説明

電流検出装置

【課題】電流検出装置において、小さな磁性体コアを採用して装置を小型化でき、さらにバスバーの過剰な発熱及び振動に起因する不具合を防止できること。
【解決手段】電流検出装置1において、電流検出用バスバー30は、磁性体コア10の中空部11を貫通する貫通部31とその両側に連なる平板状の2つの端子部32とを有する。端子部32は、貫通部31よりも幅が大きく厚みが小さい。絶縁筐体40を構成する本体ケース41及び蓋部材42には、電流検出用バスバー30の端子部32が貫通するバスバー孔45が形成されている。バスバー孔45の縁部は、端子部32に対し隙間を隔てて対向する平坦面451と、端子部32の表裏各面に接して端子部32を挟む複数の突起部453と、端子部32の角部に対し隙間を隔てて対向する湾曲面452とからなる。電流検出用バスバー30は、棒状の金属部材の両端部分がプレス加工により成形された構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバーに流れる電流を検出する電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車又は電気自動車などの車両には、バッテリに接続されたバスバーに流れる電流を検出する電流検出装置が搭載されることが多い。また、そのような電流検出装置としては、磁気比例方式の電流検出装置又は磁気平衡方式の電流検出装置が採用される場合がある。
【0003】
磁気比例方式又は磁気平衡方式の電流検出装置は、例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3に示されるように、磁性体コアと磁電変換素子とを備える。磁性体コアは、両端がギャップ部を介して対向し、バスバーが貫通する中空部の周囲を囲んで一連に形成された概ねリング状の磁性体である。磁性体の中空部は、被検出電流が通過する空間(電流検出空間)である。
【0004】
また、従来の電流検出装置において、磁性体コアは、概ねリング状かつ磁性材料からなる複数の薄い板状部材が、接着剤を介して積層された構造を有している。以下、そのような構造を有する磁性体コアのことを積層タイプの磁性体コアと称する。
【0005】
また、磁電変換素子は、磁性体コアのギャップ部に配置され、中空部を貫通して配置されたバスバーを流れる電流に応じて変化する磁束を検出し、磁束の検出信号を電気信号として出力する素子である。磁電変換素子としては、通常、ホール素子が採用される。
【0006】
また、電流検出装置において、磁電変換素子の検出信号の極性は、磁性体コアの中空部を通過する電流の向きに応じて定まる。そのため、電流検出装置は、バスバーに流れる電流の方向に対して予め定められた正規の向きとなるように配置される必要がある。
【0007】
また、特許文献4に示されるように、電流検出装置においては、磁性体コア及び磁電変換素子は、絶縁性の筐体によって一定の位置関係に支持されることが多い。この筐体は、電流検出装置を構成する複数の部品を一定の位置関係に位置決めする。なお、筐体は、一般に、絶縁性の樹脂部材により構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−104279号公報
【特許文献2】特開2006−166528号公報
【特許文献3】特開2009−58451号公報
【特許文献4】特開2009−128116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、従来の電流検出装置においては、板状のバスバーが、磁性体コアの中空部に挿通されるため、磁性体コアは、その中空部の最大幅(直径)が、バスバーの幅より大きくなる大きさに形成される必要がある。一方、電気自動車及びハイブリッド自動車などにおいては、バスバーに流れる電流の増大に伴い、バスバーの過剰な発熱を防止するため、幅が広く薄いバスバーが採用されつつある。
【0010】
従って、従来の電流検出装置は、バスバーの幅が広くなるほど、バスバーの幅に比例した大きな磁性体コアが必要であり、装置の設置スペースが大きくなるという問題点を有している。特に、磁性体コアが、円環状、楕円環状又は縦寸法と横寸法の比が1又は1に近い矩形環状である場合、バスバーの幅が大きくなるほど、磁性体コアの中空部における無駄なスペースが増大する。
【0011】
また、幅が広く薄いバスバーは放熱性に優れているが、そのような薄いバスバーが貫通する細いスリット状の貫通孔が、電流検出装置の筐体に形成された場合、スリット状の貫通孔の両端の角部において、応力の集中による割れが生じやすい。なお、樹脂の成形部材において、細いスリット状の貫通孔の両端の角部が、応力の集中により割れやすいことは知られている。
【0012】
一方、バスバーとの間に隙間が形成されるほど厚みが大きく角部のない貫通孔が、電流検出装置の筐体に形成された場合、貫通孔の縁部の割れは生じにくい。しかしながら、車両に搭載される電流検出装置は、車両から振動を受ける。そのため、仮に、バスバーと比較して厚みの大きな貫通孔が筐体に形成された場合、筐体における貫通孔の縁部とバスバーとが振動によって頻繁に衝突し、異音の発生及び筐体の摩耗が問題となる。
【0013】
本発明は、バスバーに流れる電流を検出する電流検出装置において、バスバーの幅との関係において比較的小さな磁性体コアを採用して装置を小型化できるとともに、バスバーの過剰な発熱及び振動に起因する不具合を防止できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る電流検出装置は、バスバーに流れる電流を検出する装置であり、以下に示す各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、磁性材料からなり、両端がギャップ部を介して対向し、中空部の周囲を囲んで一連に形成された磁性体コアである。
(2)第2の構成要素は、磁性体コアのギャップ部に配置され、磁性体コアの中空部を通過する電流に応じて変化する磁束を検出する磁電変換素子である。
(3)第3の構成要素は、磁性体コアの中空部を貫通する貫通部とその貫通部に対し中空部を貫通する方向の両側各々に連なる2つの平板状の端子部とが形成された導体からなる電流検出用バスバーである。この電流検出用バスバーにおいて、端子部は、貫通部よりも幅が大きく厚みが小さい。
(4)第4の構成要素は、2つの端子部が外部に露出する状態で、磁性体コアと磁電変換素子と電流検出用バスバーの貫通部とを覆いつつそれらを一定の位置関係で支持する絶縁筐体である。この絶縁筐体は、磁性体コアの両側から組み合わされる2つの要素筐体からなる。2つの要素筐体各々には、電流検出用バスバーの端子部が貫通するバスバー孔が形成されている。バスバー孔の縁部は、端子部に対し隙間を隔てて対向する平坦面と、その平坦面から突起するとともに端子部の表裏各面に接して端子部を挟む複数の突起部と、端子部の角部に対し隙間を隔てて対向する湾曲面と、により構成されている。
【0015】
また、本発明に係る電流検出装置において、電流検出用バスバーが、磁性体コアの中空部を貫通可能な棒状の金属部材の両端部分がプレス加工により他の部分よりも広い幅の平板状に成形された構造を有する部材であり、成形された両端部分が2つの端子部を構成することが考えられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電流検出装置において、電流検出用バスバーの両端部は端子部である。即ち、予め敷設された前段及び後段のバスバーに対し、磁性体コアの中空部を貫通した状態の電流検出用バスバーを連結することが可能である。そのため、前段及び後段のバスバーとは異なる異形の電流検出用バスバーを採用することが可能であり、前段及び後段のバスバーの幅の制約を受けずに小型の磁性体コアを採用することができる。
【0017】
また、電流検出用バスバーにおいて、磁性体コアの中空部を貫通する貫通部は、その前後に連なる端子部と比較して、厚みが大きく形成されている。これにより、貫通部は、その幅及び厚みが磁性体コアの中空部の幅よりも小さいという制約の中で、より大きな断面積で形成されることができる。従って、比較的小さな磁性体コアが採用された場合でも、電流検出用バスバーの過剰な発熱を防止できる。
【0018】
また、本発明において、絶縁筐体のバスバー孔は、電流検出用バスバーの端子部との間に隙間が形成されるほど厚みが大きく、また、角部がない。そのため、絶縁筐体におけるバスバー孔の縁部において、応力の集中による割れは生じにくい。
【0019】
また、本発明において、絶縁筐体におけるバスバー孔の縁には、電流検出用バスバーの端子部をその表裏各面に接して挟む複数の突起部が形成されている。そのため、振動を受ける環境下においても、絶縁筐体におけるバスバー孔の縁部と電流検出用バスバーの端子部との衝突は生じず、異音の発生及び筐体の摩耗は回避される。
【0020】
また、電流検出用バスバーが、磁性体コアの中空部を貫通可能な棒状の金属部材の端部がプレス加工によって他の部分よりも広い幅の平板状に成形された構造を有する部材であれば好適である。この場合、板状ではない棒状の金属部材の両端部に、磁性体コアの中空部の幅よりも幅が広く薄い平板状の端子部を容易に作ることができる。なお、棒状の金属部材としては、円柱状又は角柱状の金属部材などが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る電流検出装置1の分解斜視図である。
【図2】電流検出装置1が備える電流検出用バスバーの三面図である。
【図3】電流検出装置1が備える筐体における本体ケースの正面図である。
【図4】電流検出装置1の平面図である。
【図5】電流検出装置1の絶縁筐体におけるバスバー孔の部分の正面図である。
【図6】電流検出装置1の電流通過方向に直交する方向から見た断面図である。
【図7】電流検出装置1に適用可能な絶縁筐体におけるバスバー孔の部分の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0023】
以下、図1〜図6を参照しつつ、本発明の実施形態に係る電流検出装置1の構成について説明する。電流検出装置1は、電気自動車又はハイブリッド自動車などの車両において、バッテリとモータなどの機器とを電気的に接続するバスバーに流れる電流を検出する装置である。図1に示されるように、電流検出装置1は、磁性体コア10、ホール素子20、電流検出用バスバー30、絶縁筐体40及び電子基板50を備える。
【0024】
<磁性体コア>
磁性体コア10は、フェライト又はケイ素鋼などからなる磁性体であり、両端が数ミリメートル程度のギャップ部12を介して対向し、中空部11の周囲を囲んで一連に形成された形状を有している。即ち、磁性体コア10は、狭いギャップ部12と併せて環状に形成されている。本実施形態における磁性体コア10は、ギャップ部12と併せて円形状の中空部11を囲む円環状に形成されている。
【0025】
<ホール素子(磁電変換素子)>
ホール素子20は、磁性体コア10のギャップ部12に配置され、磁性体コア10の中空部11を通過する電流に応じて変化する磁束を検出し、磁束の検出信号を電気信号として出力する磁電変換素子の一例である。本実施形態においては、ホール素子20は、本体部からリード線21が延び出て形成されたリード線タイプのICである。リード線21には、電力の入力用のリード線及び検出信号の出力用のリード線が含まれる。なお、ホール素子20が、表面実装タイプのICであることも考えられる。
【0026】
ホール素子20は、本体部における予め定められた検出中心点が、磁性体コア10のギャップ部12の中心点に位置し、かつ、本体部の表裏の面がギャップ部12に形成される磁束の方向に対して直交するように配置される。ホール素子20は、その検出中心点が、磁性体コア10における対向する両端部の投影面の中心を結ぶ線上に位置する状態が、理想の配置状態である。
【0027】
<電子基板>
電子基板50は、ホール素子20がそのリード線21の部分において実装されたプリント回路基板である。また、電子基板50には、ホール素子20の他、ホール素子20から出力される磁束の検出信号に対して増幅などの処理を施す回路とコネクタ51とが実装されている。
【0028】
コネクタ51は、不図示の電線に設けられた相手側コネクタが接続される部品である。さらに、電子基板50には、ホール素子20リード線21とコネクタ51の端子とを電気的に接続する回路が設けられている。例えば、電子基板50には、外部から電線及びコネクタ51を介して入力される電力をホール素子20のリード線21へ供給する回路、及び、ホール素子20の検出信号を増幅し、増幅後の信号をコネクタ51の端子に出力する回路などが設けられている。これにより、電流検出装置1は、コネクタ51に接続されたコネクタ付き電線を通じて、電流検出信号を電子制御ユニットなどの外部の回路へ出力することができる。
【0029】
<電流検出用バスバー>
電流検出用バスバー30は、銅などの金属からなる導体の部材であり、バッテリと電装機器とを電気的に接続するバスバーの一部である。即ち、電流検出用バスバー30には、検出対象の電流が流れる。また、電流検出用バスバー30は、バッテリに対して予め接続されたバッテリ側のバスバーと、電装機器に対して予め接続された機器側のバスバーとは独立した部材である。そして、電流検出用バスバー30は、その両端が予め敷設された他のバスバー(バッテリ側のバスバー及び機器側のバスバー)に対して接続される。
【0030】
なお、電流検出用バスバー30の三面図である図2において、図2(a)は平面図、図2(b)は側面図、図2(c)は正面図である。
【0031】
図1及び図2に示されるように、電流検出用バスバー30は、磁性体コア10の中空部11を貫通する棒状の導体の両端部分に加工が施された部材からなる。電流検出用バスバー30において、加工された両端部分は、電流伝送経路の前段及び後段各々の接続端と連結される端子部32である。即ち、電流検出用バスバー30は、両端各々から一部の範囲を占める両端部分の間の中間部分において一定の範囲を占める棒状の貫通部31と、その貫通部31の両側に連なって形成された2つの端子部32とを有する導体からなる部材である。
【0032】
貫通部31は、磁性体コア10の中空部11を電流通過方向に沿って貫通する部分である。電流通過方向は、磁性体コア10の厚み方向であり、環状の磁性体コア10を筒とみなした場合におけるその筒の軸心方向であり、さらに、環状の磁性体コア10が形成する面に直交する方向でもある。各図において、電流通過方向はX軸方向として記されている。
【0033】
電流検出用バスバー30において、2つの端子部32は平板状である。また、電流検出用バスバー30における貫通部31は、例えば、円柱状、楕円柱状又は角柱状などの棒状に形成されている。
【0034】
本実施形態において、電流検出用バスバー30の貫通部31は円柱状であり、端子部32は平板状である。また、本実施形態において、磁性体コア10の中空部11は円形状であるため、電流検出用バスバー30の貫通部31の輪郭形状は、磁性体コア10の中空部の輪郭形状と相似な形状である。各図において、平板状の端子部32の幅方向及び厚み方向は、それぞれY軸方向及びZ軸方向として記されている。
【0035】
電流検出用バスバー30の基材は、棒状の金属部材の両端における一定範囲の部分が、プレス機などを用いたプレス加工によって平板状に押しつぶされて成形された構造を有する部材である。
【0036】
電流検出用バスバー30の元となる金属部材は円柱状の部材であり、円柱状の金属部材の両端の加工により製造される電流検出用バスバー30の貫通部31は円柱状である。なお、電流検出用バスバー30の元となる棒状の金属部材は、断面が楕円の楕円棒状又は断面が矩形の角棒状であることも考えられる。また、棒状の金属部材は、断面が四角形又はその他の多角形である棒状であることも考えられる。但し、電流検出用バスバー30の貫通部31の断面形状は、磁性体コア10の中空部11の輪郭形状と相似な形状であることが望ましい。
【0037】
電流検出用バスバー30において、平板状の2つの端子部32各々の幅は、磁性体コア10の中空部11の直径(最大幅)よりも大きく形成されている。また、端子部32各々の厚みは、中空部11の直径(厚み)よりも小さく形成されている。電流検出装置1の製造工程においては、磁性体コア10と、その磁性体コア10の中空部11に貫通した状態の電流検出用バスバー30とのセットが作られた後に、電流検出用バスバー30が前段及び後段の他のバスバーに接続される。
【0038】
本実施形態において、電流検出用バスバー30における平板状の2つの端子部32各々には、ネジが挿入されるネジ止め用の貫通孔32zが形成されている。2つの端子部32は、ネジにより前段及び後段の他の平板状のバスバーと連結される。
【0039】
なお、電流検出用バスバー30における2つの端子部32各々に貫通孔32zが形成されないことも考えられる。この場合、2つの端子部32と前段及び後段の他のバスバーとは、かしめ加工又はスポット溶接などによって連結される。
【0040】
<絶縁筐体>
絶縁筐体40は、磁性体コア10と電流検出用バスバー30とホール素子20及びコネクタ51が実装された電子基板50とを一定の位置関係で保持しつつ支持する絶縁性の部材である。絶縁筐体40は、磁性体コア10の両側から組み合わされる本体ケース41及び本体ケース41に取り付けられる蓋部材42の2つの部材を含む。本体ケース41及び蓋部材42の各々は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)又はABS樹脂などの絶縁性の樹脂からなる一体成形部材である。なお、本体ケース41及び蓋部材42は、要素筐体の一例である。
【0041】
本体ケース41は、開口部を有する箱状に形成され、蓋部材42は、本体ケース41に取り付けられることによって本体ケース41の開口部を塞ぐ。また、本体ケース41及び蓋部材42には、電流検出用バスバー30の両端子部32が内側から外側へ挿入される貫通孔であるバスバー孔45が形成されている。電流検出用バスバー30における一方の端子部32は本体ケース41のバスバー孔45に通され、他方の端子部32は蓋部材42のバスバー孔45に通される。
【0042】
また、蓋部材42は、磁性体コア10、ホール素子20及び電流検出用バスバー30を保持する本体ケース41に対し、磁性体コア10と、ホール素子20と、コネクタ51を含む電子基板50とを挟み込みつつ、本体ケース41の開口部を塞ぐように取り付けられる。その際、電流検出用バスバー30における他方の端子部32が、蓋部材42のバスバー孔45に対して内側から外側へ通され、電子基板50が本体ケース41と蓋部材42との間に挟み込まれて保持される。
【0043】
図4は、本体ケース41及び蓋部材42が組み合わされた状態における電流検出装置1の平面図である。図4に示されるように、本体ケース41及び蓋部材42(絶縁筐体40)は、電流検出用バスバー30における端子部32と、電子基板50のコネクタ51とが外部に露出する状態で、磁性体コア10と、電子基板50とを挟み込みつつ、磁性体コア10とホール素子20と電流検出用バスバー30とを一定の位置関係で支持する。
【0044】
より具体的には、電流通過方向(X軸方向)に直交する平面(Y−Z平面)に沿う方向における磁性体コア10及びホール素子20の絶縁筐体40内での位置は、コア支持部43及び素子支持部44によって保持される。なお、図3において、コア支持部43及び素子支持部44の部分には網点模様が記されている。
【0045】
さらに、磁性体コア10は、本体ケース41及び蓋部材42の間に挟み込まれることによって、電流通過方向(X軸方向)における位置が保持される。同様に、電子基板50に固着されたホール素子20は、電子基板50が本体ケース41及び蓋部材42の間に挟み込まれることによって、電流通過方向(X軸方向)における位置が保持される。
【0046】
また、図1及び図3に示されるように、本体ケース41の側壁の内側面には、基板支持部49が突出して形成されている。この基板支持部49は、電子基板50に形成された欠け部52に嵌り込み、電子基板50を予め定められた位置で支持する。
【0047】
さらに、本体ケース41及び蓋部材42には、それらを組み合わせ状態で保持するロック機構47,48が設けられている。図1に示されるロック機構47,48は、本体ケース41の側面に突出して形成された爪部47と、蓋部材42の側方に形成された環状の枠部48とを備える。本体ケース41の爪部47が、蓋部材42の枠部48が形成する孔に嵌り込むことにより、本体ケース41及び蓋部材42は、それらが組み合わされた状態で保持される。
【0048】
以下、図1、図3及び図6を参照しつつ、本体ケース41による磁性体コア10及びホール素子20の支持の構造について説明する。なお、図6は、図4に示される平面図におけるB−B平面での断面の図である。
【0049】
図1及び図3に示されるように、絶縁筐体40を構成する2つの部材の一方である本体ケース41の内側の面には、電流通過方向(X軸方向)において突出するコア支持部43及び素子支持部44が形成されている。
【0050】
コア支持部43は、本体ケース41の内側面におけるバスバー孔45の縁部における複数の箇所に分断された状態で突出して形成されている。本実施形態では、2つのコア支持部43が、端子部32を通すことが可能なスリット状の隙間の両側の2箇所において対向して形成されている。
【0051】
コア支持部43における電流検出用バスバー30の貫通部31に対向する面である内側面は、電流検出用バスバー30の貫通部31の外周面に沿う形状に形成されている。また、コア支持部43における磁性体コア10に対向する面である外側面は、中空部11を形成する磁性体コア10の内周面に沿う形状に形成されている。そして、コア支持部43は、磁性体コア10の中空部11に挿入されて磁性体コア10を支持するとともに、磁性体コア10と電流検出用バスバー30の貫通部31との間に挟み込まれる状態で磁性体コア10を位置決めする。
【0052】
また、コア支持部43の内側面には、磁性体コア10と電流検出用バスバー30の貫通部31とにより挟み込まれる圧力によって塑性変形する3つ以上の突起部431が形成されている。これら突起部431各々は、電流通過方向(X軸方向)、即ち、電流検出用バスバー30がバスバー孔45を貫通する方向に沿って伸びて形成されている。
【0053】
また、突起部431は、コア支持部43の内側面における3箇所以上において電流検出用バスバー30の貫通部31を挟み込むように形成されている。3つ以上の突起部431が設けられることにより、コア支持部43は、突起部431のみによって磁性体コア10を安定的に支持する。図3に示される例では、電流検出用バスバー30の貫通部31を挟んで対向する一対の突起部431が2組設けられている。
【0054】
本体ケース41において、磁性体コア10を支持するコア支持部43は、電流検出用バスバー30の貫通部31がバスバー孔45に挿入される前の状態、即ち、自然状態においては、磁性体コア10との間に若干の隙間(遊び)が生じる状態で設けられている。そして、コア支持部43は、磁性体コア10の中空部11における磁性体コア10と電流検出用バスバー30との間に挿入された状態においては、電流検出用バスバー30から受ける圧力によって外側へ弾性変形し、磁性体コア10の内側の周面に密接する。即ち、電流検出用バスバー30は、コア支持部43を磁性体コア10に密接させるためのくさびとして機能する。
【0055】
以上に示した構造を備えた電流検出装置1において、磁性体コア10及びコア支持部43は、車両などの振動を受ける環境において衝突を繰り返すという現象が生じず、振動による摩耗が生じにくい。その結果、電流検出装置1は、磁性体コア10とそれを支持する部分とに隙間が形成される従来の電流検出装置よりも耐久性が高い。
【0056】
また、コア支持部43の内側面に樹脂製の突起部431が存在することにより、電流検出用バスバー30、コア支持部43及び磁性体コア10の各々の寸法公差が、突起部431の塑性変形の程度によって吸収される。そのため、寸法公差によって磁性体コア10と電流検出用バスバー30との間の隙間にコア支持部43を挿入できなくなる事態を回避できる。
【0057】
一方、素子支持部44は、磁性体コア10のギャップ部12に配置されたホール素子20の周囲を取り囲んで一連に形成されている。素子支持部44が取り囲む空間は、磁性体コア10のギャップ部12においてホール素子20が嵌め込まれる空間である。即ち、この素子支持部44は、その内側の空間にホール素子20が嵌め込まれることにより、ホール素子20をギャップ部12内の予め定められた位置に保持する。
【0058】
また、本実施の形態において、素子支持部44は、複数のコア支持部43のうちの一つと一連に形成されている。そのため、コア支持部43及び素子支持部44の相対的な位置の誤差が小さくなり、磁性体コア10及びホール素子20の相互間の位置決めの精度が高まる。
【0059】
<バスバー孔の詳細説明>
次に、図5を参照しつつ、絶縁筐体40に形成されたバスバー孔45の詳細について説明する。
【0060】
本体ケース41及び蓋部材42の各々には、電流検出用バスバー30の端子部32が貫通するバスバー孔45が形成されている。絶縁筐体40におけるバスバー孔45の縁部は、平坦面451と突起部453と湾曲面452とにより構成されている。
【0061】
バスバー孔45の縁部を構成する平坦面451は、端子部32に対し隙間を隔てて対向する平坦な面である。平坦面451は、少なくとも端子部32の両面各々に対向する領域において端子部32の表面に対して平行に形成されている。
【0062】
バスバー孔45の縁部を構成する複数の突起部453は、平坦面451から突起するとともに端子部32の表裏各面に接して端子部32を挟む部分である。図5に示される例では、端子部32を挟んで対向する一対の突起部453が2組形成されているが、一対の突起部453が1組のみ形成される場合も考えられる。
【0063】
複数の突起部453が電流検出用バスバー30の端子部32を挟むことにより、電流検出装置1が振動を受けた場合でも、絶縁筐体40及び端子部32は、振動に応じて相対的に変位しない。また、複数の突起部453は、絶縁筐体40が電流検出用バスバー30の周りに回転することを防ぐ回転止め部としても機能する。
【0064】
バスバー孔45の縁部を構成する湾曲面452は、端子部32の角部に対し隙間を隔てて対向する面であり、角がなく湾曲して形成されている。即ち、突起部453を除く平坦面451及び湾曲面452により形成される形状は、矩形の角部が丸められることにより得られる形状である。
【0065】
<応用例に係る電流検出用バスバー>
次に、図7を参照しつつ、電流検出装置1に適用可能な応用例に係る絶縁筐体40におけるバスバー孔45の部分について説明する。図7は、電流検出装置1に適用可能な絶縁筐体40におけるバスバー孔45の部分の正面図である。
【0066】
図5に示される例では、複数の突起部453は、端子部32を挟んで対向する位置に形成されている。一方、図7に示される例では、電流検出用バスバー30の端子部32における一方の面に接する突起部453と他方の面に接する突起部453とは、相互に対向しない位置に形成されている。図7に示される例では、端子部32における一方の面に接する2つの突起部453と他方の面に接する1つの突起部453とが形成されているが、端子部32の両面各々について複数の突起部453が形成される場合も考えられる。
【0067】
図7に示される例においても、絶縁筐体40及び端子部32は、振動に応じて相対的に変位しない。また、複数の突起部453は、絶縁筐体40が電流検出用バスバー30の周りに回転することを防ぐ回転止め部としても機能する。
【0068】
<効果>
電流検出装置1において、電流検出用バスバー30の両端部は端子部32である。即ち、予め敷設された前段及び後段のバスバーに対し、磁性体コア10の中空部11を貫通した状態の電流検出用バスバー30を連結することが可能である。そのため、前段及び後段のバスバーとは異なる異形の電流検出用バスバー30を採用することが可能であり、前段及び後段のバスバーの幅の制約を受けずに小型の磁性体コア10を採用することができる。
【0069】
また、電流検出用バスバー30において、磁性体コア10の中空部11を貫通する貫通部31は、その前後に連なる端子部32と比較して、厚みが大きく形成されている。これにより、貫通部31は、その幅及び厚みが磁性体コア10の中空部11の幅よりも小さいという制約の中で、より大きな断面積で形成されることができる。従って、比較的小さな磁性体コア10が採用された場合でも、電流検出用バスバー30の過剰な発熱を防止できる。
【0070】
また、電流検出装置1において、絶縁筐体40のバスバー孔45は、電流検出用バスバー30の端子部32との間に隙間が形成されるほど厚みが大きく、また、角部がない。そのため、絶縁筐体40におけるバスバー孔45の縁部において、応力の集中による割れは生じにくい。
【0071】
また、電流検出装置1において、絶縁筐体40におけるバスバー孔45の縁には、電流検出用バスバー30の端子部32をその表裏各面に接して挟む複数の突起部453が形成されている。そのため、振動を受ける環境下においても、絶縁筐体40におけるバスバー孔45の縁部と電流検出用バスバー30の端子部32との衝突は生じず、異音の発生及び絶縁筐体40の摩耗は回避される。
【0072】
また、電流検出装置1において、コア支持部43が、磁性体コア10と電流検出用バスバー30との間に挟み込まれる状態で磁性体コア10と電流検出用バスバー30とを支持する。この場合、コア支持部43は、磁性体コア10との間に若干の隙間(遊び)が生じる状態で設けられた場合でも、磁性体コア10の中空部11における磁性体コア10と電流検出用バスバー30の貫通部31との間に挿入されることにより、電流検出用バスバー30から受ける圧力によって弾性変形し、磁性体コア10の内側の周面に密接する。そのため、磁性体コア10及びコア支持部43は、車両などの振動を受ける環境において衝突を繰り返すという現象が生じず、振動による摩耗が生じにくい。
【0073】
また、コア支持部43に形成された突起部431が、磁性体コア10と電流検出用バスバー30の貫通部31とにより挟み込まれる圧力によって塑性変形する。これにより、電流検出用バスバー30、コア支持部43及び磁性体コア10の各々の寸法公差が、突起部431の塑性変形の程度によって吸収される。そのため、寸法公差によって磁性体コア10と電流検出用バスバー30との間の隙間にコア支持部43を挿入できなくなる事態を回避できる。
【0074】
また、電流検出用バスバー30の貫通部31の輪郭形状が、磁性体コア10の中空部11の輪郭形状と相似な形状であるため、電流検出用バスバー30と磁性体コア10との隙間をより小さくすることができる。その結果、より小さな磁性体コア10を採用することによる装置の小型化が可能となる。
【0075】
また、電流検出用バスバー30の端子部32は、棒状の金属部材に対するプレス加工により簡易に作ることが可能である。
【0076】
<その他>
以上に示した電流検出装置1においては、コア支持部43の内側面に3つ以上の突起部431が形成されているが、同様の3つ以上の突起部431が、コア支持部43の外側面に形成されることも考えられる。その場合の突起部431は、磁性体コア10の内側の周面に当接し、磁性体コア10と電流検出用バスバー30とにより挟み込まれる圧力によって塑性変形する。
【0077】
また、以上に示した実施形態では、磁性体コア10は、ギャップ部12と併せて円環状に形成されているが、磁性体コア10は、他の形状であってもよい。例えば、磁性体コア10が、ギャップ部12と併せて多角形の環状であり、電流検出用バスバー30の貫通部31の断面形状が、磁性体コア10の中空部11が形成する多角形と相似な多角形であることも考えられる。この場合、コア支持部43の内側面及び外側面は、多角形状の電流検出用バスバー30の貫通部31の外側面の輪郭形状及び磁性体コア10の内側面の輪郭形状の各々に沿う形状に形成される。
【符号の説明】
【0078】
1 電流検出装置
10 磁性体コア
11 磁性体コアの中空部
12 磁性体コアのギャップ部
20 ホール素子
21 リード線
30 電流検出用バスバー
31 貫通部
32 端子部
32z 貫通孔
40 絶縁筐体
41 本体ケース
42 蓋部材
43 コア支持部
44 素子支持部
45 バスバー孔
47 爪部(ロック機構)
48 枠部(ロック機構)
49 基板支持部
50 電子基板
51 コネクタ
52 電子基板の欠け部
431 コア支持部の突起部
451 平坦面
452 湾曲面
453 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスバーに流れる電流を検出する電流検出装置であって、
磁性材料からなり、両端がギャップ部を介して対向し、中空部の周囲を囲んで一連に形成された磁性体コアと、
前記磁性体コアの前記ギャップ部に配置され、前記磁性体コアの前記中空部を通過する電流に応じて変化する磁束を検出する磁電変換素子と、
前記磁性体コアの前記中空部を貫通する貫通部と該貫通部に対し前記中空部を貫通する方向の両側各々に連なり前記貫通部よりも幅が大きく厚みが小さい2つの平板状の端子部とが形成された導体からなる電流検出用バスバーと、
2つの前記端子部が外部に露出する状態で、前記磁性体コアと前記磁電変換素子と前記電流検出用バスバーの前記貫通部とを覆いつつそれらを一定の位置関係で支持する絶縁筐体と、を備え、
前記絶縁筐体は、前記磁性体コアの両側から組み合わされる2つの要素筐体からなり、2つの前記要素筐体各々には、前記電流検出用バスバーの前記端子部が貫通するバスバー孔が形成され、前記バスバー孔の縁部は、前記端子部に対し隙間を隔てて対向する平坦面と、該平坦面から突起するとともに前記端子部の表裏各面に接して前記端子部を挟む複数の突起部と、前記端子部の角部に対し隙間を隔てて対向する湾曲面と、により構成されていることを特徴とする電流検出装置。
【請求項2】
前記電流検出用バスバーは、前記磁性体コアの前記中空部を貫通可能な棒状の金属部材の両端部分がプレス加工により他の部分よりも広い幅の平板状に成形された構造を有する部材であり、成形された両端部分が2つの前記端子部を構成する請求項1に記載の電流検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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