説明

電着塗料用顔料分散ペースト及びカチオン電着塗料

【課題】 電着塗料の顔料分散ペーストの貯蔵安定性を向上させ、電着塗装設備の省エネルギー化や省設備化にも対応できる電着塗料を見出すこと。
【解決手段】
顔料分散用樹脂、界面活性剤(A)、顔料成分及び水を含有する顔料分散ペーストであって、顔料分散用樹脂の固形分100質量部あたり、顔料成分0.1〜1,000質量部、界面活性剤(A)0.1〜40質量部含有し、固形分濃度を40質量%に調整したときの該顔料分散ペーストにおける、JIS K 5101−6−2の顔料試験方法に基づくTI値が1.8〜4.0の範囲であることを特徴とするカチオン電着塗料用の顔料分散ペースト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵安定性に優れた電着塗料用顔料分散ペーストならびに塗装設備の省エネルギー化及び省設備化が可能となるカチオン電着塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
カチオン電着塗料は、塗装作業性が優れ防錆性が良好なことから、自動車ボディなどの金属製品の下塗り塗料として広く使用されているものの、カチオン電着塗料の顔料沈降を防止するために、休憩時間や夜間や休日でもポンプによって塗料の循環や攪拌を行っている。このようなことからカチオン電着塗料の循環や攪拌にかかるエネルギー代や設備、冷却装置にかかるエネルギー代、設備の設置や維持などには莫大なコストがかかるため塗装設備の省エネルギー化や省設備化にも対応できるカチオン電着塗料が求められていた。
【0003】
また、上記のカチオン電着塗料に用いられる顔料分散ペーストは、通常、製造後にタンクに貯蔵され又はドラム缶に入れて倉庫に保管されるが、定期的に攪拌しないと顔料が沈降して使用に支障をきたすことがある。特に、海外の塗装設備に輸送するときには、ドラム缶に入れられた顔料分散ペーストは、長期間に亘って無攪拌状態にさらされることになるので、顔料分散ペーストの貯蔵安定性の向上は急務となっている。
【0004】
従来、例えば静置保管時に顔料沈降がほとんどないカチオン電着塗料で、顔料としてカーボンブラックを用い、さらに硬化触媒として液状の錫触媒を用いる発明がある(特許文献1)。
【0005】
他に、脂肪酸、脂肪酸の誘導体、アミン化合物およびそれらの1種または2種以上の混合物からなる群から選択される顔料沈降防止剤、および顔料を含有し、沈降安定性に優れる電着塗料組成物が開示されている(特許文献2)。
また、セルロース複合体を含有することによって、顔料の耐沈降性や再分散性に優れるカチオン電着塗料が開示されている(特許文献3)。
【0006】
しかし、これらの発明のカチオン電着塗料は、攪拌や循環を休日や夜間に停止しても沈降した塗料の再分散性が不十分で仕上り性に問題点を生じた。そこで再分散性、塗装作業性及び防食性のバランスを兼ね備えたカチオン電着塗料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−123942号公報
【特許文献2】特開2005−247892号公報
【特許文献3】特開2006−111699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、貯蔵安定性に優れた電着塗料用の顔料分散ペーストを提供するこ
とである。また、本発明の目的は、塗料の攪拌や循環を休憩時間や休日や夜間に停止しても再分散性や塗料安定性に優れ、かつ塗装作業性と防食性に優れるカチオン電着塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の界面活性剤(A)、顔料成分及び水を含有する顔料分散ペースト、さらに、該顔料分散ペーストを配合したカチオン電着塗料によって、上記の目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、
1.顔料分散用樹脂、下記式(1)で表される界面活性剤(A)、顔料成分及び水を含有する顔料分散ペーストであって、顔料分散用樹脂の固形分100質量部あたり、顔料成分0.1〜1,000質量部、界面活性剤(A)0.1〜40質量部含有し、固形分濃度を40質量%に調整したときの該顔料分散ペーストにおける、JIS K 5101−6−2の顔料試験方法に基づくTI値が1.8〜4.0の範囲であることを特徴とするカチオン電着塗料用の顔料分散ペースト、
【0011】
【化1】

式(1)
(式(1)中、AはC1225−又はC1327−を表し、Rは水素原子又はメチル基、nは1〜15の整数を示す)
2.顔料分散用樹脂の全固形分100質量部に対して、セルロース分散体(B)を0.1〜50質量部含有する1項に記載の顔料分散ペースト、
3.顔料分散用樹脂の固形分あたり、ノボラックエポキシ樹脂系顔料分散樹脂(C)を20質量%以上含有する1項又は2項に記載のカチオン電着塗料用の顔料分散ペースト、
4.顔料分散ペーストを40℃で4週間貯蔵した後の、該顔料分散ペーストの
固形分濃度40質量%における、JIS K 5101−6−2の顔料試験方法に基づくTI値が1.8〜4.0の範囲である、1項〜3項のいずれか1項に記載の顔料分散ペースト、
5.基体樹脂、硬化剤及び基体樹脂と硬化剤の固形分100質量部あたり、1〜4のいずれか1項に記載の顔料分散ペーストを、固形分換算で1〜60質量部含有することを特徴とするカチオン電着塗料、に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の顔料分散ペーストは、貯蔵安定性に優れているため、貯蔵時の攪拌にかかる手間や費用を省くことができ、例えタンクやドラムに無攪拌状態で貯蔵しても、顔料の再分散性に優れている。
【0013】
本発明のカチオン電着塗料は、塗装ラインにおいて、塗料の攪拌や循環を休日や夜間に長時間停止して再び稼動した時の塗料の再分散性に優れているので、攪拌に用いるポンプの一時停止や台数を減らすなどの省エネルギー稼動及び省設備化が可能である。さらに、水平部の塗装においてブツや艶びけなどの発生がなく、仕上り性や塗装作業性及び防食性に優れる塗装物品を得ることができる。
【0014】
理由は、界面活性剤(A)を配合することによって、顔料の凝集を防ぎケーキ層を柔らかくする効果、かつ凝集して沈降しても簡単な攪拌によってほぐれ易い効果を顔料分散ペーストやカチオン電着塗料に付与できると考える。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の顔料分散ペースト及びカチオン電着塗料について、詳細に説明する。
【0016】
[顔料分散ペースト及びカチオン電着塗料]
本発明は、顔料分散用樹脂、特定の界面活性剤(A)、顔料成分及び水を含有する顔料分散ペーストであって、顔料分散用樹脂の固形分100質量部あたり、界面活性剤(A)0.1〜40質量部、顔料成分0.1〜1,000質量部含有し、固形分濃度を40質量%に調整したときの該顔料分散ペーストにおける、JIS K 5101−6−2の顔料試験方法に基づくTI値が1.8〜4.0の範囲であることを特徴とするカチオン電着塗料用の顔料分散ペーストである。
【0017】
さらに、該顔料分散ペーストを含有したカチオン電着塗料は、発明の効果に挙げた性能を発揮する。以下、詳細に説明する。
【0018】
顔料分散ペースト
本発明の顔料分散ペーストに用いる顔料分散用樹脂としては、電着塗料の調整に通常用いられるものが使用でき、例えば、3級アミン型エポキシ樹脂、3級アミン型アクリル樹脂、3級スルホニウム塩型エポキシ樹脂、4級塩型エポキシ樹脂、4級塩型アクリル樹脂等が挙げられる。具体的には、第4級アンモニウム塩型エポキシ樹脂、3級スルホニウム基含有エポキシ樹脂、3級アミノ基含有エポキシ樹脂等が好適に用いられる。この中でも、防食性の向上の為に3級アミノ基含有エポキシ樹脂を用いることがよく、さらに好ましくは3級アミノ基含有のノボラックエポキシ樹脂系顔料分散樹脂(C)を含有することがよい。
【0019】
上記ノボラックエポキシ樹脂系顔料分散樹脂(C)は、ノボラック型フェノール樹脂のグリシジルエーテル化物(c1)、環状エステル化合物(c2)、アミン化合物(c3)及びフェノール化合物(c4)を、ノボラック型フェノール樹脂のグリシジルエーテル化物(c1)と環状エステル化合物(c2)とアミン化合物(c3)及びフェノール化合物(c4)の合計固形分質量を基準にして、ノボラック型フェノール樹脂のグリシジルエーテル化物(c1)30〜70質量%、環状エステル化合物(c2)5〜45質量%、アミン化合物(c3)5〜15質量%及びフェノール化合物(c4)1〜30質量%の割合で反応させて得られる。
【0020】
ノボラック型フェノール樹脂のグリシジルエーテル化物(c1)は、下記式(2)で示される化合物を好適に用いることができる。
【0021】
【化2】


式(2)
(上式中、RおよびRは同一もしくは相異なり、各々水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、アラルキル基またはハロゲン原子を表わし、RおよびRは同一もしくは相異なり、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリル基またはハロゲン原子を表わし、RおよびRは同一もしくは相異なり、各々水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはグリシジルオキシフェニル基を表わし、そしてnは1〜38の整数である)
上記一般式(2)において、「アルキル基」は、直鎖状もしくは分枝鎖状であり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル基などが挙げられる。
【0022】
「アリール基」は、単環式または多環式のいずれであってもよく、例えば、フェニル、ナフチル基などが挙げられ、特にフェニル基が好適であり、また「アラルキル基」はアリール置換アルキル基であって、例えば、ベンジル、フェネチル基などを包含し、なかでもベンジル基が好ましい。
「ハロゲン原子」にはフッ素、塩素、臭素およびヨウ素原子が包含される。
【0023】
またはRによって表わされる「グリシジルオキシフェニル基」は、下記式(3)で示される基である。
【0024】
【化3】

【0025】
式(3)
(上式中、Wは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表わす)
前記一般式(2)において、RおよびRとしては、それぞれ水素原子、メチル基、塩素原子、臭素原子が好適であり、特に水素原子、メチル基、臭素原子が好ましい。
【0026】
また、RおよびRとしては、メチル基、tert−ブチル基、ノニル基、フェニル基、塩素原子および臭素原子が好ましく、なかでもメチル基、tert−ブチル基、フェニル基および臭素原子が好適である。さらに、RおよびRは好ましくは水素原子であり、そしてnは特に好ましくは1〜8である。
【0027】
ノボラック型フェノール樹脂のグリシジルエーテル化物(c1)の数平均分子量は、一般に、約400〜約8,000、特に600〜2,000の範囲内にあることが好ましい。また、ノボラック型フェノール樹脂のグリシジルエーテル化物(c1)は、グリシジル基を1分子あたり3.5〜10個有していることが好ましく、かつノボラック型フェノール樹脂のグリシジルエーテル化物(c1)のエポキシ当量は、約180〜約2,000、特に200〜600の範囲内にあることが好ましい。
【0028】
なおノボラック型フェノール樹脂のグリシジルエーテル化物(c1)は、例えば、下記式(4)
【0029】
【化4】

【0030】
式(4)
(上式(4)中、R、RおよびRは前記と同義である)
で示される2官能性フェノール化合物(c11)と、下記式(5)
−CHO 式(5)
(上式中、Rは前記と同義である)
で示されるアルデヒド化合物(c12)および/または下記式(6)
−CO−R 式(6)
(上式中、RおよびRは前記と同義である)
で示されるケトン化合物(c13)を縮重合反応させることにより得られるノボラック型フェノール樹脂(c14)に、さらにエピハロヒドリン(c15)を反応させてグリシジルエーテル基を導入することにより製造することができる。
【0031】
また、上記ノボラック型フェノール樹脂(c14)を得るための反応の間またはその後に、必要に応じて、下記式(7)
【0032】
【化5】

【0033】
式(7)
(上式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリル基またはハロゲン原子を表わし、そしてRおよびRは前記と同義である)
で示される1官能性フェノール化合物(c16)を末端封止剤として併用してもよい。
【0034】
前記式(7)における基Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、ビニル基、プロペニル基、フェニル基、ベンジル基、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子などが挙げられ、好ましくはメチル基、tert−ブチル基、ノニル基、フェニル基、塩素原子および臭素原子であり、特にメチル基、tert−ブチル基、フェニル基および臭素原子が好ましい。
【0035】
上記の2官能性フェノール化合物(c11)に対して用いる「2官能性」なる語は、式(4)において、水酸基を基準として、オルト位とパラ位に1個づつの水素原子、又はパラ位に水素原子が2個直接結合していることを意味する。これらの水素原子は上記(c−2)および(c13)成分中のカルボニル基(C=O)と脱水縮合反応してノボラック型フェノール樹脂(c14)を生成する。
【0036】
また、(c16)成分のフェノール化合物に対して用いる「1官能性」なる語は、式(7)において、水酸基を基準として、オルト位またはパラ位に水素原子が1個直接結合していることを意味する。
この水素原子は上記(c12)または(c13)成分中のカルボニル基(C=O)と脱水縮合反応してノボラック型フェノール樹脂(c14)の末端を形成する。
【0037】
前記式(4)で示される2官能性フェノール化合物(c11)としては、例えば、フェノール、p−プロペニルフェノール、o−ベンジルフェノール、6−n−アミル−n−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、o−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、p−tert−ペンチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、o−クロルフェノール、p−クロルフェノール、4−クロル−3,5−キシレノール、o−アリルフェノール、ノニルフェノール、o−ブロムフェノール、p−クミルフェノールなどが挙げられる。
【0038】
また、式(5)で示されるアルデヒド化合物(c12)としては、例えば、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドなどが挙げられる。また、アルデヒド化合物(c12)としてm−(またはp−)ヒドロキシベンズアルデヒドを用い、(c11)成分との反応後に、このヒドロキシベンズアルデヒドをエピハロヒドリン(c15)でグリシジルエーテル化してもよい。
【0039】
なお、上記ヒドロキシベンズアルデヒドのベンゼン核は炭素数1〜10のアルキル基で置換されていてもよい。
【0040】
前記式(6)で示されるケトン化合物(c13)としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。さらに、エピハロヒドリン(c15)としては、例えば、エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリンなどが挙げられる。
【0041】
上記(c11)成分に(c12)成分および/または(c13)成分を縮重合反応させることによりノボラック型フェノール樹脂(c14)が得られる。この縮重合反応はそれ自体既知のノボラック型フェノール樹脂の製造方法に準じて行うことができる。
【0042】
ノボラック型フェノール樹脂(c14)の製造において、必要に応じて、上記(c11)成分と、(c12)成分および/または(c13)成分との縮重合反応の間またはその後に、式(5)で示される1官能性フェノール化合物(c16)を末端封止剤として反応させることができる。
【0043】
前記式(7)で示される1官能性フェノール化合物(c16)としては、具体的には、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−キシレノール、2,6−キシレノール、2,4−ジクロルフェノール、2,4−ジブロムフェノール、ジクロルキシレノール、ジブロモキシレノール、2,4,5−トリクロルフェノール、6−フェニル−2−クロルフェノールなどが挙げられる。(c16)成分と、上記(c11)成分、(c12)成分および/または(c13)成分との縮重合反応は上記と同様にして行うことができる。
【0044】
なおノボラック型フェノール樹脂のグリシジルエーテル化物(c1)は、ノボラック型フェノール樹脂(c14)中のフェノール性水酸基にエピハロヒドリン(c15)を反応させてグリシジルエーテル化することによって得られる。
具体的には、例えば、ノボラック型フェノール樹脂(c14)をエピハロヒドリン(c15)で溶解して溶液とし、この溶液にアルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に添加し、この反応系の水および未反応のエピハロヒドリン(c15)を蒸留除去することによって得られる。この蒸留した液から(c15)成分を分離し、再使用することができる。この反応は、例えば、ジオキサン、ジエトキシエタンなどのエーテル系溶剤の存在下で行うことが好ましい。
【0045】
なおノボラック型フェノール樹脂のグリシジルエーテル化物(c1)は、上記のようにして製造することができるが、市販されているものを使用してもよく、例えば、フェノール型ノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル化物として、DEN−438およびDEN−439(ダウケミカル日本(株)製、商品名);クレゾール型ノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル化物として、EPICRON N−695(大日本インキ(株)製、商品名)、CNE195LB(長春ジャパン株式会社製)、EOCN−102S、EOCN−1020およびEOCN104S(日本化薬(株)製、商品名);ブロム変性フェノール型ノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル化物として、BREN−S(日本化薬(株)製、商品名);長鎖アルキル変性フェノール型ノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル化物として、ESMB−260(住友化学(株)製、商品名)などが挙げられる。
【0046】
環状エステル化合物(c2)は、下記式(8)
【0047】
【化6】

【0048】
式(8)
(上式(8)中、Rは水素原子またはCHを表し、nは3〜6の整数である)
で示されるもであってよく、具体的には、例えば、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ζ−エナラクトン、η−カプリロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−エナラクトン、ξ−カプリロラクトンが挙げられ、特に好ましくはε−カプロラクトンである。環状エステル化合物(c2)のラクトンに基因するメチレン鎖部分は、ノボラックエポキシ樹脂系顔料分散樹脂(C)に貯蔵安定性と耐候性を付与する。
【0049】
アミン化合物(c3)は、第1級水酸基を1分子中に少なくとも1個有する第1級もしくは第2級アミン化合物であってよい。これは、ノボラックエポキシ系顔料分散樹脂(C)に第1級水酸基と塩基性基とを導入するのに役立つ。
【0050】
アミン化合物(c3)のアミノ基と式(2)で示されるノボラック型フェノール樹脂のグリシジルエーテル化物(c1)のグリシジル基との反応によってカチオン性樹脂が生成し、このカチオン性樹脂中の第1級水酸基および塩基性基は、従来のビスフェノールA型エポキシ樹脂との反応によって生成するもののそれらの基と比べて、水分散性が著しく優れたものとなり、顔料分散ペーストや該顔料分散ペーストを使用するカチオン電着塗料の安定性向上に寄与する。さらに、形成される塗膜においては、防食性、特にばくろ耐食性の向上にも寄与する。
アミン化合物(c3)としては、具体的には、次に例示する化合物が挙げられる。
【0051】
(1)モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、モノブタノールアミンなどの第1級アルカノールアミン
(2)N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−(またはiso)−プロパノールアミン、ジブタノールアミンなどの第2級アルカノールアミン
(3)上記第1級アルカノールアミンとα,β−不飽和カルボニル化合物との付加物(第2級アルカノールアミン)、例えば、モノエタノールアミンとN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドとの付加物、モノエタノールアミンとヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの付加物、モノエタノールアミンとヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとの付加物、モノエタノールアミンとヒドロキシブチル(メタ)アクリレートとの付加物など
(4)ヒドロキシエチルアミノエチルアミンのような第1、2級アルカノールアミン
(5)ヒドロキシアミン、ヒドロキシエチルヒドラジンおよびヒドロキシブチルヒドラジンから選ばれる1種以上とケトン化合物、例えば、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジブチルケトン、ジプロピルケトンなどとの縮合物(第2級アルカノールアミン)
(6)下記式(9)
【0052】
【化7】

【0053】
式(9)
(上式中、nは1〜6の整数であり、Rは水酸基および/または重合性不飽和基を含有してもよい炭素数4〜36の炭化水素鎖を表わす)で示される1分子中に1級水酸基、2級アミノ基およびアミド基が併存するアミン化合物である。
【0054】
前記式(9)で示されるアミン化合物は、例えば、N−ヒドロキシアルキルアルキレンジアミンと炭素数5〜37のモノカルボン酸とを脱水縮合反応させることによって得られる。かかるジアミンとしては、例えば、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、N−ヒドロキシエチルブチレンジアミン、N−ヒドロキシエチルペンチレンジアミン、N−ヒドロキシエチルヘキシレンジアミンなどの第1級水酸基を含有する第1、2ジアミンが好適であり、またモノカルボン酸としては、例えば、椰子油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ひまし油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、あまに油脂肪酸および桐油脂肪酸などの混合脂肪酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸などが挙げられる。
【0055】
上記式(9)で示されるアミン化合物を得るための上記ジアミンとモノカルボン酸との反応は、通常、両成分をほぼ等モル比で混合し、トルエンやメチルイソブチルケトンなどの有機溶剤を用いて規定量の反応生成水を除去することによって行うことができ、減圧法などで残存有機溶剤を除去することによってアミン化合物が得られる。
【0056】
このようにして得られるアミン化合物は、一般に、アミン価(2級アミン)が88〜350mgKOH/g、特に120〜230mgKOH/gの範囲内にあり、そして水酸基価(好ましくは1級水酸基)が44〜350mgKOH/g、特に60〜230mgKOH/gの範囲内にあることが好ましい。
【0057】
アミン化合物としての上記(1)〜(6)の化合物のうちでは、(2)第2級アルカノールアミン、(3)第1級アルカノールアミンとα,β−不飽和カルボニル化合物との付加物、(6)1分子中に1級水酸基と2級アミノ基およびアミド基が併存するアミン化合物が好ましい。
【0058】
フェノール化合物(c4)としては、フェノール性水酸基を1分子中に少なくとも1個、好ましくは1〜5個有するものを使用することができる。具体的には、例えば、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)イソブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラ(p−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどの多価フェノール化合物が挙げられる。
【0059】
さらに、フェノール、ノニルフェノール、α−もしくはβ−ナフトール、p−tert−オクチルフェノール、o−もしくはp−フェニルフェノールなどのモノフェノール化合物も使用することができる。
【0060】
より防食性に優れた塗膜を形成するためには、フェノール化合物(c4)として、特に、ビスフェノールA[2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン]またはビスフェノールF[ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン]などのビスフェノール類とエピクロルヒドリンとの反応生成物(ビスフェノール型エポキシ化合物)を用いることが好ましい。
【0061】
上記反応生成物(ビスフェノール型エポキシ化合物)としては、特に、数平均分子量が200〜3,000、好ましくは500〜2,000、さらに好ましくは600〜1,000の範囲内で、かつ1分子あたり平均して2個以下、好ましくは0.8〜1.2個のフェノール性水酸基を含有する、下記式(10)で示される化合物が適している。
【0062】
【化8】

【0063】

式(10)
(上式(10)中、nは0〜7の数であり、R10は活性水素化合物の残基を表す)
上記式において、一般式(10)中のR10の前駆体である活性水素含有化合物としては、例えば、第2級アミンのようなアミン類;ノニルフェノールのようなフェノール類;脂肪酸のような有機酸;チオール類;アルキルアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、カービトールのようなエーテル類又はアルコール類;無機酸などの化合物が挙げられる。
【0064】
これらのうちで特に好ましいものは、第1級水酸基を有する第2級アミンであるジアルカノールアミン(例えば、ジエタノールアミン)や、ノニルフェノール、フェニルフェノール、フェノールのようなモノフェノールである。特に、第1級水酸基含有第2級アミンであるジアルカノールアミンを用いると硬化性が向上し、防食性の向上の為にも好ましい。また、モノフェノールを用いると安定性がよくなる。
【0065】
さらに、フェノール化合物(c4)としては、例えば、分子量が200以上、好適には380〜2,000のビスフェノールAジグリシジルエーテル型のポリエポキシド1モルと、分子量が200以上、好適には200〜2,000の範囲内のビスフェノールA型ポリフェノール1モルと、活性水素を有する化合物1モルとを、必要に応じて触媒や溶媒の存在下で、30〜300℃、好適には70〜180℃の温度で反応させて得ることもできる。
【0066】
また、フェノール化合物(c4)として、ダイマー酸ジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどのポリオール類;ポリカプロラクトンのようなポリエステルポリオール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルグリコール類;アリルグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなどの水酸基を有する化合物のグリシジルエーテル類;脂肪酸のような有機酸のグリシジルエステル類;ポリカルボン酸類;ポリイソシアネート類;モノイソシアネート類;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドなどの不飽和化合物の酸化物;脂環式オキシラン含有化合物;等をビスフェノールAと反応させたものを使用することもできる。さらに、かかる化合物に、δ−4−カプロラクトン、アクリルモノマーなどをグラフト重合させたものを使用することもできる。
【0067】
ノボラックエポキシ樹脂系顔料分散用樹脂(C)は、例えば、ノボラック型フェノール樹脂のグリシジルエーテル化物(c1)、環状エステル化合物(c2)、アミン化合物(c3)およびフェノール化合物(c4)を同時に反応させる方法やノボラック型フェノール樹脂のグリシジルエーテル化物(c1)に、環状エステル化合物(c2)とアミン化合物(c3)を反応させた後、フェノール化合物(c4)を反応させる方法によって得られる。
【0068】
ノボラック型フェノール樹脂のグリシジルエーテル化物(c1)、環状エステル化合物(c2)、アミン化合物(c3)およびフェノール化合物(c4)の反応における反応温度は、有機溶剤の存在下で、通常50〜300℃、特に70〜200℃の範囲内が好ましい。
【0069】
得られるノボラックエポキシ樹脂系顔料分散樹脂(C)は、数平均分子量が、一般に、1,000〜20,000、特に1,500〜10,000の範囲内、水酸基価が10〜1000mgKOH/g、特に50〜300mgKOH/g、アミン価が10〜300mgKOH/g、特に30〜100mgKOH/gの範囲であることが塗膜性能と塗料安定性のためにも好ましい。
【0070】
また、顔料分散用樹脂としては、上記ノボラックエポキシ樹脂系顔料分散樹脂(C)に加えて、その他の3級アミン型などのアミノ基含有エポキシ樹脂、4級アンモニウム塩型エポキシ樹脂、4級アンモニウム塩型アクリル樹脂等のその他の顔料分散樹脂を使用することもできる。
なお顔料分散用樹脂の固形分あたり、ノボラックエポキシ樹脂系顔料分散樹脂(C)を20質量%以上、好ましくは樹脂(C)50質量%以上であることが、防食性向上のために好ましい。
【0071】
本発明において、上記顔料分散用樹脂と共に用いる顔料成分は、特に制限なく使用でき、着色顔料としては、カーボンブラック、ペリレンブラック、酸化チタン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、オーカ等が挙げられる。部品用などの塗色が黒である場合には、カーボンブラック、ペリレンブラックが好ましい。体質顔料としては、クレー、マイカ、タルク、バリタ、シリカなどが挙げられる。防錆顔料としては、リンモリブデン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウムなどが挙げられる。その他に、例えば、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、硝酸ビスマス、ケイ酸ビスマス、ハイドロタルサイト、亜鉛化合物が挙げられる。上記顔料成分の配合量は、顔料分散用樹脂の固形分100質量部あたり、0.1〜1,000質量部、好ましくは10〜800質量部、さらに好ましくは50〜600質量部である。
【0072】
本発明の顔料分散ペーストには、下記式(1)で表される界面活性剤(A)を含有する。
【0073】
【化9】

【0074】
式(1)
(式(1)中、AはC1225−又はC1327−を表し、Rは水素原子又はメチル基、nは1〜15の整数を示す)
本発明が目的とする顔料分散ペーストに有用な界面活性剤(A)は、式(1)における、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、又はポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロック体の繰り返し単位であるnの数は、1〜15の範囲、好ましくは8〜14である。nの数が15を超えると、該界面活性剤を含有した電着塗膜の防食性が低下することがあり好ましくない。
【0075】
本発明に用いる界面活性剤(A)のHLB値は、HLB値(注1)が8〜14、好ましくは10〜13が、塗装作業性のためによい。また表面張力(注2)は20〜31mN/m、好ましくは22〜28mN/mの範囲が、顔料分散性に優れ塗料安定性のためによい。
【0076】
(注1)本発明においてHLB値は、 Hydrophile−Lipophile Balancedの頭文字を取ったものであり、下記式により算出される値である。親水親油バランスで0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く、20に近いほど親水性が高くなる。HLB値=20×(1−(S/A)) S:エステルの鹸化価、A:脂肪酸の酸価。
【0077】
(注2)本発明において表面張力は、協和界面科学社製の自動表面張力計CBVP−A3型装置を使用し、界面活性剤の0.1%溶液のウィルヘルミー法(吊り板法)における(25℃)の値とした。
【0078】
なお界面活性剤(A)の市販品は、ノイゲンTDS−50(HLB10.5、表面張力25.2mN/m)、ノイゲンTDS−70(HLB12.1、表面張力24.8mN/m)、ノイゲンTDS−80(HLB13.3、表面張力27.5mN/m)、ノイゲンTDX−50(HLB10.5、表面張力28.4mN/m)、ノイゲンTDX−80D(HLB13.1、表面張力28.5mN/m)、ノイゲンTDX−100D(HLB13.5、表面張力30.2mN/m)、ノイゲンDSK NL−30(HLB8.1、表面張力24.0mN/m)、ノイゲンDSK NL−40(HLB9.5、表面張力26.0mN/m)、ノイゲンDSK NL−50(HLB10.6、表面張力26.5mN/m)、ノイゲンDSK NL−60(HLB11.5、表面張力25.5mN/m)、ノイゲンDSK NL−70(HLB12.2、表面張力27.8mN/m)、ノイゲンDSK NL−80(HLB12.9、表面張力28.5mN/m)等(以上、第一工業製薬社製)が挙げられる。これらは、2種類以上を併用することも可能である。
【0079】
なお、界面活性剤(A)の配合量は、顔料分散用樹脂の固形分100質量部あたり、界面活性剤(A)を0.1〜40質量部、好ましくは0.15〜20質量部、さらに好ましくは0.2〜10質量部である。界面活性剤(A)の配合量が40質量部を超えると、電着塗膜の防食性を低下することがあり好ましくない。界面活性剤(A)の配合量が0.1質量部未満では、本願の効果を得ることができない。
【0080】
本発明の顔料分散ペーストは、顔料分散用樹脂、顔料成分、界面活性剤(A)を一定範囲配合することに加え、固形分濃度が40質量%の電着塗料用顔料分散ペーストにおけるTI値(注3)を1.8〜4.0の範囲、好ましくは2.0〜3.8、さらに好ましくは2.5〜3.5とすることが好適である。
【0081】
さらに、電着塗料用顔料分散ペーストを固形分濃度40質量%に調整し、40℃で4週間貯蔵後、該顔料分散ペーストのTI値が1.8〜4.0の範囲、好ましくは2.0〜3.8、さらに好ましくは2.0〜3.5の範囲であることが、夏場などの厳しい条件を想定して望ましい。
【0082】
(注3)TI値:TI値(チクソトロピックインデックス)とは、JIS K 5101−6−2(2004)、顔料試験方法 第2節 回転粘度計法に記載されるもので、B型粘度計(例えば「RE-80U型粘度計」東機産業社製)を用い、20℃、回転数6rpmおよび60rpmでの粘度(mPa・s)を測定して、「6rpmでの粘度測定値/60rpmでの粘度測定値」での粘度測定値の値を算出して求めることができる。なお、TI値は、顔料分散ペーストの調製直後から使用時までのいずれの時期に測定してもよく、その測定値が1.8〜4.0の範囲に入っていれば、本発明の顔料分散ペーストの要件を満足することになる。
【0083】
ここで、顔料分散ペーストにおけるTI値が4.0を超えると顔料が凝集し易い。この為、該顔料分散ペーストを用いてなる電着塗料においては、フィルターを閉塞させる場合がある。また、得られた電着塗膜は、ブツやムラが発生し仕上り性の低下を招くことがある。
【0084】
一方、顔料分散ペーストにおけるTI値が1.8未満であると、顔料が沈降し易く、また沈降した顔料は固いケーキ層を形成する為、再分散性が困難となり易い。この為、該顔料分散ペーストを用いてなる電着塗料においては、フィルターを閉塞させることがある。また、得られた電着塗膜は、ブツやムラが発生し仕上り性の低下を招くことがある。
【0085】
このようなことから本発明の顔料分散ペーストを適用した電着塗料を使用する塗装ラインは、休日や夜間に塗料循環を長時間停止して、稼動時に再びカチオン電着塗料を循環しても再分散性に優れる為、フィルターを閉塞させることがなく、得られた塗膜は仕上り性に優れるものとなる。
【0086】
本発明の顔料分散ペーストの調整は、顔料分散用樹脂、顔料成分、特定の界面活性剤(A)及び水、必要に応じてセルロース分散体(B)、硬化触媒、中和剤等を加え、顔料分散して得ることができる。
【0087】
必要に応じて配合するセルロース分散体(B)としては、木材パルプ、精製リンター等の素材から得られるセルロースを、酸加水分解、アルカリ酸化分解、酵素分解、スチームエクスプロージョン分解等により解重合処理して、平均重合度が30〜375のセルロースとする。次いで磨砕、例えば機械的なシェアをかけ湿式磨砕することにより得られる、平均粒子径0.01〜6μmの微細セルロース分散体を用いることができる。
【0088】
上記湿式磨砕は、媒体ミル類、例えば、湿式振動ミル、湿式遊星振動ミル、湿式ボールミル、湿式ロールミル、湿式ボールミル、湿式ビーズミル、湿式ペイントシェーカー等の他、高圧ホモジナイザー等の機械を用いて行うことができる。高圧ホモジナイザーとしては、約500Kg/cm以上の高圧で、スラリーを微細オリフィスに導き高流速で対面衝突させるタイプのものが効果的である。
【0089】
これらのミルにおける最適磨砕濃度は、機種により異なるが、一般には、媒体ミルで5〜15%、高圧ホモジナイザーで5〜20%の範囲内の固形分濃度が適している。セルロースの磨砕を効率よく行うためには媒体ミルが適している。上記の磨砕によって、平均粒子径(注4)が0.01〜6μm、好ましくは0.1〜3μm、さらに好ましくは0.2〜1μm以下の微細セルロースを得ることができる。
【0090】
(注4)本明細書において平均粒子径は、動的光散乱法・レーザードップラー法(UPA法))を用いて測定した値を意味する。具体的には、「平均粒子径」は、UPA−EX250(日機装株式会社製、商品名、粒度分布測定装置)を用いて測定することができる。
【0091】
また、セルロース分散体(B)として、上記微細セルロース分散体に、水溶性ガム類及び/又は親水性物質と混合したセルロース分散体(B1)も使用することができる。これにより、乾燥時に微細化したセルロース粒子同士が再凝集するのを防ぐことができ、電着塗料の再分散向上をさらに図ることができる。
【0092】
セルロース分散体(B1)には、例えば、微細セルロースと水溶性ガム類と親水性物質からなるセルロース複合体(b1);微細セルロースと水溶性ガム類からなるセルロース複合体(b2);及び微細セルロースと親水性物質からなるセルロース複合体(b3);が挙げられる。
【0093】
上記セルロース分散体(B1)の製造方法は、セルロースを磨砕することにより得られる微細セルロース分散体に、水溶性ガム類及び/又は親水性物質を加えて分散させ均質なスラリーとし、次いでこれを乾燥することによって得ることができる。
【0094】
上記水溶性ガム類としては、水膨潤性が高く、セルロースとの水中における相溶性が良好な水溶性のガム類が好ましく、例えば、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム、クインスシードガム、カラヤガム、アラビアガム、トラガントガム、ガッティーガム、アラビノガラクタン、寒天、カラギーナン、アルギン酸及びその塩、ファーセレラン、ペクチン、マルメロ、キサンタンガム、カードラン、プルラン、デキストラン、ジェランガム、ゼラチン、繊維素グリコール酸ナトリウム等のセルロース誘導体等を用いることができる。このうち、繊維素グリコール酸ナトリウムは、膨潤性と親水性を兼ね備えているため、親水性物質と併用することなくガム単独での使用も可能である。
【0095】
一方、親水性物質としては、例えば、水、澱粉加水分解物、デキストリン類、ブドウ糖、果糖、キシロース、庶糖、乳糖、麦芽糖、異性化糖、カップリングシュガー、パラチノース、ネオシュガー、マンニトール、還元澱粉糖化飴、マルトース、ラクツロース、ポリデキストロース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等の単糖類、オリゴ糖類を含む水溶性糖類、キシリトール、マルチトール、マンニット、ソルビット等の糖アルコール類、ソルボース等が挙げられる。親水性物質は、微細セルロースの水中への分散を促進し、水溶性ガム類と組み合わせることにより分散容易性又は分散安定性に顕著な効果を奏する。
【0096】
このようなセルロース分散体(B1)における微細セルロース分散体の割合は、セルロース分散体(B1)の固形分を基準にして、一般に0.1〜99質量%、好ましくは1〜95質量%、さらに好ましくは10〜85質量%の範囲内にあることが、塗料安定性の面から好適である。また、水溶性ガム類と親水性物質とを併用する場合の両者の比率は、水溶性ガム類/親水性物質の質量比で通常95/5〜5/95、好ましくは80/20〜20/80の範囲内とすることができる。
【0097】
なおセルロース分散体(B1)は、微細化セルロース分散体を水溶性ガム類及び/又は親水性物質と混合し分散した後、乾燥することにより製造することができるが、その際、特に、水溶性ガム類は十分に溶解し均一混合することが重要である。溶解複合化を促進するために、加熱処理を行ってもよい。
【0098】
このようにして得られるセルロース分散体(B1)の乾燥は、例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥等により行うこともできるが、フィルム状にて乾燥する方法が優れている。フィルム状にて乾燥する方法は、例えば、セルロースを磨砕することにより得られる微細化セルロース分散体のスラリー、又は該微細セルロース分散体に水溶性ガム類及び/又は親水性物質を加えて均一混合して得られるスラリーを、ガラス、ステンレス、アルミニウム、ニッケル・クロムメッキ鋼板等の基材上に塗布して乾燥する方法が挙げられる。
【0099】
基材は予め加熱されていてもよく、また、塗布後、赤外線、熱風、高周波等にて加熱してもよい。乾燥温度は200℃以下、そして塗布膜厚はスラリーの厚みとして10mm以下が好ましい。工業的には、スチールベルトドライヤー、ドラムドライヤー、ディスクドライヤー等の乾燥機を使用して乾燥粉体を得ることができる。かくして得られる乾燥粉体を電子顕微鏡で観察すると、表面に微粒子化したセルロース分散体が網目状に配列しており、微粒子セルロース分散体間には無数の空隙が見られる。
【0100】
以上のようなセルロース分散体(B1)の市販品としては、アビセルRC−N81、アビセルRC−N30、アビセルRC−591、アビセルCL−611、セオラスクリームFP−03、セオラスRC−N30(以上、旭化成ケミカルズ(株)製、商品名)などが挙げられる。
【0101】
以上のセルロース分散体(B)の配合量は、ノボラックエポキシ樹脂系顔料分散樹
脂(C)を含む顔料分散用樹脂の固形分100質量部に対して、0.1〜50質量部、好ましくは0.15〜20質量部、さらに好ましくは0.2〜10質量部であることが、顔料分散ペーストの貯蔵安定性と塗料安定性の再分散性向上の面から好ましい。
上記、硬化触媒は、塗膜の架橋反応を促進するために有効であり、例えば、ジオクチル錫オキサイト、ジブチル錫オキサイト、錫オクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジベンゾエートなどが挙げられる。中和剤としては、酢酸、蟻酸、乳酸などのカルボン酸が挙げられる。
【0102】
前述の顔料分散ペースト中の固体粒子(顔料成分と必要に応じてセルロース分散体(B)を含む)の平均粒子径は、分散手段として、例えば、ボールミル、ペブルミル、サンドミル、遊星ボールミル、ホモジナイザーなどで、平均粒子径が1〜4,000nm、好ましくは800〜3,500nmの固体粒子が得られるまで、0.5〜96時間、好ましくは1〜48時間、さらに好ましくは5〜24時間程度処理することにより、再分散性に優れた顔料分散ペーストとなる。
【0103】
得られた顔料分散ペーストは、コンテナやドラムに貯蔵して無攪拌で長期間保存しても再分散性に優れ、長期間に亘る貯蔵や長距離の輸送が容易になった。上記の顔料分散ペーストを、基体樹脂及び硬化剤などを分散したエマルションと混合して、カチオン電着塗料を製造することができる。以下、エマルションについて説明する。
【0104】
カチオン電着塗料:
カチオン電着塗料に用いる基体樹脂は、分子中にアミノ基、アンモニウム塩基、スルホニウム塩基、ホスホニウム塩基などのカチオン化可能な基を有する樹脂であり、樹脂種としては、通常使用されているもの、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリブタジエン樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。特に、エポキシ樹脂にアミノ基含有化合物を付加反応させて得られるアミン付加エポキシ樹脂が防食性、合金化溶融メッキ鋼板上の電着塗装適性の両立から好適である。
【0105】
上記のアミン付加エポキシ樹脂としては、例えば、(1)エポキシ樹脂と第1級モノ−及びポリアミン、第2級モノ−及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンとの付加物(例えば、米国特許第3,984,299号明細書参照);(2)エポキシ樹脂とケチミン化された第1級アミノ基を有する第2級モノ−及びポリアミンとの付加物(例えば、米国特許第4,017,438号 明細書参照);(3)エポキシ樹脂とケチミン化された第1級アミノ基を有するヒドロキシ化合物とのエーテル化により得られる反応物(例えば、特開昭59−43013号公報参照)等を挙げることができる。
【0106】
上記のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用されるエポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物であり、その分子量は一般に少なくとも300、好ましくは400〜4,000、さらに好ましくは800〜2,500の範囲内の数平均分子量及び少なくとも160、好ましくは180〜2,500、さらに好ましくは400〜1,500の範囲内のエポキシ当量を有するものが適しており、特に、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られるものが好ましい。
【0107】
ここで、「数平均分子量」は、JIS K 0124−83に記載の方法に準じ、分離カラムとして「TSK gel4000HXL」、「TSK gel3000HXL」、「TSK gel2500HXL」、「TSK gel2000HXL」(東ソー株式会社製)の4本を用いて、溶離液としてGPC用テトラヒドロフランを用いて40℃及び流速1.0ml/分において、RI屈折計で得られたクロマトグラムと標準ポリスチレンの検量線から求めた。
【0108】
該エポキシ樹脂の形成のために用いられるポリフェノール化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン[ビスフェノールA]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン[水添ビスフェノールF]、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン[水添ビスフェノールA]、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−エタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどを挙げることができる。
【0109】
また、ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂としては、中でも、ビスフェノールAから誘導される下記式の樹脂が好適である。
【0110】
【化10】

【0111】
ここで、n=0〜8で示されるものが好適である。
かかるエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)からjER828EL、jER1002、jER1004、jER1007なる商品名で販売されているものが挙げられる。
該エポキシ樹脂は、ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアミドアミン、ポリカルボン酸、ポリイソシアネート化合物などと部分的に反応させたものであってもよく、さらにまた、ε−カプロラクトンなどのラクトン類、アクリルモノマーなどをグラフト重合させたものであってもよい。
【0112】
上記(1)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用される第1級モノ−及びポリアミン、第2級モノ−及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミンなどのモノ−もしくはジ−アルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、モノメチルアミノエタノールなどのアルカノールアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのアルキレンポリアミンなどを挙げることができる。
【0113】
上記(2)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用されるケチミン化された第1級アミノ基を有する第2級モノ−及びポリアミンとしては、例えば、上記(1)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用される第1、2級混合ポリアミンのうち、例えば、ジエチレントリアミンなどにケトン化合物を反応させて生成させたケチミン化物を挙げることができる。
【0114】
上記(3)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用されるケチミン化された第1級アミノ基を有するヒドロキシ化合物としては、例えば、上記(1)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用される第1級モノ−及びポリアミン、第2級モノ−及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンのうち、第1級アミノ基とヒドロキシル基を有する化合物、例えば、モノエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミンなどにケトン化合物を反応させてなるヒドロキシル基含有ケチミン化物を挙げることができる。
【0115】
特に、基体樹脂として、エポキシ当量が180〜2,500、好ましくは250〜2,000のエポキシ樹脂に、フェノール性水酸基を有するキシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物を反応させて得られるキシレン樹脂変性アミン付加エポキシ樹脂であって、アミノ基含有化合物の使用割合が、エポキシ樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物の合計固形分質量を基準にして5〜25質量%であるキシレン樹脂変性アミン付加エポキシ樹脂を用いることが、本発明の効果を得るにはよい。
【0116】
上記アミノ基含有エポキシ樹脂の製造のための出発材料として用いられるエポキシ樹脂としては、前記と同様のエポキシ樹脂を用いることができる。キシレンホルムアルデヒド樹脂は、エポキシ樹脂の内部可塑化(変性)に役立つものであり、例えばキシレン及びホルムアルデヒド類ならびにフェノール類を酸性触媒の存在下で縮合反応させることにより製造することができる。
【0117】
上記のホルムアルデヒド類としては、工業的に入手容易なホルマリン、パラホルムアルデヒドを例示することができる。さらに、ホルムアルデヒド類を直接添加するだけでなく、トリオキサン等のホルムアルデヒド類を発生する化合物等を上記樹脂の合成に用いることができる。
【0118】
さらに、上記のフェノール類には、2又は3個の反応部位を持つ1もしくは2価のフェノール性化合物が包含され、具体的には、例えば、フェノール、クレゾール、パラ−オクチルフェノール、ノニルフェノール、ビスフェノールプロパン、ビスフェノールメタン、レゾルシン、ピロカテコール、ハイドロキノン、パラ−tert−ブチルフェノール、ビスフェノールスルホン、ビスフェノールエーテル、パラ−フェニルフェノール等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。この中で特に、フェノール、クレゾールが好適である。
【0119】
上記キシレン及びホルムアルデヒド類ならびにフェノール類の縮合反応に使用される酸性触媒としては、例えば、硫酸、塩酸、パラトルエンスルホン酸及びシュウ酸等が挙げられるが、一般的には、特に硫酸が特に好適である。
【0120】
縮合反応は、例えば、反応系に存在するキシレン、フェノール類、水、ホルマリン等が還流する温度、通常、80〜約100℃の温度に加熱することにより行うことができ、通常、2〜6時間程度で終了させることができる。
【0121】
上記条件下で、キシレン及びホルムアルデヒド類及びさらに場合によりフェノール類を酸性触媒の存在下で加熱反応させることによって、キシレンホルムアルデヒド樹脂を得ることができる。
【0122】
かくして得られるキシレンホルムアルデヒド樹脂は、一般に、20〜50,000mPa・s(25℃)、好ましくは25〜30,000、さらに好ましくは30〜15,000mPa・s(25℃)の範囲内の粘度を有することができ、そして一般に100〜50,000、特に150〜30,000、さらに特に200〜10,000の範囲内の水酸基当量を有していることが好ましい。
【0123】
アミノ基含有化合物は、エポキシ樹脂にアミノ基を導入して、該エポキシ樹脂をカチオン性化するためのカチオン性基付与化合物であり、前記カチオン性樹脂の製造の際に用いたものと同様のものを用いることができる。
【0124】
前記エポキシ樹脂に対する上記のキシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物の反応は任意の順序で行うことができるが、一般には、エポキシ樹脂に対して、キシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物を同時に付加反応させるのが好適である。
【0125】
上記の付加反応は、通常、適当な溶媒中で、80〜170℃、好ましくは90〜150℃の温度で1〜6時間、好ましくは1〜5時間行うことができる。上記の溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノールなどのアルコール系溶媒;あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0126】
上記の付加反応における各反応成分の使用割合は、厳密に制限されるものではなく適宜変えることができるが、エポキシ樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物の3成分の合計固形分質量を基準にして、以下の範囲内が適当である。
すなわち、エポキシ樹脂は、一般に50〜90質量%、好ましくは50〜85質量%;キシレンホルムアルデヒド樹脂は、一般に5〜45質量%、好ましくは6〜43質量%;アミノ基含有化合物は、一般に5〜25質量%、好ましくは6〜20質量%の範囲内で用いることが好ましい。
【0127】
カチオン電着塗料の硬化剤としては、ブロック化ポリイソシアネート化合物やアミノ樹脂等の従来から知られた硬化剤を用いることができ、特にブロック化ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0128】
ブロック化ポリイソシアネート化合物で使用されるポリイソシアネート化合物としては、公知のものを使用することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,2’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、クルードMDI(「ポリメチレンポリフェニルイソシアネート」)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの芳香族、脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物の環化重合体又はビゥレット体; およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量にエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物を反応させて得られる末端イソシアネート含有化合物又はこれらの組合せを挙げることができる。
【0129】
特に、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、クルードMDI等の芳香族ポリイソシアネート化合物が、防食性の観点から特に好適である。
【0130】
ブロック剤としては、例えばε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムなどのラクタム系化合物;メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物;フェノール、パラ−t−ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール系化合物;n−ブタノール、2−エチルヘキサノールなどの脂肪族アルコール類;フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの芳香族アルキルアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテルアルコール系化合物等が挙げられる。
これらのうち、オキシム系およびラクタム系のブロック剤は、比較的低温で解離するブロック剤であるため低温硬化性の点から特に好適である。基体樹脂は、前記硬化剤、界面活性剤(前記界面活性剤(A)も使用可能)、ハジキ防止剤、表面調整剤、レオコン剤、有機溶剤、増膜剤等を必要に応じて加えて、通常、該基体樹脂をギ酸、酢酸、乳酸などの水溶性有機酸で中和して水溶化・水分散化することによってエマルションを得ることができる。
【0131】
本発明のカチオン電着塗料は、上記エマルションに前記顔料分散ペーストを配合し、必要に応じて、有機溶剤、界面活性剤、表面調整剤、はじき防止剤などの添加物を配合し、固形分10〜40質量%、固形分15〜30質量%となるように脱イオン水などで希釈し、pHを5.0〜7.0の範囲内に調整し、カチオン電着塗料の浴を得ることができる。 電着塗装は、通常、浴温15〜35℃に調整し、印加電圧100〜400Vの条件で行うことができる。電着塗膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、硬化塗膜に基いて10〜40μmの範囲が好ましい。また、塗膜の焼付け硬化温度は、一般に100〜200℃の範囲で5〜90分間が適している。
【0132】
上記顔料分散ペーストを含有するカチオン電着塗料は、塗装ラインにおいて塗料の攪拌や循環を休日や夜間に長時間停止して、再び稼動した時の塗料の再分散性や塗料安定性に優れる為、省エネルギー稼動が可能である。得られた塗料は、防食性、防錆用鋼板に対する電着塗装適性、基材との密着性に優れた硬化塗膜を形成するものであり、例えば、自動車車体、自動車部品、工業用などにおける下塗り塗料組成物として有用である。
【実施例】
【0133】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。尚、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を示す。
【0134】
製造例1 セルロース分散体No.1の製造(B成分に相当)
市販されているパルプ(DPパルプ)を細断後、65質量%硫酸へパルプ含率4質量%となるように−5℃で溶解させ、このセルロース/硫酸溶液1に対し質量比で2.7相当の水中へ、セルロース/硫酸溶液を強撹拌下で注ぎ、セルロースを析出させた。得られたフレーク状のセルロース分散液を80℃で40分間加水分解した後、濾過、水洗してスラリー状のセルロースの水分散体を得た。次いでこの水分散体をイオン交換水で希釈してセルロース濃度4.0質量%とした後、超高圧ホモジナイザーにて操作圧力175MPaで処理し、これを80℃60分間の加熱処理を行った後噴霧乾燥により、セルロース分散体No.1を得た。なおセルロース分散体No.1の平均粒子径は0.24μmであった。
【0135】
製造例2 セルロース分散体No.2の製造(B成分に相当)
市販されているパルプ(DPパルプ)を細断後、10%塩酸中で105℃20分間加水分解して得られた酸不溶性残渣をろ過、洗浄した後、固形分10%のセルロース分散体を調製した。
このセルロース分散体を媒体撹拌湿式粉砕装置(コトブキ技研工業株式会社製アペックスミル、AM−1型)で、媒体として直径1mmφのジルコニアビーズを用いて、撹拌翼回転数1,800rpm、セルロース分散体の供給量0.4L/minの条件で2回通過で粉砕処理を行い、ペースト状のセルロースを得た。セルロース分散体の平均粒子径は3.1μmであった。
次に、セルロースと、キサンタンガム、ブドウ糖を配合組成がそれぞれ固形分比で75/5/20とした総固形分濃度が3.5%の分散液を調整した。これを撹拌しながら80℃60分間の加熱処理を行った後噴霧乾燥によりセルロース分散体No.2を得た。
【0136】
製造例3 顔料分散用樹脂No.1の製造例(C成分に相当)
撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取り付けたフラスコに、ノニルフェノール450部、CNE195LB(注5)960部を仕込み、混合撹拌しながら徐々に加熱し、160℃で反応させる。
その後 、ε−カプロラクトン430部を仕込み、170℃に昇温し、反応させる。さらに、ジエタノールアミン105部およびN−メチルエタノールアミン124部を反応させ、エポキシ価が0になったことを確認し、エチレングリコールモノブチルエーテルを加えて固形分を調整し、固形分60%の顔料分散用樹脂No.1溶液を得た。この顔料分散用樹脂No.1の水酸基価は150mgKOH/g、アミン価は70mgKOH/g、数平均分子量は2,200であった。
(注5)CNE195LB:長春ジャパン株式会社製、商品名、クレゾール型ノボラックエポキシ樹脂、ノボラック型フェノール樹脂のグリシジルエーテル化物。
【0137】
製造例4 顔料分散用樹脂No.2の製造例(C成分に相当)
撹拌機、温度計、滴下ロート及び還流冷却器を取り付けたフラスコに、ノニルフェノール450部、CNE195LB(注5)960部を仕込み、混合撹拌しながら徐々に加熱し、160℃で反応させる。その後、ε−カプロラクタム430部仕込み、170℃に昇温して反応させる。さらに、ジエタノールアミン278部を反応させ、エポキシ価が0になったことを確認してエチレングリコールモノブチルエーテルを加えて固形分を調整し、固形分60%の顔料分散樹脂No.2溶液を得た。該顔料分散樹脂No.2の水酸基価は、200mgKOH/g、アミン価は70mgKOH/g、数平均分子量2,300であった。
【0138】
製造例5 顔料分散用樹脂No.3の製造例
jER828EL(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名、エポキシ樹脂)1010部に、ビスフェノールA390部、ポリカプロラクトンジオール(数平均分子量約1,200)240部およびジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量が約1,090になるまで反応させる。
次に、ジメチルエタノールアミン134部および酢酸90部を加え、120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテルを加えて固形分を調整し、樹脂固形分60%のアンモニウム塩型樹脂系の顔料分散用樹脂No.3溶液を得た。この顔料分散用樹脂No.3のアンモニウム塩価は44mgKOH/g、数平均分子量は3,000であった。
【0139】
実施例1 顔料分散ペーストNo.1の製造
ボールミルに、顔料分散樹脂No.1を8.33部(固形分5部)、ノイゲンTDS−50(注6)を0.5部(固形分0.5部)、クレー7部、カーボンブラック3部、水酸化ビスマス1部、ジオクチル錫オキサイド1部、脱イオン水23.0部を配合して、ボールミルにて分散時間を調整して、固形分40%の顔料分散ぺーストNo.1を得た。該顔料分散ぺーストNo.1の平均粒子径は、1,000nmであった。
【0140】
実施例2〜9 顔料分散ペーストNo.2〜No.9の製造
表1の配合内容にて、実施例1の顔料分散ペーストNo.1と同様にして、顔料分散ペーストNo.2〜No.10を得た。なお顔料分散ペーストNo.1〜No.10の平均粒子径については、後記の表3中に示す。
【0141】
【表1】

【0142】
(注6)ノイゲンTDS−50:第一工業製薬社製、商品名、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ノニオン系界面活性剤、HLB10.5、表面張力25.2mN/m、式(1)相当品。
【0143】
(注7)界面活性剤No.1:式(1)において、AがC1327−、Rが水素原子で、n=8のノニオン系界面活性剤、HLB10.5、表面張力24.1mN/m、式(1)相当品。
【0144】
(注8)ノイゲンTDX−50:第一工業製薬社製、商品名、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、ノニオン系界面活性剤、HLB9.0、表面張力28.4mN/m、式(1)相当品。
【0145】
(注9)界面活性剤No.2:式(1)において、AがC1225−、Rが水素原子で、n=14のノニオン系界面活性剤、HLB13.0、表面張力27.0mN/m。
【0146】
(注10)ノイゲンDKS NL−50:第一工業製薬社製、商品名、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ノニオン系界面活性剤、HLB10.6、表面張力26.5mN/m、式(1)相当品。
【0147】
(注11)アビセルRC−N81:旭化成ケミカルズ(株)製、商品名、セルロース
分散体(結晶セルロース、カラヤガム、デキストリン)。
【0148】
(注12)アビセルRC−N30:旭化成ケミカルズ(株)製、商品名、セルロース分散体(結晶セルロース、キサンタンガム、デキストリン)。
比較例1〜9 顔料分散ペーストNo.11〜No.19の製造
実施例1の顔料分散ペーストNo.1と同様にして、表2のような配合で顔料分散ペーストNo.11〜No.19を得た。また顔料分散ペーストNo.11〜No.19の平均粒子径は、後記の表4中に示す。
得られた顔料分散ペーストNo.1〜No.19のTI値(注3参照)をそれぞれ測定した。さらに各々の顔料分散ペーストを100g採り、蓋のついたガラス容器に入れて40℃で4週間貯蔵した。貯蔵後の状態観察とTI値を測定した。結果を表3及び表4に示す。
【0149】
【表2】

【0150】
(注13)ノイゲンEA87:第一工業製薬社製、商品名、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ノニオン系界面活性剤、HLB=10.6、表面張力41.3mN/m
(注14)ノイゲンEA80:第一工業製薬社製、商品名、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ノニオン系界面活性剤、HLB=10.9、表面張力30.0mN/m
(注15)ノイゲンSD30:第一工業製薬社製、商品名、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ノニオン系界面活性剤、HLB=10.1、表面張力25.4mN/m
(注16)ノイゲンSD80:第一工業製薬社製、商品名、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ノニオン系界面活性剤、HLB=14.3、表面張力27.3mN/m
(注17)界面活性剤No.3:式(1)において、AがC1225−、Rが水素原子で、n=16のノニオン系界面活性剤、HLB16.1、表面張力39.0mN/m
【0151】
【表3】

【0152】
【表4】

【0153】
(注18)貯蔵安定性:貯蔵後の各々の顔料分散ペースト500gを蓋付きガラス瓶入れて、40℃にて40日間貯蔵した。貯蔵後の状態を観察し、下記基準に基づいて評価した。
◎は、攪拌すると直ぐに貯蔵前の状態に戻り、問題なし
〇は、顔料が沈降してケーキ層がみられ、1時間未満攪拌すれば貯蔵前の状態に戻る。
△は、顔料が沈降してケーキ層がみられ、1〜5時間以上攪拌すれば貯蔵前の状態に戻る。
×は、顔料が沈降してケーキ層がみられ、5時間を越えて攪拌しても顔料の凝集ブツが顔料分散ペースト中に残る。
【0154】
[カチオン電着塗料の製造]
製造例6 基体樹脂No.1の製造
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器を備えた反応容器にjER828EL(ジャパンエポキシレジン社製エポキシ樹脂、エポキシ当量約190)を380部、ビスフェノールAを137部仕込み、100℃に加熱保持しながら、N−ベンジルジメチルアミン0.26部を添加し、120℃まで加熱昇温し、約2時間反応させた。
その後、メチルイソブチルケトン120部を配合し、80℃まで冷却し、ジエチレントリアミンのメチルイソブチルジケチミン(メチルイソブチルケトンの75%溶液)14部とN−エチルモノエタノールアミン57部を配合し、100℃まで加熱昇温して約5時間反応させ、ついでプロピレングリコールモノメチルエーテル41部を加え、固形分80%の基体樹脂No.1を得た。
【0155】
製造例7 基体樹脂No.2の製造
温度計、還流冷却器、及び攪拌機を備えた内容積2リットルのセパラブルフラスコに50%ホルマリン240部、フェノール55部、98%工業用硫酸101部及びメタキシレン212部を仕込み、84〜88℃で4時間反応させる。反応終了後、静置して樹脂相と硫酸水相とを分離した後、樹脂相を3回水洗し、20〜30mmHg/120〜130℃の条件で20分間未反応メタキシレンをストリッピングして、粘度1050センチポイズ(25℃)のフェノール変性のキシレンホルムアルデヒド樹脂240部を得た。
別のフラスコに、jER828EL(ジャパンエポキシレジン社製、商品名、エポキシ樹脂 、エポキシ当量190、分子量350)1000部、ビスフェノールA 400部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量750になるまで反応させた。
次に、フェノール変性のキシレンホルムアルデヒド樹脂を300部、ジエタノールアミンを140部及びジエチレントリアミンのケチミン化物を65部を加え120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテルを420部加え、固形分80%のキシレンホルムアルデヒド樹脂変性アミノ基含有エポキシ樹脂である基体樹脂No.2を得た。
【0156】
製造例8 ブロック化ポリイソシアネート硬化剤の製造例
反応容器中にコスモネートM−200(三井化学社製、商品名、クルードMDI) 270部及びメチルイソブチルケトン25部を加え70℃に昇温した。その中に2,2−ジメチロールブタン酸15部を徐々に添加し、ついでエチレングリコールモノブチルエーテル118部を滴下して加え、70℃で1時間反応させた後、60℃に冷却し、プロピレングリコール152部を添加した。
この温度を保ちながら、経時でサンプリングし、赤外線吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアナト基の吸収がなくなったことを確認し、樹脂固形分90%のブロックポリイソシアネート硬化剤を得た。
【0157】
製造例9 エマルションNo.1の製造
製造例6で得た基体樹脂No.1を87.5部(固形分70部)、製造例8で得たブロック化ポリイソシアネート硬化剤33.3部(固形分30部)、10%酢酸15部を配合し均一に撹拌した後、脱イオン水158.3部を強く撹拌しながら約15分かけて滴下し、固形分34%のカチオン電着用のエマルションNo.1を得た。
【0158】
製造例10 エマルションNo.2の製造
製造例7で得た基体樹脂No.2を87.5部(固形分70部)、製造例8で得たブロック化ポリイソシアネート硬化剤 33.3部(固形分30部)、10%酢酸15部を配合し均一に撹拌した後、脱イオン水158.3部を強く撹拌しながら約15分かけて滴下し、固形分34%のカチオン電着用のエマルションNo.2を得た。
【0159】
実施例11 カチオン電着塗料No.1の製造
製造例9で得たエマルションNo.1を294部(固形分100部)に、顔料分散ペーストNo.1を43.8部(固形分17.5部)、10%酢酸5.6部、脱イオン水439.6部を加え、均一に混合して固形分20%のカチオン電着塗料No.1を得た。
【0160】
実施例12〜22 カチオン電着塗料No.2〜No.12の製造
実施例11と同様の操作にて、表5のような配合内容にてカチオン電着塗料No.2〜No.12を得た。下記の試験方法に従って、試験に供したので併せて表記する。
【0161】
【表5】

【0162】
比較例10〜17 カチオン電着塗料No.13〜No.21の製造
実施例10と同様の操作にて、表6のような配合内容にてカチオン電着塗料No.13〜No.21を得た。下記の試験方法に従って試験に供したので、併せて表示する。
【0163】
【表6】

【0164】
試験板の作成
実施例11〜22、及び比較例10〜17で得たカチオン電着塗料中に、パルボンド#3020(日本パーカライジング社製、リン酸亜鉛処理剤)で化成処理した0.8×150×70mmの冷延ダル鋼板を浸漬し、それをカソードとして電着塗装にて膜厚20μmの電着塗膜を形成し、水洗後、170℃で20分間の焼付けを行って試験板を得た。塗料試験及び試験板の性能試験結果を、併せて表5及び表6に示す。
【0165】
(注19)ろ過残渣:カチオン電着塗料の攪拌を24時間停止した後、
再び1時間攪拌し、塗料を400メッシュの濾過網を用いて濾過した時の残さ量(mg/L)を測定した。
○:残さ量が1mg/L未満
△:残さ量が1〜10mg/L
×:残さ量が10mg/Lを越える。
【0166】
(注20)L字仕上り性:カチオン電着塗料の攪拌を24時間停止した後、再び1時間攪拌し、被塗物としてL字に折り曲げた試験板を用いて3分間の電着塗装を行い、水平面(L面)の評価を行った。
○:問題なく良好
△:塗膜のハジキ性、ラウンド感、光沢の低下がみられる
×:塗膜のハジキ性、ラウンド感、光沢の低下が著しい。
【0167】
(注21)耐塩温水性:実施例及び比較例で得られた塗装板に、ナイフでクロスカット傷を入れ55℃、5%食塩水に10日間浸漬したときの結果を下記の基準で評価した。
○:錆、フクレの最大幅がカット部より3mm未満(片側)
△:錆、フクレの最大幅がカット部より3mm以上で、かつ4mm未満(片側)
×:錆、フクレの最大幅がカット部より4mm以上(片側)。
【0168】
(注22)耐衝撃性:デュポン式衝撃試験機を用いて、撃心の直径1/2インチ、落錘高さ50cm、測定雰囲気20℃の条件で試験を行ない、衝撃を受けた凸凹部を目視で評価した。
○:異常なし
△:細かな亀裂が少しみられる
×:大きなワレがみられる
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明の顔料分散ペーストは、貯蔵時の攪拌を省略でき、かつ該顔料分散ペーストを使用したカチオン電着塗料は、塗装ラインにおいては省エネルギー化が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料分散用樹脂、下記式(1)で表される界面活性剤(A)、顔料成分及び水を含有する顔料分散ペーストであって、顔料分散用樹脂の固形分100質量部あたり、顔料成分0.1〜1,000質量部、界面活性剤(A)0.1〜40質量部含有し、固形分濃度を40質量%に調整したときの該顔料分散ペーストにおける、JIS K 5101−6−2の顔料試験方法に基づくTI値が1.8〜4.0の範囲であることを特徴とするカチオン電着塗料用の顔料分散ペースト。
【化1】

式(1)
(式(1)中、AはC1225−又はC1327−を表し、Rは水素原子又はメチル基、nは1〜15の整数を示す)
【請求項2】
顔料分散用樹脂の全固形分100質量部に対して、セルロース分散体(B)を0.1〜50質量部含有する請求項1に記載の顔料分散ペースト。
【請求項3】
顔料分散用樹脂の固形分あたり、ノボラックエポキシ樹脂系顔料分散樹脂(C)を20質量%以上含有する請求項1又は2に記載のカチオン電着塗料用の顔料分散ペースト。
【請求項4】
顔料分散ペーストを40℃で4週間貯蔵した後の、該顔料分散
ペーストの固形分濃度40質量%における、JIS K 5101−6−2の顔料試験方法に基づくTI値が1.8〜4.0の範囲である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の顔料分散ペースト。
【請求項5】
基体樹脂、硬化剤及び基体樹脂と硬化剤の固形分100質量部あたり、請求項1〜4のいずれか1項に記載の顔料分散ペーストを、固形分換算で1〜60質量部含有することを特徴とするカチオン電着塗料。




【公開番号】特開2011−46855(P2011−46855A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197736(P2009−197736)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】