィルムが離れて対向しており、これらの一対のフィルムの一方の上に絶縁性微粒子が反応性ポリマーによって被覆されつつ、その間に空隙を有するように接着担持されており、上記一対のフィルムが上記絶縁性微粒子を介して貼り合わされている電池用セパレータの製造方法。
【請求項6】
架橋性ポリマーの溶液に多官能イソシアネートとエポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルと架橋性ポリマー100重量部に対して平均粒子径1〜100μmの絶縁性微粒子20〜2000重量部を混合し、得られた架橋性ポリマーの溶液を剥離性フィルム上に塗布し、乾燥させて、上記多官能イソシアネートを含み、上記エポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルと絶縁性微粒子を分散担持させた架橋性ポリマーからなる厚み0.3〜5.0μmのフィルムを上記剥離性フィルム上に形成し、別に、架橋性ポリマーの溶液に多官能イソシアネートとエポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルとを混合し、得られた架橋性ポリマーの溶液を剥離性フィルム上に塗布し、乾燥させて、上記多官能イソシアネートとエポキシ樹脂硬化剤を内包したマイクロカプセルを含む第2の架橋性ポリマーからなる厚み0.3〜5.0μmのフィルムを上記剥離性フィルム上に形成する請求項5に記載の電池用セパレータの製造方法。
【請求項7】
反応性ポリマーが20〜100%の範囲のゲル分率と5倍以上の膨潤度を有し、この反応性ポリマーからなるフィルムが0.3〜5.0μmの範囲の厚みを有する請求項3又は5に記載の電池用セパレータの製造方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の電池用セパレータに電極シートを積層し、圧着して、電極シート/セパレータ積層体を形成し、この積層体を電池容器に仕込んだ後、この電池容器内に電解液を注入し、加熱して、エポキシ樹脂硬化剤を活性化して、反応性ポリマーをそのエポキシ基によって架橋、硬化させて、電極シートをセパレータに接着することを特徴とする電池の製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2007−35543(P2007−35543A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−220391(P2005−220391)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】