説明

電源装置

【課題】基板のみならず製品の小型化が可能な電源装置を提供することである。
【解決手段】少なくとも半導体素子および実装時の高さが異なる二以上の異型部品を配置するプリント基板12(基板)と、プリント基板12を収容するとともに冷却を行うための冷却部を備えるケースとを有する電源装置10において、プリント基板12の一面に対向して配置され、回路用部品の相互間を電気的に接続するためのインサートバスバー19を有し、ケース内にはプリント基板12の一面とプリント基板12の一面に対向するケース11の対向面との間に形成される第1空間以外の第2空間に配置される一以上のトランス16(回路素子)を有し、トランス16の接続端子16Tは、プリント基板12とインサートバスバー19との間に配置される構成とした。この構成によれば、プリント基板12のみならず電源装置10の小型化ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却部を備えたケース内に基板を有する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、バスバーとトランスの接続を容易にすることを目的とするDC−DCコンバータ装置に関する技術の一例が開示されている(例えば特許文献1を参照)。このDC−DCコンバータ装置は、トランス(3)またはチョークコイル(7)の底面は、平行板部(91)の配線基板(8)側の主面に密着して設けられ、配線基板(8)に設けられた穴部(81)または切り欠き部(82)から配線基板(8)の実装面側に突出する構成になっている(特許文献1の図2および図3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3334620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術を適用すると、トランス(3)等を穴部(81)等に挿入して配置するとともに、バスバー(10)を配線基板(8)に実装することになる(特許文献1の図2を参照)。言い換えれば、トランス(3)等とバスバー(10)とを配線基板(8)の同一実装面に配置する。このことは、バスバーを配置している部位の下方(すなわちバスバーと配線基板との間)に回路素子を実装するのが困難になることを意味する。特に、大きな電流(例えば10[A]や30[A]等)が流れ、高電圧を印加する回路の場合は、パターン幅、パターン間の沿面距離を大きくする必要があり、結果として配線基板の面積を大きくしなければならず、製品の小型化が困難になっていた。
【0005】
本発明はこのような点に鑑みてなしたものであり、基板のみならず製品の小型化が可能な電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、少なくとも半導体素子および実装時の高さが異なる二以上の異型部品を配置する基板と、前記基板を収容するとともに冷却を行うための冷却部を備えるケースとを有する電源装置において、前記基板の一面に対向して配置され回路用部品の相互間を電気的に接続するためのインサートバスバーを有し、前記ケース内には前記基板の一面と前記基板の一面に対向する前記ケースの対向面との間に形成される第1空間以外の第2空間に配置される一以上の回路素子を有し、前記回路素子の接続端子は前記基板と前記インサートバスバーとの間に配置されることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、半導体素子,二以上の異型部品,インサートバスバーなどを第1空間に配置し、体格の大きな回路素子(例えば整流素子,トランス,フィルタ部等)を第2空間に配置する。基板の一面とインサートバスバーとの間には、半導体素子や二以上の異型部品を配置できるので、基板を従来よりも小型化することができる。また、体格の大きな回路素子を第2空間に並行配置することで収容部品全体の高さが抑えられ、ケース全体(すなわち製品としての電源装置)も従来より小型化することができる。
【0008】
なお「半導体素子」は、半導体による電子部品または電子部品の根幹である機能中心部の素子であれば任意である。例えば、スイッチング素子(FET,IGBT,GTO,パワートランジスタ等を含む)、整流素子(整流回路や整流器等を含む)などが該当する。「ケース」は基板や冷却部など収容可能であれば任意である。例えば、単体のケースでもよく、仕切部(例えば仕切壁や仕切面など)によって複数の空間が形成されるブロック体にかかる一の空間からなるケースでもよい。「インサートバスバー」は、端子(端子台を含む)や配線(導電線)などを有し、回路素子の相互間を電気的に接続するために所定形状に形成された部材である。「基板」は、少なくとも半導体素子や異型部品等を実装可能な板状部材であれば任意であり、層数(単層や多層等)を問わない。「冷却部」には、実装品を冷却可能であれば任意の装置や部品等を適用できる。例えば、冷媒(空気,水,油などの流体)が流れる通路を有する部位・部品・装置等、冷却用フィン(放熱フィン)、ヒートポンプなどのうちで一以上が該当する。「実装品」は、素子(例えば半導体素子や回路素子等を含む)や部品(例えば接続線,台座,端子台等を含む)などのように基板に実装可能なものが該当し、表面実装品であるか否かを問わない。「異型部品」は、実装品のうちで形状(特に高さ)が異なる素子(半導体素子や回路素子を含む)や部品(接続線,台座,端子台などを含む)などを意味する。「回路用部品」と「回路素子」は電気回路に用いる部品や素子という意味で同義であるが、インサートバスバーの電気的な接続を行う対象物と第2空間に配置する対象物とを区別するために用いる。回路用部品に含まれる回路素子があったり、回路素子に含まれる回路用部品があったりする。「回路素子の接続端子」は回路素子を電気的に接続可能な部材であれば任意であり、端子のみならず、リード線等を含む。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記回路素子の接続端子は、前記基板の一面と前記インサートバスバーの一面とのなす角度(以下では簡単のために「面角度」と呼ぶ。)以内の角度で配置されることを特徴とする。この構成によれば、回路素子の接続端子は面角度(例えば5度や10度等)以内の角度で配置される。この角度は、基板およびインサートバスバーの各対向面やケースの一面のうちで、いずれか一つの面(以下では単に「基準面」と呼ぶ。)を基準とする。通常は基板とインサートバスバーとの対向面は平行となるように配置されるが、周辺部品の制約により、取り付け面を斜めにすることによって基準面との間で角度が生じても、何ら問題なく第1空間のインサートバスバーと第2空間の回路素子とを電気的にすることが接続できる。よって、半導体素子や二以上の異型部品などを配置した後の基板の体格を従来よりも小型化することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記回路素子の接続端子は、対向する前記基板およびインサートバスバーの各対向面のうちで、いずれか一方の対向面と平行状に配置されることを特徴とする。この構成によれば、回路素子の接続端子は一方の対向面と平行状に配置されるので、第1空間のインサートバスバーと第2空間の回路素子とを確実に電気的に接続することができる。よって、半導体素子や二以上の異型部品などを配置した後の基板の体格を従来よりも小型化することができる。なお「平行状」は、平行に限らず、所定の許容角度(例えば10度や20度等)範囲内の非平行を含む。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記回路素子の接続端子は、前記インサートバスバーに備えられる端子台の端子と平行状に配置されることを特徴とする。この構成によれば、回路素子の接続端子は端子台の端子と平行状に配置されるので、第1空間のインサートバスバーと第2空間の回路素子とを確実に電気的に接続することができる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記基板の一面には、前記半導体素子と、実装時に所定の高さ以上の高さとなる異型部品または二種以上の異型部品とを配置することを特徴とする。この構成によれば、半導体素子や異型部品は、基板の一面とインサートバスバーとの間に配置されるので、基板を従来よりも小型化することができる。また、体格の大きな回路素子を第2空間に並行配置することで収容部品全体の高さが抑えられ、ケース全体(すなわち製品としての電源装置)も従来より小型化することができる。
【0013】
なお「基板の一面」は、素子や部品などの実装品が配置される基板の実装面を意味し、以下では簡単のために「実装表面」と呼ぶことにする。この称呼に伴って、同基板における実装表面とは反対側の面を「実装裏面」と呼ぶことにする。当該実装裏面に実装品を配置するか否かを問わない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】電源装置の構成例を模式的に示す分解斜視図である。
【図2】電源装置の構成例を模式的に示す平面図である。
【図3】図2の矢印Da方向から見た電源装置の構成例を示す側面図である。
【図4】図2に示すIV−IV線矢視の構成例を示す断面図である。
【図5】図2に示すV−V線矢視の構成例を示す断面図である。
【図6】基板にインサートバスバーを配置した状態の一例を示す平面図である。
【図7】インサートバスバーの構成例を示す三面図である。
【図8】トランスの接続端子とインサートバスバーの接続端子台との接続例を説明する図である。
【図9】電源装置の回路構成例を模式的に示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、特に明示しない限り、「接続する」という場合には電気的な接続を意味する。各図は、本発明を説明するために必要な要素を図示し、実際の全要素を図示してはいない。上下左右等の方向を言う場合には、図面の記載を基準とする。連続符号は記号「〜」を用いて表記する。例えば「接続端子T1〜T6」は、「接続端子T1,T2,T3,T4,T5,T6」を意味する。
【0016】
まず、電源装置の全体的な構成例について図1〜図4を参照しながら説明する。図1には電源装置の構成例を模式的に分解斜視図で示す。図2には電源装置の構成例を平面図で示す。図3には図2の矢印Da方向から見た電源装置の構成例を側面図で示す。図4にはケース内に収容する素子や部品等の配置例を模式的に平面図で示す。
【0017】
図1に示す電源装置10は、いわゆる「DC−DCコンバータ」であって、電力源(例えばバッテリや燃料電池等)から供給される直流電圧を目的の電圧に変換して出力する機能を担う。この電源装置10は、大別してケース11、プリント基板12、図示しない収容部品などを有する。「収容部品」は、ケース11内に収容される部品等であって、プリント基板12上には配置されない素子や部品等を意味する。例えば、回路素子(具体的には整流素子,トランス,フィルタ部等)や、後述するインサートバスバー(図6,図7を参照)などが該当する。
【0018】
ケース11は、ケース蓋11aとケース本体11bとで構成される。ケース本体11bは、一面を開口させた箱状筐体である。図1の例では簡単のために直方体状の形成例を示すが、プリント基板12や収容部品などを収容可能であれば、形成する形状は任意である。ケース蓋11aは、ケース本体11bの開口部を覆う蓋である。本形態のケース11は金属で形成するが、一部または全部について使用環境条件(例えば温度,磁気遮蔽,剛性等)を満たす他の材料(例えば樹脂等)で形成してもよい。
【0019】
プリント基板12は、実装表面12aおよび実装裏面12bの両面でプリント配線がなされ、実装品を配置して実装する基板である。実装品は、素子(例えば半導体素子や回路素子等を含む)や部品(例えば接続線,台座,端子台等を含む)などのように基板に実装可能なものが該当し、表面実装品であるか否かを問わない。このように実装品は様々の種類や形状等があるので、実装表面12aを基準として高さ(実装高)が異なる実装品を以下では「異型部品」と呼ぶ。同一の実装表面12aには、実装時に所定の高さ以上の高さとなる異型部品を実装したり、素子や部品等の種類が二種以上の異型部品を実装したりする。一方、実装裏面12bはプリント配線のみとするか、実装高が低い表面実装品のみを配置する。「所定の高さ」は任意に設定可能であり、例えば実装裏面12bへの実装時に最も高い実装品の高さ以上の高さ(例えば5[mm]や8[mm]など)が該当する。図1には、実装表面12aに実装した半導体素子群Qgや異型部品P1〜P6を示す。半導体素子群Qgも異型部品の一つであり、図1,図2,図4に示す半導体素子Q1,Q2が該当する。半導体素子Q1,Q2には、例えばFET(具体的にはMOSFET,JFET,MESFET等)、IGBT、GTO、パワートランジスタなどのスイッチング素子を個別に適用できる。なお、図1では簡単のために異型部品P1〜P6を示すが、実際のプリント基板12には多数の異型部品が配置される。
【0020】
図1に示す台座13や冷却部14は、ケース11の内部(特にケース本体11b)に備えられる。複数の台座13および冷却部14のうちで一方または双方は、ケース本体11bと一体形成してもよく、別体形成した上で固定手段(例えばネジ止めや接着剤等による接着など)によって固定してもよい。複数の台座13は、プリント基板12をケース11内に収容するにあたって、ケース本体11bに固定するために用いる。
【0021】
冷却部14は、半導体素子群Qg、異型部品、収容部品等を冷却する機能を担う。本形態の冷却部14は、冷媒(例えば水,空気,油等)を通すための冷媒通路14cを内部に有する(図4を参照)。冷却部14には、冷媒を流すための入出口となる接続部14a,14bを有する。接続部14a,14bにはホース等の接続部材で物理的に接続し、冷却部14と図示しない冷却装置(例えばラジエータ等)との間で冷媒が流れるように構成される。このように冷媒を介して冷却を確実に行うため、冷却部14は熱伝導率が高い材料で形成するのが望ましい。
【0022】
プリント基板12などを収容した後の電源装置10を図2と図3に示す。具体的には、図2はケース蓋11aで覆わない状態を示し、図3はケース蓋11aで覆った状態を示す。図2に示すIV−IV線矢視の断面を図4に示す。図2に示すように、ケース11内には、半導体素子群Qgや異型部品群Pgを配置したプリント基板12のほかに、整流素子15,トランス16,フィルタ部17等のような回路素子が配置される。整流素子15は、例えば整流回路や整流器などが該当する。トランス16は、変圧器としての機能を担う。フィルタ部17は、出力電力の交流成分を低減したり除去したりする機能を有すれば任意であり、パッシブフィルタ(LC回路,RLC回路,RC回路等)やアクティブフィルタ等の種類を問わない。これらの回路素子は、実装表面12aと対向面11fとの間に形成される空間(「第1空間」に相当する;図4,図5を参照)以外の空間(「第2空間」に相当する;図2,図6を参照)に配置される。
【0023】
上記フィルタ部17は、ノイズの影響を受け易く、出力電力に重畳され易い。そのため、トランス16とフィルタ部17との間にはシールド部S1を配置し、プリント基板12とフィルタ部17との間にはシールド部S2を配置する。シールド部S1,S2には、ノイズの影響を低減または遮断できる電磁シールドであれば形状,厚み,材料(素材)等は任意である。例えば、金属板(板金を含む),金属メッシュ,発泡金属等が該当する。また、所定形状(例えば板状や筐体状等)に成形された樹脂部材の表面や裏面に金属インクまたは同様の物質でメッキしたものでもよい。本形態ではシールド部S1,S2を個別に配置したが、L字状に一体成形して配置してもよい。シールド部S1,S2の一部に貫通穴や切欠き等を設ける場合、貫通穴や切欠き等と接続線J1,J2との隙間も同様にシールドするのが望ましい。ただし、絶縁等を確保するために隙間が必要な場合には、接続線J1,J2を通すことが可能な最小の貫通穴や切欠き等とするのが望ましい。シールド部S1,S2の一部として、ケース11の一部(壁部や床部等)を構成するのが望ましい。ケース本体11bと同様な形状(すなわち一面が開口する箱状の筐体)のシールド部を形成して、フィルタ部17全体を覆う構成としてもよい。
【0024】
図3に示すように、電源装置10のケース11と電力変換装置20のケース21とは一体形成されている。電力変換装置20は、いわゆる「インバータ」であるが、構成や機能作用等の詳細については周知であるので図示および説明を省略する。
【0025】
図4および図5において、プリント基板12は、ケース11内に収容されて固定されている。このプリント基板12の実装表面12aは、ケース11の対向面11fと対向する。よって、プリント基板12に配置される異型部品群Pg(異型部品P1〜P6)もまた対向面11fと対向する。この対向面11fを含む部位(仕切壁や仕切面など)は「仕切部」に相当する。
【0026】
図4に示す冷却部14は、少なくとも半導体素子群Qg(半導体素子Q1,Q2)に向かって、対向面11fの一部が突出して形成されている。図1の例では、ケース11の隅部(図面左側の隅部)を上方に向けて突出させている。冷却部14の上面には半導体素子群Qg(図4では半導体素子Q2)が直接的にまたは間接的に接触して配置(固定)されている。間接的に接触する形態としては、例えば冷却部14と半導体素子群Qgとの間に絶縁シート等の部材を介在させる形態などが該当する。異型部品P1,P2などは、異型部品群Pgのうちで発熱性が高い部品である。発熱性が高い異型部品P1,P2などを冷却部14の近傍に配置することで、当該異型部品の冷却効率を高めることができる。
【0027】
トランス16は、図2に示すように整流素子15やフィルタ部17とともに、プリント基板12の長辺側と平行状にケース本体11b内に収容される。「平行状」は、平行に限らず、所定の許容角度(例えば10度や20度等)範囲内の非平行を含む。またトランス16は、図5に示すように第1空間(すなわちプリント基板12の一面と対向する対向面11fとで挟まれる空間)以外の第2空間に配置される。「回路素子の接続端子」に相当する1次側端子16t1および2次側端子16t2,16t3は、いずれもトランス16から引き出される導電部材であって、例えば端子やリード線等が該当する。1次側端子16t1は、インサートバスバー19の接続端子台19cに向けて引き出され、プリント基板12とインサートバスバー19との間に配置される。これに対して、トランス16の2次側端子16t2は整流素子15に向かう方向に引き出され、同じく2次側端子16t3はフィルタ部17に向かう方向に引き出される。
【0028】
次に、トランス16とプリント基板12との間で行う接続について、図6〜図8を参照しながら説明する。図6にはプリント基板12にインサートバスバー19を配置した状態の一例を平面図で示す。図7にはインサートバスバーの構成例を三面図で示す。図8にはトランスの接続端子とインサートバスバーの接続端子台との接続例を示す。
【0029】
図6には、プリント基板12の実装表面12a側における所定位置にインサートバスバー19を配置した状態を示し、半導体素子群Qgや異型部品P1〜P6等も併せて示す。図6に示すインサートバスバー19は、その全体の一部または全部を、実装表面12aに配置した異型部品群Pgと対向面11fとの隙間に挿入して配置する。特に、トランス16の1次側端子16t1とインサートバスバー19の接続端子台19cとを接続するにあたって、その接続距離が最短になるような構成としている。インサートバスバー19に備える接続端子T1〜T6は、各端子に対応するプリント基板12の接続部(例えばスルーホールや接続端子等)と接続される。
【0030】
ここで、上述したインサートバスバー19の構成例を図7に三面図で示す。図7(A)には平面図を示し、図7(B)には図7(A)の右側から見た側面図を示し、図7(B)には図7(A)の下側から見た側面図を示す。図7に示すインサートバスバー19は、バスバー本体19bに対して、固定部19a,19d,19f、接続端子台19c、入力部19e、接続端子T1〜T6などを有する。これらの各要素はバスバー本体19bの一面側(すなわち接続表面19g)に配置され、他面側(すなわち接続裏面19h)には何も配置されない。固定部19a,19d,19fは、インサートバスバー19をプリント基板12やケース本体11bに固定するための部位である。バスバー本体19bは絶縁性材料(例えば樹脂等)で所定形状に形成される。具体的には、鋳造や射出成形等によるモールディングで形成される。接続端子台19cは「端子台」に相当し、トランス16と対向する位置に備えられ、1次側端子16t1と接続する機能を担う端子19ctを有する。
【0031】
1次側端子16t1と接続端子台19cとの接続について、図8を参照しながら説明する。図8(A)には図6に示すVIII−VIII線矢視の構成例を断面図で示し、図8(B)にはプリント基板12と接続端子台19cとの位置関係を模式図で示す。
【0032】
図8(A)に示すように、トランス16の1次側端子16t1は、プリント基板12(具体的には実装表面12a)とインサートバスバー19(具体的には接続端子台19c)との間に配置される。この1次側端子16t1は、対向する実装表面12aと接続表面19gとのうちで、いずれか一方の対向面と平行状に配置される。1次側端子16t1は、接続端子台19cの端子19ctと接続される。1次側端子16t1と端子19ctとの間に距離がある場合には、接続に必要な分だけ曲げる。接続方法は任意であるが、接続状態を長期に亘って維持するために溶接やハンダ付け等による接合を行うのが望ましい。
【0033】
周辺部品の制約等によっては、図8(B)に二点鎖線で示すように、プリント基板12の一面(実装表面12a)とインサートバスバー19の一面(接続表面19gや接続端子台19c)との間で相対的に面角度θが生じる場合がある。面角度θは、例えば5度や10度等である。図8(B)の図示例ではプリント基板12を基準に記載しているので、インサートバスバー19を基準とする場合にはプリント基板12が面角度θだけ傾くことになる。この場合、1次側端子16t1は、0度(すなわち実装表面12aまたは接続表面19gと平行)から面角度θまでの範囲内で配置するのが望ましく、この場合も接続に必要な分だけ曲げればよい。
【0034】
上述のように構成される電源装置10を回路図で示すと、図9のようになる。ただし、図9に示す回路図は一例にすぎず、主要部を示す。
【0035】
図9において、電力源Edcは直流電力を電源装置10に供給する。電力源Edcには、例えばバッテリや燃料電池が用いられる。電力源Edcのプラス端子は、チョークコイルL10,コンデンサC10およびインサートバスバー19を経て、トランス16の1次側端子に接続される。一方、電力源Edcのマイナス端子は、チョークコイルL10,コンデンサC10,コンデンサC12およびインサートバスバー19を経て、トランス16の1次側端子16t1に接続される。チョークコイルL10は入力フィルタとして機能し、コンデンサC10は直流電力の充放電を繰り返し行う。
【0036】
プリント基板12は、半導体素子Q1,Q2、コンデンサC11,C12、ドライブ回路12c、制御回路12d、検出回路12eなどを有する。半導体素子Q1,Q2は、ドライブ回路12cから伝達される駆動信号に従って個別にスイッチングが制御される。検出回路12eはフィルタ部17の出力側の電圧(すなわち電圧Vd)を検出する。制御回路12dは、電圧Vdが目標電圧となるように、ドライブ回路12cを駆動する指令信号Vc*を出力する。目標電圧は、制御回路12d内の記録媒体に予め記録したり、外部装置(例えばECU等)から入力したりする。ドライブ回路12cは、指令信号Vc*に基づいて、上述した駆動信号を生成して出力する。
【0037】
半導体素子Q1,Q2は直列接続される。ただし図面スペースの都合で図示を割愛するが、2つの半導体素子Q2(図1,図2,図6を参照)は並列接続される。二点鎖線で示すダイオードD1,D2はフリーホイールダイオードとしての機能を担い、半導体素子Q1,Q2に内蔵されたものでもよく、外付けしたものでもよい。コンデンサC11は、半導体素子Q1のドレイン端子と接続端子台19cとの間に接続される。コンデンサC12は、上述したように電力源Edcのマイナス端子と接続端子台19cとの間に介在して接続される。電力源Edcのマイナス端子およびコンデンサC12の一方側端子は、半導体素子Q2のソース端子に共通して接続される。
【0038】
接続端子台19cと接続する1次側端子16t1はトランス16の1次側端子である。一方、トランス16の2次側端子は、整流素子15,コンデンサC13,フィルタ部17などが接続される。整流素子15は、トランス16の2次側端子から出力される交流電力を整流する機能を担う。図8には二相全波整流を行う構成を示すが、単相ブリッジ整流を行う構成としてもよい。コンデンサC13は、整流素子15によって整流された直流電力を平滑化する機能を担う。フィルタ部17は、リアクトル(コイル)L17とコンデンサC17とを有し、交流電力の高周波成分を除去したり、整流に伴う電力(特に電圧)の脈動を抑制したりする機能を担う。整流素子15やコンデンサC13,C17の一方側端子は、共通電位となるグラウンドNに接続される。整流素子15,コンデンサC12,フィルタ部17によって安定化された出力電力は、出力機器30に出力される。出力機器30には、直流の電力を必要とする任意の機器を適用できる。
【0039】
上述した実施の形態によれば、以下に示す各効果を得ることができる。まず請求項1に対応し、電源装置10において、プリント基板12の一面(実装表面12a)に対向して配置されトランス16との相互間を接続するためのインサートバスバー19を有し、ケース11内にはプリント基板12の一面とプリント基板12の一面に対向するケース11の対向面11fとの間に形成される第1空間以外の第2空間に配置される一以上の回路素子(整流素子15,トランス16,フィルタ部17等)を有し、トランス16の1次側端子16t1(回路素子の接続端子)はプリント基板12とインサートバスバー19との間に配置される構成とした(図2,図5,図6,図8,図9を参照)。この構成によれば、半導体素子Q1,Q2、二以上の異型部品P1〜P6、インサートバスバー19などを第1空間に配置し、体格の大きな整流素子15,トランス16,フィルタ部17等を第2空間に配置する(図2,図6を参照)。これらの配置によって、プリント基板12に素子を実装できる面積が増えるため、プリント基板12を従来よりも小型化することができる。また、体格の大きな回路素子を第2空間に並行配置することで収容部品全体の高さが抑えられ、電源装置10の体格も従来より小型化することができる。
【0040】
請求項2に対応し、トランス16の1次側端子16t1は、プリント基板12の一面(実装表面12a)とインサートバスバー19の一面(接続表面19g)とのなす面角度θ以内の角度で配置される構成とした(図8を参照)。この構成によれば、周辺部品の制約等によって面角度θが生じても、何ら問題なく第1空間のインサートバスバー19と第2空間の回路素子とを電気的にすることが接続できる。よって、プリント基板12の体格を従来よりも小型化することができる。
【0041】
請求項3に対応し、トランス16の1次側端子16t1は、対向するプリント基板12およびインサートバスバー19の各対向面(すなわち実装表面12aおよび接続表面19g)のうちで、いずれか一方の対向面と平行状に配置される構成とした(図8を参照)。この構成によれば、トランス16の1次側端子16t1は一方の対向面と平行状に配置されるので、第1空間のインサートバスバー19と第2空間のトランス16とを確実に接続することができる。よって、プリント基板12の体格を従来よりも小型化できる。
【0042】
請求項4に対応し、トランス16の1次側端子16t1は、インサートバスバー19に備えられる接続端子台19c(端子台)の端子と平行状に配置される構成とした(図8を参照)。この構成によれば、トランス16の1次側端子16t1は接続端子台19cの端子19ctと平行状に配置されるので、第1空間のインサートバスバー19と第2空間のトランス16とを確実に接続することができる。よって、プリント基板12の体格をさら小型化できる。
【0043】
請求項5に対応し、プリント基板12の一面(実装表面12a)には、半導体素子Q1,Q2と、実装時に所定の高さ以上の高さとなる異型部品または二種以上の異型部品(P1〜P6)とを配置する構成とした(図1,図6を参照)。この構成によれば、半導体素子Q1,Q2や異型部品P1〜P6は、プリント基板12の一面とインサートバスバー19との間に配置されるので、プリント基板12を従来よりも小型化することができる。また、体格の大きな回路素子を第2空間に並行配置することで収容部品全体の高さが抑えられ、電源装置10も従来より小型化することができる。本形態ではプリント基板12の一面を実装表面12aしたが、実装裏面12bとしてもよい。この場合には、ケース11の対向面はケース蓋11aになる。
【0044】
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。言い換えれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。例えば、次に示す各形態を実現してもよい。
【0045】
上述した実施の形態では、ケース11はケース21と一体形成する構成とした(図3を参照)。この形態に代えて、単体のケース11のみで構成してもよい。また、電力変換装置20のケース21に代えて、他の装置のケースと一体形成する構成としてもよい。他の装置は、例えばエンジンブロック、ECU装置、車両ボディなどが該当する。仕切部(例えば仕切壁や仕切面など)によって内部に複数の空間が形成されるブロック体にかかる一の空間からなるケース11でもよい。いずれの構成にせよ、ケース11にはプリント基板12や冷却部14など収容することができるので、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0046】
上述した実施の形態では、プリント基板12は、実装表面12aと実装裏面12bとを有する基板を適用した(図1〜図7を参照)。この形態に代えて、一以上の中間層を含む多層基板を適用してもよく、ユニバーサル基板を適用してもよい。いずれの基板にせよ、半導体素子群Qgや異型部品群Pgを配置することができるので、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0047】
上述した実施の形態では、冷却部14は、対向面11fから実装表面12aに向けて突出させ、その突出部位に冷媒が流れる冷媒通路14cを有する構成とした(図1,図2,図4を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、他の冷却手段を構成してもよい。他の冷却手段は、例えば冷却用フィン(放熱フィン)、ヒートポンプなどのうちで一以上が該当する。他の冷却手段で構成した場合でも、半導体素子群Qgや異型部品を冷却できるので、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0048】
上述した実施の形態では、冷却部14は、ケース本体11b(ケース11)の短辺部(直線や曲線を問わない)に沿って端部に配置する構成とした(図1,図2,図4を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、ケース本体11bの長辺部(直線や曲線を問わない)に沿って端部に配置する構成としてもよく、端部以外の部位(例えば中央部等)に配置する構成としてもよい。長辺部に沿って配置すると、冷却を行う部位や面積等が増えるので、ケース11内の冷却効率を高めることができる。中央部や所定形状(例えば多角形や円形等)に沿って配置すると、ケース11内全体を均等に冷却することができる。
【0049】
上述した実施の形態では、実装表面12aに配置した異型部品群Pgと対向面11fとの隙間にインサートバスバー19を配置する構成とした(図5,図8を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、異型部品群Pgと対向面11fとの隙間に他の部品を配置してもよい。他の部品は、例えばバスバーやファンなどが該当する。隙間を利用して配置するので、デッドスペースをさらに縮小することができる。なお、ファン(扇風機)は冷却部14の近傍に配置するのが望ましい。ケース11内に封入された空気を循環または拡散させて、ケース11内の全体を効率良く冷却することができる。
【0050】
上述した実施の形態では、第2空間に配置される回路素子としてトランス16を適用した(図2,図6を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、インサートバスバー19の接続端子台19cと接続し、かつ、第2空間に配置されるトランス16以外の他の回路素子を適用してもよい。他の回路素子は、例えば整流素子15、フィルタ部17、コンデンサ、インダクタなどが該当する。単に回路素子の相違に過ぎないので、上述した実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0051】
上述した実施の形態は、DC−DCコンバータの電源装置10に適用した(図1〜図9を参照)。この形態に代えて、DC−DCコンバータ以外の他の電源装置に適用してもよい。他の電源装置には、例えばAC−DCコンバータやインバータなどの電源装置が該当する。他の電源装置が、プリント基板12や、冷却部14を備えるケース11、インサートバスバー19、トランス16等の回路素子などで構成される場合には、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0052】
10 電源装置(DC−DCコンバータ)
11 ケース
11f 対向面
12 プリント基板(基板)
14 冷却部
15 整流素子(回路素子)
16 トランス(回路素子)
16t1 1次側端子(接続端子)
16t2,16t3 2次側端子(接続端子)
17 フィルタ部(回路素子)
18 突起部
19 インサートバスバー
19c 接続端子台
20 電力変換装置(インバータ)
30 出力機器
Qg 半導体素子群
Q1,Q2,… 半導体素子
Pg 異型部品群
P1〜P6,… 異型部品(実装品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも半導体素子および実装時の高さが異なる二以上の異型部品を配置する基板と、前記基板を収容するとともに冷却を行うための冷却部を備えるケースと、を有する電源装置において、
前記基板の一面に対向して配置され、回路用部品の相互間を電気的に接続するためのインサートバスバーを有し、
前記ケース内には、前記基板の一面と、前記基板の一面に対向する前記ケースの対向面と、の間に形成される第1空間以外の第2空間に配置される一以上の回路素子を有し、
前記回路素子の接続端子は、前記基板と前記インサートバスバーとの間に配置されることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記回路素子の接続端子は、前記基板の一面と前記インサートバスバーの一面とのなす角度以内の角度で配置されることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記回路素子の接続端子は、対向する前記基板およびインサートバスバーの各対向面のうちで、いずれか一方の対向面と平行状に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記回路素子の接続端子は、前記インサートバスバーに備えられる端子台の端子と平行状に配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項5】
前記基板の一面には、前記半導体素子と、実装時に所定の高さ以上の高さとなる異型部品または二種以上の異型部品と、を配置することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−34272(P2013−34272A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167969(P2011−167969)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】