説明

電源用基板および電源ユニット

【課題】モジュール電源をねじ締めにより電源用基板に取付け固定する際に、簡単な構成でありながら半田接続部などにストレスが加わらないようにする。
【解決手段】貫通孔14を通してモジュール電源1の取付具6にねじ部材15の雄ねじ部15Aを螺合する際に、ねじ部材15の頭部15Bを電源用基板11に当接した状態で、ねじ部材15がさらに捩じ込まれたとしても、貫通孔14とスリット21との間に形成される小片部22だけが弾性変形して、電源用基板11の他の部位に応力が波及するのを緩和できる。したがって、電源用基板11にスリット21を設けただけの簡単な構成でありながら、従来のような半田接続部などにストレスが加わるのを防止して、電源ユニットとしての長期的な信頼性を確保することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一乃至複数のモジュール電源部が搭載される電源用基板、およびこうしたモジュール電源部および電源用基板を含む電源ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
薄型のモジュール電源を電源ボードのような電源用基板に搭載する例として、例えば特許文献1に開示されるような電源ユニットが知られている。ここでは、所望の直流出力電圧を供給する複数のモジュール電源が、共通する電源ボードに取付け固定される。
【0003】
図4は、そうした電源ユニットの一例を示したものである。同図において、1は前述した例えばDC/DCコンバータモジュールなどのモジュール電源であり、これは複数の電子部品(図示せず)を実装する金属基板2と、この金属基板2の部品実装面2Aを覆う樹脂製のカバー3とにより、その外郭を形成している。金属基板2は周知のように、回路パターンを形成する印刷基板層4の一側に、例えばアルミニウムなどの熱伝導性に優れた材料からなる金属層5を積層することで構成され、電子部品からの放出熱を金属層5に伝導することにより、モジュール電源1としての放熱特性を高めている。
【0004】
また、金属基板2の部品実装面2Aには、その四隅にタップ孔付きの取付具6が、例えば加締めなどにより取付け固定されると共に、当該部品実装面2Aの一側および他側に沿って、入力または出力用の端子ピン7が、半田付けによりそれぞれ取付け固定される。
【0005】
カバー3は、金属基板2の部品実装面2Aに対向する上面部3Aに、取付具6および端子ピン7に対応して、孔9,10をそれぞれ開口形成している。そして、取付具6を孔9に挿通させ、且つ各端子ピン7を孔10に挿通させながら、カバー3を金属基板2に嵌合固定すると、取付具6のねじ孔が露出した上面6Aが、上面部3Aの外面とほぼ同じ高さになり、また端子ピン7の先端が、上面部3Aより外方に突出するようになる。なお、この図3では、モジュール電源1の内部構造を見せるために、金属基板2からカバー3を取外した状態を示しているが、実際は後述する図1に示すように、金属基板2とカバー3で構成される箱形状のモジュール本体の外方に、複数の端子ピン7の先端が突出した外形形状を有している。
【0006】
一方、11は前記モジュール電源1を搭載する電源用基板である。この電源用基板11は、例えばガラスエポキシ材料などからなる絶縁基材12に、銅箔などの回路パターン(図示せず)を形成したいわゆる一般的な印刷基板で構成される。また、電源用基板11には、前記複数の端子ピン7の先端がそれぞれ貫通可能なスルーホール13と、取付具6と合致する位置にある貫通孔14が、それぞれ開口形成される。
【0007】
スルーホール13は周知のように、導電性の端子ピン7との半田付け接続を可能とするために、その内面にメッキ処理が施されている。また貫通孔14は、ねじ部材15の先端側にある雄ねじ部15Aが挿通可能であるものの、ねじ部材15の基端側にある頭部15Bが挿通できないような大きさに形成される。
【0008】
そして、モジュール電源1を電源用基板11に取付け固定するには、先ずモジュール電源1を構成する端子ピン7の先端を、電源用基板11の各スルーホール13にそれぞれ挿通し、カバー3の上面部3Aを電源用基板11に突き当てて、端子ピン7の先端を電源用基板11の上面11Aより突出させる。この状態で、端子ピン7とスルーホール13との間を半田付けして、モジュール電源1および電源用基板11との電気的な接続を達成する。
【0009】
次に、電源用基板11の貫通孔14にねじ部材15の雄ねじ部15Aを通し、このねじ部材15の頭部15Bが電源用基板11の上面11Aに突き当たる位置まで、モジュール電源1の取付具6にねじ部材15の雄ねじ部15Aを螺合する。これにより、電源用基板11がねじ部材15の頭部15Bとモジュール電源1との間に挟まれ、モジュール電源1と電源用基板11とを強固に取付け固定することが可能になる。
【特許文献1】特開平10−56773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上述したような従来のモジュール電源1や電源用基板11には、次のような問題点がある。
【0011】
ねじ部材15の頭部15Bを電源用基板11の上面に突き当てた状態で、ねじ部材15をさらに捩じ込むと、電源用基板11全体に応力が発生して、先に半田付け固定された端子ピン7とスルーホール13との接続部や、端子ピン7と金属基板2との接続部に、少なからずストレスが加わると共に、電源用基板11に実装される各種電子部品(図示せず)の半田接続部にも、同様のストレスが加わる。こうしたストレスが原因で、長期的にモジュール電源1や電源用基板11の信頼性を確保するのが難しくなるという問題があった。
【0012】
そこで本発明の目的は、モジュール電源をねじ締めにより電源用基板に取付け固定する際に、簡単な構成でありながら半田接続部などにストレスが加わらないようにし、長期的な信頼性を確保できる電源用基板および電源ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1における電源用基板は、モジュール電源部の取付部に対応して貫通孔を有し、この貫通孔を通して前記取付部にねじ部材を螺着することで、前記モジュール電源部が取付け固定される電源用基板において、前記貫通孔の周囲に、前記ねじ部材によるねじ締め時の応力緩和用のスリットを形成したものである。
【0014】
また、本発明の請求項2における電源ユニットは、取付部を有するモジュール電源部と、この取付部に対応して貫通孔を有する電源用基板とからなり、前記貫通孔を通して前記モジュール電源部の取付部にねじ部材を螺着することで、前記モジュール電源部が前記電源用基板に取付け固定される電源ユニットにおいて、前記電源用基板は、前記貫通孔の周囲に、前記ねじ部材によるねじ締め時の応力緩和用のスリットが形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1および請求項2では、何れも貫通孔を通してモジュール電源部の取付部にねじ部材を螺合する際に、ねじ部材の頭部を電源用基板に当接した状態で、ねじ部材がさらに捩じ込まれたとしても、貫通孔とスリットとの間に形成される小片部だけが弾性変形して、電源用基板の他の部位に応力が波及するのを緩和できる。したがって、電源用基板にスリットを設けただけの簡単な構成でありながら、従来のような半田接続部などにストレスが加わるのを防止して、電源ユニットとしての長期的な信頼性を確保することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明におけるモジュール電源1と電源用基板11を含む電源ユニットについて、好ましい実施例を説明する。なお、従来例と同一部分には同一符号を付し、その共通する箇所の説明は重複を避けるために極力省略する。
【0017】
好ましい実施例を示す図1および図2において、ここでの電源用基板11は、ねじ部材15の雄ねじ部15Aが貫通可能な貫通孔14の周囲に、当該ねじ部材15によるねじ締め時の応力緩和を緩和するためのスリット21を開口形成した点が注目される。このスリット21は、例えば図1のように、上面からみてL字状に形成したり、また図2のように、C字状に形成してもよい。その他に図示しないが、貫通孔14の周囲に複数の分割されたスリット21を設けてもよい。このように、スリット21の形状や個数は特に限定される訳ではないが、どのような場合であっても、貫通孔14と孔状のスリット21との間には、電源用基板11の他の部位よりも脆弱で、容易に弾性変形する小片部22が形成されるようにする。こうすることで、貫通孔14を利用してモジュール電源1を電源用基板11にねじ締め固定する際に、電源用基板11の小片部22が他の部位よりも先に弾性変形して応力を緩和する。なお、それ以外の各部の構成については、従来例における図3と共通している。
【0018】
そして、モジュール電源1を電源用基板11に取付け固定するには、先ずモジュール電源1を構成する端子ピン7の先端を、電源用基板11の各スルーホール13にそれぞれ挿通し、カバー3の上面部3Aを電源用基板11に突き当てて、端子ピン7の先端を電源用基板11の上面11Aより突出させる。この状態で、端子ピン7とスルーホール13との間を半田付けして、モジュール電源1および電源用基板11との電気的な接続を達成する。
【0019】
次に、電源用基板11の貫通孔14にねじ部材15の雄ねじ部15Aを通し、このねじ部材15の頭部15Bが電源用基板11の上面11Aに突き当たる位置まで、モジュール電源1の取付具6にねじ部材15の雄ねじ部15Aを螺合する。こうすると、電源用基板11がねじ部材15の頭部15Bとモジュール電源1との間に挟まれ、モジュール電源1と電源用基板11とを強固に取付け固定できる。
【0020】
また、このねじ締め時において、ねじ部材15の頭部15Bを電源用基板11の上面に突き当てた状態で、ねじ部材15をさらに捩じ込むと、貫通孔14の周囲にスリット21が形成されている関係で、この貫通孔14とスリット21との間にある小片部22だけが、ねじ締めに伴う応力を受けて弾性変形する。したがって、電源用基板11は、小片部22以外の他の部位において、ねじ締めに伴う応力が波及せず、先に半田付け固定された端子ピン7とスルーホール13との接続部や、端子ピン7と金属基板2との接続部にストレスが加わったり、また電源用基板11に実装される各種電子部品(図示せず)の半田接続部に、同様のストレスが加わったりすることがない。したがって、電源ユニットとして、長期的にモジュール電源1や電源用基板11の信頼性を確保することが可能になる。
【0021】
このように本実施例では、モジュール電源1の取付部である取付具6に対応して貫通孔14を有し、この貫通孔14を通して取付具6にねじ部材15を螺着することで、モジュール電源1が取付け固定される電源用基板11において、貫通孔14の周囲に、ねじ部材15によるねじ締め時の応力緩和用のスリット21を形成して、この貫通孔14とスリット21との間に位置する小片部22を、電源用基板11に設けている。
【0022】
また本実施例では、モジュール電源1と電源用基板11とからなり、貫通孔14を通してモジュール電源1の取付具6にねじ部材15を螺着することで、モジュール電源1が電源用基板11に取付け固定される電源ユニットとして、電源用基板11は、貫通孔14の周囲にねじ部材15によるねじ締め時の応力緩和用のスリット21が形成されており、それにより貫通孔14とスリット21との間に位置する小片部22が、電源用基板11に設けられている。
【0023】
こうした電源用基板11および電源ユニットの何れの構成においても、貫通孔14を通してモジュール電源1の取付具6にねじ部材15の雄ねじ部15Aを螺合する際に、ねじ部材15の頭部15Bを電源用基板11に当接した状態で、ねじ部材15がさらに捩じ込まれたとしても、貫通孔14とスリット21との間に形成される小片部22だけが弾性変形して、電源用基板11の他の部位に応力が波及するのを緩和できる。したがって、電源用基板11にスリット21を設けただけの簡単な構成でありながら、従来のような半田接続部などにストレスが加わるのを防止して、電源ユニットとしての長期的な信頼性を確保することが可能になる。
【0024】
次に、本発明の別な変形例を図3に示す。この変形例では、モジュール電源1内の電子部品からの熱を外部に放散させるために、金属基板2の底面部をなす金属層5の表面に、アルミニウムなどの熱伝導性の良好な部材からなる放熱器31が熱的に接続される。つまり第1実施例では、モジュール電源1単独でモジュール電源部を構成していたが、本実施例ではモジュール電源1と放熱器31で、モジュール電源部を構成している。
【0025】
放熱器31は、放熱面積を増やすために形成されたフィン32と、モジュール電源部の取付部に相当するタップ孔33がそれぞれ形成されている。また、前記第1実施例における取付具6に代わって、モジュール電源1に貫通孔34が設けられており、この貫通孔34に対応した位置に、放熱器31のタップ孔33が形成される。なお、それ以外の構成は、前記第1実施例と共通している。
【0026】
この変形例でも、第1実施例で説明したように、モジュール電源1および電源用基板11との電気的な接続を達成した後に、電源用基板11の貫通孔14およびモジュール電源1の貫通孔34にねじ部材15の雄ねじ部15Aを通し、このねじ部材15の頭部15Bが電源用基板11の上面11Aに突き当たる位置まで、放熱器31のタップ孔33にねじ部材15の雄ねじ部15Aを螺合する。こうすると、電源用基板11およびモジュール電源1が、ねじ部材15の頭部15Bと放熱器31との間に挟まれ、モジュール電源1および放熱器31と電源用基板11とを強固に取付け固定できる。
【0027】
また、このねじ締め時において、ねじ部材15の頭部15Bを電源用基板11の上面に突き当てた状態で、ねじ部材15をさらに捩じ込むと、貫通孔14の周囲にスリット21が形成されている関係で、この貫通孔14とスリット21との間にある小片部22だけが、ねじ締めに伴う応力を受けて弾性変形する。したがって、電源用基板11は、小片部22以外の他の部位において、ねじ締めに伴う応力が波及せず、先に半田付け固定された端子ピン7とスルーホール13との接続部や、端子ピン7と金属基板2との接続部にストレスが加わったり、また電源用基板11に実装される各種電子部品(図示せず)の半田接続部に、同様のストレスが加わったりすることがない。したがって、電源ユニットとして、長期的にモジュール電源1や電源用基板11の信頼性を確保することが可能になる。
【0028】
従ってこの場合も、貫通孔14,31を通して放熱器31のタップ孔33にねじ部材15の雄ねじ部15Aを螺合する際に、ねじ部材15の頭部15Bを電源用基板11に当接した状態で、ねじ部材15がさらに捩じ込まれたとしても、貫通孔14とスリット21との間に形成される小片部22だけが弾性変形して、電源用基板11の他の部位に応力が波及するのを緩和できる。したがって、電源用基板11にスリット21を設けただけの簡単な構成でありながら、従来のような半田接続部などにストレスが加わるのを防止して、電源ユニットとしての長期的な信頼性を確保することが可能になる。
【0029】
本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。例えば、モジュール電源1を電源用基板11に複数個搭載してもよく、その場合は、各モジュール電源1毎に設けた貫通孔14の周囲に、それぞれ任意の形状や個数でスリット21を形成すればよい。また、取付具6に相当する取付部が、例えば電源モジュール1のカバー3に設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の好ましい一実施例の電源ユニットを示す分解斜視図である。
【図2】同上、他の例を示す要部の平面図である。
【図3】別な変形例の電源ユニットを示す分解斜視図である。
【図4】従来の電源ユニットを示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 モジュール電源(モジュール電源部)
6 取付具(取付部)
11 電源用基板
14 貫通孔
15 ねじ部材
21 スリット
31 放熱器(モジュール電源部)
33 タップ孔(取付部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュール電源部の取付部に対応して貫通孔を有し、この貫通孔を通して前記取付部にねじ部材を螺着することで、前記モジュール電源部が取付け固定される電源用基板において、
前記貫通孔の周囲に、前記ねじ部材によるねじ締め時の応力緩和用のスリットを形成したことを特徴とする電源用基板。
【請求項2】
取付部を有するモジュール電源部と、この取付部に対応して貫通孔を有する電源用基板とからなり、前記貫通孔を通して前記モジュール電源部の取付部にねじ部材を螺着することで、前記モジュール電源部が前記電源用基板に取付け固定される電源ユニットにおいて、
前記電源用基板は、前記貫通孔の周囲に、前記ねじ部材によるねじ締め時の応力緩和用のスリットが形成されることを特徴とする電源ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−278566(P2008−278566A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−116231(P2007−116231)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(390013723)デンセイ・ラムダ株式会社 (272)
【Fターム(参考)】