説明

電界放出装置

【課題】電界放出装置に関し、特に大寸法の電界放出装置に関する。
【解決手段】本発明の電界放出装置は、絶縁基板と、電子放出ユニットと、行引出し電極と、列引出し電極とを含む。行引出し電極と列引出し電極とは、電気絶縁的に交叉して格子が形成される。各々の格子の中に、電子放出ユニットが設置されている。電子放出ユニットは、陽極電極と、陰極電極と、蛍光層と、陰極エミッタと、第一集束電極と、第二集束電極とを含む。陽極電極は、行引出し電極に接続され、陰極電極は、列引出し電極に接続されている。陰極エミッタは、陽極電極と陰極電極の間に設置され、一端は陰極電極に接続され、もう一端は陽極電極に対向している。蛍光層は、陽極電極の絶縁基板に隣接する表面の反対表面に形成されている。第一集束電極と第二集束電極は、それぞれ列引出し電極に接続され、行引出し電極及び陽極電極と絶縁的に設置され、陰極エミッタの両側に設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界放出装置に関し、特に大寸法の電界放出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電界放出装置は、電界放出電子部品であり、例えば電界放出表示装置(CNT‐FED)などの重要な素子として利用されている。現在、大寸法の電界放出装置が益々注目されている。
【0003】
従来の大寸法の電界放出装置は、絶縁基板と、複数の電界放出ユニットと、複数の行引出し電極と、複数の列引出し電極と、蛍光層と、を備えっている。ここで、前記複数の行引出し電極は、平行しており、前記複数の列引出し電極も、平行している。前記複数の行引出し電極と、前記複数の列引出し電極は交差して、複数の格子を形成する。各々の前記格子の中に、一つの前記電界放出ユニットが設置されている。前記電界放出ユニットは、陰極エミッタを含む。該陰極エミッタは、金属化合物を含む導電膜である(非特許文献1を参照)。前記陰極エミッタに電圧を印加すると、該陰極エミッタから電子が放出される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】牟強等、「表面伝導電子放出表示技術進展」、液晶及びディスプレイ、2006年、第21巻、p.226−231
【非特許文献2】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の大寸法の電界放出装置は、放出電子の制御を行うので、一部の放出電子は偏向することがある。従って、前記大寸法の電界放出装置ではクロストークという現象が起こり、また、電子の無駄があるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、前記課題を解決するために、本発明は、電子の利用率が高く、表示効果が優れた電界放出装置を提供する。
【0007】
本発明の電界放出装置は、絶縁基板と、該絶縁基板に設置した複数の電子放出ユニットと、複数の行引出し電極と、複数の列引出し電極と、を含む。前記複数の行引出し電極と、前記複数の列引出し電極とは、電気絶縁的に交叉して、複数の格子を形成している。各々の前記格子の中に、一つの前記電子放出ユニットが設置されている。一つの前記電子放出ユニットは、陽極電極と、陰極電極と、蛍光層と、陰極エミッタと、第一集束電極と、第二集束電極と、を含む。前記陽極電極は、前記行引出し電極に接続され、前記陰極電極は、前記列引出し電極に接続されている。前記陰極エミッタは、前記陽極電極及び陰極電極の間に設置され、その一つの端部は前記陰極電極に接続され、そのもう一つの端部は前記陽極電極に対向している。前記蛍光層は、前記陽極電極の前記絶縁基板に隣接する表面とは反対の表面に形成されている。前記第一集束電極及び第二集束電極は、それぞれ前記列引出し電極に接続され、前記行引出し電極及び前記陽極電極と絶縁的に設置され、前記陰極エミッタの両側に設置されている
【0008】
前記第二集束電極の長さは、前記陽極電極の前記陰極エミッタに対向する表面から、前記陰極電極の前記列引出し電極に接続した表面までの距離より大きい。
【0009】
前記第一集束電極又は第二集束電極を、前記陰極エミッタ及び前記陽極電極より厚く設ける。
【発明の効果】
【0010】
従来の技術と比べて、本発明は、電界放出装置の陰極エミッタの両側に集束電極を設置することにより、放出電子の軌跡を制御することができるので、電界放出装置にクロストークの現象が減少し、電子の利用率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1に係る電界放出装置を示す図である。
【図2】図1の線II‐IIに沿った電界放出装置の断面図である。
【図3】本発明の実施例1に係る電界放出装置の電子放出ユニットを示す図である。
【図4】図3の線IV‐IVに沿った電子放出ユニットの断面図である。
【図5】本発明の実施例2に係る電界放出装置を示す図である。
【図6】本発明の実施例2に係る電界放出装置の電子放出ユニットを示す図である。
【図7】本発明の実施例2に係る電界放出装置のSEM写真である。
【図8a】集束電極が設置しない電界放出装置の一つの電子放出ユニットの表示効果を示す図である。
【図8b】本発明の実施例2に係る電界放出装置の一つの電子放出ユニットの表示効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0013】
(実施例1)
図1及び2を参照すると、本実施例の電界放出装置200は、絶縁基板202と、該絶縁基板202に設置した複数の電子放出ユニット220と、複数の行引出し電極204と、複数の列引出し電極206と、を含む。前記複数の行引出し電極204は、それぞれ所定の距離で離れるように、平行して配列されている。前記複数の列引出し電極206は、それぞれ所定の距離で離れるように、平行して配列されている。前記複数の行引出し電極204と、前記複数の列引出し電極206とは、交叉して、複数の格子214が形成されている。隣接する二本の前記行引出し電極204と、隣接する二本の前記列引出し電極206とは、一つの前記格子214に形成されている。各々の前記格子の中に、一つの前記電子放出ユニット220を設置する。短路することを防止するために、前記複数の行引出し電極204と、前記複数の列引出し電極206と交叉した領域に、それぞれ一つの絶縁層216を設置する。本実施例において、前記行引出し電極204の長手方向は、X方向と定義され、前記列引出し電極206の長手方向は、Y方向と定義されている。
【0014】
図3及び4を参照すると、一つの前記電子放出ユニット220は、陽極電極210と、陰極電極212と、蛍光層209と、陰極エミッタ208と、第一集束電極211と、第二集束電極213と、を含む。前記陽極電極210と、陰極電極212とは、所定の距離で離れるように、前記絶縁基板202に設置されている。前記陽極電極210は、前記行引出し電極204に接続され、前記陰極電極212は、前記列引出し電極206に接続されている。前記陰極エミッタ208は、前記陽極電極210及び陰極電極212の間に設置され、その一つの端部は前記陰極電極212に接続され、そのもう一つの端部は放出先222として、前記陽極電極210に対向している。即ち、前記放出先222は、前記陽極電極210と所定の距離で離れている。前記陰極エミッタ208は所定の距離で前記絶縁基板202と離れているか、又は直接前記絶縁基板202に設置されている。前記陰極エミッタ208は所定の距離で前記絶縁基板202と離れて設置される場合、前記陰極エミッタ208の機能を良好に実現することができる。前記蛍光層209は、前記陽極電極210の前記絶縁基板202に隣接する表面の反対表面に形成されている。前記陰極エミッタ208の放出先222からの電子は、前記蛍光層209に衝突して発光する。
【0015】
前記第一集束電極211及び第二集束電極213は、それぞれ前記陰極エミッタ208の両側に設置されている。即ち、前記列引出し電極206に沿って、一つの前記陰極エミッタ208の対向する両側に、それぞれ前記第一集束電極211及び第二集束電極213が設置されている。前記第一集束電極211/第二集束電極213の一端は、前記列引出し電極206に接続され、そのもう一つの端部は、この列引出し電極206から離れる方向に沿って延伸している。前記第一集束電極211及び第二集束電極213は、前記列引出し電極206に接続されるので、その電位は前記陰極エミッタ208の電位と同じである。電子は電位が高い所へ流れるので、前記陰極エミッタ208の放出先222からの電子は、前記第一集束電極211及び第二集束電極213で遮蔽され、偏向せず前記陽極電極210の蛍光層209に衝突することができる。これにより、各々の前記格子214に設置した前記電子放出ユニット220からの電子は、隣接する格子214へ偏向しないので、クロストークという現象が生じないし、電子の無駄がない。前記第一集束電極211及び第二集束電極213は、前記行引出し電極204及び前記陽極電極210と所定の距離で離れて絶縁されている。本実施例において、同じ行に設置した前記電子放出ユニット220の前記陽極電極210は、同じ行に設置した前記行引出し電極204に接続されており、同じ列に設置した前記電子放出ユニット220の前記陰極電極212と、前記第一集束電極211及び第二集束電極213と、は、同じ列に設置した前記列引出し電極206に接続されている。
【0016】
前記第一集束電極211及び第二集束電極213は、金属やITOなどの導電材料からなる。好ましくは、前記第一集束電極211及び第二集束電極213は、金属粉末、低融点ガラス粉末及び接着剤を含む導電ペーストからなるものである。ここで、前記金属粉末が銀の粉末であり、前記接着剤がテルピネオール又はエチルセルロースであることが好ましい。前記導電ペーストにおける前記金属粉の質量パーセンテージの含有量は50%〜90%であり、前記低融点ガラスパウダーの質量パーセンテージの含有量は2%〜10%であり、前記接着剤の質量パーセンテージの含有量は10%〜40%である。前記導電ペーストをシルク印刷方法によって前記第一集束電極211及び第二集束電極213に形成できる。
【0017】
前記第一集束電極211及び第二集束電極213は、円形、方形、矩形、アーク状に形成されている。前記電子放出ユニット220からの電子は、前記第一集束電極211及び第二集束電極213を越えて、隣接する格子214に入ることを防止するために、前記第一集束電極211/第二集束電極213を、前記陰極エミッタ208及び前記陽極電極210より厚く設けることが好ましい。図3を参照すると、ここでの「厚さ」は、図面の紙に垂直する方向に沿う寸法である。本実施例において、前記第一集束電極211及び第二集束電極213は、矩形の平面導電体であり、その厚さは、15μm〜600μmである。前記第一集束電極211及び第二集束電極213は、それぞれ一つの端部が一つの前記列引出し電極206に接続され、該端部とは反対の端部がX方向に沿って延伸するように設置されている。前記第一集束電極211及び第二集束電極213は、直接前記列引出し電極206に接続されるか、又は別の導電体素子によって前記列引出し電極206に接続されることができる。前記第一集束電極211及び第二集束電極213の、X方向に沿う寸法は大きいので、前記陰極エミッタ208の放出先222からの電子が、隣接する格子214における陽極電極210に吸引されて偏向することを防止することができる。
【0018】
ここで、前記第一集束電極211及び第二集束電極213の、X方向に沿う寸法(長さ)は、それぞれd1、d2として定義されている。前記陰極電極212及び前記陰極エミッタ208の、X方向に沿う寸法の和(即ち、前記陰極エミッタ208の放出先222から、前記列引出し電極206の該陰極エミッタ208に接続した表面までの距離)は、d3として定義されている。前記陽極電極210の前記陰極エミッタ208に対向する表面から、前記陰極電極の前記列引出し電極206に接続した表面までの距離は、d4として定義されている。前記d1、d2は、一つの前記格子214の寸法によって変更することができ、d1及びd2はそれぞれd3より大きく又は等しいことが好ましい。即ち、前記第一集束電極211及び第二集束電極213の、X方向に沿う寸法は、それぞれ前記陰極エミッタ208の放出先222から、前記列引出し電極206の該陰極エミッタ208に接続した表面までの距離よりより大きく又は等しいことが好ましい。さらに、d2をd4より大きく設けることにより、前記陰極エミッタ208の放出先222からの電子が、前記第二集束電極213を越えて、隣接する格子へ偏向することを防止することができる。
【0019】
前記絶縁基板202は、シリコン、ガラス、セラミックス、樹脂、ポリマーなどの絶縁材料からなる。前記絶縁基板202の形状は、円形、方形、矩形である。本実施例において、前記絶縁基板202は、厚さが1mmであり、辺長が1cmの方形ガラス基板である。
【0020】
前記行引出し電極204及び前記列引出し電極206は、それぞれ金属、合金、酸化インジウムスズ(ITO)又は導電ペーストからなる導電層である。前記金属は、銅、アルミニウム、金、銀又は鉄である。前記導電ペーストは、金属粉末、低融点ガラス粉末及び接着剤を含む。前記行引出し電極204及び前記列引出し電極206の厚さは、それぞれ10μm〜50μmであり、その幅は30μm〜100μmである。隣接する前記行引出し電極204の間の距離は50μm〜2cmであり、隣接する前記列引出し電極206の間の距離は50μm〜2cmである。前記行引出し電極204及び前記列引出し電極206は、10°〜90°で交叉して、90°で交叉することが好ましい。本実施例において、前記行引出し電極204及び前記列引出し電極206は、導電ペーストをシリク印刷して成るものである。
【0021】
前記陰極電極212及び陽極電極210は、それぞれ金属、合金、酸化インジウムスズ(ITO)又は導電ペーストからなり、矩形の導電層である。前記陰極電極212は、前記列引出し電極206に接続され、前記陽極電極210は、前記行引出し電極204に接続されている。前記陰極電極212及び陽極電極210の、Y方向に沿う寸法は、30μm〜1.5cmであり、X方向に沿う方向は、20μm〜1cmであり、その厚さが10μm〜500μmである。好ましくは、前記陰極電極212及び陽極電極210の、Y方向に沿う寸法は、100μm〜700μmであり、X方向に沿う方向は、50μm〜500μmであり、その厚さが20μm〜100μmである。本実施例において、前記陰極電極212及び陽極電極210は、導電ペーストをシリク印刷して成るものである。
【0022】
前記蛍光層209は、前記陽極電極210の前記絶縁基板202に隣接する表面の反対面に設置されている。前記蛍光層209は、前記陽極電極210の一部又は全ての表面に被覆されている。前記蛍光層209は、前記陽極電極210の一部の表面に被覆される場合、前記蛍光層209は、前記陽極電極210の前記陰極エミッタ208の放出先222に隣接する表面に設置されている。前記蛍光層209は、白、赤、緑、青のいずれ一種の蛍光粉末である。前記蛍光層209は、堆積法、印刷法、フォトリソグラフィー、塗布法により、前記陽極電極210の表面に形成される。前記蛍光層209の厚さは、5μm〜50μmである。
【0023】
前記陰極エミッタ208は、シリコンワイヤ、カーボンナノチューブ、炭素繊維、カーボンナノチューブワイヤのいずれか一種又は多種である。本実施例において、前記陰極エミッタ208は、平行して配列した複数のカーボンナノチューブワイヤを含む。各々の前記複数のカーボンナノチューブワイヤは、一端が前記陰極電極212に電気的に接続され、もう一端が放出先222として前記陽極電極210に向けて延伸しているように設置されている。前記放出先222から前記陽極電極210までの距離は、1μm〜1000μmである。前記複数のカーボンナノチューブワイヤの一端は、直接前記陰極電極212に接続されるか、又は導電剤又は分子間力で前記陰極電極212に接続されている。単一の前記カーボンナノチューブワイヤの長さは、10μm〜1cmであり、隣接する前記カーボンナノチューブワイヤの間の距離は、1μm〜1000μmである。
【0024】
前記カーボンナノチューブワイヤは、複数のカーボンナノチューブを含む自立構造を有するものである。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記カーボンナノチューブワイヤを独立して利用することができるという形態のことである。すなわち、前記カーボンナノチューブワイヤを対向する両側から支持して、前記カーボンナノチューブワイヤの構造を変化させずに、前記カーボンナノチューブワイヤを懸架させることができることを意味する。前記カーボンナノチューブワイヤにおける前記複数のカーボンナノチューブは、前記カーボンナノチューブワイヤの長軸方向に沿って、端と端で接続されている。前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブである。前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである場合、直径は0.5nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブである場合、直径は1nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである場合、直径は1.5nm〜50nmに設定される。
【0025】
一つの例として、前記陰極エミッタ208の製造方法は、カーボンナノチューブフィルムを提供する第一ステップと、少なくとも一枚の前記カーボンナノチューブフィルムを前記陽極電極210及び前記陰極電極212に被覆させる第二ステップと、前記陽極電極210の前記陰極電極212に対向する表面に沿って、前記複数のカーボンナノチューブフィルムを切断して、前記陰極電極212に陰極エミッタ208としての複数のカーボンナノチューブワイヤを形成する第三ステップと、を含む。
【0026】
前記第一ステップにおいて、前記カーボンナノチューブフィルムの製造方法は次の工程を含む。第一工程では、カーボンナノチューブアレイを提供する。該カーボンナノチューブアレイは、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献2を参照)であり、該超配列カーボンナノチューブアレイの製造方法は、化学気相堆積法を採用する。該製造方法は、次のステップを含む。ステップ(a)では、平らな基材を提供し、該基材はP型のシリコン基材、N型のシリコン基材及び酸化層が形成されたシリコン基材のいずれか一種である。本実施例において、4インチのシリコン基材を選択することが好ましい。ステップ(b)では、前記基材の表面に、均一に触媒層を形成する。該触媒層の材料は鉄、コバルト、ニッケル及びその2種以上の合金のいずれか一種である。ステップ(c)では、前記触媒層が形成された基材を700℃〜900℃の空気で30分〜90分間アニーリングする。ステップ(d)では、アニーリングされた基材を反応炉に置き、保護ガスで500℃〜740℃の温度で加熱した後で、カーボンを含むガスを導入して、5分〜30分間反応を行って、超配列カーボンナノチューブアレイを成長させることができる。該カーボンナノチューブアレイの高さは100マイクロメートル以上である。該カーボンナノチューブアレイは、互いに平行し、基材に垂直に生長する複数のカーボンナノチューブからなる。該カーボンナノチューブは、長さが長いため、部分的にカーボンナノチューブが互いに絡み合っている。生長の条件を制御することによって、前記カーボンナノチューブアレイは、例えば、アモルファスカーボン及び残存する触媒である金属粒子などの不純物を含まなくなる。
【0027】
本実施例において、前記カーボンを含むガスとしては例えば、アセチレン、エチレン、メタンなどの活性な炭化水素が選択され、エチレンを選択することが好ましい。保護ガスは窒素ガスまたは不活性ガスであり、アルゴンガスが好ましい。
【0028】
本実施例から提供されたカーボンナノチューブアレイは、前記の製造方法により製造されることに制限されず、アーク放電法またはレーザー蒸発法で製造してもいい。
【0029】
第二工程では、前記カーボンナノチューブアレイから、少なくとも、一枚のカーボンナノチューブフィルムを引き伸ばす。まず、ピンセットなどの工具を利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。例えば、一定の幅を有するテープを利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。次に、所定の速度で前記複数のカーボンナノチューブを引き出し、複数のカーボンナノチューブセグメントからなる連続のカーボンナノチューブフィルムを形成する。前記複数のカーボンナノチューブを引き出す工程において、前記複数のカーボンナノチューブがそれぞれ前記基材から脱離すると、分子間力で前記カーボンナノチューブセグメントが端と端で接合され、連続のカーボンナノチューブフィルムが形成される。
【0030】
前記第二ステップにおいて、複数の前記カーボンナノチューブフィルムを前記陽極電極210及び前記陰極電極212に被覆させる場合、前記複数のカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブを同じ方向に沿って配列させるように設置する。さらに、前記複数のカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、前記陰極電極212から前記陽極電極210へ延伸する方向に平行している。本実施例において、1〜5枚の前記カーボンナノチューブフィルムを積層させる。
【0031】
前記第三ステップにおいて、レーザー焼断法、電子線走査法又は加熱溶断法を利用して、前記複数のカーボンナノチューブフィルムを切断することができる。本実施例において、所定の幅を有するレーザーで、各々の前記列引出し電極206に平行して前記複数のカーボンナノチューブフィルムを走査し、前記陽極電極210及び前記陰極電極212の間に所定の隙間を形成させる。さらに、前記陽極電極210及びそれに隣接する列引出し電極206の間のカーボンナノチューブフィルムは除去することが好ましい。レーザーで前記カーボンナノチューブフィルムを走査する場合、前記カーボンナノチューブフィルムは加熱して収縮して、複数のカーボンナノチューブワイヤに形成される。レーザーで切断した前記カーボンナノチューブフィルムの端部に、陰極エミッタ208の放出先222が形成される。本実施例において、前記レーザーのパワーは、10〜50Wであり、その走査速度は0.1〜10000mm/秒であり、その幅は1μm〜400μmである。
【0032】
もう一つの例として、前記陰極エミッタ208の製造方法は、複数のカーボンナノチューブワイヤを前記陽極電極210及び前記陰極電極212に被覆させる第一ステップと、前記陽極電極210の前記陰極電極212に対向する表面に沿って、前記複数のカーボンナノチューブワイヤを切断する第二ステップと、を含む。
【0033】
前記第一ステップにおいて、前記カーボンナノチューブワイヤは次の二種の方法により形成される。第一種では、前記カーボンナノチューブフィルムを有機溶剤で浸漬して、前記有機溶剤を蒸発させた後、前記カーボンナノチューブフィルムが縮んで、カーボンナノチューブワイヤに形成される。前記有機溶剤は、メタノール、アルコール、アセトン又はこの二種の混合物である。第二種では、前記カーボンナノチューブフィルムを機械加工(例えば、紡糸工程)して、ねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成することもできる。詳しく説明すると、まず、前記カーボンナノチューブ予備成形体を紡糸装置に固定させる。次に、前記紡糸装置を動作させて前記カーボンナノチューブ予備成形体を回転させ、ねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成する。
【0034】
前記第二ステップは、レーザー焼断法、電子線走査法又は加熱溶断法を利用して、前記複数のカーボンナノチューブワイヤを切断することができる。
【0035】
さらに、前記電界放出装置200は、前記陰極エミッタ208を前記陰極電極212に固定させるための固定素子(図示せず)を含むことができる。該固定素子は、導電材料からなり、前記陰極電極212に設置されている。
【0036】
(実施例2)
図5〜7を参照すると、本実施例の電界放出装置300は、絶縁基板302と、該絶縁基板302に設置した複数の電子放出ユニット320と、複数の行引出し電極304と、複数の列引出し電極306と、を含む。前記複数の行引出し電極304は、それぞれ所定の距離で離れるように、平行して配列されている。前記複数の列引出し電極306は、それぞれ所定の距離で離れるように、平行して配列されている。前記複数の行引出し電極304と、前記複数の列引出し電極306とは、交叉して、複数の格子314が形成されている。隣接する二本の前記行引出し電極304と、隣接する二本の前記列引出し電極306とは、一つの前記格子314に形成されている。各々の前記格子の中に、一つの前記電子放出ユニット320を設置する。短路することを防止するために、前記複数の行引出し電極304と、前記複数の列引出し電極306とが交叉した領域に、それぞれ一つの絶縁層316を設置する。本実施例において、前記行引出し電極304の長手方向は、X方向と定義され、前記列引出し電極306の長手方向は、Y方向と定義されている。
【0037】
図5及び図6を参照すると、一つの前記電子放出ユニット320は、陽極電極310と、陰極電極312と、蛍光層309と、陰極エミッタ308と、第一集束電極311と、第二集束電極313と、を含む。前記陰極エミッタ308は、前記陽極電極310及び陰極電極312の間に設置され、その一つの端部は前記陰極電極312に接続され、そのもう一つの端部は放出先322として、前記陽極電極310に対向している。
【0038】
本実施例の電界放出装置300は、実施例1の電界放出装置200と比べて、次の異なる点がある。前記第二集束電極313は「L」字に形成されている。詳しくは、前記第二集束電極313はX方向に平行する第一部分313aと、Y方向に平行する第二部分313bと、からなる。前記第二集束電極313の第一部分313aは、その一端が前記列引出し電極306に電気的に接続され、そのもう一端が前記第二集束電極313の第二部分313bの一端に接続されている。ここで、前記第一集束電極311のX方向に沿う寸法は、d1’として定義されている。前記第二集束電極313の第一部分313aのX方向に沿う寸法は、d2’として定義されている。前記陰極電極312及び前記陰極エミッタ308の、X方向に沿う寸法の和(即ち、前記陰極エミッタ308の放出先322から、前記列引出し電極306の該陰極エミッタ308に接続した表面までの距離)は、d3’として定義されている。前記陽極電極310の前記陰極エミッタ308に対向する表面から、前記陰極電極の前記列引出し電極306に接続した表面までの距離は、d4’として定義されている。前記d2’は、前記d4’より大きい。即ち、前記第二集束電極313の第一部分313aは、前記陽極電極310を超えて、隣接する列引出し電極306へ延伸している。これにより、前記陰極エミッタ308の放出先322からの電子が、前記第二集束電極313を超えて、隣接する格子314に入ることを防止することができる。前記第二集束電極313の第二部分313bは、前記陽極電極310及び隣接する列引出し電極306の間に設置されている。前記第二集束電極313の第二部分313bは、それぞれ前記陽極電極310及び前記列引出し電極306と所定の距離で離れている。さらに、前記第二集束電極313の第二部分313bは、前記行引出し電極304に接触しない程度まで、前記第二集束電極313の第二部分313bはできるだけ長く設けることができる。これにより、前記陰極エミッタ308の放出先322からの電子が、前記陽極電極310を超えて、隣接する格子314に入ることを防止することができる。
【0039】
さらに、前記陰極エミッタ308の放出先322からの電子が、前記陽極電極310を超えて、隣接する格子314に入ることを防止するために、前記第二集束電極313の第二部分313bの厚さは、前記蛍光層309の厚さより大きく設けられる。図6を参照すると、ここでの「厚さ」は、図面の紙に垂直する方向に沿う寸法である。
【0040】
図8aは、集束電極を設置しない電界放出装置の表示効果を示す写真である。図8bは、本願発明の集束電極を設置した電界放出装置の表示効果を示す写真である。図8aの表示と比べて、本願発明の電界放出装置の表示効果がよくなり、クロストークの現象が減少した。本願発明の電界放出装置において、陰極エミッタの放出先からの電子を、陽極電極へ移動して蛍光層に衝突させることにより、前記電界放出装置を発光させる。前記電子は、集束電極の作用で集束されて、全て蛍光層に衝突される。従って、本願発明の電界放出装置において、クロストークという現象が減少し、電子の利用率が高くなる。
【符号の説明】
【0041】
200、300 電界放出装置
202、302 絶縁基板
204、304 行引出し電極
206、306 列引出し電極
208、308 陰極エミッタ
209、309 蛍光層
210、310 陽極電極
211、311 第一集束電極
212、312 陰極電極
213、313 第二集束電極
214、314 格子
220、320 電子放出ユニット
222、322 放出先
313a 第一部分
313b 第二部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、該絶縁基板に設置した複数の電子放出ユニットと、複数の行引出し電極と、複数の列引出し電極と、を含む電界放出装置において、
前記複数の行引出し電極と、前記複数の列引出し電極とは、電気絶縁的に交叉して、複数の格子を形成しており、
各々の前記格子の中に、一つの前記電子放出ユニットが設置され、
一つの前記電子放出ユニットは、陽極電極と、陰極電極と、蛍光層と、陰極エミッタと、第一集束電極と、第二集束電極と、を含み、
前記陽極電極は、前記行引出し電極に接続され、前記陰極電極は、前記列引出し電極に接続され、
前記陰極エミッタは、前記陽極電極及び陰極電極の間に設置され、その一つの端部は前記陰極電極に接続され、そのもう一つの端部は前記陽極電極に対向し、
前記蛍光層は、前記陽極電極の前記絶縁基板に隣接する表面とは反対の表面に形成され、
前記第一集束電極及び第二集束電極は、それぞれ前記列引出し電極に接続され、前記行引出し電極及び前記陽極電極と絶縁的に設置され、前記陰極エミッタの両側に設置されていることを特徴とする電界放出装置。
【請求項2】
前記第二集束電極の長さは、前記陽極電極の前記陰極エミッタに対向する表面から、前記陰極電極の前記列引出し電極に接続した表面までの距離より大きいことを特徴とする、請求項1に記載の電界放出装置。
【請求項3】
前記第一集束電極又は第二集束電極を、前記陰極エミッタ及び前記陽極電極より厚く設けることを特徴とする、請求項1に記載の電界放出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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