説明

電源システム

【課題】 携帯機器を駆動するために十分な駆動電力を比較的容易に発電、蓄積して、安定的に携帯機器に供給することができる使い勝手の良好な電源システムを提供する。
【解決手段】 本発明に係る電源システムは、例えば、上着やジャケット等の衣服10の袖部11の延在方向(肩から手首方向)に設けられた磁石部21と、該袖部11(磁石部21)に対向する胴脇部12に、導線の巻き進み方向が上方(袖部11の取付近傍)から下方(裾)に延在して設けられたコイル部22と、該コイル部22を構成する導線の両端部に接続されたキャパシタ部23と、を備えた構成を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システムに関し、特に、人間の動作による運動エネルギーを電気エネルギーに変換して取り出す電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機やデジタルカメラ、ポータブルオーディオ機器等の携帯型の電子機器(以下、便宜的に「携帯機器」と総称する)の普及が著しい。このような携帯機器においては、携帯性や可搬性が重視されるため、駆動用電源として、商用電源ではなく、専用のバッテリや市販の乾電池等(以下、便宜的に「バッテリ」と総称する)から駆動電力が供給される形態が用いられている。
【0003】
このような駆動用電源を適用した場合、バッテリの電流容量に応じて携帯機器の使用時間や使用状態が制約されることになる。特に、近年の携帯機器においては、通信機能を始めとする様々な機能や、大画面、高輝度の表示パネル等が搭載されることにより、高性能化されているため消費電力が増大する傾向にあり、バッテリの消耗が激しく、商用電源からの充電を頻繁に行わなければならないという問題を有していた。
【0004】
そこで、このような携帯機器の駆動用電源の問題(バッテリの消耗)を解決する手法の一例として、携帯型の発電装置を適用する技術が知られている。例えば、特許文献1等には、携帯機器の使用者の着用する履き物の底部(踵部)に、磁気歪素子と、該磁気歪素子に巻回された誘導起電力手段としてのコイルと、蓄電池と、を内蔵した構成が開示されている。
【0005】
この発電装置においては、携帯機器の使用者が、歩行又は走行することにより、踵部が押圧されると、内蔵された磁気歪素子が圧縮変形し、また、足(踵)を浮かせたときには、磁気歪素子が伸張変形するので、磁界の変化によりコイルに誘導起電力が発生する。この電力は一旦蓄電池に蓄積された後、携帯機器の駆動用電源として用いられる。
【0006】
【特許文献1】特開平9−163771号公報(第4頁〜第5頁、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1等に記載された発電装置においては、履き物の踵部に印加される外圧に応じて、磁気歪素子を変形させることにより磁界を変化させて誘導起電力を発生させる構成を有していたため、使用者が履き物を履いて歩行又は走行している場合にしか、発電することができない。そのため、履き物を履いていない状態では発電動作は行われず、通常のバッテリを用いた場合と同様に、蓄電池に蓄積された電力が消耗することになり、携帯機器への駆動電力の供給が不安定になったり、遮断されたりして使用が不可能となる場合があった。
【0008】
また、特許文献1等に記載された発電装置においては、履き物の底部(踵部)に発電装置を内蔵する必要があるため、発電装置の構成を小型化する必要があり、携帯機器を駆動させるために十分な電力を取り出すことが困難であるという問題も有していた。さらに、履き物部分(使用者の足下)に発電装置の構成が集中しているため、駆動電力を取り出して上半身近傍に位置する携帯機器に供給する際の供給経路の取り回しが複雑になり、使い勝手が悪いという問題も有していた。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、携帯機器を駆動するために十分な駆動電力を比較的容易に発電、蓄積して、安定的に携帯機器に供給することができる使い勝手の良好な電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電源システムは、
少なくとも布地に一体的に設けられ、磁力が加わることによって誘導起電力を発生する誘導起電力手段(コイル部)と、
往復運動することによって前記誘導起電力手段に対して磁力を加える磁界発生手段(磁石部)と、
前記誘導起電力手段が発生する誘導起電力を蓄積する電力蓄積手段(キャパシタ部)と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
ここで、前記誘導起電力手段は、前記布地を構成する糸材に金属ワイヤーがコイル状に巻き付けられた構成を適用することができる。
また、前記布地は、前記磁界発生手段が一体的に設けられた構成を有するものであってもよく、この場合、電源システムは、上記磁界発生手段が、前記誘導起電力手段に対して相対的に往復運動するように、前記布地を用いて衣服が縫製された構成を有しているものであってもよい。ここで、前記磁界発生手段は、前記布地を構成する糸材に磁性を付与し、所定の分極特性を有するように配列形成された構成を適用することができる。
【0012】
さらに、前記布地は、前記電力蓄積手段が一体的に設けられた構成を有するものであってもよい。ここで、前記電力蓄積手段は、前記布地を構成する糸材に、電解紙を介して線状の一対の電極部材が相互に並行して配置された電気二重層コンデンサを組み込んだ構成を適用することができる。
加えて、電源システムは、前記電力蓄積手段に蓄積された前記誘導起電力を、所定の電圧値及び電流値に変換して、所望の電子機器に供給するための電力供給制御手段(変換器)を、さらに備えているものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
すなわち、本発明に係る電源システムは、少なくとも誘導起電力を発生するコイル部(誘導起電力手段)が、例えば、衣服を構成する布地に織り込まれるように一体的に設けられた構成を有しているので、該コイル部に対して磁石部(磁界発生手段)を往復運動させることにより、携帯機器(電子機器)を使用する人物が着用した衣服側で、上記誘導起電力を発生させて利用することができる。
【0014】
また、この場合、上記磁界を発生する磁石部(磁界発生手段)が布地に織り込まれるように一体的に設けられた構成を適用することにより、上着の袖部と胴脇部のように、相対的に往復運動する箇所(又は、領域)に磁石部及びコイル部を設けることができるので、上記衣服の着用者の通常の動作のみで誘導起電力を発生させて、携帯機器に必要な駆動電力を供給することができる。
【0015】
さらに、上記誘導起電力を蓄積するためのキャパシタ部(電力蓄積手段)が布地に織り込まれるように一体的に設けられた構成を適用することにより、上記衣服の着用者は、蓄積された電力を簡易に持ち運ぶことができるので、携帯機器に対して駆動電力を安定的に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る電源システムの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(概略構成)
図1は、本発明に係る電源システムの一実施形態を示す概略構成図及び概略回路図である。
【0017】
本発明に係る電源システムは、図1(a)に示すように、例えば、上着やジャケット等の衣服10の袖部11の延在方向(肩から手首方向)に設けられた磁石部(磁界発生手段)21と、該袖部11(磁石部21)に対向する胴脇部12に、導線の巻き進み方向が上方(袖部11の取付近傍)から下方(裾)に延在して設けられたコイル部(誘導起電力手段)22と、該コイル部22を構成する導線の両端部に接続されたキャパシタ部(電力蓄積手段)23と、を備えた構成を有している。
【0018】
すなわち、本実施形態に係る電源システムは、図1(b)に示すような等価回路により表すことができる。ここで、キャパシタ部23は、コイル部22を構成する導線の両端部が接続された接点N1、N2間に、ダイオードD1〜D4をブリッジ接続したダイオードブリッジ回路(整流用のダイオードD5を含む)23aと、該ダイオードブリッジ回23aの出力接点N3、N4が、各々、正極側電極及び負極側電極に接続されたキャパシタ(コンデンサ)23bからなる回路構成を有している。
【0019】
なお、袖部11に設けられる磁石部21は、少なくとも、柔軟性(可撓性)を有するとともに、耐水性に優れた材質を有するもの、もしくは、特定の保護加工を施した構成を有し、通常の衣服の折り曲げや湾曲、洗濯や雨水による濡れ等に対して十分な耐性を備えた構成を有している。磁石部21、コイル部22及びキャパシタ部23の具体的な構成については、詳しく後述する。
【0020】
図2は、本実施形態に係る電源システムにおける発電動作を示す概念図であり、図3は、本実施形態に係る電源システムにおける駆動電力の供給方法を示す概念図である。
本実施形態に係る電源システムにおける発電動作は、携帯機器の使用者が、上述した構成を有する衣服(上着)10を着用し、図2(a)、(b)に示すように、腕を前後に動かすことにより、袖部11に設けられた磁石部21が胴脇部12に設けられたコイル部22の近傍を往復して通過する。このとき、周知のファラデーの電磁誘導の法則により、磁石部21がコイル部22の近傍を横切るとき誘導起電力が発生する。
【0021】
一般に、ファラデーの電磁誘導の法則により発生する起電力は、誘導起電力をE、コイル部22の巻数をn、磁束鎖交数をφ、磁束鎖交数の時間的な変化の割合をdφ/dtとすると、次の(1)式のように表される。
E=−n×dφ/dt ・・・(1)
【0022】
(1)式により発生した電気エネルギーは、コイル部22を構成する導線の両端端子間に接続されたダイオードブリッジ回路23aを介して全波整流されることにより、直流電流が生成されてキャパシタ23bに蓄積される。そして、このキャパシタ23bに蓄積された電気エネルギーが、図3(a)、(b)に示すように、可変抵抗Reを備えた変換器(電力供給制御手段)24により所定の電圧値及び電流値に変換されて、所望の携帯機器30の駆動電力(実質的には、携帯機器30に内蔵されたバッテリを充電するための電力)として供給される。
【0023】
ここで、図3に示した携帯機器30への駆動電力の供給方法において、変換部24は着脱可能なコネクタCNEを介してキャパシタ部23に接続されるように構成してもよいし、キャパシタ部23と一体的に構成してもよい。この場合、当該コネクタ部CNE、あるいは、変換部24から携帯機器30に至るまでの駆動電力の供給路を、例えば、周知のUSB(Universal Serial Bus)規格に準拠したケーブルを用いて接続するようにしてもよい。
【0024】
したがって、本実施形態に係る電源システムによれば、衣服の可動部(袖部)と静止部(胴脇部)の各々に、磁石部及びコイル部を個別に設けた構成を有しているので、携帯機器の使用者が当該電源システムを組み込んだ衣服を着用し、可動部を往復運動させることにより、簡易に電気エネルギーを生成して、キャパシタに蓄積することができる。この場合、常時着用している上着等の衣服に電源システムが組み込まれているので、従来技術に示したような履き物を履いていない通常の室内生活における動作中であっても、使用者が特に意識することなく、電気エネルギーを生成して蓄積することができる。
【0025】
ここで、本実施形態に係る電源システムにおいては、上着の袖部と胴脇部のように、比較的大きな面積を利用して磁石部及びコイル部を設けることができるので、携帯機器の駆動に十分な電力を容易に生成することができる。また、携帯機器を使用する上半身近傍に電源システムの構成を配置することができるので、駆動電力を供給する際の供給経路の取り回しを簡素化することができ、良好な使い勝手を実現することができる。
【0026】
なお、本実施形態においては、電源システムを組み込む衣服として、上着やジャケットを示し、袖部に磁石部を設け、胴脇部にコイル部を設けた構成を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、磁石部とコイル部が対向し、かつ、可動部と静止部の関係、もしくは、相対的に往復運動する関係を有する場所であれば同等の技術思想を適用することができるので、例えば、上着の袖部にコイル部を設け、胴脇部に磁石部を設けた構成や、ズボンの裾の一方に磁石部を設け、他方にコイル部を設けた構成、靴の一方に磁石部を設け、他方にコイル部を設けた構成等、種々の形態に適用することができる。
【0027】
また、本実施形態に係る電源システムにおいては、携帯機器に駆動電力を供給するためには、少なくとも、コイル部及びキャパシタ部が衣服に組み込まれた構成を有していればよく、該コイル部に対向して往復運動する磁石部を、着用した衣服以外の物品に設けた構成、例えば、ズボンの裾に磁石部を設けた場合には、手提げ鞄や傘等に磁石部を設けた構成等を適用するものであってもよい。
【0028】
さらに、本実施形態において、磁石部及びコイル部、キャパシタ部を衣服に組み込む構成としては、例えば、衣服の布地の表面又は裏面に各部を貼付する構成や縫い込む構成、布地間に挟み込む構成等を適用することができるほか、後述するように、布地を構成する糸材に磁性を付与したり、電荷蓄積機能を付与したりした構成を適用することもできる。
【0029】
次に、本発明に係る電源システムに適用可能な各部の具体的な構成について説明する。
(磁石部)
図4は、上述した実施形態に係る電源システムに適用される磁石部の一具体例を示す要部構成図である。
【0030】
上述した実施形態に係る電源システムに適用可能な磁石部21は、例えば、図4(a)、(b)に示すように、衣服を構成する布地に縦糸102として、磁性を付与した糸材、もしくは、糸状に加工された磁石を織り込んだ構成を有している。なお、図4(a)、(b)においては、横糸101に綿糸やポリエステル繊維、ナイロン繊維等の、磁性を持たない通常の糸材を用い、縦糸102、102a、102bに磁性を付与した糸材(糸状磁石)を用いて織り上げ、図面上方がN極、図面下方がS極になるように、各縦糸102の磁極を揃えて配列した布地を示す。
【0031】
ここで、本実施形態の磁石部21の構成を明確にするために、磁性を付与した糸材(糸状磁石)については、便宜的にハッチングを施して示した。すなわち、図4(a)においては、布地の特定の領域の全ての縦糸102を、磁性を付与した糸材を用いて織り上げた構成を有し、また、図4(b)においては、布地の特定の領域の一部の縦糸102a、102bのみを、磁性を付与した糸材を用いて織り上げた構成を有している。なお、図4(b)において、102cは磁性を持たない通常の糸材を用いた縦糸を示す。
【0032】
また、磁性を付与した糸材又は糸状磁石としては、例えば、ナイロン繊維内に磁石を溶かし込んで異方性化したものや、ゴム状磁石を糸状に成形したもののように、柔軟性に優れた材質を有するものであって、任意の磁界を形成することができるように分極しているものを適用することができる。この場合、糸状磁石の同極を並列に配列するように複数本を撚り合わせて、布地を織り上げるようにしてもよい。
【0033】
このような磁石部21の構成は、図1(a)に示した上着10の袖部11のうち、少なくとも胴脇部12に対向する部分(領域)にのみ適用することにより、図2(a)、(b)に示したように、コイル部22に対して特定の磁力線方向を有する磁界を発生させることができる。
【0034】
(コイル部)
図5は、上述した実施形態に係る電源システムに適用されるコイル部の一具体例を示す要部構成図である。
上述した実施形態に係る電源システムに適用可能なコイル部22は、例えば、図5に示すように、衣服を構成する布地の特定の縦糸202aの周りに、金属ワイヤーを螺旋状に巻き付けて巻きコイルを形成した構成を有している。
【0035】
なお、図5においては、縦糸、横糸ともに綿糸やポリエステル繊維、ナイロン繊維等の、絶縁性の通常の糸材を用い、特定の縦糸202aにのみ極細の金属ワイヤーを巻き付けた糸材を用いて織り上げた布地を示す。ここで、本実施形態のコイル部の構成を明確にするために、金属ワイヤーが巻き付けられた糸材については、便宜的にハッチングを施して示した。また、図5において、201、202bは金属ワイヤーが巻き付けられていない通常の糸材を用いた横糸、縦糸を示す。
【0036】
このような構成を有するコイル部22においては、ファラデーの法則により、誘導起電力はコイルの巻き数と磁束鎖交数の時間的な変化に比例することから、上記特定の縦糸202aに巻き付けた金属ワイヤーの巻き数は、なるべく多くすることが望ましい。また、この場合、金属ワイヤーを巻き付けた糸は、布地に複数本配列されているものであってもよい。
【0037】
そして、上述したような糸材を用いて磁石部21やコイル部22を織り込んだ布地を用いて、上記実施形態に示したような衣服10(図1(a)参照)を縫製することにより、当該衣服10を着用した使用者の動作に応じて、袖部11の磁石部21が胴脇部12のコイル部22に対して、相対的に往復運動することになるので、コイル部22において発生した誘導起電力を取り出して、図1(b)に示したキャパシタ部23に蓄積することができ、さらに、図3に示したように所望の携帯機器30の駆動電力として用いることができる。
【0038】
(キャパシタ部)
図6は、上述した実施形態に係る電源システムに適用されるキャパシタ部の一具体例を示す要部構成図である。
上述した各具体例においては、衣服10を構成する布地に用いる糸材に磁性を付与することにより(又は、糸状磁石を用いることにより)、磁石部21を衣服10に一体的に織り込み、また、絶縁性の糸材に金属ワイヤーを巻き付けることにより、コイル部22を衣服10に一体的に織り込んだ構成について示した。
【0039】
ここで、同様の技術思想に基づいて、衣服10を構成する布地、特に、当該布地に用いる糸材にキャパシタ部23としての機能を付与する場合、当該キャパシタ部は、充放電効率に優れ、メンテナンスが不要であって、さらには破裂や破損等の危険性がなく、廃棄時の環境への負荷がない(又は、極めて低い)ことが望ましい。
【0040】
このような各種の条件を満たす容量素子(電荷蓄積手段)を検討した場合、本実施形態に係る電源システムにおいては、例えば、周知の電気二重層コンデンサをキャパシタ部23として良好に適用することができる。
すなわち、電気二重層コンデンサを適用したキャパシタ部23は、図6(a)に示すように、概略、電解液301を介して対向するように配置された一対の分極性電極302a、302bと、各分極性電極302a、302bに密着して設けられるとともに、上述した磁石部21及びコイル部22からなる発電部GNEの正極及び負極に接続された集電極303a、303bと、を備えた構成を有している。
【0041】
ここで、キャパシタ部を構成する集電極303a、303bの電気的特性は、当該キャパシタ部の内部抵抗に大きく影響するので、例えば、アルミニウム等の低抵抗の金属材料を使用することが望ましい。また、分極性電極302a、302bには、以下に示す充電動作時における電荷イオンの吸着量を多くするために、表面積の大きい活性炭等の多孔質の材料を使用することが望ましい。
【0042】
このような電気二重層コンデンサは、図6(a)に示すように、分極性電極302a、302bを電解液301に浸漬した状態で、上記発電部GNEにより、電気分解が生じない程度に集電極303a、303b間に所定の電圧を印加すると、各分極性電極302a、302bの表面にプラスイオンとマイナスイオンが個別に吸着されて、電気が蓄えられる(充電動作)。
【0043】
一方、図6(b)に示すように、各集電極303a、303bに個別に接続された外部出力端子304a、304b(図3に示したコネクタCNEに相当する)を介して、電気二重層コンデンサに蓄積された電気を放出(携帯機器30に駆動電力として供給)すると、矢印の通りに電流が流れ、分極性電極302a、302bの表面に吸着されていたプラスイオンとマイナスイオンが当該電極から分離して中和状態に戻る(放電動作)。
【0044】
図7は、上述した実施形態に係る電源システムに適用されるキャパシタ部の機能が付与される糸材の一具体例を示す要部構成図である。
上述した電気二重層コンデンサを適用したキャパシタ部としての機能を、布地に用いる糸材に付与する場合の具体的な構成は、例えば、図7に示すように、まず、アルミニウム等の金属材料からなる糸状の集電極303a、303bの外周面に、活性炭塗料を塗布、乾燥して分極性電極302a、302bを密着形成することにより、正極側の糸状電極310aと負極側の糸状電極310bを形成する。そして、これらの糸状電極310a、310bを、電解液を含浸した電解紙301Pを間に挟んで密着するように配置する。
【0045】
次いで、これらの一対の糸状電極310a、310bと電解紙301Pを、ゴムやプラスチック等の柔軟性及び防水性、絶縁性を有するコーティング層311で封止する。これにより、電解紙301Pを介在させて平行に配置された糸状電極310a、310bが内部に組み込まれた(内蔵された)糸材が形成される。
【0046】
そして、このような糸材を用いてキャパシタ部を織り込んだ布地を用いて、上記実施形態に示したような衣服(図1(a)参照)を縫製し、上記各糸状電極310a、310b(より詳しくは、集電極303a、303b)を上記発電部GNE(コイル部22)に接続することにより、当該衣服を着用した使用者の動作に応じて、発電部GNEにおいて発生した電力をキャパシタ部に蓄積することができる。
【0047】
したがって、このような磁石部、コイル部及びキャパシタ部の各機能を、糸材に付与し、該糸材を織り込んだ布材により衣服を縫製することにより、本発明に係る電源システムを組み込んだ衣服を、通常の衣類と同様に取り扱うことができる。
なお、このキャパシタ部に接続される外部出力端子304a、304b(コネクタCNE)は、防水型コネクタを適用し、当該衣服の洗濯時や雨等による濡れが生じる場合には、防水キャップ等を装着することにより、水による短絡や放電を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る電源システムの一実施形態を示す概略構成図及び概略回路図である。
【図2】本実施形態に係る電源システムにおける発電動作を示す概念図である。
【図3】本実施形態に係る電源システムにおける駆動電力の供給方法を示す概念図である。
【図4】本実施形態に係る電源システムに適用される磁石部の一具体例を示す要部構成図である。
【図5】本実施形態に係る電源システムに適用されるコイル部の一具体例を示す要部構成図である。
【図6】本実施形態に係る電源システムに適用されるキャパシタ部の一具体例を示す要部構成図である。
【図7】本実施形態に係る電源システムに適用されるキャパシタ部の機能が付与される糸材の一具体例を示す要部構成図である。
【符号の説明】
【0049】
10 衣服
11 袖部
12 胴脇部
21 磁石部
22 コイル部
23 キャパシタ部
23a ダイオードブリッジ回路
23b キャパシタ
24 変換部
30 携帯機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも布地に一体的に設けられ、磁力が加わることによって誘導起電力を発生する誘導起電力手段と、
往復運動することによって前記誘導起電力手段に対して磁力を加える磁界発生手段と、
前記誘導起電力手段が発生する誘導起電力を蓄積する電力蓄積手段と、
を備えることを特徴とする電源システム。
【請求項2】
前記誘導起電力手段は、前記布地を構成する糸材に金属ワイヤーがコイル状に巻き付けられた構成を有していることを特徴とする請求項1記載の電源システム。
【請求項3】
前記布地は、前記磁界発生手段が一体的に設けられた構成を有し、
該磁界発生手段が、前記誘導起電力手段に対して相対的に往復運動できるように、前記布地を用いて衣服が縫製されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電源システム。
【請求項4】
前記磁界発生手段は、前記布地を構成する糸材に磁性を付与し、所定の分極特性を有するように配列形成された構成を有していることを特徴とする請求項3記載の電源システム。
【請求項5】
前記布地は、前記電力蓄積手段が一体的に設けられた構成を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−230033(P2006−230033A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37349(P2005−37349)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】