説明

電源回路

【課題】増幅器に用いられる電源回路において、例えば、90%近いDC成分について効率の良い動作速度でDC/DCコンバータ15を動作させる。
【解決手段】増幅器に用いられる電源回路において、電圧源となる線形増幅器(オペアンプ)12と、電流源となるDC/DCコンバータ15と、DC/DCコンバータ15の制御を行うヒステリシスコンパレータ13と、線形増幅器(オペアンプ)12からの出力電流を検出してヒステリシスコンパレータ13へ出力する電流検出器14を有する増幅器から構成される。そして、ヒステリシスコンパレータ13への入力側に低域フィルタ21を備えて、クラスD増幅器の動作周波数を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源回路に関し、特に、90%近いDC付近成分について効率の良い動作速度でDC/DCコンバータを動作させる電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CDMA(Code Division Multiple Access)信号やマルチキャリア信号のような無線周波信号を電力増幅する場合には、共通増幅器に歪補償機能を付加して、共通増幅器の動作範囲を飽和領域付近にまで広げることで、低消費電力化が図られていた。歪補償機能として、フィードフォワード歪補償機能やプリディストーション歪補償機能などがあるが、歪補償だけでは低消費電力化に限界が近付いている。このため、近年、飽和型の増幅器を使用して高効率化する方法が注目されている。特に、飽和型の増幅器の電源を変動させる方式が有効であると考えられている。
【0003】
図5には、従来技術に係る飽和型の増幅器を用いて電源を変動させるEER(Envelope Elimination and Restoration)方式の構成例を示してある。
本構成例では、入力端101と出力端102との間に、分配器111と、一方の分配経路に設けられる包絡線検出器112及び電源回路113と、他方の分配経路に設けられるRF(Radio Frequency)リミット増幅器114及び主増幅器115を備えている。
【0004】
入力端101から入力されたRF信号が、分配器111により分配される。
分配された信号の一方については、包絡線検出器112により包絡線が検出され、検出された包絡線の信号(振幅情報)に従って電源回路113の電源出力が変動させられる。
分配された他方のRF信号については、RFリミット増幅器114により振幅変動分が取り除かれて、位相成分の情報のみを保ちながら主増幅器115により飽和状態で増幅される。
ここで、主増幅器115の電源(電源回路113からの電源)は振幅情報に従って変動するため振幅情報は復元され、増幅器は常に飽和状態で使用されるため効率が良い。
【0005】
また、CDMA信号やマルチキャリア信号のような広帯域の包絡線情報の帯域は広く高速に動作する電源回路として、図6に示されるような電源を変動させる包絡線増幅器が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
図6には、電源を変動させる包絡線増幅器の構成例(電源回路の構成例)を示してある。
この方法では、オーディオアンプなどに採用されているリニア増幅器で補助されたスイッチング電源を応用している。一般的には、リニアアシストクラスBD増幅器と言われている(例えば、非特許文献2、非特許文献3参照。)。
【0006】
本例の包絡線増幅器は、入力端1と出力端2との間に、オペアンプ12と、ヒステリシスコンパレータ13と、電流検出器14と、DC(Direct Current)/DCコンバータ15を備えている。
DC/DCコンバータ15は、電圧電源31と、スイッチ素子32と、ダイオード33と、インダクタンス34から構成されている。
また、図6には、ノードP、P1、P2を示してある。
【0007】
このように、この回路は、広帯域な電圧源のオペアンプ12と、高効率なDC/DCコンバータ15と、制御回路であるヒステリシスコンパレータ13及び電流検出器14で構成されている。
この回路の動作は、(1)追従モードと、(2)非追従モードに分かれる。
【0008】
(1)追従モードについて説明する。
図5に示される包絡線検出器112で検出された信号が、入力端1に入力され、オペアンプ12により電圧源へ変換される。包絡線検出器112からの出力がDC分である場合には、電流検出器14のノードP1の電圧が上がり、ヒステリシスコンパレータ13がスイッチ素子32をオンさせるように動く。スイッチ素子32とインダクタンス34の接続点のノードPに電源電圧31が印加され、インダクタンス34を経由して出力端2の電圧が徐々に上昇する。
【0009】
出力端2がオペアンプ12からの出力より高くなるとノードP2が高くなり、ヒステリシスコンパレータ13はスイッチ素子32をオフさせる。インダクタンス34を流れていた電流はダイオード33経由で流れ、出力端2は徐々に低下し、ヒステリシスコンパレータ13はスイッチ素子32をオンさせて、繰り返し動作になる。すなわち、自ら発振して制御する。
この自励周波数は自由度のあるヒステリシス幅とインダクタンス34で決まるが、高く設定すると、スイッチング損出が増加し或いはスイッチ素子32の限界値を超えるため、限度はある。
【0010】
また、包絡線検出器112からの出力がDCとAC成分でありそれが低周波分である場合には、先ほどのDCの場合と同様に、DC/DCコンバータ15のPWM(Pulse Width Modulation)が追従して、出力電力は効率が良いDC/DCコンバータから供給される。
【0011】
(2)非追従モードについて説明する。
包絡線検出器112からの出力がDCとAC成分でありそれが高周波に高くなると、DC/DCコンバータ15のPWMは追従しなくなり、オペアンプ12から供給することになる。このとき、電流検出器14のノードP1とノードP2の両端にDC電流とAC高周波成分が発生し、ヒステリシスコンパレータ13からの出力はAC成分の高周波を基本とする周波数でスイッチ素子32を動かす。
【0012】
この電源回路の効率を図る方法としては、例えば、自励周波数を高くして追従することができるAC成分を高い周波数(高域分)にまで可能にすることだが、WIMAXやLTEなどの通信システムの帯域は広く、また、包絡線信号の帯域は更に広くなり限度がある。
従って、追従モードの場合には、DC/DCコンバータ15から出力端2へ供給して効率が良く、また、非追従モードの場合には、AC分はオペアンプ12からの供給となり、DC分はオペアンプ12と効率の悪くなったDC/DCコンバータ15からの供給となる。
【0013】
図7(a)には、追従モード(DC)におけるノードPの電圧の時間変化の一例を示してある。横軸は時間tを表しており、縦軸はノードPの電圧を表している。
図7(b)には、追従モード(DC)における電流検出器14の電圧の時間変化の一例を示してある。横軸は時間tを表しており、縦軸は電流検出器14の電圧を表している。
図8(a)には、非追従モード(DC+AC)におけるノードPの電圧の時間変化の一例を示してある。横軸は時間tを表しており、縦軸はノードPの電圧を表している。
図8(b)には、非追従モード(DC+AC)における電流検出器14の電圧の時間変化の一例を示してある。横軸は時間tを表しており、縦軸は電流検出器14の電圧を表している。
【0014】
図7(a)、(b)に示されるように、追従モードのDC成分の場合には、ノードPの電圧は矩形波となり高効率スイッチング動作するが、図8(a)、(b)に示されるように、非追従モードのDC及びAC高周波の場合には、スイッチング動作が入力と同じ高域分周波数となり、ノードPの波形が矩形波から台形波になりスイッチングロスが増大する。
【0015】
【非特許文献1】“An Improved Power−Added Efficiency 19−dBm Hybrid Envelope Elimination and Restoration Power Amplifier for 802.11g WLAN Applications”、IEEE MTT、VOL.54、NO.12、2006
【非特許文献2】“A Class B Switch−Mode Assisted Linear Amplifier”、IEEE PE、VOL.18、NO.6、2003
【非特許文献3】“Series− or Parallel−Connected Composite Amplifiers”、IEEE PE No.1、1986
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
図9には、WIMAXやLTEなどの通信システム等における包絡線信号のスペクトラムの累積確率密度分布の一例を示してある。横軸は周波数(MHz)を表しており、縦軸は累積確率密度分布(%)を表している。
図9に示されるように、WIMAXやLTEなどの通信システム等における包絡線信号のスペクトラムはDC付近成分が90%近くまであり、非追従モードの場合には、DC付近成分を効率の悪いスイッチング速度でDC/DCコンバータ15が動作することになる。
本発明は、このような従来の事情に鑑み為されたもので、90%近いDC付近成分について効率の良い動作速度でDC/DCコンバータを動作させることができる電源回路を提供することを目的とする。また、本発明は、電源回路全体として高効率にすることができる電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明では、増幅器に用いられる電源回路において、次のような構成とした。
すなわち、電圧源となる線形増幅器と、電流源となるDC/DCコンバータと、前記DC/DCコンバータの制御を行うヒステリシスコンパレータと、前記線形増幅器からの出力電流を検出して前記ヒステリシスコンパレータへ出力する電流検出器を有する増幅器から電源回路を構成した。そして、前記ヒステリシスコンパレータへの入力側に低域フィルタを備えて、前記DC/DCコンバータの動作周波数を制限するようにした。
従って、例えば、90%近いDC付近成分について効率の良い動作速度でDC/DCコンバータを動作させることができる電源回路を実現することができる。
【0018】
本発明では、増幅器に用いられる電源回路において、次のような構成とした。
すなわち、電圧源となる第1の線形増幅器と、電流源となる第1のDC/DCコンバータと、前記第1のDC/DCコンバータの制御を行う第1のヒステリシスコンパレータと、前記第1の線形増幅器からの出力電流を検出して前記第1のヒステリシスコンパレータへ出力する第1の電流検出器を有する増幅器から電源回路を構成した。
そして、前記第1の線形増幅器の電源回路として、電圧源となる第2の線形増幅器と、電流源となる第2のDC/DCコンバータと、前記第2のDC/DCコンバータの制御を行う第2のヒステリシスコンパレータと、前記第2の線形増幅器からの出力電流を検出して前記第2のヒステリシスコンパレータへ出力する第2の電流検出器を有する増幅器を用いる。
従って、例えば、電源回路全体として高効率にすることができる電源回路を実現することができる。
【0019】
本発明では、一構成例として、上記のような電源回路において、前記第1のヒステリシスコンパレータと前記第2のヒステリシスコンパレータの一方又は両方について、ヒステリシスコンパレータへの入力側に低域フィルタを備えて、前記第1のDC/DCコンバータと前記第2のDC/DCコンバータの一方又は両方の動作周波数を制限する。
従って、例えば、電源回路全体として高効率にすることができるとともに、90%近いDC付近成分について効率の良い動作速度でDC/DCコンバータを動作させることができる電源回路を実現することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明に係る電源回路によると、電源回路を構成するヒステリシスコンパレータへの入力側に低域フィルタを備えて、クラスD増幅器の動作周波数を制限することにより、例えば、90%近いDC付近成分について効率の良い動作速度でDC/DCコンバータを動作させることができ、また、電源回路の線形増幅器に同様な電源回路を適用することにより、例えば、電源回路全体として高効率にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る実施例を図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施例に係る包絡線増幅器の構成例(電源回路の構成例)を示してある。なお、説明の便宜上から、図6に示されるものと同様なものについては同一の符号を用いて示すが、本発明を不要に限定する意図はない。
本例の包絡線増幅器は、入力端1と出力端2との間に、波形整形器11と、オペアンプ12と、ヒステリシスコンパレータ13と、電流検出器14と、コンデンサ21と、DC/DCコンバータ15を備えている。
DC/DCコンバータ15は、電圧電源31と、スイッチ素子32と、ダイオード33と、インダクタンス34から構成されている。
また、図1には、ノードP1、P2を示してある。
【0022】
具体的には、入力端1に波形整形器11の入力端が接続されており、波形整形器11の出力端がオペアンプ12の1つの入力端に接続されており、オペアンプ12の出力端に電流検出器(本例では、抵抗)14の一端が接続されており、電流検出器14の他端が出力端2に接続されている。電流検出器14の両端のノードP1、P2に当該電流検出器14に並列にコンデンサ21が接続されており更にその先にヒステリシスコンパレータ13の2つの入力端が接続されている。スイッチ素子32には電源電圧31と制御用のヒステリシスコンパレータ13の出力端が接続されており、スイッチ素子32のもう1つの端がインダクタンス34の一端と接続されており、インダクタンス34の他端が出力端2と接続されている。接地されたダイオード33が接地端から反対側への方向を順方向として前記インダクタンス34の前記一端と接続されている。
【0023】
本例の包絡線増幅器では、例えば図6に示される回路構成と比べて、波形整形器11と低周波パス用のコンデンサ21を追加してある。
この高周波除去のコンデンサ21を追加することにより、電流検出器14で高域成分を未検出として、ヒステリシスコンパレータ13は入力の低域分のみ比較し、DC/DCコンバータ15のスイッチング周波数を抑えることが可能となる。すなわち、90%位のDC付近のエネルギーを高効率で動作させることが可能である。
【0024】
従来では入力信号(包絡線信号)の高出力で帯域が広い場合には対応するスイッチング素子がなく高効率が得られなかったが、本提案の高域信号除去フィルタ(本例では、コンデンサ21によるフィルタ)を採用することにより高効率が可能となる。また、低速度である低価格のスイッチング素子やドライバ(図示せず)を使用することもでき、EER方式の価格上昇を抑えることもできる。
【0025】
図4(a)には、波形整形器11の入力電圧の時間変化の一例を示してある。横軸は時間tを表しており、縦軸は入力電圧を表している。
図4(b)には、波形整形器11の出力電圧の時間変化の一例を示してある。横軸は時間tを表しており、縦軸は出力電圧を表している。
波形整形器11は、図4(a)(b)に示されるように、入力電圧があるレベル以下である時にそれを一定電圧に保つものである。この理由は、出力端2の負荷である高周波増幅器が低電圧まで対応できないことから、準EER方式或いはET方式にするためである。
【0026】
なお、本例では、原理を示すために、図5で包絡線検出器112をアナログイメージで説明したが、他の構成例として、振幅情報が分かるブロック部(例えば、デジタル信号処理部など)を用いて、波形整形の部分を含めて回路が作られてもよい。
【0027】
図2には、他の構成例に係る包絡線増幅器の構成例(電源回路の構成例)を示してある。なお、説明の便宜上から、図1に示されるものと同様なものについては同一の符号を用いて示す。
本例の包絡線増幅器は、入力端1と出力端2との間に、波形整形器11と、オペアンプ12と、オペアンプ41と、4つの抵抗51〜54と、電流検出器42と、ローパスフィルタ(LPF)43と、ヒステリシスコンパレータ44と、DC/DCコンバータ15aを備えている。
DC/DCコンバータ15aは、電圧電源31と、スイッチ素子32と、ダイオード33aと、インダクタンス34aから構成されている。
また、図1には、ノードP3、P4を示してある。
【0028】
具体的には、入力端1に波形整形器11の入力端が接続されており、波形整形器11の出力端がオペアンプ12の1つの入力端に接続されており、オペアンプ12の出力端に電流検出器(本例では、抵抗)42の一端が接続されており、電流検出器42の他端が出力端2に接続されている。電流検出器42の両端のノードP3、P4のそれぞれに抵抗52、53が接続されており更にその先にオペアンプ41の2つの入力端が接続されている。また、電源電圧を供給するための抵抗51の一端がオペアンプ41の一方の入力端に接続されており、オペアンプ41の他方の入力端と出力端とが抵抗54を介して接続されている。オペアンプ41の出力端がローパスフィルタ43の一端に接続されており、ローパスフィルタ43の他端がヒステリシスコンパレータ44の入力端に接続されている。スイッチ素子32には電源電圧31と制御用のヒステリシスコンパレータ44の出力端が接続されており、スイッチ素子32のもう1つの端がインダクタンス34aの一端と接続されており、インダクタンス34aの他端が出力端2と接続されている。接地されたダイオード33aが接地端から反対側への方向を順方向として前記インダクタンス34aの前記一端と接続されている。
【0029】
図2に示される包絡線増幅器の回路では、例えば図1に示される回路に対して、抵抗51〜54とオペアンプ41からなる差動増幅器で電流を検出して、ローパスフィルタ43で高域分を除去する構成となっており、例えば図1に示される回路と同様な効果を得ることができる。
【0030】
次に、更なる高効率化を図った構成例を示す。
図1や図2に示されるオペアンプ12は高域分の電力を全て供給するが、オペアンプ12の最終段がB級増幅器として構成されても、包絡線信号のピークファクタが高いため、ここでの消費電力は高くなる。
従って、このオペアンプ12の電源効率を上げることも重要である。
【0031】
図3には、オペアンプ12を準EER方式やET方式で構成した包絡線増幅器の構成例(電源回路の構成例)を示してある。ここで、準とした理由は、オペアンプの動作は電源電圧0Vに対応するのではなく最低数Vの電圧が必要となるためでる。
図3に示される回路の動作は、例えば図1に示される回路の動作と同様である。なお、説明の便宜上から、図1に示されるものと同様なものについては同一の符号を用いて示す。
【0032】
本例の包絡線増幅器は、入力端1と出力端2との間に、図1に示されるのと同様な回路11〜15、21を備えており、また、入力端1と波形整形器11との間に分配器61を備えている。そして、分配器61とオペアンプ12の電力供給端との間に、図1に示されるものと同様な回路を備えており、具体的には、波形整形器62と、オペアンプ63と、ヒステリシスコンパレータ64と、電流検出器(本例では、抵抗)65と、コンデンサ71と、DC/DCコンバータ66を備えている。
DC/DCコンバータ66は、電圧電源81と、スイッチ素子82と、ダイオード83と、インダクタンス84から構成されている。
また、図3には、ノードP1、P2及びノードP5、P6を示してある。
【0033】
図1には示されていない部分についての動作例を示す。
包絡線信号が入力端1に入り、分配器61により2分配される。2つの分配信号は、2つの波形整形器11、62に入力される。
波形整形器62では、1つの分配された信号について、入力電圧が低ければある程度の電圧を出力し、それ以上である場合には入力電圧をそのまま出力する。この様子は、図4(a)、(b)に示されるのと同様である。
【0034】
波形整形器62により波形整形された信号は、図1に示されるのと同様な動作を行う回路により処理されて、その結果の電力がオペアンプ12へ供給される。
オペアンプ12への供給電力のDC分は効率の良いDC/DCコンバータ66から供給し、AC分の内の高域分はオペアンプ63から供給する。
オペアンプ63の消費電力は、波形整形された信号は波形整形量にも因るがDC成分が多く交流分が少ないため、概ね、オペアンプ12の消費電力の10%程度でありそれほど多くは無い。従って、オペアンプ12は高効率に動作する。
なお、分配器61により分配されたもう1つの信号は、波形整形回路11を経由してオペアンプ12の入力端に入り、後の動作は図1や図2に示されるものと同様である。図3の高域分除去のコンデンサ21、71を図2のLPFにしてもよい。
【0035】
ここで、図1に示される回路と図3に示される回路について、概略的な効率を求める。次の条件(条件1)〜(条件4)を用いる。
(条件1)DC/DCコンバータ15及びDC/DCコンバータ66は、共に、効率が93%である。
(条件2)DC/DCコンバータ15及びDC/DCコンバータ66の動作周波数1.5MHzでエネルギーの85%を供給する。
(条件3)オペアンプ12及びオペアンプ63の増幅帯域1.5MHz〜でエネルギーの15%を供給する。
(条件4)オペアンプ12及びオペアンプ63の平均効率は20%である。
【0036】
このような条件において、図1に示される回路の全体の効率Z1は、次のようになる。
Z1=1/(0.85/0.93+0.15/0.2)=0.6
また、図3に示される回路の全体の効率Z2は、次のようになる。
Z2=1/(0.85/0.93+0.15/(0.85/0.93+0.15/0.2))=0.85
【0037】
このように、線形増幅器に使用する電源を包絡線情報により可変する電源としてリニアアシストクラスBD増幅器を使用し、リニアアシストクラスBD増幅器の電流検出後に低域フィルタ(ローパスフィルタ)を挿入して高域成分の情報を未検出として、クラスD増幅器(DC/DCコンバータ)の動作周波数を制限させて、高効率な電源回路を実現することができ、大幅に効率を上昇させることができる。
以上に述べたように、高域分を抑圧してDC/DCコンバータ15を動作させる方法と、オペアンプ12をET或いはEER(或いは、準EER)方式で高効率にする方法により、効率を向上させることができるが、例えば、要求される性能に合わせて各々が単独に用いられてもよい。
【0038】
ここで、波形整形器11、62やEER方式、準EER方式、ET方式について説明する。
図1や図2や図3に示される回路では、波形整形器11、63が挿入された実施形態を示した。この理由は、上述したように、本電源回路の負荷である高周波増幅器を駆動するためには一定以上の電圧が必要となることから必要となるためである。そして、この理由のために、図4(a)(b)に示されるように入力される包絡線波形を整形することを準EER方式と呼んでいる。
【0039】
なお、このような波形整形器自体は、現状において実際に本例のような増幅回路を実現する場合に波形整形器を用いて準EER方式とすることが多いために実施例として記載されたものであり、他の構成例として、波形整形器が備えられない構成が用いられてもよい。
【0040】
EER方式と、準EER方式と、ET方式については、概略としては、振幅成分の増幅に関して次のような違いがある。
EER方式では、基本的に、入力される振幅成分(包絡線)をそのまま電源回路で増幅する。
準EER方式では、波形整形器などを用いて、図4(a)(b)に示されるように波形整形を行い、常に電源回路から直流成分が出力されるようにする。
ET方式では、振幅成分(包絡線)に完全には追従せず、より低周波成分のみを電源回路により増幅して高周波増幅器を駆動する。
図10には、EER方式と、準EER方式と、ET方式について、それぞれの包絡線処理の様子の一例を示してある。
【0041】
以上のように、本例の包絡線増幅器(電源回路)は、例えば、EER方式などの増幅器に用いる電源回路(リニアアシストクラスBD増幅器)であり、次のような構成(構成例1)〜(構成例3)を有している。
(構成例1)リニアアシストクラスBD増幅器を構成するヒステリシスコンパレータ13、44、64への入力にローパスフィルタ(本例では、コンデンサ21や、ローパスフィルタ43や、コンデンサ71)を挿入することにより、クラスD増幅器の動作周波数を制限する。
具体的には、本例では、線形増幅器に使用する電源を包絡線情報により可変する電源としてリニアアシストクラスBD増幅器を使用し、リニアアシストクラスBD増幅器の電流検出後に低域フィルタを挿入して高域成分の情報を除去して、クラスD増幅器(DC/DCコンバータ)の動作周波数を制限させて、高効率な電源回路を実現している(例えば、図1や図2や図3の構成)。
【0042】
(構成例2)リニアアシストクラスBD増幅器を構成する線形増幅器(本例では、オペアンプ12)に同じくリニアアシストクラスBD増幅器を適用する。
具体的には、本例では、線形増幅器に使用する電源を包絡線情報により可変する電源としてリニアアシストクラスBD増幅器を使用し、当該リニアアシストクラスBD増幅器の電源についてもリニアアシストクラスBD増幅器を採用する(例えば、図3の構成)。
【0043】
(構成例3)上記した(構成例2)における2つのリニアアシストクラスBD増幅器については、(構成例1)との組み合わせ方について、全4パターンがある。すなわち、2つの増幅器のそれぞれについて上記した(構成例1)における低域フィルタ(LPF)を挿入するパターンと挿入しないパターンがある。
具体的には、両リニアアシストクラスBD増幅器の一方又は両方について、リニアアシストクラスBD増幅器の電流検出後に低域フィルタを挿入して、高域成分の情報を除去して、クラスD増幅器(DC/DCコンバータ)の動作周波数を制限させて、高効率な電源回路を実現している(例えば、両方に適用した図3の構成)。つまり、上記した(構成例2)において、2つのリニアアシストクラスBD増幅器のうち、少なくとも一方に低域フィルタ(LPF)が挿入されている。
【0044】
ここで、リニアアシストクラスBD増幅器自体は、公知の技術であるが、一例として、「電圧源となる線形増幅器(本例では、オペアンプ12、63)と、電流源となるDC/DCコンバータ(本例では、DC/DCコンバータ15、15a、66)と、前記DC/DCコンバータの制御を行うヒステリシスコンパレータ(本例では、ヒステリシスコンパレータ13、44、64)と、前記線形増幅器からの出力電流を検出して前記ヒステリシスコンパレータへ出力する電流検出器(本例では、電流検出器14、42、65)から構成される増幅器」と表すことができる。すなわち、高域分のみクラスBで供給するリニアアシストクラスBD増幅器とも言える。
【0045】
以上のように、本例の包絡線増幅器(電源回路)では、スイッチングの動作速度を抑えて、低コスト化及び高効率化し、更に、高周波を供給するリニア増幅器をEER(或いは、準EER)やETにすることにより、大幅に効率を向上させることができる。
【0046】
なお、図1に示される電源回路では、オペアンプ12(線形増幅器)、DC/DCコンバータ15、ヒステリシスコンパレータ13、電流検出器14、低域フィルタ(LPF)21を備えている。また、本例では、波形整形器11を備えている。
また、図2に示される電源回路では、オペアンプ12(線形増幅器)、DC/DCコンバータ15a、ヒステリシスコンパレータ44、電流検出器42、低域フィルタ(LPF)43を備えている。また、本例では、波形整形器11を備えている。
【0047】
また、図3に示される電源回路では、当該電源回路(主な電源回路)の構成として、第1のオペアンプ12(第1の線形増幅器)、第1のDC/DCコンバータ15、第1のヒステリシスコンパレータ13、第1の電流検出器14、第1の低域フィルタ(LPF)21を備えているとともに、当該電源回路(主な電源回路)に対する電源回路(副の電源回路)の構成として、第2のオペアンプ63(第2の線形増幅器)、第2のDC/DCコンバータ66、第2のヒステリシスコンパレータ64、第2の電流検出器65、第2の低域フィルタ(LPF)71を備えている
また、本例では、波形整形器11、62を両方の電源回路に備えたが、いずれか一方のみに備えられてもよく、或いは、両方に備えられなくてもよい。また、LPFは電流検出器からスイッチ素子までの間にあれば良い。
【0048】
ここで、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして提供することも可能であり、また、種々なシステムや装置として提供することも可能である。
また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、本発明は、種々な分野に適用することが可能なものである。
また、本発明に係るシステムや装置などにおいて行われる各種の処理としては、例えばプロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサがROM(Read Only Memory)に格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成が用いられてもよく、また、例えば当該処理を実行するための各機能手段が独立したハードウエア回路として構成されてもよい。
また、本発明は上記の制御プログラムを格納したフロッピー(登録商標)ディスクやCD(Compact Disc)−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体や当該プログラム(自体)として把握することもでき、当該制御プログラムを当該記録媒体からコンピュータに入力してプロセッサに実行させることにより、本発明に係る処理を遂行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施例に係る包絡線増幅器の構成例(電源回路の構成例)を示す図である。
【図2】他の構成例に係る包絡線増幅器の構成例(電源回路の構成例)を示す図である。
【図3】オペアンプを準EER方式で構成した包絡線増幅器の構成例(電源回路の構成例)を示す図である。
【図4】(a)は波形整形器の入力電圧の時間変化の一例を示す図であり、(b)は波形整形器の出力電圧の時間変化の一例を示す図である。
【図5】従来技術に係る飽和型の増幅器を用いて電源を変動させるEER方式の構成例を示す図である。
【図6】電源を変動させる包絡線増幅器の構成例(電源回路の構成例)を示す図である。
【図7】(a)は追従モード(DC)におけるノードPの電圧の時間変化の一例を示す図であり、(b)は追従モード(DC)における電流検出器の電圧の時間変化の一例を示す図である。
【図8】(a)は非追従モード(DC+AC)におけるノードPの電圧の時間変化の一例を示す図であり、(b)は非追従モード(DC+AC)における電流検出器の電圧の時間変化の一例を示す図である。
【図9】WIMAXやLTEなどの通信システム等における包絡線信号のスペクトラムの累積確率密度分布の一例を示す図である。
【図10】EER方式と準EER方式とET方式についてそれぞれの包絡線処理の様子の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1、101・・入力端、 2、102・・出力端、 11、62・・波形整形器、 12、41、63・・オペアンプ(演算増幅器)、 13、44、64・・ヒステリシスコンパレータ、 14、42、65・・電流検出器、 15、15a、66・・DC/DCコンバータ、 21、71・・コンデンサ、 31、81・・電源電圧、 32、82・・スイッチ素子、 33、33a、83・・ダイオード、 34、34a、84・・インダクタンス、 43・・ローパスフィルタ、 P1〜P6、P・・ノード、 51〜54・・抵抗、 61、111・・分配器、 112・・包絡線検出器、 113・・電源回路、 114・・RFリミット増幅器、 115・・増幅器(主増幅器)、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増幅器に用いられる電源回路において、
電圧源となる線形増幅器と、電流源となるDC/DCコンバータと、前記DC/DCコンバータの制御を行うヒステリシスコンパレータと、前記線形増幅器からの出力電流を検出して前記ヒステリシスコンパレータへ出力する電流検出器を有する増幅器から構成され、
前記電流検出器から前記ヒステリシスコンパレータへの入力側の間に低域フィルタを備えて、前記DC/DCコンバータの動作周波数を制限する、
ことを特徴とする電源回路。
【請求項2】
増幅器に用いられる電源回路において、
電圧源となる第1の線形増幅器と、電流源となる第1のDC/DCコンバータと、前記第1のDC/DCコンバータの制御を行う第1のヒステリシスコンパレータと、前記第1の線形増幅器からの出力電流を検出して前記第1のヒステリシスコンパレータへ出力する第1の電流検出器を有する増幅器から構成され、
前記第1の線形増幅器の電源回路として、電圧源となる第2の線形増幅器と、電流源となる第2のDC/DCコンバータと、前記第2のDC/DCコンバータの制御を行う第2のヒステリシスコンパレータと、前記第2の線形増幅器からの出力電流を検出して前記第2のヒステリシスコンパレータへ出力する第2の電流検出器を有する増幅器を用いる、
ことを特徴とする電源回路。
【請求項3】
請求項2に記載の電源回路において、
前記第1の電流検出器と前記第1のヒステリシスコンパレータの間と前記第2の電流検出器と前記第2のヒステリシスコンパレータの間の一方又は両方について低域フィルタを備えて、前記第1のDC/DCコンバータと前記第2のDC/DCコンバータの一方又は両方の動作周波数を制限する、
ことを特徴とする電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−154645(P2010−154645A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329679(P2008−329679)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】