電波制御装置、電波制御システムおよび電波制御方法
【課題】通信領域内のRFIDタグ等の無線通信機器と効率的に通信することができる。
【解決手段】電波制御装置1は、所定電波を複数の照射方向ごとに照射する電波照射部2による照射範囲内にある通信対象機器以外の物体を検知する検知部10と、所定電波を通じて通信対象機器が通信可能となる所定の通信範囲全てを照射し、且つ、所定電波が検知部10によって検知された物体で反射することで発生する通信不可部分が通信範囲内に発生しないように、複数の照射方向ごとの照射範囲を決定する照射範囲決定部20とを備える。
【解決手段】電波制御装置1は、所定電波を複数の照射方向ごとに照射する電波照射部2による照射範囲内にある通信対象機器以外の物体を検知する検知部10と、所定電波を通じて通信対象機器が通信可能となる所定の通信範囲全てを照射し、且つ、所定電波が検知部10によって検知された物体で反射することで発生する通信不可部分が通信範囲内に発生しないように、複数の照射方向ごとの照射範囲を決定する照射範囲決定部20とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波制御装置、電波制御システムおよび電波制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency IDentification)タグや非接触型IC(Integrated Circuit)カードや携帯端末装置(携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistants))等の無線通信機器と、リーダライタやアクセスポイント等のアンテナを介して通信するシステムが使用されている。例えば、RFIDタグを利用した物品の認識システムや管理システム等が広い分野で普及している。RFIDとは、タグとリーダライタとが電波や電磁波等の無線を利用して通信し、人や物などを認識したり管理したりする技術である。
【0003】
このRFIDタグとの通信には、例えば電波の照射角度が広い無指向性アンテナが一般的に使用されている。図12は、無指向性アンテナを使用した電波制御システムを示す説明図である。図12に示す電波制御システムでは、無指向性アンテナからの直接波BWと床面で反射した反射波aWとが干渉する、いわゆるマルチパス干渉により、無指向性アンテナがRFIDタグと通信できない通信不可部分(例えば、「ヌル点」を含む。)が通信領域内に発生することが考えられる。
【0004】
そこで、マルチパス干渉の影響を低減するために、指向性が強い可変ビームアンテナを使用した電波制御システムが用いられている。図13は、可変ビームアンテナを使用した電波制御システムを示す説明図である。図13に示す電波制御システムでは、可変ビームアンテナが照射する1つの照射方向の通信領域が狭いため、床面や天井面での反射を考慮して照射方向を選択することで通信領域内での通信不可部分が発生しにくく、マルチパス干渉の影響を極力回避することができる。
【0005】
また、このような可変ビームアンテナが、最も強い反射波の生じる反射面である床面と交わるように電波を照射することにより通信不可部分の発生を低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−20083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、強い指向性を持ったビームアンテナでは、RFIDタグとの通信領域内に通信不可部分が発生しない状況下であっても、RFIDタグとの通信を効率的に行うことができないという問題がある。
【0008】
すなわち、強い指向性を持ったビームアンテナでは、電波を照射する方向を、時間をずらして順次切り替えることになるため、RFIDタグとの通信領域内を全て照射するには、照射方向の数だけ時間を要する。このため、通信領域内をRFIDタグが移動しているような場合には、読みこぼしが発生することもあり、RFIDタグと効率的に通信することができない。
【0009】
また、強い指向性を持ったビームアンテナがRFIDタグと通信する場合に、通信領域を広げるために常に最大電力にして電波を照射することも考えられるが、周辺の他のRFIDシステムに対する干渉の影響を考えると、照射する電波の電力はなるべく小さくすることが望ましい。なお、上述の問題等は、RFIDシステム以外の無線通信機器とアンテナを介して通信するシステムでも同様である。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、通信領域内のRFIDタグ等の無線通信機器と効率的に通信することができるような電波制御装置、電波制御システムおよび電波制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した問題を解決し、目的を達成するために、電波制御装置は、所定電波を複数の照射方向ごとに照射する電波照射部による照射範囲内にある通信対象機器以外の物体を検知する検知部と、前記所定電波を通じて前記通信対象機器が通信可能となる所定の通信範囲全てを照射し、且つ、前記所定電波が前記物体で反射することで発生する通信不可部分が前記通信範囲内に発生しないように、前記複数の照射方向ごとの照射範囲を決定する照射範囲決定部とを備えた構成を採る。
【発明の効果】
【0012】
以上により、電波制御装置、電波制御システムおよび電波制御方法は、強い指向性の電波照射部を使用して所定の通信範囲内に通信不可部分が発生しない状況下でも、強い指向性を持った電波照射部からの電波で通信対象機器と効率的に通信できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施例1に係る電波制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図2は、反射物により通信不可部分の発生を示す図である。
【図3】図3は、実施例2に係る電波制御システムの構成を示す図である。
【図4】図4は、赤外センサーを用いた物体の距離の測定方法を示す図である。
【図5】図5は、実施例2に係る電波制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図6】図6は、実施例2に係る電波制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】図7は、実施例2に係る照射方向決定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】図8は、実施例2に係る照射方向電波出力決定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、実施例3に係る電波制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図10】図10は、実施例3に係る電波制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】図11は、電波制御システムの他の用途を示す図である。
【図12】図12は、従来の無指向性アンテナを使用した電波制御システムを示す図である。
【図13】図13は、従来の可変ビームアンテナを使用した電波制御システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る電波制御装置、電波制御システムおよび電波制御方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0015】
図1は、本実施例に係る電波制御装置の構成を示す機能ブロック図である。図1に示すように、電波制御装置1は、指向性の強い電波照射部2と接続され、この電波照射部2を制御する装置である。さらに、電波制御装置1は、検知部10と、照射範囲決定部20と、を備える。なお、電波照射部2には、例えばビームアンテナが挙げられる。
【0016】
検知部10は、電波を複数の照射方向ごとに照射する電波照射部2から照射する照射範囲内にある通信対象機器以外の物体を検知する。
【0017】
電波の照射方向の照射範囲内に物体が存在すると、その物体による電波の反射で照射範囲内に通信不可部分(例えば、「ヌル点」を含む。)が発生する場合がある。電波の照射方向の照射範囲内に存在する物体によって通信不可部分が発生する場合について説明する。図2は、物体(反射物)により通信不可部分の発生する場合を示す図である。図2に示す電波制御システムでは、ビームアンテナ2aから照射される電波の照射方向の照射範囲内に反射物10aが存在するとき、電波が反射物10aで反射した反射波および直接波でマルチパス干渉が生じる。マルチパス干渉が生じて電波の強度が小さくなる領域a1〜a4では、ビームアンテナ2aは通信対象機器との通信をすることができない。
【0018】
例えば、通信対象機器とビームアンテナ2aとの通信範囲20bでは、その通信範囲20bに通信不可部分a3、a4が発生しているため、ビームアンテナ2aは通信対象機器と通信することができないおそれがある。一方、例えば、通信対象機器とビームアンテナ2aとの通信範囲20aでは、その通信範囲20aに通信不可部分が発生していないため、ビームアンテナ2aは通信対象機器と通信することができる。
【0019】
そこで、通信対象機器との通信範囲に通信不可部分が発生しないことを確認するために、電波の照射方向の照射範囲内に物体が存在するか否かをあらかじめ検知する。
【0020】
なお、通信対象機器とは、電波照射部2の通信対象である通信機器であり、例えばRFIDタグが挙げられる。また、電波は、953MHzのUHF帯であっても良いし、2.45GHzのマイクロ波帯であっても良く、これらに限定されるものではない。さらに、電波を電磁波に代えても良い。
【0021】
照射範囲決定部20は、電波を通じて通信対象機器と通信可能となる通信範囲全てを照射し、且つ、電波が検知部10によって検知された物体で反射することで発生する通信不可部分が当該通信範囲内に発生しないように、複数の照射方向ごとの照射範囲を決定する。
【0022】
これにより、電波制御装置1は、通信不可部分が発生しないように、例えば電波の照射方向の有無を決定することで、電波照射部2が通信対象機器と通信可能な照射方向に迅速に移行させることができることとなり、電波照射部2に通信対象機器と効率的に通信させることができる。
【0023】
また、電波制御装置1は、通信不可部分が発生しないように、例えば複数の照射方向ごとの電波の出力を決定することで、各照射方向の電波が周辺の他のビームアンテナの照射範囲への干渉を抑制可能とすることができ、周辺の他の電波照射部2に対するマルチパス干渉の影響を抑制した効率的な通信を実現することができる。
【実施例2】
【0024】
ところで、実施例1に係る電波制御装置1は、通信対象機器と通信する電波照射部2を制御する場合について説明したが、電波制御装置1が、RFIDタグと通信するビームアンテナを制御しても良い。
【0025】
そこで、実施例2では、電波制御装置1が、RFIDタグと通信するビームアンテナを制御する電波制御システムについて説明する。
【0026】
まず、実施例2に係る電波制御装置1を含む電波制御システム9の構成について図3を参照しながら説明する。図3は、実施例2に係る電波制御システム9の構成を示す図である。
【0027】
電波制御システム9は、電波制御装置1、ビームアンテナ2a、リーダライタ3および赤外センサー4を備える。
【0028】
電波制御装置1は、RFIDタグ5と通信するビームアンテナ2aを制御する。具体的には、電波制御装置1は、ビームアンテナ2aから照射される電波の複数の照射方向内の範囲のうち、ビームアンテナ2aから反射物10aまでの距離を含むセンサー情報を赤外センサー4から検知する。この反射物10aは、RFIDタグ5が付いていない物体を指すものとする。
【0029】
また、電波制御装置1は、検知したセンサー情報に基づいて、電波の複数の照射方向の照射範囲を合成して形成される範囲(以降、「合成照射範囲」という。)内に、ビームアンテナ2aによってRFIDタグ5を通信可能とする範囲(以降、「タグ通信範囲」という。)が含まれ、且つ、タグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないか否かを判定する。なお、タグ通信範囲に通信不可部分が発生していないか否かは、タグ通信範囲の位置ごとに、例えばビームアンテナ2aからの電波に対する電界強度分布を計算することによって行う。
【0030】
次に、電波制御装置1は、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないと判定された場合、タグ通信範囲に通信不可部分が発生しないように複数の照射方向の中から照射方向を間引くことで、ビームアンテナ2aの照射方向を決定する。また、電波制御装置1は、決定した照射方向を制御情報としてビームアンテナ2aに通知する。
【0031】
さらに、電波制御装置1は、複数の照射方向ごとに電波出力を最大値からタグ通信範囲に通信不可部分が発生しないように所定値単位で減らすことで、複数の照射方向ごとの電波出力を決定する。また、電波制御装置1は、決定した複数の照射方向ごとの電波出力値を制御情報としてビームアンテナ2aに通知する。
【0032】
なお、電波制御装置1は、複数の照射方向ごとに電波出力を最小値からタグ通信範囲に通信不可部分が発生しないように所定値単位で増やすことで、複数の照射方向ごとの電波出力を決定しても良い。
【0033】
ビームアンテナ2aは、複数の指向性を可変にするアンテナであり、複数の各照射方向に時間をずらして切り替えて、切り替えた照射方向に電波を照射する。具体的には、ビームアンテナ2aは、電波制御装置1から制御情報を取得すると、取得した制御情報に含まれる照射方向を用いて電波を照射する。また、ビームアンテナ2aは、電波制御装置1から制御情報を取得すると、取得した制御情報に含まれる、複数の照射方向ごとの電波出力値を用いて電波を照射する。
【0034】
リーダライタ3は、ビームアンテナ2aと接続し、RFIDタグ5に対して、ビームアンテナ2aが照射する電波を通じて読み書きする。
【0035】
赤外センサー4は、電波を照射する複数の照射方向の照射範囲内にある物体のビームアンテナ2aからの距離を、赤外線を用いて測定する距離センサーである。ここで、赤外センサーを用いて物体(反射物)までの距離を測定する方法について説明する。図4は、赤外センサーを用いた物体の距離の測定方法を示す図である。図4に示す赤外センサー4では、赤外線を照射する角度を変化させて赤外線を照射して、照射方向の照射範囲内に存在する反射物10aで反射した反射波を受光して、ビームアンテナ2aから反射物10aまでの距離を測定する。
【0036】
なお、距離センサーは赤外センサー4であるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、超音波センサーであっても良いし、ミリ波センサーであっても良いし、ステレオカメラまたは単眼カメラ等の画像センサーであっても良い。
【0037】
次に、実施例2に係る電波制御装置1の構成について図5を参照しながら説明する。図5は、実施例2に係る電波制御装置1の構成を示す機能ブロック図である。なお、図1に示す電波制御装置1と同一の構成については同一符号を付すことで、その重複する構成および動作の説明については省略する。実施例1と実施例2とが異なるところは、照射範囲決定部20に、通信範囲通信可否確認部21、照射方向判定部22、照射方向決定部23、照射方向電波出力判定部24および照射方向電波出力決定部25を追加した点にある。
【0038】
検知部10は、電波を複数の照射方向ごとに照射するビームアンテナ2aによる照射範囲内にある反射物10aを検知する。また、検知部10は赤外線センサーによりほぼ連続的な走査を行い、反射物10aや床面等に対する距離測定結果に基づいて反射物10aの位置および形状に関する情報を入手する。
【0039】
通信範囲通信可否確認部21は、検知部10によって検知された反射物10aの位置および形状の情報に基づいて、電波を照射する複数の照射方向の照射範囲から形成されるビームアンテナ2aによる合成照射範囲内のうち、RFIDタグ5を通信可能とするタグ通信範囲に通信不可部分が発生していないか否かを判定する。
【0040】
具体的には、通信範囲通信可否確認部21は、電波を照射する複数の照射方向ごとに、通信不可部分の有無および位置を求めるために、ビームアンテナ2aから照射される電波の電界強度分布を検知部10で検出された反射物10aの位置および形状、また床面や天井等その他の反射物の位置および形状の情報を元に計算する。このとき、通信範囲通信可否確認部21は、通信不可部分を可能な限り発生させないように、複数の照射方向ごとの電波出力値を最大値として計算するものとする。
【0041】
また、通信範囲通信可否確認部21は、合成照射範囲内の通信不可部分の位置を求めるために、複数の照射方向の照射範囲ごとに計算した電界強度分布に基づいて、これらの照射範囲から形成される合成照射範囲の電界強度分布を計算する。また、通信範囲通信可否確認部21は、合成照射範囲の電界強度分布に基づいて、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないか否かを判定する。
【0042】
そして、通信範囲通信可否確認部21は、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないと判定する場合には、タグ通信範囲内でRFIDタグ5と通信可能であると判断して、照射方向の決定を促すメッセージを照射方向判定部22に通知する。一方、通信範囲通信可否確認部21は、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれないか、またはタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していると判定する場合には、通信不可部分があることを警告するために、例えばタグ通信範囲内の通信不可部分の位置をモニターに表示する。
【0043】
照射方向判定部22は、複数の照射方向の中から順次照射方向を間引いて、間引いた結果、タグ通信範囲内に通信不可部分が発生するか否かを判定する。
【0044】
具体的には、照射方向判定部22は、複数の照射方向の中から順番に1つずつ照射方向を間引いて、間引いた照射方向以外の残りの照射方向の照射範囲から形成される合成照射範囲の電界強度分布を計算する。ただし、照射方向判定部22は、後記する照射方向決定部23から一定の照射方向を間引く旨の決定結果を取得すると、複数の照射方向の中からこの一定の照射方向も間引いた残りの照射方向を電界強度分布の計算対象とする。また、照射方向判定部22は、計算した合成照射範囲の電界強度分布に基づいて、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないか否かを判定し、間引いた照射方向に関する判定結果を照射方向決定部23に通知する。
【0045】
なお、照射方向判定部22は、複数の照射方向の中から順番に1つずつ照射方向を間引くものとしたが、これに限定されるものではなく、複数の照射方向のうち照射範囲の重なりの大きいいずれかの照射方向を優先的に間引いても良いし、照射方向の照射範囲を2次元の方向に間引いても良い。さらに、照射方向判定部22は、最適化問題を解くためのアルゴリズムを用いて、照射方向を間引いても良い。
【0046】
照射方向決定部23は、間引いた照射方向に関する判定結果に基づいて、当該照射方向を間引くか否かを決定する。
【0047】
具体的には、照射方向決定部23は、間引いた照射方向に関する判定結果が、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないと判定する結果の場合には、当該照射方向を間引くことを決定する。また、照射方向決定部23は、間引いた照射方向に関する判定結果が、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれていないか、またはタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していると判定する結果の場合には、当該照射方向を間引かないことを決定する。
【0048】
また、照射方向決定部23は、複数の照射方向の全照射方向について間引くか否かを決定していない場合には、次の照射方向の判定を促すために、決定された照射方向に関する間引くか否かの決定結果を通知する。一方、照射方向決定部23は、複数の照射方向の全照射方向について間引くか否かを決定した場合には、複数の照射方向の中から間引くと決定された照射方向以外の残りの照射方向を、ビームアンテナ2aの照射方向として決定して照射方向電波出力判定部24に通知する。
【0049】
このようにして、照射方向決定部23は、タグ通信範囲内に通信不可部分が発生しないような最適な照射方向を決定する。
【0050】
照射方向電波出力判定部24は、複数の照射方向ごとに電波出力を最大値から1ステップずつ減らして、減らした結果、タグ通信範囲内に通信不可部分が発生するか否かを判定する。
【0051】
具体的には、照射方向電波出力判定部24は、ビームアンテナ2aの照射方向として決定された全照射方向を照射方向決定部23から取得すると、全照射方向の中から順番に1つずつ照射方向を選択して、選択した照射方向の電波出力を最大値から1ステップずつ減じる。なお、電波出力とは、電波の強度であるものとする。例えば、1ステップは、1デシベル(dB)であっても良いし、さらに細かく調整を希望する場合には0.5dBであっても良く、逆に荒く調整を希望する場合には3dBであっても良く、これに限定されるものではない。
【0052】
そして、照射方向電波出力判定部24は、選択した照射方向については減じた電波出力値を用いて、選択した照射方向以外の残りの照射方向については最大の電波出力値または後記する照射方向電波出力決定部25によって決定された電波出力値を用いて、全照射方向から形成される合成照射範囲の電界強度分布を計算する。
【0053】
また、照射方向電波出力判定部24は、計算した合成照射範囲の電界強度分布に基づいて、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないか否かを判定し、選択した照射方向に関する判定結果を照射方向電波出力決定部25に通知する。
【0054】
照射方向電波出力決定部25は、選択した照射方向に関する判定結果に基づいて、当該照射方向の電波出力値を決定する。
【0055】
具体的には、照射方向電波出力決定部25は、選択した照射方向に関する判定結果が、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないと判定される結果の場合には、さらに電波出力を減らせる可能性があるため、選択した照射方向の電波出力をさらに減じる旨を照射方向電波出力判定部24に通知する。一方、照射方向電波出力決定部25は、選択した照射方向に関する判定結果が、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれていないか、またはタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していると判定される結果の場合には、選択した照射方向の電波出力を、減じる前の電波出力値に決定する。これは、タグ通信範囲内に通信不可部分が発生しなかったと判定された最小の電波出力を電波出力値とするものである。
【0056】
また、照射方向電波出力決定部25は、全照射方向について電波出力を決定していない場合には、次の照射方向の判定を促すために、選択した照射方向の決定された電波出力値を照射方向電波出力判定部24に通知する。一方、照射方向電波出力決定部25は、全照射方向について電波出力値を決定した場合には、照射方向決定部23によって決定された全照射方向に関するそれぞれの電波出力値を制御情報として、ビームアンテナ2aに通知する。
【0057】
次に、実施例2に係る電波制御装置の処理手順を、図6を参照して説明する。図6は、
実施例2に係る電波制御装置1の処理手順を示すフローチャートである。
【0058】
まず、通信範囲通信可否確認部21は、電波を照射する複数の照射方向の中から1つの照射方向を選択する(ステップS11)。
【0059】
次に、通信範囲通信可否確認部21は、ビームアンテナ2aから検知部10によって検知された反射物10aまでの距離に基づいて、選択した照射方向の照射範囲の電界強度分布を、電波出力値を最大値にして計算する(ステップS12)。
【0060】
引き続き、通信範囲通信可否確認部21は、複数の照射方向全ての電界強度分布を計算したか否かを判定する(ステップS13)。そして、通信範囲通信可否確認部21は、複数の照射方向全ての電界強度分布を計算していないと判定する場合には(ステップS13No)、次の照射方向を選択して(ステップS14)、ステップS12に遷移する。
【0061】
一方、通信範囲通信可否確認部21は、複数の照射方向全ての電界強度分布を計算したと判定する場合には(ステップS13Yes)、複数の照射方向全ての電界強度分布に基づいて、複数の照射方向の照射範囲から形成される合成照射範囲の電界強度分布を計算する(ステップS15)。
【0062】
次に、通信範囲通信可否確認部21は、合成照射範囲内の電界強度分布に基づいて、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないか否かを判定する(ステップS16)。そして、通信範囲通信可否確認部21は、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれないか、またはタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していると判定する場合には(ステップS16No)、タグ通信範囲内の通信不可部分の位置をモニターに表示して(ステップS17)、処理を終了する。
【0063】
一方、通信範囲通信可否確認部21は、合成照射範囲内の電界強度分布に基づいて、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないと判定する場合には(ステップS16Yes)、照射方向の決定を促すメッセージを照射方向判定部22に通知する。
【0064】
次に、実施例2に係る照射方向決定処理の処理手順を、図7を参照して説明する。図7は、実施例2に係る照射方向決定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0065】
まず、通信範囲通信可否確認部21から照射方向の決定を促すメッセージを取得した照射方向判定部22は、複数の照射方向の中から1つの照射方向を選択する(ステップS21)。
【0066】
次に、照射方向判定部22は、選択した照射方向と既に間引くことが決定された照射方向とを間引いて、間引いた照射方向以外の残りの照射方向の照射範囲から形成される合成照射範囲の電界強度分布を計算する(ステップS22)。
【0067】
引き続き、照射方向判定部22は、計算した合成照射範囲の電界強度分布に基づいて、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないか否かを判定する(ステップS23)。そして、照射方向決定部23は、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していない場合には(ステップS23Yes)、選択した照射方向を間引くことを決定する(ステップS24)。
【0068】
一方、照射方向決定部23は、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれていないか、若しくはタグ通信範囲内に通信不可部分が発生している場合(ステップS23No)、または選択した照射方向を間引くことを決定した後、複数の全照射方向について間引くか否かの決定をするための計算を終了したか否かを判定する(ステップS25)。
【0069】
そして、照射方向決定部23は、複数の全照射方向について間引くか否かの決定をするための計算を終了していないと判定する場合には(ステップS25No)、次の照射方向を選択して(ステップS26)、ステップS22に遷移する。
【0070】
一方、照射方向決定部23は、複数の全照射方向について間引くか否かの決定をするための計算を終了していると判定する場合には(ステップS25Yes)、間引くことが決定された照射方向以外の残りの照射方向を、照射方向電波出力判定部24に通知する。
【0071】
次に、実施例2に係る照射方向電波出力決定処理の処理手順を、図8を参照して説明する。図8は、実施例2に係る照射方向電波出力決定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0072】
まず、照射方向決定部23から照射方向として決定された全照射方向を取得した照射方向電波出力判定部24は、複数の照射方向の中から1つの照射方向を選択する(ステップS31)。
【0073】
次に、照射方向電波出力判定部24は、選択した照射方向については1ステップ減じた電波出力値を用いて、選択した照射方向以外の残りの照射方向については最大の電波出力値または既に決定された電波出力値を用いて、全照射方向の照射範囲から形成される合成照射範囲の電界強度分布を計算する(ステップS32)。
【0074】
引き続き、照射方向電波出力判定部24は、計算した合成照射範囲の電界強度分布に基づいて、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないか否かを判定する(ステップS33)。
【0075】
そして、照射方向電波出力決定部25は、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないと判定する場合には(ステップS33Yes)、さらに電波出力を減らせる可能性があると判断して、ステップS32に遷移する。
【0076】
一方、照射方向電波出力決定部25は、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれていないか、またはタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していると判定する場合には(ステップS33No)、タグ通信範囲内に通信不可部分が発生しない電波出力値の限界を超えたものと判断して、選択した照射方向の電波出力値を減じる前の電波出力値に決定する。
【0077】
引き続き、照射方向電波出力決定部25は、全照射方向について電波出力値の決定をするための計算を終了したか否かを判定する(ステップS34)。
【0078】
そして、照射方向電波出力決定部25は、全照射方向について電波出力値の決定をするための計算を終了していないと判定する場合には(ステップS34No)、次の照射方向を選択して(ステップS35)、ステップS32に遷移する。
【0079】
一方、照射方向電波出力決定部25は、全照射方向について電波出力値の決定をするための計算を終了したと判定する場合には(ステップS34Yes)、全照射方向に関するそれぞれの電波出力値を制御情報として、ビームアンテナ2aに通知する。
【0080】
以上のように本実施例2によれば、電波制御装置1は、電波を複数の照射方向ごとに照射するビームアンテナ2aによる照射範囲内にあるRFIDタグ5が付いていない物体を検知する。そして、電波制御装置1は、電波を通じてRFIDタグ5が通信可能となるタグ通信範囲全てを照射し、且つ、電波が検知された物体で反射することで発生する通信不可部分がタグ通信範囲内に発生しないように、複数の照射方向の中から照射方向を間引くことで、複数の照射方向ごとの照射有無を決定するようにした。さらに、電波制御装置1は、電波を通じてRFIDタグ5が通信可能となるタグ通信範囲全てを照射し、且つ、電波が検知された物体で反射することで発生する通信不可部分がタグ通信範囲内に発生しないように、複数の照射方向ごとの電波出力を最大値から所定値ずつ減じることで、複数の照射方向ごとの電波出力を決定するようにした。
【0081】
かかる構成によれば、電波制御装置1は、通信不可部分がタグ通信範囲内に発生しないように電波の照射方向の有無を決定することで、ビームアンテナ2aがRFIDタグ5と通信可能な照射方向に迅速に移行させることができることとなり、ビームアンテナ2aにRFIDタグ5と効率的に通信させることができる。
【0082】
また、電波制御装置1は、通信不可部分がタグ通信範囲内に発生しないように複数の照射方向ごとの電波の出力を決定することで、各照射方向の電波が周辺の他のビームアンテナの照射範囲への干渉を抑制可能とすることができ、周辺の他のビームアンテナに対するマルチパス干渉の影響を抑制した効率的な通信を実現することができる。
【0083】
さらに、電波制御装置1は、通信不可部分がタグ通信範囲内に発生しないように複数の照射方向ごとの電波の出力を決定することで、無駄な電力消費を大幅に軽減することができる。
【実施例3】
【0084】
ところで、実施例2に係る電波制御装置1は、照射方向および照射方向に照射する電波出力をそれぞれ徐々に減じることで、タグ通信範囲内に通信不可部分が発生しないような最適な照射方向および電波出力を決定する場合を説明した。電波制御装置1は、これに限定されるものではなく、照射方向および照射方向の照射する電波出力をそれぞれ徐々に増加することで、タグ通信範囲内に通信不可部分が発生しないような最適な照射方向および電波出力を決定しても良い。
【0085】
そこで、実施例3では、電波制御装置1が、照射方向および照射方向に照射する電波出力をそれぞれ徐々に増加することで、タグ通信範囲内に通信不可部分が発生しないような最適な照射方向および電波出力を決定する場合を説明する。
【0086】
まず、実施例3に係る電波制御装置1の構成について説明する。図9は、実施例3に係る電波制御装置の構成を示す機能ブロック図である。なお、図5に示す電波制御装置1と同一の構成については同一符号を付すことで、その重複する構成および動作の説明については省略する。実施例2と実施例3とが異なるところは、照射範囲決定部20から照射方向判定部22および照射方向決定部23を削除し、照射方向電波出力判定部41および照射方向電波出力決定部42を変更した点にある。
【0087】
照射方向電波出力判定部41は、電波を照射する複数の照射方向の中から順次照射方向を増加する都度、増加した照射方向の電波出力を最小値から1ステップずつ増加し、増加するごとに、タグ通信範囲内の照射範囲が所定レベル以上ずつ増加しているか否かを判定する。
【0088】
具体的には、照射方向電波出力判定部41は、複数の照射方向の中から順番に1つずつ照射方向を選択して、選択した照射方向と後記する照射方向電波出力決定部42によって電波出力値が決定された照射方向とから形成される合成照射範囲の電界強度分布を計算する。この選択された照射方向の電波出力の値は、最小値から1ステップずつ増加されるものとする。
【0089】
なお、電波出力とは、電波の強度であるものとする。例えば、1ステップは、1デシベル(dB)であっても良いし、さらに細かく調整を希望する場合には0.5dBであっても良く、逆に荒く調整を希望する場合には3dBであっても良く、これに限定されるものではない。
【0090】
また、照射方向電波出力判定部41は、計算した電界強度分布に基づいて、電波出力増加後のタグ通信範囲内の照射範囲が電波出力増加前の照射範囲よりも所定レベル以上増加しているか否かを判定し、選択された照射方向に関する判定結果を照射方向電波出力決定部42に通知する。
【0091】
照射方向電波出力決定部42は、選択された照射方向に関する判定結果に基づいて、当該照射方向の電波出力値を決定する。
【0092】
具体的には、照射方向電波出力決定部42は、選択された照射方向に関する判定結果が、電波出力増加後のタグ通信範囲内の照射範囲が電波出力増加前の照射範囲よりも所定レベル以上増加していると判定される結果の場合には、選択された照射方向の照射範囲が飽和状態になっていないと判断して、電波出力をさらに増加する旨を照射方向電波出力判定部41に通知する。
【0093】
一方、照射方向電波出力決定部42は、選択された照射方向に関する判定結果が、電波出力増加後のタグ通信範囲内の照射範囲が電波出力増加前の照射範囲よりも所定レベル以上増加していないと判定される結果の場合には、選択された照射方向の照射範囲が飽和状態になったと判断して、選択された照射方向の電波出力を、増加前の電波出力値に決定する。なお、選択された照射方向が初回の判定の場合、すなわち増加前の電波出力値が零の場合には、既に他の照射方向によって照射範囲が飽和状態になっていると判断して、選択された照射方向に照射しないものとしても良い。
【0094】
また、照射方向電波出力決定部42は、照射方向電波出力判定部41によって計算された合成照射範囲内の電界強度分布に基づいて、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないか否かを判定する。照射方向電波出力決定部42は、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないと判定する場合には、決定された全照射方向に関するそれぞれの電波出力値を制御情報として、ビームアンテナ2aに通知する。
【0095】
一方、照射方向電波出力決定部42は、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれていないか、またはタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していると判定する場合には、全照射方向を選択対象としたか否かを判定する。そして、照射方向電波出力決定部42は、全照射方向を選択対象としていないと判定する場合には、選択対象としていない照射方向の選択を促すメッセージを照射方向電波出力判定部41に通知する。一方、照射方向電波出力決定部42は、全照射方向を選択対象としたと判定する場合には、タグ通信範囲内に通信不可部分が発生しているため、例えばタグ通信範囲内の通信不可部分の位置をモニターに表示する。
【0096】
次に、実施例3に係る電波制御装置の処理手順を、図10を参照して説明する。図10は、実施例3に係る電波制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【0097】
まず、通信範囲通信可否確認部21から照射方向の決定を促すメッセージを取得した照射方向電波出力判定部41は、すべての照射方向の電波出力を零にする(ステップS41)。
【0098】
次に、照射方向電波出力判定部41は、複数の照射方向の中から1つの照射方向を選択する(ステップS42)。
【0099】
次に、照射方向電波出力判定部41は、選択した照射方向と既に電波出力値が決定された照射方向とから形成される合成照射範囲の電界強度分布を計算する(ステップS43)。このとき、照射方向電波出力判定部41は、選択した照射方向の電波出力を1ステップ増加した値を用いるものとする。
【0100】
さらに、照射方向電波出力判定部41は、計算した合成照射範囲の電界強度分布に基づいて、電波出力増加後のタグ通信範囲内の照射範囲が電波出力増加前の照射範囲よりも
所定レベル以上増加しているか否かを判定する(ステップS44)。
【0101】
そして、照射方向電波出力決定部42は、電波出力増加後のタグ通信範囲内の照射範囲が電波出力増加前の照射範囲よりも所定レベル以上増加していると判定する場合には(ステップS44Yes)、選択された照射方向の照射範囲が飽和状態になっていないと判断して、ステップS43に遷移する。
【0102】
一方、照射方向電波出力決定部42は、電波出力増加後のタグ通信範囲内の照射範囲が電波出力増加前の照射範囲よりも所定レベル以上増加していないと判定する場合には(ステップS44No)、選択された照射方向の照射範囲が飽和状態になったと判断して、選択された照射方向の電波出力を、増加前の電波出力値に決定する。なお、照射方向電波出力決定部42は、増加前の電波出力値が零である場合には、既に他の照射方向によって照射範囲が飽和状態になっていると判断して、選択された照射方向に照射しないものとしても良い。
【0103】
引き続き、照射方向電波出力決定部42は、照射方向電波出力判定部41によって計算された合成照射範囲の電界強度分布に基づいて、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないか否かを判定する(ステップS45)。
【0104】
そして、照射方向電波出力決定部42は、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないと判定する場合には(ステップS45Yes)、決定された全照射方向に関するそれぞれの電波出力値を制御情報として、ビームアンテナ2aに通知して、処理を終了する。
【0105】
一方、照射方向電波出力決定部42は、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれていないか、またはタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していると判定する場合には(ステップS45No)、全照射方向を選択対象としたか否かを判定する(ステップS46)。
【0106】
そして、照射方向電波出力決定部42は、全照射方向を選択対象としていないと判定する場合には(ステップS46No)、次の照射方向を選択して(ステップS47)、ステップS43に遷移する。
【0107】
一方、照射方向電波出力決定部42は、全照射方向を選択対象としたと判定する場合には(ステップS46Yes)、タグ通信範囲内の通信不可部分の位置をモニターに表示して(ステップS48)、処理を終了する。
【0108】
以上のように本実施例3によれば、電波制御装置1は、電波を複数の照射方向ごとに照射するビームアンテナ2aによる照射範囲内にあるRFIDタグ5が付いていない物体を検知する。そして、電波制御装置1は、電波を通じてRFIDタグ5が通信可能となるタグ通信範囲全てを照射し、且つ、電波が検知された物体で反射することで発生する通信不可部分がタグ通信範囲内に発生しないように、各照射方向の電波出力を最小値から所定値ずつ増加することで電波出力を決定するようにした。言い換えれば、電波制御装置1は、電波出力が決定された照射方向を、RFIDタグ5と通信するために照射する照射方向として決定するようにした。
【0109】
かかる構成によれば、電波制御装置1は、通信不可部分がタグ通信範囲内に発生しないように複数の照射方向ごとの電波の出力を決定しながら照射方向を決定することで、効率的に適正化を図ることができる。
【0110】
かかる構成によれば、電波制御装置1は、通信不可部分がタグ通信範囲内に発生しないように電波の照射方向の有無を決定することで、ビームアンテナ2aがRFIDタグ5と通信可能な照射方向に迅速に移行させることができることとなり、ビームアンテナ2aにRFIDタグ5と効率的に通信させることができる。
【0111】
また、電波制御装置1は、通信不可部分がタグ通信範囲内に発生しない範囲で複数の照射方向ごとの電波の出力を決定することで、周辺の他のRFIDシステムに対する干渉の影響を抑制した通信を実現することができる。
【0112】
さらに、電波制御装置1は、通信不可部分をタグ通信範囲内に発生しないように複数の照射方向ごとの電波の出力を決定することで、無駄な電力消費を大幅に軽減することができる。
【0113】
なお、上記実施例における電波制御システム9では、例えばRFIDタグ5と通信するビームアンテナ2aを、電波制御装置1が制御するものとして説明したが、これに限定されるものではない。図11は、電波制御システムの他の用途を示す図である。図11に示す電波制御システムでは、子局と通信するビームアンテナを、親局が制御している。これにより、親局に電波制御装置1を備えるようにすれば、電波制御装置1は、所定の通信範囲内で通信不可部分が発生しないように電波の照射方向を決定することができ、ビームアンテナに子局と効率的に通信させることができる。
【0114】
また、上記実施例2において、照射方向判定部22および照射方向決定部23から構成される照射方向決定処理が、複数の照射方向の中からタグ通信範囲内に通信不可部分が発生しないように照射方向を決定し、続いて、照射方向電波出力判定部24および照射方向電波出力決定部25から構成される照射方向電波出力決定処理が、照射方向決定処理によって決定された照射方向の電波出力値を、タグ通信範囲内に通信不可部分が発生しないように決定するようにしたが、照射方向決定処理および照射方向電波出力決定処理のいずれか一方を行うようにしても良いし、処理順序を逆にして行うようにしても良い。
【0115】
以上、本発明の実施例について説明したが、本実施例によって本発明の技術的思想の範囲が限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した技術的範囲の範囲を逸脱しない限り、各種様々な実施例が実施可能であることは言うまでもない。また、本実施例に記載した効果は、これに限定されるものではない。
【0116】
また、図示した電波制御装置1の各構成要素は機能概念的に記載したものであって、必ずしも物理的に図示のように構成されるものではなく、その各装置の具体的な態様は図示のものに限縮されるものでは到底ないことは言うまでもない。
【0117】
なお、電波制御装置1にて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU(Central Processing Unit)(またはMPU(Micro Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)などのマイクロ・コンピュータ)および当該CPU(またはMPU、MCUなどのマイクロ・コンピュータ)にて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されても良い。
【0118】
以上の実施例に係る実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0119】
(付記1)所定電波を複数の照射方向ごとに照射する電波照射部による照射範囲内にある通信対象機器以外の物体を検知する検知部と、
前記所定電波を通じて前記通信対象機器が通信可能となる所定の通信範囲全てを照射し、且つ、前記所定電波が前記物体で反射することで発生する通信不可部分が前記通信範囲内に発生しないように、前記複数の照射方向ごとの照射範囲を決定する照射範囲決定部と
を有することを特徴とする電波制御装置。
【0120】
(付記2)前記照射範囲決定部は、
前記複数の照射方向の中から少なくとも1つの照射方向を間引くことで、前記複数の照射方向ごとの照射有無を決定することを特徴とする付記1に記載の電波制御装置。
【0121】
(付記3)前記照射範囲決定部は、
前記複数の照射方向の中から間引いた照射方向以外の残りの照射方向の照射範囲が、前記通信範囲全てを含み、且つ、前記通信不可部分が前記通信範囲内に発生していないか否かを判定する照射方向判定部と、
前記照射方向判定部によって前記照射範囲が、前記通信範囲全てを含み、且つ、前記通信不可部分が前記通信範囲内に発生していないと判定されるとき、前記複数の照射方向の中から間引いた照射方向以外の残りの照射方向を、前記電波照射部が前記通信対象機器と通信するために照射する照射方向として決定する照射方向決定部とを含むことを特徴とする付記2に記載の電波制御装置。
【0122】
(付記4)前記照射範囲決定部は、
所定電波を照射する照射方向の電波出力を最大値から所定値ずつ減じて、前記複数の照射方向ごとの電波出力を決定することを特徴とする付記1に記載の電波制御装置。
【0123】
(付記5)前記照射範囲決定部は、
複数の照射方向のうち1つの照射方向の電波出力を減じて、減じられた電波出力を用いた照射方向を含む照射範囲が、前記通信範囲全てを含んでいないか、または、前記通信不可部分が前記通信範囲内に発生しているか否かを判定する電波出力判定部と、
前記電波出力判定部によって前記照射範囲が、前記通信範囲全てを含んでいないか、または、前記通信不可部分が前記通信範囲内に発生していると判定されるとき、減じる前の電波出力を、当該照射方向の電波出力として決定する電波出力決定部とを含むことを特徴とする付記4に記載の電波制御装置。
【0124】
(付記6)前記照射範囲決定部は、
所定電波を照射する照射方向の電波出力を最小値から所定値ずつ増加して、前記複数の照射方向ごとの照射範囲を決定することを特徴とする付記1に記載の電波制御装置。
【0125】
(付記7)前記照射範囲決定部は、
複数の照射方向のうち1つの照射方向の電波出力を増加して、増加された電波出力を用いた照射方向を含む増加後の照射範囲が、増加前の照射範囲より所定レベル以上増加しているか否かを判定する電波出力判定部と、
前記電波出力判定部によって増加後の照射範囲が、増加前の照射範囲より所定レベル以上増加していないと判定されるとき、増加前の電波出力を当該照射方向の電波出力として決定する電波出力決定部とを含むことを特徴とする付記6に記載の電波制御装置。
【0126】
(付記8)前記電波出力決定部は、
増加前の電波出力が零であるとき、当該照射方向に照射しないことを決定することを特徴とする付記7に記載の電波制御装置。
【0127】
(付記9)前記通信対象機器は、
RFIDタグであることを特徴とする付記1から付記8のいずれか1つに記載の電波制御装置。
【0128】
(付記10)複数の照射方向に所定電波を照射するアンテナと、前記アンテナと接続される電波制御装置と、前記電波制御装置と接続され物体までの距離を測定する測定装置とを有する電波制御システムであって、
前記電波制御装置は、
所定電波を複数の照射方向ごとに照射する前記アンテナによる照射範囲内にある通信対象機器以外の物体を、前記測定装置を介して検知する検知部と、
前記所定電波を通じて前記通信対象機器が通信可能となる所定の通信範囲全てを照射し、且つ、前記所定電波が前記物体で反射することで発生する通信不可部分が前記通信範囲内に発生しないように、前記複数の照射方向ごとの照射範囲を決定する照射範囲決定部と
を有することを特徴とする電波制御システム。
【0129】
(付記11)所定電波を複数の照射方向ごとに照射する電波照射部による照射範囲内にある通信対象機器以外の物体を検知する検知工程と、
前記所定電波を通じて前記通信対象機器が通信可能となる所定の通信範囲全てを照射し、且つ、前記所定電波が前記物体で反射することで発生する通信不可部分が前記通信範囲内に発生しないように、前記複数の照射方向ごとの照射範囲を決定する照射範囲決定工程とを含むことを特徴とする電波制御方法。
【符号の説明】
【0130】
1 電波制御装置
2 電波照射部
2a ビームアンテナ
3 リーダライタ
4 赤外センサー
5 RFIDタグ
9 電波制御システム
10 検知部
20 照射範囲決定部
21 通信範囲通信可否確認部
22 照射方向判定部
23 照射方向決定部
24、41 照射方向電波出力判定部
25、42 照射方向電波出力決定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波制御装置、電波制御システムおよび電波制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency IDentification)タグや非接触型IC(Integrated Circuit)カードや携帯端末装置(携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistants))等の無線通信機器と、リーダライタやアクセスポイント等のアンテナを介して通信するシステムが使用されている。例えば、RFIDタグを利用した物品の認識システムや管理システム等が広い分野で普及している。RFIDとは、タグとリーダライタとが電波や電磁波等の無線を利用して通信し、人や物などを認識したり管理したりする技術である。
【0003】
このRFIDタグとの通信には、例えば電波の照射角度が広い無指向性アンテナが一般的に使用されている。図12は、無指向性アンテナを使用した電波制御システムを示す説明図である。図12に示す電波制御システムでは、無指向性アンテナからの直接波BWと床面で反射した反射波aWとが干渉する、いわゆるマルチパス干渉により、無指向性アンテナがRFIDタグと通信できない通信不可部分(例えば、「ヌル点」を含む。)が通信領域内に発生することが考えられる。
【0004】
そこで、マルチパス干渉の影響を低減するために、指向性が強い可変ビームアンテナを使用した電波制御システムが用いられている。図13は、可変ビームアンテナを使用した電波制御システムを示す説明図である。図13に示す電波制御システムでは、可変ビームアンテナが照射する1つの照射方向の通信領域が狭いため、床面や天井面での反射を考慮して照射方向を選択することで通信領域内での通信不可部分が発生しにくく、マルチパス干渉の影響を極力回避することができる。
【0005】
また、このような可変ビームアンテナが、最も強い反射波の生じる反射面である床面と交わるように電波を照射することにより通信不可部分の発生を低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−20083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、強い指向性を持ったビームアンテナでは、RFIDタグとの通信領域内に通信不可部分が発生しない状況下であっても、RFIDタグとの通信を効率的に行うことができないという問題がある。
【0008】
すなわち、強い指向性を持ったビームアンテナでは、電波を照射する方向を、時間をずらして順次切り替えることになるため、RFIDタグとの通信領域内を全て照射するには、照射方向の数だけ時間を要する。このため、通信領域内をRFIDタグが移動しているような場合には、読みこぼしが発生することもあり、RFIDタグと効率的に通信することができない。
【0009】
また、強い指向性を持ったビームアンテナがRFIDタグと通信する場合に、通信領域を広げるために常に最大電力にして電波を照射することも考えられるが、周辺の他のRFIDシステムに対する干渉の影響を考えると、照射する電波の電力はなるべく小さくすることが望ましい。なお、上述の問題等は、RFIDシステム以外の無線通信機器とアンテナを介して通信するシステムでも同様である。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、通信領域内のRFIDタグ等の無線通信機器と効率的に通信することができるような電波制御装置、電波制御システムおよび電波制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した問題を解決し、目的を達成するために、電波制御装置は、所定電波を複数の照射方向ごとに照射する電波照射部による照射範囲内にある通信対象機器以外の物体を検知する検知部と、前記所定電波を通じて前記通信対象機器が通信可能となる所定の通信範囲全てを照射し、且つ、前記所定電波が前記物体で反射することで発生する通信不可部分が前記通信範囲内に発生しないように、前記複数の照射方向ごとの照射範囲を決定する照射範囲決定部とを備えた構成を採る。
【発明の効果】
【0012】
以上により、電波制御装置、電波制御システムおよび電波制御方法は、強い指向性の電波照射部を使用して所定の通信範囲内に通信不可部分が発生しない状況下でも、強い指向性を持った電波照射部からの電波で通信対象機器と効率的に通信できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施例1に係る電波制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図2は、反射物により通信不可部分の発生を示す図である。
【図3】図3は、実施例2に係る電波制御システムの構成を示す図である。
【図4】図4は、赤外センサーを用いた物体の距離の測定方法を示す図である。
【図5】図5は、実施例2に係る電波制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図6】図6は、実施例2に係る電波制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】図7は、実施例2に係る照射方向決定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】図8は、実施例2に係る照射方向電波出力決定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、実施例3に係る電波制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図10】図10は、実施例3に係る電波制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】図11は、電波制御システムの他の用途を示す図である。
【図12】図12は、従来の無指向性アンテナを使用した電波制御システムを示す図である。
【図13】図13は、従来の可変ビームアンテナを使用した電波制御システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る電波制御装置、電波制御システムおよび電波制御方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0015】
図1は、本実施例に係る電波制御装置の構成を示す機能ブロック図である。図1に示すように、電波制御装置1は、指向性の強い電波照射部2と接続され、この電波照射部2を制御する装置である。さらに、電波制御装置1は、検知部10と、照射範囲決定部20と、を備える。なお、電波照射部2には、例えばビームアンテナが挙げられる。
【0016】
検知部10は、電波を複数の照射方向ごとに照射する電波照射部2から照射する照射範囲内にある通信対象機器以外の物体を検知する。
【0017】
電波の照射方向の照射範囲内に物体が存在すると、その物体による電波の反射で照射範囲内に通信不可部分(例えば、「ヌル点」を含む。)が発生する場合がある。電波の照射方向の照射範囲内に存在する物体によって通信不可部分が発生する場合について説明する。図2は、物体(反射物)により通信不可部分の発生する場合を示す図である。図2に示す電波制御システムでは、ビームアンテナ2aから照射される電波の照射方向の照射範囲内に反射物10aが存在するとき、電波が反射物10aで反射した反射波および直接波でマルチパス干渉が生じる。マルチパス干渉が生じて電波の強度が小さくなる領域a1〜a4では、ビームアンテナ2aは通信対象機器との通信をすることができない。
【0018】
例えば、通信対象機器とビームアンテナ2aとの通信範囲20bでは、その通信範囲20bに通信不可部分a3、a4が発生しているため、ビームアンテナ2aは通信対象機器と通信することができないおそれがある。一方、例えば、通信対象機器とビームアンテナ2aとの通信範囲20aでは、その通信範囲20aに通信不可部分が発生していないため、ビームアンテナ2aは通信対象機器と通信することができる。
【0019】
そこで、通信対象機器との通信範囲に通信不可部分が発生しないことを確認するために、電波の照射方向の照射範囲内に物体が存在するか否かをあらかじめ検知する。
【0020】
なお、通信対象機器とは、電波照射部2の通信対象である通信機器であり、例えばRFIDタグが挙げられる。また、電波は、953MHzのUHF帯であっても良いし、2.45GHzのマイクロ波帯であっても良く、これらに限定されるものではない。さらに、電波を電磁波に代えても良い。
【0021】
照射範囲決定部20は、電波を通じて通信対象機器と通信可能となる通信範囲全てを照射し、且つ、電波が検知部10によって検知された物体で反射することで発生する通信不可部分が当該通信範囲内に発生しないように、複数の照射方向ごとの照射範囲を決定する。
【0022】
これにより、電波制御装置1は、通信不可部分が発生しないように、例えば電波の照射方向の有無を決定することで、電波照射部2が通信対象機器と通信可能な照射方向に迅速に移行させることができることとなり、電波照射部2に通信対象機器と効率的に通信させることができる。
【0023】
また、電波制御装置1は、通信不可部分が発生しないように、例えば複数の照射方向ごとの電波の出力を決定することで、各照射方向の電波が周辺の他のビームアンテナの照射範囲への干渉を抑制可能とすることができ、周辺の他の電波照射部2に対するマルチパス干渉の影響を抑制した効率的な通信を実現することができる。
【実施例2】
【0024】
ところで、実施例1に係る電波制御装置1は、通信対象機器と通信する電波照射部2を制御する場合について説明したが、電波制御装置1が、RFIDタグと通信するビームアンテナを制御しても良い。
【0025】
そこで、実施例2では、電波制御装置1が、RFIDタグと通信するビームアンテナを制御する電波制御システムについて説明する。
【0026】
まず、実施例2に係る電波制御装置1を含む電波制御システム9の構成について図3を参照しながら説明する。図3は、実施例2に係る電波制御システム9の構成を示す図である。
【0027】
電波制御システム9は、電波制御装置1、ビームアンテナ2a、リーダライタ3および赤外センサー4を備える。
【0028】
電波制御装置1は、RFIDタグ5と通信するビームアンテナ2aを制御する。具体的には、電波制御装置1は、ビームアンテナ2aから照射される電波の複数の照射方向内の範囲のうち、ビームアンテナ2aから反射物10aまでの距離を含むセンサー情報を赤外センサー4から検知する。この反射物10aは、RFIDタグ5が付いていない物体を指すものとする。
【0029】
また、電波制御装置1は、検知したセンサー情報に基づいて、電波の複数の照射方向の照射範囲を合成して形成される範囲(以降、「合成照射範囲」という。)内に、ビームアンテナ2aによってRFIDタグ5を通信可能とする範囲(以降、「タグ通信範囲」という。)が含まれ、且つ、タグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないか否かを判定する。なお、タグ通信範囲に通信不可部分が発生していないか否かは、タグ通信範囲の位置ごとに、例えばビームアンテナ2aからの電波に対する電界強度分布を計算することによって行う。
【0030】
次に、電波制御装置1は、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないと判定された場合、タグ通信範囲に通信不可部分が発生しないように複数の照射方向の中から照射方向を間引くことで、ビームアンテナ2aの照射方向を決定する。また、電波制御装置1は、決定した照射方向を制御情報としてビームアンテナ2aに通知する。
【0031】
さらに、電波制御装置1は、複数の照射方向ごとに電波出力を最大値からタグ通信範囲に通信不可部分が発生しないように所定値単位で減らすことで、複数の照射方向ごとの電波出力を決定する。また、電波制御装置1は、決定した複数の照射方向ごとの電波出力値を制御情報としてビームアンテナ2aに通知する。
【0032】
なお、電波制御装置1は、複数の照射方向ごとに電波出力を最小値からタグ通信範囲に通信不可部分が発生しないように所定値単位で増やすことで、複数の照射方向ごとの電波出力を決定しても良い。
【0033】
ビームアンテナ2aは、複数の指向性を可変にするアンテナであり、複数の各照射方向に時間をずらして切り替えて、切り替えた照射方向に電波を照射する。具体的には、ビームアンテナ2aは、電波制御装置1から制御情報を取得すると、取得した制御情報に含まれる照射方向を用いて電波を照射する。また、ビームアンテナ2aは、電波制御装置1から制御情報を取得すると、取得した制御情報に含まれる、複数の照射方向ごとの電波出力値を用いて電波を照射する。
【0034】
リーダライタ3は、ビームアンテナ2aと接続し、RFIDタグ5に対して、ビームアンテナ2aが照射する電波を通じて読み書きする。
【0035】
赤外センサー4は、電波を照射する複数の照射方向の照射範囲内にある物体のビームアンテナ2aからの距離を、赤外線を用いて測定する距離センサーである。ここで、赤外センサーを用いて物体(反射物)までの距離を測定する方法について説明する。図4は、赤外センサーを用いた物体の距離の測定方法を示す図である。図4に示す赤外センサー4では、赤外線を照射する角度を変化させて赤外線を照射して、照射方向の照射範囲内に存在する反射物10aで反射した反射波を受光して、ビームアンテナ2aから反射物10aまでの距離を測定する。
【0036】
なお、距離センサーは赤外センサー4であるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、超音波センサーであっても良いし、ミリ波センサーであっても良いし、ステレオカメラまたは単眼カメラ等の画像センサーであっても良い。
【0037】
次に、実施例2に係る電波制御装置1の構成について図5を参照しながら説明する。図5は、実施例2に係る電波制御装置1の構成を示す機能ブロック図である。なお、図1に示す電波制御装置1と同一の構成については同一符号を付すことで、その重複する構成および動作の説明については省略する。実施例1と実施例2とが異なるところは、照射範囲決定部20に、通信範囲通信可否確認部21、照射方向判定部22、照射方向決定部23、照射方向電波出力判定部24および照射方向電波出力決定部25を追加した点にある。
【0038】
検知部10は、電波を複数の照射方向ごとに照射するビームアンテナ2aによる照射範囲内にある反射物10aを検知する。また、検知部10は赤外線センサーによりほぼ連続的な走査を行い、反射物10aや床面等に対する距離測定結果に基づいて反射物10aの位置および形状に関する情報を入手する。
【0039】
通信範囲通信可否確認部21は、検知部10によって検知された反射物10aの位置および形状の情報に基づいて、電波を照射する複数の照射方向の照射範囲から形成されるビームアンテナ2aによる合成照射範囲内のうち、RFIDタグ5を通信可能とするタグ通信範囲に通信不可部分が発生していないか否かを判定する。
【0040】
具体的には、通信範囲通信可否確認部21は、電波を照射する複数の照射方向ごとに、通信不可部分の有無および位置を求めるために、ビームアンテナ2aから照射される電波の電界強度分布を検知部10で検出された反射物10aの位置および形状、また床面や天井等その他の反射物の位置および形状の情報を元に計算する。このとき、通信範囲通信可否確認部21は、通信不可部分を可能な限り発生させないように、複数の照射方向ごとの電波出力値を最大値として計算するものとする。
【0041】
また、通信範囲通信可否確認部21は、合成照射範囲内の通信不可部分の位置を求めるために、複数の照射方向の照射範囲ごとに計算した電界強度分布に基づいて、これらの照射範囲から形成される合成照射範囲の電界強度分布を計算する。また、通信範囲通信可否確認部21は、合成照射範囲の電界強度分布に基づいて、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないか否かを判定する。
【0042】
そして、通信範囲通信可否確認部21は、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないと判定する場合には、タグ通信範囲内でRFIDタグ5と通信可能であると判断して、照射方向の決定を促すメッセージを照射方向判定部22に通知する。一方、通信範囲通信可否確認部21は、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれないか、またはタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していると判定する場合には、通信不可部分があることを警告するために、例えばタグ通信範囲内の通信不可部分の位置をモニターに表示する。
【0043】
照射方向判定部22は、複数の照射方向の中から順次照射方向を間引いて、間引いた結果、タグ通信範囲内に通信不可部分が発生するか否かを判定する。
【0044】
具体的には、照射方向判定部22は、複数の照射方向の中から順番に1つずつ照射方向を間引いて、間引いた照射方向以外の残りの照射方向の照射範囲から形成される合成照射範囲の電界強度分布を計算する。ただし、照射方向判定部22は、後記する照射方向決定部23から一定の照射方向を間引く旨の決定結果を取得すると、複数の照射方向の中からこの一定の照射方向も間引いた残りの照射方向を電界強度分布の計算対象とする。また、照射方向判定部22は、計算した合成照射範囲の電界強度分布に基づいて、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないか否かを判定し、間引いた照射方向に関する判定結果を照射方向決定部23に通知する。
【0045】
なお、照射方向判定部22は、複数の照射方向の中から順番に1つずつ照射方向を間引くものとしたが、これに限定されるものではなく、複数の照射方向のうち照射範囲の重なりの大きいいずれかの照射方向を優先的に間引いても良いし、照射方向の照射範囲を2次元の方向に間引いても良い。さらに、照射方向判定部22は、最適化問題を解くためのアルゴリズムを用いて、照射方向を間引いても良い。
【0046】
照射方向決定部23は、間引いた照射方向に関する判定結果に基づいて、当該照射方向を間引くか否かを決定する。
【0047】
具体的には、照射方向決定部23は、間引いた照射方向に関する判定結果が、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないと判定する結果の場合には、当該照射方向を間引くことを決定する。また、照射方向決定部23は、間引いた照射方向に関する判定結果が、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれていないか、またはタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していると判定する結果の場合には、当該照射方向を間引かないことを決定する。
【0048】
また、照射方向決定部23は、複数の照射方向の全照射方向について間引くか否かを決定していない場合には、次の照射方向の判定を促すために、決定された照射方向に関する間引くか否かの決定結果を通知する。一方、照射方向決定部23は、複数の照射方向の全照射方向について間引くか否かを決定した場合には、複数の照射方向の中から間引くと決定された照射方向以外の残りの照射方向を、ビームアンテナ2aの照射方向として決定して照射方向電波出力判定部24に通知する。
【0049】
このようにして、照射方向決定部23は、タグ通信範囲内に通信不可部分が発生しないような最適な照射方向を決定する。
【0050】
照射方向電波出力判定部24は、複数の照射方向ごとに電波出力を最大値から1ステップずつ減らして、減らした結果、タグ通信範囲内に通信不可部分が発生するか否かを判定する。
【0051】
具体的には、照射方向電波出力判定部24は、ビームアンテナ2aの照射方向として決定された全照射方向を照射方向決定部23から取得すると、全照射方向の中から順番に1つずつ照射方向を選択して、選択した照射方向の電波出力を最大値から1ステップずつ減じる。なお、電波出力とは、電波の強度であるものとする。例えば、1ステップは、1デシベル(dB)であっても良いし、さらに細かく調整を希望する場合には0.5dBであっても良く、逆に荒く調整を希望する場合には3dBであっても良く、これに限定されるものではない。
【0052】
そして、照射方向電波出力判定部24は、選択した照射方向については減じた電波出力値を用いて、選択した照射方向以外の残りの照射方向については最大の電波出力値または後記する照射方向電波出力決定部25によって決定された電波出力値を用いて、全照射方向から形成される合成照射範囲の電界強度分布を計算する。
【0053】
また、照射方向電波出力判定部24は、計算した合成照射範囲の電界強度分布に基づいて、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないか否かを判定し、選択した照射方向に関する判定結果を照射方向電波出力決定部25に通知する。
【0054】
照射方向電波出力決定部25は、選択した照射方向に関する判定結果に基づいて、当該照射方向の電波出力値を決定する。
【0055】
具体的には、照射方向電波出力決定部25は、選択した照射方向に関する判定結果が、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないと判定される結果の場合には、さらに電波出力を減らせる可能性があるため、選択した照射方向の電波出力をさらに減じる旨を照射方向電波出力判定部24に通知する。一方、照射方向電波出力決定部25は、選択した照射方向に関する判定結果が、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれていないか、またはタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していると判定される結果の場合には、選択した照射方向の電波出力を、減じる前の電波出力値に決定する。これは、タグ通信範囲内に通信不可部分が発生しなかったと判定された最小の電波出力を電波出力値とするものである。
【0056】
また、照射方向電波出力決定部25は、全照射方向について電波出力を決定していない場合には、次の照射方向の判定を促すために、選択した照射方向の決定された電波出力値を照射方向電波出力判定部24に通知する。一方、照射方向電波出力決定部25は、全照射方向について電波出力値を決定した場合には、照射方向決定部23によって決定された全照射方向に関するそれぞれの電波出力値を制御情報として、ビームアンテナ2aに通知する。
【0057】
次に、実施例2に係る電波制御装置の処理手順を、図6を参照して説明する。図6は、
実施例2に係る電波制御装置1の処理手順を示すフローチャートである。
【0058】
まず、通信範囲通信可否確認部21は、電波を照射する複数の照射方向の中から1つの照射方向を選択する(ステップS11)。
【0059】
次に、通信範囲通信可否確認部21は、ビームアンテナ2aから検知部10によって検知された反射物10aまでの距離に基づいて、選択した照射方向の照射範囲の電界強度分布を、電波出力値を最大値にして計算する(ステップS12)。
【0060】
引き続き、通信範囲通信可否確認部21は、複数の照射方向全ての電界強度分布を計算したか否かを判定する(ステップS13)。そして、通信範囲通信可否確認部21は、複数の照射方向全ての電界強度分布を計算していないと判定する場合には(ステップS13No)、次の照射方向を選択して(ステップS14)、ステップS12に遷移する。
【0061】
一方、通信範囲通信可否確認部21は、複数の照射方向全ての電界強度分布を計算したと判定する場合には(ステップS13Yes)、複数の照射方向全ての電界強度分布に基づいて、複数の照射方向の照射範囲から形成される合成照射範囲の電界強度分布を計算する(ステップS15)。
【0062】
次に、通信範囲通信可否確認部21は、合成照射範囲内の電界強度分布に基づいて、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないか否かを判定する(ステップS16)。そして、通信範囲通信可否確認部21は、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれないか、またはタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していると判定する場合には(ステップS16No)、タグ通信範囲内の通信不可部分の位置をモニターに表示して(ステップS17)、処理を終了する。
【0063】
一方、通信範囲通信可否確認部21は、合成照射範囲内の電界強度分布に基づいて、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないと判定する場合には(ステップS16Yes)、照射方向の決定を促すメッセージを照射方向判定部22に通知する。
【0064】
次に、実施例2に係る照射方向決定処理の処理手順を、図7を参照して説明する。図7は、実施例2に係る照射方向決定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0065】
まず、通信範囲通信可否確認部21から照射方向の決定を促すメッセージを取得した照射方向判定部22は、複数の照射方向の中から1つの照射方向を選択する(ステップS21)。
【0066】
次に、照射方向判定部22は、選択した照射方向と既に間引くことが決定された照射方向とを間引いて、間引いた照射方向以外の残りの照射方向の照射範囲から形成される合成照射範囲の電界強度分布を計算する(ステップS22)。
【0067】
引き続き、照射方向判定部22は、計算した合成照射範囲の電界強度分布に基づいて、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないか否かを判定する(ステップS23)。そして、照射方向決定部23は、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していない場合には(ステップS23Yes)、選択した照射方向を間引くことを決定する(ステップS24)。
【0068】
一方、照射方向決定部23は、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれていないか、若しくはタグ通信範囲内に通信不可部分が発生している場合(ステップS23No)、または選択した照射方向を間引くことを決定した後、複数の全照射方向について間引くか否かの決定をするための計算を終了したか否かを判定する(ステップS25)。
【0069】
そして、照射方向決定部23は、複数の全照射方向について間引くか否かの決定をするための計算を終了していないと判定する場合には(ステップS25No)、次の照射方向を選択して(ステップS26)、ステップS22に遷移する。
【0070】
一方、照射方向決定部23は、複数の全照射方向について間引くか否かの決定をするための計算を終了していると判定する場合には(ステップS25Yes)、間引くことが決定された照射方向以外の残りの照射方向を、照射方向電波出力判定部24に通知する。
【0071】
次に、実施例2に係る照射方向電波出力決定処理の処理手順を、図8を参照して説明する。図8は、実施例2に係る照射方向電波出力決定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0072】
まず、照射方向決定部23から照射方向として決定された全照射方向を取得した照射方向電波出力判定部24は、複数の照射方向の中から1つの照射方向を選択する(ステップS31)。
【0073】
次に、照射方向電波出力判定部24は、選択した照射方向については1ステップ減じた電波出力値を用いて、選択した照射方向以外の残りの照射方向については最大の電波出力値または既に決定された電波出力値を用いて、全照射方向の照射範囲から形成される合成照射範囲の電界強度分布を計算する(ステップS32)。
【0074】
引き続き、照射方向電波出力判定部24は、計算した合成照射範囲の電界強度分布に基づいて、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないか否かを判定する(ステップS33)。
【0075】
そして、照射方向電波出力決定部25は、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないと判定する場合には(ステップS33Yes)、さらに電波出力を減らせる可能性があると判断して、ステップS32に遷移する。
【0076】
一方、照射方向電波出力決定部25は、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれていないか、またはタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していると判定する場合には(ステップS33No)、タグ通信範囲内に通信不可部分が発生しない電波出力値の限界を超えたものと判断して、選択した照射方向の電波出力値を減じる前の電波出力値に決定する。
【0077】
引き続き、照射方向電波出力決定部25は、全照射方向について電波出力値の決定をするための計算を終了したか否かを判定する(ステップS34)。
【0078】
そして、照射方向電波出力決定部25は、全照射方向について電波出力値の決定をするための計算を終了していないと判定する場合には(ステップS34No)、次の照射方向を選択して(ステップS35)、ステップS32に遷移する。
【0079】
一方、照射方向電波出力決定部25は、全照射方向について電波出力値の決定をするための計算を終了したと判定する場合には(ステップS34Yes)、全照射方向に関するそれぞれの電波出力値を制御情報として、ビームアンテナ2aに通知する。
【0080】
以上のように本実施例2によれば、電波制御装置1は、電波を複数の照射方向ごとに照射するビームアンテナ2aによる照射範囲内にあるRFIDタグ5が付いていない物体を検知する。そして、電波制御装置1は、電波を通じてRFIDタグ5が通信可能となるタグ通信範囲全てを照射し、且つ、電波が検知された物体で反射することで発生する通信不可部分がタグ通信範囲内に発生しないように、複数の照射方向の中から照射方向を間引くことで、複数の照射方向ごとの照射有無を決定するようにした。さらに、電波制御装置1は、電波を通じてRFIDタグ5が通信可能となるタグ通信範囲全てを照射し、且つ、電波が検知された物体で反射することで発生する通信不可部分がタグ通信範囲内に発生しないように、複数の照射方向ごとの電波出力を最大値から所定値ずつ減じることで、複数の照射方向ごとの電波出力を決定するようにした。
【0081】
かかる構成によれば、電波制御装置1は、通信不可部分がタグ通信範囲内に発生しないように電波の照射方向の有無を決定することで、ビームアンテナ2aがRFIDタグ5と通信可能な照射方向に迅速に移行させることができることとなり、ビームアンテナ2aにRFIDタグ5と効率的に通信させることができる。
【0082】
また、電波制御装置1は、通信不可部分がタグ通信範囲内に発生しないように複数の照射方向ごとの電波の出力を決定することで、各照射方向の電波が周辺の他のビームアンテナの照射範囲への干渉を抑制可能とすることができ、周辺の他のビームアンテナに対するマルチパス干渉の影響を抑制した効率的な通信を実現することができる。
【0083】
さらに、電波制御装置1は、通信不可部分がタグ通信範囲内に発生しないように複数の照射方向ごとの電波の出力を決定することで、無駄な電力消費を大幅に軽減することができる。
【実施例3】
【0084】
ところで、実施例2に係る電波制御装置1は、照射方向および照射方向に照射する電波出力をそれぞれ徐々に減じることで、タグ通信範囲内に通信不可部分が発生しないような最適な照射方向および電波出力を決定する場合を説明した。電波制御装置1は、これに限定されるものではなく、照射方向および照射方向の照射する電波出力をそれぞれ徐々に増加することで、タグ通信範囲内に通信不可部分が発生しないような最適な照射方向および電波出力を決定しても良い。
【0085】
そこで、実施例3では、電波制御装置1が、照射方向および照射方向に照射する電波出力をそれぞれ徐々に増加することで、タグ通信範囲内に通信不可部分が発生しないような最適な照射方向および電波出力を決定する場合を説明する。
【0086】
まず、実施例3に係る電波制御装置1の構成について説明する。図9は、実施例3に係る電波制御装置の構成を示す機能ブロック図である。なお、図5に示す電波制御装置1と同一の構成については同一符号を付すことで、その重複する構成および動作の説明については省略する。実施例2と実施例3とが異なるところは、照射範囲決定部20から照射方向判定部22および照射方向決定部23を削除し、照射方向電波出力判定部41および照射方向電波出力決定部42を変更した点にある。
【0087】
照射方向電波出力判定部41は、電波を照射する複数の照射方向の中から順次照射方向を増加する都度、増加した照射方向の電波出力を最小値から1ステップずつ増加し、増加するごとに、タグ通信範囲内の照射範囲が所定レベル以上ずつ増加しているか否かを判定する。
【0088】
具体的には、照射方向電波出力判定部41は、複数の照射方向の中から順番に1つずつ照射方向を選択して、選択した照射方向と後記する照射方向電波出力決定部42によって電波出力値が決定された照射方向とから形成される合成照射範囲の電界強度分布を計算する。この選択された照射方向の電波出力の値は、最小値から1ステップずつ増加されるものとする。
【0089】
なお、電波出力とは、電波の強度であるものとする。例えば、1ステップは、1デシベル(dB)であっても良いし、さらに細かく調整を希望する場合には0.5dBであっても良く、逆に荒く調整を希望する場合には3dBであっても良く、これに限定されるものではない。
【0090】
また、照射方向電波出力判定部41は、計算した電界強度分布に基づいて、電波出力増加後のタグ通信範囲内の照射範囲が電波出力増加前の照射範囲よりも所定レベル以上増加しているか否かを判定し、選択された照射方向に関する判定結果を照射方向電波出力決定部42に通知する。
【0091】
照射方向電波出力決定部42は、選択された照射方向に関する判定結果に基づいて、当該照射方向の電波出力値を決定する。
【0092】
具体的には、照射方向電波出力決定部42は、選択された照射方向に関する判定結果が、電波出力増加後のタグ通信範囲内の照射範囲が電波出力増加前の照射範囲よりも所定レベル以上増加していると判定される結果の場合には、選択された照射方向の照射範囲が飽和状態になっていないと判断して、電波出力をさらに増加する旨を照射方向電波出力判定部41に通知する。
【0093】
一方、照射方向電波出力決定部42は、選択された照射方向に関する判定結果が、電波出力増加後のタグ通信範囲内の照射範囲が電波出力増加前の照射範囲よりも所定レベル以上増加していないと判定される結果の場合には、選択された照射方向の照射範囲が飽和状態になったと判断して、選択された照射方向の電波出力を、増加前の電波出力値に決定する。なお、選択された照射方向が初回の判定の場合、すなわち増加前の電波出力値が零の場合には、既に他の照射方向によって照射範囲が飽和状態になっていると判断して、選択された照射方向に照射しないものとしても良い。
【0094】
また、照射方向電波出力決定部42は、照射方向電波出力判定部41によって計算された合成照射範囲内の電界強度分布に基づいて、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないか否かを判定する。照射方向電波出力決定部42は、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないと判定する場合には、決定された全照射方向に関するそれぞれの電波出力値を制御情報として、ビームアンテナ2aに通知する。
【0095】
一方、照射方向電波出力決定部42は、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれていないか、またはタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していると判定する場合には、全照射方向を選択対象としたか否かを判定する。そして、照射方向電波出力決定部42は、全照射方向を選択対象としていないと判定する場合には、選択対象としていない照射方向の選択を促すメッセージを照射方向電波出力判定部41に通知する。一方、照射方向電波出力決定部42は、全照射方向を選択対象としたと判定する場合には、タグ通信範囲内に通信不可部分が発生しているため、例えばタグ通信範囲内の通信不可部分の位置をモニターに表示する。
【0096】
次に、実施例3に係る電波制御装置の処理手順を、図10を参照して説明する。図10は、実施例3に係る電波制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【0097】
まず、通信範囲通信可否確認部21から照射方向の決定を促すメッセージを取得した照射方向電波出力判定部41は、すべての照射方向の電波出力を零にする(ステップS41)。
【0098】
次に、照射方向電波出力判定部41は、複数の照射方向の中から1つの照射方向を選択する(ステップS42)。
【0099】
次に、照射方向電波出力判定部41は、選択した照射方向と既に電波出力値が決定された照射方向とから形成される合成照射範囲の電界強度分布を計算する(ステップS43)。このとき、照射方向電波出力判定部41は、選択した照射方向の電波出力を1ステップ増加した値を用いるものとする。
【0100】
さらに、照射方向電波出力判定部41は、計算した合成照射範囲の電界強度分布に基づいて、電波出力増加後のタグ通信範囲内の照射範囲が電波出力増加前の照射範囲よりも
所定レベル以上増加しているか否かを判定する(ステップS44)。
【0101】
そして、照射方向電波出力決定部42は、電波出力増加後のタグ通信範囲内の照射範囲が電波出力増加前の照射範囲よりも所定レベル以上増加していると判定する場合には(ステップS44Yes)、選択された照射方向の照射範囲が飽和状態になっていないと判断して、ステップS43に遷移する。
【0102】
一方、照射方向電波出力決定部42は、電波出力増加後のタグ通信範囲内の照射範囲が電波出力増加前の照射範囲よりも所定レベル以上増加していないと判定する場合には(ステップS44No)、選択された照射方向の照射範囲が飽和状態になったと判断して、選択された照射方向の電波出力を、増加前の電波出力値に決定する。なお、照射方向電波出力決定部42は、増加前の電波出力値が零である場合には、既に他の照射方向によって照射範囲が飽和状態になっていると判断して、選択された照射方向に照射しないものとしても良い。
【0103】
引き続き、照射方向電波出力決定部42は、照射方向電波出力判定部41によって計算された合成照射範囲の電界強度分布に基づいて、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないか否かを判定する(ステップS45)。
【0104】
そして、照射方向電波出力決定部42は、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれ、且つタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していないと判定する場合には(ステップS45Yes)、決定された全照射方向に関するそれぞれの電波出力値を制御情報として、ビームアンテナ2aに通知して、処理を終了する。
【0105】
一方、照射方向電波出力決定部42は、合成照射範囲内にタグ通信範囲が含まれていないか、またはタグ通信範囲内に通信不可部分が発生していると判定する場合には(ステップS45No)、全照射方向を選択対象としたか否かを判定する(ステップS46)。
【0106】
そして、照射方向電波出力決定部42は、全照射方向を選択対象としていないと判定する場合には(ステップS46No)、次の照射方向を選択して(ステップS47)、ステップS43に遷移する。
【0107】
一方、照射方向電波出力決定部42は、全照射方向を選択対象としたと判定する場合には(ステップS46Yes)、タグ通信範囲内の通信不可部分の位置をモニターに表示して(ステップS48)、処理を終了する。
【0108】
以上のように本実施例3によれば、電波制御装置1は、電波を複数の照射方向ごとに照射するビームアンテナ2aによる照射範囲内にあるRFIDタグ5が付いていない物体を検知する。そして、電波制御装置1は、電波を通じてRFIDタグ5が通信可能となるタグ通信範囲全てを照射し、且つ、電波が検知された物体で反射することで発生する通信不可部分がタグ通信範囲内に発生しないように、各照射方向の電波出力を最小値から所定値ずつ増加することで電波出力を決定するようにした。言い換えれば、電波制御装置1は、電波出力が決定された照射方向を、RFIDタグ5と通信するために照射する照射方向として決定するようにした。
【0109】
かかる構成によれば、電波制御装置1は、通信不可部分がタグ通信範囲内に発生しないように複数の照射方向ごとの電波の出力を決定しながら照射方向を決定することで、効率的に適正化を図ることができる。
【0110】
かかる構成によれば、電波制御装置1は、通信不可部分がタグ通信範囲内に発生しないように電波の照射方向の有無を決定することで、ビームアンテナ2aがRFIDタグ5と通信可能な照射方向に迅速に移行させることができることとなり、ビームアンテナ2aにRFIDタグ5と効率的に通信させることができる。
【0111】
また、電波制御装置1は、通信不可部分がタグ通信範囲内に発生しない範囲で複数の照射方向ごとの電波の出力を決定することで、周辺の他のRFIDシステムに対する干渉の影響を抑制した通信を実現することができる。
【0112】
さらに、電波制御装置1は、通信不可部分をタグ通信範囲内に発生しないように複数の照射方向ごとの電波の出力を決定することで、無駄な電力消費を大幅に軽減することができる。
【0113】
なお、上記実施例における電波制御システム9では、例えばRFIDタグ5と通信するビームアンテナ2aを、電波制御装置1が制御するものとして説明したが、これに限定されるものではない。図11は、電波制御システムの他の用途を示す図である。図11に示す電波制御システムでは、子局と通信するビームアンテナを、親局が制御している。これにより、親局に電波制御装置1を備えるようにすれば、電波制御装置1は、所定の通信範囲内で通信不可部分が発生しないように電波の照射方向を決定することができ、ビームアンテナに子局と効率的に通信させることができる。
【0114】
また、上記実施例2において、照射方向判定部22および照射方向決定部23から構成される照射方向決定処理が、複数の照射方向の中からタグ通信範囲内に通信不可部分が発生しないように照射方向を決定し、続いて、照射方向電波出力判定部24および照射方向電波出力決定部25から構成される照射方向電波出力決定処理が、照射方向決定処理によって決定された照射方向の電波出力値を、タグ通信範囲内に通信不可部分が発生しないように決定するようにしたが、照射方向決定処理および照射方向電波出力決定処理のいずれか一方を行うようにしても良いし、処理順序を逆にして行うようにしても良い。
【0115】
以上、本発明の実施例について説明したが、本実施例によって本発明の技術的思想の範囲が限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した技術的範囲の範囲を逸脱しない限り、各種様々な実施例が実施可能であることは言うまでもない。また、本実施例に記載した効果は、これに限定されるものではない。
【0116】
また、図示した電波制御装置1の各構成要素は機能概念的に記載したものであって、必ずしも物理的に図示のように構成されるものではなく、その各装置の具体的な態様は図示のものに限縮されるものでは到底ないことは言うまでもない。
【0117】
なお、電波制御装置1にて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU(Central Processing Unit)(またはMPU(Micro Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)などのマイクロ・コンピュータ)および当該CPU(またはMPU、MCUなどのマイクロ・コンピュータ)にて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されても良い。
【0118】
以上の実施例に係る実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0119】
(付記1)所定電波を複数の照射方向ごとに照射する電波照射部による照射範囲内にある通信対象機器以外の物体を検知する検知部と、
前記所定電波を通じて前記通信対象機器が通信可能となる所定の通信範囲全てを照射し、且つ、前記所定電波が前記物体で反射することで発生する通信不可部分が前記通信範囲内に発生しないように、前記複数の照射方向ごとの照射範囲を決定する照射範囲決定部と
を有することを特徴とする電波制御装置。
【0120】
(付記2)前記照射範囲決定部は、
前記複数の照射方向の中から少なくとも1つの照射方向を間引くことで、前記複数の照射方向ごとの照射有無を決定することを特徴とする付記1に記載の電波制御装置。
【0121】
(付記3)前記照射範囲決定部は、
前記複数の照射方向の中から間引いた照射方向以外の残りの照射方向の照射範囲が、前記通信範囲全てを含み、且つ、前記通信不可部分が前記通信範囲内に発生していないか否かを判定する照射方向判定部と、
前記照射方向判定部によって前記照射範囲が、前記通信範囲全てを含み、且つ、前記通信不可部分が前記通信範囲内に発生していないと判定されるとき、前記複数の照射方向の中から間引いた照射方向以外の残りの照射方向を、前記電波照射部が前記通信対象機器と通信するために照射する照射方向として決定する照射方向決定部とを含むことを特徴とする付記2に記載の電波制御装置。
【0122】
(付記4)前記照射範囲決定部は、
所定電波を照射する照射方向の電波出力を最大値から所定値ずつ減じて、前記複数の照射方向ごとの電波出力を決定することを特徴とする付記1に記載の電波制御装置。
【0123】
(付記5)前記照射範囲決定部は、
複数の照射方向のうち1つの照射方向の電波出力を減じて、減じられた電波出力を用いた照射方向を含む照射範囲が、前記通信範囲全てを含んでいないか、または、前記通信不可部分が前記通信範囲内に発生しているか否かを判定する電波出力判定部と、
前記電波出力判定部によって前記照射範囲が、前記通信範囲全てを含んでいないか、または、前記通信不可部分が前記通信範囲内に発生していると判定されるとき、減じる前の電波出力を、当該照射方向の電波出力として決定する電波出力決定部とを含むことを特徴とする付記4に記載の電波制御装置。
【0124】
(付記6)前記照射範囲決定部は、
所定電波を照射する照射方向の電波出力を最小値から所定値ずつ増加して、前記複数の照射方向ごとの照射範囲を決定することを特徴とする付記1に記載の電波制御装置。
【0125】
(付記7)前記照射範囲決定部は、
複数の照射方向のうち1つの照射方向の電波出力を増加して、増加された電波出力を用いた照射方向を含む増加後の照射範囲が、増加前の照射範囲より所定レベル以上増加しているか否かを判定する電波出力判定部と、
前記電波出力判定部によって増加後の照射範囲が、増加前の照射範囲より所定レベル以上増加していないと判定されるとき、増加前の電波出力を当該照射方向の電波出力として決定する電波出力決定部とを含むことを特徴とする付記6に記載の電波制御装置。
【0126】
(付記8)前記電波出力決定部は、
増加前の電波出力が零であるとき、当該照射方向に照射しないことを決定することを特徴とする付記7に記載の電波制御装置。
【0127】
(付記9)前記通信対象機器は、
RFIDタグであることを特徴とする付記1から付記8のいずれか1つに記載の電波制御装置。
【0128】
(付記10)複数の照射方向に所定電波を照射するアンテナと、前記アンテナと接続される電波制御装置と、前記電波制御装置と接続され物体までの距離を測定する測定装置とを有する電波制御システムであって、
前記電波制御装置は、
所定電波を複数の照射方向ごとに照射する前記アンテナによる照射範囲内にある通信対象機器以外の物体を、前記測定装置を介して検知する検知部と、
前記所定電波を通じて前記通信対象機器が通信可能となる所定の通信範囲全てを照射し、且つ、前記所定電波が前記物体で反射することで発生する通信不可部分が前記通信範囲内に発生しないように、前記複数の照射方向ごとの照射範囲を決定する照射範囲決定部と
を有することを特徴とする電波制御システム。
【0129】
(付記11)所定電波を複数の照射方向ごとに照射する電波照射部による照射範囲内にある通信対象機器以外の物体を検知する検知工程と、
前記所定電波を通じて前記通信対象機器が通信可能となる所定の通信範囲全てを照射し、且つ、前記所定電波が前記物体で反射することで発生する通信不可部分が前記通信範囲内に発生しないように、前記複数の照射方向ごとの照射範囲を決定する照射範囲決定工程とを含むことを特徴とする電波制御方法。
【符号の説明】
【0130】
1 電波制御装置
2 電波照射部
2a ビームアンテナ
3 リーダライタ
4 赤外センサー
5 RFIDタグ
9 電波制御システム
10 検知部
20 照射範囲決定部
21 通信範囲通信可否確認部
22 照射方向判定部
23 照射方向決定部
24、41 照射方向電波出力判定部
25、42 照射方向電波出力決定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定電波を複数の照射方向ごとに照射する電波照射部による照射範囲内にある通信対象機器以外の物体を検知する検知部と、
前記所定電波を通じて前記通信対象機器が通信可能となる所定の通信範囲全てを照射し、且つ、前記所定電波が前記物体で反射することで発生する通信不可部分が前記通信範囲内に発生しないように、前記複数の照射方向ごとの照射範囲を決定する照射範囲決定部と
を有することを特徴とする電波制御装置。
【請求項2】
前記照射範囲決定部は、
前記複数の照射方向の中から少なくとも1つの照射方向を間引くことで、前記複数の照射方向ごとの照射有無を決定することを特徴とする請求項1に記載の電波制御装置。
【請求項3】
前記照射範囲決定部は、
前記複数の照射方向の中から間引いた照射方向以外の残りの照射方向の照射範囲が、前記通信範囲全てを含み、且つ、前記通信不可部分が前記通信範囲内に発生していないか否かを判定する照射方向判定部と、
前記照射方向判定部によって前記照射範囲が、前記通信範囲全てを含み、且つ、前記通信不可部分が前記通信範囲内に発生していないと判定されるとき、前記複数の照射方向の中から間引いた照射方向以外の残りの照射方向を、前記電波照射部が前記通信対象機器と通信するために照射する照射方向として決定する照射方向決定部とを含むことを特徴とする請求項2に記載の電波制御装置。
【請求項4】
前記照射範囲決定部は、
所定電波を照射する照射方向の電波出力を最大値から所定値ずつ減じて、前記複数の照射方向ごとの電波出力を決定することを特徴とする請求項1に記載の電波制御装置。
【請求項5】
前記照射範囲決定部は、
複数の照射方向のうち1つの照射方向の電波出力を減じて、減じられた電波出力を用いた照射方向を含む照射範囲が、前記通信範囲全てを含んでいないか、または、前記通信不可部分が前記通信範囲内に発生しているか否かを判定する電波出力判定部と、
前記電波出力判定部によって前記照射範囲が、前記通信範囲全てを含んでいないか、または、前記通信不可部分が前記通信範囲内に発生していると判定されるとき、減じる前の電波出力を、当該照射方向の電波出力として決定する電波出力決定部とを含むことを特徴とする請求項4に記載の電波制御装置。
【請求項6】
前記照射範囲決定部は、
所定電波を照射する照射方向の電波出力を最小値から所定値ずつ増加して、前記複数の照射方向ごとの照射範囲を決定することを特徴とする請求項1に記載の電波制御装置。
【請求項7】
前記照射範囲決定部は、
複数の照射方向のうち1つの照射方向の電波出力を増加して、増加された電波出力を用いた照射方向を含む増加後の照射範囲が、増加前の照射範囲より所定レベル以上増加しているか否かを判定する電波出力判定部と、
前記電波出力判定部によって増加後の照射範囲が、増加前の照射範囲より所定レベル以上増加していないと判定されるとき、増加前の電波出力を当該照射方向の電波出力として決定する電波出力決定部とを含むことを特徴とする請求項6に記載の電波制御装置。
【請求項8】
前記通信対象機器は、
RFIDタグであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の電波制御装置。
【請求項9】
複数の照射方向に所定電波を照射するアンテナと、前記アンテナと接続される電波制御装置と、前記電波制御装置と接続され物体までの距離を測定する測定装置とを有する電波制御システムであって、
前記電波制御装置は、
所定電波を複数の照射方向ごとに照射する前記アンテナによる照射範囲内にある通信対象機器以外の物体を、前記測定装置を介して検知する検知部と、
前記所定電波を通じて前記通信対象機器が通信可能となる所定の通信範囲全てを照射し、且つ、前記所定電波が前記物体で反射することで発生する通信不可部分が前記通信範囲内に発生しないように、前記複数の照射方向ごとの照射範囲を決定する照射範囲決定部と
を有することを特徴とする電波制御システム。
【請求項10】
所定電波を複数の照射方向ごとに照射する電波照射部による照射範囲内にある通信対象機器以外の物体を検知する検知工程と、
前記所定電波を通じて前記通信対象機器が通信可能となる所定の通信範囲全てを照射し、且つ、前記所定電波が前記物体で反射することで発生する通信不可部分が前記通信範囲内に発生しないように、前記複数の照射方向ごとの照射範囲を決定する照射範囲決定工程とを含むことを特徴とする電波制御方法。
【請求項1】
所定電波を複数の照射方向ごとに照射する電波照射部による照射範囲内にある通信対象機器以外の物体を検知する検知部と、
前記所定電波を通じて前記通信対象機器が通信可能となる所定の通信範囲全てを照射し、且つ、前記所定電波が前記物体で反射することで発生する通信不可部分が前記通信範囲内に発生しないように、前記複数の照射方向ごとの照射範囲を決定する照射範囲決定部と
を有することを特徴とする電波制御装置。
【請求項2】
前記照射範囲決定部は、
前記複数の照射方向の中から少なくとも1つの照射方向を間引くことで、前記複数の照射方向ごとの照射有無を決定することを特徴とする請求項1に記載の電波制御装置。
【請求項3】
前記照射範囲決定部は、
前記複数の照射方向の中から間引いた照射方向以外の残りの照射方向の照射範囲が、前記通信範囲全てを含み、且つ、前記通信不可部分が前記通信範囲内に発生していないか否かを判定する照射方向判定部と、
前記照射方向判定部によって前記照射範囲が、前記通信範囲全てを含み、且つ、前記通信不可部分が前記通信範囲内に発生していないと判定されるとき、前記複数の照射方向の中から間引いた照射方向以外の残りの照射方向を、前記電波照射部が前記通信対象機器と通信するために照射する照射方向として決定する照射方向決定部とを含むことを特徴とする請求項2に記載の電波制御装置。
【請求項4】
前記照射範囲決定部は、
所定電波を照射する照射方向の電波出力を最大値から所定値ずつ減じて、前記複数の照射方向ごとの電波出力を決定することを特徴とする請求項1に記載の電波制御装置。
【請求項5】
前記照射範囲決定部は、
複数の照射方向のうち1つの照射方向の電波出力を減じて、減じられた電波出力を用いた照射方向を含む照射範囲が、前記通信範囲全てを含んでいないか、または、前記通信不可部分が前記通信範囲内に発生しているか否かを判定する電波出力判定部と、
前記電波出力判定部によって前記照射範囲が、前記通信範囲全てを含んでいないか、または、前記通信不可部分が前記通信範囲内に発生していると判定されるとき、減じる前の電波出力を、当該照射方向の電波出力として決定する電波出力決定部とを含むことを特徴とする請求項4に記載の電波制御装置。
【請求項6】
前記照射範囲決定部は、
所定電波を照射する照射方向の電波出力を最小値から所定値ずつ増加して、前記複数の照射方向ごとの照射範囲を決定することを特徴とする請求項1に記載の電波制御装置。
【請求項7】
前記照射範囲決定部は、
複数の照射方向のうち1つの照射方向の電波出力を増加して、増加された電波出力を用いた照射方向を含む増加後の照射範囲が、増加前の照射範囲より所定レベル以上増加しているか否かを判定する電波出力判定部と、
前記電波出力判定部によって増加後の照射範囲が、増加前の照射範囲より所定レベル以上増加していないと判定されるとき、増加前の電波出力を当該照射方向の電波出力として決定する電波出力決定部とを含むことを特徴とする請求項6に記載の電波制御装置。
【請求項8】
前記通信対象機器は、
RFIDタグであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の電波制御装置。
【請求項9】
複数の照射方向に所定電波を照射するアンテナと、前記アンテナと接続される電波制御装置と、前記電波制御装置と接続され物体までの距離を測定する測定装置とを有する電波制御システムであって、
前記電波制御装置は、
所定電波を複数の照射方向ごとに照射する前記アンテナによる照射範囲内にある通信対象機器以外の物体を、前記測定装置を介して検知する検知部と、
前記所定電波を通じて前記通信対象機器が通信可能となる所定の通信範囲全てを照射し、且つ、前記所定電波が前記物体で反射することで発生する通信不可部分が前記通信範囲内に発生しないように、前記複数の照射方向ごとの照射範囲を決定する照射範囲決定部と
を有することを特徴とする電波制御システム。
【請求項10】
所定電波を複数の照射方向ごとに照射する電波照射部による照射範囲内にある通信対象機器以外の物体を検知する検知工程と、
前記所定電波を通じて前記通信対象機器が通信可能となる所定の通信範囲全てを照射し、且つ、前記所定電波が前記物体で反射することで発生する通信不可部分が前記通信範囲内に発生しないように、前記複数の照射方向ごとの照射範囲を決定する照射範囲決定工程とを含むことを特徴とする電波制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−283699(P2010−283699A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136715(P2009−136715)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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