説明

電源システム、サーバシステム、及び電源システムの電力制御方法

【課題】電力供給元の安定度やコストに応じて、最適な電力消費が可能な電源システム提供する。
【解決手段】本発明の電源システムは、複数のAC/DC変換ユニットと、複数のAC/DC変換ユニットをグループに分けるIshare接続を制御するスイッチ回路と、スイッチ回路のスイッチを制御するIshare設定回路と、AC/DC変換ユニットの出力電圧を設定する出力電圧設定回路と、Ishare設定回路と、出力電圧設定回路とを制御する制御回路とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システムに関し、特に、最適な電源環境で電力を供給する電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、サーバシステムに対する省電力や可用性に関する関心が高まっている。今後は、益々、電力をサーバシステム内の各ユニットに安定供給することができ、様々な電源環境で動作させることができる電源システムが求められることが予想される。
【0003】
例えば、電力危機となった場合には、様々な電力供給元から電力の供給を受けなければならない可能性がある。このような場合では、従来の火力・原子力による電力と、クリーンエネルギーと呼ばれている風力・太陽光等による電力から、サーバシステムを駆動することが想定される。
【0004】
一般に、複数の電源系統を持つ従来のサーバシステムでは、サーバシステムに搭載される複数のAC/DC変換ユニットに、各々の電力系統から均等に電力を供給する。電力が、安定供給される環境では問題ないが、不安定な供給元(電力系統)からも電力供給を受ける場合は、必ずしも最適な供給方法とはいえない。そのため、複数の電源系統を持つサーバシステムにおいて、電力系統別に供給元の状況に合わせて電力を消費し、あらゆる電源環境に適用できるサーバシステムが求められている。コスト、安定度、供給能力などを勘案して系統別に消費電力を変えることができる電源システムが求められている。
【0005】
本発明の分野における先行技術文献としては、特開2007−244097号公報(特許文献1)に、複数のユニットそれぞれが出力する電力の配分比率を制御し、1つの電力発生手段が故障して使用できなくなった場合でも、電源装置としての出力電圧を維持することが可能な電源装置の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−244097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、電力供給元の安定度やコストに応じて、最適な電力消費が可能な電源システム提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電源システムは、複数のAC/DC変換ユニットと、前記複数のAC/DC変換ユニットをグループに分けるIshare接続を制御するスイッチ回路と、前記スイッチ回路のスイッチを制御するIshare設定回路と、前記AC/DC変換ユニットの出力電圧を設定する出力電圧設定回路と、前記Ishare設定回路と、前記出力電圧設定回路とを制御する制御回路とを備える。
【0009】
本発明の電力制御方法は、複数のAC/DC変換ユニットと、前記複数のAC/DC変換ユニットをグループに分けるIshare接続を制御するスイッチ回路と、前記スイッチ回路のスイッチを制御するIshare設定回路と、前記AC/DC変換ユニットの出力電圧を設定する出力電圧設定回路と、前記Ishare設定回路と、前記出力電圧設定回路とを制御する制御回路とを備える電源システムにより実施される電力制御方法である。
【0010】
制御回路が、前記複数のAC/DC変換ユニットの最大消費電力を設定するステップと、制御回路が、前記複数のAC/DC変換ユニットを、グループに分けるステップと、制御回路が、前記グループ毎に、消費電力の割り当て比率を変えるステップと、Ishare設定回路が、前記グループの分け方に基づいて、前記スイッチ回路のスイッチを制御するステップと、制御回路が、前記最大消費電力と前記割り当て比率に基づいて、前記AC/DC変換ユニットの出力電圧を算出するステップと、出力電圧設定回路が、前記出力電圧を前記AC/DC変換ユニットに設定するステップとを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電力供給元の安定度やコストに応じて、最適な電力消費が可能な電源システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施形態における電源システム100のブロック図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態の電源システム100における制御回路110のブロック図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態の電源システム100の電力制御方法における初期設定フローのフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の実施形態の電源システム100の電力制御方法における運用中の設定変更フローのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本発明の実施形態による電源システム100を以下に説明する。
【0014】
[構成の説明]
本実施形態における電源システム100の構成の説明を行う。図1は、本発明の実施形態における電源システム100のブロック図である。本実施形態の電源システム100は、プロセッサ、メモリ等の負荷103を備えるサーバシステム10に搭載されている。本実施形態の電源システム100は、交流電源(AC)を供給する分電盤101から、電源系統121及び電源系統122の電力供給を受けている。本実施形態の電源システム100は、交流電源(AC)を供給する分電盤102から、電源系統123及び電源系統124の電力供給を受けている。
【0015】
ここで、分電盤101、及び分電盤102が供給する電力は、異なる電力供給元から供給されているとする。例えば、分電盤101が供給する電力は、電力会社A社から供給され、分電盤102が供給する電力は、電力会社B社から供給されているとする。電力会社A社と、電力会社B社が、供給する電力の特性は、異なるとする。例えば、電力会社A社の電力はコストが安く、停電等の障害は殆ど無いが、電力会社B社の電力はコストが高く、度々、停電することがあるとする。
【0016】
本実施形態の電源システム100は、AC/DC変換ユニット104〜107、出力電圧設定回路108、Ishare設定回路109、制御回路110、コンソール111、ダイオード116〜119、電源系統121〜124、スイッチ回路125〜127、電流センサ131〜134、及び電流値情報信号線141〜144を備える。
【0017】
AC/DC変換ユニット104〜107は、交流電流を直流電流に変換するPSU(Power Supply Unit)である。各AC/DC変換ユニット104〜107は、出力電圧を保持する出力電圧保持回路112〜115を備える。
【0018】
出力電圧設定回路108は、各AC/DC変換ユニット104〜107に出力電圧を設定する回路である。
【0019】
Ishare設定回路109は、AC/DC変換ユニットのIshare接続を制御するスイッチ回路125〜127のON/OFFを設定することにより、AC/DC変換ユニット104〜107をグループに分ける。Ishare設定回路109により、グループ分けされた各AC/DC変換ユニット104〜107の出力電力のバランスが保たれる。ここで、Ishare接続と、各AC/DC変換ユニット104〜107の出力電圧V1〜V4と出力電流I1〜I4の関係について、いくつかの例を用いて説明する。
【0020】
V1=V2=V3=V4の場合は、AC/DC変換ユニット104〜107がすべて同一のグループとなるようにIshare接続されている。その結果、各AC/DC変換ユニット104〜107の出力電流は、I1=I2=I3=I4となる。
【0021】
V1=V2>V3=V4の場合は、AC/DC変換ユニット104と、AC/DC変換ユニット105を含むグループと、AC/DC変換ユニット106と、AC/DC変換ユニット107を含むグループに分かれるようにIshare接続されている。その結果、各AC/DC変換ユニット104〜107の出力電流は、I1=I2>I3=I4となる。
【0022】
V1=V2<V3=V4の場合は、AC/DC変換ユニット104と、AC/DC変換ユニット105を含むグループと、AC/DC変換ユニット106と、AC/DC変換ユニット107を含むグループに分かれるようにIshare接続されている。その結果、各AC/DC変換ユニット104〜107の出力電流は、I1=I2<I3=I4となる。
【0023】
制御回路110は、出力電圧設定回路108とIshare設定回路109を制御する回路である。コンソール111は、ユーザが、制御回路110に設定を行うためのコンソールである。ユーザの操作に基づいて、指示信号128が、制御回路110に送信される。ダイオード116〜119は、各AC/DC変換ユニット104〜107から出力された電流の逆流を防ぐ。
【0024】
電源系統121は、分電盤101から給電される電源系統であり、AC/DC変換ユニット104に接続される。電源系統122は、分電盤101から給電される電源系統であり、AC/DC変換ユニット105に接続される。電源系統123は、分電盤102から給電される電源系統であり、AC/DC変換ユニット106に接続される。電源系統124は、分電盤102から給電される電源系統であり、AC/DC変換ユニット107に接続される。
【0025】
電流センサ131〜134は、各AC/DC変換ユニット104〜107から出力された電流を計測する。電流値情報信号線141〜144は、電流センサが計測した電流値を制御回路に送信するための信号線である。
【0026】
図2は、本発明の実施形態の電源システム100における制御回路110のブロック図である。本実施形態の制御回路110は、初期設定部201、スケジューラ202、及び演算部203を備える。
【0027】
初期設定部201は、コンソール111から送信された指示信号128から、各種設定情報を取り出し、制御回路110に保持させる。スケジューラ202は、制御回路110が、時間に基づいて、自動で所定の設定処理等を行うために使用するスケジューラである。スケジューラ202による所定の設定処理の例としては、AC/DC変換ユニット104〜107をグループに分けた場合の消費電力のバランスを、時間帯で変更する処理がある。
【0028】
例えば、昼間は、AC/DC変換ユニット104と、AC/DC変換ユニット105を含むグループの消費電力を、電力システム100の最大消費電力の60%とし、AC/DC変換ユニット106と、AC/DC変換ユニット107を含むグループの消費電力を、電力システム100の最大消費電力の40%とし、夜間は、AC/DC変換ユニット104と、AC/DC変換ユニット105を含むグループの消費電力を、電力システム100の最大消費電力の50%とし、AC/DC変換ユニット106と、AC/DC変換ユニット107を含むグループの消費電力を、電力システム100の最大消費電力の50%とする運用が可能になる。
【0029】
演算部203は、初期設定部201やスケジューラ202の情報に基づいて、出力電圧設定回路108とIshare設定回路109を制御するために必要な演算を行う。また、演算部203は、電流値情報信号線141〜144から受信された電流値情報に基づいて、AC/DC変換ユニット104〜107に設定された電圧比率を調整するためのフィードバック計算を行う。
【0030】
[動作方法の説明]
本実施形態の電源システム100における電力制御方法の説明を行う。はじめに、本実施形態の電源システム100の初期設定フローについて説明する。図3は、本発明の実施形態の電源システム100の電力制御方法における初期設定フローのフローチャートである。
【0031】
(ステップS1)
コンソール111からの指示信号128により、サーバシステム10の最大消費電力が初期設定部201に設定される。例えば、サーバシステム10の最大消費電力として、3000Wが設定される。
【0032】
(ステップS2)
コンソール111からの指示信号128により、電源系統121〜124を、どのようにグループ分けするかを示すグループ情報が初期設定部201に設定される。例えば、AC/DC変換ユニット104とAC/DC変換ユニット105のグループと、AC/DC変換ユニット106とAC/DC変換ユニット107のグループに分けるグループ情報が、初期設定部201に設定される。
【0033】
(ステップS3)
コンソール111からの指示信号128により、グループ分けした電源系統121〜124の消費電力の割り当て比率が、初期設定部201に設定される。例えば、AC/DC変換ユニット104とAC/DC変換ユニット105のグループに60%、AC/DC変換ユニット106とAC/DC変換ユニット107のグループに40%という情報が、初期設定部201に設定される。
【0034】
(ステップS4)
制御回路110は、スイッチ回路125〜127のスイッチの設定情報をIshare設定回路109に送信する。Ishare設定回路109は、当該スイッチの設定情報に基づいて、スイッチ回路125〜127のスイッチを制御する。
【0035】
例えば、AC/DC変換ユニット104〜107を、AC/DC変換ユニット104とAC/DC変換ユニット105のグループと、AC/DC変換ユニット106とAC/DC変換ユニット107のグループに分ける場合は、Ishare設定回路109は、次のようにスイッチ回路125〜127のスイッチを制御する。Ishare設定回路109は、スイッチ回路125をONにし、スイッチ回路126をOFFとし、スイッチ回路127をONにする。これにより、AC/DC変換ユニット104と、AC/DC変換ユニット105との間では、均等に電力が消費される。同様に、AC/DC変換ユニット106と、AC/DC変換ユニット107との間では、均等に電力が消費される。
【0036】
(ステップS5)
制御回路110は、ステップS1〜S4で行った設定に基づいて、各AC/DC変換ユニット104〜107の出力電圧の演算を行う。制御回路110は、当該演算結果を、出力電圧設定回路108に送信する。
【0037】
(ステップS6)
出力電圧設定回路108は、各電圧値保持回路112〜115に、当該演算結果に基づく出力電圧値を設定する。
【0038】
次に、本実施形態の電源システム100の設定変更フローについて説明する。図4は、本発明の実施形態の電源システム100の電力制御方法における運用中の設定変更フローのフローチャートである。当該設定変更フローのフローチャートの処理は、制御回路110のスケジューラ202により、所定のタイミングで定期的に開始される。
【0039】
(ステップS11)
制御回路110の演算部203は、電流値情報信号線141〜144を介して、電流センサ131〜134から、電流値情報をフィードバックする。
【0040】
(ステップS12)
制御回路110の演算部203は、ステップS11でフィードバックされた電流値情報に基づいて、各AC/DC変換ユニット104〜107の出力電圧の演算を行う。制御回路110の演算部203は、当該演算結果を、出力電圧設定回路108に送信する。
【0041】
(ステップS13)
出力電圧設定回路108は、各電圧値保持回路112〜115に、当該演算結果に基づく出力電圧値を設定する。
【0042】
本実施形態によれば、複数のAC/DC変換ユニットに対して、電力系統別に意図的に消費電力を変更することができる。これにより、電力供給元の安定度やコストに応じて、電源環境に合わせた最適な電力の消費を実現することができる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態が添付の図面を参照することにより説明された。但し、本発明は、上述の実施の形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で当業者により適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0044】
10 サーバシステム
100 電源システム
101,102 交流電源(AC)を供給する分電盤
103 サーバシステム内の負荷
104,105,106,107 AC/DC変換ユニット(PSU)
108 出力電圧設定回路
109 Ishare設定回路
110 制御回路
111 コンソール
112,113,114,115 出力電圧保持回路
116,117,118,119 ダイオード
121,122,123,124 電源系統
125,126,127 スイッチ回路
128 指示信号
131,132,133,134 電流センサ
141,142,143,144 電流値情報信号線
201 初期設定部
202 スケジューラ
203 演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のAC/DC変換ユニットと、
前記複数のAC/DC変換ユニットをグループに分けるIshare接続を制御するスイッチ回路と、
前記スイッチ回路のスイッチを制御するIshare設定回路と、
前記AC/DC変換ユニットの出力電圧を設定する出力電圧設定回路と、
前記Ishare設定回路と、前記出力電圧設定回路とを制御する制御回路と
を備える電源システム。
【請求項2】
前記電源システムは、
コンソールを更に備え、
前記制御回路は、
前記コンソールからの指示信号に基づいて、前記Ishare設定回路と、前記出力電圧設定回路とを制御する
請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記複数のAC/DC変換ユニットは、
2つ以上の異なる電力供給元から、電力が供給され、
前記制御回路は、
同一の電力供給元から、電力が供給されている前記AC/DC変換ユニット単位で、前記複数のAC/DC変換ユニットをグループに分ける
請求項1又は2のいずれか1項に記載の電源システム。
【請求項4】
前記制御回路は、
前記複数のAC/DC変換ユニットが消費する最大消費電力を決定し、
前記グループ毎に、消費電力の割り当て比率を変える
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電源システム。
【請求項5】
前記電源システムは、
前記AC/DC変換ユニットの出力電流を計測する電流センサを更に備え、
前記制御回路は、
前記電流センサが計測した電流値情報をフィードバックし、前記電流値情報に基づいて前記出力電圧設定回路を制御する
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電源システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電源システムを備えるサーバシステム。
【請求項7】
複数のAC/DC変換ユニットと、
前記複数のAC/DC変換ユニットをグループに分けるIshare接続を制御するスイッチ回路と、
前記スイッチ回路のスイッチを制御するIshare設定回路と、
前記AC/DC変換ユニットの出力電圧を設定する出力電圧設定回路と、
前記Ishare設定回路と、前記出力電圧設定回路とを制御する制御回路と
を備える電源システムにおいて、
前記制御回路が、前記複数のAC/DC変換ユニットの最大消費電力を設定するステップと、
前記制御回路が、前記複数のAC/DC変換ユニットを、グループに分けるステップと、
前記制御回路が、前記グループ毎に、消費電力の割り当て比率を変えるステップと、
前記Ishare設定回路が、前記グループの分け方に基づいて、前記スイッチ回路のスイッチを制御するステップと、
前記制御回路が、前記最大消費電力と前記割り当て比率に基づいて、前記AC/DC変換ユニットの出力電圧を算出するステップと、
前記出力電圧設定回路が、前記出力電圧を前記AC/DC変換ユニットに設定するステップと
を含む電源システムの電力制御方法。
【請求項8】
前記電源システムは、
コンソールを更に備え、
前記最大消費電力を設定するステップ、前記グループに分けるステップ、及び前記割り当て比率を変えるステップは、前記コンソールからの指示信号に基づいて行われる
請求項7に記載の電源システムの電力制御方法。
【請求項9】
前記複数のAC/DC変換ユニットは、
2つ以上の異なる電力供給元から、電力が供給され、
前記グループに分けるステップは、
同一の電力供給元から、電力が供給されている前記AC/DC変換ユニット単位で、前記複数のAC/DC変換ユニットをグループに分ける
請求項7又は8に記載の電源システムの電力制御方法。
【請求項10】
前記電源システムは、
前記AC/DC変換ユニットの出力電流を計測する電流センサを更に備え、
前記制御回路が、前記電流センサが計測した電流値情報をフィードバックするステップと、
前記制御回路が、前記電流値情報に基づいて、前記出力電圧設定回路を制御するステップと
を更に含む請求項7乃至9のいずれか1項に記載の電源システムの電力制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate