説明

電流電圧変換器

【課題】被測定回路に直列に接続されるものでありながら、従来のような危険性がなく、且つ、設置面積が小さくてよく小型化することができ、直流・交流に拘わらず使用することができ、大電流も測定することができると共にパルス性電流も応答性よく測定することができる電流電圧変換器を提供する。
【解決手段】境界面13を挟んで隣接して配置された導電率の異なる2つの導体12,14を有し、2つの導体12、14には、被測定回路に直列に接続されて計測するべき被測定電流がそれらの間を流れる2つの入出力接続部12a、14bと、電圧を計測可能な計測器16が接続される2つの検出接続部14a、14bとが設けられる。計測器16で2つの検出接続部14a、14b間の電圧が計測可能となっており、該電圧が前記被測定電流と比例関係を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定回路を流れる被測定電流を計測するために、被測定回路に直列に接続されると共に被測定電流を電圧に変換する電流電圧変換器であって、該電圧を計測することで被測定電流を求めることを可能にする電流電圧変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送配電線、電力機器、制御機器、情報通信機器、計測機器等の状態監視や計測のために、被測定回路の被測定電流を計測する電流計測機器としては、被測定電流の周波数特性に応じて、様々な電流計が用いられている。
【0003】
例えば、直流の場合、可動コイル型電流計が一般的に知られており、交流の場合、可動鉄片型、整流型、熱電対型電流計などが一般的に知られている。これらは、被測定回路に直列に接続されて被測定電流の計測を行うものである。
【0004】
また、送電線、配電線等の電流を測定する場合には、電圧が高電圧になるので、変流器(CT)が用いられている。この場合の基本回路を図26に示す。変流器は、被測定回路に設けられる一次側コイルと二次側コイルとを有し、一次側コイルの巻き数と二次側コイル巻き数との比率と二次側電流計の指示値によって一次電流である被測定電流を計測するようになっている。この場合、内部鉄心の磁気飽和のため周波数の上限が1kHzほどであるため、高周波領域の測定には不適当である。また、大型でかつ使用電圧との関係で安全離隔距離が必要なため、設置に際し、広い設置面積を必要とするという問題がある。
【0005】
また以上のように被測定回路に直列に計測機器を接続する場合、課電中(電圧印加中)に計測機器を取り外すことは、両端に過電圧またはアーク放電あるいは双方が発生し極めて危険であり被測定回路に支障をきたすことになり、且つこの危険を回避するための設備費用が高額であるため、通常、計測機器は据え付けの状態で使用されている。しかしながら、計測機器に故障が発生した場合には、計測機器の両端に高電圧が印加することになるので、依然として危険であるという問題がある。
【0006】
一方、被測定回路に対して非接触で測定を行うものとしては、ロゴスキーコイルが広く用いられている。これは、積分回路、オシロスコープ、測定用ケーブルなどの付属装置が必要となり、最大ピーク電流も被測定回路の周波数特性に依存するという問題がある。
【0007】
また、パルス性電流を測定する場合、電磁結合を利用した素子(カーレントプローブなど)が広く用いられている。
【0008】
電磁結合を利用した電流計測機器としては、被測定電流の流れる導体を検出素子のコイル内の内側に挿入したものがあり、被測定電流の流れる導体から生じる磁場の変化を外側のコイルで検出するようになっている。しかしながら、導体の大きさ、形状によってコイル内に挿入することの困難を生じる場合がある。
【0009】
この困難さを解消したものとして、図27に示すように、被測定電流の流れる導体を開閉式のバーで挟み込んだクランプ式の電流計が知られている。これは、被測定電流によって発生する磁界をバーに内蔵されているコイルと高透磁率の部材で検出し、本体内部回路で計測し電流を表示するものであり、携帯の用途で広く用いられている。しかしながら、大電流を計測する場合、被測定電流の流れる導体は大きく、かつ導体の形状が多種多様であるため、クランプ式の電流計の製作は困難であるという問題がある。
【0010】
さらに、各電流計測計器はそれぞれに固有の周波数特性があり、電磁誘導式の場合、最大200MHz位しか使えない。
【0011】
このように従来の電流計測機器は、その種類に応じて以上の諸問題を抱えており、さらには、各用途によって広い設置面積の必要性、被測定電流の流れている部材の形状および寸法によって測定の困難さを生じるという問題があり、機器の小型化が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はかかる従来の課題に鑑みなされたもので、被測定回路に直列に接続されるものでありながら、従来のような危険性がなく、且つ、設置面積が小さくてよく小型化することができ、直流・交流に拘わらず使用することができ、大電流も測定することができると共にパルス性電流も応答性よく測定することができる電流電圧変換器を提供することを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明は、被測定回路に対して直列に接続される電流電圧変換器であって、
境界面を挟んで隣接して配置された導電率の異なる2つの導体を有し、該2つの導体には、被測定回路に接続されて計測するべき被測定電流がそれらの間を流れる2つの入出力接続部と、電圧を計測可能な計測器が接続される2つの検出接続部とが設けられており、
前記2つの入出力接続部は、前記導体内の異なる任意の2点であり、
前記2つの検出接続部は、前記導体内の異なる任意の2点であり、
前記2つの入出力接続部間の抵抗は、前記計測器の入力インピーダンスよりも小さく、前記計測器によって前記2つの検出接続部間の電圧が計測可能となっており、該電圧が前記被測定電流と比例関係を持つ、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、導電率の異なる2つの導体を隣接して配置することによって、2つの入出力接続部となる2点間及び2つの検出接続部となる2点間には、計測可能な電圧降下が発生し、且つ、それらの電圧は比例関係にあるために、2つの検出接続部間で計測された電圧から被測定電流を計測することができる。
【0015】
本発明によれば、構成が簡単で可動部分もなく、堅牢で信頼性があるために、安全であり、大きな設置面積を要せずに小型に構成することができる。
【0016】
また、導体を使用することで、ほぼ抵抗成分のみで、電圧と電流との位相差はほぼ零として扱うことができるので、周波数依存性も少なく、周波数領域が直流から高周波まで、被測定電流をほとんど減衰なしで計測でき、パルス性電流も解析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る電流電圧変換器の主要部を表す平面図である。
【図2】図1の電流電圧変換器の斜視図である。
【図3】(a)は本発明の電流電圧変換器の一つの接続例を表す平面図、(b)は被測定電流の流れを表す平面図、(c)は等価回路である。
【図4A】本発明の電流電圧変換器の別の接続例を表す平面図である。
【図4B】本発明の電流電圧変換器の別の接続例を表す平面図である。
【図4C】本発明の電流電圧変換器の別の接続例を表す平面図である。
【図4D】本発明の電流電圧変換器の別の接続例を表す平面図である。
【図4E】本発明の電流電圧変換器の別の接続例を表す平面図である。
【図5】(a)は本発明の電流電圧変換器のさらに別の接続例を表す平面図、(b)は被測定電流の流れを表す平面図である。
【図6A】本発明の電流電圧変換器のさらに別の接続例を表す平面図である。
【図6B】本発明の電流電圧変換器のさらに別の接続例を表す平面図である。
【図6C】本発明の電流電圧変換器のさらに別の接続例を表す平面図である。
【図6D】本発明の電流電圧変換器のさらに別の接続例を表す平面図である。
【図6E】本発明の電流電圧変換器のさらに別の接続例を表す平面図である。
【図7】(a)は本発明の電流電圧変換器のさらに別の接続例を表す平面図、(b)は被測定電流の流れを表す平面図である。
【図8A】本発明の電流電圧変換器のさらに別の接続例を表す平面図である。
【図8B】本発明の電流電圧変換器のさらに別の接続例を表す平面図である。
【図8C】本発明の電流電圧変換器のさらに別の接続例を表す平面図である。
【図8D】本発明の電流電圧変換器のさらに別の接続例を表す平面図である。
【図8E】本発明の電流電圧変換器のさらに別の接続例を表す平面図である。
【図9】(a)は本発明による電流電圧変換器の他の実施形態を表す平面図、(b)は、その正面図である。
【図10A】本発明の電流電圧変換器のさらに別の接続例を表す平面図である。
【図10B】本発明の電流電圧変換器のさらに別の接続例を表す平面図である。
【図10C】本発明の電流電圧変換器のさらに別の接続例を表す平面図である。
【図10D】本発明の電流電圧変換器のさらに別の接続例を表す平面図である。
【図10E】本発明の電流電圧変換器のさらに別の接続例を表す平面図である。
【図11】(a)は本発明による電流電圧変換器の他の実施形態を表す平面図、(b)はその正面図である。
【図12】図11の電流電圧変換器において、境界面の面積を可変とした場合を表す平面図である。
【図13】(a)は本発明による電流電圧変換器の他の実施形態を表す分解平面図、(b)は平面図である。
【図14A】本発明による電流電圧変換器の他の実施形態を表す斜視図である。
【図14B】本発明による電流電圧変換器の他の実施形態を表す斜視図である。
【図15】本発明による電流電圧変換器の他の実施形態を表す斜視図である。
【図16】本発明による電流電圧変換器の他の実施形態を表す斜視図である。
【図17】本発明による電流電圧変換器を用いた応用例を表す図である。
【図18A】本発明による電流電圧変換器を用いた応用例を表す図である。
【図18B】本発明による電流電圧変換器を用いた応用例を表す図である。
【図18C】本発明による電流電圧変換器を用いた応用例を表す図である。
【図18D】本発明による電流電圧変換器を用いた応用例を表す図である。
【図18E】本発明による電流電圧変換器を用いた応用例を表す図である。
【図19】本発明による電流電圧変換器を用いた応用例を表す図である。
【図20】本発明による電流電圧変換器を用いた応用例を表す図である。
【図21】本発明による電流電圧変換器を用いた応用例を表す図である。
【図22】本発明による電流電圧変換器を用いた応用例を表す図である。
【図23】本発明の実施例で用いた電流電圧変換器の寸法を表す斜視図である。
【図24】実施例の回路構成を表す回路図である。
【図25】被測定電流と計測電圧との関係を表すグラフである。
【図26】従来の電流測定を行う変流器の構成を表す図である。
【図27】従来のクランプ式電流計の構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0019】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る電流電圧変換器10の主要部の構成を表している。図において、電流電圧変換器10は、導電率の異なる2つの導体12(導電率ρ1),14(導電率ρ2)を有している。2つの導体12、14は、この例では、平面視で矩形形状をなし、肉厚に対して平面寸法が大きい平板状となっており、それらの一辺が隣接した境界面13となり、互いの境界面13を挟んで隣接して配置されている。
【0020】
そして、各導体12、14には、境界面13に平行な方向において離間した位置に、接続部12a、12b、14a、14bが設けられている。接続部の数は、図示した例では、2つずつとなっているが、これに限るものではなく、少なくとも1つあればよく、または3つ以上あってもよく、後述のように、適した接続部を選択して使用するようにしてもよい。また、接続部の配置も、図示した例に限定されるものではないが、この例では、矩形形状の導体12、14の本体の両端部に各接続部が形成されている。また、この例では、矩形形状の導体12,14の本体の両端部から接続部が延設されるようになっているが、これに限るものではなく、必ずしも延設部として設けずに、導体12,14の本体の一部を接続部とすることも可能である。
【0021】
2つの導体12、14は、板状またはブロック状材料を所定の形に切断または切削することで作製することができ、またはエッチングや蒸着によって作製することも可能である。また、2つの導体12、14としては、導電率が比較的高いものを用いることが、ジュール熱による損失を防ぐために好ましく、一例として、2つの導体12、14の一方を銅とし、他方をアルミニウムとした2つの異種金属を使用することができる。
【0022】
これら導体12、14は、接合によって隣接配置することができ、接合方法としては、圧接接合が好ましく、さらに2つの導体に圧力をかけた状態で境界面に大電流を流す処理を行うとよい。これにより、合金層の除去ができ、境界面を一様な状態にすることが可能となり、境界面における機械的強度の低下を防ぐことができる。
【0023】
以上の接続部12a、12b、14a、14bのいずれかが入力接続部、出力接続部、2つの検出接続部となり、これら接続部は、互いに異なる位置にある入力接続部と出力接続部と、互いに異なる位置にある2つの検出接続部とを、任意に選択して接続可能である。但し、入出力接続部と2つの検出接続部は兼用することも可能である。
【0024】
図3に、本発明の電流電圧変換器の一つの接続例を示す。この例では、導電率の高い導体12の接続部12a及び接続部12aに対して斜め向かいにあって導電率の低い導体14の接続部14bのいずれか一方を入力接続部、他方を出力接続部としており、被測定電流が接続部12aと接続部14bとの間を流れるようになっている。そして、導体14の接続部14a、14bが検出接続部となり、この検出接続部14a、14b間に電圧を計測可能な計測器(オシロスコープ、A/D変換器を含みマイクロプロセッサを含んだ計測器等:以下同じ)16が接続される。この場合、接続部14bは共通端子となる一方で、接続部12bは開放となっており省略することも可能である。
【0025】
計測器16の入力インピーダンスは、入出力接続部12a、14b間の抵抗(1Ω未満)に比較して、十分大きくなっている。
【0026】
計測器16で計測される検出接続部14a、14b間の電圧は、入力接続部12aと出力接続部14aとを流れる電流に比例するので、該電圧を計測することで、被測定電流を計測することができる。
【0027】
図25は、被測定電流(交流電流)と計測器16で計測される電圧との関係を表すグラフであり、両者の間には、比例関係が成り立つことが分かる。図25は交流電流の場合であるが、直流電流においても、同様な比例関係が成り立つ。また、電圧が、電流(A)に対して10-3のオーダ(mV)で得られるために、被測定電流が大電流であったとしても、計測器16でその10-3のオーダの電圧として計測することができるようになる。
【0028】
このように、導電率の高い導体を使用することで損失がほとんどなく、しかしながら境界面13を設けることで、本来であればほとんど電位差が発生しない筈の導体の2点間に、計測可能な電圧を発生させることが可能になる。そして、その電圧が被測定電流と比例関係にあるので、予めその比例定数を求めておくことで、計測器16の計測値と比例定数から被測定電流を算出し計測できるようになる。2つの導体間で発生する電圧は2つの導体間のフェルミ準位の差に起因するものと推測される。図3(c)は電流電圧変換器10の等価回路を表す。この抵抗rおよび抵抗rは使用する導体12、14によって決まるものである。
【0029】
導体を使用することで、ほぼ抵抗成分のみで、電圧と電流との位相差はほぼ零として扱うことができるので、周波数依存性も少なく、周波数領域が直流から高周波まで、被測定電流をほとんど減衰なしで計測でき、パルス性電流も解析することができる。
【0030】
この電流電圧変換器10は、被測定回路に直列に接続されるものであるが、構成が簡単で可動部分もなく、堅牢で信頼性があるために、安全であり、大きな設置面積を要せずに小型に構成することができる。
【0031】
図4A〜図4Eは、本発明の電流電圧変換器の別の接続例を示す。図4Aでは、図3と異なり、導電率の高い導体12の接続部12a、12bが検出接続部となり、この検出接続部12a、12b間に電圧を計測可能な計測器16が接続される。図4Bでは、導体12の接続部12bと導体14の接続部14aが検出接続部となり、この検出接続部12b、14a間に電圧を計測可能な計測器16が接続される。図4Cでは、導体12の接続部12bと導体14の接続部14bが検出接続部となり、この検出接続部12b、14b間に電圧を計測可能な計測器16が接続される。図4Dでは、導体12の接続部12aと導体14の接続部14aが検出接続部となり、この検出接続部12a、14a間に電圧を計測可能な計測器16が接続される。図4Eでは、導体12の接続部12aと導体14の接続部14bが入出力接続部と検出接続部とを兼ねており、この検出接続部12a、14b間に電圧を計測可能な計測器16が接続される。
【0032】
いずれも場合も、比例定数は、図3の場合と必ずしも同じではないが、計測器16で計測される電圧と、入出力接続部12a、14b間を流れる電流とが比例関係を満足することには変わりなく、図3の例の場合と同様に作用させることができる。
【0033】
図5は、本発明の電流電圧変換器のさらに別の接続例を示す。この例では、導電率の高い導体12の接続部12a及び接続部12aに対向した導電率の低い導体14の接続部14aのいずれか一方を入力接続部、他方を出力接続部としており、被測定電流が接続部12aと接続部14aとの間を流れるようになっている。そして、導体14の接続部14a、14bが検出接続部となり、この検出接続部14a、14b間に電圧を計測可能な計測器16が接続される。この場合、接続部14aは共通端子となる一方で、接続部12bは開放となっており省略することも可能である。
【0034】
この場合でも、比例定数は図3の場合と必ずしも同じではないが、計測器16で計測される電圧と、入出力接続部12a、14a間を流れる電流とが比例関係を満足することには変わりなく、図3の例の場合と同様に作用させることができる。
【0035】
図6A〜図6Eは、本発明の電流電圧変換器のさらに別の接続例を示す。図6Aでは、図5と異なり、導電率の高い導体12の接続部12a、12bが検出接続部となり、この検出接続部12a、12b間に電圧を計測可能な計測器16が接続される。図6Bでは、導体12の接続部12bと導体14の接続部14aが検出接続部となり、この検出接続部12b、14a間に電圧を計測可能な計測器16が接続される。図6Cでは、導体12の接続部12bと導体14の接続部14bが検出接続部となり、この検出接続部12b、14b間に電圧を計測可能な計測器16が接続される。図6Dでは、導体12の接続部12aと導体14の接続部14aが入出力接続部と検出接続部とを兼ねており、この検出接続部12a、14a間に電圧を計測可能な計測器16が接続される。図6Eでは、導体12の接続部12aと導体14の接続部14bが検出接続部となり、この検出接続部12a、14b間に電圧を計測可能な計測器16が接続される。
【0036】
この場合でも、比例定数は図3の場合と必ずしも同じではないが、計測器16で計測される電圧と、入出力接続部12a、14a間を流れる電流とが比例関係を満足することには変わりなく、図3の例の場合と同様に作用させることができる。
【0037】
図7は、本発明の電流電圧変換器のさらに別の接続例を示す。この例では、導電率の高い導体12の接続部12a及び接続部12bのいずれか一方を入力接続部、他方を出力接続部としており、被測定電流が接続部12aと接続部12bとの間を流れるようになっている。そして、導電率の低い導体14の接続部14a、14bが検出接続部となり、この検出接続部14a、14b間に電圧を計測可能な計測器16が接続される。
【0038】
図8A〜図8Eは、本発明の電流電圧変換器のさらに別の接続例を示す。図8Aでは、図7と異なり、導電率の高い導体12の接続部12a、12bが入出力接続部と検出接続部とを兼ねており、この検出接続部12a、12b間に電圧を計測可能な計測器16が接続される。図8Bでは、導体12の接続部12bと導体14の接続部14aが検出接続部となり、この検出接続部12b、14a間に電圧を計測可能な計測器16が接続される。図8Cでは、導体12の接続部12bと導体14の接続部14bが検出接続部となり、この検出接続部12b、14b間に電圧を計測可能な計測器16が接続される。図8Dでは、導体12の接続部12aと導体14の接続部14aが検出接続部となり、この検出接続部12a、14a間に電圧を計測可能な計測器16が接続される。図8Eでは、導体12の接続部12aと導体14の接続部14bが検出接続部となり、この検出接続部12a、14b間に電圧を計測可能な計測器16が接続される。
【0039】
これら図7及び図8の場合でも、比例定数は図3の場合と必ずしも同じではないが、計測器16で計測される電圧と、入出力接続部12a、12b間を流れる電流とが比例関係を満足することには変わりなく、図3の例の場合と同様に作用させることができる。
【0040】
図9は、本発明の電流電圧変換器のさらに別の接続例を示す。この例では、導電率の低い導体14の接続部14a及び接続部14bのいずれか一方を入力接続部、他方を出力接続部としており、被測定電流が接続部14aと接続部14bとの間を流れるようになっている。そして、導体14の接続部14a、14bが検出接続部も兼ねており、この検出接続部14a、14b間に電圧を計測可能な計測器16が接続される。
【0041】
図10A〜図10Eは、本発明の電流電圧変換器のさらに別の接続例を示す。図10Aでは、図9と異なり、導電率の高い導体12の接続部12a、12bが検出接続部となり、この検出接続部12a、12b間に電圧を計測可能な計測器16が接続される。図10Bでは、導体12の接続部12bと導体14の接続部14aが検出接続部となり、この検出接続部12b、14a間に電圧を計測可能な計測器16が接続される。図10Cでは、導体12の接続部12bと導体14の接続部14bが検出接続部となり、この検出接続部12b、14b間に電圧を計測可能な計測器16が接続される。図10Dでは、導体12の接続部12aと導体14の接続部14aが入出力接続部と検出接続部となり、この検出接続部12a、14a間に電圧を計測可能な計測器16が接続される。図10Eでは、導体12の接続部12aと導体14の接続部14bが検出接続部となり、この検出接続部12a、14b間に電圧を計測可能な計測器16が接続される。
【0042】
これら図9及び図10の場合でも、比例定数は図3の場合と必ずしも同じではないが、計測器16で計測される電圧と、入出力接続部12a、12b間を流れる電流とが比例関係を満足することには変わりなく、図3の例の場合と同様に作用させることができる。
【0043】
以上の構成の中から適した比例定数を示す構成を選択して、計測を容易にすることが可能である。
【0044】
本発明によれば、大電流を流すことができるにも拘わらず、非常に小型で抵抗が小さく、ほぼ抵抗成分のみを持つ電流電圧変換器とすることが可能である。導体12を銅とし、導体14をアルミニウムとして、5mm×20mm(厚み:5mm、幅:20mm)の断面積を持つ導体を用いて全長約200mmの図3及び図4に示す電流電圧変換器を構成し、入出力接続部12a、14b間に5Aの交流電流を流し、検出接続部を以下にしたときの検出接続部間の電圧を計測すると、次のようになった。
【0045】
【表1】

【0046】
比例定数(=計測電圧/5A)である抵抗値は0.2〜3.2mΩの範囲を示し、電圧計測に好適な範囲の値となっている。仮に、このような範囲の抵抗値を持つ装置を、同じ断面積を持つ銅のみまたはアルミニウムのみの導体で構成しようとする場合、これらの導体の導電率は非常に高く抵抗は非常に小さいことから、約100倍の全長が必要となり装置が非常に大型化し抵抗成分だけで構成することは困難となり、または、同じ全長で構成しようとすれば、断面積を1/100にする必要があり、大電流を流すことができなくなる。
【0047】
また、図8Aや図9の例では、入出力接続部と検出接続部とが兼用されており、従って、一見すると、導体12のみまたは導体14のみで構成されている場合と変わりない構成となっているが、仮に導体12のみまたは導体14のみだけで構成しようとする場合には、上述のように導電率が非常に高く抵抗が非常に小さいために、計測可能な電圧降下を発生させることは困難である。しかしながら、異なる導電率の導体を隣接して配置することによって、2つの導体の境界面を通過する電流の回り込みが発生し、これが2点間の電圧降下を引き起こすことにより、計測可能な電圧降下を発生させることができる。
【0048】
上述と同じ条件、即ち、導体12を銅とし、導体14をアルミニウムとして、5mm×20mm(厚み:5mm、幅:20mm)の断面積を持つ導体を用いて全長約200mmの図7−図10に示す電流電圧変換器を構成し、入出力接続部に10Aの交流電流を流し、検出接続部を以下にしたときの検出接続部間の電圧を計測すると、次のようになった。
【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
以上表から、通常では考えられない導体内の2点において計測可能で且つ被測定電流に比例する電圧を発生させることができることが分かる。
【0052】
このように、本発明の電流電圧変換器は、2つの異なる導体を隣接して配置することで、大電流を流すための断面積を確保することができると共に全体の寸法を非常に小さく抑えることができる。本発明の電流電圧変換器では、100kAまでの電流を流すことが可能である。
【0053】
2つの導体12、14の隣接配置としては、上述の接合による他に、図11に示すように、重ね合わせ、すなわち単に接触させるだけとすることも可能である。この重ね合わせ配置を行う場合には、境界面13において、接触圧力が一定に保持されるように圧力保持手段(図示略)を設けるとよく、圧力保持手段として具体的には、導体12、14を互いに圧着するボルト、スプリングワッシャー、ナット、クランプ器材等とすることができる。
【0054】
重ね合わせる面積、即ち境界面13の面積を変化させると、比例定数も変化するので、図12に示すように、導体12、14を互いに相対的にスライド可能に構成することで、比例定数の任意の調整を可能にすることもできる。
【0055】
また、2つの導体12、14の隣接配置として図13に示すように、各導体12、14の境界面13に相当する部分に互いに係合可能な係合部17、18を設けて、係合部17、18を互いに係合させることで、引張り強さを補強するように構成することも可能である。
【0056】
導体12、14の形状としては、以上に示したような平板状とする他に、図14A、図14Bに示すような棒状形状とし、または図15及び図16に示すような立体形状とすることも可能である。図15においては、薄肉の各導体12、14を境界面13で接合した後、これを丸めて立体形状にしている。また、図16においては、各導体12,14を4本脚の机のような形態で作製して、互いの頂面を境界面13として接合し、いずれか一方の導体12、14の脚に相当する接続部12a〜12d、14a〜14dの中から選択された接続部を入力接続部とし、他方の導体14、12の脚に相当する接続部14a〜14d、12a〜12dの中から選択された接続部を出力接続部とし、入力接続部及び出力接続部間に被測定電流を流し、また、接続部12a〜12d、14a〜14dの中から選択された任意の2つの接続部のペアを検出接続部として、2つの検出接続部の間の電圧を計測器16で計測することで、被測定電流を測定できる。
【0057】
次に、本発明の電流電圧変換器を用いた様々な応用について説明する。
【0058】
図17は、三相電源回路において半導体素子を用い、位相制御して三相回路を直流にして負荷(例えば、電動機)に供給する基本回路において、負荷電流を計測するために本発明の電流電圧変換器10を負荷回路に直列に接続した例である。これによって、負荷電流の歪、変動、直流分、高周波分などを電圧波形として測定及び観測できる。
【0059】
図17の例では、三相電源としたが、航空機などに用いられているような多相電源回路において、その回路網における被測定電流を計測する場合、本発明による電流電圧変換器10は、振動に対して強固で、周波数測定範囲が比較的高帯域までを含むため、信頼性が極めて高い計測を行うことができる。同様に、振動の大きい海上の船舶などに用いられる多相電源回路においても有効である。
【0060】
さらに、図18Aは、電流電圧変換器10の検出接続部間をフォトカプラ20を介して電圧を計測可能な計測器26に接続した例である。フォトカプラ20の発光ダイオード22を電流電圧変換器10の検出接続部間に接続し、発光ダイオード22からの光をフォトカプラ20の受光素子24で受光し、その受光素子24に流れる電流の変化を、電圧計、オシロスコープ、またはA/D変換器を含みマイクロプロセッサを含んだ計測器26で計測する。
【0061】
または、図18Bに示すように検出接続部間に2つのフォトカプラ20を並列に接続し、互いの発光ダイオード22が正方向と逆方向になるようにする。そして、それぞれのフォトカプラ20の受光素子24に流れる電流の変化を、電圧計、オシロスコープ、またはA/D変換器を含みマイクロプロセッサを含んだ計測器26で計測する。
【0062】
または、図18Cに示すように、発光ダイオード22と受光素子24の間に光ケーブル28を用いて、遠距離での被測定電流の計測をすることも可能である。この例は、特に、高電圧機器における計測において、安全に計測できる利点がある。
【0063】
または、図18Dに示すように、被測定電流が小さく、電流電圧変換器10の検出接続部間に発生する電圧が小さいときには、その電圧を増幅させるために増幅器30を設け、計測することも可能である。同様に、図18A、図18Bの例においても同様に増幅器30を設けることも可能である。
【0064】
または、図18Eに示すように、電圧を計測可能な計測器として、送信機40と、送信アンテナ42と、受信アンテナ44と、受信機46とを含み、送信機40で電流電圧変換器10の検出接続部間に発生する電圧を電圧/周波数変換をし、または、送信機40で電圧を変調して、それを送信アンテナ42から電波で送信し、これを受信アンテナ44で受信して、受信機46で信号処理することにより、遠隔での被測定電流の測定を行うことが可能である。
【0065】
または、図19に示すように、三相交流電流に対し、それぞれの電力線に本発明の電流電圧変換器10を直列接続することができ、各電力線に直列接続した各電流電圧変換器10の検出接続部間に発生する電圧をディジタル測定器50で計測した後、論理回路52に入力して、電流に変換した後、それぞれの電流の加算及び/又は比較することで、3相交流電流のA、B、C相のうちのいずれかの電力線に漏電が発生していることを検出することができる。これによって、漏電検出機能を持たせることができ、小型で簡単に構成可能な漏電検出器を実現できる。
【0066】
または、図20に示すように、交流電流計を3台用いる三電流計法による電力計測において、各電流I1、I2、I3の計測に、本発明の電流電圧変換器10を接続することができ、各電流電圧変換器10の検出接続部間に発生する電圧をA/D変換器54−1、演算処理部54−2及び表示器54−3を含む計測器54で電流に変換して、負荷の消費電力を演算することができる。
【0067】
または、図21に示すように、部分放電検出回路において外部雑音を抑制するために用いられる平衡検出回路の各検出インピーダンスに本発明の電流電圧変換器10を用いることで、ナノ秒の部分放電パルス電流の計測が可能である。試料Cxは、ある電圧以上で部分放電が発生するものである。符号56は、演算器を含むオシロスコープ等の計測器である。
【0068】
または、図22に示すように、本発明の電流電圧変換器10を用いて、絶縁破壊試験における放電電流の検出が可能である。符号56は、演算器を含むオシロスコープ等の計測器である。
【0069】
本発明による電流電圧変換器10は、大電流の被計測電流を計測することができ、且つ、堅牢で振動に強く、信頼性が高く、周波数帯域が広く、且つ軽量、小型に構成することができるため、電気鉄道、磁気浮上鉄道(リニアーモータカー)、電気自動車などの限られた空間に配置するのに好適である。または、電気鉄道に電力を供給している変電所では各鉄道車両の総和の大電流を供給しているが、本発明による電流電圧変換器10を用いれば、その被測定電流すなわち総和電流の計測を容易に測定できる。
【0070】
本発明による電流電圧変換器10は、周波数帯域が広範囲なため電気工学分野、通信工学分野、制御工学、ロボット工学、鉄道、航空機、船舶、医療工学など各分野の電気回路網における電流を計測に適用できる。具体的に、鉄道車両の電流計測、複合多目的ビルにおける電流計測、変電所の母線の電流計測、圧延機のモータ、電気自動車における駆動電流計測、雷電流の計測、送電配電線の線電流の計測、開閉所における電流計測に好適である。更に、この電流電圧変換器10は導体のみで構成されており、被測定電流と測定電圧の間における位相差がほぼ零であるため、トリガー信号の装置として応用することが可能である。
【0071】
また、本発明の電流電圧変換器10は、周波数帯域が広範囲なため、過渡的な電流変化(例えば、スイッチングによるパルス性電流)の解析に適し、電力機器などに用いられている絶縁材料の劣化機構の解明に供することができる。
【0072】
また、再生可能エネルギーの利用によるエネルギーの効率的な利用目的のためのスマートグリッドにおいて、電力の潮流の計測が益々重要な役割を果たすことになり、各大小の需要家(一般家庭も含む)の各負荷電流の計測は電力の融通性の制御において極めて重要となるが、本発明の電流電圧変換器10は、強靭で、信頼性があり、可動部分がなく、周波数帯域が広範囲なため、かかる用途に好適である。
【実施例1】
【0073】
異なる導電率を有する導体(導体12:銅、導体14:アルミニウム)を接合させて、図23に示した寸法(単位はmm)の電流電圧変換器10を作製した。
【0074】
そして、導体12の接続部12aを入力接続部とし、導体14の接続部14bを出力接続部とし、導体14の接続部14a、14bを検出接続部とした。
【0075】
図24に示すように、商用周波交流電源を用いて、被測定電流を入力接続部12aと出力接続部14b間に流し、検出接続部14a、14b間の電圧を計測した。電流電圧変換器10の被測定電流と計測電圧との関係を図25に示す。この図25から被測定電流Ii[A]と測定電圧Vo[mV]との関係が線形で比例関係にあり、約Vo[mV]=k・Ii[A] で表示することができることが判る。ただし、kは電流電圧変換器の部材の種類、形状、寸法等で決まる比例定数となる。
【符号の説明】
【0076】
10 電流電圧変換器
12、14 導体
13 境界面
12a〜12d、14a〜14d 接続部
16、26、40〜46、50、54、56 計測器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定回路に対して直列に接続される電流電圧変換器であって、
境界面を挟んで隣接して配置された導電率の異なる2つの導体を有し、該2つの導体には、被測定回路に接続されて計測するべき被測定電流がそれらの間を流れる2つの入出力接続部と、電圧を計測可能な計測器が接続される2つの検出接続部とが設けられており、
前記2つの入出力接続部は、前記導体内の異なる任意の2点であり、
前記2つの検出接続部は、前記導体内の異なる任意の2点であり、
前記2つの入出力接続部間の抵抗は、前記計測器の入力インピーダンスよりも小さく、前記計測器によって前記2つの検出接続部間の電圧が計測可能となっており、該電圧が前記被測定電流と比例関係を持つ、ことを特徴とする電流電圧変換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図18D】
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【図18E】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図26】
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【図27】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−61282(P2013−61282A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200796(P2011−200796)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(508311411)
【Fターム(参考)】