説明

電源、制御回路、画像形成装置の電源

【課題】 圧電トランスを用いた画像形成装置用の電源ユニットにおいて、回路発振することのない安定した電圧制御を実現し、もって画像形成装置の印刷品質の低下を防止する。
【解決手段】 圧電トランス(101)と、圧電トランス(101)の出力電圧を検出する出力電圧検出回路(206)と、出力電圧設定信号(Vcont)を入力すると共に、出力電圧検出回路(206)からの出力電圧検出信号(Vsns)をフィードバック入力して、両者の比較を行う比較回路(203)と、比較回路(203)での比較結果に応じて圧電トランス(101)の駆動周波数を発生してこれを圧電トランス(101)に供給する駆動周波数供給回路(110,204)とを備え、出力電圧設定信号(Vcont)の時定数を、出力電圧検出回路(206)の応答時間より長くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置における電源ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置において、感光体に転写部材を当接させて転写を行う直接転写方式を採る場合、転写部材には導電体の軸を持つローラ状の導電性ゴム(転写ローラ)を用い、感光体のプロセススピードに合わせ回転駆動させている。そして、転写部材に印加する電圧として、直流バイアス電圧を用いている。この直流バイアス電圧の極性は、通常のコロナ放電式の転写電圧と同じ極性である。
【0003】
しかし、こういった転写ローラを用いて良好な転写を行うためには、通常3kV以上の電圧(所要電流は数μA)を転写ローラに印加する必要があった。従来は、画像形成処理に必要とされる高電圧を生成するために、巻線式の電磁トランスを使用していた。しかし、電磁トランスは、銅線,ボビン,磁芯で構成されており、上記のような仕様に用いる場合は、出力電流値が数μAという微小な電流のために各部に於いて漏れ電流を最大限少なくしなければならなかった。そのため、トランスの巻線を絶縁物によりモールドする必要が有り、しかも供給電力に比較して大きなトランスを必要としたため、高圧電源装置の小型化・軽量化の妨げとなっていた。
【0004】
そこで、かかる欠点を補うために、薄型で軽量の高出力の圧電トランスを用いて高電圧を発生させることが検討されている。セラミックを素材とした圧電トランスを用いることにより、電磁トランス以上の効率で高電圧を生成することが可能となり、しかも、一次側と二次側との間の結合に関係なく一次側と二次側の電極間の距離を離すことが可能となるので、特別に絶縁のためにモールド加工する必要がなく、高圧発生装置を小型・軽量にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−206113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の圧電トランスを用いた高圧電源装置では、出力電圧を制御できずに回路動作の発振が発生する場合があった。このような現象は印刷品質の低下を招く。要するに、従来の圧電トランスを用いた高圧電源装置を画像形成装置の電源ユニットとして単純に適用するのは困難である。したがって、圧電トランスを用いた高圧電源においては、回路発振することのない安定した電圧制御の実現が求められている。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、圧電トランスを用いた画像形成装置用の電源ユニットにおいて、回路発振することのない安定した電圧制御を実現し、もって画像形成装置の印刷品質の低下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る画像形成装置における電源ユニットは、圧電トランスと、前記圧電トランスの出力電圧を検出する出力電圧検出回路と、出力電圧設定信号を入力すると共に、前記出力電圧検出回路からの出力電圧検出信号をフィードバック入力して、両者の比較を行う比較回路と、前記比較回路での比較結果に応じて前記圧電トランスの駆動周波数を発生してこれを前記圧電トランスに供給する駆動周波数供給回路とを備え、前記出力電圧設定信号の時定数を、前記出力電圧検出回路の応答時間より長くしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本出願に係る発明によれば、圧電トランスを用いた画像形成装置用の電源ユニットにおいて、回路発振することのない安定した電圧制御を実現し、もって画像形成装置の印刷品質の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1に係る圧電トランスを用いた高圧電源ユニットの回路図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る画像形成装置の構成を示す図である。
【図3】圧電トランスの駆動周波数に対する出力電圧の特性を表す図である。
【図4】本発明の実施形態1における転写高圧電源ユニットの構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る圧電トランスを用いた高圧電源ユニットの回路特性を表した図である。
【図6】本発明の実施形態2に係る圧電トランスを用いた高圧電源ユニットのブロック図である。
【図7】本発明の実施形態2に係る圧電トランスを用いた高圧電源ユニットの回路図である。
【図8】本発明の実施形態2に係る圧電トランスを用いた高圧電源ユニットの回路特性を表した図である。
【図9】本発明の実施形態3に係る圧電トランスを用いた高圧電源ユニットのブロック図である。
【図10】本発明の実施形態3に係る圧電トランスを用いた高圧電源ユニットの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施に有利な具体例を示すにすぎない。また、以下の実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の課題解決手段として必須のものであるとは限らない。
【0012】
(実施形態1)
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の一例である、カラーレーザプリンタの構成例を示す図である。ただし、本発明はカラーレーザプリンタに限定されるものではなく、各種の画像形成装置に適用が可能である。
【0013】
この画像形成装置は例えば、いわゆるタンデム方式のカラーレーザプリンタである。図2に示したカラーレーザプリンタ401において、デッキ402は記録紙32を収納する。デッキ紙有無センサ403は、デッキ402内の記録紙32の有無を検知する。ピックアップローラ404は、デッキ401から記録紙32を繰り出す。デッキ給紙ローラ405は、ピックアップローラ404によって繰り出された記録紙32を搬送する。リタードローラ406は、デッキ給紙ローラ405と対をなし、記録紙32の重送を防止する。
【0014】
レジストローラ対407は、デッキ給紙ローラ405の下流に設けられ、記録紙32を同期搬送する。紙搬送センサ408は、レジストローラ対407への記録紙32の搬送状態を検知する。また、レジストローラ対407の下流には静電吸着搬送転写ベルト(以下「ETB」と記す。)409が配設されている。画像形成部は、後述する4色(イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックB)分のプロセスカートリッジ410Y、410M、410C、410Bと、スキャナユニット420Y、420M、420C、420Bを含む。この画像形成部によって形成された画像が転写ローラ430Y、430M、430C、430BによってETB409上に順次重ね合わされて行くことにより、カラー画像が形成され、記録紙32上に転写、搬送される。
【0015】
さらに下流には、記録紙32上に転写されたトナー像を熱定着するための定着部431が設けられている。この定着部431は、内部に加熱用のヒータ432を備える定着ローラ433、この定着ローラ433を押圧する加圧ローラ434、定着ローラ433からの記録紙32を搬送するための一対の定着排紙ローラ435を備える構成である。さらに、定着部431の下流には、定着部431からの搬送状態を検知する定着排紙センサ436が配設されている。
【0016】
各スキャナ部420は、レーザユニット421、ポリゴンミラー422、スキャナモータ423、結像レンズ群424を含む。レーザユニット421は、後述するビデオコントローラ440から送出される各画像信号に基づいて変調されたレーザ光を発光する。また、ポリゴンミラー422、スキャナモータ423、および結像レンズ群424は、各レーザユニット421からのレーザ光を各感光ドラム305上に走査するためのものである。
【0017】
各プロセスカートリッジ410は、公知の電子写真プロセスに必要な感光ドラム305、帯電ローラ303と現像ローラ302、トナー格納容器411を具備しており、レーザプリンタ401に対して着脱可能に構成されている。
【0018】
ビデオコントローラ440は、外部装置であるホストコンピュータ441から送出される画像データを受け取ると、その画像データをビットマップデータに展開し、画像形成用の画像信号を生成する。
【0019】
DCコントローラ201はレーザプリンタの制御部である。このDCコントローラ201は、MPU(Micro Processing Unit)207および、図示しない各種入出力制御回路を含む。MPU207は、図示の如く、RAM207a、ROM207b、タイマ207c、デジタル入出力ポート207d、D/Aポート207e、A/Dポート207fを備える。
【0020】
また、202は高圧電源ユニットである。この高圧電源ユニット202は例えば、各帯電ローラ303に電圧を印加する帯電高圧電源ユニット、各現像ローラ302に電圧を印加する現像高圧電源ユニットをはじめ、各転写ローラ430に電圧を印加する転写高圧電源ユニットを含む。
【0021】
次に、本実施形態における転写高圧電源ユニットの構成を、図4のブロック図に基づいて説明する。なお、本発明に係わる高圧電源ユニットは、正電圧、負電圧どちらの出力回路に対しても有効であるため、ここでは代表的に正電圧を必要とする転写高圧電源ユニットについて説明を行う。また、転写高圧電源ユニットは各転写ローラ430Y、430M、430C、430Bに対応し、4回路設けられているが、回路構成は各回路とも同じであるため、図4では1回路のみの説明を行う。
【0022】
出力電圧設定手段としてのDCコントローラ201は、MPU207の制御処理によって出力電圧設定信号Vcontを出力する。DCコントローラ201からの出力電圧設定信号Vcontは、高圧電源ユニット202上に設けられたオペアンプ等により構成される出力電圧制御回路としての積分回路(比較回路)203に入力される。入力電圧は電圧制御発振回路(VCO)110を介して周波数に変換され、その周波数によりスイッチング回路204が駆動される。これにより、圧電トランス(圧電セラミックトランス)101が動作し、素子の周波数特性及び昇圧比に応じた電圧を出力する。圧電トランス101の出力は整流回路205により正電圧に整流平滑され、高圧出力Vout208にて負荷である転写ローラ(不図示)に高電圧が印加される。また、この整流後の電圧は出力電圧検出回路206を介して比較回路203にも帰還され、出力電圧検出信号Vsnsが出力電圧設定信号Vcontと同電位になるように制御が行われる。
【0023】
図4に示した構成の転写高圧電源ユニットは、図1の回路で実現することができる。上記のとおり、出力電圧設定信号VcontはDCコントローラ201から出力される。図1において、この出力電圧設定信号Vcontは、抵抗114を介して積分回路203を構成するオペアンプ109の反転入力端子(−端子)に入力される。
【0024】
他方、出力電圧Voutは、出力電圧検出回路206の抵抗105、106、107によって分圧され、出力電圧検出信号Vsnsがコンデンサ115及び保護用抵抗108を介してオペアンプ109の非反転入力端子(+端子)に入力される。オペアンプ109の出力端は電圧制御発振器(VCO)110に接続され、この電圧制御発振器110の出力端はスイッチング回路としてのトランジスタ204のベースに接続される。トランジスタ204のコレクタはインダクタ112を介して電源(+24V)に接続されていると同時に、圧電トランス101の一次側の電極の一方に接続される。圧電トランス101の出力は、整流回路205を構成するダイオード102、103及び高圧コンデンサ104によって正電圧に整流平滑され、負荷である転写ローラ(不図示)に印加される。
【0025】
圧電トランス101の特性は一般的に図3に示すような共振周波数f0において出力電圧が最大となるような裾広がりの形状をなしており、周波数による出力電圧の制御が可能である。圧電トランス101の出力電圧を増加させる場合は、駆動周波数を高い方から低い方へ変化させることで可能となる。
【0026】
ここで、規定出力電圧Edc出力時の駆動周波数をfxとする。また、駆動周波数発生手段としての電圧制御発振器(VCO)110は入力電圧が上がると出力周波数は上がり、入力電圧が下がると出力周波数は下がるような動作を行うものとする。この条件において、圧電トランス101の出力電圧Edcが上がると、オペアンプ109の非反転入力端子(+端子)の入力電圧Vsnsも上がり、これによりオペアンプ109の出力端子の電圧が上がる。そうすると、電圧制御発振器110の入力電圧が上がるので、圧電トランス101の駆動周波数が上がる。したがって、圧電トランス101は駆動周波数fxより少し高い周波数で駆動され、この駆動周波数が上がることにより圧電トランス101の出力電圧は下がる。その結果、出力電圧を下げる方向に制御が行われることとなる。すなわち、この回路は負帰還制御回路を構成している。
【0027】
一方、出力電圧Edcが下がると、オペアンプ109の入力電圧Vsnsが下がり、これによりオペアンプ109の出力端子の電圧が下がる。そうすると、電圧制御発振器110の出力周波数が下がるので、圧電トランス101は出力電圧を上げる方向に制御を行うこととなる。このように、オペアンプ109の反転入力端子(−端子)に入力されるDCコントローラ201からの出力電圧設定信号Vcontの電圧(設定電圧:以下、この設定電圧もVcontで表す)で決定される電圧に等しくなるよう、出力電圧が定電圧制御される。
【0028】
図1に示すように、出力電圧制御回路(積分回路)203は、オペアンプ109、抵抗114、およびコンデンサ113によって構成される。出力電圧設定信号Vcontは、抵抗114とコンデンサ113の部品定数で決まる時定数Tcontに依存して、オペアンプ109に入力される。ここで、抵抗114の抵抗値が大きいほど、時定数Tcontは大きくなる。一方、コンデンサ113の容量が大きいほど、出力電圧検出信号Vsnsの時定数Tsnsは大きくなる。
【0029】
また、出力電圧検出回路206は、抵抗105,106,107、およびコンデンサ115によって構成される。出力電圧検出信号Vsnsは、抵抗105,106,107とコンデンサ115の部品定数によって決まる時定数Tsnsに依存して、オペアンプ109に入力される。
【0030】
以上の構成により、出力電圧の立ち上がり、立ち下がり時間は、電圧制御発振器(VCO)110の周波数変化量Δfによって制御される。周波数変化量Δfは、オペアンプ109の出力電圧によって決定される。ここでオペアンプ109は、反転入力端子(−端子)に積分回路203を介して入力される出力電圧設定信号Vcontと、非反転入力端子(+端子)に入力される出力電圧検出信号Vsnsとの比較結果に応じた電圧を出力する。
【0031】
ここで、出力電圧が出力電圧設定信号Vcontによって設定された目標電圧に立ち上がる場合について、仮に、出力電圧設定信号Vcontの時定数Tcontが出力電圧検出信号Vsnsの時定数Tsnsよりも早い場合、すなわち、Tcont<Tsnsの場合を考える。
【0032】
この場合は、立ち上り始めから目標値に達するまで常に、Vcont>Vsnsの関係となる。そうすると、フィードバックが追いつかずオペアンプ109の出力電圧が増加して、周波数変化量Δfは非常に大きなものとなる。このため、圧電トランス101の駆動周波数が共振周波数f0以下になってしまい、出力電圧が制御できなくなる可能性がある。
【0033】
また、一般的にも、出力電圧設定信号Vcontと出力電圧検出信号Vsnsの比較において、検出側が常に遅れるために、正常なフィードバック動作が行えなくなり、回路動作で発振が発生する場合がある。
【0034】
このように、電圧制御発振器(VCO)110の周波数変化量△fの制御において発振が起こると、出力電圧に電圧リップルが発生する。このため、印字画像にスジ模様となって現れるなど、印刷品質が低下するという問題がある。したがって、圧電トランスを用いた高圧電源ユニットには、回路発振することなく電圧制御発振器(VCO)110を制御することが求められる。
【0035】
これに対し、本実施形態では、
Tcont>Tsns,
Tcont=R114×C113,
Tsns=Rs×C115(ただし、RsはR105,R106,R107の合成抵抗)となるような、抵抗114およびコンデンサ113の定数、ならびに、抵抗105,106,107およびコンデンサ115の定数を決定する。これにより、発振のない制御が可能となる。具体的には、本実施例では、Tcontは5msec、Tsnsは1msecに設定した。Tcont,Tsnsの時定数が大きいと、フィードバック制御が遅くなるため、出力バイアスの立ち上がり時間が遅くなってしまう。また、Tcont,Tsnsの時定数が小さいと、フィードバックする駆動周波数の変化が大きくなり、圧電トランス101の共振周波数f0を超えてしまい、フィードバック制御が破綻してしまう。このため、Tcont,Tsnsとしては、約0.5msec〜100msec程度の範囲(より好ましくはTcontは約1から約10msec,Tsnsは約0.5msec〜約5msec程度の範囲)で適時最適な値を設定することが望ましい。
【0036】
ここで、本実施形態の回路動作について、図5を用いて説明する。図5(a)は、高電圧出力の立ち上がりおよび立ち下がり時の出力電圧検出信号Vsnsの電圧波形である。立ち上がり時、立ち下がり時共に時定数Tsnsをもった波形となる。また、図5(b)は、高電圧出力の立ち上がり及び立ち下がり時の出力電圧設定信号Vcontの電圧波形である。立ち上がり時、立ち下がり時共に時定数Tcontをもった波形となる。このとき、Tcont>Tsnsであるため、出力電圧設定信号Vcontの傾きの方が出力電圧検出信号Vsnsの傾きよりも緩やかになる。これにより、出力電圧設定信号Vcontの時定数Tcontを、出力電圧検出信号Vsnsの時定数Tsnsよりも遅らせることができる。言い換えると、出力電圧設定信号Vcontの時定数Tcontは、出力電圧検出回路206の応答時間よりも長くなる。このようにして、発振の無いフィードバック回路が構成できる。
【0037】
本実施形態では、出力電圧設定信号と出力電圧検出信号の各々の時定数について、回路を構成する部品の定数を調整することにより、簡単かつ安価な構成で、圧電トランスを用いた高圧電源ユニットにおける電圧制御発振器(VCO)が周波数制御不能に陥ることを防ぎ、発振のない理想的な回路制御を可能とした。
【0038】
(実施形態2)
上述の実施形態1では、出力電圧設定信号と出力電圧検出信号の各々の時定数について、回路を構成する抵抗、コンデンサの部品定数を適切にすることにより時定数を調整する点を説明した。本実施形態では、上述の実施形態1の構成とは異なる構成で時定数を調整することのできる圧電トランス式高圧電源ユニットについて図6、図7及び図8を参照して説明する。なお、実施形態1と同様の構成に関しては、その説明を省略する。
【0039】
本実施形態と実施形態1との主たる相違点は、出力電圧設定信号の時定数の調整を、ファームウェアによって行う構成としたことである。
【0040】
図6は、本実施形態における圧電トランスを用いた高圧電源ユニットの構成を表すブロック図である。図示の構成は実施形態1に係る図4の構成と概ね同様である。ただし、図6では、出力電圧設定信号Vcontが、DCコントローラ201のMPU207におけるD/A端子207eから出力することが明らかにされている。
【0041】
図7は、図6に示した転写高圧電源ユニットの実際の回路構成を示す図である。この図7の回路は、実施形態1に係る図1の回路と概ね同様の構成であるが、本実施形態における出力電圧制御回路203はコンデンサ113を含んでいない点で相違する。
【0042】
出力電圧検出信号Vsnsの時定数Tsnsは、抵抗105,106,107、およびコンデンサ115で構成される出力電圧検出回路206の部品定数によって決定される。一方、出力電圧設定信号Vcontについては、出力電圧検出信号Vsnsの時定数Tsnsよりも確実に遅れるように制御するための設定テーブルをもったファームウェアにより制御を行う。
【0043】
次に、本実施形態の回路動作について図8を用いて説明する。図8(a)は、高電圧出力の立ち上がり及び立ち下がり時の出力電圧検出信号Vsnsの電圧波形である。立ち上がり時、立ち下がり時共に時定数Tsnsをもった波形となる。また、図8(b)は、高電圧出力の立ち上がり及び立ち下がり時の出力電圧設定信号Vcontの電圧波形である。立ち上がり時、立ち下がり時共に時定数Tcontをもった波形となるように設定された設定テーブルに従って、ファームウェアが制御を行う。このとき、Tcont>Tsnsであるため、出力電圧設定信号Vcontの傾きの方が出力電圧検出信号Vsnsの傾きよりも緩やかになる。これにより、ファームウェアによっても確実に出力電圧設定信号Vcontの時定数Tcontを出力電圧検出信号Vsnsの時定数Tsnsよりも遅らせることができ、発振の無いフィードバック回路が構成できる。
【0044】
本実施形態では、MPUのD/A出力から出力電圧設定信号Vcontを得る構成とし、これをファームウェアにより制御することにより、従来の回路とは異なる構成で電圧制御発振器(VCO)が周波数制御不能に陥ることを防ぎ、発振のない回路制御を可能とした。
【0045】
(実施形態3)
上述の実施形態2では、出力電圧設定信号Vcontの時定数Tcontをファームウェアによって調整し、出力電圧検出信号Vsnsの時定数Tsnsを回路定数で調整する構成を説明した。本実施形態では、上述の実施形態2の構成を発展させた構成で時定数を調整することのできる圧電トランス式高圧電源ユニットについて、図9及び図10を参照して説明する。なお、実施形態1と同様の構成に関しては、その説明を省略する。
【0046】
本実施形態と実施形態2との主たる相違点は、出力電圧検出信号VsnsをMPU207に入力し、MPU207の内部で比較を行った後、出力電圧設定信号Vcontを出力する構成としたことである。
【0047】
図9は、本実施形態の圧電トランスを用いた高圧電源ユニットの構成を表すブロック図である。DCコントローラ201に搭載されたMPU207のD/A端子207eから出力電圧設定信号Vcontが出力される。一方、整流後の出力電圧Voutは出力電圧検出回路206に帰還され、出力電圧検出信号VsnsがMPU207のA/D端子207fに入力される。MPU207は、出力電圧検出信号Vsnsと出力電圧設定信号Vcontが同電位になるように制御を行う。
【0048】
図10は、図9に示した転写高圧電源ユニットの実際の回路構成を示す図である。
【0049】
出力電圧検出信号Vsnsは、抵抗105,106,107により一定電圧以下に分圧された状態でMPU207のA/D端子207fに入力される。このときの入力時定数をTsnsとする。
【0050】
一方、出力電圧設定信号Vcontは、MPU207による処理により、常に出力電圧検出信号Vsnsとの比較が行われ、Tcont>Tsnsとなるように、時定数Tsnsよりも遅い時定数Tcontにより出力される。
【0051】
このように、出力電圧設定信号Vcontと出力電圧検出信号Vsnsの比較処理をMPU207に行わせるようにしても、実施形態1,2と同様に、出力電圧設定信号Vcontの時定数Tcontを出力電圧検出信号Vsnsの時定数Tsnsよりも遅らせることができ、発振の無いフィードバック回路が実現される。さらに、本実施形態では出力電圧設定信号Vcontと出力電圧検出信号Vsnsの比較処理をMPU207に行わせるようにしたので、基板にオペアンプなどの比較回路を設ける必要がなくなるという利点もある。
【0052】
なお、上述の実施形態では、代表的に、画像形成装置における転写ローラに電圧を印加する転写高圧電源ユニットの構成を示したが、同様な構成でもって帯電ローラに電圧を印加する帯電高圧電源ユニットや現像ローラに電圧を印加する現像高圧電源ユニットを実現可能であることはいうまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置における電源ユニットであって、
圧電トランスと、
前記圧電トランスの出力電圧を検出する出力電圧検出回路と、
出力電圧設定信号を入力すると共に、前記出力電圧検出回路からの出力電圧検出信号をフィードバック入力して、両者の比較を行う比較回路と、
前記比較回路での比較結果に応じて前記圧電トランスの駆動周波数を発生してこれを前記圧電トランスに供給する駆動周波数供給回路と、
を備え、
前記出力電圧設定信号の時定数を、前記出力電圧検出回路の応答時間より長くしたことを特徴とする画像形成装置における電源ユニット。
【請求項2】
前記画像形成装置は、
像担持体上に静電潜像を形成する潜像形成手段と、
静電潜像にトナー像を形成する現像手段と、
トナー像を転写材に転写する転写手段と、
転写材に転写されたトナーを当該転写材に定着させる定着手段と、
を含み、
前記圧電トランスから出力される電圧が、前記潜像形成手段、現像手段、転写手段の少なくともいずれかに印加されることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置用の電源ユニット。
【請求項3】
前記出力電圧設定信号の時定数は、回路時定数により可変としたことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置における電源ユニット。
【請求項4】
前記出力電圧設定信号の時定数は、ファームウェアにより可変としたことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置における電源ユニット。
【請求項5】
前記出力電圧検出回路の応答時間は、回路時定数により可変としたことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置における電源ユニット。
【請求項6】
前記出力電圧検出手段の応答時間は、ファームウェアにより可変としたことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置における電源ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−150500(P2012−150500A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−62122(P2012−62122)
【出願日】平成24年3月19日(2012.3.19)
【分割の表示】特願2006−20973(P2006−20973)の分割
【原出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】