説明

電源制御装置

【課題】 DC−DCコンバータにおいて、電源オフ時の残留電荷を急激に逃がせるようにする。
【解決手段】 第1のスイッチング部Q1は一端が直流電源に接続され、第2のスイッチング部Q2は第1のスイッチング部Q1に一端が直列接続され他端が共通電位に接続される。コントロール部1は、第1、第2のスイッチング部Q1、Q2を高周波周期で交互にオンオフスイッチングさせて第1、第2のスイッチング部Q1、Q2の接続点P1の電位を可変する。平滑回路5は、平滑コンデンサCを有し接続点P1の電位を平滑して負荷側へ直流電源を供給する。スイッチ部SWは、電源オフ制御信号S3に基づき第2のスイッチング部Q2をオン状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電源制御装置に係り、例えば、電子写真方式の複写機、ファクシミリ機、プリンタ又はこれらの機能を搭載した複合機(MFP:Multi Function Peripheral)等の画像形成装置に用いて好適する電源制御装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置にあっては、一般に、原稿上の画像情報から画像データを光学的に読み取り、その画像データに基づきトナー像を形成して用紙に転写定着させて印刷する印刷(印字)機能の他、画像データに対する種々の画像処理機能、画像データをファクシミリ送受信するファクシミリ機能、その他種々の画像データ処理機能を有している。
【0003】
そして、画像形成装置では、それら諸機能を実現するために、種々の電子回路やモータ等の構成要素を有しており、DC−DCコンバータを用いて異なる電圧の直流電源を生成してそれらに供給している。
【0004】
ところが、それら構成要素を確実に起動動作させるためには、図3Aに示すように、電源オン時に種々のDC−DCコンバータを起動して所望レベルの直流電源を生成するとともに、電源オフ時にそれらDC−DCコンバータからの直流電源を速やかに低下させることが求められる。図3の波形は個々のDC−DCコンバータからの直流電源電圧である。
【0005】
特に近年、電子回路毎にCPUを搭載して制御する構成が増加し、供給電源のオンオフ順序(シーケンス)が決められる傾向にある。
【0006】
このような状況の下で、電源をオフして動作を停止させる場合、出力負荷が小さくなるとDC−DCコンバータに内蔵されたり外部接続された平滑用コンデンサの充電電荷によって残留電圧が残り易い。
【0007】
そのため、個々の電子回路において電源オフ時に残留電荷量によって誤動作を発生させる心配があり、複数のDC−DCコンバータによって異なる電源を生成して動作させる電子回路にあっては、負荷によって電源オフ時の残留電荷量が異なり、図3Bに示すように、電源をオフしても残留電圧の影響によって残留電源電圧の逆転を生じ、動作シーケンスを崩してしまうので、速やかに残留電荷を逃がす工夫が求められている。
【0008】
従来、残留電荷を逃がす構成として、例えば特開2000−102248号公報(特許文献1)のような多出力スイッチング電源装置が提案されている。
【0009】
この特許文献1は、1次直流電圧検出回路とスイッチ回路と放電回路とを有し、1次直流電圧検出回路により2次側巻線に誘起される電力の負の電圧を整流平滑することによって得られる比較電圧を検出し、この比較電圧の絶対値が基準電圧以下であると、直流電圧の供給を遮断するようにスイッチ回路を強制的に開動作させるとともに、放電回路により直流電圧の出力端子に接続された外部負荷側の蓄積電荷を放電させる構成を有し、コストの上昇を招くことなく、交流電力の入力が遮断されたときに、出力側の負荷状態に影響されずに複数の出力電圧をそれぞれ所定の順序で降下させるシーケンスを確実に実行できるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−102248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した特許文献1では、交流入力電源から複数の電源を生成する場合の電源オフシーケンスに関して、トランスの2次巻線からの検出電圧を使用してトランジスタ等の放電手段により電荷を放電する構成であるから、残留電荷を放電するために、トランジスタ等のデバイスを新たに追加して回路構成を付加する必要があり、コストアップとなってしまう難点がある。
【0012】
もっとも、電源オフ時の残留電荷を逃がすためにブリーダ抵抗を挿入する方法もあるが、通常動作時にも電流を流してしまうため、消費電力効率が良くない。
【0013】
本発明はそのような課題を解決するためになされたもので、電源効率を低下させることなく、追加部品数も極力少なくして電源オフ時の残留電荷を速やかに放電することが可能な電源制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのような課題を解決するために本発明の請求項1に係る電源制御装置は、一端が直流電源に接続された第1のスイッチング部と、この第1のスイッチング部に一端が直列接続され他端が共通電位に接続された第2のスイッチング部と、それら第1および第2のスイッチング部を高周波周期で交互にオンオフスイッチングさせて第1および第2のスイッチング部の接続点の電位を可変するコントロール部と、平滑コンデンサを有しその接続点の電位を平滑して負荷側に直流電源を供給する平滑部と、電源オフ制御信号に基づき第2のスイッチング部をオン状態にするスイッチと、を具備している。
【0015】
本発明の請求項2に係る電源制御装置は、前記第1のスイッチング部がオフのときのみ、前記電源オフ制御信号に基づき前記第2のスイッチング部をオン状態にするスイッチ制御部を備える構成である。
【発明の効果】
【0016】
このような本発明の請求項1に係る電源制御装置では、第1および第2のスイッチング部を高周波周期で交互にオンオフスイッチングさせて第1および第2のスイッチング部の接続点の電位を可変する状況において、電源オフ制御信号が入力されたとき、第2のスイッチング部をオン状態にするから、電源オフ時に、残留電荷が第2のスイッチング部を介して放電され、残留電荷を速やかに放電することが可能で、電源効率を低下させることなく、追加部品数も極力少なくすることが可能である。
【0017】
本発明の請求項2に係る電源制御装置では、第1のスイッチング部がオフのときのみ、電源オフ制御信号に基づき第2のスイッチング部をオン状態にするスイッチ制御部を備えるから、第1および第2のスイッチング部が同時にオンとなることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る電源制御装置の実施の形態を示す概略回路図である。
【図2】本発明に係る電源制御装置の動作を説明する波形図である。
【図3】従来の電源制御装置における参考となる動作を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る電源制御装置の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0020】
図1は本発明に係る電源制御装置の実施の一形態を示す概略回路図である。
【0021】
図1において、例えば5Vの直流電源と共通電位であるアースの間には、第1のスイッチング部Q1および第2のスイッチング部Q2が直列接続されており、第1のスイッチング部Q1が高電位側(H側)に、第2のスイッチング部Q2が低電位側(L側)に位置している。
【0022】
第1のスイッチング部Q1は5Vの直流電源にドレインが接続された例えばN型FET(電界効果トランジスタ)であり、第2のスイッチング部Q2はドレインが第1のスイッチング部Q1のソースに接続され、ソースがアースに接続された同じN型FETである。
【0023】
第1のスイッチング部Q1のゲートにはコントロール部1からのオンオフ制御信号S1が接続されている。
【0024】
第2のスイッチング部Q2のゲートにはスイッチSWからの出力信号S4が接続され、このスイッチSWの入力には、コントロール部1からのオンオフ制御信号S2と5Vの直流電源が接続されている。
【0025】
スイッチSWの切替え信号入力部aには、スイッチ制御部3からの制御信号S5が接続されている。スイッチSWは、この制御信号S5に基づき出力信号S4として、コントロール部1のオンオフ制御信号S2と5Vの直流電源(すなわち「H」状態)のいずれかを選択出力する機能を有する。
【0026】
コントロール部1は、所定の直流電源、例えば上述した5Vの直流電源によって動作し、第1および第2のスイッチング部Q1、Q2を高周波周期で交互にオンオフスイッチングさせ、第1および第2のスイッチング部Q1、Q2の接続点P1の電位を可変する機能を有している。
【0027】
すなわち、コントロール部1は、5Vの直流電源を例えば1MHzの高周波オンオフ制御信号S1、S2を第1および第2のスイッチング部Q1、Q2のゲートに印加し、第1および第2のスイッチング部Q1、Q2を1MHzで交互にオンスイッチングさせるものである。
【0028】
なお、第1および第2のスイッチング部Q1、Q2のゲートに印加するオンオフ制御信号S1、S2は、図2に示すように、「H」状態と「L」状態が互いに逆位相になっている。
【0029】
コントロール部1は、図示しない電源のオフ状態を検出した電源オフ制御信号S3の入力によって、第1および第2のスイッチング部Q1、Q2のゲートに印加するオンオフ制御信号S1、S2を全て「L」状態にする機能を有している。
【0030】
図1中の符号3はスイッチ制御部であり、コントロール部1から第1のスイッチング部Q1のゲートに印加するオンオフ制御信号S1および電源オフ制御信号S3が入力され(図2参照)、双方の信号が「L」状態であれば、「H」状態をスイッチSWの切替え信号入力部aに制御信号S5として出力するロジック回路(AND回路)であり、コントロール部1と同様の電源で動作する。
【0031】
スイッチSWは、切替え信号入力部aの制御信号S5が「H」状態で5Vの直流電源(すなわち「H」状態)を選択し、「L」状態でコントロール部1のオンオフ制御信号S2を選択する機能を有する。
【0032】
なお、図1中の符号R1は抵抗であり、スイッチ制御部3による容量分を第1のスイッチング部Q1の動作に影響させないためのものである。
【0033】
第1のスイッチング部Q1のソースと第2のスイッチング部Q2のドレインとの接続点P1には、平滑コイルCHを介して平滑コンデンサCの一端が接続されており、平滑コンデンサCの他端がアースに接続され、平滑回路5が形成されている。
【0034】
平滑コイルCHと平滑コンデンサCとの接続点P2には図示しない負荷回路が接続されている。以上の回路が全体としてDC−DCコンバータを構成している。
【0035】
次に、本発明に係る電源制御装置の動作を図2を参照して簡単に説明する。
【0036】
電源がオン状態であって電源オン制御信号S3が「H」状態の下において、コントロール部1は5Vの直流電源によって動作し、第1および第2のスイッチング部Q1、Q2のゲートに対し、1MHzの互いに逆位相のオンオフ制御信号S1、S2を第1および第2のスイッチング部Q1、Q2のゲートに印加する。
【0037】
ここで、オンオフ制御信号S2は、スイッチSWの入力部に印加されるが、電源オン制御信号S3が「H」状態であり、スイッチ制御部3の制御信号S5が「L」となり、スイッチSWはコントロール部1のオンオフ制御信号S2を選択するので、オンオフ制御信号S2がそのまま出力信号S4として第2のスイッチング部Q2のゲートに印加される。
【0038】
これにより、第1および第2のスイッチング部Q1、Q2が1MHzで交互にオンスイッチングし、図2に示すように、第1および第2のスイッチング部Q1、Q2の接続点P1の電位が、それに合わせてノコギリ歯状に変化する。
【0039】
すなわち、第1のスイッチング部Q1がオンで第2のスイッチング部Q2がオフする期間では、接続点P1から電流が平滑コイルを介して平滑コンデンサCに流れてこれが充電されるとともに接続点P1の電圧が上昇し、第1のスイッチング部Q1がオフで第2のスイッチング部Q2がオンする期間では、平滑コンデンサCから平滑コイルCHおよび第2のスイッチング部Q2を介して電荷がアースに流れて平滑コンデンサCが放電するとともに接続点P1の電圧が降下する。
【0040】
一方、これらの過程で接続点P2の電圧が平滑回路3によって平滑され、負荷回路に直流電源が供給される。
【0041】
電源がオフされて電源オフ制御信号S3が「L」状態になると、コントロール部1から第1および第2のスイッチング部Q1、Q2のゲートに印加するオンオフ制御信号S1、S2が「L」状態になり、スイッチ制御部3の双方の入力が「L」状態となり、スイッチ制御部3の制御信号S5が「H」状態となる。これによってスイッチSWは、5Vの直流電源(すなわち「H」状態)を選択し、スイッチSWの出力信号S4が「H」状態となり、第2のスイッチング部Q2のみがオン状態となる一方、第1のスイッチング部Q1はオフ状態が維持される。
【0042】
そのため、平滑コンデンサCに充電された電荷が第2のスイッチング部Q2を介してアースに流れて放電され、平滑コンデンサCの残留得電荷が急激に減少して接続点P2の電位が急激に低下し、負荷回路への電源供給が停止される。
【0043】
ここで、スイッチ制御部3は、必ずしも必要ではなく、電源オフ制御信号S3をその信号レベルを反転させて、直接スイッチSWの制御信号S5として入力させても良い。
【0044】
なお、電源がオフされた時のコントロール部1、第1および第2のスイッチング部Q1、Q2の動作は、5Vの直流電源の残留電圧によってなされる。
【0045】
このように、本発明の電源制御装置は、一端が直流電源に接続された第1のスイッチング部Q1と、この第1のスイッチング部Q1に一端が直列接続され他端が共通電位に接続された第2のスイッチング部Q2と、それら第1および第2のスイッチング部Q1、Q2を高周波周期で交互にオンオフスイッチングさせて第1および第2のスイッチング部Q1、Q2の接続点P1の電位を可変するコントロール部1と、平滑コンデンサCを有しその接続点P1の電位を平滑して負荷側へ直流電源を供給する平滑回路5と、電源オフ制御信号に基づき第2のスイッチング部Q2をオン状態にするスイッチSWと、を具備している。
【0046】
そのため、電源オフ時には、平滑コンデンサCに充電された電荷が第2のスイッチング部Q2を介してアースに流れて放電され、平滑コンデンサCの残留得電荷が急激に減少し、負荷回路に対する残留電荷の影響を回避させることが可能である。
【0047】
しかも、スイッチSWは電源オンオフ時のみ動作制御するため、通常動作時の消費電力効率に影響を与えないし、第2のスイッチング部Q2をそのまま用い、スイッチSWを1個追加すれば構成可能であるから、追加部品点数が少なく、低コストでの実現が可能である。通常動作時にはスイッチSWが動作しないから、消費電力効率が良好で、電源効率も高く維持可能である。
【0048】
しかも、第1のスイッチング部Q1がオフのときのみ、電源オフ制御信号S3に基づき第2のスイッチング部Q2をオン状態にするスイッチ制御部3を備えるから、第1および第2のスイッチング部Q1、Q2が同時にオンとなることがなく、誤動作防止も可能である。
【0049】
特に、本発明の電源制御装置は、電源オフ時の負荷容量の違いによって供給電源の降下時間を異らせることが少なく、部品点数の増加およびコストアップを抑えて残留電荷を消費させ、電源オフ時のシーケンスを守れるから、直流電源から複数の直流電源を生成し、電源毎にオンオフシーケンスを取る必要がある構成において有用である。
【0050】
なお、本発明において、電源オフ制御とは、電源制御装置を搭載した装置全体の電源オフを検出した制御信号であったり、装置に配置された電源制御装置の搭載された個々の回路基板における電源オフを検出して制御信号を含むものである。
【0051】
ところで、本発明に係る電源制御装置は、複写、ファクシミリ機、複合機等の画像形成装置に限らず、種々の電子機器において実施可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 コントロール部
3 スイッチ制御部(ロジック回路)
5 平滑回路
C 平滑コンデンサ
CH 平滑コイル
Q1 第1のスイッチング部
Q2 第2のスイッチング部
P1、P2 接続点
SW スイッチ
S1、S2 オンオフ制御信号
S3 電源オフ制御信号
S4 出力信号
S5 制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が直流電源に接続された第1のスイッチング部と、
この第1のスイッチング部に一端が直列接続され他端が共通電位に接続された第2のスイッチング部と、
前記第1および第2のスイッチング部を高周波周期で交互にオンオフスイッチングさせて第1および第2のスイッチング部の接続点の電位を可変するコントロール部と、
平滑コンデンサを有し前記接続点の電位を平滑して負荷側に直流電源を供給する平滑部と、
電源オフ制御信号に基づき前記第2のスイッチング部をオン状態にするスイッチと、
を具備することを特徴とする電源制御装置。
【請求項2】
前記第1のスイッチング部がオフのときのみ、前記電源オフ制御信号に基づき前記第2のスイッチング部をオン状態にするスイッチ制御部を備える請求項1記載の電源制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−250584(P2011−250584A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121247(P2010−121247)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】