電源装置、およびその製造方法
【課題】0.3mm以上の厚い蓋体を必要とする密閉電池で、弁の作動圧精度が良く、かつ高い生産性で製造可能な構造の安全装置を提供すること。
【解決手段】蓋体202の一部に安全弁部206を備え、安全弁部206は弁部207とその周囲の開裂部208からなり、開裂部208は蓋体202から電池外側に向かって蓋体厚みより薄肉に引き伸ばされて弁部207に繋がり、電池内圧上昇時、開裂部208の最薄部209に引っ張り応力が集中し破断する構造とする事で、開裂部位の材料の加工硬化が少なく安定した弁作動圧が確保でき、かつプレス機械により簡単に生産できる。
【解決手段】蓋体202の一部に安全弁部206を備え、安全弁部206は弁部207とその周囲の開裂部208からなり、開裂部208は蓋体202から電池外側に向かって蓋体厚みより薄肉に引き伸ばされて弁部207に繋がり、電池内圧上昇時、開裂部208の最薄部209に引っ張り応力が集中し破断する構造とする事で、開裂部位の材料の加工硬化が少なく安定した弁作動圧が確保でき、かつプレス機械により簡単に生産できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関し、特に繰り返しの再充電が可能な二次電池に使用して好適な電池の安全装置、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電池の安全装置としては、電池ケースの底部に環状薄肉部を、先端に一定面積の平坦部を有するパンチおよび上記パンチの平坦部と相似形状で、その80〜98%の面積の押出し穴を有する平坦な受け型を用いて形成しているものがある(例えば、特許文献1参照)。図7は、特許文献1に記載された従来の電池の安全装置を示す図で、薄肉部形成用のパンチを下降させ、電池ケースの底部に押し込んだときの状態の要部拡大断面図である。
【0003】
図7において、パンチ101と押し出し穴102を有する受け型103によるプレス成形によって、電池ケース104の電池底部105の内部に凹部106、外部に凸部107を形成すると、ケース材料が矢印Pに示すように逃げて、パンチ平坦部108と対向する受け型平坦部109との間で薄肉部110が形成される。本構造により過充電や内部短絡等により、電池ケース104内の圧力が所定値以上になると、薄肉部110が破断して、電池ケース104の内部のガスを外部に放出し、電池の安全性を確保するようになっている。
【0004】
また、従来の電池の安全装置としては、弁体の周囲にプレス加工のハーフカットによって弱強度部を形成しているものがある(例えば、特許文献2参照)。図8は、特許文献2に記載された従来の電池の安全装置である防爆封口板を構成する下部弁体の平面図である。
【0005】
図8において、下部弁体111は図示しない上部弁体と電気的に接続される溶着部112を有している。溶着部112の周囲に弱強度部113がプレス加工のハーフカットにより形成されている。図9は図8のA−A´’断面の拡大図である。電池内圧が上昇すると弱強度部113がせん断力により破断し、上部弁体と下部弁体との電気的接続が遮断され、電池の安全性を確保するようになっている。
【0006】
なお、特許文献2では、ハーフカットによる弱強度部113を電気的切断に利用しているが、これはガスを放出するための安全弁としても使用できる。
【0007】
また、従来の電池の安全装置としては、弁体の周囲に馬蹄形状の薄肉部を、ウェットエッチングで形成しているものがある(例えば、特許文献3参照)。図10は、特許文献3に記載された従来の電池の安全装置を示す図で、安全弁の平面図と断面図である。
【0008】
図10において、安全弁121は直径21mm、厚み0.05mmのSUS304の薄板であり、中央部に外径15mm、内径13mm、厚み0.015mmの馬蹄形の彫り込み部122を有している。この彫り込み部122はウェットエッチングにて形成される。電池内圧が上昇すると彫り込み部122が破断し、電池内部のガスを外部に放出し、電池の安全性を確保するようになっている。
【0009】
また、従来の電池の安全装置としては、弁体の周囲を上下からV字状に刻印プレスし、弱強度部を形成しているものがある(例えば、特許文献4参照)。図11は、特許文献4に記載された従来の電池の安全装置を示す図で、防爆安全弁となる上部金属板の平面図と要部断面のプレス加工工程図である。
【0010】
図11において、上部金属板131は上面に輪郭形成溝132と下面に易変形溝133を有している。そして輪郭形成溝132と易変形溝133の間に薄肉部134が形成される。輪郭形成溝132と易変形溝133は刻印パンチ135で成形される。電池内圧が上昇すると薄肉部134が破断し、電池内部のガスを外部に放出し、電池の安全性を確保するようになっている。
【0011】
また、従来の電池の安全装置としては、蓋体と弁体の間の開裂部を曲げ伸ばしとつぶし加工で薄肉に形成しているものがある(例えば、特許文献5参照。)。図12は、特許文献5に記載された従来の電池の安全装置を示す図で、安全弁部の断面図である。図13は同開裂部の拡大図である。
【0012】
図12において、安全弁部141は蓋体142の板厚内に形成され、弁部143と蓋体142との間に連結部144を有している。連結部144は、蓋体142と弁部143を繋ぐ肉部が曲げ伸ばしされて、弁部143よりも薄肉に形成される。
【0013】
図13において、さらに連結部144は第1の金型145の凸部146によりV字型のつぶしが入れられ、さらに薄肉の開裂部147が形成される。電池内圧が上昇すると開裂部147が破断し、電池内部のガスを外部に放出し、電池の安全性を確保するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平2−284347号公報
【特許文献2】特開平9−129208号公報
【特許文献3】特開2000−311669号公報
【特許文献4】特開2001−23595号公報
【特許文献5】特開2004−111155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている従来の構成では、薄肉部110の形成時、薄肉部110に圧縮応力が集中して加工硬化が起こり、脆くなるとともに加工硬化によって硬度が増すため、所定値以上の圧力で開裂させるための薄肉部110の肉厚をさらに薄肉にする必要がある。その結果、肉厚の精度が要求されて、均一な肉厚を得るのが難しくなり、弁の作動圧がばらつく。さらには最悪の場合クラックが生じるという課題を有している。
【0016】
また、上記特許文献2に開示されている従来の構成では、ハーフカットで弱強度部113を形成するため、下部弁体111の板厚が0.3mm以下の薄板であれば可能だが、例えば大型電池などでそれ以上の厚板が必要な場合はプレス時に発生するせん断力で必要な薄肉にする前に切れてしまい、成形できないという課題を有している。
【0017】
また、上記特許文献3に開示されている従来の構成では、ウェットエッチングで彫り込み部122を形成するため、プレスを用いて成形する場合と比べて寸法精度が悪く弁の作動圧がばらつく上、生産性が悪いという課題を有している。
【0018】
また、上記特許文献4に開示されている従来の構成では、薄肉部134を刻印パンチ135でV字型に上下から打って刻印で形成するため、刻印深さには限界があり、上部金属板131の板厚が厚いと薄肉部134が形成されず、適用できないという課題を有している。また、刻印パンチ135の寿命が短い上に薄肉部134の材料の加工硬化が大きく、結果的に弁の作動圧がばらつくという課題も有している。
【0019】
更に、上記特許文献5に開示されている従来の構成では、開裂部147は曲げ伸ばしで形成されるというものの、最後は凸部146を有する第1の金型145にてV字断面にするためのつぶしが入るため、加工硬化がやはり生じてしまう。さらには前工程として蓋体142よりも薄い弁部143を形成するための切削加工などの前処理が必要で生産性が悪いという課題も有している。
【0020】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、比較的板厚が厚い蓋体を必要とする大型電池などにおいても、1回のプレス成形にて製作可能で、かつ金型の寿命も長く、加工硬化が小さいため弁の作動圧のばらつきの小さい構造の電源装置、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者は、電池の安全弁の開裂部を、単純な引き伸ばしにて成形し引っ張り応力で破断させる構造とすることで、破断メカニズムが単純で、かつ加工硬化が小さいため弁の作動圧のばらつきが小さい安全弁を実現できることを見出し、さらに検討を加え発明を完成させた。
【0022】
すなわち、本発明は以下に示される電源装置に関する。
【0023】
[1]電池ケースの内部を気密に遮蔽する金属板材からなる蓋体と、この蓋体の一部に形成され、前記電池ケース内の圧力が所定値以上に上昇すると破壊して、前記電池ケース内の気体を外部に放出する安全弁部とを備え、前記安全弁部は、前記蓋体の板厚と同じ厚みを有し、前記蓋体よりも電池外側に位置する弁部と、この弁部と前記蓋体との間で、前記弁部の外周に形成され、前記蓋体から電池の外側に向かって前記弁部へと繋ぐ肉部が前記蓋体厚みよりも薄い開裂部とを有し、前記開裂部はさらに最薄部を有し、前記最薄部から前記蓋体に向かって肉厚を次第に増し、前記蓋体厚みとなり、同様に前記最薄部から前記弁部に向かっても肉厚を次第に増し、前記弁部厚みとなる形状であり、かつ前記弁部の内表面が前記蓋体の外表面より電池外側に位置していることを特徴とする電源装置。
【0024】
[2]電池ケースが複数の電池収納室を有する組電池で、複数の前記安全弁部を有する1枚の蓋体が、前記電池収納室をそれぞれ気密に遮蔽することを特徴とする[1]記載の電源装置。
【0025】
[3]前記安全弁部近傍の電池外部空間を遮蔽し、弁の方向には開口部がなく、弁と直角方向に開口部を持つカバーを有することを特徴とする[2]記載の電源装置。
【0026】
[4]電池ケースの内部を気密に遮蔽する金属板材からなる蓋体と、この蓋体の一部に形成され、前記電池ケース内の圧力が所定値以上に上昇すると破壊して、前記電池ケース内の気体を外部に放出する安全弁部とを備え、前記安全弁部は、前記蓋体の板厚と同じ厚みを有し、前記蓋体よりも電池外側に位置する弁部と、この弁部と前記蓋体との間で、前記弁部の外周に形成され、前記蓋体から電池の外側に向かって前記弁部へと繋ぐ肉部が前記蓋体厚みよりも薄い開裂部を有する電池の安全装置において、前記開裂部は金型で成形し、前記弁部を押すパンチの先端外周角部および前記蓋部を受けるダイの穴角部をそれぞれに滑らかな弧状とし、パンチの下死点にてパンチの先端外周角部の弧とダイの穴角部の弧でつくられる隙間で最薄部を成形するとともに、前記最薄部から滑らかに前記蓋体と前記弁体に繋がる前記開裂部を成形し、前記パンチの下死点はパンチの先端面がダイの表面よりも深い位置としたことを特徴とする電源装置の製造方法。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明の電源装置、およびその製造方法によれば、0.3mmを超える比較的厚い蓋体であっても1回のプレス成形で加工硬化が小さい安全弁を形成できる。したがって対応範囲が広く、弁の作動圧のばらつきが小さく、生産性にすぐれる電池の安全装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1における安全装置を含む電池の平面図
【図2】本発明の実施の形態1における安全装置を含む電池の断面図
【図3】本発明の実施の形態1における安全装置の加工工程図
【図4】本発明の実施の形態1における電池の安全装置の断面図
【図5】本発明の実施の形態1における安全装置の不適切な加工図
【図6】本発明の実施の形態2における安全弁部を含む組電池の斜視図
【図7】特許文献1に記載された従来の電池の安全装置を示す図
【図8】特許文献2に記載された従来の電池の安全装置を示す図
【図9】特許文献2に記載された従来の電池の安全装置の拡大断面図
【図10】特許文献3に記載された従来の電池の安全装置を示す図
【図11】特許文献4に記載された従来の電池の安全装置を示す図
【図12】特許文献5に記載された従来の電池の安全装置を示す図
【図13】特許文献5に記載された従来の電池の開裂部の拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0030】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における安全装置を有する電池の平面図、図2は、図1に示すX−X断面図である。図3は、同安全装置の加工工程図、図4は同電池の安全装置部の拡大断面図を示す。
【0031】
図1および図2において、電池ケース201と蓋体202で電池外装容器を構成している。電池ケース201と蓋体202の材料は金属で、軽量化のため通常アルミニウムであることが多い。電池ケース201を深絞り加工により袋状に加工し、開口部を蓋体202で閉じる構造となっている。電池ケース201と蓋体202は、接触面全周を溶接等で完全に接合され気密が保たれている。蓋体202には2個の穴がある。1個目の穴は、負極電極の取り出し用で絶縁ガスケット203を介して負極端子204をかしめることで閉じられる。なお、正極端子は電池ケース201または蓋体202で兼ねられる。2個目の穴は、電解液の注液用で、注液後に封止栓205が接合されて閉じられる。このように密閉電池が構成される。
【0032】
また、蓋体202は、2個の穴以外に安全弁部206を有する。安全弁部206は、弁部207と開裂部208から構成される。弁部207は、円形状で蓋体202の板厚と同じ厚みを有している。弁部207は、弁部207の外周に形成され蓋体202から電池外装容器の外側に向かって弁部207の厚みよりも薄肉に引き伸ばしされた開裂部208で蓋体202とつながりを維持している。開裂部208は中央部が最薄部209となっており、図2において最薄部209より上方に行くほど次第に厚くなり弁部207の板厚になる。
【0033】
同様に図2において、開裂部208は中央の最薄部209より下方に行くほど次第に厚くなり蓋体202の板厚になる。弁部207の下面は蓋体202の上面より上方、すなわち電池外側に位置している。なお、図2では電池の内容物の記載を省いてある。
【0034】
図3はプレス金型を使用して開裂部208の形状を成形する場合の加工状態図で、図2のY部を抜き出して開裂部形状の変遷を(a)〜(e)で順に示している。
【0035】
まず、図3(a)において、加工前の蓋体板材の弁部207となる部分に下側からパンチ210をあて、上から弁部押さえ211で弁部207となる部分をクランプする。このときパンチ210の先端外周角部は滑らかな弧状となっており、蓋体板材との間には空隙214がある。一方、弁部押さえ211の先端外周角部は直角であり、蓋体板材との間に空隙は存在しない。同様に弁部207となる部分の外側周囲に上側からダイ212をあて、下から蓋体押さえ213で蓋体202をクランプする。
【0036】
このときダイ212の穴角部は滑らかな弧状となっており、蓋体202との間には空隙215がある。一方、蓋体押さえ213の穴角部は直角であり、蓋体202との間に空隙は存在しない。空隙214と空隙215に接する蓋体板材の部分が変形部216で、後に開裂部208となる部分である。
【0037】
なお、パンチ210とダイ212の嵌合時のクリアランスは0でも良いが、安全のためわずかに隙間を持たせている。
【0038】
図3(b)は、前記加工前状態から、パンチ210と弁部押さえ211が一体となって上方にZ1だけ上昇したときの状態図を示す。基本的に蓋体202として残る部分と弁部207となる部分はそれぞれクランプされているため、この部分の材料が変形部216に流れ込むことは基本的にはなく、自由度を持つ変形部216のみが主に引っ張りで伸ばされて後の開裂部208となる。
【0039】
図3(c)は、さらにパンチ210と弁部押さえ211が上方にZ2まで上昇したときの状態図を示す。
【0040】
このとき、弁部207の電池内側表面が蓋体202の電池外側表面と同じ位置にある(L=0)。ここまでパンチが上昇すると、変形部216は蓋体板厚よりも薄い最薄部209を有する開裂部208の形状となり、安全弁としての機能を持つことができるようになる。但し、この時点での最薄部209の肉厚tはまだ比較的大きいため、安全弁としての作動圧はかなり高いものとなる。
【0041】
図3(d)は、さらにパンチ210と弁部押さえ211が上方にZ3まで上昇したときの状態図を示す。パンチ210の先端外周角部の弧状部分とダイ212の穴角部の弧状部分で作られる空間の形に添って開裂部208の形状が形成される。従って、プレスの下死点を制御することにより、最薄部209の肉厚tも決定される。すなわち、所定の安全弁の作動圧を得ることができる。
【0042】
ここで、本発明では、プレスの下死点位置のばらつきがそのまま最薄部209の肉厚のばらつきにはならないことについて説明する。
【0043】
プレスを用いて安全弁を加工する従来例のほとんどすべては、プレスの下死点位置のばらつきが最薄部の肉厚のばらつきに直結する。すなわち、そのまま弁の作動圧がばらつくことになる。プレスの下死点位置はプレスのフレームの熱膨張などである程度の変動は避けられない。
【0044】
一方、本発明では、最薄部の肉厚はパンチの進行方向とほぼ直角をなす。従って、プレスの下死点位置のばらつきが、そのまま最薄部の肉厚のばらつきには直結しない。例えば、後述する図4に示すように、最薄部の軸線がパンチ進行方向と16.284°の角度を成す場合を考えると、パンチの下死点のばらつきがΔsのときの最薄部209の肉厚tのばらつきΔtは、Δt=Δs・sin16.284°=0.28・Δsとなる。すなわち、肉厚tのばらつきは、下死点位置ばらつきの1/3以下に縮小される。パンチの下死点位置のばらつきが最薄部の肉厚のばらつきに与える影響の感度が鈍いことは本発明固有の優れた特徴のひとつである。
【0045】
さらに従来例では、材料を押しつぶしたり材料の肉を移動させたりして成形するため、加工時に大きな力がプレスのフレームに掛かり、多少なりともフレームが変形する。本発明では、材料は引き伸ばしで成形するため、加工に必要な力は小さい。よって同じ剛性のプレスを使用すれば、本発明ではプレスのフレームの変形は小さいため、プレスの下死点位置のばらつきも小さくてすむという利点も有する。
【0046】
図3(e)は、さらにパンチ210と弁部押さえ211が上方にZ4まで上昇したときの状態図を示す。
【0047】
パンチ210の先端外周角部の弧状部分とダイ212の穴角部の弧状部分の上下方向の重なりが0となる位置のため(L=r1y+r2y)、最薄部209の肉厚が最小となる。すなわち、最薄部209の肉厚は、パンチ210とダイ212の嵌合時のクリアランスと等しくなり、これ以上に最薄部が薄くなることはないため、本発明の安全弁の作動圧としてはこの状態が最小値となる。
【0048】
なお、弁部と弁部周辺の蓋体の板厚はプレス時、クランプされるため、それぞれ元の材料の板厚より、わずかに薄くなることがある。
【0049】
かかる構成によれば、弁部207の肉厚は母体である蓋体202の板厚と等しく剛体とみなせ、弁部207にかかる電池内部圧力Pにより、弁部207に上向きに生じる力は、そのまま開裂部208に掛かる。従って、最も小さな断面積となる最薄部209において、電池内圧上昇時、電池外装容器の中では最大の内部応力が発生する。開裂部208は電池内部の圧力が弁部207にかかる力の方向に薄肉に伸ばされているため、開裂部208に発生する内部応力は、ほぼ引っ張り応力とみなせる。従って、材料の引っ張り強さが分かれば破断する電池内部圧力を計算することができる。
【0050】
例えば、引っ張り強度が95N/mm2の材料で、弁部207の凹部内径Dが18mmで、電池内部圧力Pが1MPaで作動する安全弁を作製するとする。このときの蓋体202の板厚は、充分な強度を持たせるため、1.5mm以上は必要である。電池内部圧力Pにより、弁部207に上方向にかかる力は、9mm×9mm×π×1MPa=254Nである。
【0051】
開裂部208の最薄部209の肉厚tを0.047mmとすると、最薄部209の軸方向の断面積Sは、(9+0.047)2・π−92・π=2.66mm2。従って、内部応力σは、254N/2.66mm2=95.4N/mm2となり、これはほぼ、材料の引っ張り強さに相当するため、開裂部208は最薄部209にて1MPaで破断することが期待される。
【0052】
このように、本発明の電池の安全弁は、簡単な計算で所望に近い作動圧の安全弁を設計できることが特徴である。通常の安全弁は薄膜の破れなど複雑な破壊モードとなるため、有限要素法を用いても正確に設計することは難しい。試行錯誤を繰り返しながら所望の破断強度を得ることになるが、本発明は、比較的簡単に所望の作動圧を有する安全弁を得ることができる。
【0053】
厳密に言うと、実際には実施の形態1では図4に示すように、開裂部208は若干の角度θを持つ。例えばパンチ210の先端外周角部の弧状形状を単純な円弧とし、大きさをr1=0.5mmとする。同様にダイ212の穴角部の弧状形状も単純な円弧とし、大きさを同じくr2=0.5mmとした場合を考えて見る。パンチ210とダイ212の嵌合時のクリアランスeを5μmとし、開裂部208の最薄部209の肉厚tを0.047mmにしようとした場合、θは16.284°となる。
【0054】
従って、この場合は引っ張り応力だけでなく、せん断力も発生する。計算すると引っ張り応力σxは91.9N/mm2、せん断力τxyは26.9N/mm2で主応力σ1は99.2N/mm2となる。すなわち、主応力の93%は引っ張り応力であることがわかるので、通常はほぼ引っ張り応力で破断するとみなしてよい。
【0055】
一方、図5は、図3に示したプレスを使用して開裂部208の形状を成形する場合の加工状態図であり、図3(e)よりさらにパンチ210と弁部押さえ211を上方にZ5まで上昇させたときの状態図を示す。
【0056】
開裂部208は、さらに引き伸ばされ最薄部209は円ではなく円筒状になり、円筒部の肉厚は、パンチ210とダイ212の嵌合時のクリアランスと等しい。現実的には、ここまで引き伸ばしを行うと材料の限界を超えクラックが発生し、通常のようには成形できない。また、仮にこの形状に成形できたとしても、開裂部208が薄肉円筒となり、弁部207の引っ張り応力ではなく、薄肉円筒の内圧による破壊モードが優勢となる。
【0057】
すなわち、内圧を受ける薄肉円筒の周方向の内部応力は、弁部207による軸方向の引っ張り応力よりも大きくなる。実際、内径18mm、肉厚0.047mmの薄肉円筒が1MPaの内圧を受けた場合の周方向の内部応力σを、近似式σ=r・P/t(ここでrは平均半径、Pは内部圧力、tは肉厚である)を用いて計算すると、192N/mm2となり、弁部207による引っ張り応力の2倍になる。
【0058】
これは、均一な肉厚の薄肉円筒の場合の数値である。実際には、パンチ210とダイ212は偏心するため、どうしても肉厚の薄い箇所が発生し、そこに応力が集中するため、より小さい内圧で破壊するうえ、偏心量がばらつくと破壊する圧力もばらつくという問題が発生する。しかし、図3(c)〜図3(e)に示す状態であれば、最薄部209以外の開裂部208は急激に肉厚が増すため引っ張り応力が優勢となる。弁部207による引っ張り応力では、パンチ210とダイ212が偏心しても、同じパンチとダイを使う限り最薄部209の断面積は同じのため、破壊する圧力は常に一定になる。
【0059】
すなわち、弁の作動圧ばらつきが小さい。よって、開裂部208の最薄部209は、開裂部208が伸ばされる方向に長さを持たないのが良い。すなわち、図3における図3(e)の状態が本発明におけるパンチ210の実用上の最大ストロークと考えてよい。
【0060】
以上のように、本発明の安全弁はプレス成形で、引き伸ばしにより開裂部が形成されるため、肉の移動・圧縮がなく従来の方法に比べて加工硬化が極めて小さい。よって、最薄肉厚が大きく取れ、クラックの恐れも少ない。また、0.3mmを超える板厚の蓋体でも1回のプレスで加工できるうえ、事前の切削加工や最後のつぶしも必要なく、生産性に優れる。更に、刻印のようにエッジ部がないため金型の寿命も長い。
【0061】
なお、本実施の形態において、弁部207の形状は円形としたが、楕円、四角形、角丸四角形、六角形などでも良い。
【0062】
また、開裂部208の破断応力の試算では、計算の単純化のためパンチ210の先端外周角部とダイ212の穴角部を円弧としたが、円弧でなくても良く、要は滑らかな弧状であれば良い。むしろ材料の流れからは蓋体に垂直方向の弧状部分の長さr1y、r2yより、蓋体に水平方向の弧状部分の長さr1x、r2xを大きめに取る方が好ましい(図3(a)参照)。
【0063】
更に、弁部押さえ211の先端外周角部と蓋体押さえ213の穴角部は直角としたが、パンチ210とダイ212と同様の弧状でも、面取りがなされていても良い。要はパンチ210とダイ212の弧状の大きさより小さく、パンチ210とダイ212の直線部分との間で弁部207と蓋体202を確実にクランプできればよい。
【0064】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2の電池の安全装置の分解斜視図である。図6において、図1および図2と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0065】
図6において、電池ケース301は複数の電池収納室302を持つ。蓋体303は電池ケース301の開口部に当接され接合されて、各電池収納室302を密閉する。蓋体303には複数の安全弁部206が、各々の電池収納室302に対応して設けられている。安全弁部206の個々の構造は実施の形態1と同じである。
【0066】
更に、ガス排出口304を有するカバー305が蓋体303にかぶせられて固定される。ガス排出口304は安全弁作動時に発生する高温高圧のガスを少しでも低温低圧にして外部へ排出するため、ガスが直接流れてしまう安全弁部206の方向にはなく、安全弁部206と直角方向にある。なお、図6では電池の内容物の記載を省いてある。
【0067】
かかる構成によれば、安全弁部206が単純な1回のプレスで成形可能なため、蓋体303は順送プレス金型で簡単に製作可能となり、また、個々の単電池ごとに封口する必要がなくなるため生産性が大幅に向上するという効果を有する。
【0068】
なお、カバー305は安全弁部206が作動した場合に噴出する高温高圧ガスをガス排出口304を通じて外部のダクトへ導くためのものであるが、安全弁部206を保護する役目も持つ。すなわち、本発明の安全弁部206の弁部207は、蓋体303外面より飛び出る構造のため、電池の取扱時、誤って外的に弁部207に力が加わり、強度が弱い開裂部208が破損する恐れがある。カバー305はそのような事態になるのを防ぐという効果も有する。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の電源装置は、大型の密閉電池を必要とするフォークリフトやハイブリッドカー、電気自動車などの車両用電源装置、電子機器のバックアップ電源および家庭用の蓄電池装置の電池の安全装置として好適に用いることができる。さらには電池用途に限らず、コンデンサーなどあらゆる金属密閉容器の防爆弁として、広く用いることができる。
【符号の説明】
【0070】
104,201,301 電池ケース
142,202,303 蓋体
203 絶縁ガスケット
204 負極端子
205 封止栓
141,206 安全弁部
143,207 弁部
147,208 開裂部
209 最薄部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関し、特に繰り返しの再充電が可能な二次電池に使用して好適な電池の安全装置、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電池の安全装置としては、電池ケースの底部に環状薄肉部を、先端に一定面積の平坦部を有するパンチおよび上記パンチの平坦部と相似形状で、その80〜98%の面積の押出し穴を有する平坦な受け型を用いて形成しているものがある(例えば、特許文献1参照)。図7は、特許文献1に記載された従来の電池の安全装置を示す図で、薄肉部形成用のパンチを下降させ、電池ケースの底部に押し込んだときの状態の要部拡大断面図である。
【0003】
図7において、パンチ101と押し出し穴102を有する受け型103によるプレス成形によって、電池ケース104の電池底部105の内部に凹部106、外部に凸部107を形成すると、ケース材料が矢印Pに示すように逃げて、パンチ平坦部108と対向する受け型平坦部109との間で薄肉部110が形成される。本構造により過充電や内部短絡等により、電池ケース104内の圧力が所定値以上になると、薄肉部110が破断して、電池ケース104の内部のガスを外部に放出し、電池の安全性を確保するようになっている。
【0004】
また、従来の電池の安全装置としては、弁体の周囲にプレス加工のハーフカットによって弱強度部を形成しているものがある(例えば、特許文献2参照)。図8は、特許文献2に記載された従来の電池の安全装置である防爆封口板を構成する下部弁体の平面図である。
【0005】
図8において、下部弁体111は図示しない上部弁体と電気的に接続される溶着部112を有している。溶着部112の周囲に弱強度部113がプレス加工のハーフカットにより形成されている。図9は図8のA−A´’断面の拡大図である。電池内圧が上昇すると弱強度部113がせん断力により破断し、上部弁体と下部弁体との電気的接続が遮断され、電池の安全性を確保するようになっている。
【0006】
なお、特許文献2では、ハーフカットによる弱強度部113を電気的切断に利用しているが、これはガスを放出するための安全弁としても使用できる。
【0007】
また、従来の電池の安全装置としては、弁体の周囲に馬蹄形状の薄肉部を、ウェットエッチングで形成しているものがある(例えば、特許文献3参照)。図10は、特許文献3に記載された従来の電池の安全装置を示す図で、安全弁の平面図と断面図である。
【0008】
図10において、安全弁121は直径21mm、厚み0.05mmのSUS304の薄板であり、中央部に外径15mm、内径13mm、厚み0.015mmの馬蹄形の彫り込み部122を有している。この彫り込み部122はウェットエッチングにて形成される。電池内圧が上昇すると彫り込み部122が破断し、電池内部のガスを外部に放出し、電池の安全性を確保するようになっている。
【0009】
また、従来の電池の安全装置としては、弁体の周囲を上下からV字状に刻印プレスし、弱強度部を形成しているものがある(例えば、特許文献4参照)。図11は、特許文献4に記載された従来の電池の安全装置を示す図で、防爆安全弁となる上部金属板の平面図と要部断面のプレス加工工程図である。
【0010】
図11において、上部金属板131は上面に輪郭形成溝132と下面に易変形溝133を有している。そして輪郭形成溝132と易変形溝133の間に薄肉部134が形成される。輪郭形成溝132と易変形溝133は刻印パンチ135で成形される。電池内圧が上昇すると薄肉部134が破断し、電池内部のガスを外部に放出し、電池の安全性を確保するようになっている。
【0011】
また、従来の電池の安全装置としては、蓋体と弁体の間の開裂部を曲げ伸ばしとつぶし加工で薄肉に形成しているものがある(例えば、特許文献5参照。)。図12は、特許文献5に記載された従来の電池の安全装置を示す図で、安全弁部の断面図である。図13は同開裂部の拡大図である。
【0012】
図12において、安全弁部141は蓋体142の板厚内に形成され、弁部143と蓋体142との間に連結部144を有している。連結部144は、蓋体142と弁部143を繋ぐ肉部が曲げ伸ばしされて、弁部143よりも薄肉に形成される。
【0013】
図13において、さらに連結部144は第1の金型145の凸部146によりV字型のつぶしが入れられ、さらに薄肉の開裂部147が形成される。電池内圧が上昇すると開裂部147が破断し、電池内部のガスを外部に放出し、電池の安全性を確保するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平2−284347号公報
【特許文献2】特開平9−129208号公報
【特許文献3】特開2000−311669号公報
【特許文献4】特開2001−23595号公報
【特許文献5】特開2004−111155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている従来の構成では、薄肉部110の形成時、薄肉部110に圧縮応力が集中して加工硬化が起こり、脆くなるとともに加工硬化によって硬度が増すため、所定値以上の圧力で開裂させるための薄肉部110の肉厚をさらに薄肉にする必要がある。その結果、肉厚の精度が要求されて、均一な肉厚を得るのが難しくなり、弁の作動圧がばらつく。さらには最悪の場合クラックが生じるという課題を有している。
【0016】
また、上記特許文献2に開示されている従来の構成では、ハーフカットで弱強度部113を形成するため、下部弁体111の板厚が0.3mm以下の薄板であれば可能だが、例えば大型電池などでそれ以上の厚板が必要な場合はプレス時に発生するせん断力で必要な薄肉にする前に切れてしまい、成形できないという課題を有している。
【0017】
また、上記特許文献3に開示されている従来の構成では、ウェットエッチングで彫り込み部122を形成するため、プレスを用いて成形する場合と比べて寸法精度が悪く弁の作動圧がばらつく上、生産性が悪いという課題を有している。
【0018】
また、上記特許文献4に開示されている従来の構成では、薄肉部134を刻印パンチ135でV字型に上下から打って刻印で形成するため、刻印深さには限界があり、上部金属板131の板厚が厚いと薄肉部134が形成されず、適用できないという課題を有している。また、刻印パンチ135の寿命が短い上に薄肉部134の材料の加工硬化が大きく、結果的に弁の作動圧がばらつくという課題も有している。
【0019】
更に、上記特許文献5に開示されている従来の構成では、開裂部147は曲げ伸ばしで形成されるというものの、最後は凸部146を有する第1の金型145にてV字断面にするためのつぶしが入るため、加工硬化がやはり生じてしまう。さらには前工程として蓋体142よりも薄い弁部143を形成するための切削加工などの前処理が必要で生産性が悪いという課題も有している。
【0020】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、比較的板厚が厚い蓋体を必要とする大型電池などにおいても、1回のプレス成形にて製作可能で、かつ金型の寿命も長く、加工硬化が小さいため弁の作動圧のばらつきの小さい構造の電源装置、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者は、電池の安全弁の開裂部を、単純な引き伸ばしにて成形し引っ張り応力で破断させる構造とすることで、破断メカニズムが単純で、かつ加工硬化が小さいため弁の作動圧のばらつきが小さい安全弁を実現できることを見出し、さらに検討を加え発明を完成させた。
【0022】
すなわち、本発明は以下に示される電源装置に関する。
【0023】
[1]電池ケースの内部を気密に遮蔽する金属板材からなる蓋体と、この蓋体の一部に形成され、前記電池ケース内の圧力が所定値以上に上昇すると破壊して、前記電池ケース内の気体を外部に放出する安全弁部とを備え、前記安全弁部は、前記蓋体の板厚と同じ厚みを有し、前記蓋体よりも電池外側に位置する弁部と、この弁部と前記蓋体との間で、前記弁部の外周に形成され、前記蓋体から電池の外側に向かって前記弁部へと繋ぐ肉部が前記蓋体厚みよりも薄い開裂部とを有し、前記開裂部はさらに最薄部を有し、前記最薄部から前記蓋体に向かって肉厚を次第に増し、前記蓋体厚みとなり、同様に前記最薄部から前記弁部に向かっても肉厚を次第に増し、前記弁部厚みとなる形状であり、かつ前記弁部の内表面が前記蓋体の外表面より電池外側に位置していることを特徴とする電源装置。
【0024】
[2]電池ケースが複数の電池収納室を有する組電池で、複数の前記安全弁部を有する1枚の蓋体が、前記電池収納室をそれぞれ気密に遮蔽することを特徴とする[1]記載の電源装置。
【0025】
[3]前記安全弁部近傍の電池外部空間を遮蔽し、弁の方向には開口部がなく、弁と直角方向に開口部を持つカバーを有することを特徴とする[2]記載の電源装置。
【0026】
[4]電池ケースの内部を気密に遮蔽する金属板材からなる蓋体と、この蓋体の一部に形成され、前記電池ケース内の圧力が所定値以上に上昇すると破壊して、前記電池ケース内の気体を外部に放出する安全弁部とを備え、前記安全弁部は、前記蓋体の板厚と同じ厚みを有し、前記蓋体よりも電池外側に位置する弁部と、この弁部と前記蓋体との間で、前記弁部の外周に形成され、前記蓋体から電池の外側に向かって前記弁部へと繋ぐ肉部が前記蓋体厚みよりも薄い開裂部を有する電池の安全装置において、前記開裂部は金型で成形し、前記弁部を押すパンチの先端外周角部および前記蓋部を受けるダイの穴角部をそれぞれに滑らかな弧状とし、パンチの下死点にてパンチの先端外周角部の弧とダイの穴角部の弧でつくられる隙間で最薄部を成形するとともに、前記最薄部から滑らかに前記蓋体と前記弁体に繋がる前記開裂部を成形し、前記パンチの下死点はパンチの先端面がダイの表面よりも深い位置としたことを特徴とする電源装置の製造方法。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明の電源装置、およびその製造方法によれば、0.3mmを超える比較的厚い蓋体であっても1回のプレス成形で加工硬化が小さい安全弁を形成できる。したがって対応範囲が広く、弁の作動圧のばらつきが小さく、生産性にすぐれる電池の安全装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1における安全装置を含む電池の平面図
【図2】本発明の実施の形態1における安全装置を含む電池の断面図
【図3】本発明の実施の形態1における安全装置の加工工程図
【図4】本発明の実施の形態1における電池の安全装置の断面図
【図5】本発明の実施の形態1における安全装置の不適切な加工図
【図6】本発明の実施の形態2における安全弁部を含む組電池の斜視図
【図7】特許文献1に記載された従来の電池の安全装置を示す図
【図8】特許文献2に記載された従来の電池の安全装置を示す図
【図9】特許文献2に記載された従来の電池の安全装置の拡大断面図
【図10】特許文献3に記載された従来の電池の安全装置を示す図
【図11】特許文献4に記載された従来の電池の安全装置を示す図
【図12】特許文献5に記載された従来の電池の安全装置を示す図
【図13】特許文献5に記載された従来の電池の開裂部の拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0030】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における安全装置を有する電池の平面図、図2は、図1に示すX−X断面図である。図3は、同安全装置の加工工程図、図4は同電池の安全装置部の拡大断面図を示す。
【0031】
図1および図2において、電池ケース201と蓋体202で電池外装容器を構成している。電池ケース201と蓋体202の材料は金属で、軽量化のため通常アルミニウムであることが多い。電池ケース201を深絞り加工により袋状に加工し、開口部を蓋体202で閉じる構造となっている。電池ケース201と蓋体202は、接触面全周を溶接等で完全に接合され気密が保たれている。蓋体202には2個の穴がある。1個目の穴は、負極電極の取り出し用で絶縁ガスケット203を介して負極端子204をかしめることで閉じられる。なお、正極端子は電池ケース201または蓋体202で兼ねられる。2個目の穴は、電解液の注液用で、注液後に封止栓205が接合されて閉じられる。このように密閉電池が構成される。
【0032】
また、蓋体202は、2個の穴以外に安全弁部206を有する。安全弁部206は、弁部207と開裂部208から構成される。弁部207は、円形状で蓋体202の板厚と同じ厚みを有している。弁部207は、弁部207の外周に形成され蓋体202から電池外装容器の外側に向かって弁部207の厚みよりも薄肉に引き伸ばしされた開裂部208で蓋体202とつながりを維持している。開裂部208は中央部が最薄部209となっており、図2において最薄部209より上方に行くほど次第に厚くなり弁部207の板厚になる。
【0033】
同様に図2において、開裂部208は中央の最薄部209より下方に行くほど次第に厚くなり蓋体202の板厚になる。弁部207の下面は蓋体202の上面より上方、すなわち電池外側に位置している。なお、図2では電池の内容物の記載を省いてある。
【0034】
図3はプレス金型を使用して開裂部208の形状を成形する場合の加工状態図で、図2のY部を抜き出して開裂部形状の変遷を(a)〜(e)で順に示している。
【0035】
まず、図3(a)において、加工前の蓋体板材の弁部207となる部分に下側からパンチ210をあて、上から弁部押さえ211で弁部207となる部分をクランプする。このときパンチ210の先端外周角部は滑らかな弧状となっており、蓋体板材との間には空隙214がある。一方、弁部押さえ211の先端外周角部は直角であり、蓋体板材との間に空隙は存在しない。同様に弁部207となる部分の外側周囲に上側からダイ212をあて、下から蓋体押さえ213で蓋体202をクランプする。
【0036】
このときダイ212の穴角部は滑らかな弧状となっており、蓋体202との間には空隙215がある。一方、蓋体押さえ213の穴角部は直角であり、蓋体202との間に空隙は存在しない。空隙214と空隙215に接する蓋体板材の部分が変形部216で、後に開裂部208となる部分である。
【0037】
なお、パンチ210とダイ212の嵌合時のクリアランスは0でも良いが、安全のためわずかに隙間を持たせている。
【0038】
図3(b)は、前記加工前状態から、パンチ210と弁部押さえ211が一体となって上方にZ1だけ上昇したときの状態図を示す。基本的に蓋体202として残る部分と弁部207となる部分はそれぞれクランプされているため、この部分の材料が変形部216に流れ込むことは基本的にはなく、自由度を持つ変形部216のみが主に引っ張りで伸ばされて後の開裂部208となる。
【0039】
図3(c)は、さらにパンチ210と弁部押さえ211が上方にZ2まで上昇したときの状態図を示す。
【0040】
このとき、弁部207の電池内側表面が蓋体202の電池外側表面と同じ位置にある(L=0)。ここまでパンチが上昇すると、変形部216は蓋体板厚よりも薄い最薄部209を有する開裂部208の形状となり、安全弁としての機能を持つことができるようになる。但し、この時点での最薄部209の肉厚tはまだ比較的大きいため、安全弁としての作動圧はかなり高いものとなる。
【0041】
図3(d)は、さらにパンチ210と弁部押さえ211が上方にZ3まで上昇したときの状態図を示す。パンチ210の先端外周角部の弧状部分とダイ212の穴角部の弧状部分で作られる空間の形に添って開裂部208の形状が形成される。従って、プレスの下死点を制御することにより、最薄部209の肉厚tも決定される。すなわち、所定の安全弁の作動圧を得ることができる。
【0042】
ここで、本発明では、プレスの下死点位置のばらつきがそのまま最薄部209の肉厚のばらつきにはならないことについて説明する。
【0043】
プレスを用いて安全弁を加工する従来例のほとんどすべては、プレスの下死点位置のばらつきが最薄部の肉厚のばらつきに直結する。すなわち、そのまま弁の作動圧がばらつくことになる。プレスの下死点位置はプレスのフレームの熱膨張などである程度の変動は避けられない。
【0044】
一方、本発明では、最薄部の肉厚はパンチの進行方向とほぼ直角をなす。従って、プレスの下死点位置のばらつきが、そのまま最薄部の肉厚のばらつきには直結しない。例えば、後述する図4に示すように、最薄部の軸線がパンチ進行方向と16.284°の角度を成す場合を考えると、パンチの下死点のばらつきがΔsのときの最薄部209の肉厚tのばらつきΔtは、Δt=Δs・sin16.284°=0.28・Δsとなる。すなわち、肉厚tのばらつきは、下死点位置ばらつきの1/3以下に縮小される。パンチの下死点位置のばらつきが最薄部の肉厚のばらつきに与える影響の感度が鈍いことは本発明固有の優れた特徴のひとつである。
【0045】
さらに従来例では、材料を押しつぶしたり材料の肉を移動させたりして成形するため、加工時に大きな力がプレスのフレームに掛かり、多少なりともフレームが変形する。本発明では、材料は引き伸ばしで成形するため、加工に必要な力は小さい。よって同じ剛性のプレスを使用すれば、本発明ではプレスのフレームの変形は小さいため、プレスの下死点位置のばらつきも小さくてすむという利点も有する。
【0046】
図3(e)は、さらにパンチ210と弁部押さえ211が上方にZ4まで上昇したときの状態図を示す。
【0047】
パンチ210の先端外周角部の弧状部分とダイ212の穴角部の弧状部分の上下方向の重なりが0となる位置のため(L=r1y+r2y)、最薄部209の肉厚が最小となる。すなわち、最薄部209の肉厚は、パンチ210とダイ212の嵌合時のクリアランスと等しくなり、これ以上に最薄部が薄くなることはないため、本発明の安全弁の作動圧としてはこの状態が最小値となる。
【0048】
なお、弁部と弁部周辺の蓋体の板厚はプレス時、クランプされるため、それぞれ元の材料の板厚より、わずかに薄くなることがある。
【0049】
かかる構成によれば、弁部207の肉厚は母体である蓋体202の板厚と等しく剛体とみなせ、弁部207にかかる電池内部圧力Pにより、弁部207に上向きに生じる力は、そのまま開裂部208に掛かる。従って、最も小さな断面積となる最薄部209において、電池内圧上昇時、電池外装容器の中では最大の内部応力が発生する。開裂部208は電池内部の圧力が弁部207にかかる力の方向に薄肉に伸ばされているため、開裂部208に発生する内部応力は、ほぼ引っ張り応力とみなせる。従って、材料の引っ張り強さが分かれば破断する電池内部圧力を計算することができる。
【0050】
例えば、引っ張り強度が95N/mm2の材料で、弁部207の凹部内径Dが18mmで、電池内部圧力Pが1MPaで作動する安全弁を作製するとする。このときの蓋体202の板厚は、充分な強度を持たせるため、1.5mm以上は必要である。電池内部圧力Pにより、弁部207に上方向にかかる力は、9mm×9mm×π×1MPa=254Nである。
【0051】
開裂部208の最薄部209の肉厚tを0.047mmとすると、最薄部209の軸方向の断面積Sは、(9+0.047)2・π−92・π=2.66mm2。従って、内部応力σは、254N/2.66mm2=95.4N/mm2となり、これはほぼ、材料の引っ張り強さに相当するため、開裂部208は最薄部209にて1MPaで破断することが期待される。
【0052】
このように、本発明の電池の安全弁は、簡単な計算で所望に近い作動圧の安全弁を設計できることが特徴である。通常の安全弁は薄膜の破れなど複雑な破壊モードとなるため、有限要素法を用いても正確に設計することは難しい。試行錯誤を繰り返しながら所望の破断強度を得ることになるが、本発明は、比較的簡単に所望の作動圧を有する安全弁を得ることができる。
【0053】
厳密に言うと、実際には実施の形態1では図4に示すように、開裂部208は若干の角度θを持つ。例えばパンチ210の先端外周角部の弧状形状を単純な円弧とし、大きさをr1=0.5mmとする。同様にダイ212の穴角部の弧状形状も単純な円弧とし、大きさを同じくr2=0.5mmとした場合を考えて見る。パンチ210とダイ212の嵌合時のクリアランスeを5μmとし、開裂部208の最薄部209の肉厚tを0.047mmにしようとした場合、θは16.284°となる。
【0054】
従って、この場合は引っ張り応力だけでなく、せん断力も発生する。計算すると引っ張り応力σxは91.9N/mm2、せん断力τxyは26.9N/mm2で主応力σ1は99.2N/mm2となる。すなわち、主応力の93%は引っ張り応力であることがわかるので、通常はほぼ引っ張り応力で破断するとみなしてよい。
【0055】
一方、図5は、図3に示したプレスを使用して開裂部208の形状を成形する場合の加工状態図であり、図3(e)よりさらにパンチ210と弁部押さえ211を上方にZ5まで上昇させたときの状態図を示す。
【0056】
開裂部208は、さらに引き伸ばされ最薄部209は円ではなく円筒状になり、円筒部の肉厚は、パンチ210とダイ212の嵌合時のクリアランスと等しい。現実的には、ここまで引き伸ばしを行うと材料の限界を超えクラックが発生し、通常のようには成形できない。また、仮にこの形状に成形できたとしても、開裂部208が薄肉円筒となり、弁部207の引っ張り応力ではなく、薄肉円筒の内圧による破壊モードが優勢となる。
【0057】
すなわち、内圧を受ける薄肉円筒の周方向の内部応力は、弁部207による軸方向の引っ張り応力よりも大きくなる。実際、内径18mm、肉厚0.047mmの薄肉円筒が1MPaの内圧を受けた場合の周方向の内部応力σを、近似式σ=r・P/t(ここでrは平均半径、Pは内部圧力、tは肉厚である)を用いて計算すると、192N/mm2となり、弁部207による引っ張り応力の2倍になる。
【0058】
これは、均一な肉厚の薄肉円筒の場合の数値である。実際には、パンチ210とダイ212は偏心するため、どうしても肉厚の薄い箇所が発生し、そこに応力が集中するため、より小さい内圧で破壊するうえ、偏心量がばらつくと破壊する圧力もばらつくという問題が発生する。しかし、図3(c)〜図3(e)に示す状態であれば、最薄部209以外の開裂部208は急激に肉厚が増すため引っ張り応力が優勢となる。弁部207による引っ張り応力では、パンチ210とダイ212が偏心しても、同じパンチとダイを使う限り最薄部209の断面積は同じのため、破壊する圧力は常に一定になる。
【0059】
すなわち、弁の作動圧ばらつきが小さい。よって、開裂部208の最薄部209は、開裂部208が伸ばされる方向に長さを持たないのが良い。すなわち、図3における図3(e)の状態が本発明におけるパンチ210の実用上の最大ストロークと考えてよい。
【0060】
以上のように、本発明の安全弁はプレス成形で、引き伸ばしにより開裂部が形成されるため、肉の移動・圧縮がなく従来の方法に比べて加工硬化が極めて小さい。よって、最薄肉厚が大きく取れ、クラックの恐れも少ない。また、0.3mmを超える板厚の蓋体でも1回のプレスで加工できるうえ、事前の切削加工や最後のつぶしも必要なく、生産性に優れる。更に、刻印のようにエッジ部がないため金型の寿命も長い。
【0061】
なお、本実施の形態において、弁部207の形状は円形としたが、楕円、四角形、角丸四角形、六角形などでも良い。
【0062】
また、開裂部208の破断応力の試算では、計算の単純化のためパンチ210の先端外周角部とダイ212の穴角部を円弧としたが、円弧でなくても良く、要は滑らかな弧状であれば良い。むしろ材料の流れからは蓋体に垂直方向の弧状部分の長さr1y、r2yより、蓋体に水平方向の弧状部分の長さr1x、r2xを大きめに取る方が好ましい(図3(a)参照)。
【0063】
更に、弁部押さえ211の先端外周角部と蓋体押さえ213の穴角部は直角としたが、パンチ210とダイ212と同様の弧状でも、面取りがなされていても良い。要はパンチ210とダイ212の弧状の大きさより小さく、パンチ210とダイ212の直線部分との間で弁部207と蓋体202を確実にクランプできればよい。
【0064】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2の電池の安全装置の分解斜視図である。図6において、図1および図2と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0065】
図6において、電池ケース301は複数の電池収納室302を持つ。蓋体303は電池ケース301の開口部に当接され接合されて、各電池収納室302を密閉する。蓋体303には複数の安全弁部206が、各々の電池収納室302に対応して設けられている。安全弁部206の個々の構造は実施の形態1と同じである。
【0066】
更に、ガス排出口304を有するカバー305が蓋体303にかぶせられて固定される。ガス排出口304は安全弁作動時に発生する高温高圧のガスを少しでも低温低圧にして外部へ排出するため、ガスが直接流れてしまう安全弁部206の方向にはなく、安全弁部206と直角方向にある。なお、図6では電池の内容物の記載を省いてある。
【0067】
かかる構成によれば、安全弁部206が単純な1回のプレスで成形可能なため、蓋体303は順送プレス金型で簡単に製作可能となり、また、個々の単電池ごとに封口する必要がなくなるため生産性が大幅に向上するという効果を有する。
【0068】
なお、カバー305は安全弁部206が作動した場合に噴出する高温高圧ガスをガス排出口304を通じて外部のダクトへ導くためのものであるが、安全弁部206を保護する役目も持つ。すなわち、本発明の安全弁部206の弁部207は、蓋体303外面より飛び出る構造のため、電池の取扱時、誤って外的に弁部207に力が加わり、強度が弱い開裂部208が破損する恐れがある。カバー305はそのような事態になるのを防ぐという効果も有する。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の電源装置は、大型の密閉電池を必要とするフォークリフトやハイブリッドカー、電気自動車などの車両用電源装置、電子機器のバックアップ電源および家庭用の蓄電池装置の電池の安全装置として好適に用いることができる。さらには電池用途に限らず、コンデンサーなどあらゆる金属密閉容器の防爆弁として、広く用いることができる。
【符号の説明】
【0070】
104,201,301 電池ケース
142,202,303 蓋体
203 絶縁ガスケット
204 負極端子
205 封止栓
141,206 安全弁部
143,207 弁部
147,208 開裂部
209 最薄部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池ケースと、
前記電池ケースの内部を気密に遮蔽する金属材からなる蓋体と、
前記蓋体の一部に形成され、前記電池ケースの内部の圧力が所定値以上になると破壊される安全弁部とを備え、
前記安全弁部は、前記蓋体と連続的に形成されてなり、前記蓋体の外側表面よりも外側に突出する弁部と、前記弁部の外周に形成されかつ前記弁部と前記蓋体とを繋ぐ開裂部とを有し、前記開裂部の厚みは、前記弁部の厚みよりも薄いこと、
を特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記開裂部は更に最薄部を有し、前記最薄部から前記蓋体に向かって肉厚を次第に増加し、かつ、前記最薄部から前記弁部に向かって肉厚を次第に増加する形状である、請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記電池ケースは、複数の電池収納室を有する組電池であって、
複数の安全弁部を有する1枚の蓋体が、前記複数の電池収納室それぞれに対して気密に遮蔽する、請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記安全弁部の近傍の電池外部空間を遮蔽し、弁の方向には開口部がなく、弁と直角方向に開口部を持つカバーを有する、請求項3記載の電源装置。
【請求項5】
電池ケースの内部を気密に遮蔽する金属板材からなる蓋体と、
この蓋体の一部に形成され、前記電池ケース内の圧力が所定値以上に上昇すると破壊して、前記電池ケース内の気体を外部に放出する安全弁部とを備え、
前記安全弁部は、前記蓋体の板厚と同じ厚みを有し、前記蓋体よりも電池外側に位置する弁部と、
この弁部と前記蓋体との間で、前記弁部の外周に形成され、前記蓋体から電池の外側に向かって前記弁部へと繋ぐ肉部が前記蓋体厚みよりも薄い開裂部を有する電池の安全装置において、
前記開裂部は金型で成形し、前記弁部を押すパンチの先端外周角部および前記蓋体を受けるダイの穴角部をそれぞれに滑らかな弧状とし、パンチの下死点にてパンチの先端外周角部の弧とダイの穴角部の弧でつくられる隙間で最薄部を成形するとともに、前記最薄部から滑らかに前記蓋体と前記弁部に繋がる前記開裂部を成形し、
前記パンチの下死点はパンチの先端面がダイの表面よりも深い位置としたこと、
を特徴とする電源装置。
【請求項1】
電池ケースと、
前記電池ケースの内部を気密に遮蔽する金属材からなる蓋体と、
前記蓋体の一部に形成され、前記電池ケースの内部の圧力が所定値以上になると破壊される安全弁部とを備え、
前記安全弁部は、前記蓋体と連続的に形成されてなり、前記蓋体の外側表面よりも外側に突出する弁部と、前記弁部の外周に形成されかつ前記弁部と前記蓋体とを繋ぐ開裂部とを有し、前記開裂部の厚みは、前記弁部の厚みよりも薄いこと、
を特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記開裂部は更に最薄部を有し、前記最薄部から前記蓋体に向かって肉厚を次第に増加し、かつ、前記最薄部から前記弁部に向かって肉厚を次第に増加する形状である、請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記電池ケースは、複数の電池収納室を有する組電池であって、
複数の安全弁部を有する1枚の蓋体が、前記複数の電池収納室それぞれに対して気密に遮蔽する、請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記安全弁部の近傍の電池外部空間を遮蔽し、弁の方向には開口部がなく、弁と直角方向に開口部を持つカバーを有する、請求項3記載の電源装置。
【請求項5】
電池ケースの内部を気密に遮蔽する金属板材からなる蓋体と、
この蓋体の一部に形成され、前記電池ケース内の圧力が所定値以上に上昇すると破壊して、前記電池ケース内の気体を外部に放出する安全弁部とを備え、
前記安全弁部は、前記蓋体の板厚と同じ厚みを有し、前記蓋体よりも電池外側に位置する弁部と、
この弁部と前記蓋体との間で、前記弁部の外周に形成され、前記蓋体から電池の外側に向かって前記弁部へと繋ぐ肉部が前記蓋体厚みよりも薄い開裂部を有する電池の安全装置において、
前記開裂部は金型で成形し、前記弁部を押すパンチの先端外周角部および前記蓋体を受けるダイの穴角部をそれぞれに滑らかな弧状とし、パンチの下死点にてパンチの先端外周角部の弧とダイの穴角部の弧でつくられる隙間で最薄部を成形するとともに、前記最薄部から滑らかに前記蓋体と前記弁部に繋がる前記開裂部を成形し、
前記パンチの下死点はパンチの先端面がダイの表面よりも深い位置としたこと、
を特徴とする電源装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−243433(P2012−243433A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109994(P2011−109994)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]