説明

電源プラグ

【課題】トラッキング火災が起きる前段階において、電源プラグがコンセントから確実に外されるようにする。
【解決手段】プラグ栓刃20,30を、バネ弾性を有する帯状の金属板を両端部側が交叉するように中央部分でほぼ180゜折り曲げた状態に塑性変形させ、中央部分を受け刃2に差し込まれる先端部21,31として、その先端部と両端部側の交叉部との間を受け刃2内に弾性的に接触する腹部24,34とした形状にするとともに、プラグ本体11に凹部12を設け、プラグ栓刃20,30の外側の各端部を固定端22a,32aとしてプラグ本体11に固定し、内側の各端部を可動端23a,33aとして凹部12内に配置し、可動端23a,33a間に、常温状態においては可動端23a,33a間を所定距離に保って腹部24,34を膨らませて受け刃2内に圧接するようにし、プラグ栓刃20,30が常温以上の所定の温度に熱せられたときには可動端間23a,33aの距離を縮めて腹部24,34の膨らみを消失させるスペーサ40を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電源プラグに関し、さらに詳しく言えば、トラッキング火災防止機能を有する電源プラグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電源プラグは、使用する電化製品に給電するためコンセントに挿入される少なくとも一対の金属製のプラグ栓刃を有し、その先端部の接触子が、コンセントの受け刃に対して電気的、かつ機械的に接続されるとともに、他端部がプラグ本体に固定されている。
【0003】
テレビ、洗濯機、冷蔵庫などの電源プラグは、長期間にわたって壁コンセントやテーブルタップ等に差し込まれた状態で使用されることが一般的である。したがって、プラグ栓刃間にたまるゴミや埃などに起因して発生するトラッキング火災が社会的な問題となっている。
【0004】
トラッキング火災を防止する方法として、数多くの提案がなされているが、その一つとして、コンセントカバーに庇伏の突起を取り付け、物理的にプラグ栓刃に埃やゴミが付着しないようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
これによれば、塵や埃などがコンセントと電源プラグとの間に貯まることを防止できるが、風呂場やトイレ等の水場での使用時に、水分が隙間から入り込み、それが導体となって電気を通してしまうことがあり、確実とは言えない。
【0006】
また、トラッキング火災が発生する前段階でのプラグ栓刃の発熱により変形する形状記憶合金のバネ力を利用して、電源プラグをコンセントから強制的に引き抜く方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、電源プラグによっては、接触子がコンセントの受け刃に対して強固に固定されているものがあり、形状記憶合金のバネ力では電源プラグが外れないこともあり、信頼性に欠ける。
【0008】
また別の方法として、特許文献3には、漏電やプラグ栓刃の温度を検知して電源を切断することが提案されているが、これには検知システムを構築する必要があり、導入コストがかかる、という問題がある。
【0009】
【特許文献1】登録実用新案第3089079号公報
【特許文献2】特開平5−159828号公報
【特許文献3】特開2004−22172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の課題は、トラッキング火災が起きる前段階において、電源プラグがコンセントから確実に外されるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、電気絶縁材からなるプラグ本体に、コンセントの受け刃に差し込まれる一対のプラグ栓刃を備える電源プラグにおいて、上記プラグ栓刃の各々が、所定長さのバネ弾性を有する帯状の金属板をその両端部側が交叉するように中央部分でほぼ180゜折り曲げた状態に塑性変形させ、上記中央部分を上記受け刃に差し込まれる先端部として、上記先端部と上記両端部側の交叉部との間を上記受け刃内に弾性的に接触する腹部とした形状に形成されているとともに、上記プラグ本体は、上記コンセントと対向する面のほぼ中央部分に凹部を備え、上記各プラグ栓刃は、上記プラグ本体に並べて配置された状態で、外側の各端部が固定端としてそれぞれ上記プラグ本体内に埋設され、互いに対向する内側の各端部が可動端として上記凹部内に配置され、上記凹部内には、常温状態においては上記腹部を膨らませて上記受け刃内に圧接するように上記各可動端間を所定距離に保ち、上記プラグ栓刃が常温以上の所定の温度に熱せられたときには上記各可動端間の距離を縮めて上記腹部の膨らみを消失させる熱的に変形するスペーサが設けられていることを特徴としている。
【0012】
本発明において、上記スペーサには熱収縮性合成樹脂が好ましく採用される。また、上記スペーサの中央部分に折損を誘起させる溝が形成されていることが好ましい。
【0013】
上記金属板の両端部側を交叉させるにあたって、上記固定端側の幅が上記金属板の右側もしくは左側のいずれか一方の半分幅であり、上記可動端側の幅がいずれか他方の半分幅であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、常温状態においては、スペーサにより各可動端間が所定距離に保たれることによりプラグ栓刃の腹部が膨らませられるため、プラグ栓刃をコンセントの受け刃内に適度な圧入力をもって差し込むことができる。これに対して、プラグ栓刃が常温以上の所定の温度に熱せられると、スペーサが変形して各可動端間の距離が縮められることによりプラグ栓刃の腹部の膨らみが消失し、コンセントの受け刃に対する保持力がなくなるため、電源プラグが自然と抜け出る。
【0015】
スペーサに熱収縮性合成樹脂を用いることにより、スペーサの構成を簡単かつ安価なものとすることができる。
【0016】
また、スペーサの中央部分に折損を誘起させる溝を形成することにより、スペーサがある程度収縮した時点で折損するため、瞬時に各可動端間の距離が縮められることになる。
【0017】
また、金属板の両端部側を交叉させるにあたって、固定端側の幅を金属板の右側もしくは左側のいずれか一方の半分幅とし、可動端側の幅をいずれか他方の半分幅とすることにより、プラグ栓刃の幅を金属板の幅とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、図1ないし図4により、本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の電源プラグがコンセントに挿入された通常の使用状態時を示す断面図、図2は図1の使用状態時における各プラグ栓刃を示す模式図、図3は上記電源プラグが加熱によりコンセントから抜け出た状態を示す断面図、図4は図3の電源プラグが抜け出た状態時における各プラグ栓刃を示す模式図、図5はプラグ栓刃を構成する金属板の一部拡大平面図である。
【0019】
図1に示すように、この電源プラグ10は、電気絶縁材からなり摘み部として用いられるプラグ本体11を有し、プラグ本体11の前端面11aには、コンセント1の受け刃2,2内に差し込まれる一対のプラグ栓刃20,30が設けられている。コンセント1は、壁コンセントやテーブルタップが予定されてよい。
【0020】
この実施形態において、プラグ栓刃20,30は、図4に示すように、所定長さのバネ弾性を有する帯状の金属板20a,30aを、その両端部22,23;32,33側が交叉するように中央部分でほぼ180゜折り曲げた状態に塑性変形させることにより形成される。
【0021】
すなわち、プラグ栓刃20,30は、金属板20a,30aの各中央部分にほぼ180゜の折り曲げ癖を付けることにより形成され、折り曲げ癖が付けられた中央部分を受け刃2,2内に差し込まれる先端部21,31として、先端部21,31と両端部側の交叉部20X,30Xとの間が受け刃2,2内に弾性的に接触する腹部24,34として用いられる。
【0022】
図5を参照して、金属板20aの両端部22,23側を交叉させるにあたって、金属板20aの中央部分の幅をWとして、一方の端部22側の幅を金属板20aの例えば右側の半分幅W/2とし、他方の端部23の幅を左側の半分幅W/2とすることが好ましい。これによれば、プラグ栓刃20の幅を金属板20aの幅W内に納めることができる(金属板30a(プラグ栓刃30)も同様)。
【0023】
図1に示すように、プラグ栓刃20,30は、プラグ本体11の前端面11a側に互いに平行として配置されるが、プラグ本体11の前端面11aのうちのプラグ栓刃20,30の間には、所定深さの凹部12が形成されている。
【0024】
図2を併せて参照して、プラグ栓刃20,30は、プラグ本体11に並べて配置された状態で、外側の各端部22,32は、固定端22a,32aとして、それぞれプラグ本体11内に埋設される。
【0025】
これに対して、互いに対向する内側の各端部23,33は、可動端23a,33aとして、それぞれ凹部12内に配置される。凹部12内には、可動端23a,33aの間に介在されるスペーサ40が設けられている。
【0026】
スペーサ40は、常温状態においては、可動端23a,33a間の距離(間隔)を押し広げた状態に保つ。これにより、各プラグ栓刃20,30の腹部24,34にコンセント1の受け刃2,2内に弾性的に圧接する膨らみが与えられる。
【0027】
スペーサ40は、例えばトラッキング火災が発生する前段階でのプラグ栓刃20,30の発熱により常温以上の所定の温度に熱せられると、可動端23a,33a間の距離を縮める。これにより、各プラグ栓刃20,30の腹部24,34の膨らみが消失し、各プラグ栓刃20,30は当初の塑性変形状態の形状に戻る。
【0028】
この実施形態において、スペーサ40は熱収縮性合成樹脂からなり、好ましくはその熱収縮時に折損を誘起する例えばV字状の溝41が設けられる。
【0029】
なお、プラグ本体11の後端面11bには、電源コード50がつなげられ、電源コード50に含まれている一方の芯線51がプラグ栓刃20の固定端22aに接続され、他方の芯線52がプラグ栓刃30の固定端32aに接続されている。
【0030】
この電源プラグ10は、常温状態では、可動端23a,33a間がスペーサ40により押し広げられた状態に保持され、これにより、プラグ栓刃20,30の腹部24,34に膨らみが与えられるため、図1に示すように、プラグ栓刃20,30をコンセント1の受け刃2,2内に適度な圧入力をもって差し込むことができる。
【0031】
これに対して、トラッキング現象によりプラグ栓刃20,30が常温以上の所定の温度に熱せられると、スペーサ40が収縮しはじめその収縮過程で、図3に示すように、V字状の溝41の部分から折損する。
【0032】
これにより、プラグ栓刃20,30の腹部24,34の膨らみが急激に消失し、コンセント1の受け刃2,2に対する保持力がなくなるため、電源プラグ10がコンセント1から自然と抜け出る(抜け落ちる)。
【0033】
このようにして、本発明の電源プラグ10によれば、トラッキング火災を未然に防止することができる。なお、上記実施形態では、スペーサ40を熱収縮性合成樹脂としているが、スペーサ40に融点の低い熱溶融性合成樹脂や全面を電気絶縁処理した形状記憶合金が用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の電源プラグがコンセントに挿入された通常の使用状態時を示す断面図。
【図2】図1の使用状態時における各プラグ栓刃を示す模式図。
【図3】上記電源プラグが加熱によりコンセントから抜け出た状態を示す断面図。
【図4】図3の電源プラグが抜け出た状態時における各プラグ栓刃を示す模式図。
【図5】プラグ栓刃を構成する金属板の一部拡大平面図。
【符号の説明】
【0035】
1 コンセント
2 受け刃
10 電源プラグ
11 プラグ本体
12 凹部
20,30 プラグ栓刃
21,31 先端部
22a,32a 固定端
23a,33a 可動端
24,34 腹部
20X,30X 交叉部
40 スペーサ
41 溝
50 電源コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁材からなるプラグ本体に、コンセントの受け刃に差し込まれる一対のプラグ栓刃を備える電源プラグにおいて、
上記プラグ栓刃の各々が、所定長さのバネ弾性を有する帯状の金属板をその両端部側が交叉するように中央部分でほぼ180゜折り曲げた状態に塑性変形させ、上記中央部分を上記受け刃に差し込まれる先端部として、上記先端部と上記両端部側の交叉部との間を上記受け刃内に弾性的に接触する腹部とした形状に形成されているとともに、上記プラグ本体は、上記コンセントと対向する面のほぼ中央部分に凹部を備え、
上記各プラグ栓刃は、上記プラグ本体に並べて配置された状態で、外側の各端部が固定端としてそれぞれ上記プラグ本体内に埋設され、互いに対向する内側の各端部が可動端として上記凹部内に配置され、
上記凹部内には、常温状態においては上記腹部を膨らませて上記受け刃内に圧接するように上記各可動端間を所定距離に保ち、上記プラグ栓刃が常温以上の所定の温度に熱せられたときには上記各可動端間の距離を縮めて上記腹部の膨らみを消失させる熱的に変形するスペーサが設けられていることを特徴とする電源プラグ。
【請求項2】
上記スペーサが熱収縮性合成樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の電源プラグ。
【請求項3】
上記スペーサの中央部分に折損を誘起させる溝が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電源プラグ。
【請求項4】
上記固定端側の幅が上記金属板の右側もしくは左側のいずれか一方の半分幅であり、上記可動端側の幅がいずれか他方の半分幅であることを特徴とする請求項1に記載の電源プラグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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