説明

電流案内が改善された燃料電池

【課題】電流案内が改善された燃料電池および燃料電池システムを提供すること。
【解決手段】電気的に接続されている少なくとも2つのセグメントライン3、4を備えた管状機能部2を有しており、セグメントライン3、4の各々は、少なくとも2つの電極−電解質−セグメント5、6あるいは7、8を有しており、電極−電解質−セグメント5、6、7、8はそれぞれ、1つのアノードと1つのカソードと、アノードとカソードの間に配置されている1つの電解質とを含んでおり、1つのセグメントライン3(4)の前記電極−電解質−セグメント5、6(7、8)は直列接続されており、異なるセグメントライン3、4内に配置されている少なくとも2つの電極−電解質−セグメント5、7は、アノードの材料からまたはカソードの材料から形成されている接続部分9を介して電気的に接続されており、これによって、複数のセグメントライン3、4が直列接続される燃料電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池および燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、管状または面状に構成される。本願の対象となる燃料電池は、管状の構造を有しているものである。これはチューブ状とも称され、その幾何学的な形状によって、面状に形成された燃料電池と区別される。
【0003】
このチューブに沿った電流ガイドのために、管状燃料電池において電流コレクタを用いることが公知である。これらは主に、適切な電流ガイドを実現するためおよび抵抗損失を制限するために、特に導電性の材料から形成され、例えば電流コレクタ棒としてガス供給筒の中央に配置される、または層やウェブとして、直接的にチューブ上に被着される。良好な導電性の他に、電流コレクタは、使用されている他の材料(例えばアノードまたはカソード)との化学的および熱機械的なコンパチビリティを有しているべきである。さらに温度が高い場合にも長時間耐久性を提供すべきである。
【0004】
文献欧州特許第1079453号明細書から、チューブ状燃料電池が知られている。ここではシーリング構造によって、セルの密閉性並びにセルの電気的特性が改善される。さらに、管状セルはセルエレメントフィルムを含んでいる。これは焼成方法および燃料極および空気極をフィルムとして形成することによって、燃料電池の基板管の表面上に形成される。ここでは固体電界質が燃料極と空気極との間に挿入される。この際に、大きい表面粗面性を備えた粘着性増強フィルムが、管状セルの密閉された区間上に配置される。
【0005】
文献欧州特許出願公開第1624521号明細書からさらに、固体酸化物形燃料電池ないしは固体酸化物形燃料電池の製造方法が知られている。燃料電池は複数のセルを含んでいる。これらのセルはそれぞれ1つの燃料極と、電解質と、空気極とを含んでいる。これらのセルはここで、例えば管状の横断面を備えた絶縁基板上に配置されている。隣接している複数のセルはインターコネクタによって電気的に相互に直列接続されている。これらのインターコネクタはそれぞれ、第1のセルの燃料極を別のセルの空気極と接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第1079453号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1624521号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電流案内が改善された燃料電池および燃料電池システムを提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題は、電気的に接続されている少なくとも2つのセグメントラインを備えた管状機能部を有しており、前記少なくとも2つのセグメントラインの各々は、少なくとも2つの電極−電解質−セグメントを有しており、当該電極−電解質−セグメントはそれぞれ、1つのアノードと1つのカソードと、当該アノードとカソードの間に配置されている1つの電解質とを含んでおり、1つのセグメントラインの前記電極−電解質−セグメントは直列接続されており、異なるセグメントライン内に配置されている少なくとも2つの電極−電解質−セグメントは、アノードの材料からまたはカソードの材料から形成されている接続部分を介して電気的に接続されており、殊にこれによって、複数のセグメントラインが直列接続される、ことを特徴とする燃料電池によって解決される。また上述の課題は、上記燃料電池を少なくとも1つ含んでいる、ことを特徴とする燃料電池システムによって解決される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の構成要件は燃料電池であり、当該燃料電池は、電気的に接続されている少なくとも2つのセグメントラインを備えた管状の機能部を含んでいる。ここで前記少なくとも2つのセグメントラインの各セグメントラインは、少なくとも2つの電極−電解質−セグメントを有しており、当該電極−電解質−セグメントは、アノードとカソードを1つずつと、当該アノードとカソードの間に配置された電解質とを含んでいる。セグメントラインのこれらの電極−電解質−セグメントは、直列接続されている。さらに、異なるセグメントライン内に配置された少なくとも2つの電極−電解質−セグメントは、アノードの材料からまたはカソードの材料から形成された接続部分を介して電気的に接続されており、殊にこれによって、複数のセグメントラインが直列接続される。機能部は、本発明では殊に燃料電池に機能を与える、すなわちエネルギー供給に用いられる素子ないしは部分である。エネルギーを供給するために、本発明の燃料電池では、殊に電極−電解質−セグメントが用いられる。このセグメントは、アノード、カソードおよびこれらの間に配置されている電解質を含んでいる。このようなセグメントは燃料電池においてそれ自体公知の方法で、アノード、カソードおよび電解質の電気化学的なプロセスによってエネルギーを供給する。
【0010】
本発明では、機能部は電気的に接続されている少なくとも2つのセグメントラインを有している。ここでこの少なくとも2つのセグメントラインの各セグメントラインは、少なくとも2つの電極−電解質−セグメントを有しており、当該電極−電解質−セグメントは直列接続されている。従って、機能部は少なくとも4つの電極−電解質−セグメントを有している。各電極−電解質セグメントはここで1つのアノードと、1つのカソードとこれらの電極の間に配置されている1つの電解質と含んでいる。このような複数の電極−電解質セグメントを設けることによって、機能部は適切に各用途に適合される。殊に、燃料電池の電流値および電圧値が所望のように調整可能である。異なるライン内に電気的に接続されている電極−電解質−セグメントを設けることによって、さらに拡張された用途多様性ないしは調整可能性が得られる。
【0011】
少なくとも2つのセグメントライン相互の不所望な影響を排除するために、セグメントライン自体をさらに少なくとも部分的に、電気的およびイオン的に相互に絶縁することができる。「部分的に相互に絶縁される」とは本発明の枠内では殊に、個々のセグメントラインが、意図された電気的な接続、例えば接続部分を介してのみ電気的に相互に接続されていることを意味している。ここでさらに殊に、異なるセグメントラインないしはその電極−電解質−セグメントのアノード領域とカソード領域は電気的におよびイオン的に相互に絶縁され、これによって例えば絶縁が阻止される。さらに有利には異なるセグメントラインおよびその電極−電解質−セグメントの電解質領域は、イオン的におよび電子的にも相互に絶縁される。従って、少なくとも2つのセグメントラインないしはその電極−電解質−セグメントを完全に電子的およびイオン的に相互に絶縁させること、または適切な電気的絶縁体、イオン的絶縁体または電気かつイオン的絶縁体を、必要な箇所にのみ設けることができる。電気的な絶縁は本発明の範囲においては殊に、この領域において導電性が存在していないまたは非本質的な導電性しか存在していないということを意味している。ここでイオン的な絶縁とは本発明の範囲において殊に、この領域においてイオン伝導性が存在していない、または非本質的なイオン伝導性しか存在していないということを意味している。
【0012】
本発明ではさらに、機能部が管状に形成されており、これによって管状ないしはチューブ状の燃料電池が形成される。ここで管状の機能部とは殊に、実質的に円形、例えば環状、楕円または多角形の基底面を備えた中空円筒状の体のことである。この機能部はさらにそれ自体で既に、適切な安定性を有している。従って担体を設ける必要はない。このようにして、製造方法を特に簡単かつ低コストにすることができる。ここで管状機能部は自身の安定性を、1つまたは2つの電極によって、および/または電解質によって得ることができる。換言すれば、機能部は電極によって担われ得る、または電解質によって担われ得る。しかし基本的に、本発明においては、機能部の非自力サポート構成も可能である。
【0013】
本発明の燃料電池はさらに、異なるセグメントライン内に配置されている少なくとも2つの電極−電解質−セグメントの特に有利な電気的な接続を有している。詳細には、本発明では、異なるセグメントライン内に配置されている少なくとも2つの電極−電解質−セグメントは、アノードの材料から、またはカソードの材料から形成されている接続部分を介して電気的に相互に接続されている。ここでこの電気的な接続は、本発明の範囲内では例えば、アノードまたはカソードと1つの部分として構成されている接続部分によって実現される。これによって、この接続部分はアノードまたはカソードの一部として形成される。または相応の電極が、この接続部分と導電性接続される。接続部分はここで殊に、次のような領域である。すなわち、アノード材料ないしはカソード材料から形成されているのにも係わらず、電気的エネルギーの生成に寄与せず、または実質的に寄与せず、主要タスクとして、2つの電極−電解質−セグメントの電気的な接続を有している領域である。例えば、相応する領域が補完的な領域に対して対向して配置されておらず、すなわち例えばアノード材料に直接的に隣接してカソード材料が設けられていない、またはその逆のことから本発明において上記のことが読み取れる。または例えば接続部分の領域において、カソード材料と比べて、アノード材料の表面および/または体積がより大きいこと、またはその逆のことから、本発明において上記のことが読み取れる。上述した電気的な接続によって、ここでは殊に少なくとも2つのセグメントラインの直列接続が実現される。
【0014】
ここでこの電気的な接続は、特別は電極材料に制限されない。本発明ではむしろ、2つの電極−電解質ユニットを電気的に相互に接続する電気的な接続部は、それによって、接続されるべき2つの電極−電解質ユニットの少なくとも1つの電極が形成される材料ないしは物質または混合物質から形成される。
【0015】
アノード材料はここで例えば、気体透過性または気体不透過性である。ここでこの気体透過性は、アノード材料の適切な多孔性を調整することによって調節される。アノード材料としては殊に、導電性でありかつイオン伝導性である材料が適している。イオン伝導性であるアノード材料の利点は、二次元反応空間の形成にある。これによって、アノード材料の表面全体上で反応が生じ、この反応が三相界面に制限されることがない。アノードを形成する、ないしはアノードが含み得る、導電性でありかつイオン非伝導性の材料の例は、例えばニッケルである。アノードを形成する、ないしはアノードが含み得る、導電性でありかつイオン伝導性の材料の例は、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)と混合されたニッケルである。
【0016】
カソード材料はここで例えば、気体透過性または気体不透過性である。ここでこの気体透過性は、カソード材料の適切な多孔性を調整することによって調節される。カソード材料としては殊に、導電性でありかつイオン伝導性である材料が適している。イオン伝導性のカソード材料の利点は、二次元反応空間の形成にある。これによって、カソード材料の表面全体上で反応が生じ、この反応が三相界面に制限されることがない。カソードを形成する、ないしはカソードが含み得る、導電性でありかつイオン非伝導性の材料の例は、例えばランタンストロンチウムマンガナイト(LaSrMn,LSM)である。カソードを形成する、ないしはカソードが含み得る、導電性でありかつイオン伝導性の材料の例は、例えばランタンストロンチウムコバルトフェライト(LSCF)である。
【0017】
アノード材料ないしはカソード材料からの接続部分の形成はここでは殊に次のことを意味している。すなわち、接続部分が相応の化学材料ないしは物質または混合物質から形成されることを意味している。多孔性、すなわち殊に気体透過性は例えばここで、アノード材料またはカソード材料を電極として使用する場合と、接続部分として使用する場合とで異なり得る。
【0018】
本発明では、例えばアノードと接続部分との間に、またはカソードと接続部分との間に、別の電気的接続ユニットが配置されることは排除されていない。後者の場合には、相応する電極−電解質−セグメントは間接的に、接続部分によって相互に接続される。
【0019】
2つの電極−電解質セグメントを上述したように電気的に接続することによって、本発明による燃料電池内の電流案内ないしは電流の流れが、従来の燃料電池に比べて格段に改善される。アノード材料またはカソード材料が、アノード機能に加えて、2つの電極−電解質−セグメントを電気的に接続するにために用いられることによって、ひいては実質的に電流コレクタの機能を担うことによって、電流の流れが、多くの場合にコストのかかる電流コレクタを設けることなく実現される。さらに、特に容易な製造方法が、例えば印刷プロセスによって実現される。ここでこの電気的な接続は、電極材料の被着を伴うステップにおいて、例えば印刷プロセスの間に行われる。
【0020】
さらに、熱機械的な問題が、比較的簡単な幾何学的形状および、種々の材料の低減された境界層によって低減される、または完全に阻止される。
【0021】
ある実施形態では、少なくとも2つのセグメントラインが、管状機能部の軸に関して、軸方向に配向され、管状機能部の軸に関して軸方向に延在する気密性の接合箇所によって少なくとも部分的にイオン的におよび電気的に相互に絶縁される。この形態においては、チューブに沿った機能層ないしは機能部の分割が実現され、これによって実質的に2つのハーフチューブが生じる。従って殊に、平行な電流の流れ方向が各セグメントラインにおいて得られる。この平行な電流の流れ方向は本発明では、殊に軸方向の電流コレクタを設けなくても、軸方向に延在する。従ってこの構成において、殊に、管状機能部の軸方向に沿って延在する電流方向が実現される。ここで本発明の燃料電池は、電流が流れる経路が短いので特に適している。
【0022】
ここで電流が流れる方向は、少なくとも2つのセグメントラインにおいて、殊に相互に逆流している。この構成では電流は殊に一方のハーフチューブを上方へ案内されるないしは流れ、他方のハーフチューブを下方へ案内されるないしは流れる。このようにして殊に、本発明の複数の燃料電池の電気的な接続が容易になる。これは、用途範囲をさらに広げる。従ってこの形態では、接続部分の位置付けはさらに、幅広い領域で選択可能である。従って、本発明の燃料電池の構造において大きい自由度が生じる。
【0023】
別の形態では、異なるセグメントラインの間の電気的な接続部は、接続部分の他に、コネクタを含んでいる、および/または同じセグメントラインの一つの電極−電解質−セグメントのアノードは、別の電極−電解質−セグメントのカソードと、コネクタによって電気的に接続される。このようなコネクタは極めて小さい寸法に保たれ、空間的に制限された接続部のみを形成する。これによって、本発明による燃料電池の製造時のコストが節約される。実現可能なコスト節約はさらに次のことによって拡大される。すなわち、電極−電解質−セグメントが、アノード、カソード、電解質および接続素子としてのコネクタのみから成ることによって拡大される。このようにして、さらなる部材が省かれる。しかも、本発明による燃料電池の能力が低減されることはない。さらに、必要とされる部材を削減することによって、製造方法がより簡単になる。従って、異なるセグメントラインの電極−電解質−セグメントの接続の第1の場合には、コネクタは、アノード材料またはカソード材料から形成される接続部分の他の、付加的な部材として用いられる。これは例えば直列接続を実現する。同じセグメントラインの複数の電極−電解質−セグメントを接続する場合には、コネクタはこれに対して、唯一の部材として、相応する電極−電解質ユニットを直列接続するために用いられる。ここでコネクタは特に有利には同じ構造を有する。これによって製造方法が特に容易になる。
【0024】
1つないしは複数のコネクタは殊に、導電性かつイオン絶縁性の材料から形成される、またはこの種の材料を含む。さらにコネクタは殊に、気密性の材料から形成される、または気密性の材料を含む。例えば、コネクタは、ランタンクロマイト(LaCro)、酸化亜鉛(ZnO)、白金(Pt)または、イオン非伝導性のアノード材料またはカソード材料から形成される、またはこの材料を含む。
【0025】
従って1つないしは複数のコネクタは、導電性材料、例えばアノード材料またはカソード材料から成る。ここでこの材料は気密性であり、かつイオン非伝導性である。このようにして、適切な接続部が、電極−電解質−セグメントの各電極の間に提供される。ここで殊に、電極−電解質−セグメントの相応する電解質の間のイオン接続が、このようにして阻止される。これによって、電極−電解質−セグメントのノイズ流が阻止される。さらに、コネクタがアノード材料またはカソード材料から形成されることによって、特に容易な製造が実現される。ここで、電極−電解質−セグメントの相応する構成部分が適切に、相互にイオン的に絶縁される、なしいは絶縁されたままにされる。気体透過性ないしは気密性はここで例えば、同一の材料ないしは同一の化学物質または混合物質の多孔性を適切に調整することによって実現される。
【0026】
別の形態では、燃料電池はアノード層、カソード層および電解質層を備えた層集合体を有している。これは、電極−電解質−セグメントないしは燃料電池の機能部を製造するための、特に容易に製造可能な集合体である。詳細には、アノード、カソードおよびこれらの間に配置されている電解質から成る構造体を形成することが可能である。これは問題なく、管状ないしはチューブ状にも設けられる。さらに、従来の製造方法、例えばプリント方法を、本発明の燃料電池を製造するために使用することができる。ここでは適切に、個々の層が隣接して被着されるだけである。ここで場合によっては適切な絶縁部が追加される。
【0027】
別の形態では、アノード層内にはアノード領域が形成される。これは、電極−電解質−セグメントのアノードを形成する。ここで1つのアノード領域は、別のアノード領域から、電気的絶縁性かつイオン的絶縁性の領域によって分断される。
【0028】
別の形態では、カソード層内にカソード領域が形成される。このカソード領域は、電極−電解質−セグメントのカソードを形成する。ここで1つのカソード領域は、別のカソード領域から、電気的絶縁性かつイオン的絶縁性の領域によって分断される。
【0029】
別の形態では、電解質層内に電解質領域が形成される。この電解質領域は、電極−電解質−セグメントの電解質を形成する。ここで1つの電解質領域は、同じセグメントライン内に配置された別の電解質領域から、イオン的的絶縁性領域によって分断されている、および/または1つの電解質領域は異なるセグメントライン内に配置されている電解質領域の別の電解質領域から、電気的かつイオン的絶縁性の、気密性の領域によって分断されている。
【0030】
この形態では、電極−電解質−セグメントは有利には特に容易に、かつ低コストに製造される。ここでは所望の用途への特に大きい整合性が、殊に個々のアノード領域、カソード領域ないしは電解質領域の数、サイズおよび形状を調整することによって得られる。さらに、このようにして、複雑な構造も簡単な製造方法、例えばプリント方法によって実現される。
【0031】
ここで、アノード領域および/またはカソード領域を別個にするための電気絶縁性かつイオン絶縁性の領域が、空気または空気によって満たされた空洞によって形成される、および/または異なるセグメントライン内に配置された電解質領域を別個にするための電気絶縁性かつイオン絶縁性の領域が、固体絶縁体、殊にアルミニウム酸化物によって形成される、および/または同じセグメントライン内に配置された電解質領域を別個にするためのイオン絶縁性領域はさらに導電性であり、かつコネクタによって形成される。空気は一方では良好な電気的絶縁体であり、ここで適切な製造または幾何学的な形状に関する要求を有していない。さらに、部分的にコストのかかる絶縁体を省くことができる。これによって本発明による燃料電池が特に低コストに形成される。さらに例えば、酸化アルミニウムは低コストの絶縁体である。これは電気的な絶縁もイオン的な絶縁も実現する、ないしは所望の電気的およびイオン的な絶縁性を有している。この構成では、イオン的にも電気的にも絶縁性の絶縁体が1つのみ使用される。これによってコストが省かれる。さらに本発明の燃料電池は、固体絶縁体を備えたこの構成においても、上述のように、それ自体公知の製造ステップによって、例えば上述した層構造で容易に製造可能である。イオン絶縁性領域としてのコネクタの使用の際には、この製造はさらに容易になる。なぜなら殊に、いずれにせよ用いられている材料が処理ステップにおいて使用可能であり、さらなる材料および処理ステップが省かれるからである。
【0032】
別の形態では、アノード層内に配置されている、電極−電解質−セグメントのアノード領域と、カソード層内に配置されている、別の電極−電解質−セグメントのカソード領域とが部分的に重なって配置される。ここでこの重畳領域内には、電解質層内のコネクタが配置されている。ここでこのコネクタは殊に、主に電解質層内に構成される、および/またはアノード層および/またはカソード層内に突出しない。このようにして、個々の電極−電解質−セグメントの接続部が特にコンパクトに構成され、これによって空間が節約される。さらにコネクタは例えば、電解質層内にのみ配置される。これによって材料ひいてはコストが節約される。ここでこの構成は有利にはコーティング方法、例えばプリント方法によって、容易に形成される。
【0033】
さらに、電極−電解質−セグメントの電極の外面に、アノード材料およびカソード材料とは異なる導電性材料から成る電極を電気的に接触接続させる電流コレクタが被着されていない構成、および/または燃料電池が複数の電極−電解質−セグメントを接続するための長手方向電流コレクタを有していない構成が可能である。これは、機能部の軸に関して軸方向に配置されており、アノード材料およびカソード材料とは異なる導電性材料から形成される。従って本発明の燃料電池は殊に、管軸に関して軸方向の電流コレクタを有していない。これによって本発明による短い電流ガイド経路が実現可能であり、本発明の燃料電池の製造方法はより容易にかつ低コストになる。電流コレクタを接続するおよび接触接続する、コストのかかる特別なステップの一部を省くことができる。さらに電流コレクタの材料を省くことができ、これは特に有利である。なぜなら、1つまたは複数のこの電流コレクタの材料に高い要求が課せられるからである。本発明ではむしろ電流は、アノード、カソード、電解質およびコネクタを含んでいる、またはこれらからなる集合体を通って流れる。
【0034】
別の形態では、機能部は片側で閉鎖されているチューブとして形成される。この形態では、燃料側と空気側との適切な分断が実現される。ここで特に有利な形状では、燃料側はチューブの内側に形成されている。殊に、一端で閉鎖されたチューブが自身の開放された側で担体基板上に配置されている場合には、容易に、外側ないしは空気側に沿って空気が流れる。これに対して内側ないしは燃料側に沿って例えば水素が流れる。これによって、潜在的に安全に関してクリチカルな物質、例えば水素を燃料として使用する場合でも、危険が低減される、むしろ完全に排除される。ここでこのチューブは機能部自体によっても、または別の材料、例えばガラスによっても封鎖可能である。
【0035】
別の形態では、機能部は管状の担体上に配置される。これによって、燃料電池の安定性がさらに改善される。この場合には、電極材料および電解質材料ないしはその厚さおよび構成に関する大きい可変性が得られる。燃料電池ないしはチューブのこの安定性はここで殊に、担体に基づいている。担体は例えば、1つの、殊に不活性の、セラミック材料および/またはガラス材料を含むことができる、またはこれから形成される。本発明では不活性材料は、殊に、例えば電解質のイオンガイドによる電気化学的な反応に参加しない材料、および/または電極として用いられない材料である。この場合には、燃料電池はインターサポート式燃料電池とも称される。担体の材料は殊にイオン絶縁性であり、殊にイオン絶縁性かつ電気絶縁性である。
【0036】
殊に担体はマグネシウムかんらん石(MgSiO)、殊に、フォルステライトを含んでいる、またはこれから形成される。
【0037】
管状担体上の機能部の配置は本発明の枠内では、機能部が担体内で、ないしは担体の内側で、および/または担体外でないしは担体の外側で、殊に、これに接して配置されることを意味している。殊に、機能部のカソード層は、担体に接している。機能部のアノード層はここで殊に、担体の内側空間ないし外側からアクセス可能である。
【0038】
担体は殊に、機能部に接している1つまたは複数の部分おいて気体を通す細孔および/または開口部、殊に細孔を有している。1つ/複数の電極−電解質−セグメントが設けられていない、ないしは機能部によって覆われていない、1つまたは複数の部分において、担体は殊に気密性に形成される。
【0039】
例えば、担体は少なくとも1つの開放されている管終端部で、殊に片側または両側で開放されている管終端部で、担体基板に燃料電池を固定するための基部を有している。これは、取り付けフランジないしは気体接続フランジとも称される。ここでは殊に基部は気密性に構成される。
【0040】
これに対して付加的に、殊に、開放されている管終端部が基部として形成されている場合には、担体は一方(他方)の管終端部で、キャップ部分によって封鎖される。ここでこのキャップ部分は殊に気密性に形成される。
【0041】
この場合には、例えば中空円筒状の壁部を伴った、材料フォルステライトからの例えばチューブ状の担体の製造は、高多孔性の領域を生じさせる。底面側では例えば、取り付けフランジとも称される基部が担体に配置される。頂上側では、チューブキャップとも称される気密性に形成されたキャップ部分が、担体の気密性封鎖のために配置される。この機能部は、管の内側で、多孔性の領域の高さに位置付けされる。担体はこの形態において、機能層ないしは機能部に対する、いわゆる電気化学的に不活性の担体として機能する。なぜなら、この材料は電気化学的な反応に関与しないからである。これによって、極めて薄い層が実現される。これは、個々の機能領域の材料の節約を意味する。これによって殊にコストを省くことができる。この担体に基づいて、機能部はこの形態において、より少ないシステムで層厚に製造される。殊にここでは電解質層の層厚が低減される。例えば、電解質層は10μm以上20μm以下の範囲の層厚、例えば15μmの層厚を有する。これによって継続動作温度は約750℃にしかならない。
【0042】
動作開始のために、燃焼ガスがチューブ内ないしは担体内へと案内され、そこでアノードに当たる。反応相手である空気は、多孔性の担体、殊にフォルステライトチューブを通ってカソードに達する。このコンセプトでは、機能部の全ての機能層が燃焼ガス側に位置する。
【0043】
この機能部は例えば、フィルムバック射出成形方法を介して直接的に、射出成形プロセスの間に、例えばフォルステライトから成る担体基体と接続される、ないしは担体基体に固定される。従って製造ステップを省くことができる。
【0044】
フォルステライトは有利には、1011Ωm(20℃)および10Ωm(600℃)の特定の抵抗によって、電気的に高絶縁性である。従って、機能部構成時には、電気的な短絡またはイオン的な短絡は予期されず、付加的な絶縁層を省くことができる。
【0045】
フォルステライトはさらに、機能部材料に、焼成挙動、例えば収縮または焼成動態に関して、および熱による伸長特性(約10−1110−6−1)に関して合わせられる。これによって、化合物全体の同時焼成が可能になる。従って、通常必要とされる2つの焼成ステップの代わりに、1つの焼成ステップのみが、セルを製造するために必要とされる。これによって、さらなるコスト節約がもたらされる。
【0046】
高純度のフォルステライトはさらに、反応焼成を介して、タルクおよび1つまたは複数のマグネシウム化合物、殊にマグネシウム塩類(例えばマグネシウム酸化物)から生成され、これによって、セル製造時のコスト節約に寄与する。
【0047】
詳細には担体を製造するためにフォルステライトがまずは反応焼成を介して、タルク(MgSi10(OH))とマグネシウム化合物、例えばマグネシウム酸化物(MgO)から、以下の反応に従って得られる:
MgSi10(OH)+5MgO→4MgSiO+H
これは殊に、高エネルギー粉砕における2つの原材料コンポーネントの共通粉砕プロセスを介して共に実現される。これによって例えば4μm以下、殊に3μm以下の粒径を、無傷のフォルステライトを形成するためおよび後続の同時焼成を可能にするために、調整される。フォルステライト形成はここで殊に、粉砕材料のか焼によって行われる。これによって原材料が有利には、射出成形コンポーネントへ処理される。
【0048】
同時焼成の間にカソードと化学反応を起こし、機能損失を生じさせる恐れがある自由SiOの形成を回避するために、有利には、殊に0.25%以上0.75%以下、例えば0.5%の、化学量論比より高い物質量比のマグネシウム酸化物が調整される。マグネシウム酸化物の他に、別のマグネシウム原材料、例えば水酸化マグネシウム(Mg(OH))および/または炭酸マグネシウム(MgCO)も使用可能である。このか焼によって、タルクの鉱物的プレート構造が破壊され、フォルステライトへの再生が開始される。これによって生じる、例えば球状の粒子形状によって、コンポーネントにおける可変の固体含有量が可能になる。これによって、機能部への収縮のマッチングが可能になる。気密性の担体部分を製造するために、気密性焼成(射出成形)コンポーネント(コンパウンド)が使用される。これは有機成分、結合剤および/または可塑剤、殊に25体積%以上75体積%以下、例えば56体積%のフォルステライト成分を含有し得る。多孔性の担体部分を製造するために、これに対して、多孔性焼成(射出成形)コンポーネントを使用することができる。これには1つまたは複数の、殊に有機の細孔形成剤が混ぜられる。これは、成形後の熱プロセスの間、セラミックインジェクションモールディング(CIM)によって焼かれ、浸透中空空間が残る。
【0049】
細孔形成剤は例えば、100μm×10μm以上300μm×30μm以下のサイズ、例えば200μm×20μmのサイズを有するフェノール樹脂−短繊維を含む。従って有利には、2.5μm以上7.5μm以下であり、例えば5μmの通過区分を備えた浸透細孔網目が得られる。このような細孔通過区分に基づいて、自由な気体拡散が、殊にクヌーセン作用無く実現される。別の繊維状細孔形成剤は、セルロースである。しかし澱粉、熱硬化性粉末またはガラス状炭素から成る球面細孔形成剤も可能である。
【0050】
結合体全体の形成は、複数のコンポーネントを射出成形することを介して行われる。ここではまず、多孔性の焼成コンポーネントが、幾何学形状的に定められた管に形成される。このステップでは、事前に機能部(インモールドラベル)が工具内に入れられる、次に、多孔性焼成コンポーネントが流される。ここで機能部とコンポーネントとの密接な接続が行われる。次に第2のステップでは、密閉に焼成するコンポーネントのキャップ部分および/または1つまたは複数の基部が射出成形される。熱プロセスまたは後続の動作中の、亀裂等の形の2つの材料の分離を回避するために、有利には形状による接続プロファイルが、2つの材料の接続領域内に設けられる。これは問題なく、セラミック射出成形を用いて実現される。波状または溝とサネを用いたプロファイルがある。しかし自由に構造化可能なアンダーカットも可能である。このようにして射出成形プロセス後に、セルに機能層が組み込まれる。
【0051】
これに続くチューブ全体の解放および同時焼成が、1200℃以下の温度で行われる。ここではまずは全ての有機コンポーネントが、射出成形体および機能層から分離され、所望の多孔性が担体内で調整される。その後に、材料のセラミック化が行われる。全てのコンポーネントを完全に焼成するために、少なくとも5時間の硬化時間が有利である。
【0052】
択一的にまたはこれに対して付加的に、まずは、多孔性焼成コンポーネントから製造された部分が、気密性材料によって封鎖される。これに対して択一的または付加的に担体、殊にキャップ部分が次のように形成される。すなわち、ガス供給筒の安定化のためのガイドエレメントが存在するように形成される。対向する側に、基部が形成される。これは気密性材料の付加的な密閉無しに、気密性の接続を可能にする。ここでチューブ管全体が同時焼成される。
【0053】
別の形態では、接続部分は機能部の終端部分に配置される。これによって、セグメントラインは殊に、燃料電池の軸方向長手全体にわたって延在し、ヘッドエンドにおいてのみ、殊に直列接続によって相互に接続される。この形態において、殊に複数のセグメントライン内で電流の流れが反対の場合には、特に有利には、燃料電池の全長ないしは全軸方向表面が利用され、これによって、燃料電池から供給される出力が最大化される。
【0054】
接続部分が環状導体として形成されている場合には、抵抗降下は接続部分において最小化される。なぜならこれは大きい線路断面によって構成されているからである。さらに、環状導体は殊に管状ないしはチューブ状の機能部の場合には、問題無くこの中に組み込み可能である。これは殊に、上述した層構造の場合である。接続部分ないしは環状導体がカソード材料またはアノード材料から形成されることによって、これらは容易に、アノード領域ないしはカソード領域の形成時に形成され、例えば層構造内に組み込まれる。これによって、本発明の燃料電池の製造がさらに容易になる。
【0055】
本発明はさらに燃料電池システムに関する。これは少なくとも1つの、本発明による燃料電池を含んでいる。ここで少なくとも1つの燃料電池は有利には、担体基板上に配置される。この構成では燃料電池システムは殊に、複数の燃料電池を有している。燃料電池の種々の形態を介して、殊に、燃料電池システムの所望のパワー特性が調整される。これは用途の大きい可変性を可能にする。担体基板は例えば、不活性材料から形成される。さらに担体基板は例えば底面プレートを形成する。
【0056】
本発明による対象のさらなる利点及び好ましい実施態様は、図面によって説明され、また以下の記述において解説される。ただし図面は説明するためだけのものであり、本発明を何らかの形で限定することを意図したものではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明による燃料電池の実施形態の概略図
【図2】本発明による燃料電池システムの実施形態の層構造を示す概略図
【図3】本発明による燃料電池の別の実施形態の概略図
【図4a】本発明による燃料電池の別の実施形態の概略図
【図4b】本発明による燃料電池の別の実施形態の概略図
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、本発明による燃料電池1の実施形態の概略図を示している。この燃料電池1は例えば、唯一の燃料電池として、エネルギー獲得のために用いられる。しかし、殊に同じように形成されている別の燃料電池1とともに、例えば担体基板上で、1つの燃料電池システムにまとめられてもよい。
【0059】
燃料電池1は管状の機能部2を含んでいる。この機能部は少なくとも2つの、電気的に接続されているセグメントライン3、4を含んでいる。特に有利には、これらの少なくとも2つのセグメントライン3、4は少なくとも部分的に電気的かつイオン的に相互に絶縁される。これによって、セグメントライン3、4の機能間の不所望な緩衝が回避される。本発明では、少なくとも2つのセグメントライン3、4の各々が、少なくとも2つの電極−電解質−セグメント5、6ないしは7、8を有している。各電極−電解質−セグメント5、6ないしは7、8は殊に、直列に接続されている。電極−電解質−セグメント5、6、7、8の正確な数は本発明においては制限されておらず、むしろ用途および能力に応じて自由に選択可能である。正確な数は殊に、所望の能力特性に依存して、すなわち、提供されるべき電流の強さないしは電圧に依存して選択される。
【0060】
セグメントライン3、4内に配置されている電極−電解質−セグメントは少なくとも部分的に、電気的かつイオン的に絶縁性の領域24によって分断されている。さらに、各電極−電解質−セグメント5、6、7、8はアノードと、カソードと、アノードとカソードの間に配置されている電解質とを含んでいる。これは、詳細に図2に示されており、後で詳細に説明する。
【0061】
図1はさらに、次のことを示している。すなわち、異なるセグメントライン3、4内に配置されている少なくとも2つの電極−電解質−セグメント5、7が、アノードの材料から、またはカソードの材料から形成されている接続部分9を介して電気的に接続されている、ということを示している。特に有利には、電極−電解質−セグメント5、7は直列に接続されている。
【0062】
有利な実施形態では、少なくとも2つのセグメントライン3、4が、管状機能部2の軸に関して、軸方向に配向されている。個々のセグメントライン3、4相互の適切な絶縁を実現するために、これらは、管状機能部2の軸に関して軸方向に延在している気密性の接合箇所10によって、少なくとも部分的にイオン的および電気的に相互に絶縁される。接合箇所10は、このようにして、管状機能部2によって構成されているチューブを例えば2つのハーフチューブに分ける。ここで、各ハーフチューブは1つのセグメントライン3、4によって形成される。しかし、本発明の枠内では、機能部2がこの構成において一体的に構成されていてもよく、必ずしも2つの機能部2に分けられなければいけないのではない。
【0063】
燃料電池1の機能に関して、電流は、少なくとも2つのセグメントライン3、4内で、相互に反対方向に流れている。このために電流は例えば、セグメントライン3に沿って一方の方向に流れて、別のセグメントライン4に沿って逆方向に流れる。ここでこの電流は殊に、接続部分9を通って流れる。逆方向の電流の流れは図1において、矢印11によって示されている。逆方向の電流の流れは、接続部分9が機能部2の終端部に配置されている場合には特に有利である。これは図1に示されている。このようにして実質的に、機能部2の全長がエネルギー獲得に用いられる。ここでさらに接続部分9を、適切な電気接続を提供するために、管状の導体として構成することが可能である。
【0064】
図1はさらに、機能部2が、一端が閉鎖されているチューブとして形成されることを示している。このようにして、燃料側と空気側との間を容易に分断することができる。ここで有利には、管状機能部2の外側に沿って空気が流れ、燃焼ガスが機能部2の壁部の内側に沿って流れる。
【0065】
これは、本発明による燃料電池1の特に安全な作動である。なぜなら燃焼ガス、例えば水素が、管状機能部2の内部ないしは燃料電池の内部で、容易にコントロール可能であり、このようにして、例えば爆発の形の、燃焼ガスに端を発する危険性が明確に低減されるからである。従ってこの構成ではアノードが、機能部2の内側に配置され、カソードが機能部2の外側に配置される。
【0066】
安定性を高めるために、機能部2をさらに、管状担体上に配置することができる。担体は、詳細には示されていないが、例えば、管状横断面において、機能部2の外側または内側に配置される。
【0067】
図2には、燃料電池1ないしは殊に、その機能部2の実施形態が詳細に示されている。図2aは、ここで機能部2の縦断面を示しており、これに対して図2b)は接合箇所10での3つの層の平面図を示している。
【0068】
図2は、本発明の燃料電池1が殊に、アノード層12とカソード層13と電解質層14とを備えた層集合体を有していることを示している。ここでアノード層12内には、アノード領域15、16、17、18が構成されている。これらは、電極−電解質−セグメント5、6、7、8のアノードを形成しており、気密性または気体透過性である。さらにアノードは導電性のみを有している、または導電性とイオン伝導性とを有している。アノード領域15、17はここで別のアノード領域16、18から電気的およびイオン的に絶縁性の領域19によって分断されている。これは気密性または気体透過性であり得る。これと相応に、カソード層13内にはカソード領域20、21、22、23が形成されている。これは電極−電解質−セグメント5、6、7、8のカソードを形成し、気密性または気体透過性であり得る。さらにカソードは導電性のみを有し得る、または導電性とイオン伝導性を有し得る。カソード領域20、22はここで別のカソード領域21、23から電気的およびイオン的に絶縁性の領域24によって分断されている。これは気密性または気体透過性であり得る。さらに、電解質層14内には電解質領域25、26、27、28が形成される。これらの電解質領域は電極−電解質−セグメント5、6、7、8の電解質を形成し、気密性である。さらにこの電解質は、電気的には絶縁性であるが、イオン的には伝導性であってもよい。例えば、電解質は、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)を含む、またはこの材料から成る。ここで電解質領域25、27は、同じセグメントライン内に配置された別の電解質領域26、28から、イオン的に絶縁性であり、かつ気密性の領域、殊にコネクタ29によって分断される。さらに電解質領域25、26は、同じセグメントライン内に配置された別の電解質領域27、28から、電気的およびイオン的に絶縁性の、気密性領域30によって分断される。
【0069】
これまでの記載から、例えばアノード領域15、カソード領域20および電解質領域25が電極電解質セグメント5を形成することが明らかである。これと同様に、電極−電解質−セグメント6はアノード領域16、カソード領域21および電解質領域26を有しており、電極−電解質−セグメント7はアノード領域17、カソード領域22および電解質領域27を有しており、電極−電解質−セグメント8はアノード領域18、カソード領域23および電解質領域28を有している。
【0070】
本発明の枠内ではさらに有利には、アノード領域および/またはカソード領域を分断する電気的かつイオン的に絶縁性の領域19、24が空気または空気が充填された空洞によって構成されている。さらに、有利には、種々のセグメントライン3、4内に配置されている電解質領域を、相互に電気的にかつイオン的に絶縁する領域30が、固体絶縁体、殊に酸化アルミニウムによって形成される。
【0071】
コネクタ29に関してはさらに有利には、これはアノード材料またはカソード材料から構成されている。ここでこの材料は殊に導電性であるが、イオン伝導性ではない。殊にこの場合には、電気的な接続部9が種々のセグメントライン3、4の間に、接続部分9の他に、コネクタ29を有している。これに相応して、電極−電解質−セグメント5、7のアノードは、同じセグメントライン3、4の別の電極−電解質−セグメント6、8のカソードと、コネクタ29によって電気的に接続される。
【0072】
図2はさらに、アノード層12内に配置されている、電極−電解質−セグメント6のアノード領域16と、カソード層13内に配置されている、別の電極−電解質−セグメント5のカソード領域20とが部分的に重畳して配置されていることを示している。ここでコネクタ29はこの重畳領域内に配置されている。このコネクタ29は特に有利には主に、電解質層14内に配置されている。
【0073】
接続部分9はさらに少なくとも部分的に電解質材料によって覆われている。これは位置に応じて、アノード層12、カソード層13および電解質層14内に配置される。それぞれの場合において、接続部分9は気密性の材料を含んでいるか、または気密性の材料によって覆われており、これによって、接続部分へのガスの侵入が阻止される。
【0074】
本発明では、電極−電解質−セグメント5、6、7、8の電極の外面に、電極の電気的な接触接続のために、アノード材料およびカソード材料とは異なる導電性材料から構成されている電流コレクタを被着しないことが可能である。これに相応して、特に有利には、燃料電池1が複数のセグメントをまとめるために、機能部の軸に関して軸方向に配置されており、アノード材料およびカソード材料とは異なる導電性材料から形成されている長手方向電流コレクタを有していないことが可能である。
【0075】
従って機能部2は、有利な実施形態では、単に、接続部分9ないしはコネクタ29によって接続されている電極−電解質−セグメント5、6、7、8から成る。これらの電極−電解質−セグメントはそれぞれアノード領域15、16、17、18、カソード領域20、21、22、23および電解質領域25、26、27、28から成る。
【0076】
図3は、管状の、1つまたは複数のセラミックおよび/またはガラス状の材料から形成されている担体30を備えた、本発明による燃料電池1の実施形態を示している。この担体の内面には機能部2が被着されている。図には示されていなくても、機能部2を、別の択一的な実施形態の枠内で、管状担体30の外面に配置することができる。
【0077】
図3は、管状担体30が、機能部2に接している(複数の)部分ないしは多孔性領域30aにおいて、気体を通す細孔を有していることを示している。換言すれば、機能部2は、管状担体30の内側で、正確に、多孔性部分30aの高さに位置付けされる。図3はさらに、管状担体30がさらに一方の管終端部においてキャップ部分30bによって封鎖されており、他方の管終端部において基部30c、いわゆる取り付けフランジを、担体基板に燃料電池1を固定するために有していることを示している。有利には、基部30cは次のように構成されている。すなわち、付加的にシーリングせずに、ガラス状の材料によって燃料電池1を担体基板に気密性に固定するように構成されている。キャップ部分30aおよび基部30cはここで気密性に形成されている。
【0078】
図3はさらに、ここで機能部2を担う、中央の中空円筒状の、気体透過性の多孔部分30aが接続領域31において一方ではキャップ部分30bと接しており、他方では基部30cに接していることを示している。ここでこれらの部分は材料によって相互に接続される。接続領域31における機械的な安定性を高めるために、管状担体30の接続領域31はさらに、形状を用いた接続のためのインターロック部を有することができる。チューブないしは担体30のこの1つの終端部は、さらに、気密性の材料によって封鎖される。
【0079】
管状担体30は殊に、イオン的および電気的に絶縁性の、セラミックおよび/またはガラス材料から構成されている。有利にはこの管状担体30はフォルステライトから形成される。機能部2はさらに、極めて薄い、例えば50μm以下の層システム厚を有する。ここで電解質は約15μmの層厚を有し得る。
【0080】
図3においてはさらに、燃料電池1が、アノード層12とカソード層13と電解質層14とを備えている層集合体を有していることが読み取れる。さらに、機能部2が少なくとも2つの、電気的に接続されているセグメントライン3、4を有することが示されている。
【0081】
図4は、チューブの終端がさらに次のように形成されていることを示している。すなわち、少なくとも1つの、殊に複数のガイド部材32が、ガス供給筒33を安定させるために存在するように形成されていることを示している。図4aおよび4bは、ガイド部材32を概略的に示している断面図である。
【0082】
図4aに示されている実施形態では殊に、キャップ部分30b内に付加的な材料によって少なくとも1つの支材34が配置され得る。殊に3つの支材34が設けられる。これらの支材のうちの1つだけが図4aで見て取れる。支材34は回廊(Kreuzgangs)のそれに類似している。これは殊に、内側へと延在しており、このようにしてガス供給筒33を支えている。別の、図示されていない支材34はガス供給筒33をそれぞれ別の方向で支えている。従って全体として、ガス供給筒33の安定した固定が実現される。
【0083】
図4bに示された実施形態では殊に、キャップ部分30b内に少なくとも1つの、有利には複数の圧痕35が設けられる。例えば3つのこれらの圧痕35のうちの1つだけが、図4bにおいて見て取れる。1つないしは複数の圧痕35は同様に回廊に類似して配置されている、ないしは内側へと延在している。従って、これはガス供給筒33に対する支えを形成する。他の、図示されていない圧痕35はガス供給筒33をそれぞれ別の方向で支えている。従って全体として、ガス供給筒の安定的な固定が実現される。
【0084】
対向する側、すなわち殊に基部30cの領域に、ガス接続フランジが形成される。これはガラス状材料を付加的に密閉すること無く、気密性の接続を可能にする。この場合にはチューブ全体が同時焼成される。
【符号の説明】
【0085】
1 燃料電池、 2 機能部、 3、4 セグメントライン、 5、6、7、8 電極−電解質−セグメント、 9 接続部分、 10 接合箇所、 11 矢印、 12 アノード層、 13 カソード層、 14 電解質層、 15、16、17、18 アノード領域、 20、21、22、23 カソード領域、 25、26、27、28 電解質領域、 29 コネクタ、 30 担体、 30b キャップ部分、 30c 基部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池であって、
電気的に接続されている少なくとも2つのセグメントライン(3、4)を備えた管状機能部(2)を有しており、
前記少なくとも2つのセグメントライン(3、4)の各々は、少なくとも2つの電極−電解質−セグメント(5、6、7、8)を有しており、当該電極−電解質−セグメントはそれぞれ、1つのアノードと1つのカソードと、当該アノードとカソードの間に配置されている1つの電解質とを含んでおり、
1つのセグメントライン(3、4)の前記電極−電解質−セグメント(5、6、7、8)は直列接続されており、
殊にこれによって、複数のセグメントライン(3、4)が直列接続されるように、異なるセグメントライン(3、4)内に配置されている少なくとも2つの電極−電解質−セグメント(5、7)は、アノードの材料からまたはカソードの材料から形成される接続部分(9)を介して電気的に接続されている、ことを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記少なくとも2つのセグメントライン(3、4)は、前記管状機能部(2)の軸に関して軸方向に配向されており、かつ前記管状機能部(2)の軸に関して軸方向に延在している気密性の接合箇所(10)によって少なくとも部分的に、イオン的および電気的に相互に絶縁されている、請求項1記載の燃料電池。
【請求項3】
電流が流れる方向は前記少なくとも2つのセグメントライン(3、4)において相互に逆方向になっている、請求項1または2記載の燃料電池。
【請求項4】
前記異なるセグメントライン(3、4)間の電気的接続部は、前記接続部分(9)の他に、コネクタ(29)を含んでいる、および/または
一つの電極−電解質−セグメント(5、6、7、8)のアノードは、同じセグメントライン(3、4)の別の電極−電解質−セグメント(5、6、7、8)のカソードと、コネクタ(29)によって電気的に接続されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の燃料電池。
【請求項5】
前記コネクタ(29)は、導電性材料、例えばアノード材料またはカソード材料から形成されており、当該材料は殊に気密性、かつイオン非伝導性である、請求項4記載の燃料電池。
【請求項6】
前記燃料電池(1)はアノード層(12)とカソード層(13)と電解質層(14)とを備えた層集合体を有している、請求項1から5までのいずれか1項記載の燃料電池。
【請求項7】
前記アノード層(12)内にアノード領域(15、16、17、18)が形成されており、当該アノード領域(15、16、17、18)は前記電極−電解質−セグメント(5、6、7、8)のアノードを形成し、一つのアノード領域(15、16、17、18)は別のアノード領域(15、16,17、18)と、電気的およびイオン的に絶縁性の領域(19)によって分断されている、および/または
前記カソード層(13)内にカソード領域(20、21、22、23)が形成されており、当該カソード領域(20、21、22、23)は前記電極−電解質−セグメント(5、6、7、8)のカソードを形成し、一つのカソード領域(20、21、22、23)は別のカソード領域(20、21、22、23)と、電気的およびイオン的に絶縁性の領域(24)によって分断されている、および/または
前記電解質層(14)内に電解質領域(25、26、27、28)が形成されており、当該電解質領域(25、26、27、28)は前記電極−電解質−セグメント(5、6、7、8)の電解質を形成し、一つの電解質領域(25、27)は、同じセグメントライン(3、4)内に配置されている別の電解質領域(26、28)と、イオン的に絶縁性の領域(29)によって分断されている、および/または、一つの電解質領域(25、26)は、異なるセグメントライン(4)内に配置されている別の電解質領域(27、28)と、電気的およびイオン的に絶縁性の気密性領域(30)によって分断されている、請求項6記載の燃料電池。
【請求項8】
前記アノード領域(15、16、17、18)および/または前記カソード領域(20、21、22、23)の分断のための前記電気的およびイオン的に絶縁性の領域(19、24)は、空気によって、または空気が充填されている空洞によって形成されている、および/または
異なるセグメントライン(3、4)内に配置されている電解質領域(27、28からの25、26)の分断のための前記電気的およびイオン的に絶縁性の領域(30)は、固体絶縁体、殊にアルミニウム酸化物によって形成されている、および/または
同じセグメントライン(3、4)内に配置されている電解質領域(26、28からの25、27)の分断のための前記イオン的に絶縁性の領域は導電性であり、コネクタ(29)によって形成されている、請求項7記載の燃料電池。
【請求項9】
前記アノード層(12)内に配置されている、一つの電極−電解質−セグメント(5、6、7、8)のアノード領域(15、16、17、18)と、前記カソード層(13)内に配置されている、別の電極−電解質−セグメント(5、6、7、8)のカソード領域(20、21、22、23)とは部分的に重畳して配置されており、
前記重畳領域においてコネクタ(29)が前記電解質層(14)内に配置されている、請求項6から8までのいずれか1項記載の燃料電池。
【請求項10】
前記電極−電解質−セグメント(5、6、7、8)の電極の外面に、当該電極の電気的な接触接続のための、アノード材料およびカソード材料とは異なる導電性材料から成る電流コレクタが被着されていない、および/または
燃料電池(1)は複数の電極−電解質−セグメント(5、6、7、8)をまとめるための、前記機能部(2)の軸に関して軸方向に配置されており、かつ前記アノード材料およびカソード材料とは異なる導電性材料から成る長手方向電流コレクタを有していない、請求項1から9までのいずれか1項記載の燃料電池。
【請求項11】
前記機能部(2)は一端が封鎖されているチューブとして構成されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の燃料電池。
【請求項12】
前記機能部(2)は管状担体(30)上に配置されており、
殊に当該担体(30)はフォルステライトを含有している、および/または
前記担体(30)は、前記機能部(2)に接している部分(30a)において気体透過性の細孔および/または開口部を有している、および/または
前記担体(2)は少なくとの1つの開放管端部において、当該燃料電池(1)を担体基板に固定するための基部(30c)を有しており、当該基部は気密性に構成されている、および/または
前記担体(30)は管端部で、キャップ部分(30b)によって封鎖されており、当該キャップ部分は気密性に構成されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の燃料電池。
【請求項13】
前記接続部分(9)は、前記機能部(2)の終端部分に配置されている、請求項1から12までいずれか1項記載の燃料電池。
【請求項14】
前記接続部分(9)は環状導体として形成されている、請求項1から13までのいずれか1項記載の燃料電池。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項に記載されている燃料電池(1)を少なくとも1つ含んでいる、
ことを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【公開番号】特開2013−45773(P2013−45773A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−187050(P2012−187050)
【出願日】平成24年8月27日(2012.8.27)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】