説明

電源回路

【課題】出力電圧の安定化、及び消費電力の低減化を図ることができる電源回路を提供すること。
【解決手段】ポンプアップ用のキャパシタ51を備えたチャージポンプ回路52と、発振信号を出力する発振器53とを有し、前記発振器53の発振信号に基づいて、入力電圧Vinを前記チャージポンプ回路52に出力し前記キャパシタ51に電荷を蓄積して当該電荷に基づくコレクタ電源電圧Vccを生成するコレクタ電源回路50において、前記発振器53にRC発振回路を有し、前記RC発振回路に接続されて静電容量を可変し発振周波数を切り替える周波数切替用のキャパシタ71と、前記コレクタ電源電圧Vccに応じて前記周波数切替用のキャパシタ71を前記RC発振回路に接続、或いは切り離すスイッチング素子72とを有し、前記コレクタ電源電圧Vccに応じて、前記RC発振回路の発振周波数を複数段に切り替える発振周波数切替回路80を備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャージポンプ回路を有した電源回路に係り、特に負荷変動に伴う電圧変動を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既存の電源電圧に対して昇圧、降圧、若しくは極性を反転した出力電圧を出力する電力変換方式として、レギュレータ方式やスイッチング方式が主に用いられている。このうちスイッチング方式には、インダクタンスを用いるインダクタ方式と、キャパシタを用いるチャージポンプ方式とがある。
インダクタンス方式では、チョークコイル等のインダクタとスイッチングダイオードとをスイッチング制御ICに接続して電力変換回路が構成されるのに対し、チャージポンプ方式では、ポンプアップ用のキャパシタをスイッチング制御ICに接続することで電力変換回路が構成される。このため、チャージポンプ方式は、インダクタ方式に比べて省スペース、かつ安価に回路を構成できるという利点がある。
【0003】
しかしながら、チャージポンプ方式では、キャパシタにおける電荷の遷移(充放電)によって出力電圧を発生させるので、昇圧や極性反転した出力電圧を容易に出力できる反面、負荷電流が増加した場合には電圧降下しやすい傾向があるため、出力電圧の電圧変動が大きくなってしまう。そこで、キャパシタの充放電を切り替える(スイッチングする)スイッチング周波数を、予想される高負荷に対応して予め高く設定し充電速度を速くすれば、高負荷時でも出力電圧の電圧降下を抑えることができる。しかしながら、スイッチング周波数を高くするほど、キャパシタの充放電を切り替えるスイッチング素子のスイッチング損失が増加することから、消費電流が増加してしまう。
【0004】
そこで、従来、スイッチング素子によるスイッチングの1周期内において負荷への電力の供給、及び供給一時停止の切り替えを可能な電源回路を構成することで、充電電圧の制御をより高精度に行い、負荷動作時の電圧変動を抑制し出力電圧の安定化を図る技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2800741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかながら、従来の技術では、負荷への電力の供給、及び供給一時停止を切り替えるための回路構成が非常に複雑であり部品点数も多くなる、といった問題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、出力電圧の安定化とともに消費電力の低減化を図ることができる電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、ポンプアップ用のキャパシタを備えたチャージポンプ回路と、発振信号を出力する発振器とを有し、前記発振器の発振信号に基づいて、入力電圧を前記チャージポンプ回路に出力し前記キャパシタに電荷を蓄積して当該電荷に基づく出力電圧を生成する電源回路において、前記発振器にRC発振回路を有し、前記RC発振回路に接続されて静電容量を可変し発振周波数を切り替える周波数切替用のキャパシタと、前記出力電圧に応じて前記周波数切替用のキャパシタを前記RC発振回路に接続、或いは切り離すスイッチング素子とを有し、前記出力電圧に応じて、前記RC発振回路の発振周波数を複数段に切り替える発振周波数切替回路を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、出力電圧に応じて発振周波数が切り替わるため、出力電圧の低下が生じる高負荷時にだけ発振周波数を高めて出力電圧の低下を抑制できる。これにより、発振周波数を常時高めておく構成に比べ消費電流を抑えることができ、出力電圧の安定化と低消費電流化とを実現することができる。
また本発明によれば、RC発振回路に周波数切替用のキャパシタを接続し静電容量を可変して発振周波数を切り替える構成であるため、簡単な回路構成でありながらも、出力電圧の低下時に応答性良く速やかに発振周波数を切り変えることができる。
【0009】
また本発明は、上記電源回路において、前記スイッチング素子は、前記周波数切替用のキャパシタの一端に接続され、前記出力電圧に応じてオフしたときに前記周波数切替用のキャパシタの一端を開放して前記RC発振回路から切り離すことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、周波数切替用のキャパシタをRC発振回路に接続、或いは切り離すための回路をスイッチング素子だけで簡単に構成できる。
【0011】
また本発明は、上記電源回路において、前記発振周波数切替回路は、前記出力電圧の大きさが所定電圧を下回ったときに前記スイッチング素子のオン閾値を下回るように設定された分圧比で前記出力電圧を分圧し前記スイッチング素子に出力する分圧器を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、出力電圧が所定電圧を下回ったか否かを検出するための電圧検出回路を別途に設ける必要がなく、簡単な回路構成で、出力電圧に応じたスイッチング素子のオン/オフ動作を実現できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、出力電圧に応じて発振周波数が切り替わるため、出力電圧の低下が生じる高負荷時にだけ発振周波数を高めて出力電圧の低下を抑制できる。これにより、発振周波数を常時高めておく構成に比べ消費電流を抑えることができ、出力電圧の安定化と低消費電流化とを実現することができる。また、RC発振回路に周波数切替用のキャパシタを接続し静電容量を可変して発振周波数を切り替える構成であるため、簡単な回路構成でありながらも、出力電圧の低下時に応答性良く速やかに発振周波数を切り変えることができる。
また本発明において、前記スイッチング素子は、前記周波数切替用のキャパシタの一端に接続され、前記出力電圧に応じてオフしたときに前記周波数切替用のキャパシタの一端を開放して前記RC発振回路から切り離す構成としても良い。この構成によれば、周波数切替用のキャパシタをRC発振回路に接続、或いは切り離すための回路をスイッチング素子だけで簡単に構成できる。
また本発明において、前記発振周波数切替回路は、前記出力電圧の大きさが所定電圧を下回ったときに前記スイッチング素子のオン閾値を下回るように設定された分圧比で前記出力電圧を分圧し前記スイッチング素子に出力する分圧器を備える構成としても良い。この構成によれば、出力電圧が所定電圧を下回ったか否かを検出するための電圧検出回路を別途に設ける必要がなく、簡単な回路構成で、出力電圧に応じたスイッチング素子のオン/オフ動作を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るモータ駆動回路のブロック図である。
【図2】相電流検出回路の回路図である。
【図3】コレクタ電源電圧を出力するコレクタ電源回路の回路図である。
【図4】コレクタ電源回路の信号波形図であり、(A)は軽負荷時、(B)は高負荷時を示す。
【図5】エミッタ電源電圧を出力するエミッタ電源回路の回路図である。
【図6】エミッタ電源回路の信号波形図であり、(A)は軽負荷時、(B)は高負荷時を示す。
【図7】相電流検出回路の検出電流信号の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、本発明に係る電源回路の応用例として、電気自動車やハイブリッド車両が備える車両駆動用モータのモータ駆動回路を説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係るモータ駆動回路1のブロック図である。
同図に示すように、モータ駆動回路1は、車両に搭載された高圧の直流電源たるバッテリ3と、このバッテリ3の直流電力を交流電力に変換して車両駆動用モータ5に出力する電力変換装置4と、この電力変換装置4を制御するECU(Engine Control Unit)6とを備えている。
上記電力変換装置4は、車両駆動用モータ5の減速時に発生する回生エネルギーを回生する機能を有するものであり、昇降圧コンバータ7と、インバータ8とを備えている。
昇降圧コンバータ7は、ブレーキチョッパ装置として機能し、車両のモータ力行時にはバッテリ3から供給された直流電力を昇圧してインバータ8に出力し、モータ回生時にはインバータ8から出力された直流電力を高圧してバッテリ3へ出力する。かかる昇降圧コンバータ7は、リアクトル10と、スイッチング素子11A、11Bを有するチョッパ回路12と、キャパシタ13とを有して構成され、このキャパシタ13がバッテリ3に並列に接続され蓄電媒体として機能する。
【0017】
インバータ8は、ECU6の制御の下、モータ力行時には昇降圧コンバータ7からの直流電力を交流電力に変換して車両駆動用モータ5に出力し、モータ回生時には三相の車両駆動用モータ5が発電する電流を昇降圧コンバータ7に出力するものであり、スイッチング素子14A〜14Gを備えた三相のフルブリッジ回路により構成されている。
また、昇降圧コンバータ7とインバータ8との間には、チョッパ回路12の高周波スイッチング成分を抑制するためのキャパシタ15が設けられている。
【0018】
インバータ8と車両駆動用モータ5とを接続する電力線には、相毎に相電流を検出する電流センサ16が設けられており、また、昇降圧コンバータ7とバッテリ3の間にはバッテリ3の電流を検出する電流センサ16が設けられている。なお、モータ制御方式によっては、2相分の相電流を検出すれば良い場合もあり、また相電流からバッテリ電流を算出することも可能であり、このような場合には、電流センサ16の数を減らすことができる。
【0019】
ECU6は、昇降圧コンバータ7、及びインバータ8の各スイッチング素子11A、11B、14A〜14Gのゲート端子に信号を供給して駆動するゲートドライブ回路17と、車両側が備える上位のコンピュータからの制御命令に基づいてゲートドライブ回路17を制御して昇降圧コンバータ7、及びインバータ8を駆動する制御部18とを備えている。また、ECU6は、各電流センサ16の出力電圧に基づいて電流値を検出する相電流検出回路19、及びバッテリ電流検出回路20を有し、制御部18は、各相電流検出回路19の電流検出信号Vkに基づいて、車両駆動用モータ5の駆動のフィードバック制御をするとともに、バッテリ電流検出回路20の電流検出信号Vkに基づいてバッテリ残量の演算処理を行う。
【0020】
ここで、上記相電流検出回路19、及びバッテリ電流検出回路20は、電流センサ16の検出電流に応じて0〜Va[ボルト](例えばVa=5ボルト)の範囲の電圧を出力する。さらに詳述すると、電力変換装置4では、モータ力行時とモータ回生時とでは電流の流れる向きが逆になることから、かかる電流の向きを区別するために、相電流検出回路19、及びバッテリ電流検出回路20のそれぞれは、Va/2[ボルト](例えば2.5ボルト)を正逆の境にし、モータ回生時には0〜Va/2[ボルト]の範囲で電流値に比例した電圧の電流検出信号Vkを出力し、またモータ力行時にはVa/2[ボルト]〜Va[ボルト]の範囲で電流値に比例した電圧の電流検出信号Vkを出力する。
相電流検出回路19、及びバッテリ電流検出回路20のそれぞれの回路構成は、ほぼ同様であり、以下、相電流検出回路19を例にして電流検出の回路構成について説明する。
【0021】
図2は、相電流検出回路19の回路図である。
相電流検出回路19は、電流センサ16の出力(プラス・マイナス)を増幅して出力する増幅器30と、増幅器30の出力からノイズ成分を除去するRCフィルタ31と、RCフィルタ31を介して入力される増幅器30の出力電圧値を変換する電圧変換回路32とを備えている。
この電圧変換回路32は、オペアンプで構成された非反転増幅器33と、ダイオードクリップ回路36とを備えている。非反転増幅器33の入力端子には、RCフィルタ31を介して増幅器30の出力電圧が入力されるとともに、接地抵抗34を介してVa/2[ボルト]が常時入力されることで、増幅器30の出力電圧をVa/2[ボルト]を基準にオフセットした電圧が入力される。そして非反転増幅器33は、反転入力端子に接続された接地抵抗34、及び帰還抵抗35に応じた増幅率で、入力端子の入力電圧を増幅してダイオードクリップ回路36に出力する。ダイオードクリップ回路36は、Va[ボルト]の電源と、接地電位(本実施形態では0ボルト)とのそれぞれの間にダイオード37、38を備え、出力電圧を0〜Va[ボルト]の範囲にクリップする。これにより、上述のように、電圧変換回路32からは、Va/2[ボルト]を基準に、モータ回生時には0〜Va/2[ボルト]、モータ力行時にはVa/2[ボルト]〜Va[ボルト]の電圧の電流検出信号Vkが電流センサ16の出力に応じて出力されることとなる。
【0022】
また相電流検出回路19の入力段の増幅器30は、負帰還抵抗41を設けたオペアンプで構成された差動増幅回路40を備えている。この差動増幅回路40には、動作電源として、正電圧のコレクタ電源電圧Vcc(例えば+15ボルト)と、負電圧のエミッタ電源電圧Veeとが接続されている。この差動増幅回路40が出力する電圧V1は、内部回路による電圧降下の影響により、これら動作電源に依存してエミッタ電源電圧Vee(負電圧)<電圧V1<コレクタ電源電圧Vcc(=+15ボルト)となる。すなわち、これらエミッタ電源電圧Vee、及びコレクタ電源電圧Vccの電源には、電圧V1として出力すべき電圧範囲の上限及び下限の電圧値以上の電源電圧を安定して出力する電源を用いる必要があり、かかる電源について以下に説明する。
【0023】
図3は、コレクタ電源電圧Vccを出力するコレクタ電源回路50の回路図である。
コレクタ電源回路50は、ポンプアップ用のキャパシタ51を備えたチャージポンプ回路52と、発振信号を出力する発振器53と、この発振器53の発振信号に基づいて、入力電圧Vinをチャージポンプ回路52に印加しキャパシタ51に電荷を蓄積して当該電荷に基づく出力電圧としてのコレクタ電源電圧Vccを生成するドライバ回路54とを備え、さらに、このコレクタ電源電圧Vccに応じて、発振器53の発振信号の発振周波数を2段に切り替える発振周波数切替回路80と、を備えている。
さらに詳述すると、チャージポンプ回路52は、上記キャパシタ51と、整流用のダイオード55、56を備えて構成されている。キャパシタ51の両端の電位差がコレクタ電源電圧Vccとして上記相電流検出回路19、及びバッテリ電流検出回路20のそれぞれに供給される。
ドライバ回路54は、接地電位と、入力電圧Vinとの間にプッシュプル接続されたトランジスタ57、58と、これらのトランジスタ57、58を発振器53の発振信号に基づいて駆動する駆動トランジスタ59とを備え、当該駆動トランジスタ59の駆動によるチャージポンプ動作により、トランジスタ57、58の間の接続ノード60に入力電圧Vin及び接地電位のいずれかの電圧を出力する。この接続ノード60の電圧がチャージポンプ回路52にカップリングコンデンサ61を介して入力され、キャパシタ51への充電が行われる。
【0024】
発振器53は、CMOS型のシュミットトリガインバータ回路66と、このシュミットトリガインバータ回路66の出力端P1と入力端P2との間に設けられた抵抗67と、シュミットトリガインバータ回路66の入力端P2に接続された充放電用のキャパシタ68と、を備えたRC発振回路として構成され、シュミットトリガインバータ回路66の出力端P1には、バッファ用のシュミットトリガインバータ回路69が設けられている。シュミットトリガインバータ回路66、69は、入力電位に対するしきい値がHighレベルとLowレベルとで異なることで、入力電位の変化に対して出力状態がヒステリシスを持って変化するインバータロジックの論理ゲート回路である。
そして、かかる発振器53にあっては、シュミットトリガインバータ回路66が、抵抗67、及びキャパシタ68を直列に接続して成る充放電回路の充放電を、所定の周期で切り替えるスイッチ回路として機能する。これにより、出力端P1の電位がパルス状に連続的に変化して発振信号が生成され、抵抗65を通じてドライバ回路54の駆動トランジスタ59のゲート端子に入力される。
【0025】
発振器53の発振周波数は、抵抗67の抵抗値R、及びキャパシタ68の静電容量Cで規定され、発振周波数≒1/(C×R)となる。なお、より正確には、発振周波数は、シュミットトリガインバータ回路66、64のスレッショルド電圧VH、VLにも依存する。
【0026】
発振周波数切替回路80は、コレクタ電源電圧Vccが低下したときに発振器53の静電容量を可変することで、発振器53の発振周波数を高める回路である。すなわち、発振周波数切替回路80は、周波数切替用のキャパシタ71と、このキャパシタ71を発振器53に接続し、或いは切り離す切替用のトランジスタ72と、コレクタ電源電圧Vccを分圧した電圧をトランジスタ72のベースに印加してオン/オフ動作させる分圧器75とを備えている。
【0027】
周波数切替用のキャパシタ71は、発振器53が備えるシュミットトリガインバータ回路66の入力端P2にキャパシタ68と並列に接続され、或いは切り離されるものである。このキャパシタ71が発振器53のキャパシタ68に並列に接続されることで、これらキャパシタ71、63の合成により発振器53の発振周波数を規定する静電容量Cがキャパシタ71の分だけ増加し、発振周波数が低くなる。これとは逆に、キャパシタ71が発振器53から切り離されたときには、発振器53の発振周波数の静電容量Cがキャパシタ71の分だけ減少するため発振周波数が高くなり、これにより、キャパシタ71の接続、或いは切り離しにより、発振周波数が2段階に切り替えられる。
【0028】
切替用のトランジスタ72は、キャパシタ71の一端と、接地電位のラインとの間に設けられている。すなわち、このトランジスタ72がオンしたときには、キャパシタ71の一端が接地電位に接続されることで当該キャパシタ71が発振器53に接続され、また、オフしたときにはキャパシタ71の一端が開放することで発振器53から切り離される。
分圧器75は、抵抗73、74で規定される分圧比でコレクタ電源電圧Vccを分圧することで、コレクタ電源電圧Vccが所定電圧(例えば公称値であって本実施形態では15ボルト)を下回ったときにトランジスタ72をオフするものである。すなわち分圧器75の分圧比は、コレクタ電源電圧Vccが所定電圧を下回ったときに、分圧された電圧がトランジスタ72のオン閾値Thを下回るように設定されている。
【0029】
図4は、コレクタ電源回路50の信号波形図であり、図4(A)は軽負荷時、図4(B)は高負荷時を示す。なお、同図において、V2は発振器53のシュミットトリガインバータ回路66の入力端P2の電圧、V3は発振器53の発振信号、V4はチャージポンプ回路52への入力電圧、V5は発振周波数切替回路80のトランジスタ72のベース電圧を示す。
負荷が軽くコレクタ電源電圧Vccが所定電圧付近の電圧である間は、発振周波数切替回路80のトランジスタ72がオンするため、周波数切替用のキャパシタ71が発振器53に接続され、これにより発振周波数(発振信号V3の周波数)が低い周波数に維持される(図4(A))。
【0030】
一方、高負荷時においては、コレクタ電源電圧Vccが所定電圧を下回った場合、発振周波数切替回路80のトランジスタ72がオフすることで、キャパシタ71が発振器53から切り離される。これにより、発振器53の静電容量Cが小さくなるため、図4(B)に示すように、発振器53の発振周波数(発振信号V3の周波数)が軽負荷時よりも高められる。これにより、コレクタ電源電圧Vccの低下が防止され、負荷変動に対して安定してコレクタ電源電圧Vccが供給される。
【0031】
次いで、エミッタ電源電圧Veeについて説明する。
図5は、エミッタ電源回路150の回路図である。
エミッタ電源電圧Veeは、負電圧のエミッタ電源電圧Veeを出力するものであり、コレクタ電源回路50の構成と比較して、チャージポンプ回路152のダイオード55、56が出力端P4の電位を負電位にする向きに接続されている点、並びに、発振周波数切替回路180におけるトランジスタ172の接続態様の点において構成を異にする。
発振周波数切替回路180について詳細には、トランジスタ172は、キャパシタ71の一端と、負電位のラインであるエミッタ電源回路150の出力端P4との間に設けられている。すなわちトランジスタ172は、オンしたときにはキャパシタ71の一端を負電位に接続することで発振器53に接続し、またオフしたときにはキャパシタ71の一端を開放することで、発振器53から切り離す。
分圧器75は、接地電位(0ボルト)を基準にして分圧を生成するものであり、この接地電位からのエミッタ電源電圧Veeの大きさ(絶対値)が所定電圧(例えば公称値付近の電圧)を下回ったときに、トランジスタ172のオン閾値Thを下回る電圧を、このトランジスタ172のベースに出力するように構成されている。
【0032】
かかる構成により、図6に示すように、高負荷時において、エミッタ電源電圧Veeの大きさ(絶対値)が低下すると、発振周波数切替回路180のトランジスタ172がオフすることで、発振器53のキャパシタ171、63の合成静電容量が低下し、図6(B)に示すように、発振器53の発振信号V3の発振周波数が軽負荷時よりも高められる。これにより、エミッタ電源電圧Veeの出力低下が防止され、負荷変動に対して安定した電源供給が行われる。
【0033】
このように、コレクタ電源回路50、及びエミッタ電源回路150を、負荷変動に対して安定した電圧を出力する回路として構成されているため、上記相電流検出回路19、及びバッテリ電流検出回路20においては、差動増幅回路40が出力する電圧V1や非反転増幅器33が出力する電圧が高くなっても、コレクタ電源回路50、及びエミッタ電源回路150からは安定した電圧が供給される。
【0034】
すなわち、例えば車両駆動用モータ5のトルクの増大に伴って相電流が増加すると、電流センサ16で検出される電流値が大きくなることから、相電流検出回路19の入力段にある差動増幅回路40が出力すべき電圧V1も高くなる。この電圧V1の増大、すなわち負荷の増大に伴ってコレクタ電源電圧Vcc、及びエミッタ電源電圧Veeが低下してしまうと、この低下に伴って差動増幅回路40が出力する電圧V1も低下してしまう。この結果、相電流検出回路19の電流検出信号Vkにあっては、電流センサ16の検出電流値が高くなったとき、図7の矢印Xの箇所に点線で示したように、電流検出信号Vkの電圧値が実際(実線で示す)よりも低くなってしまい、正確な電流値が制御部18に出力されない、という問題が生じる。かかる問題は、バッテリ電流検出回路20において、バッテリ3の電流が大きい場合にも同様に生じるものである。
【0035】
これに対して、上記相電流検出回路19、及びバッテリ電流検出回路20には、差動増幅回路40が出力する電圧V1や非反転増幅器33が出力する電圧が高くなっても、コレクタ電源回路50のコレクタ電源電圧Vcc、及びエミッタ電源回路150のエミッタ電源電圧Veeが低下することはないから、相電流やバッテリ3の電流が増大した時でも、電流検出信号Vkの電圧値が低下することがなく、正確な電流値を制御部18に出力することができる。これにより、車両駆動用モータ5のより正確かつ安定した制御、並びに、バッテリ3の正確な残量演算が可能になる。
【0036】
以上説明した実施形態によれば次のような効果を奏する。なお、以下では、コレクタ電源回路50の効果について述べるが、同様な効果を及びエミッタ電源回路150も奏する。
【0037】
すなわち、本実施形態によれば、コレクタ電源電圧Vccに応じて発振周波数が切り替わるようにコレクタ電源回路50を構成したため、コレクタ電源電圧Vccの低下が生じ得る高負荷時にだけ発振周波数を高め、コレクタ電源電圧Vccの低下を抑制できる。これにより、発振周波数を常時高めておく構成に比べ消費電流を抑えることができ、コレクタ電源電圧Vccの安定化と低消費電流化とを実現することができる。
【0038】
また本実施形態によれば、発振器53を、シュミットトリガインバータ回路66、抵抗67、及び充電用のキャパシタ68を備えるRC発振回路により構成し、また、このRC発振回路の静電容量Cを、周波数切替用のキャパシタ71をキャパシタ68に並列に接続し、或いは切り離すことで可変して発振周波数を切り替える構成としたため、簡単な回路構成でありながらも、出力電圧の低下時に応答性良く速やかに発振周波数を切り変えることができる。
【0039】
また本実施形態によれば、トランジスタ72は、周波数切替用のキャパシタ71の一端に接続され、コレクタ電源電圧Vccが所定電圧を下回るに伴いオフしたときに、この周波数切替用のキャパシタ71の一端を開放し、発振器53から切り離す構成としたため、周波数切替用のキャパシタ71を発振器53に接続、或いは切り離すための回路をトランジスタ72だけで簡単に構成できる。
【0040】
また本実施形態によれば、発振周波数切替回路80は、コレクタ電源電圧Vccの大きさが所定電圧(例えば公称値付近の電圧)を下回ったときにトランジスタ72のオン閾値Thを下回るように設定された分圧比でコレクタ電源電圧Vccを分圧しトランジスタ72のベースに出力する分圧器75を備える構成とした。この構成によれば、コレクタ電源電圧Vccが所定電圧を下回ったか否かを判定するための電圧検出器を別途に設ける必要がなく、簡単な回路構成で、コレクタ電源電圧Vccに応じたスイッチング素子のオン/オフ動作を実現できる。
【0041】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示するものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
【0042】
例えば、上述した実施形態では、シュミットトリガインバータ回路66を用いてRC発振回路を構成した。これに限らず、複数段のインバータ回路を備えてRC発振回路を構成しても良く、また他のRC発振回路を用いることもできる。
【0043】
また例えば、上述した実施形態では、1つの周波数切替用のキャパシタ71と発振器53との接続/切り離しにより、発振器53の発振周波数を2段階に切り替える構成を例示したが、これに限らない。すなわち、コレクタ電源電圧Vcc(エミッタ電源電圧Vee)複数の周波数切替用のキャパシタを選択的に、発振器53のキャパシタ68に並列に接続し、或いは切り離す構成とすることで、発振周波数を3段階以上に切り替える構成としても良い。
【符号の説明】
【0044】
19 相電流検出回路
20 バッテリ電流検出回路
50 コレクタ電源回路(電源回路)
51 ポンプアップ用のキャパシタ
52、152 チャージポンプ回路
53 発振器
54 ドライバ回路
66、69 シュミットトリガインバータ回路
67 抵抗
68 充電用のキャパシタ
71、171 周波数切替用のキャパシタ
72、172 トランジスタ(スイッチング素子)
75 分圧器
80、180 発振周波数切替回路
150 エミッタ電源回路(電源回路)
Th オン閾値
V3 発振信号
Vcc コレクタ電源電圧(出力電圧)
Vee エミッタ電源電圧(出力電圧)
Vin 入力電圧
Vk 電流検出信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプアップ用のキャパシタを備えたチャージポンプ回路と、発振信号を出力する発振器とを有し、前記発振器の発振信号に基づいて、入力電圧を前記チャージポンプ回路に出力し前記キャパシタに電荷を蓄積して当該電荷に基づく出力電圧を生成する電源回路において、
前記発振器にRC発振回路を有し、
前記RC発振回路に接続されて静電容量を可変し発振周波数を切り替える周波数切替用のキャパシタと、前記出力電圧に応じて前記周波数切替用のキャパシタを前記RC発振回路に接続、或いは切り離すスイッチング素子とを有し、前記出力電圧に応じて、前記RC発振回路の発振周波数を複数段に切り替える発振周波数切替回路を備えた
ことを特徴とする電源回路。
【請求項2】
前記スイッチング素子は、前記周波数切替用のキャパシタの一端に接続され、前記出力電圧に応じてオフしたときに前記周波数切替用のキャパシタの一端を開放して前記RC発振回路から切り離すことを特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記発振周波数切替回路は、
前記出力電圧の大きさが所定電圧を下回ったときに前記スイッチング素子のオン閾値を下回るように設定された分圧比で前記出力電圧を分圧し前記スイッチング素子に出力する分圧器を備えたことを特徴とする請求項2に記載の電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−105449(P2012−105449A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251723(P2010−251723)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】