説明

電源装置

【課題】大電流を短時間で充放電することができ、小型化が可能な電源装置を提供する。
【解決手段】電極活物質と導電助剤とを含む正極と、負極と、電解質と、を有し、前記電極活物質の電極反応によって充放電する二次電池と、外部の電源から供給される電力により前記二次電池を充電する充電制御手段と、前記二次電池に充電された電力を外部機器に出力する出力手段と、を備える電源装置において、前記電極反応における反応物または生成物が中性のラジカル化合物、ルベアン酸構造を有する化合物、または共役ジアミン構造を有する化合物を少なくとも1種含むことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電源装置に関するものである。特に、電極活物質の電極反応によって充放電する二次電池を備える電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ等の携帯用電子機器を始めとして、自動車やロボット等、二次電池を搭載した機器の普及が進んでいる。このような機器において、機器の駆動によって電池が放電した場合には、充電しない限り次の使用ができない。しかしながら、現在普及しているニッケル水素電池やリチウムイオン二次電池は充電に1時間から数時間を要するため、この間機器の駆動が制限されることとなる。そのため、充電時間を短縮できるような電池の開発が進められている。
【0003】
しかし、短時間で電池に充電しようとする場合には、充電装置が大電力を出力する必要がある。そのためには、例えば交流から直流へ整流するための部品を大型化する必要があり、充電装置自体が大型化するという問題が生じる。
【0004】
短時間充電に伴う充電装置の大型化という問題への対応としては、充電装置に急速充電可能な充電式電池を組み込むことが考えられる。例えば、特許文献1には、充電式電池を組み込んだ、出力を外部に供給する電源として用いられる補助電源装置が開示されており、その充電式電池は10C以上の電流で急速充電可能なリチウムイオン電池からなるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−60718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載の補助電源装置は、短時間で充電可能という利点があるものの、組み込まれているリチウムイオン電池はリチウムチタン酸化物を電極活物質として負極に使用したものであるため、充放電電圧は2V以下である。したがって、大電流の充放電を想定していない構成であることは明らかである。
【0007】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、大電流を短時間で充放電することができ、小型化が可能な電源装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
近年、有機化合物を正極の電極活物質とする二次電池が提案されている。このような二次電池には、有機ラジカル化合物を利用したもの等があり、研究開発が盛んに行われている。
【0009】
有機ラジカル化合物は、電子軌道の最外殻に不対電子であるラジカルを有している。このラジカルは、一般に反応性に富んだ化学種であり、周囲の物質との相互作用によってある程度の寿命で消失するものが多いが、共鳴効果や立体障害や溶媒和の状態によっては安定したものとなる。そして、ラジカルは反応速度が速いため、安定ラジカルの酸化還元反応を利用して充放電を行うことにより、充電時間を短時間で完了させることが可能となる。
【0010】
本発明者は、二次電池を備え、大電流を出力できる電源装置を得るべく鋭意研究したところ、二次電池と、充電制御手段と、出力手段と、を備える電源装置において、二次電池の正極の電極反応における反応物または生成物が中性のラジカル化合物である場合に、安定して大電流を放電する電源装置が得られるという知見を得た。
【0011】
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係る電源装置は、電極活物質と導電助剤とを含む正極と、負極と、電解質と、を有し、前記電極活物質の電極反応によって充放電する二次電池と、外部の電源から供給される電力により前記二次電池を充電する充電制御手段と、前記二次電池に充電された電力を外部機器に出力する出力手段と、を備える電源装置において、前記電極反応における反応物または生成物が中性のラジカル化合物、ルベアン酸構造を有する化合物、または共役ジアミン構造を有する化合物を少なくとも1種含むことを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係る電源装置では、前記中性のラジカル化合物がニトロキシルラジカル系安定ラジカル化合物であることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る電源装置では、前記ニトロキシルラジカル系安定ラジカル化合物が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルラジカルを分子構造中に含む化合物であることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る電源装置では、前記ルベアン酸構造を有する化合物が、一般式
【0015】
【化1】

【0016】
[式中、R1およびR2は置換または非置換のイミノ基、置換または非置換のアルキレン基、もしくは置換または非置換のアリーレン基である。]
で表されることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る電源装置では、前記共役ジアミン構造を有する化合物が、一般式
【0018】
【化2】

【0019】
[式中、R1およびR2は置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルキレン基、置換または非置換のアリーレン基、置換または非置換のカルボニル基、置換または非置換のアシル基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のエステル基、置換または非置換のエーテル基、置換または非置換のチオエーテル基、置換または非置換のアミン基、置換または非置換のアミド基、置換または非置換のスルホン基、置換または非置換のチオスルホニル基、置換または非置換のスルホンアミド基、置換または非置換のイミン基、置換または非置換のアゾ基、もしくはこれらの1以上の組み合わせからなる連結基を示す。X1〜X4はハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換の芳香族炭化水素基、置換または非置換の芳香族複素環基、置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換のアミノ基、置換または非置換のアルコキシ基、置換または非置換のアリールオキシ基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のアリールオキシカルボニル基、置換または非置換のアシル基、もしくは置換または非置換のアシルオキシ基を示す。これらの置換基は置換基同士で環構造を形成していてもよい。]
で表されることが好ましい。
【0020】
また、本発明に係る電源装置では、前記共役ジアミン構造を有する化合物が、一般式
【0021】
【化3】

【0022】
[式中、R1およびR2は置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルキレン基、置換または非置換のアリーレン基、置換または非置換のカルボニル基、置換または非置換のアシル基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のエステル基、置換または非置換のエーテル基、置換または非置換のチオエーテル基、置換または非置換のアミン基、置換または非置換のアミド基、置換または非置換のスルホン基、置換または非置換のチオスルホニル基、置換または非置換のスルホンアミド基、置換または非置換のイミン基、置換または非置換のアゾ基、もしくはこれらの1以上の組み合わせからなる連結基を示す。X5〜X12はハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換の芳香族炭化水素基、置換または非置換の芳香族複素環基、置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換のアミノ基、置換または非置換のアルコキシ基、置換または非置換のアリールオキシ基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のアリールオキシカルボニル基、置換または非置換のアシル基、もしくは置換または非置換のアシルオキシ基を示す。これらの置換基は置換基同士で環構造を形成していてもよい。]
で表されることが好ましい。
【0023】
また、本発明に係る電源装置では、前記導電助剤が粒子状の炭素材料であることが好ましい。
【0024】
また、本発明に係る電源装置では、前記二次電池は複数が直列に接続されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、大電流を短時間で充放電することができ、小型化が可能な電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る電源装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
【0028】
図1は、本発明に係る電源装置を示すブロック図である。
【0029】
本発明に係る電源装置は、充電制御手段と、二次電池と、出力手段と、を備えている。電源装置は、外部の電源から電力を供給されて、外部機器に電力を出力するものである。外部の電源の例としては、商用電源や家庭用電源等の交流の電源や、太陽光発電装置から供給される直流の電源が挙げられる。また、外部機器の例としては、電気自動車や、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、ノートパソコン、携帯電話、携帯情報端末等が挙げられる。
【0030】
外部の電源から供給される電力は、図中の(1)の経路を経て充電制御手段へ入力される。外部の電源が交流である場合には、電源装置内に交流−直流変換手段を設けて、充電制御手段に入る前に直流に変換してもよい。あるいは、充電制御手段の中に交流−直流変換機能を備えてもよい。
【0031】
充電制御手段は、図中の(3)の経路を経て、二次電池に電力を供給して、二次電池を充電する。充電された二次電池は、(4)→(5)の経路を経て、出力手段から外部機器に電力を出力する。
【0032】
充電制御手段は、二次電池に電力を供給する役割の他に、外部の電源から供給される電力を、出力手段を介して、(1)→(2)→(5)の経路を経て、直接外部機器にも供給する役割を有する。
【0033】
出力手段は、二次電池からと充電制御手段からの2系統の電力を外部機器に出力する。例えば、外部機器を電源装置に接続していない間に二次電池に充電しておき、外部機器を電源装置に接続した際に、二次電池からと充電制御手段からとの2系統の電力を合わせて出力することで、短時間の充電が可能である。なお、2系統の電力のうち、一方のみを出力してもよい。また、2系統を所定のタイミングで切り替えるスイッチング機能を有していてもよい。
【0034】
なお、充電制御手段や出力手段の少なくとも一方は、外部機器や二次電池に対応した電圧に昇圧する昇圧機能や、降圧する降圧機能を有していてもよい。また、本発明に係る電源装置は、必要に応じて、電圧制御回路、保護回路、電池残量監視回路、または表示回路を有していてもよい。
【0035】
二次電池は、電極活物質の電極反応によって充放電を行う。本発明では、二次電池は、電極活物質と導電助剤とを含む正極と、負極と、電解質と、を有している。そして、正極の電極反応における反応物または生成物が、中性のラジカル化合物、ルベアン酸構造を有する化合物、または共役ジアミン構造を有する化合物であることを特徴としている。この場合には、二次電池は入力電圧を上回る出力電圧を出力することができるため、大電流を短時間で充放電することが可能である。また、上記の化合物は、単位体積当たりの出力密度が大きいため、電源装置の小型化が可能である。
【0036】
二次電池は、複数が直列に接続されている状態が好ましい。二次電池は、1個当たりの電圧が現状では数Vレベルと低いため、例えば電圧を数百Vレベルにまで上げるためには、複数を直列に接続する必要がある。
【0037】
正極の電極反応における反応物または生成物が上記の有機ラジカル化合物の場合に、電圧と導電率の関係をみると、電圧が酸化還元電圧の値で導電率が極大となる。したがって、電圧が酸化還元電圧の値よりも少しずれた場合には、導電率が下がるため、電流が流れにくくなる。すなわち、上記の有機ラジカル化合物の二次電池では、電圧が酸化還元電圧の値に戻りやすい。
【0038】
一方、二次電池が例えばリチウムイオン電池の場合に、電圧と導電率の関係をみると、電圧と導電率は比例関係である。したがって、電圧が酸化還元電圧の値よりも上がると、導電率が上がるため電流がより流れ、電圧が酸化還元電圧の値からよりずれてしまう。したがって、リチウムイオン電池を多数直列に接続した場合には、1個毎に電流量の制御を行う必要があり、制御する機構が煩雑になる。すなわち、有機ラジカル化合物の二次電池では、リチウムイオン電池に比べて、電流量を制御する機構を簡素化することが可能となる。
【0039】
なお、本発明において、中性のラジカル化合物の例としては、各種のニトロキシラジカル化合物、窒素ラジカル化合物、酸素ラジカル化合物、チオアミニルラジカル化合物、硫黄ラジカル化合物、ホウ素ラジカル化合物等が挙げられる。この中でも、ニトロキシルラジカル系安定ラジカル化合物、特に2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシラジカル構造を分子構造中に含む化合物は、充放電反応が安定であることから好ましい。このような、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシラジカル構造を含む化合物としては、例えば化学式(1)〜(6)で表わされる高分子化合物やこれらを繰り返し単位の一部とする共重合体等が挙げられる。
【0040】
【化4】

【0041】
また、本発明においてルベアン酸構造を有する化合物とは、一般式
【0042】
【化1】

【0043】
[式中、R1およびR2は置換または非置換のイミノ基、置換または非置換のアルキレン基、もしくは置換または非置換のアリーレン基である。]
で表される化合物である。このような化合物としては、例えば化学式(7)〜(16)で表される化合物や、これらの誘導体等が挙げられる。
【0044】
【化5】

【0045】
また、本発明において共役ジアミン構造を有する化合物とは、例えば、一般式
【0046】
【化2】

【0047】
[式中、R1およびR2は置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルキレン基、置換または非置換のアリーレン基、置換または非置換のカルボニル基、置換または非置換のアシル基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のエステル基、置換または非置換のエーテル基、置換または非置換のチオエーテル基、置換または非置換のアミン基、置換または非置換のアミド基、置換または非置換のスルホン基、置換または非置換のチオスルホニル基、置換または非置換のスルホンアミド基、置換または非置換のイミン基、置換または非置換のアゾ基、もしくはこれらの1以上の組み合わせからなる連結基を示す。X1〜X4はハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換の芳香族炭化水素基、置換または非置換の芳香族複素環基、置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換のアミノ基、置換または非置換のアルコキシ基、置換または非置換のアリールオキシ基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のアリールオキシカルボニル基、置換または非置換のアシル基、もしくは置換または非置換のアシルオキシ基を示す。これらの置換基は置換基同士で環構造を形成していてもよい。]
で表される化合物である。このような化合物としては、例えば化学式(17)〜(22)で表される化合物やその他の誘導体等が挙げられる。
【0048】
【化6】

【0049】
また、本発明において共役ジアミン構造を有する化合物とは、一般式
【0050】
【化3】

【0051】
[式中、R1およびR2は置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルキレン基、置換または非置換のアリーレン基、置換または非置換のカルボニル基、置換または非置換のアシル基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のエステル基、置換または非置換のエーテル基、置換または非置換のチオエーテル基、置換または非置換のアミン基、置換または非置換のアミド基、置換または非置換のスルホン基、置換または非置換のチオスルホニル基、置換または非置換のスルホンアミド基、置換または非置換のイミン基、置換または非置換のアゾ基、もしくはこれらの1以上の組み合わせからなる連結基を示す。X5〜X12はハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換の芳香族炭化水素基、置換または非置換の芳香族複素環基、置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換のアミノ基、置換または非置換のアルコキシ基、置換または非置換のアリールオキシ基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のアリールオキシカルボニル基、置換または非置換のアシル基、もしくは置換または非置換のアシルオキシ基を示す。これらの置換基は置換基同士で環構造を形成していてもよい。]
で表される化合物でもよい。
【0052】
次に、上記の二次電池の製造方法の一例を詳述する。
【0053】
まず、正極を形成する。例えば、電極活物質と導電助剤と結着剤とを混合し、有機溶剤を加えてスラリーとし、該スラリーを正極集電体上に任意の塗工方法で塗工し、乾燥することにより正極を形成する。
【0054】
ここで、導電助剤としては、特に限定されるものでなく、例えば、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等の炭素繊維、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセン等の導電性高分子等が挙げられる。また、導電助剤を2種類以上混合して用いてもよい。なお、正極中の導電助剤の含有率は10〜80質量%が望ましい。また、導電助剤が粒子状の炭素材料である場合には、塗工した正極をプレスすることで、電極の密度を増大させることができ、内部抵抗も低減できるという利点があり、好ましい。
【0055】
また、結着剤についても、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンオキサイド、カルボキシメチルセルロース等の各種樹脂が挙げられる。
【0056】
また、有機溶剤についても、特に限定されるものではなく、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン等の塩基性溶媒、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ニトロベンゼン、アセトン等の非水溶媒、メタノール、エタノール等のプロトン性溶媒等が挙げられる。
【0057】
また、有機溶剤の種類及びその配合量、並びに結着剤の種類及びその配合量等は、二次電池の要求特性や生産性等を考慮し、任意に設定することができる。
【0058】
次に、電解質を用意する。電解質は、正極(電極活物質)と対向電極である負極との間に介在して両電極間の荷電担体輸送を行うが、このような電解質としては、例えば室温で10-5〜10-1S/cmのイオン伝導度を有するものを使用する。そして、電解質としては、例えば電解質塩を有機溶剤に溶解させた電解液を使用する。ここで、電解質塩としては、例えば、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22、LiC(CF3SO23、LiC(C25SO23等が挙げられる。
【0059】
また、有機溶剤としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
【0060】
なお、電解質には、固体電解質を使用してもよい。固体電解質に用いられる高分子化合物としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−モノフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体等のフッ化ビニリデン系重合体や、アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ビニルアセテート共重合体等のアクリルニトリル系重合体や、ポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、及びこれらのアクリレート体やメタクリレート体の重合体等が挙げられる。また、これらの高分子化合物に電解液を含ませてゲル状にしたものを電解質として使用してもよい。あるいは、電解質塩を含有させた高分子化合物のみをそのまま電解質に使用してもよい。
【0061】
次に、正極を電解質に含浸させ、電解質を含浸させたセパレータを介して負極と対向させ、外装封止して二次電池を作製する。
【0062】
なお、本発明において、電池形状が特に限定されるものでないのはいうまでもない。電池形状の例としては、円筒型、角型、シート型等が挙げられる。また、外装方法も特に限定されない。外装方法の例としては、金属ケースや、モールド樹脂、アルミラミネートフイルム等が挙げられる
また、二次電池の電極活物質は、充放電により可逆的に酸化もしくは還元されるため、充電状態、放電状態、あるいはその途中の状態で異なる構造になるが、本実施の形態では、電極活物質は、少なくとも放電反応における反応出発物(電極反応で化学反応を起こす物質)、生成物(化学反応の結果生じる物質)、及び中間生成物のうちのいずれかに含まれている。
【0063】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極活物質と導電助剤とを含む正極と、負極と、電解質と、を有し、前記電極活物質の電極反応によって充放電する二次電池と、
外部の電源から供給される電力により前記二次電池を充電する充電制御手段と、
前記二次電池に充電された電力を外部機器に出力する出力手段と、
を備える電源装置において、
前記電極反応における反応物または生成物が中性のラジカル化合物、ルベアン酸構造を有する化合物、または共役ジアミン構造を有する化合物を少なくとも1種含むことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記中性のラジカル化合物がニトロキシルラジカル系安定ラジカル化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記ニトロキシルラジカル系安定ラジカル化合物が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルラジカルを分子構造中に含む化合物であることを特徴とする、請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記ルベアン酸構造を有する化合物が、一般式
【化1】

[式中、R1およびR2は置換または非置換のイミノ基、置換または非置換のアルキレン基、もしくは置換または非置換のアリーレン基である。]
で表されることを特徴とする、請求項1に記載の電源装置。
【請求項5】
前記共役ジアミン構造を有する化合物が、一般式
【化2】

[式中、R1およびR2は置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルキレン基、置換または非置換のアリーレン基、置換または非置換のカルボニル基、置換または非置換のアシル基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のエステル基、置換または非置換のエーテル基、置換または非置換のチオエーテル基、置換または非置換のアミン基、置換または非置換のアミド基、置換または非置換のスルホン基、置換または非置換のチオスルホニル基、置換または非置換のスルホンアミド基、置換または非置換のイミン基、置換または非置換のアゾ基、もしくはこれらの1以上の組み合わせからなる連結基を示す。X1〜X4はハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換の芳香族炭化水素基、置換または非置換の芳香族複素環基、置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換のアミノ基、置換または非置換のアルコキシ基、置換または非置換のアリールオキシ基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のアリールオキシカルボニル基、置換または非置換のアシル基、もしくは置換または非置換のアシルオキシ基を示す。これらの置換基は置換基同士で環構造を形成していてもよい。]
で表されることを特徴とする、請求項1に記載の電源装置。
【請求項6】
前記共役ジアミン構造を有する化合物が、一般式
【化3】

[式中、R1およびR2は置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルキレン基、置換または非置換のアリーレン基、置換または非置換のカルボニル基、置換または非置換のアシル基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のエステル基、置換または非置換のエーテル基、置換または非置換のチオエーテル基、置換または非置換のアミン基、置換または非置換のアミド基、置換または非置換のスルホン基、置換または非置換のチオスルホニル基、置換または非置換のスルホンアミド基、置換または非置換のイミン基、置換または非置換のアゾ基、もしくはこれらの1以上の組み合わせからなる連結基を示す。X5〜X12はハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換の芳香族炭化水素基、置換または非置換の芳香族複素環基、置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換のアミノ基、置換または非置換のアルコキシ基、置換または非置換のアリールオキシ基、置換または非置換のアルコキシカルボニル基、置換または非置換のアリールオキシカルボニル基、置換または非置換のアシル基、もしくは置換または非置換のアシルオキシ基を示す。これらの置換基は置換基同士で環構造を形成していてもよい。]
で表されることを特徴とする、請求項1に記載の電源装置。
【請求項7】
前記導電助剤が粒子状の炭素材料であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項8】
前記二次電池は複数が直列に接続されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電源装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−84344(P2012−84344A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228858(P2010−228858)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】