説明

電波探知装置

【課題】精度よく電波発信源の個体識別を行うことができる電波探知装置を得ることを目的とする。
【解決手段】電波発信源特定部14が、指向性アンテナ制御部13により指向性アンテナ3が電波の到来方位θmに指向されたのち、アンテナパターン検出部6bにより検出されたアンテナパターンΣ(θm,φ)を取得し、データベース部7により登録されている複数のアンテナパターンの中で、その取得したアンテナパターンΣ(θm,φ)と最も類似しているアンテナパターンを探索して、そのアンテナパターンを有する電波発信源1を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、レーダなどの電波発信源から放射された電波を受信し、その電波を分析することで、その電波発信源の個体識別を行う電波探知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、以下の特許文献1に開示されている電波探知装置では、水平面内の全方位から到来してくる電波を受信する無指向性アンテナを用いて、電波発信源から放射された電波を受信する。
電波探知装置は、電波発信源から放射された電波を受信すると、その電波から電波発信源のアンテナパターン(以下、「検出アンテナパターン」と称する)を検出する。
ただし、「アンテナパターン」は、電波発信源のアンテナが、どのようにエネルギーを空間に放射しているかを表すものであり、電波発信源の方位角に対する振幅特性・位相特性を表している。
【0003】
電波探知装置は、予め、個体識別対象である複数の電波発信源(例えば、電波発信源A、電波発信源B、電波発信源C・・・)のアンテナパターン(以下、「登録アンテナパターン」と称する)を登録しているデータベースを備えている。このデータベースには、電波発信源のアンテナパターンと一緒に、当該電波発信源を識別するユニークな個体情報が登録されている。
【0004】
電波探知装置は、受信電波から検出アンテナパターンを検出すると、その検出アンテナパターンとデータベースに登録されている複数の登録アンテナパターンとを照合して、その検出アンテナパターンと最も類似している登録アンテナパターンを特定する。
電波探知装置は、検出アンテナパターンと最も類似している登録アンテナパターンを特定すると、その登録アンテナパターンを有する電波発信源の個体情報を出力する。
これにより、電波を放射している電波発信源を識別することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−270326号公報(段落番号[0015]から[0027]、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の電波探知装置は以上のように構成されているので、無指向性アンテナを用いて、電波発信源から放射された電波を受信して、その電波から電波発信源のアンテナパターンを検出している。このため、指向性アンテナを用いて、電波発信源から放射された電波を受信する場合のように、指向性アンテナを電波発信源の電波到来方向に指向させる必要はない。しかし、正確に電波発信源の電波到来方向を指向している指向性アンテナを用いて、電波発信源から放射された電波を受信して、その電波から電波発信源のアンテナパターンを検出する場合よりも、アンテナパターンの検出精度が低くなるため、電波発信源の個体識別精度が低くなるなどの課題があった。
【0007】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、精度よく電波発信源の個体識別を行うことができる電波探知装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る電波探知装置は、無指向性アンテナを用いて受信された電波から電波発信源のアンテナパターンを検出する第1のアンテナパターン検出手段と、指向性アンテナを用いて受信された電波から指向性アンテナのアンテナパターンと電波発信源のアンテナパターンが合成されているアンテナパターンを検出する第2のアンテナパターン検出手段と、第1のアンテナパターン検出手段により検出されたアンテナパターンの振幅値と第2のアンテナパターン検出手段により検出されたアンテナパターンの振幅値を比較して、電波の到来方位を検出する電波到来方位検出手段と、電波到来方位検出手段により検出された電波の到来方位に指向性アンテナを指向させる指向性アンテナ制御手段とを設け、電波発信源特定手段が、指向性アンテナ制御手段により指向性アンテナが電波の到来方位に指向されたのち、第2のアンテナパターン検出手段により検出されたアンテナパターンを取得し、アンテナパターン登録手段により登録されている複数のアンテナパターンの中で、その取得したアンテナパターンと最も類似しているアンテナパターンを探索して、そのアンテナパターンを有する電波発信源を特定するようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、無指向性アンテナを用いて受信された電波から電波発信源のアンテナパターンを検出する第1のアンテナパターン検出手段と、指向性アンテナを用いて受信された電波から指向性アンテナのアンテナパターンと電波発信源のアンテナパターンが合成されているアンテナパターンを検出する第2のアンテナパターン検出手段と、第1のアンテナパターン検出手段により検出されたアンテナパターンの振幅値と第2のアンテナパターン検出手段により検出されたアンテナパターンの振幅値を比較して、電波の到来方位を検出する電波到来方位検出手段と、電波到来方位検出手段により検出された電波の到来方位に指向性アンテナを指向させる指向性アンテナ制御手段とを設け、電波発信源特定手段が、指向性アンテナ制御手段により指向性アンテナが電波の到来方位に指向されたのち、第2のアンテナパターン検出手段により検出されたアンテナパターンを取得し、アンテナパターン登録手段により登録されている複数のアンテナパターンの中で、その取得したアンテナパターンと最も類似しているアンテナパターンを探索して、そのアンテナパターンを有する電波発信源を特定するように構成したので、精度よく電波発信源の個体識別を行うことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1による電波探知装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による電波探知装置の識別処理部8を示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1による電波探知装置の処理内容を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態2による電波探知装置の処理内容を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態3による電波探知装置を示す構成図である。
【図6】この発明の実施の形態3による電波探知装置の識別処理部10を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態3による電波探知装置の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による電波探知装置を示す構成図である。
図1において、電波発信源1は例えば艦船などに搭載されているレーダなどが該当し、図1の電波探知装置が個体識別を行う個体識別対象である。
無指向性アンテナ2は水平面内の全方位から到来してくる電波を受信するアンテナである。
指向性アンテナ3は水平面内を回転しながら、特定方位から到来してくる電波を受信するアンテナである。
【0012】
電波受信部4は無指向性アンテナ2を用いて、電波発信源1から放射された電波を受信する電波受信処理を実施して、その電波を示す電気信号である受信信号を諸元検出部6及び識別処理部8に出力する処理を実施する。なお、電波受信部4は第1の電波受信手段を構成している。
電波受信部5は指向性アンテナ3を用いて、電波発信源1から放射された電波を受信する電波受信処理を実施して、その電波を示す電気信号である受信信号を諸元検出部6及び識別処理部8に出力する処理を実施する。なお、電波受信部5は第2の電波受信手段を構成している。
【0013】
諸元検出部6はアンテナパターン検出部6a及びアンテナパターン検出部6bから構成されている。
アンテナパターン検出部6aは電波受信部4から出力された受信信号を分析して、無指向性アンテナ2により受信された電波の信号諸元(例えば、周波数、パルス幅、パルス繰り返し間隔(PRI:Pulse Repetition Interval)、方位など)を検出し、その信号諸元から電波発信源1のアンテナパターンΩ(θ,φ)を検出する処理を実施する。ただし、θは自身(電波探知装置)の方位角、φは相手(電波発信源1)の方位角である。なお、アンテナパターン検出部6aは第1のアンテナパターン検出手段を構成している。
【0014】
アンテナパターン検出部6bは電波受信部5から出力された受信信号を分析して、指向性アンテナ3により受信された電波の信号諸元(例えば、周波数、パルス幅、パルス繰り返し間隔、方位など)を検出し、その信号諸元から自身(電波探知装置の指向性アンテナ3)のアンテナパターンと相手(電波発信源1)のアンテナパターンが合成されているアンテナパターンΣ(θ,φ)を検出する処理を実施する。なお、アンテナパターン検出部6bは第2のアンテナパターン検出手段を構成している。
【0015】
図1の例では、諸元検出部6がアンテナパターン検出部6aとアンテナパターン検出部6bから構成されており、アンテナパターン検出部6aがアンテナパターンΩ(θ,φ)を検出する処理と、アンテナパターン検出部6bがアンテナパターンΣ(θ,φ)を検出する処理とが別個独立であるものを示しているが、必ずしも、諸元検出部6の構成がアンテナパターン検出部6aとアンテナパターン検出部6bに分かれている必要はなく、1つのアンテナパターン検出部からなる諸元検出部6がアンテナパターンΩ(θ,φ)とアンテナパターンΣ(θ,φ)を検出するようにしてもよい。
【0016】
データベース部7は例えばハードディスクなどの記録装置であり、予め、個体識別対象である複数の電波発信源(例えば、個体A、個体B、個体C・・・)のアンテナパターン(以下、「登録アンテナパターン」と称する)を登録している。このデータベース部7には、複数の電波発信源のアンテナパターンと一緒に、当該電波発信源を識別するユニークな個体情報が登録されている。なお、データベース部7はアンテナパターン登録手段を構成している。
識別処理部8は自アンテナパターン取得部11、電波到来方位検出部12、指向性アンテナ制御部13及び電波発信源特定部14から構成されており、現在電波を放射している電波発信源1の個体識別処理を実施する。
【0017】
ここで、図2はこの発明の実施の形態1による電波探知装置の識別処理部8を示す構成図である。
図2において、自アンテナパターン取得部11はアンテナパターン検出部6aにより検出されたアンテナパターンΩ(θ,φ)とアンテナパターン検出部6bにより検出されたアンテナパターンΣ(θ,φ)の受信レベルを振幅比較して、その振幅比較結果Σ(θ,φ)/Ω(θ,φ)から自身(電波探知装置の指向性アンテナ3)のアンテナパターンG(θ,φ)を取得する処理を実施する。
【0018】
電波到来方位検出部12は自アンテナパターン取得部11により検出された自身(電波探知装置の指向性アンテナ3)のアンテナパターンG(θ,φ)から、電波の到来方位θmを検出する処理を実施する。
なお、自アンテナパターン取得部11及び電波到来方位検出部12から電波到来方位検出手段が構成されている。
【0019】
指向性アンテナ制御部13は例えば指向性アンテナ3のアクチュエータ(図示せず)を制御することで、電波到来方位検出部12により検出された電波の到来方位θmに指向性アンテナ3を指向させる処理を実施する。なお、指向性アンテナ制御部13は指向性アンテナ制御手段を構成している。
電波発信源特定部14は指向性アンテナ制御部13により指向性アンテナ3が電波の到来方位θmに指向されたのち、アンテナパターン検出部6bにより検出されたアンテナパターン(以下、「検出アンテナパターン」と称する)を取得し、データベース部7により登録されている複数の登録アンテナパターンの中で、その検出アンテナパターンと最も類似している登録アンテナパターンを探索して、その登録アンテナパターンを有する電波発信源を特定する処理を実施する。なお、電波発信源特定部14は電波発信源特定手段を構成している。
【0020】
図1の電波探知装置の構成要素である電波受信部4,5、諸元検出部6及び識別処理部8のそれぞれが専用のハードウェア(例えば、CPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなど)で構成されているものを想定しているが、電波探知装置がコンピュータで構成される場合、電波受信部4,5、諸元検出部6及び識別処理部8の処理内容が記述されているプログラムをコンピュータのメモリに格納し、当該コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにしてもよい。
図3はこの発明の実施の形態1による電波探知装置の処理内容を示すフローチャートである。
【0021】
次に動作について説明する。
個体識別対象である電波発信源1は、アンテナを回転させながら、電波の放射を開始する。
電波受信部4は、水平面内の全方位から到来してくる電波を受信する無指向性アンテナ2を用いて、電波発信源1から放射された電波を受信する電波受信処理を実施し、その電波を示す電気信号である受信信号を諸元検出部6及び識別処理部8に出力する(ステップST1)。
電波受信部4が電波を受信して、その受信信号を出力する処理内容自体は公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
【0022】
また、電波受信部5は、水平面内を回転しながら、特定方位から到来してくる電波を受信する指向性アンテナ3を用いて、電波発信源1から放射された電波を受信する電波受信処理を実施し、その電波を示す電気信号である受信信号を諸元検出部6及び識別処理部8に出力する(ステップST2)。
電波受信部5が電波を受信して、その受信信号を出力する処理内容自体は公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
【0023】
諸元検出部6のアンテナパターン検出部6aは、電波受信部4から受信信号を受けると、その受信信号を分析して、無指向性アンテナ2により受信された電波の信号諸元(例えば、周波数、パルス幅、パルス繰り返し間隔、方位など)を検出し、その信号諸元から相手(電波発信源1)のアンテナパターンΩ(θ,φ)を検出する(ステップST3)。
ただし、θは自身(電波探知装置)の方位角、φは相手(電波発信源1)の方位角である。
無指向性アンテナ2は、指向性アンテナ3のように回転していないので、アンテナパターン検出部6aにより検出されるアンテナパターンΩ(θ,φ)は、相手(電波発信源1)のアンテナパターンそのものとなる。
なお、アンテナパターンは、方位角に対する振幅特性・位相特性を表すものであるが、アンテナパターン検出部6aがアンテナパターンを検出する処理自体は公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
【0024】
諸元検出部6のアンテナパターン検出部6bは、電波受信部5から受信信号を受けると、その受信信号を分析して、指向性アンテナ3により受信された電波の信号諸元(例えば、周波数、パルス幅、パルス繰り返し間隔、方位など)を検出し、その信号諸元から自身(電波探知装置の指向性アンテナ3)のアンテナパターンと相手(電波発信源1)のアンテナパターンが合成されているアンテナパターンΣ(θ,φ)を検出する(ステップST4)。
指向性アンテナ3は回転しており、電波発信源1のアンテナも回転しているので、アンテナパターン検出部6bにより検出されるアンテナパターンΣ(θ,φ)は、自身(電波探知装置の指向性アンテナ3)のアンテナパターンと、相手(電波発信源1)のアンテナパターンとが合成されているアンテナパターンとなる。
なお、アンテナパターン検出部6bがアンテナパターンを検出する処理自体は公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
【0025】
識別処理部8の自アンテナパターン取得部11は、アンテナパターン検出部6aが相手(電波発信源1)のアンテナパターンΩ(θ,φ)を検出し、アンテナパターン検出部6bが合成アンテナパターンΣ(θ,φ)を検出すると、下記に示すように、相手(電波発信源1)のアンテナパターンΩ(θ,φ)と合成アンテナパターンΣ(θ,φ)の受信レベルを振幅比較することで、自身(電波探知装置の指向性アンテナ3)のアンテナパターンG(θ,φ)を取得する(ステップST5)。
G(θ,φ)=Σ(θ,φ)/Ω(θ,φ)
【0026】
識別処理部8の電波到来方位検出部12は、自アンテナパターン取得部11が自身(電波探知装置の指向性アンテナ3)のアンテナパターンG(θ,φ)を取得すると、そのアンテナパターンG(θ,φ)から、電波の到来方位θmを検出する(ステップST6)。
例えば、アンテナパターンG(θ,φ)の中で、電波の振幅値が最大になる電波発信源の方位角を電波の到来方位θmとして検出する。
【0027】
識別処理部8の指向性アンテナ制御部13は、電波到来方位検出部12が電波の到来方位θmを検出すると、例えば、指向性アンテナ3のアクチュエータ(図示せず)を制御することで、電波の到来方位θmに指向性アンテナ3を指向させる処理を実施する(ステップST7)。
【0028】
識別処理部8の電波発信源特定部14は、指向性アンテナ制御部13により指向性アンテナ3が電波の到来方位θmに指向されたのち、アンテナパターン検出部6bにより検出されたアンテナパターンΣ(θm,φ)(以下、「検出アンテナパターン」と称する)を取得する(ステップST8)。
電波発信源特定部14は、検出アンテナパターンΣ(θm,φ)を取得すると、その検出アンテナパターンΣ(θm,φ)とデータベース部7により登録されている複数の登録アンテナパターン(例えば、個体Aのアンテナパターン、個体Bのアンテナパターン、個体Cのアンテナパターン・・・)とを照合する(ステップST9)。
なお、電波発信源特定部14におけるアンテナパターンの照合処理自体は公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
【0029】
電波発信源特定部14は、アンテナパターンの照合結果を参照して、データベース部7により登録されている複数の登録アンテナパターンの中で、その検出アンテナパターンΣ(θm,φ)と最も類似している登録アンテナパターンを探索し、その登録アンテナパターンを有する電波発信源の個体情報を出力する(ステップST10)。
これにより、電波を放射している電波発信源1の個体識別処理が完了する。
【0030】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、無指向性アンテナ2を用いて受信された電波から電波発信源1のアンテナパターンΩ(θ,φ)を検出するアンテナパターン検出部6aと、指向性アンテナ3を用いて受信された電波から指向性アンテナ3のアンテナパターンと電波発信源1のアンテナパターンが合成されているアンテナパターンΣ(θ,φ)を検出するアンテナパターン検出部6bと、アンテナパターン検出部6aにより検出されたアンテナパターンΩ(θ,φ)の振幅値とアンテナパターン検出部6bにより検出されたアンテナパターンΣ(θ,φ)の振幅値を比較して、電波の到来方位θmを検出する電波到来方位検出部12と、電波到来方位検出部12により検出された電波の到来方位θmに指向性アンテナ3を指向させる指向性アンテナ制御部13とを設け、電波発信源特定部14が、指向性アンテナ制御部13により指向性アンテナ3が電波の到来方位θmに指向されたのち、アンテナパターン検出部6bにより検出されたアンテナパターンΣ(θm,φ)を取得し、データベース部7により登録されている複数のアンテナパターンの中で、その取得したアンテナパターンΣ(θm,φ)と最も類似しているアンテナパターンを探索して、そのアンテナパターンを有する電波発信源1を特定するように構成したので、精度よく電波発信源の個体識別を行うことができる効果を奏する。
【0031】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、指向性アンテナ制御部13により指向性アンテナ3が電波の到来方位θmに指向されたのち、電波発信源特定部14が、アンテナパターン検出部6bにより検出されたアンテナパターンΣ(θm,φ)と、データベース部7により登録されている複数の登録アンテナパターンとを照合するものについて示したが、指向性アンテナ3の1回転分のアンテナパターンΣ(θm,φ)だけでなく、指向性アンテナ3のN(Nは2以上の整数)回転分のアンテナパターンΣ(θm,φ)を取得して、N個のアンテナパターンΣ(θm,φ)を重ね合わせて合成し、合成後のアンテナパターンΣ(θm,φ)とデータベース部7により登録されている複数の登録アンテナパターンとを照合するようにしてもよい。
【0032】
具体的には、以下の通りである。
図4はこの発明の実施の形態2による電波探知装置の処理内容を示すフローチャートである。
【0033】
識別処理部8の指向性アンテナ制御部13は、上記実施の形態1と同様にして、電波到来方位検出部12が電波の到来方位θmを検出すると、例えば、指向性アンテナ3のアクチュエータ(図示せず)を制御することで、電波の到来方位θmに指向性アンテナ3を指向させる処理を実施する(ステップST7)。
【0034】
識別処理部8の電波発信源特定部14は、指向性アンテナ制御部13により指向性アンテナ3が電波の到来方位θmに指向されたのち、アンテナパターン検出部6bにより検出されたアンテナパターンΣ(θm,φ)(以下、「検出アンテナパターン」と称する)を取得する。
これにより、指向性アンテナ3の1回転分の検出アンテナパターンΣ(θm,φ)が得られるが、この実施の形態2では、さらに、指向性アンテナ3のN−1回転分のアンテナパターンΣ(θm,φ)を取得することで、合計N転分のアンテナパターンΣ(θm,φ)を取得する(ステップST11)。
【0035】
電波発信源特定部14は、N転分のアンテナパターンΣ(θm,φ)を取得すると、N個のアンテナパターンΣ(θm,φ)を重ね合わせることで合成する(ステップST12)。
そして、電波発信源特定部14は、合成後のアンテナパターンΣ(θm,φ)とデータベース部7により登録されている複数の登録アンテナパターン(例えば、個体Aのアンテナパターン、個体Bのアンテナパターン、個体Cのアンテナパターン・・・)とを照合する(ステップST13)。
【0036】
電波発信源特定部14は、アンテナパターンの照合結果を参照して、データベース部7により登録されている複数の登録アンテナパターンの中で、合成後のアンテナパターンΣ(θm,φ)と最も類似している登録アンテナパターンを探索し、その登録アンテナパターンを有する電波発信源の個体情報を出力する(ステップST14)。
これにより、電波を放射している電波発信源1の個体識別処理が完了する。
【0037】
以上で明らかなように、この実施の形態2によれば、指向性アンテナ制御部13により指向性アンテナ3が電波の到来方位θmに指向されたのち、アンテナパターン検出部6bにより検出されたアンテナパターンΣ(θm,φ)を複数回取得して、複数のアンテナパターンを重ね合わせて合成し、データベース部7により登録されている複数のアンテナパターンの中で、合成後のアンテナパターンΣ(θm,φ)と最も類似しているアンテナパターンを探索して、そのアンテナパターンを有する電波発信源を特定するように構成したので、上記実施の形態1よりも更に、精度が良いアンテナパターンΣ(θm,φ)が得られるようになる。そのため、更に精度よく電波発信源の個体識別を行うことができる効果を奏する。
【0038】
実施の形態3.
図5はこの発明の実施の形態3による電波探知装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
固定型指向性アンテナ9は1面に複数の素子が配列されており、各素子が特定方位から到来してくる電波を受信するアンテナである。
識別処理部10は自アンテナパターン取得部11、電波到来方位検出部12、指向性アンテナ制御部13及び電波発信源特定部15から構成されており、現在電波を放射している電波発信源1の個体識別処理を実施する。
【0039】
ここで、図6はこの発明の実施の形態3による電波探知装置の識別処理部10を示す構成図であり、図において、図2と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
電波発信源特定部15は指向性アンテナ制御部13により固定型指向性アンテナ9が電波の到来方位θmに指向されたのち、アンテナパターン検出部6bにより固定型指向性アンテナ9に配列されている各素子の受信電波からそれぞれ検出された複数のアンテナパターンを取得して、複数のアンテナパターンを重ね合わせて合成し、データベース部7に登録されている複数のアンテナパターンの中で、合成後のアンテナパターンと最も類似しているアンテナパターンを探索して、そのアンテナパターンを有する電波発信源を特定する処理を実施する。なお、電波発信源特定部15は電波発信源特定手段を構成している。
【0040】
図5の電波探知装置の構成要素である電波受信部4,5、諸元検出部6及び識別処理部10のそれぞれが専用のハードウェア(例えば、CPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなど)で構成されているものを想定しているが、電波探知装置がコンピュータで構成される場合、電波受信部4,5、諸元検出部6及び識別処理部10の処理内容が記述されているプログラムをコンピュータのメモリに格納し、当該コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにしてもよい。
図7はこの発明の実施の形態3による電波探知装置の処理内容を示すフローチャートである。
【0041】
次に動作について説明する。
上記実施の形態1,2では、指向性アンテナ3が、水平面内を回転する回転型アンテナである例を示したが、図5に示すように、1面にN個の素子(Nは2以上の整数)が配列されている固定型アンテナであってもよい。
電波発信源1の方位角を電波の到来方位θmとして検出した後に、指向性アンテナ3を指向させる際、上記実施の形態1,2のように、回転型の指向性アンテナ3を用いる場合、最低でも指向性アンテナ3を1回転させなければ、アンテナパターンΣ(θm,φ)を検出することができない。
この実施の形態3のように、1面にN個(例えば、4個)の素子が配列されている固定型指向性アンテナ9を用いる場合、指向性アンテナを1回転させることなく、電波の到来方位θmに近い1面の各素子の受信電波からそれぞれ検出された複数のアンテナパターンを指向合成することで、アンテナパターンΣ(θm,φ)を検出することができる。
【0042】
具体的には、以下のとおりである。
識別処理部10の指向性アンテナ制御部13は、上記実施の形態1,2と同様にして、電波到来方位検出部12が電波の到来方位θmを検出すると、電波の到来方位θmに固定型指向性アンテナ9を指向させる処理を実施する(ステップST15)。
【0043】
識別処理部10の電波発信源特定部15は、指向性アンテナ制御部13により固定型指向性アンテナ9が電波の到来方位θmに指向されたのち、アンテナパターン検出部6bにより検出されたアンテナパターンΣ(θm,φ)(以下、「検出アンテナパターン」と称する)を取得する。
この実施の形態3では、電波の到来方位θmに指向させられた固定型指向性アンテナ9の1面に配置されているN個の素子の受信電波からそれぞれ検出されたN個の検出アンテナパターンΣ(θm,φ)を取得する(ステップST16)。
【0044】
電波発信源特定部15は、N個の検出アンテナパターンΣ(θm,φ)を取得すると、N個の検出アンテナパターンΣ(θm,φ)を指向合成する(ステップST17)。
そして、電波発信源特定部15は、合成後のアンテナパターンΣ(θm,φ)とデータベース部7により登録されている複数の登録アンテナパターンとを照合する(ステップST18)。
【0045】
電波発信源特定部15は、アンテナパターンの照合結果を参照して、データベース部7により登録されている複数の登録アンテナパターンの中で、合成後のアンテナパターンΣ(θm,φ)と最も類似している登録アンテナパターンを探索し、その登録アンテナパターンを有する電波発信源の個体情報を出力する(ステップST19)。
これにより、電波を放射している電波発信源1の個体識別処理が完了する。
【0046】
以上で明らかなように、この実施の形態3によれば、指向性アンテナ制御部13により固定型指向性アンテナ9が電波の到来方位θmに指向されたのち、アンテナパターン検出部6bにより固定型指向性アンテナ9に配列されている各素子の受信電波からそれぞれ検出された複数のアンテナパターンΣ(θm,φ)を取得して、複数のアンテナパターンΣ(θm,φ)を重ね合わせて合成し、データベース部7に登録されている複数のアンテナパターンの中で、合成後のアンテナパターンΣ(θm,φ)と最も類似しているアンテナパターンを探索して、そのアンテナパターンを有する電波発信源1を特定するように構成したので、指向性アンテナが回転する時間分を短縮することができ、上記実施の形態1,2よりも短い時間で、アンテナパターンΣ(θm,φ)が得られるようになる。そのため、さらに短い時間で電波発信源1の個体識別を行うことができる効果を奏する。また、指向性アンテナを固定型とすることで、メンテナンスがし易くなる効果を奏する。
【符号の説明】
【0047】
1 電波発信源、2 無指向性アンテナ、3 指向性アンテナ、4 電波受信部(第1の電波受信手段)、5 電波受信部(第2の電波受信手段)、6 諸元検出部、6a アンテナパターン検出部(第1のアンテナパターン検出手段)、6b アンテナパターン検出部(第2のアンテナパターン検出手段)、7 データベース部(アンテナパターン登録手段)、8 識別処理部、9 固定型指向性アンテナ、10 識別処理部、11 自アンテナパターン取得部(電波到来方位検出手段)、12 電波到来方位検出部(電波到来方位検出手段)、13 指向性アンテナ制御部(指向性アンテナ制御手段)、14,15 電波発信源特定部(電波発信源特定手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面内の全方位から到来してくる電波を受信する無指向性アンテナを用いて、電波発信源から放射された電波を受信する第1の電波受信手段と、水平面内を回転しながら、特定方位から到来してくる電波を受信する指向性アンテナを用いて、上記電波発信源から放射された電波を受信する第2の電波受信手段と、上記第1の電波受信手段により受信された電波から上記電波発信源のアンテナパターンを検出する第1のアンテナパターン検出手段と、上記第2の電波受信手段により受信された電波から上記指向性アンテナのアンテナパターンと上記電波発信源のアンテナパターンが合成されているアンテナパターンを検出する第2のアンテナパターン検出手段と、予め複数の電波発信源のアンテナパターンを登録しているアンテナパターン登録手段と、上記第1のアンテナパターン検出手段により検出されたアンテナパターンの振幅値と上記第2のアンテナパターン検出手段により検出されたアンテナパターンの振幅値を比較して、電波の到来方位を検出する電波到来方位検出手段と、上記電波到来方位検出手段により検出された電波の到来方位に上記指向性アンテナを指向させる指向性アンテナ制御手段と、上記指向性アンテナ制御手段により上記指向性アンテナが電波の到来方位に指向されたのち、上記第2のアンテナパターン検出手段により検出されたアンテナパターンを取得し、上記アンテナパターン登録手段により登録されている複数のアンテナパターンの中で、その取得したアンテナパターンと最も類似しているアンテナパターンを探索して、上記アンテナパターンを有する電波発信源を特定する電波発信源特定手段とを備えた電波探知装置。
【請求項2】
電波発信源特定手段は、指向性アンテナ制御手段により指向性アンテナが電波の到来方位に指向されたのち、第2のアンテナパターン検出手段により検出されたアンテナパターンを複数回取得して、複数のアンテナパターンを重ね合わせて合成し、アンテナパターン登録手段により登録されている複数のアンテナパターンの中で、合成後のアンテナパターンと最も類似しているアンテナパターンを探索して、上記アンテナパターンを有する電波発信源を特定することを特徴とする請求項1記載の電波探知装置。
【請求項3】
水平面内の全方位から到来してくる電波を受信する無指向性アンテナを用いて、電波発信源から放射された電波を受信する第1の電波受信手段と、1面に複数の素子が配列されている固定型の指向性アンテナを用いて、上記電波発信源から放射された電波を受信する第2の電波受信手段と、上記第1の電波受信手段により受信された電波から上記電波発信源のアンテナパターンを検出する第1のアンテナパターン検出手段と、上記第2の電波受信手段により受信された電波から上記指向性アンテナのアンテナパターンと上記電波発信源のアンテナパターンが合成されているアンテナパターンを検出する第2のアンテナパターン検出手段と、予め複数の電波発信源のアンテナパターンを登録しているアンテナパターン登録手段と、上記第1のアンテナパターン検出手段により検出されたアンテナパターンの振幅値と上記第2のアンテナパターン検出手段により検出されたアンテナパターンの振幅値を比較して、電波の到来方位を検出する電波到来方位検出手段と、上記電波到来方位検出手段により検出された電波の到来方位に上記指向性アンテナを指向させる指向性アンテナ制御手段と、上記指向性アンテナ制御手段により上記指向性アンテナが電波の到来方位に指向されたのち、上記第2のアンテナパターン検出手段により上記指向性アンテナに配列されている各素子の受信電波からそれぞれ検出された複数のアンテナパターンを取得して、複数のアンテナパターンを重ね合わせて合成し、上記アンテナパターン登録手段により登録されている複数のアンテナパターンの中で、合成後のアンテナパターンと最も類似しているアンテナパターンを探索して、上記アンテナパターンを有する電波発信源を特定する電波発信源特定手段とを備えた電波探知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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