説明

電界通信システムおよび通信制御方法

【課題】電界通信システムにおいて、浮遊容量による誤認識および誤動作を防止する。
【解決手段】電界通信システムであって、電界通信用の1対の電極を備える電界通信端末1と、電界通信を行うトランシーバ6と、トランシーバ6に接続された第1の電極5と、第1の電極5の近傍に設置され、電位固定された第2の電極3とを有し、電界通信端末1を携帯するユーザ2が第2の電極3に接触した場合、電界通信端末1の一対の電極の内、一方の電極が電界伝達媒体であるユーザ2と接した第2電極3により電位固定され、他方の電極が浮遊容量を介して前記第1の電極と結合されることで通信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信すべき情報に基づく電界を電界伝達媒体に誘起させるとともに、この誘起した電界を検出して情報の送受信を行う電界通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電界通信を行うウェアラブルコンピュータとしてのマイクロチップCPUと、電界通信を行うトランシーバとを1枚のカードに組み込んだICカード型の携帯端末が開発されている(特許文献1参照)。
【0003】
ユーザが、このような携帯端末を携帯している場合、ユーザの体の一部が別の電界通信装置の電界通信電極に触れることで伝送経路が形成され、電界通信を開始することができる。また、ユーザが、電界通信電極から離れることで、電界通信を終了することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−86584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、電界通信を行う携帯端末を携帯したユーザに誘起された電界が、このような携帯端末を持っていない近傍の第三者に浮遊容量を介して結合(カップリング)し、第三者が別の電界通信装置の電界通信電極に触れることで、携帯端末が送信するデータが誤って別の電界通信装置に受信されてしまう場合がある。
【0006】
この場合、別の電界通信装置は、携帯端末を携帯したユーザからのデータであると誤認識し、第三者に対して入室者が限定された部屋の扉を開けるなど誤動作を実行してしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、電界通信システムにおいて、浮遊容量による誤認識および誤動作を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、ユーザが携帯する電界通信端末と、電極に接続されたトランシーバとの間で伝送路が確立される電界通信システムであって、電界通信用の1対の電極を備える前記電界通信端末と、電界通信を行う前記トランシーバと、前記トランシーバに接続された第1の電極と、前記第1の電極の近傍に設置され、電位固定された第2の電極と、を有し、前記電界通信端末の一対の電極の内、一方の電極が電界伝達媒体である前記ユーザと接した第2電極により電位固定され、他方の電極が浮遊容量を介して前記第1の電極と結合されることで通信することを要旨とする。
【0009】
また、本発明は、電界通信システムであって、電界通信用の1対の電極を備える電界通信端末と、電界通信を行うトランシーバと、第1の電極、および、前記第1の電極の近傍に設置された第2の電極と、前記第1の電極および前記第2の電極の一方を固定電位に、他方を前記トランシーバに、接続先を切替える切替えスイッチと、前記トランシーバに接続された制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記トランシーバを介して前記電界通信端末から第1の信号を受信した後、前記第1の電極および前記第2の電極の接続先を切替えさせる制御信号を前記切替えスイッチに送信する切替えスイッチ制御手段と、前記制御信号を送信してから所定の時間内に、前記トランシーバを介して第2の信号を受信したか否かに基づいて、前記電界通信端末を携帯する有資格者が前記第1の電極または前記第2の電極に接触しているかを判別する判別手段と、を有することを要旨とする。
【0010】
また、本発明は、電界通信用の1対の電極を備える電界通信端末と、電界通信を行うトランシーバと、第1の電極、および、前記第1の電極の近傍に設置された第2の電極と、前記第1の電極および前記第2の電極の一方を固定電位に、他方を前記トランシーバに接続先を切替える切替えスイッチと、前記トランシーバに接続された制御装置と、を有する電界通信システムにおける通信制御方法であって、前記制御装置は、前記電界通信端末を携帯する有資格者が前記第1の電極に接触した場合、または前記有資格者が前記第2の電極に接触し、かつ、前記電界通信端末を携帯しない無資格者が前記第1の電極に接触した場合、当該電界通信端末に記憶されたIDを含む第1の信号を前記トランシーバを介して受信する受信ステップと、前記第1の信号を受信した後、前記第1の電極および前記第2の電極の接続先を切替えさせる制御信号を前記切替えスイッチに送信する切替えステップと、前記制御信号を送信してから所定の時間内に前記トランシーバを介して、前記第1の信号のIDと同一IDを含む第2の信号を受信した場合、前記第1の信号は、前記第2の電極に接触している前記有資格者の電界通信端末から出力される電界が浮遊容量を介して前記第1の電極に接触している前記無資格者に伝達され、当該無資格者を電界伝達媒体として送信された信号であると判別し、前記制御信号を送信してから所定の時間内に前記トランシーバを介して、前記第1の信号のIDと同一IDを含む第2の信号を受信しない場合、前記有資格者は前記第1の電極に接触しており、前記第1の信号は、前記有資格者を電界伝達媒体として送信された信号であると判別する判別ステップとを行うことを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電界通信システムにおいて、浮遊容量による誤認識および誤動作を防止し、例えば電界通信端末を携帯しない第三者に対してセキュリティ扉を開錠するなど誤動作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電界通信システムの全体構成図である。
【図2】携帯端末の構成を示すブロック図である。
【図3】携帯端末の断面図である。
【図4】トランシーバおよび制御装置の構成を示すブロック図である。
【図5】第1の実施形態の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】比較例の電界通信システムの全体構成図である。
【図7】比較例の電界通信システムの全体構成図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る電界通信システムの全体構成図である。
【図9】トランシーバおよび制御装置の構成を示すブロック図である。
【図10】第1の床電極に有資格者が立っている場合に、携帯端末からトランシーバに送信されるID信号の伝達経路を示したものである。
【図11】第1の床電極に有資格者が立っている場合に、携帯端末から送信されるID信号がトランシーバに届かない状況を示したものである。
【図12】第2の床電極に有資格者が立っている場合に、携帯端末からトランシーバに送信されるID信号の伝達経路を示したものである。
【図13】第2の床電極に有資格者が立っている場合に、携帯端末からトランシーバに送信されるID信号の伝達経路を示したものである。
【図14】第2の実施形態の電界通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【図15】第2の実施形態の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図16】本発明の第3の実施形態に係る電界通信システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施形態である電界通信システムの全体構成図である。図示する電界通信システムは、ユーザ2が携帯する携帯端末(電界通信端末)1と、電位固定された床電極(第2の電極)3と、セキュリティ扉8の近傍に設置された壁電極(第1の電極)5と、当該壁電極5に接続されたトランシーバ6と、制御装置7とを有する。携帯端末1は、正当なユーザである有資格者のみが所有する端末であって、トランシーバ6と電界通信が可能な通信端末である。トランシーバ6と、制御装置7とは、例えばLANなどのネットワークにより接続されている。
【0015】
制御装置7は、携帯端末1が送信した信号(情報、データ)を、トランシーバ6を介して受信して、所定の制御を行う。本実施形態の制御装置7は、携帯端末1からの信号に応じてセキュリティ扉(ドア)8の開錠および施錠を行うことを例として以下説明する。なお、制御装置7が制御する対象はセキュリティ扉8に限定されず、例えば改札機などのゲート装置とすることも考えられる。
【0016】
トランシーバ6は、送信すべき情報に基づく電界を電界伝達媒体である生体に誘起させ、この誘起した電界を用いて情報の送受信を行うものである。なお、電界通信信号の送受信方式は、電気式、光学式、あるいはその他の方法であってもよく、いずれかに限定されるものではない。
【0017】
トランシーバ6に接続された壁電極5は、携帯端末1と電界通信を行うために、制御装置7の制御対象の近傍に設置されている。図示する例では、セキュリティ扉8の近傍の壁に設置されており、セキュリティ扉8の前でユーザが扉が開くのを待つのに適切な場所に立った場合、ユーザが携帯する携帯端末1と近接する所定の位置に設置される。
【0018】
床電極3は、制御対象の近傍の床(図示する例では、セキュリティ扉8の前でユーザが扉が開くのを待つのに適切な位置)に設置されている。また、床電極3は、グランド4に接地されており、電位固定されている。
【0019】
図2は、携帯端末1の構成を示すブロック図である。図2に示すように、携帯端末1は、一対の電界通信用の電極(S+)101および電極(S−)102と、電源としての電池105と、電界通信を行うトランシーバ103と、コンピュータ(マイコン)104とを備える。一対の電極101、102は、トランシーバ103に接続されている。
【0020】
携帯端末1のトランシーバ103は、トランシーバ6と同様に、送信すべき情報に基づく電界を電界伝達媒体である生体に誘起させ、この誘起した電界を用いて情報の送受信を行うものであり、電界通信信号の送受信方式は、電気式、光学式、あるいはその他の方法であってもよい。
【0021】
本実施形態のコンピュータ104は、メモリなどの記憶部に当該携帯端末1を携帯するユーザのIDまたは携帯端末IDなどのIDがあらかじめ記憶され、トランシーバ103を用いて、常に所定のタイミングで当該IDを含むID信号を送信するものとする。
【0022】
図3は、携帯端末1の断面図を模式的に示した図である。図3に示すように、携帯端末1は、絶縁膜109、電界通信用の電極(S+)101、回路基板108、電界通信用の電極(S−)102、および絶縁膜109を備える。なお、回路基板108は、図2に示すトランシーバ103、コンピュータ104および電池105を含むものである。
【0023】
電界伝達媒体(人体)側の電極(S+)101は、絶縁膜109を介して電界伝達媒体(人体)であるユーザと、交流的に短絡状態にある。そのため、電界伝達媒体(人体)を導体と見做せる周波数領域(人体の場合、数十MHz以下)において、電界伝達媒体(人体)を接地することで電極(S+)101が電位固定され、他方の電極(S−)102から空間への近傍電磁界(電界)の放射が強まる。近傍電磁界は、信号源が停止すると直ちに消滅する電磁界のことで、信号源との容量結合、誘導結合による現象がこれにあたる。
【0024】
本実施形態では、携帯端末1を携帯する電界伝達媒体であるユーザが床電極3の上に乗る(接触する)ことで、携帯端末1の一対の電極の内、一方の電極(図示する例では、電極(S+)101)が、絶縁膜109および電界伝達媒体であるユーザの人体を介して、グランドに交流的に接地され、電位固定される。このとき、他方の電極(図示する例では、電極(S−)102)により、空間へ放射される近傍電磁界の強度は強くなる。
【0025】
これにより、図1に示すように、浮遊容量を介して、携帯端末1の他方の電極と壁電極5とが結合し、携帯端末1から壁電極5に接続されたトランシーバ6に至る伝送路が形成される。すなわち、他方の電極から放射される電界が近傍の壁電極5にカップリング(静電結合)する。このように、携帯端末1の一対の電極の内、一方の電極を電界伝達媒体(人体)を介して電位固定することで、他方の電極から空間への近傍電磁界の放射強度が強まり、携帯端末1と壁電極5との間の浮遊容量を伝送路に利用した通信を行うことができる。
【0026】
なお、本実施形態のトランシーバ103は、一対の電極(S+)101、電極(S+)102から信号を入力し、差動アンプで同相雑音を除去するものであるが、信号電極およびグランド電極を用いる構成であってもよい。
【0027】
また、図1および図3では、床電極3を接地することにより電位固定しているが、接地に限定されない。固定電位の床電極であれば、接地以外であっても、携帯端末1を携帯したユーザが当該床電極に接触した際に、空間への電磁放射が強くなることに関して同等の効果がある。また、床電極3は、絶縁性の材料で被覆されていてもよく、被覆厚が極端に厚くない限り、空間への近傍電磁界の放射強度が強まる効果は、変わらない。
【0028】
図4は、トランシーバ6および制御装置7の構成を示すブロック図である。図示するように、トランシーバ6は、制御装置7からの送信データを入出力(I/O)回路61を介して受け取ると、この送信データを送信部62を介して壁電極5に供給し、当該壁電極5及び絶縁膜を介して電界伝達媒体であるユーザの人体に電界を誘起させ、この電界を電界伝達媒体の他の部位に伝達させる。
【0029】
また、電界伝達媒体に誘起されて伝達されてくる電界(本実施形態では、浮遊容量を介した電界)を絶縁膜を介して壁電極5で検出し、この電界の変化に対して信号処理回路63で増幅、雑音除去などの信号処理を施し、さらに波形整形回路64で波形整形してから、入出力(I/O)回路61を介して制御装置7に出力する。なお、図示するトランシーバ6は、送受信可能なトランシーバであるが、送信部62を有しない、受信動作のみを行うものであってもよい。
【0030】
制御装置7は、ID照合、セキュリティ扉の制御等の所定の制御を行う制御部71と、信号送受信部72と、正規の有資格者が所有する携帯端末1それぞれのIDを記憶するID記憶部73と、複数の携帯端末1との電界通信のログ、セキュリティ扉8の開錠・施錠などの制御ログ等を記憶するログ情報記憶部74と、を備える。
【0031】
なお、制御装置7および携帯端末1のコンピュータ104は、少なくともCPUと、メモリと、記憶装置と、通信制御装置と、これらの各装置を接続するバスと、を備えた汎用的なコンピュータシステムを用いることができる。このコンピュータシステムにおいて、CPUがメモリ上にロードされた所定のプログラムを実行することにより、制御装置7および携帯端末1のコンピュータ104の各機能が実現される。
【0032】
次に、本実施形態の電界通信システムの動作について説明する。図1に示すように、通常の状態では、有資格者が正規のIDが記憶されている携帯端末1を携帯し、セキュリティ扉8の前に立つことにより床電極3に接触する。これにより、携帯端末1の一方の電極101が電位固定され、他方の電極102から空間へ放射される電界強度が強くなり、浮遊容量を介して携帯端末1の他方の電極102と壁電極5とが結合する。したがって、携帯端末1内のコンピュータ104と制御装置7との間で、携帯端末1に内蔵されたトランシーバ103、壁電極5およびトランシーバ6を介した通信路が確立される。
【0033】
図5は、本実施形態の制御装置7の動作を示すフローチャートである。携帯端末1を携帯する有資格者が床電極3の上に立って接触することにより、携帯端末1のコンピュータ104は、前記通信路を介してID信号を制御装置7に送信する。すなわち、携帯端末1のコンピュータ104は、当該コンピュータ104が備える記憶部にあらかじめ記憶されたIDを含むID信号を生成し、前記通信路を介して送信する。
【0034】
これにより、制御装置7の制御部71は、信号送受信部72を用いてID信号を受信し(S11:YES)、当該ID信号のIDがID記憶部73に記憶された正当なIDか否かを判別する(S12)。受信したIDがID記憶部73に存在しない場合(S13:NO)、制御部71は、不正なIDであるとして、セキュリティ扉8を開錠させることなく処理を終了する。
【0035】
一方、ID記憶部73に記憶されたいずれかのIDと一致する場合(S13:YES)、制御部71は、セキュリティ扉8を開錠させる開錠信号(制御信号)をセキュリティ扉8に送信する(S13)。セキュリティ扉8は、開錠信号を受信すると、当該セキュリティ扉8を施錠状態から開錠し、扉を開ける。これにより、携帯端末1を携帯する有資格者は、セキュリティ扉8の内部に入室することができる。
【0036】
そして、制御部71は、携帯端末1との通信ログ(ID信号の受信時刻、ID等)、制御ログ(開錠信号の送信時刻等)などのログ情報をログ情報記憶部74に格納する(S15)。そして、制御部71は、S14で開錠信号を送信してから所定の時間が経過すると(S16:YES)、セキュリティ扉8を施錠させる施錠信号(制御信号)を送信する(S17)。セキュリティ扉8は、施錠信号を受信すると、当該セキュリティ扉8を開錠状態から施錠し、扉を閉める。これにより、携帯端末1を携帯しない無資格者が、セキュリティ扉8の前の床電極3の上に立っても、セキュリティ扉8の内部に入室することができない。
【0037】
次に、本発明の比較例である電界通信システムについて説明する。
【0038】
図6は、比較例の電界通信システムを模式的に示した図である。比較例の電界通信システムでは、有資格者602Aが携帯する携帯端末601と、セキュリティ扉608の近傍の床に設置された床電極603と、当該床電極603に接続された電界通信用のトランシーバ606と、セキュリティ扉608を制御する制御装置607とを有する。携帯端末601は、電界通信が可能な端末であって、電界通信媒体である有資格者602Aの人体を介してトランシーバ606と電界通信を行う。
【0039】
また、携帯端末601には、当該携帯端末601を携帯する有資格者のIDが記憶され、携帯端末601を携帯する有資格者602Aがセキュリティ扉608の床電極603に接触することにより、携帯端末601とトランシーバ606との間で有資格者602Aの人体および床電極603を介した伝送路が形成される。これにより、携帯端末601に記憶されたIDを含むID信号が、携帯端末601からトランシーバ606に送信され、そして、トランシーバ606から制御装置607に送信される。制御装置607は、受信したID信号のID認証を行い、認証に成功した場合、セキュリティ扉608に開錠信号を送信し、認証に失敗した場合、セキュリティ扉608に開錠信号を送信することなく、施錠したままにする。
【0040】
しかしながら、このような比較例の電界通信システムでは、図7に示すような問題がある。すなわち、携帯端末601を携帯していない無資格者602Bが床電極603の上に立ち、この状態で携帯端末601を携帯する有資格者602Aが無資格者602Bの近傍にいる場合(例えば、無資格者602Bの近くを通りすぎる場合)、携帯端末601を携帯した有資格者602Aの携帯端末601から出力される電界は、浮遊容量を介して近傍の無資格者602Bに伝達される。携帯端末601を持たない無資格者602Bが床電極603に接触することにより、携帯端末601は、無資格者602Bの人体、床電極603およびトランシーバ606を介してID信号を制御装置607に送信してしまう。そして、制御装置607は、受信したID信号が記憶部に記憶された正当なIDの場合、セキュリティ扉608に開錠信号をセキュリティ扉608に送信し、セキュリティ扉608を開けてしまう。
【0041】
すなわち、図6および図7に示す比較例の電界通信システムでは、無資格者602Bは携帯端末601を持っていないにも関わらず、近傍に携帯端末601を携帯する有資格者602Aが存在すると、制御装置607は有資格者602AからのID信号であると誤認識し、セキュリティ扉608を誤動作してしまう。この結果、携帯端末601を携帯する有資格者602Aは、無資格者602Bを、意図せずに共連れして入場してしまう。
【0042】
これに対し、図1に示す第1の実施形態の電界通信システムでは、電界通信用の壁電極5と、当該壁電極5の近傍に電位固定された床電極3とを設置する。そして、携帯端末1を携帯する正当な有資格者が床電極の上に立つ(床電極に接触する)ことで、携帯端末1の一対の電極の内、一方の電極が電界伝達媒体(有資格者)を介して電位固定され、他方の電極が浮遊容量を介して壁電極5と結合し、携帯端末1から壁電極5に接続されたトランシーバ6に至る伝送路が形成される。すなわち、本実施形態の電界通信システムでは、比較例のように電界伝達媒体(人体)を介してID信号が携帯端末1からトランシーバ6に送信されるのではなく、浮遊容量を介してID信号が携帯端末1からトランシーバ6に送信される。換言すると、本実施形態では、有資格者は、トランシーバ6に接続された壁電極5に接触することなく、ID信号がトランシーバ6に送信される。
【0043】
これにより、本実施形態では、携帯端末1を携帯する有資格者の携帯端末1から出力される電界(ID信号)が、近傍の携帯端末1を持たない無資格者に浮遊容量を介して伝達したとしても、無資格者から2次放射される電界強度は携帯端末1から直接放射される電界強度に比べて弱いため、浮遊容量を介した壁電極5との結合は発生しない。すなわち、携帯端末1を携帯しない無資格者が床電極3に接触した場合であっても、携帯端末1から出力されるID信号はトランシーバ6および制御装置7に届かない。したがって、本実施形態では、図7の比較例のように、携帯端末1を携帯する有資格者が携帯端末1を持たない無資格者(第三者)を意図せず共連れして入場してしまうなどの誤認識および誤動作することを防止することができる。
【0044】
また、本実施形態の制御装置7は、開錠信号(制御信号)をセキュリティ扉8に送信した後、携帯端末のID、開錠信号の送信時刻などのログ情報をログ情報記憶部74に記憶する。これにより、セキュリティ扉8を開けた有資格者の入退出を一元的に管理することができる。
【0045】
また、本実施形態では、有資格者は、電界通信可能な携帯端末1を携帯し、セキュリティ扉8の前の床電極3に立つだけでID信号が送信されるため、IDの入力操作などのユーザの操作負荷を低減することができる。
【0046】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0047】
図8は、本発明の第2の実施形態である電界通信システムの全体構成図である。図示する電界通信システムは、有資格者が携帯する図示しない携帯端末1(電界通信端末)と、第1の床電極3Aと、第2の床電極3Bと、第1の床電極3Aまたは第2の床電極3Bに接続されるトランシーバ6と、制御装置7Aと、切替えスイッチ9とを有する。携帯端末1は、正当なユーザである有資格者のみが所有する端末であり、トランシーバ6と電界通信が可能な通信端末である。本実施形態の携帯端末1は、第1の実施形態の携帯端末1と同様であるため、ここでは説明を省略する。制御装置7Aは、例えばLANなどのネットワークにより、トランシーバ6および切替えスイッチ9と接続されている。
【0048】
制御装置7Aは、携帯端末1が送信した信号(情報、データ)を、トランシーバ6を介して受信して、所定の制御を行う。本実施形態の制御装置7Aは、携帯端末1からの信号に応じてセキュリティ扉8の開錠および施錠を行うことを例として以下説明する。なお、制御装置7Aが制御する対象はセキュリティ扉8に限定されず、例えば改札機などのゲート装置とすることも考えられる。また、制御装置7Aは、切替えスイッチ9に切替え制御信号を送信し、第1の床電極3Aおよび第2の床電極3Bの接続先を、トランシーバ6または固定電位4に切替える。
【0049】
トランシーバ6は、第1の実施形態のトランシーバ6と同様に、送信すべき情報に基づく電界を電界伝達媒体である生体に誘起させ、この誘起した電界を用いて情報の送受信を行うものである。なお、電界通信信号の送受信方式は、電気式、光学式、あるいはその他の方法であってもよく、いずれかに限定されるものではない。
【0050】
第1の床電極3Aは、制御対象の近傍の床(図示する例では、セキュリティ扉8の前でユーザが扉が開くのを待つのに適切な位置)に設置されている。第2の床電極3Bは、第1の床電極3Aの近傍に設置され、第1の床電極3Aを取り囲むように、第1の床電極3Aの周囲に設置する。
【0051】
切替えスイッチ9は、制御装置7Aの制御により、第1の床電極3Aおよび第2の床電極3Bの接続先を、一方はトランシーバ6に、他方は固定電位4に切替える。具体的には、第1の床電極3Aがトランシーバ6に接続され、第2の床電極3Bが固定電位4に接続され電位固定されている通常の接続状態と、第1の床電極3Aが固定電位4に接続されて電位固定され、第2の床電極3Bがトランシーバ6に接続されている判定用の接続状態とが、切替えスイッチ9により切り替わる。なお、固定電位4は、接地に限定されない。
【0052】
図9は、トランシーバ6および制御装置7Aの構成を示すブロック図である。図示すように、トランシーバ6は、制御装置7Aからの送信データを入出力(I/O)回路61を介して受け取ると、この送信データを送信部62を介して第1の床電極3Aまたは第2の床電極3Bに供給し、当該床電極3A、3B及び絶縁膜を介して電界伝達媒体であるユーザの人体に電界を誘起させ、この電界を電界伝達媒体の他の部位に伝達させる。
【0053】
また、電界伝達媒体に誘起されて伝達されてくる電界を絶縁膜を介して第1の床電極3Aまたは第2の床電極3Bで検出し、この電界の変化に対して信号処理回路63で増幅、雑音除去などの信号処理を施し、さらに波形整形回路64で波形整形してから、入出力(I/O)回路61を介して制御装置7に出力する。なお、図示するトランシーバ6は、送受信可能なトランシーバであるが、送信部62を有しない、受信動作のみを行うものであってもよい。
【0054】
制御装置7は、ID照合、セキュリティ扉の制御等の所定の制御を行う制御部71と、信号送受信部72と、正規の有資格者が所有する携帯端末1それぞれのIDを記憶するID記憶部73と、複数の携帯端末1との電界通信のログ、セキュリティ扉8の開錠・施錠などの制御ログ等を記憶するログ情報記憶部74と、切替えスイッチ9に切替え制御信号を送信する切替えスイッチ制御部75と、携帯端末1を携帯する有資格者が前記第1の電極または前記第2の電極に接触しているかを判別する判定部76とを備える。
【0055】
次に、携帯端末1を携帯する有資格者の立ち位置および切替えスイッチ9の切替え状況に応じた、ID信号の伝達パターンについて、図10から図14を用いて説明する。
【0056】
図10および図11は、セキュリティ扉8の前の第1の床電極3Aに携帯端末1を携帯する有資格者2Aが立っている場合における、携帯端末1から送信されるID信号の伝達経路を示したものである。
【0057】
図10では、切替えスイッチ9により、第1の床電極3Aがトランシーバ6に接続され、第2の床電極3Bが固定電位4に接続されている。これにより、携帯端末1とトランシーバ6との間で有資格者Aの人体および第1の床電極3Aを介した伝送路が形成される。この伝送路を介して、携帯端末1に記憶されたIDを含むID信号が、携帯端末1からトランシーバ6に送信され、そして、トランシーバ6から制御装置7に送信される。
【0058】
図11では、切替えスイッチ9により、第1の床電極3Aが固定電位4に接続され、第2の床電極3Bがトランシーバ6に接続されている。この場合、携帯端末1を携帯する有資格者2Aが接触している第1の床電極3Aは、固定電位4に接続されているため、携帯端末1とトランシーバ6との間には電界通信の伝送路が形成されず、トランシーバ6は携帯端末1が送信するID信号を受信することができない。
【0059】
図12および図13は、セキュリティ扉8の前の第1の床電極3Aに携帯端末1を持たない無資格者2Bが立っており、第2の床電極3Bに携帯端末1を携帯する有資格者2Aが立っている場合における、携帯端末1から送信されるID信号の伝達経路を示したものである。
【0060】
図12では、切替えスイッチ9により、第1の床電極3Aがトランシーバ6に接続され、第2の床電極3Bが固定電位4に接続されている。この場合、携帯端末1を携帯する有資格者2Aが無資格者2Bの近傍にいるため、有資格者2Aの携帯端末1から出力される電界(ID信号)は、浮遊容量を介して近傍の無資格者2Bに伝達される。このため、携帯端末1を持たない無資格者2Bが第1の床電極3Aに接触することにより、携帯端末1とトランシーバ6との間で無資格者2Bの人体および第1の床電極3Aを介した伝送路が形成される。この伝送路を介して、携帯端末1に記憶されたIDを含むID信号が、携帯端末1からトランシーバ6に送信され、そして、トランシーバ6から制御装置7に送信される。
【0061】
また、携帯端末1を携帯する有資格者2Aが接触している第2の床電極3Bは固定電位4に接続されている。このため、第1の実施形態で説明したように、当該携帯端末1が内蔵するトランシーバの一対の電極(S+、S−)の内、一方の電極を電界伝達媒体(人体)を介して電位固定することで、他方の電極から空間への近傍電磁界の放射強度が強まり、携帯端末1と無資格者2Bとの間の浮遊容量を伝送路に利用した通信が行われる。これにより、携帯端末1から送信されるID信号を、より確実に、トランシーバ6に伝送することができる。なお、図3に示す携帯端末1の場合、電極S+101が電位固定される。
【0062】
図13では、切替えスイッチ9により、第1の床電極3Aが固定電位4に接続され、第2の床電極3Bがトランシーバ6に接続されている。この場合、携帯端末1を携帯する有資格者2Aが接触している第2の床電極3Bは、トランシーバ6に接続されているため、携帯端末1とトランシーバ6との間で有資格者Aの人体および第2の床電極3Bを介した伝送路が形成される。この伝送路を介して、携帯端末1からのID信号がトランシーバ6に送信され、そして、トランシーバ6から制御装置7に送信される。
【0063】
また、無資格者2Bが接触している第1の床電極3Aは固定電位4に接続されている。このため、当該携帯端末1が内蔵するトランシーバの一対の電極(S+、S−)の内、一方の電極を無資格者2Bとの浮遊容量を介して電位固定することで、他方の電極からの電界強度が強まる。これにより、携帯端末1から送信されるID信号を、より確実に、トランシーバ6に伝送することができる。なお、図3に示す携帯端末1の場合、電極S−102が電位固定される。
【0064】
次に、本実施形態における電界通信システムの動作について説明する。
【0065】
図14は、携帯端末1を携帯する有資格者2Aが図10および図11の状態における、電界通信システムの動作を示すシーケンス図である。図10の状態において、携帯端末1からのID信号が、トランシーバ6を介して制御装置7Aに送信される(S21)。制御装置7Aは、ID信号を受信すると、切替えスイッチ9に切替え制御信号を送信し、判定用の接続状態に切替えさせる(S22)。これにより、切替えスイッチ9は、第1の床電極3Aおよび第2の床電極3Bの接続先を、図10に示す通常の接続状態から、図11に示す判定用の接続状態に切替える。
【0066】
通常の接続状態は、第1の床電極3Aがトランシーバ6に接続され、第2の床電極3Bが固定電位4に接続されている状態である。判定用の接続状態は、第1の床電極3Aが固定電位4に接続され、第2の床電極3Bがトランシーバ6に接続されている状態である。
【0067】
そして、制御装置7Aは、所定の時間、S21で受信したID信号のIDと同一IDのID信号が送信されるのを待つ。図11の場合、前述のようにID信号は送信されない。そのため、制御装置7Aは、所定の時間が経過した後、S21で受信したID信号のIDを、ID記憶部73を参照して認証し(S23)、認証に成功した場合、セキュリティ扉8に開錠信号を送信し、セキュリティ扉8を開ける(S24)。
【0068】
そして、制御装置7Aは、通信ログ、制御ログなどのログ情報をログ情報記憶部74に格納し(S26)、切替えスイッチ9に切替え制御信号を送信し、通常の接続状態に切替えさせる(S27)。これにより、切替えスイッチ9は、第1の床電極3Aおよび第2の床電極3Bの接続先を、図11に示す判定用の接続状態から、図10に示す通常の接続状態に切替える。
【0069】
なお、携帯端末1を携帯する有資格者2Aが図12および図13の場合、S22で切替え制御信号を送信し、第1の床電極3Aおよび第2の床電極3Bの接続先を、図12に示す通常の接続状態から、図13に示す判定用の接続状態に切替えた場合、同一IDのID信号が制御装置7Aに送信されるため、制御装置7AはS23からS27の処理を行わない。
【0070】
図15は、図14の制御装置7Aの動作を、より詳細に説明するためのフローチャートである。図10および図12に示すように、切替えスイッチ9が通常の接続状態となっている状態において、携帯端末1を携帯する有資格者2A、または有資格者Aの近傍の無資格者2Bが、第1の床電極3Aの上に立って接触する。これにより、携帯端末1は、図10または図12に示す通信路を介してID信号を制御装置7に送信する。すなわち、携帯端末1のコンピュータ104は、当該コンピュータ104が備える記憶部にあらかじめ記憶されたIDを含むID信号を生成し、第1の床電極3Aを含む前記通信路を介して送信する。
【0071】
これにより、制御装置7Aの切替えスイッチ制御部75は、信号送受信部72を用いてID信号を受信し(S31:YES)、切替えスイッチ9に切替え制御信号を送信し、判定用の接続状態に切替えさせる(S32)。これにより、切替えスイッチ9は、第1の床電極3Aおよび第2の床電極3Bの接続先を、図10、図12に示す通常の接続状態から、図11、図13に示す判定用の接続状態に切替える。
【0072】
そして、制御装置7Aの判定部76は、S32で切替え制御信号を送信してから所定の時間、S31で第1の床電極3Aを介して受信したID信号のIDと同一IDのID信号が第2の床電極3Bを介して受信されるのを待つ(S33)。なお、判定部76は、図11の場合はID信号を受信せず、図13の場合は携帯端末1が送信する同一IDのID信号を第2の床電極3Bおよびトランシーバ6を介して受信する。
【0073】
これにより、判定部76は、所定の時間内に同一IDのID信号を受信しない場合は(S33:NO)、図10および図11に示すように携帯端末1を有する有資格者Aが第1の床電極3Aに立っていると判別し、S35以降の処理を行う。一方、判定部76は、所定の時間内に同一IDのID信号を受信した場合は(S33:YES)、図12および図13に示すように有資格者2Aの近傍の無資格者2Bが第1の床電極3Aに立っていると判別し、S35以降の処理を行うことなく、処理を終了する。
【0074】
同一IDのID信号を受信することなく(S33:NO)、所定の時間の経過した場合(S34:YES)、制御装置7Aの制御部71は、S31で受信したID信号のIDを認証し(S35)、当該IDがID記憶部73に登録されている場合(S36:YES)、正当な有資格者であると判別し、セキュリティ扉8に開錠信号を送信し(S37)、セキュリティ扉8を開ける。
【0075】
そして、制御部71は、ログ情報記憶部74にログ情報を記憶し、所定の時間の経過後(S39:YES)、セキュリティ扉8に施錠信号を送信し(S40)、切替えスイッチ9に切替え制御信号を送信し、通常の接続状態に切替えさせる(S41)。これにより、切替えスイッチ9は、第1の床電極3Aおよび第2の床電極3Bの接続先を、図11、図13に示す判定用の接続状態から、図10、図12に示す通常の接続状態に切替える。
【0076】
一方、S31で受信したID信号のIDがID記憶部73に登録されていない場合(S36:NO)、正当な有資格者でないと判別し、セキュリティ扉8に開錠信号を送信することなく処理を終了する。なお、S35からS40の処理は、第1の実施形態の図5のS12からS17の処理と同様である。
【0077】
以上説明した本実施形態では、セキュリティ扉8から近い方に設置された第1の床電極3A、およびセキュリティ扉8から遠い方に設置された第2の床電極3Bの接続先を、トランシーバ6または固定電位4に切替えて、所定の時間内に同一IDのID信号の受信の有無により、携帯端末1を携帯する有資格者の立ち位置を特定する。これにより、本実施形態では、セキュリティ扉8の前の第1の床電極3Aに接触している者が、有資格者か無資格者かを判別することができるため、誤ってセキュリティ扉8を開錠してしまう誤動作を防止しすることができる。
【0078】
すなわち、図7の比較例のように、携帯端末1を携帯する有資格者が携帯端末1を持たない無資格者(第三者)を意図せず共連れして入場してしまうなどの誤認識および誤動作することを防止することができる。
【0079】
また、本実施形態の制御装置7Aは、開錠信号(制御信号)をセキュリティ扉8に送信した後、携帯端末のID、開錠信号の送信時刻などのログ情報をログ情報記憶部74に記憶するため、セキュリティ扉8を開けた有資格者の入退出を一元的に管理することができる。
【0080】
また、本実施形態では、有資格者2Aは、電界通信可能な携帯端末1を携帯し、セキュリティ扉8の前の床電極3に立つだけでID信号が送信されるため、IDの入力操作などの操作負荷を低減することができる。
【0081】
<第3の実施形態>
以下、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、第2の実施形態の変形例であって、交通機関の改札機などのゲート装置をイメージしたものである。
【0082】
図16は、第3の実施形態である電界通信システムを天井などの上から見下ろした全体構成図である。第3の実施形態は、第1の床電極3Aおよび第2の床電極3Bの両側に、人が立ち入れないようにするための衝立10を設けた点において、第2の実施形態と異なり、その他については、第2の実施形態と同様である。
【0083】
本実施形態では、衝立10を設けたことにより、第1の床電極3Aに近接可能な方向は、進入方向Yの一方向に限定されるため、第2の床電極3Bの設置面積を小さくすることができる利点がある。
【0084】
以上説明した第1から第3の実施形態では、セキュリティ扉などの近くの電界通信用の床電極の上に無資格者が立っている状況において、電界通信用の携帯端末を携帯する有資格者が当該無資格者の近くを通り過ぎても、誤認証により無資格者のために誤って扉のロックが解除されることがないという利点がある。その為、交通機関の改札等を含めて、人の往来で混雑するような場所に、上記実施形態の電界通信システムを適用することで、より高度なセキュリティを確保することができる。
【0085】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。例えば、第1から第3の実施形態では、床に設置した床電極3、3A、3Bを用いたが、ユーザが接触可能な場所であれば、床以外の場所に設置してもよい。また、第1の実施形態では、壁に設置した壁電極5を用いたが、ユーザが携帯する携帯端末1と近接可能な場所であれば、壁以外の場所に設置してもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 携帯端末
101 電極S+
102 電極S−
103 トランシーバ6
104 コンピュータ
105 電池
109 絶縁膜
2A 有資格者
2B 無資格者
3 床電極
3A 第1の床電極
3B 第2の床電極
4 固定電位
5 壁電極
6 トランシーバ
7 制御装置
71 制御部
72 信号送受信部
73 ID記憶部
74 ログ情報記憶部
75 切替えスイッチ制御部
76 判定部
8 セキュリティ扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが携帯する電界通信端末と、電極に接続されたトランシーバとの間で伝送路が確立される電界通信システムであって、
電界通信用の1対の電極を備える前記電界通信端末と、
電界通信を行う前記トランシーバと、
前記トランシーバに接続された第1の電極と、
前記第1の電極の近傍に設置され、電位固定された第2の電極と、を有し、
前記電界通信端末の一対の電極の内、一方の電極が電界伝達媒体である前記ユーザと接した第2電極により電位固定され、他方の電極が浮遊容量を介して前記第1の電極と結合されることで通信すること
を特徴とする電界通信システム。
【請求項2】
請求項1記載の電界通信システムであって、
前記トランシーバに接続された制御装置を、さらに有し、
前記電界通信端末は、前記ユーザが前記第2の電極に接触した場合、当該電界通信端末に記憶されたIDを、前記伝送路を介して前記トランシーバに送信し、
前記トランシーバは、前記伝送路を介してIDを受信すると、当該IDを前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、前記トランシーバから前記IDを受信すると、当該IDを認証し、認証結果に応じて、所定の制御を行うこと
を特徴とする電界通信システム。
【請求項3】
電界通信システムであって、
電界通信用の1対の電極を備える電界通信端末と、
電界通信を行うトランシーバと、
第1の電極、および、前記第1の電極の近傍に設置された第2の電極と、
前記第1の電極および前記第2の電極の一方を固定電位に、他方を前記トランシーバに、接続先を切替える切替えスイッチと、
前記トランシーバに接続された制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
前記トランシーバを介して前記電界通信端末から第1の信号を受信した後、前記第1の電極および前記第2の電極の接続先を切替えさせる制御信号を前記切替えスイッチに送信する切替えスイッチ制御手段と、
前記制御信号を送信してから所定の時間内に、前記トランシーバを介して第2の信号を受信したか否かに基づいて、前記電界通信端末を携帯する有資格者が前記第1の電極または前記第2の電極に接触しているかを判別する判別手段と、を有すること
を特徴とする電界通信システム。
【請求項4】
請求項3に記載の電界通信システムであって、
前記電界通信端末を携帯する有資格者が前記第1の電極に接触した場合、または前記有資格者が前記第2の電極に接触し、かつ、前記電界通信端末を携帯しない無資格者が前記第1の電極に接触した場合、当該電界通信端末に記憶されたIDを含む第1の信号が前記トランシーバを介して前記制御装置に送信され、
前記制御装置の切替えスイッチ制御手段は、前記第1の信号を受信した後、前記第1の電極および前記第2の電極の接続先を切替えさせる制御信号を前記切替えスイッチに送信し、
前記制御装置の判別手段は、
前記制御信号を送信してから所定の時間内に前記トランシーバを介して、前記第1の信号のIDと同一IDを含む第2の信号を受信した場合、前記第1の信号は、前記第2の電極に接触している前記有資格者の電界通信端末から出力される電界が浮遊容量を介して前記第1の電極に接触している前記無資格者に伝達され、当該無資格者を電界伝達媒体として送信された信号であると判別し、
前記制御信号を送信してから所定の時間内に前記トランシーバを介して、前記第1の信号のIDと同一IDを含む第2の信号を受信しない場合、前記有資格者は前記第1の電極に接触しており、前記第1の信号は、前記有資格者を電界伝達媒体として送信された信号であると判別すること
を特徴とする電界通信システム。
【請求項5】
電界通信用の1対の電極を備える電界通信端末と、電界通信を行うトランシーバと、第1の電極、および、前記第1の電極の近傍に設置された第2の電極と、前記第1の電極および前記第2の電極の一方を固定電位に、他方を前記トランシーバに接続先を切替える切替えスイッチと、前記トランシーバに接続された制御装置と、を有する電界通信システムにおける通信制御方法であって、
前記制御装置は、
前記電界通信端末を携帯する有資格者が前記第1の電極に接触した場合、または前記有資格者が前記第2の電極に接触し、かつ、前記電界通信端末を携帯しない無資格者が前記第1の電極に接触した場合、当該電界通信端末に記憶されたIDを含む第1の信号を前記トランシーバを介して受信する受信ステップと、
前記第1の信号を受信した後、前記第1の電極および前記第2の電極の接続先を切替えさせる制御信号を前記切替えスイッチに送信する切替えステップと、
前記制御信号を送信してから所定の時間内に前記トランシーバを介して、前記第1の信号のIDと同一IDを含む第2の信号を受信した場合、前記第1の信号は、前記第2の電極に接触している前記有資格者の電界通信端末から出力される電界が浮遊容量を介して前記第1の電極に接触している前記無資格者に伝達され、当該無資格者を電界伝達媒体として送信された信号であると判別し、
前記制御信号を送信してから所定の時間内に前記トランシーバを介して、前記第1の信号のIDと同一IDを含む第2の信号を受信しない場合、前記有資格者は前記第1の電極に接触しており、前記第1の信号は、前記有資格者を電界伝達媒体として送信された信号であると判別する判別ステップとを行うこと
を特徴とする通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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