説明

電池用蓋装置及び電池収納装置

【課題】収納部に誤挿入された電池の不正な導通を防止できる電池用蓋装置を提供する。
【解決手段】蓋本体に、電池34の正極端子43を挿入可能で、かつ、電池34の負極端子を挿入不可能な正極ガード溝64を設ける。蓋本体の正極ガード溝64の外部に、電池34の負極端子と接触して導通可能な導通領域54aを有する負極側接片部54を設ける。正極ガード溝64に、一方の収納部35aに誤挿入した電池34の挿入口36に臨む正極端子43が仮閉塞状態で納まるガイド領域66を設ける。正極ガード溝64に、ガイド領域66に納まった電池34の正極端子43を蓋本体51の摺動によって相対的に案内して保持する収納領域67をガイド領域66に連続して設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮閉塞状態から所定方向へと摺動させることで挿入口全体を覆った状態でこの挿入口に固定されて収納部に電池を保持する電池用蓋装置及びこれを備えた電池収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばデジタルスチルカメラ等の電子機器の電池収納装置である電池ボックスとしては、単3電池(size AA battery)などを収納部へと縦に挿入し、電池用蓋装置(以下、単に蓋という)を閉めるタイプがある。このタイプの電池ボックスは、収納部の底面と蓋の内側面とにそれぞれ導通部である電極用接片が設けられている。例えば、収納部の底面側が正極、蓋側が負極というようになっており、電池を収納部に収納して蓋を閉めると、それぞれの接片が電池のそれぞれの端子と接触するようになっている。
【0003】
ところで、このようなタイプの電池ボックスでは、電池の向きを誤って逆向きに挿入、すなわち逆差しすると、設計で意図しない方向に電流が流れ、回路がショートするなどの問題が生じてしまう。そこで従来から、この逆差しの防止や、万一逆差しされても回路に影響がないように、いろいろな工夫がなされている。
【0004】
例えば、蓋側が負極の電池ボックスにおける逆差し防止構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。具体的に、図9ないし図11に示すように、蓋側電池接片11の中央部分は、電池12の正極端子13の径よりもやや大きい径の逃がし穴14が形成されている。この逃がし穴14に対して電池12の負極端子15の径は大きいので、図10(a)のように電池12が正しく挿入された場合には蓋側電池接片11は電池12の負極端子15と充分接触する。一方、図10(b)のように電池12が逆差しされた場合には、電池12の正極端子13が逃がし穴14内に納まる。これにより、電池12の正極端子13が誤って蓋側電池接片11と接触することを防止できる。
【0005】
ところで、電池12の各部の寸法は、IEC(International Electrotechnical Commission)規格によって許容範囲が決められている。例えば図9に示すように、単3サイズの電池12の径D1の許容範囲は13.5mm〜14.5mm、負極端子15の最小径は7mm(最大径の設定はなし)、正極端子13の径D2の許容範囲は4.2mm〜5.5mmと規定されている。これを受け入れる収納部17は、電池12の径D1よりも当然大きめ(例えば最大電池径+0.1mmの14.6mm)に設定される。すると、最小許容寸法またはそれに近いサイズで製造された電池12は、図11(a)及び図11(b)に示すように収納部17内で大きく動くことになり、図9ないし図11に示す構成では、逆差しされた電池12の正極端子13が蓋側電池接片11に接触する虞が生じる。
【0006】
このため、電池12が逆差しされた場合に備えて、電池12の径D1が最小でかつ最大径の正極端子13を想定して蓋側電池接片11を設計する必要がある。具体的には、蓋側電池接片11の逃がし穴14の径D3を6.6mm(正極端子13の最大径5.5mm+最小許容寸法の電池12と収納部17との隙間1.1mm)より大きく、かつ負極端子15の最小径7mm未満に設計すれば、最小許容寸法の電池12が最大に動いたときの正極端子13と逃がし穴14との距離を0.2mmにでき、ある程度の余裕を持たせることができる。
【0007】
しかし、設計公差や組み込み誤差、最小許容寸法の電池が蓋側電池接片11に対して斜めに傾くなどの原因により電池12の正極端子13と蓋側電池接片11とが接触してしまうことがあり得る。一方で、電池12の正極端子13と蓋側電池接片11との接触を避けるために蓋側電池接片11の逃がし穴14の径D3を広げると、電池12が正しく挿入されたときの負極端子15との接触面積を狭めることになり、導通の信頼性を損なうことになる。
【特許文献1】特許第3258933号公報(第2−3頁、図5−6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、収納部に電池を正しく挿入した場合の負極端子と導通部との導通の信頼性を確保しつつ、収納部に電池を逆差しした場合の正極端子と導通部との接触を確実に防止できる構成が望まれている。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、収納部に誤挿入された電池の不正な導通を防止できる電池用蓋装置及びこれを備えた電池収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の電池用蓋装置は、正負いずれかの極性を備えた第1端子およびこの第1端子よりも外径寸法が小さくこの第1端子と逆の極性を備えた第2端子を有する電池を挿入可能な挿入口を備えた収納部に対して、前記挿入口の少なくとも一部を覆う仮閉塞状態から所定方向へと摺動させることで前記挿入口全体を覆った状態でこの挿入口に対して固定されて前記収納部に電池を保持する電池用蓋装置であって、前記所定方向へと摺動可能な蓋本体と、この蓋本体に設けられ、前記第2端子が挿入可能で、かつ、前記第1端子が挿入不可能な凹部と、前記蓋本体の前記凹部の外部に設けられ、前記第1端子と接触して導通可能な導通部とを具備し、前記凹部は、前記収納部に誤挿入した電池の前記挿入口に臨む前記第2端子が前記仮閉塞状態で挿入される被挿入部と、この被挿入部に連続して形成され、この被挿入部に前記仮閉塞状態で挿入された電池の前記第2端子を前記蓋本体の摺動によって相対的に案内して保持する保持部とを備えているものである。
【0011】
そして、収納部に電池を誤挿入した場合に、蓋本体を仮閉塞状態とすることで、挿入口に臨む第2端子が被挿入部に挿入され、この仮閉塞状態から蓋本体を摺動させて閉塞状態とする際に、電池の第2端子が保持部に案内されて保持される。このため、最小許容寸法の電池本体を有する電池を収納部に誤挿入しても、保持された第2端子が導通部に接触することがないので、不正な導通を確実に防止できる。
【0012】
請求項2記載の電池用蓋装置は、請求項1記載の電池用蓋装置において、導通部は、保持部の周囲の少なくとも一部に沿って形成されているものである。
【0013】
そして、導通部を保持部の周囲の少なくとも一部に沿って形成することにより、導通部の面積を広く取ることができ、収納部に正しく挿入された電池の第2端子と導通部との接触面積が確保される。
【0014】
請求項3記載の電池収納装置は、電池を挿入可能な挿入口を備えた収納部と、少なくとも所定方向への摺動動作によって前記挿入口を閉塞可能な請求項1または2記載の電池用蓋装置とを具備したものである。
【0015】
そして、請求項1または2記載の電池用蓋装置を備えることで、収納部に電池を誤挿入した際でも、不正な導通を確実に防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、収納部に誤挿入された電池の不正な導通を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態の電池用蓋装置の構成を図1ないし図8を参照して説明する。
【0018】
図5において、21はカメラで、このカメラ21は、例えばデジタルスチルカメラであり、カメラ本体部22と、このカメラ本体部22に一体的に設けられたストロボ装置である照明装置23及び電池収納装置である電池ボックス24とを備えている。そして、カメラ本体部22は、ケース体25と、このケース体25の前面に取り付けられた鏡筒26とを備えている。そして、鏡筒26は、画角を変更可能ないわゆるズーム機構を備えた撮影レンズなどを備えている。また、ケース体25には、図示しないが、撮影レンズを通った光を撮像する撮像素子、撮像素子から出力される信号を処理する画像処理回路、画像データを記録する記録媒体、及び各部を制御する制御装置などが収納されている。そして、ケース体25には、シャッターボタン及び画角を変更するズームレバーなどの操作手段が設けられているとともに、ファインダとなる液晶表示パネルなどの表示手段が背面側に設けられている。
【0019】
そして、電池ボックス24は、図1ないし図8に示すように、ケース体25の一側部に一体的に形成された収納装置本体としてのボックス本体31と、このボックス本体31に対して回動及び摺動可能に設けられた電池用蓋装置32(以下、単に蓋32という)とを備えている。
【0020】
ボックス本体31は、ケース体25の前面側に膨出するように形成され、内部に例えば2つの電池34を収納可能な収納部35が形成されているとともに、この収納部35に電池34を挿入するための挿入口36が下部に形成されている。
【0021】
電池34は、図5、図7及び図8などに示すように、画像処理回路などの電源となるものであり、例えば単3サイズの略円柱状の電池本体41と、この電池本体41の軸方向の一端部に突出する円柱状の第1端子である負極端子42と、電池本体41の軸方向の他端部に突出し負極端子42よりも外形寸法(径寸法)が小さい円柱状の第2端子である正極端子43とを有している。これら電池本体41、負極端子42及び正極端子43は、それぞれ略同軸上に位置している。
【0022】
収納部35は、例えばそれぞれ1つずつの電池34を収納する収納部35a,35bを有している。これら収納部35a,35b間には、これら収納部35a,35bを区画する壁状の区画部35cが形成されている。また、一方の収納部35aの底部には、この一方の収納部35aに正しく挿入、すなわち正極端子43側が底部側となるように挿入された電池34の正極端子43と接触する一方の電池接片47が設けられており、他方の収納部35bの底部には、この他方の収納部35bに正しく挿入、すなわち負極端子42側が底部側となるように挿入された電池34の負極端子42と接触する他方の電池接片48が設けられている。
【0023】
ここで、電池34の電池本体41、負極端子42及び正極端子43のそれぞれの寸法(径寸法)は、IEC規格によって許容範囲が決められており、例えば単3サイズの電池34の径の許容範囲は13.5mm〜14.5mm、負極端子42の最小径は7mm(最大径の設定はなし)、正極端子43の径の許容範囲は4.2mm〜5.5mmと規定されている。このため、収納部35a,35bは、それぞれ電池34の電池本体41の最大径よりも大きめに設定されている。したがって、収納部35a,35bに収納された電池34が最小許容寸法、あるいはそれに近いサイズである場合には、これら収納部35a,35b内で電池34が平面視上下左右にそれぞれ動くようになる。
【0024】
一方の電池接片47は、例えば画像処理回路などのプラス側に電気的に接続されている。
【0025】
他方の電池接片48は、例えば画像処理回路などのマイナス(グラウンド)側に電気的に接続されている。
【0026】
挿入口36は、蓋32により開閉されるもので、ケース体25の下部に開口して形成されている。また、この挿入口36は、ケース体25の底面に対して段差状に切り欠き形成されている。
【0027】
一方、蓋32は、図1ないし図6などに示すように、板状に形成された蓋本体51と、この蓋本体51から突出してこの蓋本体51をケース体25に対して移動可能に接続するヒンジ52,52と、蓋本体51に取り付けられた蓋側電池接片部材53とを備えている。蓋側電池切片部材53は、第1接片部としての負極側接片部54の中央部分に嵌め込まれた一の誤挿入導通防止部材としての絶縁性を有する正極ガード55と、第2接片部としての正極側接片部56に取り付けられた他の誤挿入導通防止部材としての絶縁性を有する負極ガード57とを備えている。そして、この蓋32は、挿入口36を閉塞した状態でケース体25に固定されることにより各電池34を電気的に接続した状態で収納部35a,35bに位置決め保持するものである。
【0028】
蓋本体51は、挿入口36全体を閉塞可能な大きさに形成されている。また、この蓋本体51の外縁部近傍には、蓋側係止部である爪部58が複数形成されている。これら爪部58は、ケース体25側に設けられた係止部59にそれぞれ係止されることにより、蓋本体51をケース体25側に係止するためのものである。さらに、蓋本体51の意匠面側、すなわちケース体25の外部側をなす面側には、蓋本体51のケース体25へのフック60aの係止を解除するための解除ボタン60が設けられている。
【0029】
ヒンジ52は、ケース体25の下部の後側寄りの位置に前後方向に摺動可能に取り付けられた軸体61を備えている。この軸体61は、両端部がケース体25に対して回動可能に軸支されている。したがって、蓋本体51は、挿入口36に対して回動可能でかつ所定方向に沿った方向である前後方向に摺動可能となっている。そして、蓋本体51は、挿入口36側へと回動させることにより挿入口36の一部を覆う仮閉塞状態となり、この仮閉塞状態からヒンジ52側へと水平状に摺動(スライド)させることにより挿入口36に対して位置決め固定されてこの挿入口36全体を覆う閉塞状態となる。
【0030】
負極側接片部54は、金属により形成され、蓋本体51の摺動方向に長手状に連続している。
【0031】
正極側接片部56は、蓋本体51内において負極側接片部54と電気的に接続されている。したがって、2本の電池34,34を各収納部35a,35bにそれぞれ正しい挿入方向で挿入して蓋32(蓋本体51)を閉じた状態で、一方の収納部35a側の電池34の負極端子42と他方の収納部35b側の電池34の正極端子43とがそれぞれ負極側接片部54、正極側接片部56を介して電気的に直列に接続され、電池34,34によって電池接片47,48間に所定の定電圧が発生するように構成されている。
【0032】
正極ガード55の内部には、図8に示すように正しい挿入方向と反対方向に挿入、すなわち逆差し(誤挿入)された電池34の正極端子43をガード、すなわち負極側接片部54から絶縁するための凹部としての正極ガード溝64が設けられている。この正極ガード溝64は、正極端子43よりも充分に大きい外径寸法を有しかつ負極端子42よりも小さく形成された被挿入部としてのガイド領域66と、最大許容寸法、すなわち最大径の正極端子43が納まる大きさでかつガイド領域66よりも幅が小さい保持部としての収納領域67とを有している。このため、正極ガード溝64は、前後方向に沿って大小の円を組み合わせた形状に形成されている。また、この正極ガード溝64の深さ寸法は、電池本体41からの正極端子43の突出寸法と同程度に形成されている。したがって、正極ガード溝64に挿入された正極端子43は、仮閉塞状態及び閉塞状態のそれぞれにおいて、正極ガード溝64から外に出ることはない。
【0033】
ガイド領域66は、略円形状に形成された空間部であり、蓋本体51を仮閉塞状態とした際に、一方の収納部35aに逆差しされた電池34の正極端子43の存在可能領域よりも大きく形成されている。また、ガイド領域66は、収納領域67側へと次第に幅寸法が小さくなるように湾曲形成された第1ガイド壁部としての湾曲壁部66a,66aを有している。
【0034】
ここで、正極端子43の存在可能領域とは、最小許容寸法の電池34が一方の収納部35a内で最も移動した状態での正極端子43の位置をいう。このため、ガイド領域66は、一方の収納部35aに逆差しされた電池34の正極端子43が仮閉塞状態で必ず納まるように形成されている。
【0035】
一方、収納領域67は、ガイド領域66に対して蓋本体51のヒンジ52と反対側に連続して形成された空間部である。この収納領域67は、ガイド領域66から連続してヒンジ52と反対側へと直線状に形成された第2ガイド壁部としての直線状壁部68,68と、これら直線状壁部68,68間に連続する円弧状の円弧壁部69とにより区画されている。したがって、この収納領域67は、ガイド領域66に対して長孔状に形成されている。
【0036】
直線状壁部68,68は、電池34の正極端子43の最大径寸法よりわずかに広い幅に設定されており、ガイド領域66の湾曲壁部66a,66aと連続している。このため、これら直線状壁部68,68は、ガイド領域66に納まった逆差しの電池34の正極端子43を、蓋本体51を摺動させて仮閉塞状態から閉塞状態へとするときに、収納領域67へと相対的に案内(ガイド)するように形成されている。
【0037】
そして、負極側接片部54には、収納領域67の周縁である一方の直線状壁部68の外方及び円弧壁部69の外方に沿った位置に、電池34が一方の収納部35aに正しく挿入されたときに閉塞状態で負極端子42が接触する導通部としての導通領域54aが形成されている。すなわち、導通領域54aは、円弧状をなし、正極ガード溝64の端部近傍、換言すれば収納領域67の近傍まで延設され、収納領域67に沿って形成されている。この導通領域54aは、一方の収納部35aに正しい方向で挿入された電池34の負極端子42の存在可能範囲と交差するように形成されている。
【0038】
ここで、負極端子42の存在可能範囲とは、最小許容寸法の電池34が一方の収納部35a内で最も移動した状態での負極端子42の位置(図3中の想像線に例を示す範囲42a〜42d)をいう。このため、導通領域54aは、一方の収納部35aに正しく挿入された電池34の負極端子42が閉塞状態で必ず接触するように形成されている。
【0039】
一方、負極ガード57は、正極側接片部56のヒンジ52と反対側の縁部に沿って形成されており、正極端子43が挿入可能で、かつ、負極端子42が挿入不可能な大きさの切欠孔部73を区画している。この切欠孔部73からは、正極側接片部56が露出している。また、この切欠孔部73は、蓋本体51のヒンジ52側が開口している。このため、電池34が他方の収納部35bに正しく挿入されたときに仮閉塞状態及び閉塞状態で正極端子43が切欠孔部73に挿入されてこの切欠孔部73を介して正極側接片部56に接触可能であるとともに、電池34を他方の収納部35bに逆差ししたときには仮閉塞状態及び閉塞状態で負極端子42が負極ガード57に当接して負極端子42と正極側接片部56との接触が防止されるように構成されている。
【0040】
次に、上記一実施の形態の動作を説明する。
【0041】
一方の収納部35aに電池34を収納する際には、正極端子43側を一方の収納部35aの底部側として挿入口36から挿入する。また、他方の収納部35bに電池34を収納する際には、負極端子42側を他方の収納部35bの底部側として挿入口36から挿入する。
【0042】
この結果、一方の収納部35aに挿入された電池34の正極端子43が一方の電池接片47と接触して導通し、他方の収納部35bに挿入された電池34の負極端子42が他方の電池接片48と接触して導通する。
【0043】
次いで、蓋32(蓋本体51)をケース体25側へと回動させると、各爪部58が各係止部59に当接などして仮閉塞状態となる。
【0044】
この状態で、蓋32(蓋本体51)をヒンジ52側へと摺動させると、蓋本体51が挿入口36全体を閉塞した状態で爪部58がケース体25側に係止されて蓋32(蓋本体51)が挿入口36に対して位置決め固定され、電池34,34が収納部35a,35bに保持される。この状態で、図3に示すように、一方の収納部35aに挿入された電池34の負極端子42が負極側接片部54の導通領域54aと接触して導通するとともに、他方の収納部35bに挿入された電池34の正極端子43が切欠孔部73に挿入され、正極側接片部56と接触して導通する。
【0045】
一方、図1(b)に示すように、一方の収納部35aに電池34を誤って逆差しした状態で蓋32(蓋本体51)をケース体25側へと回動させて仮閉塞状態とすると、図1(a)に示すように、電池34の正極端子43がガイド領域66内のいずれかの位置に納まる。
【0046】
この仮閉塞状態から、図2(b)に示すように、蓋32(蓋本体51)をヒンジ52側(矢印d方向)へと摺動させると、図2(a)に示すように、ガイド領域66に挿入された正極端子43が正極ガード溝64の湾曲壁部66a,66aにより直線状壁部68,68間に引き込まれ、さらにこれら直線状壁部68,68に沿って収納領域67に引き込まれ、この収納領域67内の所定の位置に保持されることで、この電池34が一方の収納部35a内に保持され、正極端子43が負極側接片部54に接触することがない。
【0047】
このように、上記一実施の形態では、一方の収納部35aに電池34を逆挿入した場合に、蓋32(蓋本体51)を仮閉塞状態から摺動させて閉塞状態とする際に電池34の正極端子43を所定の収納領域67に案内して保持することができる。このため、最小許容寸法の電池本体41を有する電池34を一方の収納部35aに誤挿入したときに、正極端子43が負極側接片部54に対して位置決めでき、この負極側接片部54付近で動くことがないので、正極端子43が導通領域54aに対して不正に導通することを確実に防止できる。
【0048】
そして、このような不正な導通を防止できることにより、カメラ21の画像処理回路など、電池ボックス24を電源部とする回路に好ましくない影響を与えることを防止できる。
【0049】
しかも、負極側接片部54及び正極ガード55は、従来と同様の構成部品の形状を変更することで容易に構成できるので、部品点数の増加や製造工数の増加などに伴うコストアップを防止できる。
【0050】
また、負極側接片部54の導通領域54aを、正極ガード溝64のうち、比較的外径が小さい収納領域67の周囲の一部に沿って形成することにより、負極側接片部54全体の面積を広く取ることができる。このため、一方の収納部35aに電池34を正しく挿入した場合には、電池34の負極端子42と負極側接片部54の導通領域54aとの接触面積を広く確保でき、これら負極端子42と導通領域54aとを確実に接触させることができ、導通の信頼性を向上できる。
【0051】
なお、上記一実施の形態において、電池ボックス24は、カメラ21に適用する以外でも、電池を決められた向きで挿入する必要がある任意の電気機器に適用できる。
【0052】
また、電池ボックス24を、収納部35a,35bを備えるものとしたが、例えば1つの収納部を備えるものに対応する場合には、一方の収納部35aと、蓋32の負極側接片部54及び正極ガード55の構造を適用すればよい。さらに、電池ボックス24を3つ以上の収納部を備えるものとしても、同様に蓋32を対応させて用いることができる。
【0053】
また、電池34は、単3サイズのものについて説明したが、例えば、単1サイズ、あるいは単2サイズなど、他の大きさの電池であっても対応することができる。さらに、電池34は、例えばボタン型の電池であっても対応できる。但し、ボタン型電池は、通常負極側の径寸法が小さいので、上記実施例とは正極端子と負極端子との関係を逆に設計、すなわち第1端子を正極端子、第2端子を負極端子として設計する必要がある。
【0054】
蓋32は、少なくとも摺動により閉塞状態とするものであれば、仮閉塞状態とするための構成は任意に選択できる。
【0055】
正極ガード55は、蓋本体51に別体の部品を取り付けて形成するだけでなく、この蓋本体51と一体に形成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、例えば、デジタルスチルカメラに備える電池収納装置及びその電池用蓋装置として適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施の形態の電池用蓋装置を備えた電池収納装置の一部を示し、(a)は同上電池用蓋装置の仮閉塞状態での誤挿入された電池の正極端子と凹部との位置関係を示す平面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図2】同上電池収納装置の一部を示し、(a)は同上電池用蓋装置の閉塞状態での誤挿入された電池の正極端子と凹部との位置関係を示す平面図、(b)は(a)のB−B断面図である。
【図3】同上電池用蓋装置の閉塞状態での正しく挿入された電池の負極端子と導通部との位置関係を示す平面図である。
【図4】(a)は同上電池用蓋装置を示す平面図、(b)は(a)のC−C断面図である。
【図5】同上電池収納装置を備えた電気機器の電池用蓋装置を開いた状態を示す斜視図である。
【図6】同上電気機器の電池用蓋装置を閉じた状態を示す底面図である。
【図7】同上電池収納装置の縦断面図である。
【図8】同上電池の誤挿入状態での図6のD−D断面図である。
【図9】従来例の電池用蓋装置を備えた電池収納装置に収納される電池の一部の寸法公差を示す説明図である。
【図10】同上電池収納装置の一部を示し、(a)は同上電池用蓋装置の閉塞状態での正しく挿入された電池の負極端子と導通部との位置関係を示す説明断面図、(b)は同上電池用蓋装置の閉塞状態での誤挿入された電池の正極端子と導通部との位置関係を示す説明断面図である。
【図11】同上電池用蓋装置の閉塞状態での誤挿入された最小許容寸法の電池の動きによる正極端子と導通部との位置関係を示し、(a)は同上電池が収納部内で一側に偏った状態を示す説明断面図、(b)は同上電池が収納部内で他側に偏った状態を示す説明平面図である。
【符号の説明】
【0058】
24 電池収納装置としての電池ボックス
32 電池用蓋装置
34 電池
35a 収納部
36 挿入口
42 第1端子である負極端子
43 第2端子である正極端子
51 蓋本体
54a 導通部としての導通領域
64 凹部としての正極ガード溝
66 被挿入部としてのガイド領域
67 保持部としての収納領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正負いずれかの極性を備えた第1端子およびこの第1端子よりも外径寸法が小さくこの第1端子と逆の極性を備えた第2端子を有する電池を挿入可能な挿入口を備えた収納部に対して、前記挿入口の少なくとも一部を覆う仮閉塞状態から所定方向へと摺動させることで前記挿入口全体を覆った状態でこの挿入口に対して固定されて前記収納部に電池を保持する電池用蓋装置であって、
前記所定方向へと摺動可能な蓋本体と、
この蓋本体に設けられ、前記第2端子が挿入可能で、かつ、前記第1端子が挿入不可能な凹部と、
前記蓋本体の前記凹部の外部に設けられ、前記第1端子と接触して導通可能な導通部とを具備し、
前記凹部は、
前記収納部に誤挿入した電池の前記挿入口に臨む前記第2端子が前記仮閉塞状態で挿入される被挿入部と、
この被挿入部に連続して形成され、この被挿入部に前記仮閉塞状態で挿入された電池の前記第2端子を前記蓋本体の摺動によって相対的に案内して保持する保持部とを備えている
ことを特徴とする電池用蓋装置。
【請求項2】
導通部は、保持部の周囲の少なくとも一部に沿って形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の電池用蓋装置。
【請求項3】
電池を挿入可能な挿入口を備えた収納部と、
少なくとも所定方向への摺動動作によって前記挿入口を閉塞可能な請求項1または2記載の電池用蓋装置と
を具備したことを特徴とする電池収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−176461(P2009−176461A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11364(P2008−11364)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(508176957)フレクストロニクス エイピー エルエルシー (21)
【氏名又は名称原語表記】FLEXTRONICS AP,LLC
【Fターム(参考)】