説明

電波腕時計

【課題】GPS衛星等の衛星からの電波を受信し、時刻を修正する電波腕時計において、現在の閏秒の受信状態に関する、電波腕時計が表示する時刻の精度を使用者に表示すること。
【解決手段】本発明に係る衛星からの送信波に含まれる現在の時刻に関する情報及び現在の閏秒に関する情報に基づいて内部時刻を修正する電波腕時計100は、受信された前記現在の時刻に関する情報の信頼性及び前記現在の閏秒に関する情報の信頼性に基づいて、前記内部時刻の精度に関する情報を表示する時刻精度情報表示手段6を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波腕時計に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、GPS(Global Positioning System)衛星からの衛星信号を受信し、かかる衛星信号に含まれるGPS時刻情報に基づいて時刻を修正するGPS付き腕時計が記載されている。同文献記載の発明では、取得したZカウント(TOW;Time of Week)に14秒のUTCオフセットを加えることにより協定世界時を算出している(段落0066)。
【0003】
特許文献2には、GPS衛星からの衛星信号に含まれるGPS時刻情報に基づいて時刻を修正する時計装置が記載されている。同文献記載の発明では、GPS衛星から閏秒補正データが送信される12.5分毎のタイミングで閏秒補正データを受信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−168620号公報
【特許文献2】特開2008−145287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
GPS衛星からの信号に含まれる時刻(GPS時刻)を示す情報であるTOWは、閏秒の修正がなされないため、UTC(協定世界時)からのずれが存在している。このずれは、不定期に行われる閏秒の追加又は削除の度に変化する。GPS衛星からの信号には、このずれである、現在の閏秒を示す情報が含まれており、GPS時刻を用いて標準時を求める際には、かかる現在の閏秒を示す情報を受信し、GPS時刻に得られた現在の閏秒を加算して正確なUTCを得たうえで、UTCにタイムゾーンに応じた時差を加えなければならない。この現在の閏秒を示す情報は12.5分毎に一回送信される。
【0006】
かかる事情は、GPS衛星からの信号に基づき時刻を修正する電波腕時計にも同様にあてはまる。しかしながら、1575.42MHzのUHF帯を用いるGPS衛星からの電波は、電波腕時計のような携帯機器にとり、その受信環境が刻々と変化するため、12.5分に一度しか送信されない現在の閏秒を示す情報を受信することは必ずしも容易ではない。そのため、電波腕時計の使用者に対し、現在の閏秒を示す情報を受信する必要があることを、何らかの手段により通知することが望ましい。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、GPS衛星等の衛星からの電波を受信し、時刻を修正する電波腕時計において、現在の閏秒の受信状態に関する、電波腕時計が表示する時刻の精度を使用者に表示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る衛星からの送信波に含まれる現在の時刻に関する情報及び現在の閏秒に関する情報に基づいて内部時刻を修正する電波腕時計は、受信された前記現在の時刻に関する情報の信頼性及び前記現在の閏秒に関する情報の信頼性に基づいて、前記内部時刻の精度に関する情報を表示する時刻精度情報表示手段を有する。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明によれば、GPS衛星等の衛星からの電波を受信し、時刻を修正する電波腕時計において、現在の閏秒の受信状態に関する、電波腕時計が表示する時刻の精度を使用者に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電波腕時計の平面図である。
【図2】電波腕時計の内部に配置された部材の位置関係を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る電波腕時計の機能ブロック図である。
【図4】GPS衛星から送信される信号のサブフレームの構成を示す概略図である。
【図5】サブフレーム1の構成を示す図である。
【図6】サブフレーム4のページ18の構成を示す図である。
【図7】第1の実施形態に係る電波腕時計の、現在の時刻に関する情報及び現在の閏秒に関する情報の信頼性を表示する動作を示すフローチャートである。
【図8】第1の実施形態に係る電波腕時計の、推定誤差を表示する動作を示すフローチャートである。
【図9】第1の実施形態に係る電波腕時計の、受信動作を示すフローチャートである。
【図10】TOW受信時の状態表示針の動作を示す図である。
【図11】ΔtLS受信時の状態表示針の動作を示す図である。
【図12】使用者にWNの信頼性を通知する電波腕時計の例を示す図である。
【図13】使用者にWNの信頼性を通知する電波腕時計の別の例を示す図である。
【図14】使用者にWNの信頼性を通知する電波腕時計のさらに別の例を示す図である。
【図15】日付表示部における、WNに信頼性が無いことを示す表示の別の例を示す図である。
【図16】本発明の第2の実施形態に係る電波腕時計の平面図である。
【図17】本発明の第3の実施形態に係る電波腕時計の平面図である。
【図18】本発明の第4の実施形態に係る電波腕時計の平面図である。
【図19】第4の実施形態に係る電波腕時計の状態遷移図である。
【図20】第4の実施形態に係る状態遷移を実施するための動作を示すフローチャートである。
【図21】本発明の第5の実施形態に係る電波腕時計の平面図である。
【図22】本発明の第6の実施形態に係る電波腕時計の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電波腕時計100を示す平面図である。同図には、電波腕時計100の外装である胴1、胴1内に配置された文字板2と時刻を示す指針である時針3、分針4及び秒針5が同軸上に配置されて示されている。文字板2は、衛星から到達する電波が透過し、文字板2の背後に配置されたパッチアンテナで受信されるよう、非磁性かつ非導電性の材料、例えば、合成樹脂で形成される。また、時針3、分針4及び秒針5とは別の軸上に、電波腕時計100の状態を表示する指針である状態表示針6が配置されており、文字板2上には、電波腕時計100の種々の状態を示す目盛である状態表示目盛7が記されている。また、胴1の3時側の側面には使用者が種々の操作を行うための竜頭8、ボタン9が配置されている。胴1の12時側及び6時側の側面からは、バンドを固定するためのバンド固定部10が伸びている。
【0012】
なお、同図に示した電波腕時計100のデザインは一例である。ここで示したもの以外にも、例えば、胴1を丸型でなく角型にしてもよいし、竜頭8やボタン9の有無、数、配置は任意である。また、本実施形態では、指針を時針3、分針4、秒針5及び状態表示針の4本としているが、これに限定されず、秒針5を省略したり別軸で設けたり、あるいは、秒針を状態表示針6を兼ねるものとしても良い。さらに、曜日、タイムゾーンやサマータイムの有無、電池の残量等、各種の表示を行う指針や、日付表示等を追加したりしてもよく、状態表示針6がこれらの表示を兼ねるものとしても良い。また、状態表示針6は時針3、分針4及び秒針5と同軸上に配置してもよい。
【0013】
なお、本明細書では、電波腕時計という用語を、腕時計であって、かつ、外部からの電波を受信し、当該電波に含まれる時刻に関する情報に基づき、腕時計内部に保持している時刻の情報である内部時刻を修正する機能を有している腕時計を指すものとして用いる。
【0014】
図2は、電波腕時計100の内部に配置された部材の位置関係を示す図である。同図では、参考のため、胴をはじめとする電波腕時計100の外装を二点鎖線で示した。
【0015】
符号11で示されているのは、GPS衛星からの電波を受信するパッチアンテナであり、その受信面が風防側を向くように配置される。パッチアンテナ11の横には、電池12が配置される。本実施形態では、電池12は充電可能な二次電池であり、ボタン型のリチウムイオン二次電池を用いている。そして、文字板に形成され、あるいは文字板の背後に設置された太陽電池により発電された電力が蓄積されるようになっている。
【0016】
ところで、一般に長波帯を用いて地上局から送信される標準電波を用いて時刻修正を行う電波時計では、フェライトあるいはアモルファス合金等の磁芯にコイルを巻いた形式のいわゆるバーアンテナが用いられることが多い。これに対し、本実施形態に係る電波腕時計100では、はるかに周波数の高いUHF帯を用いてGPS衛星から送信される信号を受信する。そのため、UHF帯の信号の受信に適した小型のアンテナとして、パッチアンテナ11を用いている。
【0017】
また、本実施形態では、電波腕時計100は太陽光発電による電力により駆動し、蓄電可能な二次電池を備えたものとして示したが、これに換え、一次電池を使用するものとしてもよい。その場合には、太陽電池は不要である。また、電池12の形状はボタン型に限定されず、任意である。さらに、二次電池としてリチウムイオン二次電池以外のもの、例えば、リチウムイオンキャパシタやニッケル水素畜電池を用いてもよい。
【0018】
符号13は、電波腕時計100全体の動作を制御するとともに、内部回路により時刻を計時するコントローラである。またパッチアンテナ11及び電池12を挟んだ反対側には、パッチアンテナ11により受信された信号をベースバンド信号へと変換する高周波回路14及び、ベースバンド信号より情報を抽出するデコード回路15の位置が示されている。
【0019】
なお、ここで示したコントローラ13、高周波回路14及びデコード回路15の配置は一例である。特に、本実施形態では高周波回路14とデコード回路15は、回路基板の両面の相対する位置に配置されており、両者をスルーホールで接続することにより、両者を結ぶ配線経路を短くし、寄生容量やインピーダンスを小さくしてノイズの影響を低減している。しかしながら、これに限定されず、高周波回路14とデコード回路15を回路基板の同一の面に配置してもよいし、高周波回路14とデコード回路15の機能を統合したワンチップの集積回路を用いてもよい。
【0020】
図3は、本実施形態に係る電波腕時計100の機能ブロック図である。パッチアンテナ11により受信されたGPS衛星からの電波は、高周波回路14によりベースバンド信号に変換され、デコード回路15により時刻に関する情報であるTOWや必要に応じてWNWeek Number)、あるいは現在の閏秒に関する情報である現在の閏秒ΔtLS、並びに、現在の閏秒の更新を予告する情報である閏秒の更新週WNLSF、閏秒の更新日DN及び更新後の閏秒ΔtLSFが抽出される。抽出された各情報は、記憶部16に記憶される。このとき、各情報が受信された日時を同時に記憶しておくことが望ましい。記憶部16は、一般的な半導体メモリであってよく、DRAM等の揮発性メモリ、EEPROM等の不揮発性メモリを用いてよい。
【0021】
記憶部16に記憶された各種情報は、コントローラ13から随時読み出される。コントローラ13は、電波腕時計100全体の動作を制御するマイクロコンピュータであると同時に、その内部に時計回路を有しており、かかる時計回路が保持する時刻である、内部時刻を計時する機能を有している。時計回路の精度は、用いる水晶振動子の精度や温度等の使用環境にも依存するが、月差±15秒程度である。もちろん、この精度は、必要に応じて任意に設定して良い。また、時計回路により保持される内部時刻は、記憶部16に記憶された現在の時刻に関する情報に基づいて適宜修正されることにより、正確に保たれる。
【0022】
コントローラ13には、使用者等による外部からの操作を受け付ける入力手段(竜頭8、ボタン9)からの信号が入力される。また、コントローラ13からは、内部時刻に基づいてモータ17を駆動する信号が出力され、指針(時針3、分針4及び秒針5)が駆動されることにより、時刻が表示される。さらに、電波腕時計100の状態に応じた信号がモータ18に出力され、状態表示針6が駆動される。なお、指針を駆動するモータ17は1つに限定されず、独立して動作させたい指針の数に応じて複数のモータを設けてよい。
【0023】
また、太陽電池19による発電により得られた電力は、電池12に蓄積される。そして、電池12からは、高周波回路14、デコード回路15、記憶部16及びコントローラ13に電力が供給される。スイッチ20は、高周波回路14及びデコード回路15への電力供給のオン/オフを切り替えるスイッチであり、コントローラ13により制御される。高周波数で動作する高周波回路14とデコード回路15はその消費電力が大きいため、コントローラ13は、衛星からの電波を受信する時のみスイッチ20をオンとして高周波回路14及びデコード回路15を動作させ、それ以外の時はスイッチ20をオフとして、消費電力を低減する。また、本実施形態では特に設けていないが、記憶部16が不揮発性のメモリを用いている場合に、消費電力の低減のため、記憶部16に電力を供給する経路にもスイッチを設け、コントローラ13が記憶された情報を読み出すときのみ記憶部16に電力を供給するようにしてもよい。
【0024】
なお、太陽電池19からは、その発電量を示す情報がコントローラ13に入力されるようにされているが、これは、必要無ければ省略してもよい。
【0025】
電波の受信は、竜頭8やボタン9等の入力手段による使用者からの要求がなされた時や、あらかじめ定められた時刻となったとき、前回の時刻修正があった時刻からの経過時間、あるいは太陽電池19の発電量やその他の電波腕時計100の周囲の環境を示す情報等に基づいて行うようにして良い。受信時の動作については、その詳細を後述する。
【0026】
続いて、本実施形態に係る電波腕時計が受信するGPS衛星からの信号について説明する。GPS衛星から送信される信号は、L帯と呼ばれる1575.42MHzをキャリア周波数としており、1.023MHzの周期でBPSK(二位相偏移変調)により変調された各GPS衛星固有のC/Aコードにより符号化され、いわゆるCDMA(Code Division Multiple Access;符号分割多元接続)の手法により多重化されている。C/Aコード自体は1023ビット長であり、信号に乗せられるメッセージ・データは20個のC/Aコード毎に変化する。すなわち、1ビットの情報は、20msの信号として送信される。
【0027】
GPS衛星から送信される信号は、1500ビット、すなわち30秒を単位とするフレームに区切られ、さらに、フレームは5つのサブフレームに分けられる。図4は、GPS衛星から送信される信号のサブフレームの構成を示す概略図である。各サブフレームは、300ビットの情報を含む6秒間の信号であり、順番に1から5のサブフレーム番号が付けられている。GPS衛星は、サブフレーム1から順次送信を行い、サブフレーム5の送信を終えると、再度サブフレーム1の送信に戻り、以降同様に繰り返す。
【0028】
各サブフレームの先頭では、TLMとして示すテレメトリワードが送信される。TLMは、各サブフレームの先頭を示すコードと、地上管制局の情報を含んでいる。続いて、HOWとして示すハンドオーバワードが送信させる。HOWには、Zカウントとも呼ばれる現在の時刻に関する情報であるTOW(Time Of Week)が含まれている。これは、GPS時刻の日曜日の午前0時からカウントした1.5秒単位の時間であり、次のサブフレームが開始される時刻を示している。
【0029】
HOWに続く情報は、各サブフレームごとに異なっており、サブフレーム1には、衛星時計の補正データが含まれている。図5は、サブフレーム1の構成を示す図である。サブフレーム1には、HOWに続いてWN(Week Number)として示す週番号が含まれている。WNは、1980年1月6日を0週としてカウントした現在の週を示す数値である。したがって、WN及びTOWを受信することにより、GPS時刻における正確な日時が得られる。なお、WNは一度受信に成功すれば、電波腕時計が内部時刻を何らかの理由、例えば、電池切れ等により失わない限り、内部時刻の計時により正しい値を知ることができるため、再度の受信は必要ない。なお、WNは10ビットであるため、1024週を経過すると再び0に戻る。また、GPS衛星からの信号には、この他にも種々の情報が含まれるが、本発明に直接関係の無い情報については、図に示すにとどめ、その説明は省略する。
【0030】
再び図4に戻ると、サブフレーム2及びサブフレーム3にはHOWに続いてエフェメリスと呼ばれる各衛星の軌道情報が含まれているが、その説明は本明細書では割愛する。
【0031】
さらに、サブフレーム4及び5には、HOWに続いてアルマナックと呼ばれる全GPS衛星の概略軌道情報が含まれる。サブフレーム4及び5に収容される情報は、その情報量が多いため、ページと呼ばれる単位に分割されて送信される。そして、サブフレーム4及び5により送信されるデータはそれぞれページ1〜25に分割されており、フレームごとに異なるページの内容が順番に送信される。したがって、全てのページの内容を送信するには25フレーム、すなわち、12.5分を要することになる。
【0032】
図6は、サブフレーム4のページ18の構成を示す図である。同図に示すように、サブフレーム4のページ18の241ビット目には、現在の閏秒に関する情報である現在の閏秒ΔtLSが含まれる。ΔtLSは、UTCとGPS時刻とのずれを秒数で示したものであり、GPS時刻にΔtLSを加算することによりUTCが求められる。
【0033】
また、同ページの249ビット目からは、現在の閏秒の更新を予告する情報である、閏秒の更新週WNLSF、閏秒の更新日DN及び更新後の閏秒ΔtLSFが含まれている。
【0034】
以上の説明より明らかなように、TOWは全てのサブフレームに含まれているために6秒毎に、WNはサブフレーム1に含まれているために30秒毎に取得可能であるのに対し、ΔtLS、WNLSF、DN及びΔtLSFは25フレームに一度しか送信されないため、12.5分毎にしか取得することができない。
【0035】
なお、ここで閏秒について簡単に説明しておくと、閏秒は、地球の自転周期のずれ等を補正するためのものであり、天文学的な観測結果に基づき、必要に応じて毎月1日の午前0時に追加あるいは削除されうるものである。しかしながら、これまでのところ、不定期に1月1日午前0時又は7月1日午前0時のいずれか若しくはその両方における追加のみがなされている。GPS衛星からの信号に含まれるΔtLSは、かかる閏秒の追加により累積されたGPS時刻とUTCとのずれを示すものであり、UTCに閏秒の追加が行われた際に更新されるものと思われる。
【0036】
また、閏秒の追加は予告されることが多い。GPS衛星からの信号に含まれるWNLSF、DN及びΔtLSFはかかる予告に基づき更新されるものと考えられる。予告に基づくΔtLSの更新があった後は、WNLSF、DN及びΔtLSFは特に更新が行われることなくそのままとなっている。したがって、WNLSF及びDNにより示される日時が現在の日時より将来のものであれば、それはΔtLSの更新を予告するものであり、その時点からΔtLSFがΔtLSとして適用されることを示す。一方、WNLSF及びDNにより示される日時が過去のものである場合には、現時点での閏秒の更新は予告されていないことを示し、ΔtLSとΔtLSFは同じ値となる。
【0037】
再び図1に戻ると、状態表示目盛7には、状態表示針6が指し示す種々の電波腕時計100の状態が記されており、本実施形態では、それらは、受信動作表示部21、受信環境表示部22及び、時刻精度表示部23に分けられる。
【0038】
受信動作表示部21は、電波腕時計100が現在受信に関するどのような動作中であるかを示す表示であり、「R」及び「W」の表示からなる。「R」は電波腕時計100が現在電波を受信中であることを示し、「W」は、電波腕時計100が電波受信のため待機中であることを示している。これについては後ほど詳述する。また、受信環境表示部22は、電波腕時計100がおかれている環境が衛星からの電波の受信にどれほど適しているかを示す表示である。本実施形態では、太陽電池からの発電量(又は出力電圧)に基づいて、受信環境を「1」、「2」及び「3」の3段階で示す。これは、太陽電池に強い光があたり、発電量が高い状況は、日中の屋外や窓際など、直接衛星が見通せる環境にある可能性が高いことに基づいている。
【0039】
なお、これは一例であり、この他にも、一時的に高周波回路を動作させ、任意のGPS衛星を示すC/Aコードと受信電波との相関をとり、得られた相関値に基づいて受信環境を表示するようにしてもよい。その場合には、パッチアンテナにより受信された信号を増幅し、GPS衛星が用いる32のC/Aコードそれぞれと相関器により相関を取り、得られた相関値の内最も相関の高い(絶対値が大きい)ものに基づいて、相関が取れない場合の受信環境を「1」、良好な相関が得られた場合の受信環境を「3」などとして受信環境を表示するとよい。この他にも、電波腕時計100に加速度センサや姿勢センサを設け、これらセンサの出力に基づいて受信環境を推定するようにしてもよい。
【0040】
なお、受信動作表示部21及び受信環境表示部22は、本実施形態において必須のものではなく、省略しても差し支えない。また、具体的な表示の内容をどのようにするかは任意である。例えば、受信環境は3段階でなく、2段階としたり、4段階以上あるいは連続的な表示としてもよい。
【0041】
時刻精度表示部23は、電波腕時計100の内部時刻の精度に関する情報を示す表示である。かかる表示には、種々の形態が考えられるが、本実施形態では、現在の時刻に関する情報の信頼性及び現在の閏秒に関する情報の信頼性を直接示す表示を採用している。そして、現在の時刻に関する情報とは、パッチアンテナにより受信されたTOWであり、現在の閏秒に関する情報とは、同様に受信されたΔtLSを意味することになる。時刻精度表示部23において、「PFT」とあるのは、TOW及びΔtLSの双方に信頼性がある状態である第1の状態を示している。「TW」は、TOWの信頼性が無い状態である第2の状態を、「LS」は、ΔtLSの信頼性が無い第3の状態を、そして、「TL」はTOW及びΔtLSの双方の信頼性が無い第4の状態を意味している。また、「TW」、「LS」及び「TL」に対しては、「NG」の表記が併せてされている。これは、受信動作の終了後に、何らかの情報の受信に失敗した場合には、状態表示針6は「TW」、「LS」及び「TL」のいずれかを指し示すことから、使用者に何らかの情報の受信に失敗したことを通知するための表示である。なお、ここで示した具体的な表示の内容は一例であり、各状態をどのように表現するかは任意である。また、ここでは、「PFT」は”Perfect”を、「LS」は”Leap Second”をそれぞれ略して示したものである。
【0042】
なお、状態表示針6は、以上の状態表示目盛7に含まれる各表示を指し示す指針であるため、受信動作表示部21を指し示している際には、電波腕時計100が現在受信に関するどのような動作中であるかを示す受信動作表示手段として、受信環境表示部22を指し示している際には、電波腕時計100がおかれている環境が衛星からの電波の受信にどれほど適しているかを示す受信環境表示手段として、また、時刻精度表示部23を指し示している際には、電波腕時計100の内部時刻の精度に関する情報を示す時刻精度表示手段として機能することになる。
【0043】
ここで、現在の時刻に関する情報の信頼性及び現在の閏秒に関する情報の信頼性について考察する。まず、現在の時刻に関する情報の信頼性、すなわち、TOWの信頼性については、最後にTOWを受信した時点からの経過時間に依存する。本実施形態の電波腕時計100の時計回路は、月差±15秒程度の精度であるから、最後にTOWを受信した時点からの経過時間が48時間(すなわち、2日)を超えると、現在の正確な時刻と内部時刻とのずれが1秒を超える可能性が生じる。そこで、一例として、最後にTOWを受信した時点からの経過時間が48時間以内であれば現在の時刻に関する情報の信頼性があると判定し、それを超えると現在の時刻に関する情報の信頼性がないと判定することが考えられる。もちろん、判定に用いる経過時間をどのようにするかは、時計回路の精度や正確な時刻とのずれをどの程度許容するかに依存するため、任意に設定して良い。あるいは、日付が変わると、すなわち、午前零時を過ぎると一律に、現在の時刻に関する情報の信頼性がないと判定するようにしてもよい。いずれにせよ、現在の時刻に関する情報の信頼性は、最後に現在の時刻に関する情報を受信した時点からの経過時間に基づくか、若しくは、現在の時刻に関する情報の受信後、あらかじめ定められた時刻を経過するか否かに基づいて定めてよい。
【0044】
また、現在の閏秒に関する情報の信頼性について、前述の通り、閏秒は毎月1日の午前0時に追加あるいは削除される可能性がある。従って、現在の閏秒に関する情報、すなわち、ΔtLSの信頼性は、ΔtLSを受信した時点より後の閏秒が追加あるいは削除されうる時点を経過しているか否かに基づいて定めるとよい。具体的には、ΔtLSを受信してから、翌月の1日午前0時を経過するまでは現在の閏秒に関する情報の信頼性があるとし、経過後は現在の閏秒に関する情報の信頼性がないとする。もしくは、これまでのところ、閏秒の追加が1月1日又は7月1日の午前0時にしかなされていないことを考慮すると、ΔtLSを受信してから、次の1月1日又は7月1日の午前0時を経過するまでは現在の閏秒に関する情報の信頼性があるとすることも考えられる。この場合には、ΔtLSを受信した時点より後の閏秒が追加あるいは削除されうる時点を1月1日又は7月1日の午前0時であるとみなしていることになる。
【0045】
さらに、閏秒の更新を予告する情報を受信している場合には、現在の閏秒に関する情報の信頼性があるとされる期間はさらに長くなる。すなわち、閏秒の更新を予告する情報が受信され得られている場合には、WNLSF及びDNにより示される日にΔtLSをΔtLSFに更新することとすると、その閏秒の更新の時点より更に後の閏秒が追加あるいは削除され得る時点までは、かかる新しいΔtLS(=ΔtLSF)は正しいと考えられる。具体的には、予告された現在の閏秒の更新日の次月の1日午前0時、あるいは、1月1日又は7月1日の午前0時のいずれか近いほうまでは、現在の閏秒に関する情報の信頼性があると判定してよい。したがって、この場合には、現在の時刻が、予告された現在の閏秒が更新される時点よりのちの閏秒が追加あるいは削除され得る時点を経過しているか否かに基づいて、現在の閏秒に関する情報の信頼性が定められることになる。
【0046】
なお、閏秒の更新を予告する情報の受信は必須のものではないので、かかる情報の受信およびそれに伴う処理を省略してもよい。また、これまでのところ、概ね年に1回ほどの頻度で閏秒の追加が行われていることに鑑みて、現在の閏秒に関する情報の信頼性を、最後に現在の閏秒に関する情報を受信した時点から所定の時間、例えば、1年を経過するか否かによって定めることも考えられる。
【0047】
また、電波腕時計100が、長時間充電されることなく稼働するなどして、電源電圧が下がり、いわゆるパワーオフの状態となった場合や、何らかの原因により電波腕時計100の初期化が行われた場合から再び起動した場合には、TOW、ΔtLSに加え、WNについても正しい値ではないと考えられる。このような場合には、現在の時刻に関する情報の信頼性及び現在の閏秒に関する情報の信頼性の双方が無いとすることはもちろん、現在の日付に関する情報、すなわち、WNについても信頼性が無いと考えられる。本実施形態に係る電波腕時計100では、現在の日付に関する情報についての信頼性の有無を明示する表示は特に設けていないが、これを表示するようにしても良い。あるいは、既存の表示、例えば、「TL」を表示するようにしても良い。
【0048】
続いて、本実施形態に係る電波腕時計の実際の動作を説明する。
【0049】
図7は、本実施形態に係る電波腕時計の、現在の時刻に関する情報及び現在の閏秒に関する情報の信頼性を表示する動作を示すフローチャートである。この動作は、電波腕時計の受信動作が終了した直後や、日付が変わった時点、すなわち、毎日午前0時等に実行するようにするとよい。
【0050】
まず、コントローラは、ΔtLSに信頼性があるか否かを判定する(ステップS101)。信頼性ありと安定された場合には、ステップS102において、ΔtLSとΔtLSFが等しいか否か、続くステップS103において、WNLSF及びDNにより示される日が内部時刻が示す現在日と等しいか否かを判定する。これは、現在の閏秒の更新を予告する情報に基づいて、現在の閏秒ΔtLSを更新するか否かを判別するものである。すなわち、ΔtLSとΔtLSFが等しければ、現在の閏秒ΔtLSを更新する必要はなく、また、現在日がWNLSF及びDNにより示される日より前の日であるか、もしくは後の日である場合には、やはり現在の閏秒ΔtLSを更新する必要はなく、ステップS105へと進む。ΔtLSとΔtLSFが異なり、かつ、現在日がWNLSF及びDNにより示される日である場合はステップS104へと進み、ΔtLSがΔtLSFによって更新される。
【0051】
ステップS105においては、今度はTOWに信頼性があるか否かを判定する。あると判定された場合は、TOWおよびΔtLSの双方に信頼性がある状態であるから、コントローラは、ステップS106において、時刻精度情報表示手段である状態表示針を状態1(本実施形態では、「PFT」)を表示するよう制御する。ないと判定された場合は、TOWに信頼性がなく、ΔtLSに信頼性がある状態であるから、コントローラは、ステップS107において、時刻精度情報表示手段である状態表示針を状態2(本実施形態では、「TW」)を表示するよう制御する。
【0052】
また、ステップS101において、ΔtLSに信頼性がないと判定された場合には、ステップS108において、ステップS105同様にTOWに信頼性があるか否かを判定する。あると判定された場合には、コントローラは、ステップS109において状態表示針を状態3(本実施形態では、「LS」)を、ないと判定された場合には、ステップS110において状態表示針を状態4(本実施形態では、「TL」)をそれぞれ表示するよう制御する。
【0053】
ステップS106、S107、S109、S110により状態表示針の表示位置を決定すると、本動作は終了となる。
【0054】
なお、ステップS102乃至S104は、現在の閏秒の更新を予告する情報を受信する場合に必要となるものであるから、かかる情報の受信を行わない場合には、省略して差し支えない。また、ここで示したフローチャートは動作の一例であり、同様の結果を実現できるのであれば、異なる動作をおこなってもよい。
【0055】
このような表示がなされれば、使用者は、状態表示針が指し示す位置により、電波腕時計が示す時刻が正確であるのか、あるいは、誤差を有している場合に、かかる誤差を解消するために必要な受信動作がなんであるかを知ることができる。たとえば、状態表示針が「TW」を指しているならば、6秒ごとに送信されるTOWを受信することにより電波腕時計が示す時刻が正確なものに校正されるのであるから、電波腕時計を数秒程度、衛星が見通せる位置など受信が可能な状態におき受信させることにより時刻合わせができる。一方、状態表示針が「LS」を示しているならば、ΔtLSは12.5分に一度のタイミングでしか受信できないため、電波腕時計をしばらくの間、衛星が見通せる位置など受信が可能な状態においたままにする必要があることが分かる。
【0056】
さらに、本実施形態に係る電波腕時計は、内部時刻の精度に関する情報を示す表示として、上記説明した、状態表示針による現在の時刻に関する情報の信頼性及び現在の閏秒に関する情報の信頼性を直接示す表示に加え、内部時刻の精度を直接示す表示をも有するものとして良い。かかる表示もまた、種々のものが考えられるが、本実施形態では、秒針の複数秒運針を用いたものを例示する。
【0057】
複数秒運針とは、一般に、2秒運針や4秒運針などとして知られている、秒針の特殊な運針方法である。ステップ運針を行う秒針は、通常、1秒毎に1秒分の動作をする運針を行っているが、複数秒運針では、秒針は複数秒毎に、複数秒分の運針を行う。すなわち、n秒毎に運針を行うn秒運針では、秒針は、n秒毎に、文字盤上の位置がn秒分まとめて進むように動作させられることになる。
【0058】
本実施形態では、内部時刻の推定誤差Δerrを秒針の複数秒運針により表示する。ここで、推定誤差Δerrとは、正確な時刻と、内部時刻との誤差のありうる最大の値を指し、現在の時刻に関する情報の信頼性及び現在の閏秒に関する情報の信頼性に基づいて推定される。
【0059】
例えば、現在の時刻に関する情報の信頼性に基づく推定誤差ΔerrTOWは、本実施形態に係る電波腕時計のように、月差±15秒の時計回路を用いているならば、1月を30日と換算すれば、最大で0.5秒/日の割合で誤差を生じることになる。従って、最後に現在の時刻に関する情報、すなわち、TOWを受信した時点からの経過日数をdとすれば、
ΔerrTOW=0.5d
で求められる。なお、上式の係数は時計回路の精度に応じて適宜変更してよい。また、現在の閏秒に関する情報の信頼性に基づく推定誤差ΔerrLSは、現在の閏秒に関する情報、すなわち、ΔtLSの信頼性があるならば0、なければ、閏秒が追加あるいは削除されている可能性があるため、1となる。すなわち、
【数1】

で求められる。なお、閏秒は期間の経過につれ、さらに追加あるいは削除されていく可能性があるため、ΔtLSの信頼性が無くなった日以後、月始めを経過する毎に、あるいは、1月1日及び7月1日を経過する毎にΔerrLSを1ずつ加算していくようにしてもよい。
【0060】
そして、内部時刻の推定誤差Δerrは次のように現在の時刻に関する情報の信頼性に基づく推定誤差ΔerrTOW及び現在の閏秒に関する情報の信頼性に基づく推定誤差ΔerrLSの和として求められる。
Δerr=ΔerrTOW+ΔerrLS
【0061】
そして、本実施形態に係る電波腕時計では、Δerrに応じて秒針を複数秒運針することにより、使用者に、現在の内部時刻の推定誤差を知らしめる。
【0062】
図8は、本実施形態に係る電波腕時計の、推定誤差を表示する動作を示すフローチャートである。この動作もまた、電波腕時計の受信動作が終了した直後や、日付が変わった時点、すなわち、毎日午前0時等に実行するようにするとよい。
【0063】
まず、コントローラは、最後にTOWを受信した時点からの経過日数dに基づいて、ΔerrTOWを求める(ステップS201)。続いて、ステップS202で、ΔtLSの信頼性があるか否かを判定し、信頼性がある場合はΔerrLSに0を(ステップS203)、ない場合にはΔerrLSに1を(ステップS203)セットする。
【0064】
次に、ステップS204でΔerrTOW及びΔerrLSよりΔerrを求め、ステップS205でΔerrが1以下(未満としてもよい)であるか否かを判定する。Δerrが1以下であるならば、ステップS206へと進み、秒針は通常の1秒単位での運針がなされる。一方、Δerrが1以下でなければステップS207へと進み、Δerrが2以下(未満としてもよい)であるか否かを判定する。Δerrが2以下であれば、ステップS208にて秒針は2秒運針とされ、Δerrが2より大きければステップS209にて秒針は6秒運針とされる。
【0065】
このようにすれば、使用者は、秒針の運針の様子を見ることにより、電波腕時計の内部時計の推定誤差を大まかに知ることができる。
【0066】
なお、ここでは、秒針の運針を1秒運針、2秒運針及び6秒運針の3段階としたが、これに限定されず、さらに多段階として3秒運針や4秒運針を追加するなどしてもよい。また、段階数を特に限定せず、Δerrに応じた複数秒運針としてもよい。すなわち、n=Δerr(n:自然数)とした場合に、n秒運針を行うようにする。この際、Δerrの少数以下の端数は切り下げるなどして丸めるとよい。この場合、nが予め定められた秒数mより大きくならないよう制限することが好ましい。具体的には、Δerr≧mの場合は、一律n=mとする。mの値は適宜定めて良いが、ここでは、m=15とする。
【0067】
以上の通り、本実施形態に係る電波腕時計では、受信された現在の時刻に関する情報、すなわち、TOWの信頼性及び、現在の閏秒に関する情報、すなわち、ΔtLSの信頼性に基づく内部時刻の精度に関する情報として、第1に、現在の時刻に関する情報の信頼性及び現在の閏秒に関する情報の信頼性を直接示す表示を、第2に、内部時刻の精度を直接示す表示を行っている。前者は、状態表示針により、後者は秒針の複数秒運針により表示がなされる。そのため、状態表示針及び秒針は、ともに、時刻精度情報表示手段として機能していることになる。
【0068】
なお、上記の表示は必ずしも両方を同時に備えなければならないわけではない。第2のものとして挙げた、内部時刻の精度を直接示す表示を省略してもよい。この場合、秒針は、時刻精度情報表示手段として複数秒運針がなされることはない。また、第1のものとして挙げた、現在の時刻に関する情報の信頼性及び現在の閏秒に関する情報の信頼性を直接示す表示を省略することもできる。
【0069】
つづいて、本実施形態に係る電波腕時計の受信の際の動作を説明する。図9は、本実施形態に係る電波腕時計の、受信動作を示すフローチャートである。この動作は、前述したように、例えば、ボタン等による使用者からの要求がなされた時や、あらかじめ定められた時刻となったとき、前回の時刻修正があった時刻からの経過時間、あるいは太陽電池19の発電量やその他の電波腕時計100の周囲の環境を示す情報等に基づいて事項するようにして良い。
【0070】
まず、コントローラは、ステップS301で、ΔtLSの信頼性があるか否かを判定し、信頼性がある場合は、さらに、ステップS302へと進み、TOWに信頼性があるか否かを判定する。そして、TOWに信頼性がある場合には、受信を試みることなく終了する。また、無い場合には、ステップS303において、TOWの受信を試みる。ステップS304で、受信に成功していたならば、TOWの受信成功日時を更新し(ステップS305)、受信動作を終了する。TOWの受信に失敗していたならば、TOWの受信成功日時を更新することなく終了する。
【0071】
このように、ステップS301において、ΔtLSの信頼性があると判定された場合には、コントローラは、ΔtLSの受信を行わない。すなわち、現在の閏秒に関する情報の信頼性に基づいて、現在の閏秒に関する情報についての衛星からの送信波の受信を制限する。また、コントローラは、ステップS302において、TOWの信頼性があると判定された場合には、コントローラは、TOWの受信を行わない。すなわち、現在の時刻に関する情報の信頼性に基づいて、現在の時刻に関する情報についての衛星からの送信波の受信を制限している。
【0072】
また、ステップS301でΔtLSの信頼性がないと判定された場合には、ステップS306において、TOWに信頼性があるか否かを判定する。TOWの信頼性があると判定された場合には、ステップS307へと進み、ΔtLS及びTOWの受信を試みる。このとき、ΔtLSは前述の通り12.5分に一度しか送信されないため、この受信の試みには最大で12.5分を要することになる。一方、TOWは前述のとおり6秒に一度送信される。そのため、ΔtLSの受信の際にTOWを併せて受信することは容易であることから、ステップS307ではTOWを併せて受信することとしている。この際に受信されるTOWは、ΔtLSと同じサブフレーム4のページ18中のHOWに含まれるものであってもよいし、サブフレーム4に続けて送信されるサブフレーム5に含まれるものであってもよい(図4参照)。しかしながら、ステップS307ではΔtLSの受信のみを行い、TOWの受信を行わないようにしてもよい。その場合には、後述するステップS310およびS311は省略される。また、ΔtLSの受信の際には、閏秒の更新を予告する情報であるWNLSF、DN及びΔtLSFを併せて受信しておくことが好ましい。
【0073】
続いて、ステップS308でΔtLSの受信に成功したか否か判定し、成功であればステップS309でΔtLSの受信成功日時を更新する。そして、ステップS310でTOWの受信に成功したか否かを判定し、成功であればステップS311でTOWの受信成功日時を更新する。
【0074】
一方、ステップS306でTOWに信頼性が無いと判定された場合には、さらに、ステップS312で、TOW、すなわち、現在の時刻に関する情報の信頼性に基づく推定誤差ΔerrTOWがあらかじめ定められた基準を上回るか否か判定する。本実施形態では、当該基準は2秒である。これについて説明すると、前述の通りΔtLSは12.5分に一度のタイミングで送信されることから、ΔtLSの受信を試みる際には、かかる送信のタイミングに合わせて高周波回路及びデコード回路を動作させることとなる。ところが、電波腕時計の内部時刻と、GPS時刻とのずれが大きいと、このように受信のタイミングを合わせることができない。かかるずれは、推定誤差ΔerrTOWに相当している。本実施形態では、GPS衛星からの送信波の受信を試みる際に推定誤差ΔerrTOWを吸収することと、長時間にわたり高周波回路及びデコード回路を動作させることは消費電力の増加を招くことの両方を考慮して、内部時刻に基づくΔtLSの送信タイミングより2秒程度早くから受信を試みるように設定しているが、推定誤差ΔerrTOWがこれを上回ると、ΔtLSが受信できない場合が生じるのである。そこで、ステップS312では、推定誤差ΔerrTOWがΔtLSが受信できる程度に小さい場合には、ステップS307へと進みΔtLSの受信をさせ、推定誤差ΔerrTOWがΔtLSを受信できない程度に大きい場合にはステップS313へと進み、ΔtLSの受信をせずに、先にTOWの受信を試み、推定誤差ΔerrTOWを小さいものにしようとする。すなわち、TOW、すなわち、現在の時刻に関する情報の信頼性に基づいて、ΔtLS、すなわち、現在の閏秒に関する情報についての衛星からの送信波の受信を制限するのである。
【0075】
ステップS313以降は、ステップS314でTOWの受信に成功したか否かを判定し、成功であればステップS315でTOWの受信成功日時を更新する。
【0076】
なお、図9のフローチャートでは示していないが、TOW及び/又はΔtLSの受信に成功した場合には、コントローラは、時計回路の内部時刻を正確な時刻に修正する。
【0077】
続いて、図9のステップS303、S313で行われるTOWの受信時における、状態表示針6の動作を図10を用いて説明する。
【0078】
図10は、TOW受信時の状態表示針6の動作を示す図である。同図には、本実施形態に係る電波腕時計の状態表示針6及び状態表示目盛7が示されている。本実施形態では、状態表示針6は、衛星からの電波の受信を行っていない場合には、時刻精度表示部23のいずれかの位置を指し示している。この状態から、コントローラが高周波回路及びデコード回路に電力を供給し、受信を開始すると、同図(a)に示すように、状態表示針6は、受信動作表示部21の「R」を示し、受信を行っていることを使用者に示す。その後、状態表示針6は、受信環境に応じて受信環境表示部22のいずれかの位置を示す。本実施形態では、受信環境として太陽電池からの発電量(又は出力電圧)を用いており、同図(b)は、太陽電池による発電量が多い状態を、同図(c)は太陽電池による発電量が中間の状態を、そして、同図(d)は太陽電池による発電量が少ない状態を示している。
【0079】
そして、受信が終了したならば、更新された現在の時刻に関する情報または現在の閏秒に関する情報の信頼性に基づいて、状態表示針6は再び時刻精度表示部23のいずれかの位置を指す。
【0080】
なお、受信の際の受信環境表示部22の指示は必須のものではないので、これを省略してもよい。
【0081】
次に、図9のステップS307で行われるΔtLSの受信時における、状態表示針6の動作を図11を用いて説明する。
【0082】
図11は、ΔtLS受信時の状態表示針6の動作を示す図である。ΔtLSの受信は、これまで説明したように、受信動作を開始してから常に数秒以内に完了するというわけにはいかない。ΔtLSが衛星から送信されるまで、最大で12.5分を要する場合がありえる。そこで、ΔtLS受信時には、同図に示すように、状態表示針6を受信動作表示部21の「W」の位置へと移動させ、電波腕時計が、ΔtLSの送信のタイミングを待っている状態であることを使用者に示す。
【0083】
なお、この際に、受信環境に応じた受信環境表示部22の表示と受信動作表示部21の「W」の表示とを並行して、例えば、交互に指し示すなどして、使用者に受信環境を知らしめるようにしてもよい。このようにすると、使用者が、より衛星からの電波を受信しやすい環境を探しやすくなる。
【0084】
その後、内部時刻に基づき、ΔtLSの送信のタイミングが到来すると、コントローラは、高周波回路及びデコード回路に電力を供給し、受信を開始する。これ以降の状態表示針6の表示は、上記説明したTOWの場合と同様であるので、当該記載及び図10を参照されたい。
【0085】
以上説明した本実施形態においては、WNについても、TOWやΔtLSと同様にその信頼性に基づいて受信を行うことが好ましい。電波腕時計が時刻表示のみを行う場合には、必ずしもWNの取得は必須ではないが、ΔtLSの信頼性を正確に管理する上では、現在の日付を得る必要があるからである。もちろん、電波腕時計が日付表示をするもので有ればWNを取得することが望ましい。しかしながら、この場合においてもWNの取得は必須ではなく、例えば、使用者が現在の日付を設定するようにしてもよい。
【0086】
WNの取得は、WNの信頼性が無い状態において、ΔtLSの受信の場合と同様の制御により受信を行ってよい。なぜなら、WNはΔtLS同様にTOWほど頻繁に送信されるものではないからである。WNの受信にあたって、ΔtLSと異なる点は主として、その送信される周期が30秒毎であることと、サブフレーム1に配置されていることである。
【0087】
また、WNの信頼性については前述したとおりであり、パワーオフの状態となった場合や初期化が行われた場合にその信頼性が失われる。それ以外にも、例えば1年に1度程度は確認のため受信を行うという仕様にするのであれば、WNの受信日時を記憶しておき、その日から1年以上経過すればWNの信頼性が無いとすればよい。
【0088】
そして、電波腕時計がWNの受信を行うものである場合は、使用者に、WNの信頼性、すなわち、現在の日付に関する情報の信頼性を通知し、WNの受信を促すようにすることが望ましい。WNの信頼性が無い状態を使用者に通知する方法は様々なものが考えられるので、以下第2乃至第4の実施形態によりその一部を例示する。
【0089】
図12は、使用者にWNの信頼性を通知する電波腕時計100の例を示す図である。
【0090】
同図に示す電波腕時計100では、時刻精度表示部23に表示「WN」が追加されている。これは、WNに信頼性が無い状態において、状態表示針6が指し示すことにより、現在の日付に関する情報の信頼性が無いことを使用者に通知するものである。また、そのすぐ下側の表示は「TLW」となっている。これは、TOW、ΔtLS及びWNの全てまたは2つ以上に信頼性が無い状態を示す表示となっている。
【0091】
図13は、使用者にWNの信頼性を通知する電波腕時計100の別の例を示す図である。この例では、電波腕時計100の時刻精度表示部23には、「LS」の表示はなく、代わりに「DFF」なる表示が設けられている。この「DFF」は、ΔtLS及びWNのいずれか一方または両方に信頼性が無い状態を示す表示である。すなわち、ΔtLSとWNの信頼性の表示を1つの表示で兼用したものである。
【0092】
図14は、使用者にWNの信頼性を通知する電波腕時計100のさらに別の例を示す図である。本例の電波腕時計100は、文字板2の3時の位置に日付表示部24を有しており、日付表示部24の窓から円板上の日板に記された日付が読み取れるようになっている。そして、本例の電波腕時計100は、WNに信頼性が無い状態では、日付表示部24に、WNに信頼性が無いことを示す表示を行わせる。例えば、図に示したように、「N/A」と表示するなどである。もちろん、この表示内容はどのようなものでも良く、文字に限られず、記号や図形等であっても良い。
【0093】
図15は、日付表示部24における、WNに信頼性が無いことを示す表示の別の例を示す図である。同図に示すように、日付表示部24に、日付と日付の間の位置を表示することによっても、使用者に、WNに信頼性が無いことが通知される。図は、「12」と「13」の間を示している様子である。
【0094】
続いて、本発明の第2の実施形態を、図16を用いて説明する。
【0095】
図16は、本発明の第2の実施形態に係る電波腕時計200の平面図である。本実施形態において、第1の実施形態と同様の部材には、同符号を付し、重複する説明を省略することとする。
【0096】
電波腕時計200は、文字板2上に記された状態表示目盛7の表示形態が第1の実施形態に係る電波腕時計と異なっている。本実施形態では、状態表示目盛7の受信動作表示部21が、受信環境表示部22を含むものとなっており、受信環境表示部22の各表示には、さらに、「W」の表示が付されている。また、受信動作表示部21には、表示「STP」が追加されている。一方、時刻精度表示部23は、「PFT」、「TW」及び「LS」の3位置による表示となっている。
【0097】
まず、時刻精度表示部23について説明する。表示「PFT」は、現在の時刻に関する情報(すなわち、TOW)及び現在の閏秒に関する情報(すなわち、ΔtLS)の信頼性がともにある状態を示しており、第1の実施態における表示と同様である。表示「TW」は現在の時刻に関する情報に信頼性が無く、表示「LS」は現在の閏秒に関する情報に信頼性が無い状態を示す。現在の時刻に関する情報及び現在の閏秒に関する情報の双方に信頼性が無い場合は、「TW」又は「LS」いずれかの位置を示すものとする。あるいは、現在の時刻に関する情報の信頼性に基づく推定誤差ΔerrTOWと現在の閏秒に関する情報の信頼性に基づく推定誤差ΔerrLSとの比較に基づいて状態表示針6が指し示す位置を決定してもよい。例えば、
ΔerrTOW≧ΔerrLS
であれば「TW」を、
ΔerrTOW<ΔerrLS
であれば「LS」を示すようにしてよい。あるいは、「TW」と「LS」の位置を往復運動させるなどしてもよい。
【0098】
また、本実施形態では、状態表示針6は、電波腕時計200が特に受信などの動作を行っておらず、計時をしている状態では、受信動作表示部21の「STP」の位置を示している。これは、受信に関する動作が停止していることを使用者に示している。また、受信動作表示部21の「W」、すなわち、ΔtLSの送信のタイミングを待っている状態では、状態表示針6は同時に受信環境表示部22のいずれかの位置を示し、電波腕時計200がおかれた受信環境を使用者に通知するようになっている。
【0099】
電波腕時計200が内部時刻の精度に関する情報を使用者に通知する、すなわち、時刻精度表示部23を用いた表示を行うタイミングは種々のものが考えられ、特に限定はされないが、ここでは例として次の2つの場合を示す。一つは、使用者が操作手段を用いた何らかの操作、例えば、ボタン9を操作した場合に、状態表示針6により一定時間時刻精度表示部23のいずれかの表示を指す。もう一つは、受信動作終了時に、その結果を状態表示針6により一定時間時刻精度表示部23のいずれかの表示を指すことにより示す。この場合、「TW」及び「LS」の各表示には、「NG」の表示が付されており、何らかの情報についての受信動作が不成功であったことを使用者に通知するものとなっている。
【0100】
次に、本発明の第3の実施形態を、図17を用いて説明する。本実施形態においても、第1の実施形態と同様の部材には、同符号を付し、重複する説明を省略することとする。
【0101】
図17は、本発明の第3の実施形態に係る電波腕時計300の平面図である。本実施形態では、文字板2上に記された状態表示目盛7の表示形態が第1の実施形態に係る電波腕時計と異なる別の例となっている。本実施形態では、状態表示目盛7の受信動作表示部21表示が、「R」、「W」に加え、「STP」を有する。本実施形態における「R」及び「W」の表示が有する意味は第1の実施形態と同様であり、それぞれ、電波腕時計300が現在電波を受信中であること、及び、電波腕時計300が電波受信のため待機中であることを示している。
【0102】
それに加えて、「STP」は、第2の実施形態と同様に、受信に関する動作が停止していることを使用者に示すものである。電波腕時計300が通常表示、すなわち、計時をしてその時刻を使用者に示している状態では、状態表示針6はこの「STP」を指している。
【0103】
電波腕時計300が内部時刻の精度に関する情報を使用者に通知する、すなわち、時刻精度表示部23を用いた表示を行うタイミングは第2の実施形態と同様としてよい。すなわち、使用者が操作手段を用いた何らかの操作、例えば、ボタン9を操作した場合や、受信動作終了時に、状態表示針6により一定時間時刻精度表示部23のいずれかの表示を指す。本実施形態においても、「TW」、「LS」及び「TL」の各表示には、「NG」の表示が付されており、受信動作終了後、何らかの情報についての受信動作が不成功であったことを使用者に通知するものとなっている。もちろん、時刻精度表示部23を用いた表示を行うタイミングは、以上説明したものに限定されない。
【0104】
続いて、本発明の第4の実施形態を、図18を用いて説明する。
【0105】
図18は、本発明の第4の実施形態に係る電波腕時計400の平面図である。本実施形態では、状態表示針が設けられておらず、秒針5が状態表示針を兼ねている点が第2の実施形態と異なっている。
【0106】
電波腕時計300は、通常の状態では、秒針5は通常の運針(1秒運針)を行っており、時針3、分針4とともに現在の時刻を表示している。ここでは、この状態を通常表示モードと呼ぶこととする。そして、使用者により、ボタン9(あるいは竜頭8)等の入力手段に所定の操作がなされると、秒針5は運針を停止し、状態表示目盛7上に示された各状態を指示する。この状態を状態表示モードと呼ぶことにする。使用者は、ボタン9を操作するたびに通常表示モードと状態表示モードを交互に入れ替えることができる。
【0107】
さらに、秒針5により、内部時刻の推定誤差Δerrを表示する推定誤差表示モードを追加してもよい。この状態では、第1の実施形態で説明したと同様の複数秒運針により、使用者は秒針5の動きから現在の内部時刻の推定誤差を知ることができる。すなわち、秒針5は、Δerrが1以下であるならば通常運針とされ、Δerrが1より大きく2以下であれば2秒運針とされ、Δerrが2より大きければ6秒運針とされる。あるいは、Δerrに応じた複数秒運針、すなわち、n=Δerr(n:自然数)とした場合に、n秒運針を行うようにしてもよい。この際に、予め定められた秒数m(一例として15秒)に対し、Δerr≧mとなる場合には、一律n=mとすることが好ましい。推定誤差表示モードも他のモードと同様に、ボタン9の操作により切り替えるとよい。好ましくは、ボタン9の操作のたびに、通常表示モード、状態表示モード及び推定誤差表示モードが順次切り替えられる。
【0108】
あるいは、通常表示モード、状態表示モード及び推定誤差表示モードの切り替えは、以下に説明するように行っても良い。
【0109】
図19は、本実施形態に係る電波腕時計400の状態遷移図である。図中示した黒塗りの矢印は、使用者によるボタン等の操作手段の操作に基づく状態遷移を、白抜きの矢印は、使用者による操作がない状態での一定時間の経過等に基づく状態遷移を示している。
【0110】
同図に示すように、電波腕時計400が、内部時刻の計時に基づく時刻の表示をする通常表示モードにおいて、使用者による操作、ここでは、ボタンの押下があった場合には、推定誤差表示モードへと遷移し、秒針の複数秒運針により、内部時刻の推定誤差を表示する。この状態で、一定時間、例えば、30秒間の間、使用者による追加の操作が無ければ、電波腕時計400は再び通常表示モードに復帰する。
【0111】
推定誤差表示モード中にさらに使用者によるボタンの押下等の追加の操作があった場合には、電波腕時計400は状態表示モードへと遷移し、秒針により時刻精度表示部のいずれかの表示を指し示す状態表示モードへと遷移する。この状態においても、一定時間、例えば、30秒間の間、使用者による追加の操作が無ければ、電波腕時計400は通常表示モードに復帰する。
【0112】
さらに、状態表示モード中に使用者によるボタンの押下等の追加の操作があった場合には、電波腕時計400は、GPS衛星からの送信波の受信を試みる。かかる受信の具体的な手順は、第1の実施形態において図9に示したフローチャートの通りであってよい。受信動作が終了したならば、電波腕時計400は再び状態表示モードに遷移し、受信結果を時刻精度表示部のいずれかの表示を秒針により指し示すことで使用者に通知する。
【0113】
このような各モードの切り替えを行うことにより、使用者は、最初の操作で電波腕時計400に現在表示されている時刻(すなわち、内部時刻)の推定誤差を知り、続く操作でかかる推定誤差が生じている原因を知り、さらに、推定誤差及びその原因により、GPS衛星からの送信波を受信し、時刻を修正する必要があると判断すれば、さらに操作を行って電波腕時計400に受信するよう指示することができる。
【0114】
図20は、かかる状態遷移を実施するための動作を示すフローチャートである。本動作は、一定時間毎、例えば、0.1秒毎にコントローラにより実行されるようにするとよい。
【0115】
まず、ステップS401により現在の表示モードを判別する。現在の表示モードが、通常表示モードで有ればステップS402へ、推定誤差表示モードで有ればステップS404へ、状態表示モードで有ればステップS407へと進む。
【0116】
ステップS402では、使用者によるボタンの押下等の操作の有無を判定する。操作がなされていなければ、ステップS403へと進み、通常表示モードを継続する。一方、使用者による操作がある場合には、ステップS406へと進み、推定誤差表示モードへと遷移し、終了する。
【0117】
ステップS404では、使用者によるボタンの押下等の操作の有無を判定し、操作がなされていなければ、ステップS405へと進む。ステップS405では、推定誤差表示モードとなってから一定時間、例えば、30秒が経過したか否かを判定する。経過しているならば、ステップS403へと進み、通常表示モードに遷移する。そうでなければ、ステップS406へと進み、推定誤差表示モードを継続する。
【0118】
ステップS407でもまた、使用者によるボタンの押下等の操作の有無を判定し、操作がなされていなければ、ステップS408へと進む。ステップS408では、状態表示モードとなってから一定時間、例えば、30秒が経過したか否かを判定する。経過している場合は、ステップS403へと進み、通常表示モードに遷移する。そうでなければ、ステップS409へと進み、状態表示モードを継続する。
【0119】
さらに、ステップS407において、使用者による操作がある、すなわち、状態表示モードにおいて使用者による操作がある場合には、ステップS410へと進み、GPS衛星からの送信波の受信を行う。このとき、第1の実施形態において説明したように、電波腕時計が受信中であることを示す各種表示がなされて良い。この受信の動作は、第1の実施形態において図9に示したフローチャートの通りであってよい。続くステップS411では、受信に成功または失敗した、あるいは、使用者の操作により受信動作が中止されたなど何らかの理由により受信動作が終了するのを待つ。そして、受信動作が終了したならば、ステップS409へと進み、状態表示モードへと遷移する。
【0120】
なお、ここで示した状態遷移の方式は一例であり、様々な変形を行っても良い。例えば、推定誤差表示モードと状態表示モードの順番を入れ替えても良いし、電波の受信が終了した後に通常表示モードに遷移するようにしても良い。
【0121】
続いて説明する本発明の第5の実施形態は、第4の実施形態を変形したものである。
【0122】
図21は、本発明の第5の実施形態に係る電波腕時計500の平面図である。本実施形態では、時刻精度表示部23が、現在の時刻に関する情報の信頼性及び現在の閏秒に関する情報の信頼性を直接示すものではなく、内部時刻の精度、すなわち、内部時刻の推定誤差Δerrを直接示すものとなっている。内部時刻の推定誤差Δerrは、前述したとおり、受信された現在の時刻に関する情報、すなわち、TOWの信頼性及び、現在の閏秒に関する情報、すなわち、ΔtLSの信頼性に基づいて求められる。そのため、本実施形態に係る電波腕時計500は、現在の時刻に関する情報の信頼性及び現在の閏秒に関する情報の信頼性に基づいて、内部時刻の精度に関する情報である推定誤差Δerrを表示することになる。かかる推定誤差Δerrを示すのは、実施形態3同様に秒針5である。したがって、本実施形態の秒針5は、時刻精度情報表示手段としても機能する。
【0123】
図21の時刻精度表示部23の表示「PFT」は、推定誤差Δerrが1秒未満の状態を意味している。このとき、
Δerr=ΔerrTOW+ΔerrLS
であり、
ΔerrTOW=0.5d
であるから、
ΔerrTOW<1
であるためには、d<2でなければならない。これは、TOWの信頼性がある状態に等しい。
【0124】
また、ΔerrLSは1秒刻みの値しかとらないため、
ΔerrLS<1
であるためには、
ΔerrLS=0
でなければならない。これは、ΔtLSの信頼性がある状態に等しい。結局、推定誤差Δerrが1秒未満の状態とは、TOWの信頼性及びΔtLSの信頼性の双方がある状態に等しい。
【0125】
同様に求めたΔerrに応じて、表示「<2」は、
1≦Δerr<2
を意味し、表示「≧2」は、
2≦Δerr
を意味する。
【0126】
秒針5は、第4の実施形態同様、使用者がボタン9等を操作することにより、現在時刻の秒を表示する通常表示モードと、時刻精度表示部23のいずれかの目盛を指す推定誤差表示モードとに切り替わるようにするとよい。
【0127】
なお、ここで、時刻精度表示部23の目盛は一具体例であり、表示の方法はここで説明したものに限定されない。ほかにも、例えば、表示「<2」を「OK」、表示「≧2」を「NG」などと表示してもよいし、閾値となる値を変更しても、推定誤差Δerrをより細かく多段階で表示するようにしたり、連続的に表示するようにしたりしてもよい。本実施形態の電波腕時計500の使用者は、短時間で終了するTOWの受信動作をおこなっても、表示「<2」が「PFT」にならない場合、閏秒の受信が必要であると知ることができる。
【0128】
さらに、第6の実施形態を、図22を用いて説明する。
【0129】
図22は、本発明の第6の実施形態に係る電波腕時計600の平面図である。電波腕時計500には時刻精度表示部が設けられておらず、秒針5の複数秒運針により、現在の時刻に関する情報の信頼性及び現在の閏秒に関する情報の信頼性に基づく内部時刻の精度に関する情報を表示するようになっている。
【0130】
かかる電波腕時計600が表示する内部時刻の精度に関する情報には2通りあり、一つは、内部時刻の推定誤差Δerrを表示するもの、もう一つは現在の時刻に関する情報の信頼性及び現在の閏秒に関する情報の信頼性を表示するものである。
【0131】
前者、すなわち、内部時刻の推定誤差Δerrを表示する場合には、秒針5の運針を、実施形態1におけるものと同様の、推定誤差Δerrに応じた複数秒運針をさせるとよい。
【0132】
後者、すなわち、現在の時刻に関する情報の信頼性及び現在の閏秒に関する情報の信頼性を表示する場合には、適宜、秒針5の複数秒運針を特定の状態に対応づけておくとよい。
【0133】
一例として、本実施形態の、各状態に対応する複数秒運針を示す。
【0134】
まず、TOWの信頼性及びΔtLSの信頼性の双方がある状態では、秒針5は通常(1秒)運針を行う。続いて、TOWの信頼性がない場合には、図に示したように、秒針は58秒〜2秒の区間で2秒運針を行う。さらに、ΔtLSの信頼性がない場合には、秒針は28〜32秒の区間で2秒運針を行う。最後に、TOWの信頼性及びΔtLSの信頼性の双方がない場合には、全区間で2秒運針を行う。
【0135】
このように、部分的に複数秒運針を行うことにより、通常の秒の表示が見にくくなるなど大きな影響を与えることなく、使用者に特定の状態を伝えることができる。
【0136】
なお、必ずしも部分的な複数秒運針を行わなくてもよく、複数秒運針を何秒運針とするかによりすべての状態を区別するようにしてもよい。また、ここでは複数秒運針の例として、2秒運針を用いたが、これに限られず、何秒運針としてもよい。
【0137】
以上説明した各実施形態では、衛星からの電波として、GPS衛星からの送信波を用いるものとして説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、衛星における時刻の情報が送信される間隔に比して、衛星における自国と協定世界時とのずれを示す情報が送信される間隔が長い信号を送信する衛星であればどのようなものであってもよい。その場合、本明細書中で用いたTOWやΔtLSなどの呼び名やフォーマットは、適宜その衛星に合わせて読み換えて良い。
【0138】
なお、以上説明した本発明の各実施形態の一つの観点においては、現在の時刻に関する情報の信頼性に基づいて、前記現在の時刻に関する情報についての衛星からの送信波の受信を制限する。
【0139】
このようにすると、現在の時刻に関する情報に信頼性がある状態で無意味に衛星からの送信波の受信をすることがなく、消費電力が低減される。
【0140】
また、本発明の各実施形態の別の観点においては、現在の閏秒に関する情報の信頼性に基づいて、現在の閏秒に関する情報についての衛星からの送信波の受信を制限する。
【0141】
このようにすると、現在の閏秒に関する情報に信頼性がある状態で無意味に衛星からの送信波の受信をすることがなく、消費電力が低減される。
【0142】
さらに、本発明の各実施形態の別の観点においては、現在の時刻に関する情報の信頼性に基づいて、現在の閏秒に関する情報についての衛星からの送信波の受信を制限する。
【0143】
このようにすると、現在の時刻に関する情報の信頼性がなく、現在の閏秒に関する情報が送信される正確なタイミングが分からない場合に、無意味に衛星からの送信波の受信をすることがなく、消費電力が低減される。
【符号の説明】
【0144】
1 胴、2 文字板、3 時針、4 分針、5 秒針、6 状態表示針、7 状態表示目盛、8 竜頭、9 ボタン、10 バンド固定部、11 パッチアンテナ、12 電池、13 コントローラ、14 高周波回路、15 デコード回路、16 記憶部、17,18 モータ、19 太陽電池、20 スイッチ、21 受信動作表示部、22 受信環境表示部、23 時刻精度表示部、24 日付表示部、100,200,300,400,500,600 電波腕時計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星からの送信波に含まれる現在の時刻に関する情報及び現在の閏秒に関する情報に基づいて内部時刻を修正する電波腕時計において、
受信された前記現在の時刻に関する情報の信頼性及び前記現在の閏秒に関する情報の信頼性に基づいて、前記内部時刻の精度に関する情報を表示する時刻精度情報表示手段を有する電波腕時計。
【請求項2】
前記時刻精度情報表示手段は、前記内部時刻の精度に関する情報として、少なくとも、
前記現在の時刻に関する情報及び前記現在の閏秒に関する情報の双方に信頼性がある状態、
前記現在の時刻に関する情報に信頼性がない状態、
前記現在の閏秒に関する情報に信頼性がない状態、
を表示する請求項1記載の電波腕時計。
【請求項3】
前記時刻精度情報表示手段は、前記内部時刻の精度に関する情報として、さらに、
前記現在の時刻に関する情報及び前記現在の閏秒に関する情報の双方に信頼性がない状態を表示する請求項2記載の電波腕時計。
【請求項4】
前記時刻精度情報表示手段は、前記内部時刻の精度に関する情報として、少なくとも、
現在の時刻に対する内部時刻の推定誤差に関する情報を表示する請求項1乃至3のいずれかに記載の電波腕時計。
【請求項5】
前記時刻精度情報表示手段は、前記内部時刻の精度に関する情報を、秒針の複数秒運針により表示する請求項1乃至4のいずれかに記載の電波腕時計。
【請求項6】
前記現在の閏秒に関する情報の信頼性は、現在時刻が、前記現在の閏秒に関する情報を受信した時点より後の閏秒が追加あるいは削除されうる時点を経過しているか否かに基づいて定められる請求項1乃至5のいずれかに記載の電波腕時計。
【請求項7】
さらに、前記現在の閏秒の更新を予告する情報を受信し、前記現在の閏秒に関する情報の信頼性は、現在時刻が、予告された前記現在の閏秒が更新される時点より後の閏秒が追加あるいは削除されうる時点を経過しているか否かに基づいて定められる請求項6に記載の電波腕時計。
【請求項8】
前記現在の時刻に関する情報の信頼性に基づいて、前記現在の時刻に関する情報についての衛星からの送信波の受信を制限する請求項1乃至7のいずれかに記載の電波腕時計。
【請求項9】
前記現在の閏秒に関する情報の信頼性に基づいて、前記現在の閏秒に関する情報についての衛星からの送信波の受信を制限する請求項1乃至8のいずれかに記載の電波腕時計。
【請求項10】
前記現在の時刻に関する情報の信頼性に基づいて、前記現在の閏秒に関する情報についての衛星からの送信波の受信を制限する請求項1乃至9のいずれかに記載の電波腕時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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