説明

電波装置

【課題】複数の構成品を備える電波装置に関して補正データの更新忘れを防止する。
【解決手段】電波装置は、複数の構成品と、信号処理部とを備える。複数の構成品の各々は、不揮発性メモリを備え、その不揮発性メモリには、構成品の個体毎に異なる特性を補正するための補正データが格納されている。コンフィグレーション作業において、信号処理部は、複数の構成品の各々の不揮発性メモリから補正データを取得し、取得した補正データに基づいて各々の構成品の特性を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置等の電波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2007−33415号公報)には、レーダ装置が開示されている。そのレーダ装置は、信号処理モジュールと、送受信モジュールと、アンテナモジュールとを備えている。
【0003】
アンテナモジュールは、複数のアンテナを備えている。複数のアンテナは、互いに異なる方向にビームを放射する。これらビームの内の少なくとも1つのビームは、他のビームと異なるビーム幅または/および利得を有する。
【0004】
信号処理モジュールは、ターゲット方位検出部とEEPROMとを備えている。ターゲット方位検出部は、複数のアンテナのうち隣り合うアンテナで得られる受信ビームの強度を比較した隣接ビーム強度比較値を算出して、該隣接ビーム強度比較値に基づいてターゲットの方位算出を行う。EEPROMには補正データが格納される。補正データは、個々のレーダ装置に依存し、各受信ビームの強度の補正値を示す。
【0005】
この構成では、各アンテナから受信ビーム強度が得られると、EEPROMに記憶されている補正値を用いて、各受信ビーム強度が補正される。これにより、アンテナの個体差による影響が除去された状態の受信ビーム強度が得られる。ターゲット方位検出部は、補正された受信ビーム強度を用いて、隣り合う受信ビーム強度から隣接ビーム強度比較値を算出する。そして、ターゲット方位検出部は、方位算出テーブルを参照することによって、得られた隣接ビーム強度比較値に対応する方位を算出して、ターゲット方位を出力する。
【0006】
特許文献1のレーダ装置ではアンテナのビーム強度のみの補正が行われているが、レーダ装置の構成、用途、使用環境等よっては、送受信モジュール内の各種アンプ、A/D変換器や発信器等についても個体差に関する補正を行う場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−33415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1によれば、アンテナの個体差による影響を除去するために用いられる補正データが、信号処理モジュールのEEPROMに格納される。従って、アンテナを新規組み立て又は故障により交換した場合には、アンテナに関する補正データを信号処理モジュールのEEPROMに書き込む必要がある。しかしながら、その場合、アンテナと補正データの両方の管理が必要となり、煩雑である。また、アンテナに関する補正データの書き込みを忘れたり、シリアル番号が異なるアンテナの補正データを誤って入力する等のミスにより、所望のレーダ性能が得られなくなる恐れがある。
【0009】
アンテナ以外の構成品で個体差による影響を除去するために補正処理が行われるものについても、規組み立て又は故障による交換を行った場合には、補正データを信号処理モジュールのEEPROMに書き込む必要があり、管理が煩雑となる。また、補正データ書き込み忘れやシリアル番号が異なる構成品の補正データを誤って入力する等のミスが発生した場合に所望のレーダ性能が得られなくなる恐れがある。
【0010】
本発明の1つの目的は、補正処理が必要である複数の構成品を備える電波装置に関して補正データの更新忘れやミスを防止することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下に、[発明を実施するための形態]で使用される番号・符号を用いて、[課題を解決するための手段]を説明する。これらの番号・符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための形態]との対応関係を明らかにするために括弧付きで付加されたものである。ただし、それらの番号・符号を、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0012】
本発明の1つの観点において、電波装置(1)は、複数の構成品(10、20、30、40、50)と、信号処理部(100)とを備える。複数の構成品(10、20、30、40、50)の各々は不揮発性メモリ(11、21、31、41、51)を備え、その不揮発性メモリ(11、21、31、41、51)には、個体毎に異なる特性を補正するための補正データ(C1、C2、C3、C4、C5)が格納されている。コンフィグレーション作業において、信号処理部(100)は、複数の構成品(10、20、30、40、50)の各々の不揮発性メモリ(11、21、31、41、51)から補正データ(C1、C2、C3、C4、C5)を取得し、取得した補正データ(C1、C2、C3、C4、C5)に基づいて各々の構成品(10、20、30、40、50)の特性を補正する。
【0013】
信号処理部(100)は、補正データテーブル(TBL)が格納される不揮発性メモリ(110)を備えていてもよい。その場合、コンフィグレーション作業において、信号処理部(100)は、取得した補正データ(C1、C2、C3、C4、C5)を補正データテーブル(TBL)に記録する。
【0014】
複数の構成品(10、20、30、40、50)は、例えば、電波を送受信するアンテナ(10)と、アンテナに送信信号を送る送信機(20)と、アンテナから受信信号を受け取る受信機(30)と、電波を生成する発振器(40)と、電気的な透過特性を確保しつつアンテナの機械的保護を行うレドーム(50)を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の構成品を備える電波装置に関して補正データの更新忘れやシリアル番号が異なる構成品の補正データを誤って入力する等のミスを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電波装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態における補正データを示す概念図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態における補正データテーブルを示す概念図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施の形態におけるコンフィグレーション作業を示すフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の第2の実施の形態に係る電波装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面を参照して、本発明の実施の形態に係る電波装置を説明する。
【0018】
1.第1の実施の形態
1−1.構成
図1は、第1の実施の形態に係る電波装置の構成例を示すブロック図である。ここでは、電波装置の例として、レーダ装置1を考える。レーダ装置1は、アンテナ10、送信機20、受信機30、発振器40、レドーム50といった複数の構成品を備えている。アンテナ10は、電波を送受信する。送信機20は、アンテナ10に送信信号を送る。受信機30は、アンテナ10から受信信号を受け取る。発振器40は、電波を生成する。レドーム50は、電気的な透過特性を確保しつつアンテナの機械的保護を行うために設けられている。
【0019】
これら構成品(10、20、30、40、50)の各々に関して、その特性は個体毎に異なる。例えば、アンテナ10の特性は、個体(製品)毎に異なる。従って、アンテナ10に関して所望の特性を得るためには、個体(製品)毎に特性を補正することが必要となる。その補正処理に用いられるのが、「補正データ」である。他の構成品に関しても同様である。構成品の個体毎に異なる特性を補正するために「補正データ」が用意される。
【0020】
図2は、本実施の形態における補正データを示す概念図である。補正データは、管理番号とデータ本体を含んでいる。管理番号は、補正データを識別するための番号であり、個体(製品)毎に固有の番号である。データ本体は、特性の補正処理に用いられる補正値である。
【0021】
本実施の形態によれば、各々の構成品が、フラッシュメモリやEEPROMといった不揮発性メモリを搭載している。そして、各々の構成品に関する補正データは、各々の構成品の不揮発性メモリに格納される。例えば、構成品単体の試験において当該構成品に関する補正データが生成され、その補正データが当該構成品に内蔵された不揮発性メモリに書き込まれる。
【0022】
より詳細には、アンテナ10は、不揮発性メモリ11と補正処理部12とを備えている。不揮発性メモリ11には、当該アンテナ10に関する補正データC1が格納されている。補正処理部12は、アンテナ10の特性の補正処理を行う。
【0023】
送信機20は、不揮発性メモリ21と補正処理部22とを備えている。不揮発性メモリ21には、当該送信機20に関する補正データC2が格納されている。補正処理部22は、送信機20の特性の補正処理を行う。
【0024】
受信機30は、不揮発性メモリ31と補正処理部32とを備えている。不揮発性メモリ31には、当該受信機30に関する補正データC3が格納されている。補正処理部32は、受信機30の特性の補正処理を行う。
【0025】
発振器40は、不揮発性メモリ41と補正処理部42とを備えている。不揮発性メモリ41には、当該発振器40に関する補正データC4が格納されている。補正処理部42は、発振器40の特性の補正処理を行う。
【0026】
レドーム50は、不揮発性メモリ51を備えている。不揮発性メモリ51には、当該レドーム50に関する補正データC5が格納されている。
【0027】
本実施の形態に係るレーダ装置1は更に、信号処理部100を備えている。信号処理部100は、レーダ装置1の各構成品に接続されており、各構成品の動作を制御する。また、信号処理部100は、送信信号や受信信号等に対して各種信号処理を行う。更に、信号処理部100は、後に詳しく説明される「コンフィグレーション作業」を実施する。
【0028】
より詳細には、信号処理部100は、不揮発性メモリ110及びCPU120を備えている。不揮発性メモリ110には、図3に示されるような補正データテーブルTBLが格納されている。補正データテーブルTBLには、レーダ装置1の各構成品に関する補正データC1〜C5が記録される。
【0029】
CPU120は、各構成品の不揮発性メモリ(11、21、31、41、51)に接続されている。図1の例では、CPU120は、バス60を介して、各構成品の不揮発性メモリ(11、21、31、41、51)に接続されている。CPU120は、各構成品の不揮発性メモリ(11、21、31、41、51)から補正データ(C1、C2、C3、C4、C5)を取得することができる。CPU120は、取得した補正データ(C1、C2、C3、C4、C5)を、不揮発性メモリ110に格納されている補正データテーブルTBLに記録する。そして、CPU120の補正処理部121は、それら補正データ(C1、C2、C3、C4、C5)に基づいて、各構成品の特性を補正する補正制御処理を実施する。これにより、各構成品の補正処理部(12,22,32,42、121)において補正処理が実行される。
【0030】
1−2.コンフィグレーション作業
レーダ装置1の組み立てが完了した後、あるいは、故障した構成品の修理/交換が完了した後、レーダ装置1の初電源投入時に、「コンフィグレーション作業」を実施する。コンフィグレーション作業では、CPU120により、各構成品の不揮発性メモリ(11、21、31、41、51)に記録されている補正データ(C1、C2、C3、C4、C5)を、バス60を介して不揮発性メモリ110内の補正データテーブルTBLに転送し、記録する作業を行う。これにより、CPU120は、不揮発性メモリ110内の補正データテーブルTBL中の補正データを用いて、各構成品の補正制御処理や補正処理部121における補正処理を正しく実行できる状態になり、レーダ装置1全体として所望の特性が実現される。
【0031】
図4は、本実施の形態におけるコンフィグレーション作業を示すフローチャートである。まず、コンフィグレーション作業が起動される(ステップS10)。すると、信号処理部100のCPU120は、各構成品(10、20、30、40、50)の不揮発性メモリ(11、21、31、41、51)から補正データ(C1、C2、C3、C4、C5)を取得する(ステップS20)。CPU120は、取得した補正データ(C1、C2、C3、C4、C5)を、不揮発性メモリ110に格納されている補正データテーブルTBLに書き込む(ステップS30)。すなわち、CPU120は、補正データテーブルTBLを最新の状態に更新する。以上によりコンフィグレーション作業は終了である。以降、CPU120において、レーダ装置1の動作モードに応じて不揮発性メモリ110の補正データテーブルTBLのうちの必要な補正データを用いて各構成品の補正制御処理や信号処理部100内の補正処理部121による補正処理を実施し、レーダ装置1全体として所望の特性を実現する。
【0032】
コンフィグレーション作業の起動方法としては、例えば次のようなものが考えられる。(1)補正データテーブルTBLに補正データが未だ記録されていない場合に起動する。(2)既に補正データテーブルTBLに記録されている補正データの管理番号と、構成品に内蔵された不揮発性メモリに格納されている補正データの管理番号とが一致しない場合に起動する。(3)外部トリガ信号に応答して起動する。(4)レーダ装置1の試験用コネクタにジャンパ線を有するコンフィグレーション作業起動用コネクタを接続した状態でレーダ装置1の電源をONした場合に起動する。
【0033】
1−3.効果
以上に説明されたように、本実施の形態によれば、各構成品に関する補正データは、各構成品に内蔵された不揮発性メモリに格納される。そして、コンフィグレーション作業時には、信号処理部100が、各構成品の不揮発性メモリから各構成品に関する補正データを“自動的”に取得し、各構成品の補正制御処理や信号処理部100の補正処理部121による補正処理を実施できるようにする。
【0034】
従って、故障した構成品が交換された後に補正データを更新し忘れるといった事態が防止される。また、人間が補正データを信号処理部100に直接入力する場合とは異なり、シリアル番号が異なる構成品の補正データを誤って入力する等の補正データ入力ミスが無くなる。最新の補正データが確実に反映されるため、所望のレーダ性能が実現されなくなるといった事態が未然に防止される。更に、構成品と補正データとを別々に管理する必要が無いため、管理の煩雑さが軽減される。
【0035】
2.第2の実施の形態
図5は、第2の実施の形態に係るレーダ装置1の構成例を示すブロック図である。第1の実施の形態と重複する説明は適宜省略される。
【0036】
第2の実施の形態では、不揮発性メモリ110が信号処理部100から省略され、上記のステップS30が省略される。不揮発性メモリ110の補正データテーブルTBLに補正データが記録されないため、信号処理部100のCPU120は、電源ON毎に、各構成品(10、20、30、40、50)の不揮発性メモリ(11、21、31、41、51)から補正データ(C1、C2、C3、C4、C5)を取得する。尚、図5に示される例では、CPU120は、各構成品(10、20、30、40、50)の不揮発性メモリ(11、21、31、41、51)と、一対一で接続されている。
【0037】
第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同じ効果が得られる。
【0038】
尚、電波装置に限らず、光学装置など、構成品の組み合わせで構成され、それらの補正を信号処理部で行う装置であれば、同様に効果を発揮することができる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態が添付の図面を参照することにより説明された。但し、本発明は、上述の実施の形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で当業者により適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0040】
1 レーダ装置
10 アンテナ
11 不揮発性メモリ
12 補正処理部
20 送信機
21 不揮発性メモリ
22 補正処理部
30 受信機
31 不揮発性メモリ
32 補正処理部
40 発振器
41 不揮発性メモリ
42 補正処理部
50 レドーム
51 不揮発性メモリ
60 バス
100 信号処理部
110 不揮発性メモリ
120 CPU
121 補正処理部
C1〜C5 補正データ
TBL 補正データテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の構成品と、
信号処理部と
を備え、
前記複数の構成品の各々は、不揮発性メモリを備え、
前記不揮発性メモリには、構成品の個体毎に異なる特性を補正するための補正データが格納されており、
コンフィグレーション作業において、前記信号処理部は、前記複数の構成品の各々の前記不揮発性メモリから前記補正データを取得し、前記取得した補正データに基づいて前記各々の構成品の特性を補正する
電波装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電波装置であって、
前記信号処理部は、補正データテーブルが格納される不揮発性メモリを備え、
前記コンフィグレーション作業において、前記信号処理部は、前記取得した補正データを前記補正データテーブルに記録する
電波装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電波装置であって、
前記複数の構成品は、
電波を送受信するアンテナと、
前記アンテナに送信信号を送る送信機と、
前記アンテナから受信信号を受け取る受信機と
を含む
電波装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−208096(P2012−208096A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76038(P2011−76038)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】