電界放射電子源
【課題】 カーボンナノ材料と陰極部材との接合部の耐熱温度を上げることで、最大陰極電流を大きくした電界放射電子源を提供する。
【解決手段】 陰極部材1の先端にカーボンナノ材料からなる細線部材2が接合され、細線部材2の先端から電子が放射するように形成された電界放射電子源10において、陰極部材1と細線部材2との接合部に、融点が500℃以上である金属の被覆層3を形成することにより、耐熱性のある金属膜で接合部を付着する。
【解決手段】 陰極部材1の先端にカーボンナノ材料からなる細線部材2が接合され、細線部材2の先端から電子が放射するように形成された電界放射電子源10において、陰極部材1と細線部材2との接合部に、融点が500℃以上である金属の被覆層3を形成することにより、耐熱性のある金属膜で接合部を付着する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰極の先端から電子を放出する電界放射電子源に関し、さらに詳細には、電界放射による電子放出を生じやすくするために、陰極先端部位にカーボンナノ材料からなる細線部材を接合した電界放射電子源に関する。
この電子放射電子源は、例えば電子顕微鏡やX線顕微鏡、マイクロフォーカスX線源などの電子銃に利用される。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(CNT)を代表とするカーボンナノ材料(カーボンナノチューブの他に、カーボンナノファイバー、カーボンナノコイル等が含まれる)は、化学的安定性、構造完全性に優れていて、コンタミ物質の影響を受けにくく、また、機械強度が強い、電気伝導性が高い、等の数々の優れた特性を持っている。
そのため、電界放射ディスプレイ(FED)の電極、走査型プローブ顕微鏡(SPM)のカンチレバー、燃料電池の触媒胆持電極、単一電子トランジスターなどの種々の分野で応用が検討されている。
【0003】
顕微鏡の分野では、カーボンナノチューブを走査型プローブ顕微鏡(SPM)のカンチレバーの先端に取り付けたプローブとしての利用が提案され、CNTをプローブ先端に接合することにより、先端の曲率半径が小さいプローブを形成するようにして、高分解能の表面原子像を撮像する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、上記文献には、プローブ先端にCNTを接合する方法が開示してある。すなわち、真空室内で、カンチレバーのプローブ先端にCNTを接触させ、接触部分に電子ビームを照射することでCNTを接合する。この接合は、電子顕微鏡にマニュピレータが取り付けられたナノレベルでの加工が可能な装置を用いて、電子顕微鏡下で位置決めを行い、電子顕微鏡自身の電子源から電子ビームを照射することにより、真空中に残留する炭化水素を接合部分に付着させることにより形成される。
【0005】
一方、最近、出願人らは、CNTを走査型プローブ顕微鏡のカンチレバーとして用いるのではなく、電子顕微鏡などの電子源として利用することも提案している(非特許文献1参照)。電子顕微鏡では、電子を試料に照射するための電子源が搭載されており、また、X線顕微鏡では、X線の励起用に電子源が搭載されている。これらの電子源には、一般に、タングステン材を陰極部材として用いた電界放射電子源が利用されている。出願人らは、CNTを陰極部材の先端に取り付け、電界放射電子源を10−8Pa程度の超高真空状態にして電圧を印加し、CNTの先端から電子を放射させることで、できるかぎり狭い領域(先端の直径が数〜数10ナノメートル程度)から電子を飛び出させるようにして、電子顕微鏡の分解能を向上するようにしている。
【特許文献1】特許第3441396号公報
【非特許文献1】第50回応用物理学関係連合講演会講演予稿集NO.2、28p−W−2,1023頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
CNTなどのカーボンナノ材料(細線部材)を使用する電界放射電子源では、カーボンナノ材料は、タングステン(W)やモリブデン(Mo)のような高融点の金属材料で形成される陰極部材の先端に突出するようにして接合され、電子放出のための細線部材を形成している。
この接合は、上述したように、電子ビーム照射により、真空中に残留する炭化水素を付着接合することで行われるが、この接合部分の耐熱温度は、せいぜい400℃程度である。
【0007】
電界放射電子源では、陰極部材、接合部、カーボンナノ材料(細線部材)へと電流が流れることにより、電界放射が生じる。その際、通電による自己発熱によって、陰極部材、接合部、細線部材の温度が上昇する。
また、電界放射の際に、積極的に陰極部材を加熱しながら電界放射を発生させる熱電界放射を行うことにより、放射電流値を安定化させることができる。
また、陰極部材や細線部材に吸着したH2Oなどの残留ガスを除去したい場合に、数秒〜数100秒の間、これらの部材を加熱するフラッシングを行うことで、吸着ガスを脱離させることができる。
【0008】
このように、電界放射による自己発熱により接合部の温度が上昇することになり、また、熱電界放射やフラッシングが行われることにより、接合部の温度が上昇することになる。しかしながら、接合部の温度が上昇して400℃以上になると、接合部は、炭化水素による付着している部分が溶けて、接合が破損してしまうことになる。
そのため、電界放射、あるいは熱電界放射、あるいはフラッシングを行う場合に、接合部温度が400℃以上に上昇しないように、陰極に流す電流を制限することが必要であった。
【0009】
したがって、陰極電流を十分に大きくして電界放射を強くすることができず、また、高温での熱電界放射により十分に安定化させることができず、さらには、吸着ガスの脱離を高温で行うことができず、短時間でガスを脱離させることが困難であった。
【0010】
そこで、本発明は、電界放射電子源の耐熱性を高めて、より高い温度で使用することができる電界放射電子源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明の電界放射電子源は、陰極部材の先端にカーボンナノ材料からなる細線部材が接合され、細線部材の先端から電子が放射するように形成された電界放射電子源において、陰極部材と細線部材との接合部に、融点が500℃以上である金属の被覆層を形成するようにしている。
この発明によれば、陰極部材の先端に、カーボンナノ材料からなる細線部材が接合されているが、さらに、接合部に融点が500℃以上の金属の被覆層を形成する。そして、金属被覆層による付着力を利用して、陰極部材と細線部材との固着力を強めるとともに、耐熱温度を被覆層の融点温度まで高めるようにする。
【0012】
上記電界放射電子源において、500℃以上の金属被覆層としては、融点が660℃のアルミ(Al)、融点が961℃の銀(Ag)を用いることができる。なお、金属被覆層は、融点が1000℃以上の金属を用いるようにして、さらに耐熱温度を高めるようにしてもよい。ここで、融点が1000℃以上の金属としては、例えば、融点が1100℃の金(Au)、融点が1500℃以上、すなわち、1700℃のチタン(Ti)、1800℃の白金(Pt)、1900℃のクロム(Cr)、バナジウム(V)を用いることができる。
さらに、融点が2000℃以上のいわゆる高融点金属であるイリジウム(Ir、融点2400℃)、タンタル(Ta、融点3000℃)、モリブデン(Mo、融点2600℃)、タングステン(W、融点3400℃)などを用いて、より耐熱性を高めるようにしてもよい。
なお、被覆層を形成する金属には、一般的には単体が用いられるが、合金であってもよい。
【0013】
また、上記電子源において、金属被覆層は、陰極部材に対して濡れ性のよい金属からなる第一層と、第一層の金属よりも融点が高い金属からなる第二層との積層構造を形成するようにしてもよい。
これによれば、陰極部材に対して濡れ性のよい金属を第一層として形成することで、陰極部材との結合性を改善し、さらに、融点が第一層より高い金属を、第二層として積層することで、耐熱性を高める。これにより、陰極部材と細線部材との結合性および耐熱性を同時に改善する。
ここで、第一層は、第二層に用いる金属との関係で適切な材料を選択することになるが、例えば第二層がタングステン(W)、モリブデン(Mo)の場合には、白金(Pt)を用いることが好ましい。
【0014】
また、上記電子源において、陰極部材と同一材料を被覆層として形成するか、熱膨張率がほぼ等しい金属を被覆層として形成するようにしてもよい。これによれば、熱膨張率が同一、または、ほぼ同一である材料を用いることで、温度変化が生じても、接合部に熱応力が発生するのを抑えるようにし、熱応力により、被覆層が剥離して、カーボンナノ材料(細線部材)が剥がれることを防ぐようにする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、接合部に融点が500℃以上の金属の被覆層を形成することで、電界放射電子源の耐熱性を高めることができ、接合部にこれまでよりも大きな電流を流すことが可能になり、強い電界放射を発生させることができる。また、熱電界放射による電流安定化やフラッシングによる吸着ガスの除去を、これまで以上の高温で実行することで、十分な効果を発揮させることができる。
また、融点が1000℃以上の金属を被覆層に用いるようにすれば、耐熱温度をさらに高めることができる。融点が2000℃以上の高融点金属を用いるようにすれば、耐熱温度を、より一層高めることができる。
【0016】
また、金属被覆層を、陰極部材に対して濡れ性のよい金属からなる第一層と、第一層の金属よりも融点が高い金属からなる第二層との積層構造を形成することで、耐熱性を高めるとともに、陰極部材と被覆層との付着力を高めることができ、陰極部材と細線部材との結合性を改善することができる。
また、陰極部材と同一金属を被覆層として形成するか、熱膨張率がほぼ等しい金属を被覆層として形成することで、被覆層の剥離により細線部材が陰極部材から剥がれることを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の電界放射電子源について図面を用いて説明する。
図2は本発明の一実施形態である電界放射電子源の陰極部材部分の構成を示す図であり、図1はその電界放射電子源の全体構成を示す図である。
【0018】
この電界放射電子源10は、先端を先鋭化した陰極部材1と、陰極部材1の先端近傍の接合部7にて、陰極部材1に固着されるカーボンナノ材料からなる細線部材2と、接合部7を含む陰極部材1の先端部分を被覆する金属膜からなる被覆層3と、陰極部材1を支持するとともに陰極部材1と電気的に導通するフィラメント4と、フィラメント4を支持する絶縁性の基台5とにより構成されている。
【0019】
陰極部材1は、直径が0.3mm程度のタングステン針が用いられ、電解研磨により先端を曲率半径100nm程度に尖鋭化してある。
なお、陰極部材1の先端は必ずしも先鋭化させる必要はないが、電子顕微鏡観察下での細線部材2の取り付けの際に、先鋭化してある方が、陰極部材への取り付け作業は簡便になる。
【0020】
細線部材2であるカーボンナノ材料は、周知のアーク放電法やCVD法により作成される。ここでは、カーボンナノ材料として直径が約5〜50nm、長さ約200nmのカーボンナノチューブを用いている。なお、中空形状であるカーボンナノチューブに代えてグラフェンが中心まで詰まっているカーボンナノファイバーやコイル形状のカーボンナノコイルを用いてもよい。
【0021】
また、細線部材2は、実際に1本のカーボンナノ材料を用いてもよいし、数本を束ねて実質上、1本にしたものでもよい。例えば、X線顕微鏡用の電子源として使用する場合のように強度が求められるときには、数本を束ねて1本にした構造のものが有利となる。
被覆層3には、融点が2000℃以上の高融点金属、具体的には、タングステン(W)を用いる。ただし、タングステン(W)に限らず、イリジウム(Ir)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)を用いるようにしてもよい。また、融点が1000℃以上の金属である金(Au)や白金(Pt)を用いても、従来に比べて耐熱性を改善することができる。同様に、融点が500℃以上の金属を用いても、これまでの炭化水素による接合に比べて耐熱性にすぐれた電界放射電子源を形成することができる。
なお、陰極部材1と細線部材2との接合方法、および被覆層3の形成方法については、後述する。
【0022】
フィラメント4には、陰極部材1と同様のタングステン(W)が用いられる。線状のフィラメント4は、その両端がそれぞれ支柱として機能するようにしてあり、フィラメント支柱4aが、絶縁性の基台5に固定してある。このフィラメント支柱4aは、電圧印加用端子として用いられる。なお、フィラメント支柱4aを単一の陰極として用い、図示しない対向する陽極との間で電圧を印加するようにすれば、熱電子を利用しない電界放射電子源として使用することができる。
【0023】
基台5は、円板状の絶縁材からなる。フィラメント支柱4aは、基台5を貫通するようにして固定されている。基台5がフィラメント支柱4aを固定することにより、フィラメント4、陰極部材1、細線部材2は導通した状態で絶縁基台5に支持される。
また、基台5の円板面の法線方向と、陰極部材1の軸線方向とは、できるだけ平行になるようにしておく。これにより、基台5の面方向を基準にして、陰極部材の軸方向を定めるようにすれば、調整が容易になる。
【0024】
また、本実施形態ではフィラメント支柱4aの支持台として絶縁性の基台5を用いているが、これは、上述したようにフィラメント4を利用してベーキングを行うためである。ベーキングが不要な場合は、絶縁性の基台5に代えて、導電性の基台を用いて単陰極とし、基台に直接陰極部材1を取り付けてもよい。
【0025】
(陰極部材とカーボンナノ材料(細線部材)との接合)
次に、本発明の電界放射電子源における陰極先端へのカーボンナノ材料(細線部材2)の取り付け工程について説明する。図3は、陰極部材1の先端部分へ細線部材2を接合するの接合工程を説明する図である。
【0026】
図3(a)に示すように、陰極1の先端部分は、数10〜数100nmの曲率半径をもつように電解研磨する。
続いて、図3(b)に示すように、先鋭化した陰極部材1に対し、先行技術として紹介した特許文献1に開示された方法で細線部材2であるカーボンナノ材料を固着させる。すなわち、電子顕微鏡にマニピュレータを取り付けたナノレベルでの加工が可能な装置を用いて電子顕微鏡下で位置決めを行い、電子顕微鏡自身の電子源から電子ビームを照射することにより、真空中に残留する炭化水素を付着接合することで、細線部材2を接合部7で接合する。
このとき、細線部材2の先端を、陰極部材1の先端より突出するように固定することで、電気力線が細線部材2の先端に集中するようになり、細線部材2の先端から電界放射が生じるようにすることができる。
続いて、図3(c)に示すように、接合部7を含む陰極部材1の先端面に、タングステン金属膜からなる被覆層3を形成する。被覆は、例えば、電子ビーム蒸着法、レーザアブレーション法などの周知の薄膜形成法による。
【0027】
このようにして形成した接合部7では、タングステンの被覆層3による付着力によって、陰極部材1と細線部材2とが結合されるので、単に、炭化水素による付着力で接合させているときよりも強く細線部材2を付着させることができる。
さらに、このようにして形成した接合部7は、耐熱性が高いタングステン(W)からなる被覆層3によって覆われているので、電界放射電子源10が、自己発熱、熱電界放射、フラッシングによって加熱されても、タングステン(W)の融点以上になるまで接合部7が破損することはなく、耐熱性に優れた構造にすることができる。
したがって、これまでの接合部では、自己発熱による限界温度が400℃程度であったが、タングステンの被覆層3を形成することにより、限界温度を1500℃以上まで高めることができ、その結果、電界放射の際の最大陰極電流を大きくすることができる。また、熱電界放射時の温度を1500℃以上にすることができ、電流値を安定化させることができる。また、フラッシングを1500℃以上で行うことで、吸着ガスを短時間のうちに効果的に除去することができる。
【0028】
さらには、陰極部材1にタングステンを使用し、被覆層3にもタングステンを使用しているので、陰極部材1と被覆層3とは、熱膨張率が同じである。そのため、温度変化が生じた場合でも、熱応力による被覆層3の剥離が生じにくく、細線部材2を安定して固着することができ、電子源としての寿命を長くすることができる。
【0029】
図4は、本発明の他の実施形態である電界放射電子源の陰極部材部分の構成を示す図である。図4において、図1と同じものについては、同符号を付すことにより、説明を省略する。本実施形態の全体構成は、図2と同じである。
この電界放射電子源10では、接合部7を含む陰極部材1の先端部分に、バッファ層3aが第一層として形成され、さらに、バッファ層3aの上に、バッファ層3aよりも融点が高い金属膜からなる被覆層3が第二層として形成してある。
このバッファ層3aには、タングステン(W)の陰極部材1に対して、濡れ性が優れた白金(Pt)を用い、被覆層3にはタングステン(W)を用いるようにしている。
【0030】
このような2層の金属被覆層を形成することにより、カーボンナノ材料と高融点金属であるタングステン(W)の被覆層との結合性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、陰極部材にカーボンナノ材料からなる細線部材を接合した電界放射電子源に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態である電界放射電子源の全体構成図。
【図2】本発明の一実施形態である電界放射電子源の陰極部材先端部分の構成を示す図。
【図3】図1の電界放射電子源における陰極先端部分の製造工程を説明する図。
【図4】本発明の他の実施形態である電界放射電子源の陰極先端部分の構成を示す図。
【符号の説明】
【0033】
1 :陰極部材(タングステン陰極部材)
2 :細線部材(カーボンナノ材料)
3 :金属被覆層
4 :フィラメント
4a:フィラメント支柱
5 :基台
7 :接合部
10:電界放射電子源
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰極の先端から電子を放出する電界放射電子源に関し、さらに詳細には、電界放射による電子放出を生じやすくするために、陰極先端部位にカーボンナノ材料からなる細線部材を接合した電界放射電子源に関する。
この電子放射電子源は、例えば電子顕微鏡やX線顕微鏡、マイクロフォーカスX線源などの電子銃に利用される。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(CNT)を代表とするカーボンナノ材料(カーボンナノチューブの他に、カーボンナノファイバー、カーボンナノコイル等が含まれる)は、化学的安定性、構造完全性に優れていて、コンタミ物質の影響を受けにくく、また、機械強度が強い、電気伝導性が高い、等の数々の優れた特性を持っている。
そのため、電界放射ディスプレイ(FED)の電極、走査型プローブ顕微鏡(SPM)のカンチレバー、燃料電池の触媒胆持電極、単一電子トランジスターなどの種々の分野で応用が検討されている。
【0003】
顕微鏡の分野では、カーボンナノチューブを走査型プローブ顕微鏡(SPM)のカンチレバーの先端に取り付けたプローブとしての利用が提案され、CNTをプローブ先端に接合することにより、先端の曲率半径が小さいプローブを形成するようにして、高分解能の表面原子像を撮像する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、上記文献には、プローブ先端にCNTを接合する方法が開示してある。すなわち、真空室内で、カンチレバーのプローブ先端にCNTを接触させ、接触部分に電子ビームを照射することでCNTを接合する。この接合は、電子顕微鏡にマニュピレータが取り付けられたナノレベルでの加工が可能な装置を用いて、電子顕微鏡下で位置決めを行い、電子顕微鏡自身の電子源から電子ビームを照射することにより、真空中に残留する炭化水素を接合部分に付着させることにより形成される。
【0005】
一方、最近、出願人らは、CNTを走査型プローブ顕微鏡のカンチレバーとして用いるのではなく、電子顕微鏡などの電子源として利用することも提案している(非特許文献1参照)。電子顕微鏡では、電子を試料に照射するための電子源が搭載されており、また、X線顕微鏡では、X線の励起用に電子源が搭載されている。これらの電子源には、一般に、タングステン材を陰極部材として用いた電界放射電子源が利用されている。出願人らは、CNTを陰極部材の先端に取り付け、電界放射電子源を10−8Pa程度の超高真空状態にして電圧を印加し、CNTの先端から電子を放射させることで、できるかぎり狭い領域(先端の直径が数〜数10ナノメートル程度)から電子を飛び出させるようにして、電子顕微鏡の分解能を向上するようにしている。
【特許文献1】特許第3441396号公報
【非特許文献1】第50回応用物理学関係連合講演会講演予稿集NO.2、28p−W−2,1023頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
CNTなどのカーボンナノ材料(細線部材)を使用する電界放射電子源では、カーボンナノ材料は、タングステン(W)やモリブデン(Mo)のような高融点の金属材料で形成される陰極部材の先端に突出するようにして接合され、電子放出のための細線部材を形成している。
この接合は、上述したように、電子ビーム照射により、真空中に残留する炭化水素を付着接合することで行われるが、この接合部分の耐熱温度は、せいぜい400℃程度である。
【0007】
電界放射電子源では、陰極部材、接合部、カーボンナノ材料(細線部材)へと電流が流れることにより、電界放射が生じる。その際、通電による自己発熱によって、陰極部材、接合部、細線部材の温度が上昇する。
また、電界放射の際に、積極的に陰極部材を加熱しながら電界放射を発生させる熱電界放射を行うことにより、放射電流値を安定化させることができる。
また、陰極部材や細線部材に吸着したH2Oなどの残留ガスを除去したい場合に、数秒〜数100秒の間、これらの部材を加熱するフラッシングを行うことで、吸着ガスを脱離させることができる。
【0008】
このように、電界放射による自己発熱により接合部の温度が上昇することになり、また、熱電界放射やフラッシングが行われることにより、接合部の温度が上昇することになる。しかしながら、接合部の温度が上昇して400℃以上になると、接合部は、炭化水素による付着している部分が溶けて、接合が破損してしまうことになる。
そのため、電界放射、あるいは熱電界放射、あるいはフラッシングを行う場合に、接合部温度が400℃以上に上昇しないように、陰極に流す電流を制限することが必要であった。
【0009】
したがって、陰極電流を十分に大きくして電界放射を強くすることができず、また、高温での熱電界放射により十分に安定化させることができず、さらには、吸着ガスの脱離を高温で行うことができず、短時間でガスを脱離させることが困難であった。
【0010】
そこで、本発明は、電界放射電子源の耐熱性を高めて、より高い温度で使用することができる電界放射電子源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明の電界放射電子源は、陰極部材の先端にカーボンナノ材料からなる細線部材が接合され、細線部材の先端から電子が放射するように形成された電界放射電子源において、陰極部材と細線部材との接合部に、融点が500℃以上である金属の被覆層を形成するようにしている。
この発明によれば、陰極部材の先端に、カーボンナノ材料からなる細線部材が接合されているが、さらに、接合部に融点が500℃以上の金属の被覆層を形成する。そして、金属被覆層による付着力を利用して、陰極部材と細線部材との固着力を強めるとともに、耐熱温度を被覆層の融点温度まで高めるようにする。
【0012】
上記電界放射電子源において、500℃以上の金属被覆層としては、融点が660℃のアルミ(Al)、融点が961℃の銀(Ag)を用いることができる。なお、金属被覆層は、融点が1000℃以上の金属を用いるようにして、さらに耐熱温度を高めるようにしてもよい。ここで、融点が1000℃以上の金属としては、例えば、融点が1100℃の金(Au)、融点が1500℃以上、すなわち、1700℃のチタン(Ti)、1800℃の白金(Pt)、1900℃のクロム(Cr)、バナジウム(V)を用いることができる。
さらに、融点が2000℃以上のいわゆる高融点金属であるイリジウム(Ir、融点2400℃)、タンタル(Ta、融点3000℃)、モリブデン(Mo、融点2600℃)、タングステン(W、融点3400℃)などを用いて、より耐熱性を高めるようにしてもよい。
なお、被覆層を形成する金属には、一般的には単体が用いられるが、合金であってもよい。
【0013】
また、上記電子源において、金属被覆層は、陰極部材に対して濡れ性のよい金属からなる第一層と、第一層の金属よりも融点が高い金属からなる第二層との積層構造を形成するようにしてもよい。
これによれば、陰極部材に対して濡れ性のよい金属を第一層として形成することで、陰極部材との結合性を改善し、さらに、融点が第一層より高い金属を、第二層として積層することで、耐熱性を高める。これにより、陰極部材と細線部材との結合性および耐熱性を同時に改善する。
ここで、第一層は、第二層に用いる金属との関係で適切な材料を選択することになるが、例えば第二層がタングステン(W)、モリブデン(Mo)の場合には、白金(Pt)を用いることが好ましい。
【0014】
また、上記電子源において、陰極部材と同一材料を被覆層として形成するか、熱膨張率がほぼ等しい金属を被覆層として形成するようにしてもよい。これによれば、熱膨張率が同一、または、ほぼ同一である材料を用いることで、温度変化が生じても、接合部に熱応力が発生するのを抑えるようにし、熱応力により、被覆層が剥離して、カーボンナノ材料(細線部材)が剥がれることを防ぐようにする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、接合部に融点が500℃以上の金属の被覆層を形成することで、電界放射電子源の耐熱性を高めることができ、接合部にこれまでよりも大きな電流を流すことが可能になり、強い電界放射を発生させることができる。また、熱電界放射による電流安定化やフラッシングによる吸着ガスの除去を、これまで以上の高温で実行することで、十分な効果を発揮させることができる。
また、融点が1000℃以上の金属を被覆層に用いるようにすれば、耐熱温度をさらに高めることができる。融点が2000℃以上の高融点金属を用いるようにすれば、耐熱温度を、より一層高めることができる。
【0016】
また、金属被覆層を、陰極部材に対して濡れ性のよい金属からなる第一層と、第一層の金属よりも融点が高い金属からなる第二層との積層構造を形成することで、耐熱性を高めるとともに、陰極部材と被覆層との付着力を高めることができ、陰極部材と細線部材との結合性を改善することができる。
また、陰極部材と同一金属を被覆層として形成するか、熱膨張率がほぼ等しい金属を被覆層として形成することで、被覆層の剥離により細線部材が陰極部材から剥がれることを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の電界放射電子源について図面を用いて説明する。
図2は本発明の一実施形態である電界放射電子源の陰極部材部分の構成を示す図であり、図1はその電界放射電子源の全体構成を示す図である。
【0018】
この電界放射電子源10は、先端を先鋭化した陰極部材1と、陰極部材1の先端近傍の接合部7にて、陰極部材1に固着されるカーボンナノ材料からなる細線部材2と、接合部7を含む陰極部材1の先端部分を被覆する金属膜からなる被覆層3と、陰極部材1を支持するとともに陰極部材1と電気的に導通するフィラメント4と、フィラメント4を支持する絶縁性の基台5とにより構成されている。
【0019】
陰極部材1は、直径が0.3mm程度のタングステン針が用いられ、電解研磨により先端を曲率半径100nm程度に尖鋭化してある。
なお、陰極部材1の先端は必ずしも先鋭化させる必要はないが、電子顕微鏡観察下での細線部材2の取り付けの際に、先鋭化してある方が、陰極部材への取り付け作業は簡便になる。
【0020】
細線部材2であるカーボンナノ材料は、周知のアーク放電法やCVD法により作成される。ここでは、カーボンナノ材料として直径が約5〜50nm、長さ約200nmのカーボンナノチューブを用いている。なお、中空形状であるカーボンナノチューブに代えてグラフェンが中心まで詰まっているカーボンナノファイバーやコイル形状のカーボンナノコイルを用いてもよい。
【0021】
また、細線部材2は、実際に1本のカーボンナノ材料を用いてもよいし、数本を束ねて実質上、1本にしたものでもよい。例えば、X線顕微鏡用の電子源として使用する場合のように強度が求められるときには、数本を束ねて1本にした構造のものが有利となる。
被覆層3には、融点が2000℃以上の高融点金属、具体的には、タングステン(W)を用いる。ただし、タングステン(W)に限らず、イリジウム(Ir)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)を用いるようにしてもよい。また、融点が1000℃以上の金属である金(Au)や白金(Pt)を用いても、従来に比べて耐熱性を改善することができる。同様に、融点が500℃以上の金属を用いても、これまでの炭化水素による接合に比べて耐熱性にすぐれた電界放射電子源を形成することができる。
なお、陰極部材1と細線部材2との接合方法、および被覆層3の形成方法については、後述する。
【0022】
フィラメント4には、陰極部材1と同様のタングステン(W)が用いられる。線状のフィラメント4は、その両端がそれぞれ支柱として機能するようにしてあり、フィラメント支柱4aが、絶縁性の基台5に固定してある。このフィラメント支柱4aは、電圧印加用端子として用いられる。なお、フィラメント支柱4aを単一の陰極として用い、図示しない対向する陽極との間で電圧を印加するようにすれば、熱電子を利用しない電界放射電子源として使用することができる。
【0023】
基台5は、円板状の絶縁材からなる。フィラメント支柱4aは、基台5を貫通するようにして固定されている。基台5がフィラメント支柱4aを固定することにより、フィラメント4、陰極部材1、細線部材2は導通した状態で絶縁基台5に支持される。
また、基台5の円板面の法線方向と、陰極部材1の軸線方向とは、できるだけ平行になるようにしておく。これにより、基台5の面方向を基準にして、陰極部材の軸方向を定めるようにすれば、調整が容易になる。
【0024】
また、本実施形態ではフィラメント支柱4aの支持台として絶縁性の基台5を用いているが、これは、上述したようにフィラメント4を利用してベーキングを行うためである。ベーキングが不要な場合は、絶縁性の基台5に代えて、導電性の基台を用いて単陰極とし、基台に直接陰極部材1を取り付けてもよい。
【0025】
(陰極部材とカーボンナノ材料(細線部材)との接合)
次に、本発明の電界放射電子源における陰極先端へのカーボンナノ材料(細線部材2)の取り付け工程について説明する。図3は、陰極部材1の先端部分へ細線部材2を接合するの接合工程を説明する図である。
【0026】
図3(a)に示すように、陰極1の先端部分は、数10〜数100nmの曲率半径をもつように電解研磨する。
続いて、図3(b)に示すように、先鋭化した陰極部材1に対し、先行技術として紹介した特許文献1に開示された方法で細線部材2であるカーボンナノ材料を固着させる。すなわち、電子顕微鏡にマニピュレータを取り付けたナノレベルでの加工が可能な装置を用いて電子顕微鏡下で位置決めを行い、電子顕微鏡自身の電子源から電子ビームを照射することにより、真空中に残留する炭化水素を付着接合することで、細線部材2を接合部7で接合する。
このとき、細線部材2の先端を、陰極部材1の先端より突出するように固定することで、電気力線が細線部材2の先端に集中するようになり、細線部材2の先端から電界放射が生じるようにすることができる。
続いて、図3(c)に示すように、接合部7を含む陰極部材1の先端面に、タングステン金属膜からなる被覆層3を形成する。被覆は、例えば、電子ビーム蒸着法、レーザアブレーション法などの周知の薄膜形成法による。
【0027】
このようにして形成した接合部7では、タングステンの被覆層3による付着力によって、陰極部材1と細線部材2とが結合されるので、単に、炭化水素による付着力で接合させているときよりも強く細線部材2を付着させることができる。
さらに、このようにして形成した接合部7は、耐熱性が高いタングステン(W)からなる被覆層3によって覆われているので、電界放射電子源10が、自己発熱、熱電界放射、フラッシングによって加熱されても、タングステン(W)の融点以上になるまで接合部7が破損することはなく、耐熱性に優れた構造にすることができる。
したがって、これまでの接合部では、自己発熱による限界温度が400℃程度であったが、タングステンの被覆層3を形成することにより、限界温度を1500℃以上まで高めることができ、その結果、電界放射の際の最大陰極電流を大きくすることができる。また、熱電界放射時の温度を1500℃以上にすることができ、電流値を安定化させることができる。また、フラッシングを1500℃以上で行うことで、吸着ガスを短時間のうちに効果的に除去することができる。
【0028】
さらには、陰極部材1にタングステンを使用し、被覆層3にもタングステンを使用しているので、陰極部材1と被覆層3とは、熱膨張率が同じである。そのため、温度変化が生じた場合でも、熱応力による被覆層3の剥離が生じにくく、細線部材2を安定して固着することができ、電子源としての寿命を長くすることができる。
【0029】
図4は、本発明の他の実施形態である電界放射電子源の陰極部材部分の構成を示す図である。図4において、図1と同じものについては、同符号を付すことにより、説明を省略する。本実施形態の全体構成は、図2と同じである。
この電界放射電子源10では、接合部7を含む陰極部材1の先端部分に、バッファ層3aが第一層として形成され、さらに、バッファ層3aの上に、バッファ層3aよりも融点が高い金属膜からなる被覆層3が第二層として形成してある。
このバッファ層3aには、タングステン(W)の陰極部材1に対して、濡れ性が優れた白金(Pt)を用い、被覆層3にはタングステン(W)を用いるようにしている。
【0030】
このような2層の金属被覆層を形成することにより、カーボンナノ材料と高融点金属であるタングステン(W)の被覆層との結合性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、陰極部材にカーボンナノ材料からなる細線部材を接合した電界放射電子源に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態である電界放射電子源の全体構成図。
【図2】本発明の一実施形態である電界放射電子源の陰極部材先端部分の構成を示す図。
【図3】図1の電界放射電子源における陰極先端部分の製造工程を説明する図。
【図4】本発明の他の実施形態である電界放射電子源の陰極先端部分の構成を示す図。
【符号の説明】
【0033】
1 :陰極部材(タングステン陰極部材)
2 :細線部材(カーボンナノ材料)
3 :金属被覆層
4 :フィラメント
4a:フィラメント支柱
5 :基台
7 :接合部
10:電界放射電子源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極部材の先端にカーボンナノ材料からなる細線部材が接合され、細線部材の先端から電子が放射するように形成された電界放射電子源において、陰極部材と細線部材との接合部に、融点が500℃以上である金属の被覆層を形成することを特徴とする電界放射電子源。
【請求項2】
前記金属被覆層は、融点が1500℃以上の高融点金属であることを特徴とする電界放射電子源。
【請求項3】
前記金属被覆層は、陰極部材に対して濡れ性のよい金属からなる第一層と、第一層の金属よりも融点が高い金属からなる第二層との積層構造であることを特徴とする請求項1に記載の電界放射電子源。
【請求項4】
前記金属被覆層として、陰極部材と同一金属か、熱膨張率がほぼ等しい金属が用いられることを特徴とする請求項1に記載の電界放射電子源。
【請求項1】
陰極部材の先端にカーボンナノ材料からなる細線部材が接合され、細線部材の先端から電子が放射するように形成された電界放射電子源において、陰極部材と細線部材との接合部に、融点が500℃以上である金属の被覆層を形成することを特徴とする電界放射電子源。
【請求項2】
前記金属被覆層は、融点が1500℃以上の高融点金属であることを特徴とする電界放射電子源。
【請求項3】
前記金属被覆層は、陰極部材に対して濡れ性のよい金属からなる第一層と、第一層の金属よりも融点が高い金属からなる第二層との積層構造であることを特徴とする請求項1に記載の電界放射電子源。
【請求項4】
前記金属被覆層として、陰極部材と同一金属か、熱膨張率がほぼ等しい金属が用いられることを特徴とする請求項1に記載の電界放射電子源。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2006−19200(P2006−19200A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197660(P2004−197660)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年1月7日 フラーレン・ナノチューブ研究科発行の「第26回 フラーレン・ナノチューブ総合シンポジウム 講演要旨集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年3月28日 社団法人応用物理学会発行の「2004年(平成16年)春季 第51回 応用物理学関係連合講演会講演予稿集 第0分冊」に発表
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【出願人】(000205627)大阪府 (238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年1月7日 フラーレン・ナノチューブ研究科発行の「第26回 フラーレン・ナノチューブ総合シンポジウム 講演要旨集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年3月28日 社団法人応用物理学会発行の「2004年(平成16年)春季 第51回 応用物理学関係連合講演会講演予稿集 第0分冊」に発表
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【出願人】(000205627)大阪府 (238)
【Fターム(参考)】
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