説明

電波関連電子機器、電磁波関連電子機器および光関連電子機器

【課題】フラクタル構造体を用いて各種電子機器の特性を向上させる。
【解決手段】携帯電話機20のアンテナ21の先端部に、電波を集めるフラクタル構造体22を取り付ける。電波が微小で連絡が取れないようなときに(取り外し可能とすることもできる)、アンテナ21の先端部にメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)22を付けることによって、特定の電波を集めることができるため、電話連絡を確実に取ることができる。したがって、フラクタル構造体を用いて各種電子機器の特性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトニック結晶と称される誘電体の周期構造を備え、構造のどの部分をとっても全体的な構造と相似形であるフラクタル構造体(メンジャースポンジ型誘電体)を用いた電波関連電子機器、電磁波関連電子機器および光関連電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の携帯電話装置など、電波を送受信する電子機器において、電波の送受信状態が良くないときには、アンテナの方向を補正したり、増幅器などを用いることによって対応している。
【0003】
また、近年では、パーソナルコンピュータ(PC)や携帯電話装置の他に、各種のデジタル機器など、電磁波が出力される電子機器が多く使用されており、このような電磁波は人体に良くない影響を及ぼすと言われている。さらに、デジタル信号の高周波放射により他の電子機器に対する電波障害が発生しやすい状況になっている。
【0004】
また、太陽電池においては、光エネルギーを光電変換部にて電気に変換して使用している。
【0005】
ところで、特許文献1には、フォトニックフラクタルにてメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)を作製する技術が開示されている。このメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)は、一部または全部に立体的なフラクタル構造を有しており、そのフラクタル構造の構造因子および材質により定まる特有の波長の電波を集めるか、電磁波を吸収するか、または、光を蓄積するものである。この特許文献1には、このフラクタル構造体をアンテナに利用して高効率受発振アンテナを構成したり、特定波長の電磁波を遮断するフィルターとして用いることが記載されている。また、この特許文献1には、このフラクタル構造体を太陽電池の効率的な集光器として利用したり、フラクタル構造体により光を蓄積して超高速の記憶演算媒体として利用することが記載されている。
【特許文献1】国際公開番号 WO 2005/027611 A1号公報(優先権データ;特願2003−315768号、特願2004−12292号および特願2004−180230号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の携帯電話装置などの電波関連電子機器では、電波の送受信状態が良くないときには、アンテナの方向を補正したり、更に増幅器等を用いることによって対応しているが、これらの方法では効率がよくない。また、この携帯電話装置により送受信可能なエリアの境界近くにいる場合などに、連絡が取れなくなるという問題も生じている。
【0007】
また、PCや携帯電話装置の他に、各種のデジタル機器など、電磁波が出力される電子機器が多く使用されているが、電磁波は人体によくないと言われているため、電磁波は電子機器外部に出力されない方が好ましい。さらに、デジタル信号の高周波放射により、他の電子機器に対する電波障害が発生しやすい状況になっている。
【0008】
さらに、太陽電池では、光エネルギーを光電変換部にて電気に変換して使用しているが、光電変換効率の向上が望まれている。
【0009】
特許文献1には、メンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)を各種電子機器に利用することは記載されているが、各種電子機器に適用した場合の具体的な構成例については記載していない。
【0010】
本発明は、上記従来の問題を解決するもので、フラクタル構造体を用いて電波受信状態を向上させることができる電波関連電子機器、このフラクタル構造体を用いて電磁波対策を容易にして電波障害を防ぐことができる電磁波関連電子機器および、このフラクタル構造体を用いて電気への変換を不要にして情報処理やデータ伝送能力を高速化させることができる光関連電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電波関連電子機器は、一部または全部に立体的なフラクタル構造を有し、該フラクタル構造の構造因子および材質により定まる特有の波長の電波を集めるフラクタル構造体をアンテナの先端部に着脱自在に嵌め込んで備えものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0012】
また、好ましくは、本発明の電波関連電子機器におけるフラクタル構造体は、各面の中央部をそれぞれ貫通する複数の貫通空洞と、その貫通空洞を含む該フラクタル構造体全体を1/S(Sは自然数)に縮小してなる複数の1次構造体を含んでなり、該貫通空洞の該各面における断面形状は、該各面がn/S(ただし、nは1以上S未満の整数)に縮小された形状となっている立方体形状を有するメンジャースポンジ型フラクタル構造体であって、誘電体により1辺aの立方体形状として構成されており、フラクタル構造の構造因子とフラクタル構造体を構成する材料の誘電率に基づいて算出される体積平均誘電率をε、フラクタル構造体の1辺をaとして、2a×√ε×n/Sに相当する波長の電波をフラクタル構造内に集めるように構成している。
【0013】
本発明の電磁波関連電子機器は、一部または全部に立体的なフラクタル構造を有し、該フラクタル構造の構造因子および材質により定まる特有の波長の電磁波を吸収するフラクタル構造体が、電磁波発生源の近傍位置または複数の電磁波発生源の間に配置されているものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0014】
また、好ましくは、本発明の電磁波関連電子機器におけるフラクタル構造体が、電磁波発生源である基板部、集積回路部、電源部、配線部および重畳回路の少なくとも一つの近傍位置に配置されている。
【0015】
さらに、好ましくは、本発明の電磁波関連電子機器におけるフラクタル構造体は、各面の中央部をそれぞれ貫通する複数の貫通空洞と、その貫通空洞を含む該フラクタル構造体全体を1/S(Sは自然数)に縮小してなる複数の1次構造体を含んでなり、該貫通空洞の該各面における断面形状は、該各面がn/S(ただし、nは1以上S未満の整数)に縮小された形状となっている立方体形状を有するメンジャースポンジ型フラクタル構造体であって、誘電体により1辺aの立方体形状として構成されており、フラクタル構造の構造因子とフラクタル構造体を構成する材料の誘電率に基づいて算出される体積平均誘電率をε、フラクタル構造体の1辺をaとして、2a×√ε×n/Sに相当する波長の電磁波をフラクタル構造内に集めるように構成している。
【0016】
本発明の光関連電子機器は、一部または全部に立体的なフラクタル構造を有し、該フラクタル構造の構造因子および材質により定まる特有の波長の光を閉じ込めるフラクタル構造体を、集光部に配置して光エネルギーを蓄積し、該蓄積された光エネルギーを取り出して利用可能とするものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0017】
また、好ましくは、本発明の光関連電子機器における蓄積した光エネルギーを利用して情報処理またはデータ伝送処理を行う。
【0018】
さらに、好ましくは、本発明の光関連電子機器におけるフラクタル構造体は、各面の中央部をそれぞれ貫通する複数の貫通空洞と、その貫通空洞を含む該フラクタル構造体全体を1/S(Sは自然数)に縮小してなる複数の1次構造体を含んでなり、該貫通空洞の該各面における断面形状は、該各面がn/S(ただし、nは1以上S未満の整数)に縮小された形状となっている立方体形状を有するメンジャースポンジ型フラクタル構造体であって、誘電体により1辺aの立方体形状として構成されており、フラクタル構造の構造因子とフラクタル構造体を構成する材料の誘電率に基づいて算出される体積平均誘電率をε、フラクタル構造体の1辺をaとして、2a×√ε×n/Sに相当する波長の光をフラクタル構造内に集めるように構成している。
【0019】
上記構成により、以下に、本発明の作用について説明する。
【0020】
特許文献1のように、フォトニックフラクタルにてメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)を作製する技術が開発されている。
【0021】
そこで、本発明では、このメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)が電波を集めるという機能を利用して、メンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)を電波関連電子機器のアンテナ先端部に配置することによって電波送受信状態を良好なものにすることが可能となる。
【0022】
また、メンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)が電磁波を吸収するという機能を利用して、メンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)を電磁波発生源の近傍に配置することにより電磁波対策を行って、電波障害を防ぐことが可能となる。
【0023】
さらに、メンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)が光エネルギーを蓄えるという特徴を利用して、メンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)を太陽電池の集光部に配置することにより光電変換を不要にして高効率化することが可能となる。また、メンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)を演算処理装置に利用することにより、情報処理やデータ伝送能力の高速化を図ることが可能となる。
【0024】
さらに、従来の太陽電池では、光エネルギーを電気に変換して使用しているが、この光電変換が不要であればエネルギー利用効率が向上する。さらに、電気ではなく、光をそのまま用いることにより、光コンピュータなどのように、情報処理やデータ伝送能力を高速化させた電子機器を実現することも可能となる。
【発明の効果】
【0025】
以上により、本発明によれば、メンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)を利用することにより、次の(1)〜(3)の効果を得ることができる。
【0026】
(1)携帯電話装置などの電波関連電子機器において、必要なときにフラクタル構造体を取り付ければ、アンテナへの電波の送受信状態を良好にすることができる。
【0027】
(2)PC、携帯電話器、デジタル機器およびピックアップ装置などの電磁波関連電子機器において、フラクタル構造体が電磁波発生源の近傍位置に設けられて、容易かつ効率よく不要輻射(EMI)対策ができ、電波障害を防ぐことができる。
【0028】
(3)太陽電池などの光関連電子機器に代えて、光エネルギーを電気エネルギーに変換することなく、光エネルギーのままで利用できて、エネルギー効率を向上することができる。さらに、電気信号に変換することなく、光信号をそのまま利用することにより情報処理やデータ伝送能力を高速化して高速処理可能な光コンピュータなどを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、本発明の電波関連電子機器の実施形態1、本発明の電磁波関連電子機器の実施形態2および本発明の光関連電子機器の実施形態3について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
本発明の実施形態1〜3について説明する前に、まず、本発明に使用されるフラクタル構造体について説明する。
【0031】
図1は、本発明に使用されるメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)の形状例を示す斜視図である。
【0032】
図1において、メンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)10は、一部または全部に立体的なフラクタル構造を有し、そのフラクタル構造の構造因子および材質により定まる特有の波長の電波を集めるか、電磁波を吸収するかまたは、光を蓄積するものである。ここで、構造因子とは、全体と部分とが相似となるための因子であって、例えば全体形状を画する要素(例えば1辺の長さa)、その全体と部分の縮小比(n/S)など、フラクタル構造を特定する因子をいう。また、材質とは、構造体を構成する材料の性質であって、ここでは主として誘電率や導電率などの電気的性質をいう。
【0033】
このフラクタル構造体10は、立方体形状であって、各面の中央部をそれぞれ貫通する複数の貫通空洞11と、その貫通空洞を含むフラクタル構造体全体を1/S(図1の場合には1/27)に縮小してなる複数の1次構造体12を含んでいる。また、その貫通空洞の各面における断面形状は、各面がn/S(ただし、nは1以上S未満の整数)に縮小された形状となっている。このようなフラクタル構造体は、メンジャースポンジ型と称されている。図1では、フラクタル構造体10の立方体(全体)の1辺を3等分した27個の小立方体(1次構造体12)から、各面および立方体の中央部に位置する小立方体を7個引き抜いて中央部の穴(貫通空洞11)が角柱状に貫通した構造となっている。
【0034】
本発明において、メンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体10)は、フラクタル構造を有する立体形状を有するものであれば、材料は各種のものを用いることができる。例えば、樹脂、セラミックス、半導体、ガラス、金属またはこれら2種類以上の混合物により構成することができる。
【0035】
このフラクタル構造体10を誘電体材料で構成し、1辺aの立方体形状としたメンジャースポンジ型誘電体は、その平均堆積誘電率をεとすると、a×√ε×n/Sに相当する波長の電波、電磁波や光エネルギーを中央部の穴に集めることができる。例えば、図1に示すメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体10)では、上記n/Sは9/27=1/3となり、2×(1/3)×a×√εに相当する波長の電波、電磁波や光エネルギーを中央部の穴(貫通空洞11)に集めることができる。そこで、各用途に適する波長の電波、電磁波や光エネルギーを集められるように、構造因子や材質を設計して、メンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体10)を作製する。
【0036】
以下に、このメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体10)を各種電子機器に利用した実施形態1〜3について順次説明する。
(実施形態1)
本実施形態1では、メンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)を利用した電波関連電子機器について説明する。
【0037】
本実施形態1の電波関連電子機器では、特定波長の電波を集めるように構造因子および材質を設計してメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)を作製し、そのメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体10)をアンテナ部に配置する。
【0038】
図2(a)および図2(b)は、本発明に用いられるメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)の携帯電話装置への適用例を示す斜視図である。
【0039】
図2(a)に示すような携帯電話装置20のアンテナの先端部21に、図2(b)に示すようにメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)22を取り付ける。このアンテナ21の先端部へのフラクタル構造体22の取り付けは、フラクタル構造体22の貫通空洞22a内にアンテナの先端部21を嵌め込むことにより取り付けることができる。電波が微小で連絡が取れないようなときに、アンテナの先端部21をフラクタル構造体22の貫通空洞22a内に差し込むことによって、フラクタル構造体22で特定の電波を集めることができるため、電話連絡を確実に取ることができる。アンテナの先端部21の形状は、フラクタル構造体22の貫通空洞22a内に差し込みやすいように円錐状や丸みを有している方がよい。このように、フラクタル構造体22の貫通空洞22aと、アンテナの先端部21とは着脱自在にしてもよいし、始から固定されていてもよい。
【0040】
フラクタル構造体22は、携帯電話装置により実際に交信する電波の周波数帯に合わせたものとする。即ち、フラクタル構造体22は、各面の中央部をそれぞれ貫通する複数の貫通空洞22aと、その貫通空洞22aを含むフラクタル構造体全体22を1/S(Sは自然数)に縮小してなる複数の1次構造体を含んでなり、この貫通空洞22aの各面における断面形状は、各面がn/S(ただし、nは1以上S未満の整数)に縮小された形状となっている立方体形状を有するメンジャースポンジ型フラクタル構造体であって、誘電体により1辺aの立方体形状として構成されており、フラクタル構造の構造因子とフラクタル構造体を構成する材料の誘電率に基づいて算出される体積平均誘電率をε、フラクタル構造体22の1辺をaとして、2a×√ε×n/Sに相当する波長の電波をフラクタル構造内に集めるように構成している。
【0041】
これと同様に、無線機、AM・FMラジオ、車載用送受信機、ラジコン装置などに対しても、アンテナの先端部21にメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)22を取り付けることによって、感度が良好なものとなる。
(実施形態2)
本実施形態2では、メンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)を利用した電磁波関連電子機器について説明する。
【0042】
本実施形態2の電磁波関連電子機器では、特定波長の電磁波を吸収するように構造因子および材質を設計してメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)を作製し、そのメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)を電磁波発生源の近傍位置に配置することにより電磁波漏れ対策を施すことができる。
【0043】
図3(a)および図3(b)は、本発明で用いるメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)のデジタル機器への適用例を示す斜視図である。
【0044】
デジタル機器では、電磁波漏れにより他製品がノイズ発生や誤動作するなどという電磁波障害などを防止するために、不要輻射対策(EMI)が義務付けられているが、この対応は容易なものではない。
【0045】
そこで、本実施形態2では、図3(a)に示すようなデジタル機器としてのコンパクトディスクプレイヤー(Compact Disc Player)30において、図3(b)に示すように、電磁波の発生源である基板31、IC32、電源(トランス)33や配線などの近傍位置、この場合は、基板31上のIC32と電源(トランス)33との間に、電磁波発生源に対するサイズのメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)34を配置する。このメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)34によって、電磁波を吸収することができるため、不要輻射を吸収して他製品にノイズが発生したり誤動作することを防ぐことができる。
【0046】
この場合、フラクタル構造体34は、基板31上のIC32や電源(トランス)33から実際に発生する電磁波の周波数帯に合わせるものとする。即ち、フラクタル構造体34は、各面の中央部をそれぞれ貫通する複数の貫通空洞34aと、その貫通空洞34aを含むフラクタル構造体全体を1/S(Sは自然数)に縮小してなる複数の1次構造体を含んでなり、この貫通空洞34aの各面における断面形状は、各面がn/S(ただし、nは1以上S未満の整数)に縮小された形状となっている立方体形状を有するメンジャースポンジ型フラクタル構造体であって、誘電体により1辺aの立方体形状として構成されており、フラクタル構造の構造因子とフラクタル構造体を構成する材料の誘電率に基づいて算出される体積平均誘電率をε、このフラクタル構造体34の1辺をaとして、2a×√ε×n/Sに相当する波長の電磁波をフラクタル構造内に集めるように構成している。
【0047】
図4(a)および図4(b)は、本発明で用いるメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)のピックアップ装置への適用例を示す斜視図である。
【0048】
図4(a)および図4(b)に示すようなデジタル機器としてのピックアップ装置40において、光源であるレーザ装置41に不要な光(迷光)が入射されるとノイズが発生する。よって、このノイズを打ち消すために重畳モジュール42内に重畳回路42aが設けられている。この重畳回路42aは電磁波を発生するが、デジタル機器には不要輻射対策(EMI)が義務付けられているため、回路で対応したり、黄銅上のニッケルメッキ材などからなるシールド板43を設けることによって対応している。しかしながら、実際には、回路部品の組み合わせが複雑であったり、シールド板43の隙間を無くす必要があるため、対応は容易なものではない。
【0049】
そこで、本実施形態2では、図4(b)に示すように、電磁波の発生源である重畳回路42aの近傍位置、ここでは、重畳モジュール42のシールド板43側とは反対側にメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)44を配置している。このメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)44によって、特定の電磁波を吸収することができるため、不要輻射を吸収して外部への電磁波漏れを防ぐことができる。さらには、シールド板43の加工が安易になり、シールド板43を廃止したり、安い材質への変更も可能となる。
【0050】
この場合、フラクタル構造体44は、重畳回路42aから実際に発生する電磁波の周波数帯に合わせるものとする。即ち、即ち、フラクタル構造体44は、各面の中央部をそれぞれ貫通する複数の貫通空洞44aと、その貫通空洞44aを含むフラクタル構造体全体を1/S(Sは自然数)に縮小してなる複数の1次構造体を含んでなり、この貫通空洞44aの各面における断面形状は、各面がn/S(ただし、nは1以上S未満の整数)に縮小された形状となっている立方体形状を有するメンジャースポンジ型フラクタル構造体であって、誘電体により1辺aの立方体形状として構成されており、フラクタル構造の構造因子とフラクタル構造体を構成する材料の誘電率に基づいて算出される体積平均誘電率をε、このフラクタル構造体44の1辺をaとして、2a×√ε×n/Sに相当する波長の電磁波をフラクタル構造内に集めるように構成している。
(実施形態3)
本実施形態3では、メンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)を利用した光関連電子機器について説明する。
【0051】
本実施形態3の光関連機器では、特定波長の光を閉じ込める構造因子および材質を設計してメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)を作製し、そのメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)を光エネルギーを蓄積するために用いる。
【0052】
例えば、太陽電池は、光エネルギーを電気に変換して蓄積し、各種製品に電気を供給している。本実施形態3では、メンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)によって、光エネルギーを蓄積することができるため、光エネルギーをそのまま用いることができて、電気に変換することが不要となる。
【0053】
さらに、メンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)によって蓄積された光をそのまま使用して情報処理または/およびデータ伝送を行うことにより、情報処理やデータ伝送能力が高速化された光コンピュータなどを実現することが可能となる。
【0054】
以上のように、本発明の好ましい実施形態1〜3を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態1〜3に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態1〜3の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、携帯電話機などの電波関連機器において、メンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)を利用することにより、アンテナの電波送受信状態を良好にすることができる。また、本発明は、PC、携帯電話器、デジタル機器、ピックアップ装置等の電磁波関連機器において、メンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)を利用することにより、不要輻射(EMI)対策が容易になり、電波障害を防ぐことができる。さらに、本発明は、太陽電池などの光関連機器において、メンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)を利用することにより、光エネルギーを電気エネルギーに変換することなく効率を向上することが可能となる。さらに、光による情報処理やデーター伝送能力を高速化して高速処理可能な光コンピュータなどを実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に用いられるメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)の形状例を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る電波関連電子機器として、(a)は携帯電話装置の外観図、(b)は、(a)に示す携帯電話装置にメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)を利用した例を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態2に係る電磁波関連電子機器として、(a)はデジタル機器の外観図、(b)は、(a)に示すデジタル機器にメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)を利用した例を示す一部断面斜視図である。
【図4】本発明の実施形態2の別の事例に係る電磁波関連電子機器として、(a)はピックアップ装置の外観図、(b)は、(a)に示すピックアップ装置にメンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)を利用した例を示す一部断面斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
10、22、34、44 メンジャースポンジ型誘電体(フラクタル構造体)
11、22a、34a、44a 貫通空洞
12 1次構造体(小立方体)
20 携帯電話機
21 アンテナ
30 デジタル機器(Compact Disc Player)
31 基板
32 IC
33 電源
40 ピックアップ装置
41 レーザ装置
42 重畳モジュール
42a 重畳回路
43 シールド板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部または全部に立体的なフラクタル構造を有し、該フラクタル構造の構造因子および材質により定まる特有の波長の電波を集めるフラクタル構造体をアンテナの先端部に着脱自在に嵌め込んで備えた電波関連電子機器。
【請求項2】
前記フラクタル構造体は、各面の中央部をそれぞれ貫通する複数の貫通空洞と、その貫通空洞を含む該フラクタル構造体全体を1/S(Sは自然数)に縮小してなる複数の1次構造体を含んでなり、該貫通空洞の該各面における断面形状は、該各面がn/S(ただし、nは1以上S未満の整数)に縮小された形状となっている立方体形状を有するメンジャースポンジ型フラクタル構造体であって、誘電体により1辺aの立方体形状として構成されており、フラクタル構造の構造因子とフラクタル構造体を構成する材料の誘電率に基づいて算出される体積平均誘電率をε、フラクタル構造体の1辺をaとして、2a×√ε×n/Sに相当する波長の電波をフラクタル構造内に集めるように構成した請求項1に記載の電波関連電子機器。
【請求項3】
一部または全部に立体的なフラクタル構造を有し、該フラクタル構造の構造因子および材質により定まる特有の波長の電磁波を吸収するフラクタル構造体が、電磁波発生源の近傍位置または複数の電磁波発生源の間に配置されている電磁波関連電子機器。
【請求項4】
前記フラクタル構造体が、電磁波発生源である基板部、集積回路部、電源部、配線部および重畳回路の少なくとも一つの近傍位置に配置されている請求項3に記載の電磁波関連電子機器。
【請求項5】
前記フラクタル構造体は、各面の中央部をそれぞれ貫通する複数の貫通空洞と、その貫通空洞を含む該フラクタル構造体全体を1/S(Sは自然数)に縮小してなる複数の1次構造体を含んでなり、該貫通空洞の該各面における断面形状は、該各面がn/S(ただし、nは1以上S未満の整数)に縮小された形状となっている立方体形状を有するメンジャースポンジ型フラクタル構造体であって、誘電体により1辺aの立方体形状として構成されており、フラクタル構造の構造因子とフラクタル構造体を構成する材料の誘電率に基づいて算出される体積平均誘電率をε、フラクタル構造体の1辺をaとして、2a×√ε×n/Sに相当する波長の電磁波をフラクタル構造内に集めるように構成している請求項3または4に記載の電磁波関連電子機器。
【請求項6】
一部または全部に立体的なフラクタル構造を有し、該フラクタル構造の構造因子および材質により定まる特有の波長の光を閉じ込めるフラクタル構造体を、集光部に配置して光エネルギーを蓄積し、該蓄積された光エネルギーを取り出して利用可能とする光関連電子機器。
【請求項7】
前記蓄積された光エネルギーを利用して情報処理またはデータ伝送処理を行う請求項6に記載の光関連電子機器。
【請求項8】
前記フラクタル構造体は、各面の中央部をそれぞれ貫通する複数の貫通空洞と、その貫通空洞を含む該フラクタル構造体全体を1/S(Sは自然数)に縮小してなる複数の1次構造体を含んでなり、該貫通空洞の該各面における断面形状は、該各面がn/S(ただし、nは1以上S未満の整数)に縮小された形状となっている立方体形状を有するメンジャースポンジ型フラクタル構造体であって、誘電体により1辺aの立方体形状として構成されており、フラクタル構造の構造因子とフラクタル構造体を構成する材料の誘電率に基づいて算出される体積平均誘電率をε、フラクタル構造体の1辺をaとして、2a×√ε×n/Sに相当する波長の光をフラクタル構造内に集めるように構成している請求項6または7に記載の光関連電子機器。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【公開番号】特開2007−124050(P2007−124050A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−310411(P2005−310411)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】