説明

電源回路の逆流防止回路

【課題】電圧降下を低減する。
【解決手段】逆流防止用のダイオードD1と並列にトランジスタQ1が接続される。直流電源12の正極、負極が、それぞれ、端子P2,P1に逆接続されたときは、逆電流が、直流電源12の負極から、端子P2、抵抗R2、ダイオードD2、端子P1を経由して、正極へと流れ、トランジスタQ1はオフする。一方、直流電源12の正極、負極が、それぞれ、端子P1,P2に接続されたとき、トランジスタQ1は、ゲート端子に、抵抗R1,R2とによって分圧された電圧が印加されてオンする。このトランジスタQ1のオン抵抗による電圧降下は、ダイオードD1の順方向電圧降下よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源回路の逆流防止回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
負荷としての電子回路は、直流電源によって電圧が印加され、駆動電流が供給されて駆動する。この電子回路に内蔵された電子部品には極性があり、駆動電流とは逆方向の逆電流が流れた場合、この電子回路が動作しなくなるおそれがある。
【0003】
このため、直流電源と電子回路との間に、直流電源が逆接続されたときに電子回路に逆電流が流れるのを防止する逆流防止回路を備えた電源回路がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この電源回路の逆流防止回路は、図3に示すように、ダイオードD11によって構成され、電子回路1と直流電源2との間に、駆動電流が流れるようにダイオードD11が接続される。そして、直流電源2が極性を逆して接続された場合に、このダイオードD11は、逆電流が流れようとするのを阻止し、電子回路1を保護するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−8440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、例えば、シリコンダイオードでは、通電時にダイオードの順方向電圧降下(VF)により、約0.6V電圧降下が生じてしまい、電力損失も生じてしまう。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、電圧降下を低減することが可能な電源回路の逆流防止回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る電源回路の逆流防止回路は、
極性を有する負荷に電圧を印加して前記負荷に駆動電流を供給する直流電源の正極接続用の正極接続端子と、
前記直流電源の負極接続用の負極接続端子と、
前記正極接続端子から前記負荷を介して前記負極接続端子へと流れる前記駆動電流は通過させ、前記駆動電流とは逆方向に流れようとする逆電流を阻止する向きに、前記負荷と前記負極接続端子又は前記正極接続端子との間に接続された逆流防止ダイオードと、
前記逆流防止ダイオードと並列に接続され、前記負荷に前記駆動電流が流れたときに、前記逆流防止ダイオードの順方向電圧降下よりも電圧降下が小さくなるようなオン抵抗を有する半導体素子と、
前記直流電源の前記正極、前記負極が、それぞれ、前記負極接続端子、前記正極接続端子に接続された逆接続状態になったときに前記半導体素子を非導通状態とし、前記正極、前記負極が、それぞれ、前記正極接続端子、前記負極接続端子に接続された正接続状態になったときに前記半導体素子を導通状態とする半導体素子駆動部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電圧降下を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る電源回路の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す逆流防止回路の動作を示す図であり、(a)は、直流電源が極性を逆にして接続された場合の電流の流れ、(b)は、直流電源が正常に接続された場合の電流の流れを示す。
【図3】従来の逆流防止回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る電源回路を図面を参照して説明する。
本実施形態に係る電源回路は、図1に示すように、電子回路11と、直流電源12と、逆流防止回路13と、を備える。
【0012】
電子回路11は、各種電子部品によって構成された負荷である。電子回路11に内蔵された電子部品には極性があり、電子回路11は、直流電圧が印加され、図中、矢印方向に駆動電流が供給されて正常に動作する。
【0013】
直流電源12は、電子回路11に直流電圧を印加して電流を供給する電源である。尚、図1では、直流電源12が正常に接続された場合の極性+、−を示す。
【0014】
逆流防止回路13は、直流電源12が極性を逆にして接続された場合に、電子回路11に正常時とは逆の逆電流が流れるのを防止して電子回路11を保護する回路であり、ダイオードD1,D2,D3と、トランジスタQ1と、抵抗R1,R2と、を備える。
【0015】
また、逆流防止回路13は、端子P1〜P4を備える。端子P1,P2は、それぞれ、直流電源12の正極接続用の正極接続端子、負極接続用の負極接続端子である。また、端子P3,P4は、電子回路11の接続用端子であり、電子回路11の一端、他端は、それぞれ、端子P3,P4に接続される。
【0016】
ダイオードD1は、直流電源12の正極、負極が、それぞれ、端子P1,P2に接続されたときに、端子P1から電子回路11を介して端子P2へと流れる駆動電流は通過させ、駆動電流とは逆方向に流れようとする逆電流を阻止する逆流防止ダイオードである。
【0017】
ダイオードD1のカソード端子、アノード端子は、それぞれ、端子P2,P4に接続される。このダイオードD1は、例えば、シリコン半導体によって形成され、その順方向電圧降下は、約0.7Vである。
【0018】
トランジスタQ1は、直流電源12が正常な極性で接続された場合には、オンし、極性を逆にして接続された場合には、オフして電子回路11を保護するための半導体素子である。トランジスタQ1は、例えば、NチャンネルMOSFET(Metal-Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)によって構成される。
【0019】
ダイオードD2は、トランジスタQ1に含まれるボディダイオードである。ボディーダイオードは、図1に示すように、カソード、アノードが、それぞれ、ドレイン、ソースに等価的に接続される。
【0020】
通常、NチャンネルMOSFETは、電流がドレイン端子からソース端子に流れるように接続されることが多い。しかし、本実施形態では、ダイオードD2を経由して逆電流が電子回路11に流れないように、トランジスタQ1は、通常時とは逆向きに接続される。
【0021】
即ち、トランジスタQ1のソース端子は、ダイオードD1のアノード端子に接続され、ドレイン端子は、ダイオードD1のカソード端子に接続される。
【0022】
抵抗R1,R2とダイオードD3とは、直流電源12の正極、負極が、それぞれ、端子P2,P1に接続された逆接続状態になったときにトランジスタQ1をオフ(非導通状態)とし、正極、負極が、それぞれ、端子P1,P2に接続された正接続状態になったときにトランジスタをオン(導通状態)とする回路である。
【0023】
このうち、抵抗R1,R2は、直流電源12の電圧を分圧して、分圧した電圧をトランジスタQ1のゲート端子に印加するための抵抗であり、抵抗R1の一端は、端子P1に接続される。
【0024】
抵抗R2の一端は、抵抗R1の他端に接続され、抵抗R2の他端は、端子P2に接続される。そして、トランジスタQ1のゲート端子は、抵抗R1,R2の接続点に接続される。
【0025】
抵抗R1,R2による分圧比は、トランジスタQ1のゲート端子に閾値電圧を超える電圧が印加されるような値に設定される。また、抵抗R1,R2の抵抗値は、抵抗による電力損失とFETのゲートを駆動可能な大きさに基づいて設定される。
【0026】
ダイオードD3は、直流電源12が極性を逆にして接続された場合に、導通して電流を端子P1へと流すための電流迂回ダイオードである。ダイオードD3のカソード端子は、端子P1に接続され、アノード端子は、トランジスタQ1のゲート端子に接続される。尚、このダイオードD3の順方向電圧降下VFは、約0.7Vであり、トランジスタQ1の閾値電圧よりも小さい。
【0027】
次に本実施形態に係る電源回路の動作を説明する。
図2(a)に示すように、極性を逆にして直流電源12が電子回路11に接続された場合、電流は、破線で示すように、直流電源12の正極から、端子P2、抵抗R2、ダイオードD3、端子P1を経由して、負極へと流れる。
【0028】
このため、トランジスタQ1のゲート−ソース間には、ダイオードD3の順方向電圧降下である約0.7Vの電圧しか生じなくなり、トランジスタQ1のドレイン−ソース間は非道通状態となる。
【0029】
トランジスタQ1にはボディダイオードであるダイオードD2が含まれているため、電子回路11への逆電流は、ダイオードD3とトランジスタQ1とダイオードD2とにより遮断され、電子回路11には、逆電流が殆ど流れなくなる。
【0030】
一方、図2(b)に示すように、直流電源12の正極、負極が、それぞれ、端子P1,P2に接続されて、直流電源12が正常に接続された場合、直流電源12の電圧は、抵抗R1,R2によって分圧され、トランジスタQ1のゲート端子には、接続点の分圧電圧が印加される。
【0031】
このため、トランジスタQ1は、ドレイン−ソース間が導通状態になってオンする。このため、直流電源12から供給される駆動電流は、破線で示すように、直流電源12の正極から、端子P1、電子回路11、トランジスタQ1のソース−ドレイン、端子P2を経由して、直流電源12の負極へと流れる。
【0032】
トランジスタQ1がオンしている時には、(ボディ)ダイオードD2とオン抵抗とが並列接続されることになり、トランジスタQ1のオン抵抗がダイオードD2の順方向電圧降下より小さい場合には、ダイオードD2には電流が殆ど流れず、駆動電流はトランジスタQ1のソース−ドレインを流れる。
【0033】
従って、トランジスタQ1のオン抵抗はできる限り小さい方が望ましく、本実施形態では、トランジスタQ1のFETの特性を利用して電圧降下を低減させている。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によれば、逆流防止用のダイオードD1と並列に、駆動電流が流れたときのオン抵抗による電圧降下がダイオードD1の順方向電圧降下よりも小さくなるトランジスタQ1が接続される。
【0035】
そして、抵抗R1,R2と、ダイオードD2により、電子回路11に駆動電流が流れたときは、トランジスタQ1を導通状態とし、逆電流が流れようとしたときは、トランジスタQ1を非導通状態とするようにした。
【0036】
従って、従来通り、直流電源12が極性を逆にして接続された場合の電子回路11の保護が可能であり、逆流防止回路13で生じる電圧降下を低減することができ、電力損失を低減させることもできる。
【0037】
尚、本発明を実施するにあたっては、種々の形態が考えられ、上記実施形態に限られるものではない。
例えば、上記実施形態では、逆流防止用のダイオードD1を端子P2と電子回路11との間に接続した。しかし、トランジスタQ1に含まれているダイオードD2を利用して、このダイオードD1を省くこともできる。
【0038】
上記実施形態では、半導体素子として、トランジスタQ1に、NチャンネルMOSFETを用いた。しかし、トランジスタQ1は、NチャンネルMOSFETに限られるものではなく、PチャンネルMOSFETであってもよい。
【0039】
ダイオードD1の接続位置は、端子P2と電子回路11との間に接続されるとは限らず、端子P1と電子回路11との間に接続されてもよい。この場合、トランジスタQ1も、同様に、ダイオードD1と並列に、端子P1と電子回路11との間に接続される。
【0040】
直流電源12が極性を逆にして接続された場合に、光、音等による警報を発するようにしてもよい。この場合、例えば、端子P2から、抵抗R2、ダイオードD3を経由して端子P1へと流れる電流経路と直列又は並列に、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)、ブザー等が接続される。
【符号の説明】
【0041】
11 電子回路
12 直流電源
13 逆流防止回路
D1 ダイオード
D2 ダイオード(ボディダイオード)
D3 ダイオード
FET
R1,R2 (分圧)抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性を有する負荷に電圧を印加して前記負荷に駆動電流を供給する直流電源の正極接続用の正極接続端子と、
前記直流電源の負極接続用の負極接続端子と、
前記正極接続端子から前記負荷を介して前記負極接続端子へと流れる前記駆動電流は通過させ、前記駆動電流とは逆方向に流れようとする逆電流を阻止する向きに、前記負荷と前記負極接続端子又は前記正極接続端子との間に接続された逆流防止ダイオードと、
前記逆流防止ダイオードと並列に接続され、前記負荷に前記駆動電流が流れたときに、前記逆流防止ダイオードの順方向電圧降下よりも電圧降下が小さくなるようなオン抵抗を有する半導体素子と、
前記直流電源の前記正極、前記負極が、それぞれ、前記負極接続端子、前記正極接続端子に接続された逆接続状態になったときに前記半導体素子を非導通状態とし、前記正極、前記負極が、それぞれ、前記正極接続端子、前記負極接続端子に接続された正接続状態になったときに前記半導体素子を導通状態とする半導体素子駆動部と、を備えた、
ことを特徴とする電源回路の逆流防止回路。
【請求項2】
前記半導体素子駆動部は、前記直流電源の電圧を分圧した分圧電圧を前記半導体素子のゲート端子に印加する分圧抵抗と、
アノードが前記分圧抵抗の接続点に接続され、カソードが前記正極接続端子に接続され、前記半導体素子の閾値電圧よりも低い順方向電圧降下を有する電流迂回ダイオードと、によって構成された、
ことを特徴とする請求項1に記載の電源回路の逆流防止回路。
【請求項3】
前記半導体素子は、Nチャンネル電界効果トランジスタによって構成され、ドレイン端子、ソース端子が、それぞれ、前記逆流防止ダイオードのカソード端子、アノード端子に接続されたものである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電源回路の逆流防止回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−130621(P2011−130621A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288576(P2009−288576)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(300022353)NECライティング株式会社 (483)
【Fターム(参考)】