説明

電界流体処理チェンバー

流体中の微生物の不活性化のための流体処理チェンバーが提供される。流体処理チェンバーは、ハウジングと電極アセンブリとを備える。ハウジングは、処理される流体を受け取るための流体入口と、処理済みの流体を回収可能な流体出口とを備える。電極アセンブリはハウジング内に配置され、電界を間に発生させるための少なくとも2個の電極を備える。電極は、電極アセンブリにより発生する最大強度の電界によって流体の処理のための両凹形の処理ゾーンの間に画定される対向する凸形の電極表面の部分を有する。処理ゾーンは、対向する凸形の電極表面の部分の間に、流体が流されて処理を受ける通路を備える。通路の幅は、対向する電極表面部分の凸形構造のため、通路の垂直方向の中央部分に向かってテーパ状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して流体の電界処理のための処理チェンバーに関し、特に流体中の微生物を不活性化するための電界流体処理チェンバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電界流体処理チェンバーは、流体処理ゾーンを有する流体チェンバーと、流体処理ゾーンに配置された一組の電極と、電極に接続された電圧パルス発生器とからなる。パルス発生器は電極に電圧パルスを印加し、これにより、電極によって流体処理ゾーンに電界を誘導する。処理ゾーン内の電界の強度を制御することにより、処理ゾーンに誘導される流体の風味、触感、外観、栄養価などの望ましい特性に悪影響を与えることなく、流体を滅菌または低温殺菌することができる。
【0003】
従来の平行プレート電極処理チェンバーは、電極の間に処理ゾーンを画定する一対の平面電極を備える。この配置は、プレートの間に均一の電界を設けるためのものである。しかし、従来の平行プレート処理チェンバーの幾何学形状は、電極の中心よりも電極のエッジで電界の強度が高くなる傾向があるという「エッジ効果」を生じさせる。その結果、効果的な処理量が限られる。さらに、このようにエッジで高い強度となると、処理される流体にアーク(電弧、arcing)が発生して、流体の持つ望ましい食品特性に悪影響を与え、電界を破壊する結果となることがある。したがって、電界を再形成するには、余分な電力を消費することになる。そのうえ、エッジでの高強度の電界は、処理プロセスで効果的に利用することができない。
【0004】
従来の同軸電極処理チェンバーは、長形の筒状外側電極の中に配置された円筒形または長形の中心電極と、内側電極と外側電極との間に同軸に配置された流体処理ゾーンとを有する。ポンプ供給可能な食料品などの流体は、処理チェンバーの一端部にポンプ供給され、同軸流体処理ゾーンを通って処理チェンバーの反対端部から出る。実用レベルでは、同軸電極構造は、電界の発生が可能な電極表面の表面が広く、高い処理能力を持つので、平行プレートの幾何学形状よりも有利であることが知られている。
【0005】
上述した同軸処理チェンバーは、処理能力が高いにもかかわらず、平行プレート幾何学形状と似た欠点を持つので、最適な解決法からは程遠い。エッジ効果は最大電界強度の不十分な利用につながり、これがエネルギー非効率性と高コストを引き起こす。
【0006】
また、従来の同軸処理チェンバーは、流体処理チェンバーの入口にエディーカレント(渦流、eddy currents)を発生させ、これがチェンバーの最大流量(maximun flow rate)を制限する。さらに、このようなチェンバーは処理済みと未処理の製品が混合可能であり、これにより処理チェンバーの効率が制限されることがある。したがって、従来の電界流体処理チェンバーを改良する試みが行われてきた。
【0007】
例えば、Bushnell(米国特許第5,048,404号)には、外側環状電極に包囲された内側円筒形電極を備えた処理チェンバーが記載されている。内側電極は各端部でテーパ状である。しかし、電極は処理チェンバーに主として同軸の構造を与えるので、処理ゾーンを通過できる流体の最大流量は、最小許容電界強度によって制限される。また、電極の設計は流体内の乱流を増大させ、これにより処理済みと未処理の製品の混合する可能性が高くなることがある。
【0008】
Qin(米国特許第5,662,031号)には、外側環状電極に包囲された内側円筒形電極を備える処理チェンバーが記載されている。内側および外側電極はともに、扇形の電極表面を持つ。しかし、この配置は、処理ゾーンの、電極表面が最も離れた部分にエディーカレントが発生する可能性を高め、これにより処理ゾーンを通過できる流体の最大流量を制限することがある。さらに、この配置は流体の攪拌を増大することによろい、流体の泡立ちや気泡の発生の可能性を高める。その結果、この設計は電極間の放電の傾向を強める。
【0009】
Mittal(米国特許第6,093,432号)には、内側電極と、内側電極の長さ方向の中ほどに内側電極のまわりに配置された外側電極とを収容するハウジングを備えた処理チェンバーが記載されている。内側電極は、円形横断面を持つ金属管を備え、外側電極は、中央に穴を持つ環状ディスクを備える。しかし、外側電極は処理ゾーンにエディーカレントを発生させ、それによって処理ゾーンを通過できる食料品の最大流量が制限されることがある。
【0010】
Bushnell(米国特許第6,110,423号)には、第1円筒形電極と、第2円筒形電極と、第1および第2電極の間に連続的に配置された絶縁体部分とを備える連続電極処理セルが記載されている。絶縁体部分は、第1電極のものと等しい内径から、小径な部分を通り、第2電極のものと等しい内径まで移り変わる。移り変わり部分は小径な部分とともに、小径な部分の付近に電界を集中させる。しかし、小径部分はまた、処理ゾーンを通過できる食料品の最大流量を制限する。さらに、電束線は、処理ゾーンを通る流体の流れの方向に平行なので、流体の一部は処理過剰となるのに対して、流体の他の部分は処理不十分となることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そのため、処理ゾーンにおいて流体のすべての部分を略等しく処理する連続フロー式流体処理チェンバーの必要性が依然として存在する。処理済みおよび未処理の製品の重大な混合が生じにくい連続フロー式流体処理チェンバーの必要性もまた存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、電極アセンブリにより発生する最大電界強度を利用し、作動中の流体流動条件下で、アークを引き起こす乱流とエッジ効果の両方が実質的に軽減される、エッジがなく連続した新たな電極構造を備える連続フロー式流体処理チェンバーが提供される。このように電極構造は、効果的な流体処理チェンバーを製造するため、電界パラメータと流体流動ダイナミクスの両方を考慮に入れたものである。
【0013】
本発明の一の態様によれば、流体中の微生物を不活性化するための処理チェンバーであって、処理される流体を受け取るための流体入口と、処理済みの流体を回収可能な流体出口とを備えるハウジングと、前記ハウジング内の電極アセンブリであって、電極ギャップを間に形成するための対向する凸形の電極表面の部分を有する少なくとも2個の電極を備え、電圧パルスの印加により、連続しかつ単位断面あたりで略均一な電界が発生する、電極アセンブリと、を備え、前記電極ギャップが、重力の影響を受けて流体が安定した均一な非乱流状態で流れる両凹形の処理ゾーンを画定し、前記処理ゾーンが、前記流体の処理のため前記電極アセンブリにより発生する最大強度の電界を含み、前記対向する電極表面の少なくとも一方が、前記処理ゾーン内で処理される前記流体の流れの空間分布とダイナミクスとを制御する、処理チェンバーが提供される。
【0014】
本発明の別の態様によれば、一対の電極の間に電界を発生させるステップであって、前記電極が、両凹形の処理ゾーンを画定する略凸形の対向表面の部分を有し、前記電界が前記処理ゾーン内で最大強度を持つ、ステップと、重力の影響を受けて前記両凹形の処理ゾーンに前記流体を通過させて前記流体を前記電界にさらすことにより、前記流体中の微生物を不活性化するステップと、を備える、流体を低温殺菌するための方法が提供される。
【0015】
本発明のさらに別の態様によれば、電界を間に発生させるための少なくとも2個の電極を備え、前記電極は、ハウジングに組み立てられた時に、相互に対向して、前記流体の処理のための処理ゾーンとして使用するための両凹形のスペースを間に画定するように構成された凸形の電極表面の部分を有し、前記電極の一方が、前記処理ゾーンへ導入されるために前記流体が表面を覆うように構成される、流体を処理するための低温殺菌キットが提供される。
【0016】
本発明のさらに別の態様によれば、流体中の微生物の不活性化に使用するための流体処理チェンバーであって、少なくとも2個の電極を有する電極アセンブリを備え、前記電極は、両凹形の環状スペースからなる電極ギャップを形成している、対向する凸形の電極表面の部分を有し、前記電極アセンブリにより中央部分に発生する最大強度の電界と、前記環状スペースの単位断面あたりで略均一な電界と、電圧パルスの印加により前記環状スペースの中央部分から離れるいずれの方向においてもスムーズで連続的な電界強度の減少と、が同時に発生する、流体処理チェンバーが提供される。
【0017】
本発明のさらに別の態様によれば、少なくとも2個の電極を備える電極アセンブリを有する処理チェンバーであって、電極の一方は内側電極であり、他方は内側電極を囲む外側電極であり、電極は、処理ゾーンを構成する両凹形の環状通路を画定する略凸形の対向表面を有し、通路は、垂直方向にテーパ状であり、中央部分が狭くなっており、ゾーン入口と、ゾーン出口と、通路の中央部分に主要処理ゾーンとを備え、内側電極は、均一な上向きの流体の流れと、内側電極の上面へのオーバーフロープロセスによって、スムーズで乱流のない安定した流体の送出のために、極軸に沿って流体ボアを備え、流体は表面を覆って、凸形湾曲面により入口ゾーンへ案内され、そこから重力の影響を受けて、発生中の最大強度の電界へさらす処理のために、主要処理ゾーンへ送られ、そこからゾーン出口を出る、処理チェンバーが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施例を単なる例として説明する。
【0019】
便宜上、説明中の同様の数字は図面中の同様の構造を指す。図1において、電極表面と、処理ゾーンと、等電位線と、電極表面に関連する電界曲線とを示す電極アセンブリの概略断面図が、全体として数字100で表されている。電極アセンブリ100は、外側電極表面108を有する外側電極と104と、外側電極表面110を有する内側電極106とを含む。
【0020】
外側電極104は、内側電極106の周囲に配置されている。外側電極104の外側電極表面108は、内側電極106の外側電極表面110と対向している。対向する電極表面108,110はともに、それらの間での流体処理のための処理ゾーン111を構成する両凹形の環状スペースを画定する。処理ゾーンを構成する環状スペースは、垂直方向の中央部分へ向かってスペースの幅が狭くなるように、環状スペースの対向する垂直方向の輪郭線に対応する凹形湾曲部を与える二つの対向する凸形の表面により画定されるので、両凹形として示されている。図2には、対向する電極表面108,110により形成される環状スペースの斜視図が示されている。
【0021】
再び図1を参照すると、外側および内側電極104,106の対向する電極表面108,110は、電圧パルス発生器(図示せず)への接続のための電気接点をそれぞれ有する。電圧パルス発生器は、電極104,106の対向表面へ電圧パルスを印加することにより、対向する電極表面108,110の間に単位断面積あたりで均一な電界を形成する。さらに、所望であれば、電極104,106が発生可能な最大強度の電界が、対向する電極表面108,110の間に発生する。
【0022】
対向する電極表面108,110の間に形成される電界は、連続的に環状スペースの至る所に延びている。しかし、対向する電極表面108,110は湾曲しているため、環状スペースの水平断面の単位面積の電界強度は、表面湾曲度と、この断面における対向する電極表面108,110の間の距離に依存する。
【0023】
したがって、処理ゾーン111は、処理プロセスに関する主な機能性によって特徴付けられる三つの主要部分に分割することができる。これらの部分は、主要処理ゾーン112と、主要処理ゾーン112の一端部に配置された処理ゾーン入口114(以下、ゾーン入口114と呼ぶ)と、主要処理ゾーン112の反対側の端部に配置された処理ゾーン出口116(以下、ゾーン出口116と呼ぶ)とを含む。説明するように、流体は、ゾーン入口114を経て主要処理ゾーン112へ導入され、主要処理ゾーン112からゾーン出口116を通って回収される。処理ゾーン111へ導入された流体は、電極表面108,110の間に発生する電界にさらされる。その結果、流体が処理ゾーン111から回収される前に、電極アセンブリ100は流体に含まれる微生物を不活性化することができる。
【0024】
対向する電極表面108,110は、処理ゾーン111にわたって連続する電界分布を維持し、ゾーン入口114とゾーン出口116において対向する電極表面108,110の間で単位水平断面あたり略均一である電界を発生させ、処理ゾーン112内で略均一な対向表面により発生する最大強度の電界分布を維持するように形成されている。ここで定義する「略均一な」は、およそ同じ電界強度を持つことに関連する。したがって、処理ゾーン111を構成する環状スペースに近い対向する電極表面108,110は、処理ゾーン111の全体にわたって、エッジや略凸形の部分がなく、スムーズで連続している。特に、内側電極106の電極表面110は凸形の電極表面を備え、外側電極104の電極表面108は内側電極106の周囲に配置された回転面を備える。対向する電極表面108,110は様々な凸形の度合い(凸形湾曲度)を取ることにより、対向する電極表面により画定される環状空間に、対応する様々な凹形の度合いを与える。
【0025】
上述した構造により、電界は連続し、ゾーン入口114から主要処理ゾーン112に向かって強度がスムーズに増加して、ここで電界の強度が最も高くなり、それからゾーン出口116へ向かってスムーズに減少する。対向する電極表面108,110の間の電界分布は、強度が、処理入口および出口ゾーン114,116の単位断面積あたりで略均一であり、主要処理ゾーン112にわたって略均一である。そのうえ、このような構造は、対向する電極表面108,110の間に画定される両凹形の環状スペースに、乱流のない安定した均一の流体の流れになるを助ける。流体の流れは、入口ゾーン114から出口ゾーン116まで移動する際に内側電極表面110を覆うように、内側電極表面110によって案内される。
【0026】
したがって、処理ゾーン111が、およそ凸形の表面構造の二つの表面により画定される略両凹形の環状スペースを備えることが認識できるであろう。本実施例では、両凹形の環状スペースの境を成す外側電極の表面108は略ドーナツ形(toroidal)の電極表面を備え、両凹形の環状スペースの境界を成す内側電極の表面110は略長円形(ellipsoidal)の電極表面を含む。また、両凹形の環状スペースは、垂直方向のオリエンテーション(orientation)を持ち、ゾーン入口114はスペースの上方部分に配置され、ゾーン出口116はスペースの下方部分に配置される。
【0027】
さらに、上述したように、処理ゾーン111に近い外側電極の表面108はドーナツ形電極表面を備え、処理ゾーン111に近い内側電極の表面110は略球形の表面を備えるが、数字118,122,124で示された、処理ゾーン11から離れた外側および内側電極104,106の表面は、それぞれ、流体処理に適用される設計上の細部で必要とされるように、直線状または放物線状を含む他の形状を取ってもよいことが認識できるであろう。さらに、離れた表面118,122,124は、用途に適するように非導電性材料で製造されてもよい。
【0028】
このように、本実施例の外側電極104はドーナツ形の形状として、内側電極106は略球形の形状として記載されているが、電極の全体的な形状はこれに限定されない。むしろ、環状スペースに近い対向する電極表面108,110が、対向する電極表面の間で単位水平断面あたり略均一な電界を発生させて維持し、その電界が対向する電極表面により発生される最大強度の電界を含む限り、他の形状や構造を使用してもよい。
【0029】
作動時に、電圧パルス発生器は内側および外側電極104,106に一連の電圧パルスを印加し、これにより対向する電極表面108,110の間の環状スペースに電界を形成する。水や液状食料品などの未処理の流体が、環状スペースの主要処理ゾーン112へ導入される。対向する電極表面108,110の間に発生する電界は、細胞膜の電気穿孔(electroporation)や誘電破壊(dielectric rupture)を引き起こして、結果的に流体中の微生物を不活性化する。このプロセスは低温殺菌(cold pasteurization)とも呼ばれる。低温殺菌は、処理ゾーン111内、特に主要処理ゾーン112内で行われる。
【0030】
その結果、処理プロセスの終了時に処理ゾーン112から回収される処理済みの流体は、安全で許容可能であると考えられるレベルまで低温殺菌される。処理済みの流体は、使用のための無菌または冷凍状態で包装および保管される。こうして、電圧パルス発生器により対向する電極表面108,110へ印加され、処理ゾーン111内を流れる流体へ印加される電圧パルスを介して電界の強度を適切に制御することにより、電極アセンブリ100は未処理の流体を熱によらずに滅菌または低温殺菌することができる。
【0031】
電極アセンブリ100を用いることにより、多くの利点が実現される。上述したように、対向する電極表面108,110は処理ゾーン111にわたって略凸形である。したがって、処理ゾーン111内の電界にエッジ効果を誘導させるであろうエッジ形状がない。さらに、電界の分布は連続している。こうして電界の強度はゾーン入口114から主要処理ゾーン112の中央部分に向かってスムーズに増加し、それからゾーン出口116へ向かって再びスムーズに減少する。
【0032】
また電界の強度は、ゾーン入口114とゾーン出口116の単位水平断面あたり略均一である。主要処理ゾーン112内では、発生する電界の最大強度分布があり、電界は略同じ強度で略均一である。この構造によれば、流体の流れが安定した均一な状態では、主要処理ゾーン112を移動する流体のすべての部分が略同じ強度の電界で処理され、これにより、流体が処理過剰または処理不足となる範囲が限られる。
【0033】
さらに、上述した電極アセンブリ100は、処理プロセスで利用するため主要処理ゾーン112内の対向する電極表面108,110により形成される最大強度の電界を、(流体の流れが略安定して均一な状態で)発生させて維持する。これは、最大強度の電界がエッジに存在し、最大強度の電界の利用が不十分である当該技術の電界処理チェンバーの電流状態とは対照的である。その結果、処理量(dosage)、すなわち主要処理ゾーン112内の処理量が、先行技術で得られるものより高くなる。「処理量」の語は、電極アセンブリ100により得られる電界強度に関して、所定の流量で電界にさらされる流体の単位体積として定義される。したがって、先行技術と比較すると、チェンバー100の作動に必要なエネルギーの点でコスト削減が実現する。
【0034】
またさらに、電極アセンブリ100は、処理ゾーン111内の流体の流れの流動ダイナミクスに影響を与えることができる。対向する電極表面108,110のスムーズな凸形表面は、流れが安定して均一となる程度まで、乱流がかなり減少した流れになるのを助ける。流体が処理ゾーン内において圧力を受けて流れる当該技術の電界チェンバーの電流状態とは異なり、本電極アセンブリの処理ゾーンの流れは、重力と大気圧の影響を受けており、流体のオーバーフローと、流体の流れを主要処理ゾーン112へ案内する内側電極の表面110を覆う流れを有している。
【0035】
図3を参照すると、バッチモード(バッチ、batch:処理の1度分)の水処理のための処理チェンバーが全体として数字300で示されている。本実施例では、処理チェンバー300は、電極アセンブリ100を支持するための支持体302と、処理済みの水を受け取るための通路304と、電極アセンブリ100と処理される流体とをつなぐための環状導管306とを備える。作動時には、処理ゾーン111の上に配置された環状導管306を介して、未処理の流体の別々のサンプルが環状のカーテンとしてゾーン入口114へ導入される。流体は、処理ゾーン111を通過してゾーン出口116から通路304へ出るときに処理される。次に流体は容器304から回収され、必要に応じて、取り扱われ保管される。この実施例は、粘性流体のバッチ(処理の1度分)を処理するのにとても適している。理解できると思われるが、本実施例は、連続流体源と連続回収手段とを設けることにより、連続したものにすることが可能である。
【0036】
図4aを参照すると、連続フロー式水処理のための処理チェンバーが全体として数字400で示されている。本実施例では、未処理の流体が処理ゾーン111へ連続的に導入され、処理ゾーン111から連続的に回収される。処理チェンバー400は、電極アセンブリ100を支持するための支持体402と、処理済みの水を回収するための通路404とを備える。電極アセンブリ100と通路404との間には、ディスク406が設けられている。処理チェンバーからの処理済みの流体の除去を容易にするため、出口408が設けられている。処理チェンバー400への流体の投入を容易にするため、バッフル(baffle)412を含む送出管410が設けられている。
【0037】
作動時には、処理チェンバー400の上の容器(図示せず)からの未処理の流体が、ゾーン入口114の上に配置された送出管410を介して処理ゾーン111へ導入される。送出管410のバッフル412は、処理ゾーン111を通過するため、流体を環状カーテンの形にする。そのうえ、管410を出る未処理の流体の流量は、バルブまたは他の周知の流量制御機構(図示せず)により制御されて、所望の流量を流入ゾーン114へ提供する。処理済みの流体は処理ゾーンを出て、ディスク406の外側エッジへ分散して通路404へ入る。流体は次に、出口408を経て処理チェンバーから流出する。
【0038】
図4bを参照すると、図4aに示されたものの代わりの連続フロー式水処理のための処理チェンバーの実施例が、全体として数字450で示されている。本実施例では、第2電極106の上面は凹部452を含む。さらに、送出管454は、凹部452の上に配置され、そこへ流体を送出するように構成されている。
【0039】
作動時に、送出管454から出た未処理の流体は、凹部452を満たし、径方向外向きにオーバーフローして内側電極106の電極表面110を覆い、さらにゾーン入口114を通って主要処理ゾーン112へと電極表面110によって案内される。
【0040】
これら後述の実施例はともに、微粒子を含有する流体を含めた粘性流体の連続処理にとても適しているが、これに限定される必要はない。
【0041】
電極アセンブリ100と上述した構造は、対向する電極表面108,110がエッジとコーナーがなくスムーズで連続していて、処理ゾーン111全体での流体のよどみとエディーカレントの可能性を、除去しなくても最小にするので、安定した均一な連続フローモードでの作動に大変適している。さらにこのような構造は、未処理の流体が処理済みの流体と混合する可能性を軽減する。その結果、処理ゾーン111内の単位体積ごとの処理効率は一定で予測可能であり、非常に効率的な全体的処理プロセスにつながる。これは特に、結果予測可能性が高く望まれる産業上の運用につながる。また流体の流れは、重力のみの影響を受けて、対向する電極表面108,110の湾曲部により、特に処理ゾーン111内の内側電極106の電極表面110により案内される。その結果、流体の乱流がわずかとなり、流体フローにより処理ゾーン111に誘導されるエディーカレントの発生がさらに制限される。
【0042】
そのうえ、対向する電極表面108,110は、電極表面110と処理ゾーン111において、略安定して均一で線対称な流体の流れを起こす。特に流体が最大強度の電界にさらされる主要処理ゾーン112では、重力の影響を受けて、速度と圧力と密度が、時間とともに略一定であり、速度ベクトルが大きさと方向において略同一であるので、流れは安定して略均一であると考えられる。その結果、流体のすべての部分が略同じ流量となり、処理ゾーン111を通るときの滞留時間(residence time)が同じとなる。
【0043】
誘導される電界は処理ゾーン111の単位断面あたり略均一であるので、処理ゾーン111の特定の断面積を通って流れる流体のすべての部分が、単位断面積あたり略同じ強度の電界にさらされる。したがって、処理ゾーン全体で流体に印加される電界の処理量は、電極に印加される電圧パルスのエネルギーにより容易に制御され、また事前に決定するのも容易である。略安定した均一な流れにより、乱流と気泡生成による電界の誘導破壊の可能性が低下し、対向する電極表面108,110の間にいったん形成されると、電界は処理プロセスを通して維持される。処理プロセスを通して電界を一定に維持すると、印加される電圧と流体の流れについて予め設定された作動条件に基づいて、処理を受ける流体が浴びる処理量の正確さと信頼性の限界に寄与する。経済的な観点から、乱流と気泡生成の減少は、作動時のエネルギー節約にも寄与する。
【0044】
図5を参照すると、本発明の代わりの実施例による処理チェンバーの垂直方向の断面図が全体として数字500で示されている。さらに図6を参照すると、図5に示す処理チェンバーの水平方向の断面図が全体として数字600で示されている。
【0045】
処理チェンバー500は、ハウジング502と、その中に配置された電極アセンブリ100とを備える。ハウジング502は、略垂直な側壁501と、側壁501を支持する略平面状の基部503とを備える。側壁501と平面状基部503は共に液密(fluid-tight)な容器を構成する。図5と6に示すように、側壁501は、平面状基部503の外周部に配置され、電極アセンブリ100を包囲している。これから説明するように、平面状基部503は、ハウジング502を通ってチェンバー500へ未処理の流体を導入するための流体入口ポート505を含む。側壁501は、処理チェンバー500から処理済みの流体を収集するための流体出口ポート509を含む。
【0046】
ハウジング502は、電極アセンブリ100を支持するための電気絶縁電極取付フレームを内部に含む。電極の取付フレームは、ハウジング502の内側で処理ゾーン111の外側に配置されている。この配置によって、処理ゾーン111におけるエディーカレント発生の可能性を低下させ、処理ゾーン111における電界の均一性を維持する。
【0047】
図5と6に示すように、外側電極104は略ドーナツ形の形状であり、内側電極106は略球形の形状である。本実施例では、内側電極106の電極表面は、略球形の外側電極表面108と、略平面状の上側電極表面522と、略平面状の下側電極表面524とを含む。ドーナツ形の外側電極104の電極表面は、球形の対向する電極表面110を囲む。
【0048】
内側電極106は、また、上側および下側の平面状電極表面522,524の間で内側電極106の中心を通って延びる略垂直な流体ボア(fluid bore)526を含む。流体ボア526の上端部は、上側電極表面522を終端とし、上方の径方向拡散ゾーン534と連絡している。流体ボア526の下端部は、下側電極表面524を終端としている。
【0049】
本実施例では、側壁501は略円筒形であり、基部503は略円形であるが、ハウジング502は、代わりの設計に対応するように代わりの形状を有してもよいことが理解できるであろう。上述したように、処理ゾーンから離れた内側および外側電極の表面122,124,118の形状に応じて、電極アセンブリ100の形状は異なるものでもよい。
【0050】
電極取付フレームは、ハウジング502内の位置に電極104,106を固定し、対向する電極表面108,110の間に一定の分離状態(separation)を維持する。結果的に、対向表面により画定される環状スペースの一定の寸法および構造が保たれる。
【0051】
ハウジング502は、さらに、略平面状の円形プレート528と、各下端部で基部503に固定された複数の支柱530を備える。支柱530は、円形プレート528の外周部に隣接して配置され、円形プレート528を通って垂直方向上向きに延びている。
【0052】
流体入口ポート505は、基部503と円形プレート528とを通って延びており、流体通路527の下端部と連通している。流体通路527は、内側電極104のボア526を通って延びている。流体通路は円筒形として示されているが、流体通路は円筒形の通路に限定される必要はなく、内側電極106の上面522に設けられた出力ポート507から流出する前に流体の流れのパルス作用(pulsing effect)を減衰するため、流体が一時的に存在する、内側電極の内側にある例えば球形または長円形の幾何学的な中空スペースであってもよい。流体入口ポート505は、所望の流量で流体を流体通路527へ供給するための外部ポンプ(図示せず)に結合されている。流体は、出力ポート507から流出する前に通路527を満たし、上面522を安定した均一な状態で径方向外側へ拡散し、ゾーン入口114へ入る。
【0053】
支柱530は、それぞれの上端部で第1電極104の底面に固定されている。支柱530は、出口ゾーン116から出た処理済みの流体が放電ゾーン(discharge zone)532へ落下して、円形プレート528の上面をその外周部へ向かって外側へ流れることができるように、互いに離れている。環状放電通路534は、円形プレート528の外側端と側壁501の内面との間に維持されているため、円形プレート228上を外側へ移動する処理済みの流体は、環状放電通路536を通って下向きに流れて、流体出口ポート209を経てハウジング502から出る。
【0054】
図5の矢印は、流体処理チェンバー500における流体の移動を表す。図示されるように、未処理の流体は、流体入口ポート505へ導入されて、流体通路527を上向きに移動する。流体通路527が満たされると、未処理の流体は流体ボア526から出て、流体出口ポート507から上側電極表面522へと径方向にオーバーフローする。オーバーフローした流体は、上側電極表面522の湾曲部によって案内され、径方向外向きに分散して電極表面522,110を覆い、略均一な状態でゾーン入口114と主要処理ゾーン112へ流れる。
【0055】
したがって、流体は重力のみの影響を受けて主要処理ゾーン112を通過することが分かるであろう。処理ゾーン111を通る流体の流れの均一性を維持するため、未処理の流体が流体通路527へ導入される際の力は、未処理の流体が流体通路527を安定的かつ略均一に上昇するように選ばれる。これは、乱流と、パルスおよびリプル効果(pulse and ripple effects)を最小にし、流体が出口ポート507を出る時の上面522の径方向の均一性を最大にする。
【0056】
未処理の流体は、処理ゾーン111、特に主要処理ゾーン112で電界にさらされることにより処理される。処理済みの流体は、ゾーン出口116で処理ゾーン112から出て、取付フレームの円形プレート528へ流れる。ゾーン出口116は円形プレート528の上方に充分な距離で配置されており、ゾーン出口116から出る際に処理済みの流体と混合することなく、未処理の流体を主要処理ゾーン112に自由に流すことができる。流体は、円形プレート528上であらゆる方向に横方向外側へ移動し、支柱230を越え、環状放電通路536を下向きに進み、流体出口ポート509を通って処理チェンバー500を出る。
【0057】
未処理の流体は、内側電極106のスムーズで連続した表面により案内され、略安定した均一な状態で処理ゾーン11へ導入され、処理ゾーン111における流れは、重力の影響のみの作用を受けるので、流体の流れは、略安定して均一であり、内側電極106の湾曲部に関して線対称である。このような流れでは、流体の乱流は、存在しないか、電界分布の著しく乱すことはない。したがって、処理ゾーン111、特に最大強度の電界が利用される主要処理ゾーン112で誘導されるアークまたはエディーカレントは、除去されるか著しく減少する。
【0058】
図7〜9を参照すると、電極アセンブリ100のいくつかの実施例が示されている。図7を参照すると、略球形の内側電極とドーナツ形の外側電極とを備える電極アセンブリ100の斜視図が示されている。
【0059】
図8を参照すると、複数の略球形の外側電極のリングまたは円により形成されるスペースの中心に設けられた単一の略球形の内側電極を備える電極アセンブリ100の水平方向の断面図が示されている。リング状の外側電極の隣接する対向表面の間には、導電性または非導電性の条片(fillet)が付けられている。条片は、処理済みの流体が球体間の割れ目に留まるのを防止または阻止する。さらに、電界が確実に充分な均一性を持つようにさらに導電性条片が使用されてもよい。
【0060】
概して、水平断面の単位面積で略均一な電界などの特性、および、環状スペースを画定する対向表面により発生する最大強度の電界の利用、および、乱流やアーク、エディーカレントを減少させるための安定した略均一な流体の流れの保持は、環状スペースに隣接して略凸形を持つ2個以上の隣接電極を備える電極アセンブリにより達成することができる。
【0061】
例えば、図9を参照すると、代わりの電極アセンブリが全体として数字900で示されている。電極アセンブリ900は、4個の電極902を備える。電極902は略球形であり、対向表面904は、隣接する電極からではなく、アセンブリの対角的に対向する電極の間で決定される。例えば、904aと904cは対向表面と考えられ、904bと904dは対向表面と考えられる。電極のセパレータとして作用するとともに環状スペース908を維持するため、非導電性の条片906が隣接電極の間に位置している。このようなアセンブリでは、処理ゾーンへの流体の流れは、図4aと4bを参照して説明した実施例と類似している。あるいは、流体の流れは、図5を参照して説明した実施例と類似しているかもしれない。
【0062】
2個または3個の電極を持つ電極アセンブリでも、上述した特徴を持つスペースを隣接する電極の間に作り出す。しかし、実施に好適な構造は、電極アセンブリの二つの対向表面により画定される環状スペースであり、電極アセンブリは、内側電極と、その周りに配置された外側電極とを有する。
【0063】
下の表1を参照すると、従来の平行プレート電極処理チェンバーと本発明による電極アセンブリ100とによる、低温殺菌されていないリンゴジュースの処理で得られる平均の微生物の減衰が示されている。
【0064】
【表1】

【0065】
平行プレートチェンバーの制約のため、プロセス条件は同一ではない。しかし、先行技術に対する本発明の処理チェンバーの利点を証明するには、これら(プロセス条件)は実質的に類似である。平行プレートチェンバーに印加される電界とパルス数は、本発明のチェンバーに印加される80kV/cmと9パルスと比較して、それぞれ90kV/cmと40パルスであった。印加されるパルスは振幅と周波数が同一で、同じパルス発生器から発せられたものであった。そのうえ、平行プレートチェンバーはバッチモードで作動し、電界へさらす時間(duration of exposure、露出時間ともいう)は、5ml/分の連続モードのフロー作動で作動した本発明のチェンバーのものよりも長かった。
【0066】
平行プレートチェンバーよりも高強度の電界、多数のパルス、長い露出時間にもかかわらず、本発明のチェンバーは、46℃と50℃の温度で性能が優れていることが分かった。微生物の減少が46℃で16%であったのと比べ約59%であった高温では、この性能はより顕著であった。これらの結果は、電極アセンブリ100が、当該技術の処理チェンバーよりも流体食料品の処理に効率的であることを証明している。さらに、この効率の上昇は、当該技術の処理チェンバーよりも低いエネルギー消費量で達成される。
【0067】
さらに別の実施例によれば、処理チェンバーを通過する前に流体は予備処理を受ける。流体を電界へさらす前に、40℃から60℃、好ましくは50℃から55℃の温度への温度調節を流体に行うことによって、流体は前処理を受けてもよい。流体は、流体通路へ導入される前に、所望の温度範囲まで従来の手段で加熱されてもよい。あるいは、流体通路から出る際に流体に照射を集中することにより、流体が適度な強度のブランケット状の赤外線照射を受けてもよい。このように、流体は赤外線照射を吸収し、温度が所望のレベルまで上昇する。流体への予熱処理が、電界処理プロセス中の微生物の膜組織の損傷をより大きくすることは理解できるであろう。
【0068】
下の表2を参照すると、連続フローモード作動での様々な試験条件で、電極アセンブリ100を用いて汚染水を処理することにより得られた大腸菌の数の平均が示されている。
【0069】
【表2】

【0070】
これらの結果は、流体の処理における電極アセンブリ100の効率性を証明している。この実施例では、流体は水であり、流体が温度調節を伴う前処理を受けている。この実施例では、前処理は、流体への赤外線の照射である。前処理段階の追加は、電極アセンブリ100のみを用いた処理、または赤外線のみを用いた処理よりも良好な結果をもたらす。
【0071】
本発明は、添付の特許請求の範囲によって規定される。上述した説明は、本発明の好適な実施例を例示するものである。通常の技術を有する者は、明示的に記載または示唆されていないが、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲を逸脱しない限り、特許請求の範囲に記載の発明に対してある程度の変形を考えるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、電極アセンブリの概略断面図である。
【図2】図2は、凸形環状処理ゾーンを示すブロック線図である。
【図3】図3は、図1に示された電極アセンブリを含むバッチモード処理チェンバーの概略断面図である。
【図4a】図4aは、高粘度の流体を処理するための連続フロー式処理チェンバーの断面図である。
【図4b】図4bは、高粘度の流体を処理するための代わりの連続フロー式処理チェンバーの断面図である。
【図5】図5は、低粘度の流体を処理するための連続フロー式処理チェンバーの垂直方向の概略断面図である。
【図6】図6は、図5に示された処理チェンバーの水平方向の概略断面図である。
【図7】図7は、図5および図6に示された処理チェンバーで使用される電極アセンブリの斜視図である。
【図8】図8は、図1に示されたものの代わりの電極アセンブリの概略断面図である。
【図9】図9は、図1および図8に示されたものの代わりの電極アセンブリの概略断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中の微生物を不活性化するための処理チェンバーであって、
処理される流体を受け取るための流体入口と、処理済みの流体を回収可能な流体出口とを備えるハウジングと、
前記ハウジング内の電極アセンブリであって、電極ギャップを間に形成するための対向する凸形の電極表面の部分を有する少なくとも2個の電極を備え、電圧パルスの印加により、連続しかつ単位断面あたりで略均一な電界が発生する、電極アセンブリと、
を備え、
前記電極ギャップが、重力の影響を受けて流体が安定した均一な非乱流状態で流れる両凹形の処理ゾーンを画定し、前記処理ゾーンが、前記流体の処理のため前記電極アセンブリにより発生する最大強度の電界を含み、前記対向する電極表面の少なくとも一方が、前記処理ゾーン内で処理される前記流体の流れの空間分布とダイナミクスとを制御する、
処理チェンバー。
【請求項2】
前記電界の強度は、前記電圧パルスが前記電極に印加された時に、前記処理ゾーンの中央部分から離れるいずれの方向においても、スムーズで連続的に減少する、請求項1に記載の処理チェンバー。
【請求項3】
前記電極の一方が内側電極であり、前記電極の他方が外側電極であり、前記外側電極が前記内側電極を囲む、請求項2に記載の処理チェンバー。
【請求項4】
前記外側電極の前記凸形の部分が略ドーナツ形であり、前記内側電極の前記凸形の部分が略長円形である、請求項3に記載の処理チェンバー。
【請求項5】
前記内側電極の前記凸形の部分が略球形である、請求項4に記載の処理チェンバー。
【請求項6】
前記外側電極の前記凸形の部分が隣接する複数の略長円形の表面を備え、前記内側電極の前記凸形の部分が略長円形である、請求項3に記載の処理チェンバー。
【請求項7】
前記内側電極の前記凸形の部分が略球形である、請求項6に記載の処理チェンバー。
【請求項8】
前記処理ゾーンが環状である、請求項4に記載の処理チェンバー。
【請求項9】
前記処理ゾーンが、未処理の流体を受け取るためのゾーン入口と、処理済みの流体を分散させるためのゾーン出口と、前記未処理の流体を処理するための主要処理ゾーンとを備え、前記主要処理ゾーンが、前記ゾーン入口と前記ゾーン出口との間の前記処理ゾーンの中央部分に配置される、請求項8に記載の流体処理チェンバー。
【請求項10】
前記内側電極の上面が流体源から流体を受け取り、オーバーフローにより前記流体を径方向に運搬して前記内側電極の表面を覆って、前記ゾーン入口および前記主要処理ゾーンへ前記流体を導入する、請求項9に記載の処理チェンバー。
【請求項11】
電界の強度が、前記ゾーン入口から前記主要処理ゾーンに向かって徐々に増加し、前記主要処理ゾーンから前記ゾーン出口に向かって徐々に減少する、請求項10に記載の流体処理チェンバー。
【請求項12】
前記内側電極が、極軸に沿って延びる流体ボアを含み、前記流体ボアは、前記処理ゾーンが前記流体入口と流体連通するように構成されている、請求項10に記載の流体処理チェンバー。
【請求項13】
前記内側電極が、上面において略平面状であり、前記流体ボアから前記ゾーン入口までの前記流体の連続的で均一な径方向の連通を容易にする、請求項12に記載の流体処理チェンバー。
【請求項14】
前記内側電極が、前記流体源から前記流体を受け取るための凹部を上面に備える、請求項10に記載の流体処理チェンバー。
【請求項15】
一対の電極の間に電界を発生させるステップであって、前記電極が、両凹形の処理ゾーンを画定する略凸形の対向表面の部分を有し、前記電界が前記処理ゾーン内で最大強度を持つ、ステップと、
重力の影響を受けて前記両凹形の処理ゾーンに前記流体を通過させて前記流体を前記電界にさらすことにより、前記流体中の微生物を不活性化するステップと、
を備える、流体を低温殺菌するための方法。
【請求項16】
前記一対の電極が、内側電極を囲む外側電極を備える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記外側電極部分が略ドーナツ形であり、前記内側電極が略長円形である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記処理ゾーンが、未処理の流体を受け取るためのゾーン入口と、処理済みの流体を回収するためのゾーン出口と、前記未処理の流体を処理するための主要処理ゾーンとを備え、前記主要処理ゾーンが、前記ゾーン入口と前記ゾーン出口との間の前記処理ゾーンの中央部分に配置される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記電界が前記主要処理ゾーン内で最大強度を持つ、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記電界が、前記ゾーン入口およびゾーン出口において連続しかつ単位断面あたりで略均一であり、前記電界の強度が、前記ゾーン入口から前記主要処理ゾーンへ向かってスムーズに増加し、前記主要処理ゾーンから前記ゾーン出口へ向かってスムーズに減少する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記流体を流体源から回収して、前記流体を前記ゾーン入口へ運搬するステップと、
前記ゾーン出口を通過した後に処理済みの流体を回収するステップと、
を備える、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記流体を前記ゾーン入口へ導入するため、前記内側電極の上面が流体源から前記流体を受け取り、オーバーフローにより前記流体を径方向に運搬して前記内側電極の表面を覆う、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記内側電極が極軸に沿って延びる流体ボアを含み、前記流体ボアは、前記処理ゾーンが流体入口を介して前記流体源と流体連通するように構成されている、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記内側電極は、上面において略平面状であり、前記流体ボアから前記ゾーン入口までの前記流体の連続的で均一な径方向の連通を容易にする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記内側電極は、前記流体を前記流体源から受け取って、前記受け取った流体を前記ゾーン入口へ向かって径方向にスムーズで安定した均一なオーバーフローで運搬するための凹部を、上面に備える、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記流体を前記電界にさらす前に、前記流体の温度を所定のレベルに調節するための前処理ステップを備える、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記流体の温度は、赤外線を前記流体に照射することにより上昇する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
電界を間に発生させるための少なくとも2個の電極を備え、
前記電極は、ハウジングに組み立てられた時に、相互に対向して、前記流体の処理のための処理ゾーンとして使用するための両凹形のスペースを間に画定するように構成された凸形の電極表面の部分を有し、
前記電極の一方が、前記処理ゾーンへ導入されるために前記流体が表面を覆うように構成される、
流体を処理するための低温殺菌キット。
【請求項29】
処理される流体を受け取るための流体入口と、処理済みの流体を回収可能な流体出口とを含むハウジングを備える、請求項28に記載の低温殺菌キット。
【請求項30】
流体中の微生物の不活性化に使用するための流体処理チェンバーであって、少なくとも2個の電極を有する電極アセンブリを備え、前記電極は、両凹形の環状スペースからなる電極ギャップを形成している、対向する凸形の電極表面の部分を有し、
前記電極アセンブリにより中央部分に発生する最大強度の電界と、
前記環状スペースの単位断面あたりで略均一な電界と、
電圧パルスの印加により前記環状スペースの中央部分から離れるいずれの方向においてもスムーズで連続的な電界強度の減少と、
が同時に発生する、
流体処理チェンバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−505664(P2008−505664A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511807(P2007−511807)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000699
【国際公開番号】WO2005/107821
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(506327542)ユニバーシティ オブ ウォータールー (1)
【Fターム(参考)】