説明

電流センサの異常検出装置

【課題】電流が流れている時でも、電流センサの異常を検出する。
【解決手段】バッテリコントローラ3は、充放電制御コントローラ4から入力される二次電池1の充放電電力制御値Psと、電圧センサ2によって検出される二次電池1の電圧Vsとに基づいて、電流センサ1で検出される理論電流Isを算出し、算出したIsと、電流センサ1で検出される電流I1とに基づいて、電流センサ1の異常を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサの異常を検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電流センサによって検出される電流値が0とみなせる程度の範囲内の時に、電圧センサによって検出される電圧値の変動の状態に基づいて、電流センサの異常を検出する装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−206221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、電流値が0とみなせる程度の範囲内の時に電流センサの異常を検出する構成となっていたため、電流が流れている状態で異常を検出することができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による電流センサの異常検出装置は、充放電可能な蓄電手段の充放電電力制御値と、電圧検出手段によって検出される蓄電手段の電圧とに基づいて、蓄電手段の理論電流を算出し、算出した理論電流と、電流センサによって検出された充放電電流とに基づいて、電流センサの異常を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明による電流センサの異常検出装置によれば、蓄電手段の充放電電力制御値と、電圧検出手段によって検出される電圧とに基づいて、蓄電手段の理論電流を算出し、算出した理論電流と、電流センサによって検出された充放電電流とに基づいて、電流センサの異常を検出するので、電流が流れている状態でも、確実に電流センサの異常を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
−第1の実施の形態−
図1は、第1の実施の形態における電流センサの異常検出装置の構成を示す図である。第1の実施の形態における電流センサの異常検出装置は、例えば、ハイブリッド自動車に搭載されて使用されるものであって、電流センサ1と、電圧センサ2と、バッテリコントローラ3と、充放電制御コントローラ4とを備える。
【0008】
充放電可能な二次電池10は、複数のセルs1〜sn(nは自然数)を直列に接続して構成される。電流センサ1は、二次電池10に流れる充電電流、および、二次電池1から流れる放電電流を検出する。以下では、充電電流および放電電流をまとめて充放電電流と呼ぶ。電圧センサ2は、二次電池10の両端電圧を検出する。
【0009】
バッテリコントローラ3は、電流センサ1によって検出される電流、および、電圧センサ2によって検出される電圧に基づいて、二次電池10の充電容量(SOC)を算出する。バッテリコントローラ3は、また、算出した充電容量に基づいて、二次電池10が充電可能な充電可能電力量Pi、および、放電可能な放電可能電力量Poを算出する。算出した充電可能電力量Pi、および、放電可能電力量Poは、充放電制御コントローラ4に送信される。
【0010】
充放電制御コントローラ4は、バッテリコントローラ3によって算出された充電可能電力量Pi、および、放電可能電力量Poの範囲内で、二次電池10の充電電力量、および、放電電力量をそれぞれ決定し、決定した充電電力量および放電電力量(以下、まとめて、充放電電力量、または、充放電電力制御値と呼ぶ)に基づいて、二次電池10の充放電を制御する。
【0011】
図2は、第1の実施の形態における電流センサの異常検出装置により行われる異常検出処理の内容を示すフローチャートである。バッテリコントローラ3は、任意のタイミングにおいて、ステップS10の処理を開始する。なお、所定時間ごとに、ステップS10の処理を開始してもよい。
【0012】
ステップS10では、充放電制御コントローラ4から、充放電電力制御値(充放電電力指令値)Psが入力されたか否かを判定する。この充放電電力制御値Psは任意の値であり、通常の充放電制御時に、充放電制御コントローラ4からバッテリコントローラ3に入力される値である。充放電電力制御値Psが入力されていないと判定するとステップS10で待機し、入力されたと判定すると、ステップS20に進む。
【0013】
ステップS20では、電圧センサ2によって、二次電池10の電圧Vsを検出する。電圧センサ2によって検出された電圧Vsを取得すると、ステップS30に進む。ステップS30では、電流センサ1によって、二次電池10の充放電電流I1を検出する。電流センサ1によって検出された電流I1を取得すると、ステップS40に進む。
【0014】
ステップS40では、ステップS10で入力された充放電電力制御値Psと、ステップS20で取得した二次電池10の電圧Vsとに基づいて、次式(1)より、二次電池10の制御電流Isを算出する。式(1)から求められる制御電流Isは、充放電電力制御値Psに基づいて、二次電池10の充放電を制御する際に、電流センサ1で検出される電流の理論値を表している。
Is=Ps/Vs (1)
【0015】
ステップS40に続くステップS50では、制御電流(理論電流)Isと比較するための異常判定値InglおよびInghを設定する。異常判定値InglおよびInghは、それぞれ、次式(2)および(3)に基づいて設定する。
Ingl=|I1|−α (2)
Ingh=|I1|+α (3)
ただし、αは、所定のしきい値であり、電流センサ1の検出誤差、電圧センサ2の検出誤差、充放電制御コントローラ4によって行われる充放電制御の制御誤差等を考慮して、予め決定しておく。
【0016】
ステップS50に続くステップS60では、ステップS40で算出した制御電流Isが異常判定値Inglより大きいか否かを判定する。制御電流Isが異常判定値Inglより大きいと判定すると、ステップS70に進み、異常判定値Ingl以下であると判定すると、ステップS90に進む。ステップS70では、制御電流Isが異常判定値Inghより小さいか否かを判定する。制御電流Isが異常判定値Inghより小さいと判定するとステップS80に進み、異常判定値Ingh以上であると判定すると、ステップS90に進む。
【0017】
ステップS80では、電流センサ1に異常は生じておらず、正常であると判定する。一方、ステップS90では、電流センサ1に異常が発生していると判定する。すなわち、充放電電力制御値Psと、電圧センサ2によって検出される二次電池10の電圧Vsとに基づいて算出される理論電流Isが次式(4)の関係を満たす場合には、電流センサ1は正常であると判断し、式(4)の関係を満たさない場合には、電流センサ1に異常が発生していると判断する。
|I1|−α<Is<|I1|+α (4)
【0018】
なお、式(4)は、次式(5)のように変形することができるので、式(5)の関係を満たす場合に電流センサ1は正常であり、式(5)の関係を満たさない場合には、電流センサ1に異常が発生していると判断することもできる。すなわち、理論電流Isと、電流センサ1によって検出される電流I1との差の絶対値が所定値αより小さければ、電流センサ1は正常であると判断し、所定値α以上であれば、電流センサ1に異常が発生していると判断する。
|Is−I1|<α (5)
【0019】
第1の実施の形態における電流センサの異常検出装置によれば、二次電池10の充放電電力制御値Psと、電圧センサ2によって検出される二次電池10の電圧Vsとに基づいて算出される理論電流Isと、電流センサ1によって検出される充放電電流I1とに基づいて、電流センサ1の異常を検出する。これにより、電流センサ1の異常(故障)を確実に検出することができる。また、電流が0とみなせる場合に限られず、電流が流れている場合にも電流センサ1の異常を検出することができる。さらに、充放電電力制御値Psは、電流センサ1の故障を検出するための専用の値を用いるのではなく、通常制御時の値を用いることができるので、通常の二次電池1の使用時においても、電流センサ1の異常を検出することができる。
【0020】
−第2の実施の形態−
第2の実施の形態における電流センサの異常検出装置の構成は、図1に示す第1の実施の形態における電流センサの異常検出装置の構成と同じである。第2の実施の形態における電流センサの異常検出装置は、電流センサ1の異常が検出された後に、電流センサ1によって検出される充放電電流I1と理論電流Isとの差を示す異常度γを算出し、算出した異常度γに基づいて、二次電池10の充放電可能電力量を制限する。
【0021】
図3は、第2の実施の形態における電流センサの異常検出装置により行われる異常検出処理の内容を示すフローチャートである。ステップS100から始まる処理は、バッテリコントローラ3によって行われる。ステップS100では、電流センサ1に異常が発生したと判定されたか否かを判定する。電流センサ1に異常が発生したか否かの判定は、上述した図2に示すフローチャートの処理に基づいて行う。電流センサ1に異常が発生したと判定されていない場合にはステップS100で待機し、異常が発生したと判定された場合には、ステップS110に進む。
【0022】
ステップS110では、充放電制御コントローラ4に対して、異常度検出制御を行うための指令を出す。異常度検出制御の指令を受けた充放電制御コントローラ4は、充放電電力制御値Psの値を、少なくとも所定時間、維持したままバッテリコントローラ3に出力する。なお、充放電電力制御値Psの値は、通常の充放電制御時に用いられる値である。
【0023】
ステップS110に続くステップS120では、充放電制御コントローラ4から充放電電力制御値Psが入力されたか否かを判定する。充放電電力制御値Psが入力されていないと判定するとステップS120で待機し、入力されたと判定すると、ステップS130に進む。
【0024】
ステップS130〜ステップS150の処理は、図2に示すフローチャートのステップS20〜ステップS40の処理と同一である。ステップS130では、電圧センサ2によって、二次電池10の電圧Vsを検出して、ステップS140に進む。ステップS140では、電流センサ1によって、二次電池10の充放電電流I1を検出して、ステップS150に進む。ステップS150では、ステップS120で入力された充放電電力制御値Psと、ステップS130で検出した二次電池10の電圧Vsとに基づいて、上式(1)より、二次電池10の制御電流(理論電流)Isを算出する。
【0025】
ステップS150に続くステップS160では、次式(6)により、異常度γを算出する。式(6)から明らかなように、異常度γは、充放電電力制御値Psと電圧センサ2によって検出される二次電池10の電圧Vsとに基づいて算出される制御電流(理論電流)Isと、電流センサ1によって検出される充放電電流I1との差の絶対値を示している。
γ=|Is−I1| (6)
【0026】
ステップS170では、二次電池10の充電容量に基づいて求められる充電可能電力量Piおよび放電可能電力量Po(以下、まとめて、充放電可能電力量と記載する)を、ステップS160で算出した異常度γに応じて制限する。具体的には、異常度γが大きいほど、充放電可能電力量が小さくなるように、充放電可能電力量を制限する。ステップS180では、ステップS170で制限した充放電可能電力量を充放電制御コントローラ4に出力する。充放電制御コントローラ4は、バッテリコントローラ3から入力される充放電可能電力量の範囲内で、二次電池10の充放電電力制御値Psを演算する。
【0027】
第2の実施の形態における電流センサの異常検出装置によれば、電流センサ1の異常が検出されると、二次電池10の充放電電力制御値Psと、電圧センサ2によって検出される二次電池10の電圧Vsとに基づいて算出される理論電流Isと、電流センサ1によって検出される充放電電流I1との差の絶対値を示す異常度γを算出し、異常度γに応じて、二次電池10の充放電可能電力を制限する。これにより、電流センサ1の異常が検出された場合でも、二次電池10の充放電を停止させることなく、充放電を継続して行うことができる。
【0028】
特に、異常度γが大きいほど、充放電可能電力が小さくなるように制限するので、二次電池10の充放電制御システムの安全性を確保しつつ、充放電を継続して行うことができる。バッテリコントローラ3は、電流センサ1によって検出される電流、および、電圧センサ2によって検出される電圧に基づいて、二次電池10の充電容量を算出し、算出した二次電池10の充電容量に基づいて、二次電池10の充放電可能電力量を求めている。電流センサ1に異常が発生している場合には、算出した充放電可能電力量に誤差が生じている可能性があるが、異常度γに応じて充放電可能電力量を制限することにより、充放電可能電力量を超えた充放電が行われるのを防ぐことができる。
【0029】
充放電制御コントローラ4からバッテリコントローラ3に出力される充放電電力制御値Psは、常に変化しているため、制御遅れ等に起因して、異常度γに誤差が生じる可能性がある。しかし、第2の実施の形態における電流センサの異常検出装置によれば、充放電制御コントローラ4からバッテリコントローラ3に出力する充放電電力制御値Psの値を少なくとも所定時間、維持するので、異常度γの算出精度を向上させることができる。
【0030】
本発明は、上述した各実施の形態に限定されることはない。例えば、上述した第1および第2の実施の形態では、電流センサの異常検出装置をハイブリッド自動車に搭載する例を挙げて説明したが、電気自動車に搭載することもできるし、車両以外のシステムに適用することもできる。
【0031】
第1の実施の形態では、充放電電力制御値Psは、通常の充放電制御時に、充放電制御コントローラ4からバッテリコントローラ3に入力される値として説明したが、電流センサ1の異常検出処理を行う場合に、異常検出処理を行う旨の指令をバッテリコントローラ3から充放電制御コントローラ4に出力し、充放電制御コントローラ4が少なくとも所定時間、充放電電力制御値Psの値を一定に保った状態でバッテリコントローラ3に出力するようにしてもよい。この場合には、制御遅れ等の影響を排除することができるので、電流センサ1の異常をより正確に検出することができる。
【0032】
電流センサ1によって検出する充放電電流の対象は、二次電池10に限られず、キャパシタ等、充放電可能な蓄電手段であればよい。また、電流センサの種類等によって、本発明が限定されることもない。
【0033】
特許請求の範囲の構成要素と第1および第2の実施の形態の構成要素との対応関係は次の通りである。すなわち、電圧センサ2が電圧検出手段を、充放電制御コントローラ4が充放電制御手段を、バッテリコントローラ3が理論電流算出手段および異常検出手段をそれぞれ構成する。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する上で、上記の実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係に何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1の実施の形態における電流センサの異常検出装置の構成を示す図
【図2】第1の実施の形態における電流センサの異常検出装置により行われる異常検出処理の内容を示すフローチャート
【図3】第2の実施の形態における電流センサの異常検出装置により行われる異常検出処理の内容を示すフローチャート
【符号の説明】
【0035】
1…電流センサ、2…電圧センサ、3…バッテリコントローラ、4…充放電制御コントローラ、10…二次電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電可能な蓄電手段の電圧を検出する電圧検出手段と、
前記蓄電手段の充放電電力制御値に基づいて、前記蓄電手段の充放電を制御する充放電制御手段と、
前記充放電電力制御値と、前記電圧検出手段によって検出される電圧とに基づいて、前記蓄電手段の充放電電流の理論値(以下、理論電流と呼ぶ)を算出する理論電流算出手段と、
電流センサによって検出される前記蓄電手段の充放電電流と、前記理論電流算出手段によって算出された理論電流とに基づいて、前記電流センサの異常を検出する異常検出手段とを備えることを特徴とする電流センサの異常検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電流センサの異常検出装置において、
前記異常検出手段は、前記電流センサによって検出された充放電電流と、前記理論電流算出手段によって算出された理論電流との差が所定範囲内に無ければ、前記電流センサに異常が発生していると判断することを特徴とする電流センサの異常検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電流センサの異常検出装置において、
前記充放電制御手段は、同一の充放電電力制御値に基づいた充放電制御を、少なくとも所定時間行うことを特徴とする電流センサの異常検出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の電流センサの異常検出装置において、
前記異常検出手段によって、前記電流センサの異常が検出されると、前記電流センサによって検出された充放電電流と、前記理論電流算出手段によって算出された理論電流との差に基づいて、前記蓄電手段が充放電可能な電力量を制限する充放電可能電力量制限手段をさらに備えることを特徴とする電流センサの異常検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電流センサの異常検出装置において、
前記充放電可能電力量制限手段は、前記電流センサによって検出された充放電電流と、前記理論電流算出手段によって算出された理論電流との差の絶対値が大きいほど、前記蓄電手段が充放電可能な電力量を小さくすることを特徴とする電流センサの異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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