説明

電磁クラッチ

【課題】動力伝達時に局部的に大きな力が加わることを緩和することができる電磁クラッチを提供する。
【解決手段】電磁クラッチは、ウォームホイール13と、ウォームホイール13に板ばね14を介して連結されるアーマチャ部材と、アーマチャ部材と対向するロータと、磁力によって板ばね14を撓ませながらアーマチャ部材をロータ側に吸引(圧接)させてロータと一体回転可能に駆動連結させるコイル部材とを備える。板ばね14は、環状部14aと、環状部14aから径方向に延びてウォームホイール13に連結される周方向に複数の動力伝達片14bと、環状部14aから径方向に延びるとともに動力伝達片14bより撓み易く形成されアーマチャ部材に連結される周方向に複数の撓み片14cとを有する。動力伝達片14bにおける板厚方向に沿った面にはウォームホイール13(その第1動力伝達部13iの側面)と回転方向に係合する回転係合面14dが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に備えられる電磁クラッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から車両用スライドドアの駆動装置等には、電磁クラッチを備えたものが用いられる。そして、このような電磁クラッチとしては、駆動源であるモータにて回転駆動される第1の回転体と、第1の回転体に軸方向に可撓性を有する板ばねを介して連結されるアーマチャ部材と、アーマチャ部材と軸方向に対向する第2の回転体と、発生する磁力によって板ばねを撓ませながらアーマチャ部材を第2の回転体に吸引(圧接)させてそれらを駆動連結させるための磁力発生手段とを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この電磁クラッチにおける板ばねは、第1の回転体にネジやリベット等の締結部材で連結される小径の小環状部と、アーマチャ部材にネジやリベット等の締結部材で連結される大径の大環状部と、小環状部と大環状部とを径方向に連結する周方向に複数の連結片とを有する。即ち、この電磁クラッチでは、磁力発生手段にて発生させる磁力によって板ばねの連結片を撓ませながらアーマチャ部材を第2の回転体に吸引(圧接)させてそれらを駆動連結する構成となっている。尚、磁力発生手段への通電を行わない状態では、アーマチャ部材が第2の回転体側に吸引されず、板ばね(連結片)が撓んでいない状態となりアーマチャ部材と第2の回転体とが離間して非駆動連結状態となる。この状態では、第2の回転体からの回転力がモータ側に伝達されることがなく、車両用スライドドアの手動による容易な開閉が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−177391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような電磁クラッチでは、回転駆動される第1の回転体と小環状部とがネジやリベット等の締結部材で連結されるため、その連結部分(締結部材や締結部材と係合する締結孔)に局部的に大きな力が加わってしまうという問題がある。即ち、小環状部はアーマチャ部材が連結される大径の大環状部の径方向内側に配置されるような小径であるため、その連結部分に局部的に(大環状部とアーマチャ部材の連結部分より)大きな力が加わってしまう。このことは、例えば、前記連結部分の破損や変形を招いたり、板ばねの板厚を必要以上に厚くする必要を生じさせる原因となる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、動力伝達時に局部的に大きな力が加わることを緩和することができる電磁クラッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、回転駆動される第1の回転体と、前記第1の回転体に軸方向に可撓性を有する板ばねを介して連結されて前記第1の回転体と一体回転可能に設けられるアーマチャ部材と、前記アーマチャ部材と軸方向に対向し同アーマチャ部材と相対回転可能に設けられる第2の回転体と、通電により磁力を発生し、該磁力によって前記板ばねを撓ませながら前記アーマチャ部材を前記第2の回転体側に吸引させて該第2の回転体と一体回転可能に駆動連結させるための磁力発生手段とを備えた電磁クラッチであって、前記板ばねは、環状部と、前記環状部から径方向に延びて前記第1の回転体に連結される周方向に複数の動力伝達片と、前記環状部から径方向に延びるとともに前記動力伝達片より撓み易く形成され、前記アーマチャ部材に連結される周方向に複数の撓み片とを有し、前記動力伝達片における板厚方向に沿った面には、前記第1の回転体と回転方向に係合する回転係合面が形成されたことを要旨とする。
【0008】
同構成によれば、通電により磁力発生手段にて磁力が発生されると、その磁力によって板ばねの撓み片が撓められながらアーマチャ部材が第2の回転体側に吸引(圧接)されて該第2の回転体と一体回転可能に駆動連結される。そして、その状態において、第1の回転体が回転駆動されるとその駆動力は板ばねの動力伝達片、環状部、撓み片、及びアーマチャ部材の順に伝達されて該アーマチャ部材と共に第2の回転体が回転駆動される。そして、動力伝達片における板厚方向に沿った面には、第1の回転体と回転方向に係合する回転係合面が形成されるため、例えば単に締結部材にて連結したもの(従来技術)に比べて、一部分(第1の回転体と板ばねとの連結部分等)に局部的に大きな力が加わってしまうことを緩和することができる。尚、板ばねの撓む機能は撓み片に設けられ、動力伝達片はアーマチャ部材が第2の回転体側に吸引(圧接)された状態でも撓まず軸方向の位置が一定となるため、回転係合面を常に一定の面積で第1の回転体と回転方向に係合させた状態とすることができ、局部的に大きな力が加わってしまうことを安定して緩和することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の電磁クラッチにおいて、前記動力伝達片及び前記撓み片は、前記環状部から径方向外側に延びることを要旨とする。
同構成によれば、第1の回転体に連結される動力伝達片及びアーマチャ部材に連結される撓み片は、それぞれ環状部から径方向外側に延びるため、径方向内側に延びるものと比べて、全ての連結部分を回転軸中心から遠い位置とすることができる。よって、径方向内側に延びて連結されるものと比べて、一部分(各連結部分等)に局部的に大きな力が加わってしまうことを更に緩和することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の電磁クラッチにおいて、前記動力伝達片には板厚方向に延びる圧入部が屈曲形成され、該圧入部が前記第1の回転体の被圧入部に圧入されることで前記動力伝達片が前記第1の回転体に連結されたことを要旨とする。
【0011】
同構成によれば、動力伝達片には板厚方向に延びる圧入部が屈曲形成され、該圧入部が第1の回転体の被圧入部に圧入されることで動力伝達片が第1の回転体に連結されるため、例えば、締結部材にて連結したもの(従来技術)に比べて、部品点数を低減することができるとともに組み付け作業を容易とすることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の電磁クラッチにおいて、前記圧入部には、径方向に延びて前記被圧入部の内壁と回転方向に係合する圧入回転係合部が形成されたことを要旨とする。
【0013】
同構成によれば、圧入部には、径方向に延びて被圧入部の内壁と回転方向に係合する圧入回転係合部が形成されるため、径方向に広範囲で力が加わり、一部分(回転係合面等)に局部的に大きな力が加わってしまうことを更に緩和することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の電磁クラッチにおいて、前記圧入部は、前記動力伝達片の先端部から径方向に直交する面を有するように屈曲形成された屈曲部と、該屈曲部から周方向に突出して延びるように形成された円弧部と、該円弧部の先端から屈曲形成された前記圧入回転係合部とを有し、前記圧入回転係合部は、前記圧入部が前記被圧入部に圧入されることで前記被圧入部の内壁と周方向に圧接するように設けられたことを要旨とする。
【0015】
同構成によれば、円弧部は、動力伝達片の先端部から径方向に直交する面を有するように屈曲形成された屈曲部から周方向に突出して延びるように形成され、圧入回転係合部は、更に円弧部の先端から屈曲形成される。このようにすると、圧入回転係合部が被圧入部の内壁と周方向に良好に圧接するような弾性を圧入部に対して容易に持たせることができる。そして、圧入回転係合部は、圧入部が被圧入部に圧入されることで被圧入部の内壁と周方向に圧接するように設けられるため、強固な圧入力を得ることができるとともに、請求項4に記載の発明の効果を良好に得ることができる。
【0016】
請求項6に記載の発明では、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電磁クラッチにおいて、前記撓み片における板厚方向に沿った面には、前記第1の回転体と回転方向に係合する出力側回転係合面が形成されたことを要旨とする。
【0017】
同構成によれば、撓み片における板厚方向に沿った面には、第1の回転体と回転方向に係合する出力側回転係合面が形成されるため、一部分(アーマチャ部材と板ばねとの連結部分等)に局部的に大きな力が加わってしまうことを緩和することができる。尚、撓み片はアーマチャ部材が第2の回転体側に吸引(圧接)された状態で撓むため軸方向の位置が部分的に変化する(アーマチャ部材との連結部分側ほど大きく軸方向に移動する)が、少なくとも環状部側で第1の回転体と回転方向に係合させることができるので、局部的に大きな力が加わってしまうことを緩和することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明では、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電磁クラッチにおいて、径方向に延びる前記撓み片は、その先端部で前記アーマチャ部材に連結されるものであって、径方向の中間部に板厚方向に貫通する貫通孔が形成されたことを要旨とする。
【0019】
同構成によれば、径方向に延びる撓み片は、その先端部でアーマチャ部材に連結されるものであって、径方向の中間部に板厚方向に貫通する貫通孔が形成される構成であるため、アーマチャ部材の良好な軸方向の移動に寄与するばね特性(軸方向の可撓性)を確保しながら、回転方向以外の捩れた力に対して変形し難くすることができる。
【0020】
請求項8に記載の発明では、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電磁クラッチにおいて、前記動力伝達片及び前記撓み片は、周方向に交互に形成されるとともに等角度間隔に形成されたことを要旨とする。
【0021】
同構成によれば、動力伝達片及び撓み片は、周方向に交互に形成されるとともに等角度間隔に形成されるため、回転駆動力をバランス良く伝達することができる。
請求項9に記載の発明では、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電磁クラッチにおいて、前記動力伝達片及び前記撓み片は、前記環状部から径方向外側に延びるものであって、前記第1の回転体の中心孔には、前記第2の回転体と一体回転する回転軸が相対回転可能に挿入される軸受が固定され、前記軸受には、前記第1の回転体に対する前記環状部の軸方向の移動を規制するための規制部が一体成形されたことを要旨とする。
【0022】
同構成によれば、第1の回転体の中心孔に固定され第2の回転体と一体回転する回転軸が相対回転可能に挿入される軸受には、第1の回転体に対する環状部の軸方向の移動を規制するための規制部が一体成形されるため、部品点数の増加を抑えながら、動力伝達片が軸方向に撓んでしまうことを防止することができる。尚、動力伝達片が軸方向に撓んでしまうことを防止することは、動力伝達片の軸方向の位置を確実に一定とし、回転係合面を常に一定の面積で第1の回転体と回転方向に係合させた状態として局部的に大きな力が加わってしまうことを確実に安定して緩和することに寄与する。
【0023】
請求項10に記載の発明では、回転駆動される第1の回転体と、前記第1の回転体に軸方向に可撓性を有する板ばねを介して連結されて前記第1の回転体と一体回転可能に設けられるアーマチャ部材と、前記アーマチャ部材と軸方向に対向し同アーマチャ部材と相対回転可能に設けられる第2の回転体と、通電により磁力を発生し、該磁力によって前記板ばねを撓ませながら前記アーマチャ部材を前記第2の回転体側に吸引させて該第2の回転体と一体回転可能に駆動連結させるための磁力発生手段とを備えた電磁クラッチであって、前記板ばねは、環状部と、前記環状部から径方向外側に延びて前記第1の回転体に連結される周方向に複数の動力伝達片と、前記環状部から径方向外側に延びるとともに前記動力伝達片より撓み易く形成され、前記アーマチャ部材に連結される周方向に複数の撓み片とを有することを要旨とする。
【0024】
同構成によれば、通電により磁力発生手段にて磁力が発生されると、その磁力によって板ばねの撓み片が撓められながらアーマチャ部材が第2の回転体側に吸引(圧接)されて該第2の回転体と一体回転可能に駆動連結される。そして、その状態において、第1の回転体が回転駆動されるとその駆動力は板ばねの動力伝達片、環状部、撓み片、及びアーマチャ部材の順に伝達されて該アーマチャ部材と共に第2の回転体が回転駆動される。そして、第1の回転体に連結される動力伝達片及びアーマチャ部材に連結される撓み片は、それぞれ環状部から径方向外側に延びるため、全ての連結部分を、例えば小環状部と第1の回転体とが連結されるもの(従来技術)と比べて、回転軸中心から遠い位置とすることができる。よって、一部分(各連結部分等)に局部的に大きな力が加わってしまうことを緩和することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、動力伝達時に局部的に大きな力が加わることを緩和することができる電磁クラッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施の形態における駆動装置の分解斜視図。
【図2】本実施の形態における駆動装置の断面図。
【図3】本実施の形態におけるウォームホイール及び板ばねの平面図。
【図4】図3のA−A断面図。
【図5】本実施の形態における固定用部材を説明するための部分拡大断面図。
【図6】本実施の形態における固定用部材を説明するための部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図1〜図6に従って説明する。本実施の形態の駆動装置は、図示しないケーブル等を介して車両用スライドドアに駆動連結され該車両用スライドドアの開閉動作を行うためのものである。
【0028】
図1に示すように、本実施の形態の駆動装置は、駆動源であるモータ1と、モータ1に組み付けられる出力部2と、出力部2に組み付けられる制御回路部3とを備える。本実施の形態のモータ1は、直流モータであって、出力部2のケース11内に突出するウォーム1aを回転駆動する。
【0029】
出力部2は、図1及び図2に示すように、前記ケース11と、ケースカバー12と、ウォームホイール13と、板ばね14と、アーマチャ部材15と、軸受16と、ロータ17と、回転軸18と、コイル部材19(図2参照)と、固定用部材20と、センサマグネット21と、センサとしてのホールIC22(図2参照)等とを有する。尚、本実施の形態では、第1の回転体としてのウォームホイール13と、板ばね14と、アーマチャ部材15と、軸受16と、第2の回転体としてのロータ17と、磁力発生手段としてのコイル部材19(図2参照)とが電磁クラッチを構成している。又、ケース11と、ケースカバー12とがハウジングを構成している。
【0030】
ケース11は、図1に示すように、前記モータ1に固定される固定部11aと、該固定部11aから円筒状に延びて前記ウォーム1aを収容するウォーム収容部11bと、該ウォーム収容部11bと連通しウォーム1aと直交する方向に沿った軸中心の略有底円筒状に形成され前記ウォームホイール13を収容するホイール収容凹部11cとを有する。ホイール収容凹部11cの底部における軸中心には、図2に示すように、ホイール収容凹部11cの内外に突出するとともに内外を連通する円筒部11dが形成されている。
【0031】
前記ケースカバー12は、図1及び図2に示すように、略有底円筒状に形成され、その開口端部が前記ホイール収容凹部11cの開口端部と合わさって内部に略密閉された収容空間Kが形成されるようにケース11にネジNにて固定される。
【0032】
ウォームホイール13は、前記収容空間K内(詳しくは前記ホイール収容凹部11c内)において、前記ウォーム1aの回転に基づいて回転駆動されるように前記ウォーム1aと噛合した状態で回転可能に設けられている。尚、各図では、ウォーム1a及びウォームホイール13の歯の図示を省略している。
【0033】
そして、ウォームホイール13には、軸方向に可撓性を有する前記板ばね14を介して前記アーマチャ部材15がウォームホイール13と一体回転可能に設けられる。
詳述すると、本実施の形態のウォームホイール13は、樹脂材料よりなり、図3に示すように、中心孔13aを有する略円盤形状に形成されている。そして、ウォームホイール13の一端面(ケースカバー12側の端面であって、図2中、上端面)13bには、複数の被圧入部13cが凹設されている。本実施の形態の被圧入部13cは、周方向に等角度(120°)間隔に3つ形成されている。又、各被圧入部13cは、ウォームホイール13の軸中心Xを中心とした円弧状に形成された円弧凹部13dと、その円弧凹部13dの周方向両側から径方向外側に延びる放射状凹部13eとからなる。尚、本実施の形態の被圧入部13cの開口部全周には、ウォームホイール13の一端面13bから被圧入部13cの底部側に向かって傾斜する傾斜面13fが形成されている。
【0034】
又、ウォームホイール13の一端面13bには、図3及び図4に示すように、複数の係合凸部13g,13hが形成されている。本実施の形態の係合凸部13g,13hは、周方向に等角度(120°)間隔に3対(即ち、全部で6つ)形成されている。一対の係合凸部13g,13hは、ウォームホイール13の軸方向から見て、その軸中心Xと前記被圧入部13cの周方向の中心とを通る直線L1を対称軸として線対称に形成されている。そして、各係合凸部13g,13hは、軸方向から見て、前記直線L1と平行に延びる第1動力伝達部13iを有している。又、各係合凸部13g,13hは、軸方向から見て、前記軸中心Xと周方向に隣り合う前記被圧入部13c同士の間の周方向の中心とを通る直線L2と平行に延びる第2動力伝達部13jを有している。尚、係合凸部13g,13hにおける第1動力伝達部13iと第2動力伝達部13jは互いに径方向内側で滑らかに(詳しくは軸中心X側に凸の湾曲部を介して)連結されている。又、本実施の形態のウォームホイール13の一端面13bには、前記直線L2上(周方向に隣り合う第2動力伝達部13jの間)に補助係合凸部13kが形成されている。又、本実施の形態のウォームホイール13の一端面13bにおいて、その外周縁及び前記補助係合凸部13kの径方向外側には凹設されるように(図3中、紙面奥側に)段差を有した段差部13lが形成されている。又、本実施の形態のウォームホイール13の一端面13bにおいて、前記直線L1上(周方向に隣り合う第1動力伝達部13iの間)等には、径方向に延びる凹部13m(図4参照)等が形成されている。
【0035】
板ばね14は、図1及び図3に示すように、環状部14aと、環状部14aから径方向外側に延びてウォームホイール13に連結される周方向に複数の動力伝達片14bと、環状部14aから径方向外側に延びるとともに動力伝達片14bより撓み易く形成され、アーマチャ部材15に連結される周方向に複数の撓み片14cとを有する。本実施の形態の動力伝達片14b及び撓み片14cは、周方向に交互に形成されるとともに等角度(60°)間隔に形成されている。
【0036】
前記環状部14aは、その内径がウォームホイール13の内径(中心孔13aの直径)と略一致するように、且つその外径が前記係合凸部13g,13hの各径方向内側端部を通る円より若干小さい径となるように形成されている。
【0037】
前記動力伝達片14bにおける板厚方向に沿った面には、図4に示すように、前記ウォームホイール13の係合凸部13g,13h(詳しくはその第1動力伝達部13iの側面)と回転方向に係合する回転係合面14dが形成されている。即ち、動力伝達片14bは、その軸方向から見た幅が、一対の係合凸部13g,13h(詳しくはその第1動力伝達部13iの側面)の間隔と略同じであって、本実施の形態では前記間隔より僅かに(軸方向から間に容易に挿入可能な程度に)小さな幅に設定され、その径方向に沿って延びる両側面が回転係合面14dとされている。尚、本実施の形態の前記係合凸部13g,13h(詳しくはその第1動力伝達部13iの側面)の軸方向に沿った高さは、図4に示すように、板ばね14の素材である金属板の板厚と同じである動力伝達片14bの板厚と一致するように設定されている。
【0038】
又、前記動力伝達片14bには、図1及び図3に示すように、板厚方向に延びる圧入部14eが屈曲形成され、該圧入部14eがウォームホイール13の前記被圧入部13cに圧入されることで動力伝達片14bがウォームホイール13に連結される。この圧入部14eには、径方向外側に延びて前記被圧入部13cの内壁と回転方向に係合する圧入回転係合部14fが形成される。詳しくは、圧入部14eは、動力伝達片14bの先端部から径方向に直交する面を有するように屈曲形成された屈曲部14gと、該屈曲部14gの周方向両側から周方向に突出して延びるように形成された円弧部14hと、該円弧部14hの先端から径方向に略沿って延びるように屈曲形成された前記圧入回転係合部14fとを有する。そして、圧入回転係合部14fは、圧入部14eが被圧入部13cに圧入されることで被圧入部13c(その放射状凹部13e)の内壁と周方向に圧接するように設けられる。即ち、圧入部14eは、周方向に突出して延びるように形成された円弧部14hを有し、更に圧入回転係合部14fが円弧部14hの先端から屈曲形成されることなどから、その圧入回転係合部14fを被圧入部13cの放射状凹部13eの内壁に(径方向に沿った面で)周方向に圧接させる良好な弾性を有したものとなっている。
【0039】
前記撓み片14cにおける板厚方向に沿った面には、前記ウォームホイール13の係合凸部13g,13h(詳しくはその第2動力伝達部13jの側面)と回転方向に係合する第1出力側回転係合面14iが形成されている。即ち、撓み片14cは、その軸方向から見た幅が、周方向に隣り合う第2動力伝達部13jの側面の間隔と略同じであって、本実施の形態では前記間隔より僅かに(軸方向から間に容易に挿入可能な程度に)小さな幅に設定され、その径方向に沿って延びる両側面が第1出力側回転係合面14iとされている。
【0040】
又、撓み片14cには、その先端部に板厚方向に貫通する締結用孔14jが形成され、その中間部(締結用孔14jより径方向内側)に板厚方向に貫通する貫通孔14kが形成されている。この貫通孔14kは、撓み片14cのばね特性(軸方向の可撓性)を所望のものとしている。又、撓み片14cの貫通孔14kの内側面(板厚方向に沿った面)は、前記補助係合凸部13kと回転方向に係合する第2出力側回転係合面14lとされている。即ち、貫通孔14kにおいて径方向の直交方向に沿った幅は、前記補助係合凸部13kの同方向の幅と略同じであって、本実施の形態では僅かに(軸方向から補助係合凸部13kを容易に挿入可能な程度に)大きな幅に設定され、その径方向に沿って延びる両内側面が第2出力側回転係合面14lとされている。
【0041】
そして、図2に示すように、板ばね14の撓み片14cとアーマチャ部材15とは、前記締結用孔14jとアーマチャ部材15に設けられる締結用孔15aとを貫通するリベット31によって連結される。このアーマチャ部材15は、磁性材料よりなり、図1に示すように、周方向に等角度(120°)間隔に複数(3つ)の前記締結用孔15aと中心孔15bとを有する略円盤形状に形成されている。尚、前記中心孔15bの直径は、前記ウォームホイール13の内径(中心孔13aの直径)及び前記環状部14aの内径より大きい径となるように形成されている。又、後述するコイル部材19(図2参照)への通電がなされていない状態では、板ばね14の撓み片14cは撓まずに環状部14a及び動力伝達片14b(圧入部14eを除く)と同じ平面上にあり、アーマチャ部材15は、前記ウォームホイール13側に引き付けられた状態で保持される。
【0042】
又、本実施の形態におけるウォームホイール13の中心孔13aには、後述するロータ17と一体回転する回転軸18が相対回転可能に挿入される軸受16が固定されている。軸受16は、メタル軸受であって略円筒状に形成され、前記中心孔13aに圧入固定される。そして、この軸受16には、ウォームホイール13に対する板ばね14の環状部14aの軸方向の移動を規制するための規制部16aが一体成形されている。即ち、規制部16aは、軸受16の前記中心孔13aから軸方向一端側(図2中、上側)に突出する部分から径方向外側にフランジ状に延びて形成され、前記ウォームホイール13の一端面13bと共に前記環状部14aを挟持するように設けられている。尚、規制部16aの外径は、前記アーマチャ部材15の中心孔15bの直径より若干小さい径とされている。
【0043】
前記ロータ17は、アーマチャ部材15と軸方向に対向し同アーマチャ部材15と相対回転可能に設けられる。詳しくは、ロータ17は、磁性材料よりなり、図2に示すように、中心孔17aを有する略円盤形状に形成されている。そして、ロータ17は、その中心孔17aに回転軸18が圧入固定されている。そして、回転軸18が前記ケース11の円筒部11dに設けられた軸受32と前記ケースカバー12の底部中央に設けられた軸受33とに回転可能に支持されることで、ロータ17がアーマチャ部材15と軸方向に対向して回転可能に設けられている。尚、この回転軸18は、前述したようにウォームホイール13に固定された軸受16に挿入され、該ウォームホイール13を回転可能に支持することになる。又、ロータ17の前記アーマチャ部材15と対向する側(軸方向他端側であって、図2中、下側)の端面は、後述するコイル部材19(図2参照)への通電がなされていない状態、即ちアーマチャ部材15がウォームホイール13側に引き付けられた状態で、アーマチャ部材15と僅かに(板ばね14の板厚の1/3程度)離間した位置に配置される。
【0044】
このロータ17の外周側には、前記アーマチャ部材15と対向する側(軸方向他端側であって、図2中、下側)に開口する環状のコイル収容凹部17bが形成されている。又、前記アーマチャ部材15と対向する側のロータ17の外周縁には、複数の係止溝17cが形成されている。尚、本実施の形態のロータ17には、等角度(120°)間隔に3つ(図1中、2つのみ図示する)の係止溝17cが形成されている。又、ロータ17において、前記コイル収容凹部17bの底部には軸方向に貫通する複数(図2中、1つのみ図示する)の貫通孔17dが形成されている。
【0045】
そして、ロータ17のコイル収容凹部17bには、図2に示すように、コイル部材19が収容保持されている。コイル部材19は、ボビン19aにコイル19bが巻装されており、ボビン19aに形成された凸部19cが前記貫通孔17dに挿入されることでその周り止めがなされた状態で、即ちロータ17と一体回転するようにコイル収容凹部17bに保持される。
【0046】
又、ロータ17の外周面には、前記固定用部材20を介して前記センサマグネット21が固定される。詳述すると、センサマグネット21は、環状に形成されるとともに、周方向に変化する磁界を発生させるべく周方向にN極とS極とが交互に着磁されている。
【0047】
又、固定用部材20は、樹脂材料よりなり、図1及び図2に示すように、底部20aに中央孔20bを有する略有底円筒状に形成されている。そして、固定用部材20の円筒部20cには、図5に示すように、ロータ17と径方向に圧接しながら係着される第1爪部20dと、図6に示すように、センサマグネット21と径方向に圧接しながら係着される第2爪部20eとが一体成形されている。
【0048】
前記第1爪部20dは、周方向に等角度(120°)間隔に3つ形成され、図5に示すように、円筒部20cの底部20a側から開口部側に延びる第1片20fと、第1片20fの先端から径方向内側に延びる第1返し部20gとを有する。そして、ロータ17が円筒部20c内に底部20aまで挿入された状態で第1返し部20gが前記係止溝17cに嵌り前記底部20aと第1返し部20gとでロータ17を軸方向に挟むことで第1爪部20d(ひいては固定用部材20)とロータ17とが係着される。そして、前記第1片20fは、前記円筒部20cの内周より僅かに径方向内側に配置されることで、常にロータ17の外周面と径方向に圧接する。
【0049】
前記第2爪部20eは、周方向に等角度(120°)間隔に3つ形成され、図6に示すように、円筒部20cの開口部側から底部20a側に延びる第2片20hと、第2片20hの先端から径方向外側に延びる第2返し部20iとを有する。又、前記円筒部20cの開口部には径方向外側に延びるフランジ部20jが形成されている。そして、センサマグネット21が円筒部20cにフランジ部20jと当接するまで外嵌された状態で、前記フランジ部20jと第2返し部20iとでセンサマグネット21を軸方向に挟むことで第2爪部20e(ひいては固定用部材20)とセンサマグネット21とが係着される。そして、前記第2片20hは、前記円筒部20cの外周より僅かに径方向外側に配置されることで、常にセンサマグネット21の内周面と径方向に圧接する。尚、前記第1爪部20dと前記第2爪部20eとは、周方向に交互に形成され、それらは周方向に等角度(60°)間隔に設けられている。
【0050】
又、固定用部材20には、図1に示すように、発生手段側給電部材としての陽極側及び陰極側のブラシ34,35が付勢板ばね36,37を介して固定されている。付勢板ばね36,37は、前記固定用部材20の前記中央孔20bから径方向内側且つ前記ケースカバー12側(円筒部20cが延びる側と反対側)に斜めに延びるように設けられ、その各先端部にブラシ34,35が固定されている。尚、付勢板ばね36,37は、陽極側及び陰極側のブラシ34,35の径方向位置(固定用部材20の軸中心からの距離)が異なるように設けられている。一方、本実施の形態のケースカバー12には、ハウジング側給電部材としての径の異なる円環状の陽極側及び陰極側の導電板38,39が敷設されている。そして、陽極側及び陰極側のブラシ34,35は、付勢板ばね36,37の付勢力にてそれぞれ陽極側及び陰極側の導電板38,39に軸方向から押圧接触(摺接)される(図示略)。又、固定用部材20の底部20aには、図2に示すように、貫通孔20kが形成され、その貫通孔20kには、前記ロータ17の貫通孔17dを貫通するコイル部材19の凸部19cの先端部が挿入されている。
【0051】
又、前記ケースカバー12において、前記センサマグネット21の外周面と径方向に対向する位置には磁界の変化を検出するためのホールIC22がセンサ基板22a上に実装された状態で、制御回路部3の中に配置されている。
【0052】
又、前記制御回路部3は、その筐体内に図示しない制御用ICや各種電気部品が収容されてなり、出力部2のケース11に固定されることで前記ホールIC22や前記陽極側及び陰極側の導電板38,39に電気的に接続される。この制御回路部3(その筐体)には、図示しない外部コネクタが嵌着されることになり、その外部コネクタを介して電源制御装置が電気的に接続されることになる。又、前記ケース11の円筒部11dから外部に突出する前記回転軸18の先端部には、図示しないケーブル等を介して車両用スライドドアが連結されることになる。
【0053】
上記のように構成された駆動装置では、コイル部材19(図2参照)への通電がなされていない状態では、板ばね14の撓み片14cが撓んでいない状態となりアーマチャ部材15とロータ17とが離間して非駆動連結状態となる。この状態では、ロータ17からの回転力がウォームホイール13、ひいてはモータ1側に伝達されることがなく、車両用スライドドアの手動による容易な開閉が可能となる。又、通電によりコイル部材19にて磁力が発生されると、その磁力によって板ばね14の撓み片14cが撓められながらアーマチャ部材15がロータ17側に吸引(圧接)されて該ロータ17と一体回転可能に駆動連結される。そして、その状態において、モータ1、ひいてはウォームホイール13が回転駆動されるとその駆動力は板ばね14の動力伝達片14b、環状部14a、撓み片14c、及びアーマチャ部材15の順に伝達されて該アーマチャ部材15と共にロータ17及び回転軸18が回転駆動される。これにより、車両用スライドドアが開閉駆動される。又、このとき、モータ1は、ホールIC22にて検出された(車両用スライドドアの開閉位置に対応したセンサマグネット21による)磁界の変化に応じて、回転制御がなされる。
【0054】
次に、上記実施の形態の特徴的な作用効果を以下に記載する。
(1)動力伝達片14bにおける板厚方向に沿った面には、ウォームホイール13の係合凸部13g,13h(詳しくはその第1動力伝達部13iの側面)と回転方向に係合する回転係合面14dが形成される。よって、例えば単に締結部材にて連結したもの(従来技術)に比べて、一部分(ウォームホイール13と板ばね14との連結部分であって本実施の形態では圧入部14eと被圧入部13c)に局部的に大きな力が加わってしまうことを緩和することができる。その結果、例えば連結部分(本実施の形態では圧入部14eと被圧入部13c)の破損や変形を回避しながら、板ばね14の板厚を薄くした(必要以上に厚くする必要がない)構成とすることができる。尚、板ばね14の撓む機能は撓み片14cに設けられ、動力伝達片14bはアーマチャ部材15がロータ17側に吸引(圧接)された状態でも撓まず軸方向の位置が一定となるため、回転係合面14dを常に一定の面積でウォームホイール13と回転方向に係合させた状態とすることができ、局部的に大きな力が加わってしまうことを安定して緩和することができる。
【0055】
(2)ウォームホイール13に連結される動力伝達片14b及びアーマチャ部材15に連結される撓み片14cは、それぞれ環状部14aから径方向外側に延びるため、径方向内側に延びるものと比べて、全ての連結部分を回転軸中心から遠い位置とすることができる。よって、径方向内側に延びて連結されるものと比べて、一部分(各連結部分等)に局部的に大きな力が加わってしまうことを更に緩和することができる。
【0056】
(3)動力伝達片14bには板厚方向に延びる圧入部14eが屈曲形成され、該圧入部14eがウォームホイール13の被圧入部13cに圧入されることで動力伝達片14bがウォームホイール13に連結される。よって、例えば、締結部材(ネジやリベット等)にて連結したもの(従来技術)に比べて、部品点数を低減することができるとともに組み付け作業を容易とすることができる。
【0057】
(4)圧入部14eには、径方向外側に延びて被圧入部13cの内壁と回転方向に係合する圧入回転係合部14fが形成されるため、径方向に広範囲で力が加わり、一部分(回転係合面14d等)に局部的に大きな力が加わってしまうことを更に緩和することができる。
【0058】
(5)板ばね14において、円弧部14hは、動力伝達片14bの先端部から径方向に直交する面を有するように屈曲形成された屈曲部14gから周方向に突出して延びるように形成され、圧入回転係合部14fは、更に円弧部14hの先端から屈曲形成される。このようにすると、圧入回転係合部14fが被圧入部13c(その放射状凹部13e)の内壁と周方向に良好に圧接するような弾性を圧入部14eに対して容易に持たせることができる。そして、圧入回転係合部14fは、圧入部14eが被圧入部13cに圧入されることで被圧入部13c(その放射状凹部13e)の内壁と周方向に圧接するように設けられるため、強固な圧入力を得ることができるとともに、上記(4)に記載の効果を良好に得ることができる。即ち、上記したような弾性を持たない構成で圧入回転係合部を設けた場合では、強固な圧入力を得る構成を他部分に設ける必要が生じたり、がたつき無く圧入回転係合部と被圧入部の内壁とを良好に(径方向に渡って)係合させることが困難となり、ひいては上記(4)に記載の効果を得ることが困難となるが、これらを回避することができる。又、円弧部14hは、回転軸18を中心とした周方向に延びるため、回転駆動力に対する剛性が高くなる。
【0059】
(6)撓み片14cにおける板厚方向に沿った面には、ウォームホイール13の係合凸部13g,13h(詳しくはその第2動力伝達部13jの側面)と回転方向に係合する第1出力側回転係合面14iが形成される。よって、一部分(アーマチャ部材15と板ばね14との連結部分であって本実施の形態では締結用孔14jとリベット31)に局部的に大きな力が加わってしまうことを緩和することができる。尚、撓み片14cはアーマチャ部材15がロータ17側に吸引(圧接)された状態で撓むため軸方向の位置が部分的に変化する(アーマチャ部材15との連結部分側(即ち径方向外側)ほど大きく軸方向に移動する)が、少なくとも環状部14a側でウォームホイール13と回転方向に係合させることができるので、局部的に大きな力が加わってしまうことを緩和することができる。
【0060】
又、本実施の形態では、撓み片14cの貫通孔14kの内側面(板厚方向に沿った面)が、ウォームホイール13の補助係合凸部13kと回転方向に係合する第2出力側回転係合面14lとされているため、一部分(アーマチャ部材15と板ばね14との連結部分)に局部的に大きな力が加わってしまうことを更に緩和することができる。
【0061】
(7)径方向外側に延びる撓み片14cは、その先端部でアーマチャ部材15に連結されるものであって、径方向の中間部に板厚方向に貫通する貫通孔14kが形成される構成であるため、アーマチャ部材15の良好な軸方向の移動に寄与するばね特性(軸方向の可撓性)を確保しながら、回転方向以外の捩れた力に対して変形し難くすることができる。
【0062】
(8)動力伝達片14b及び撓み片14cは、周方向に交互に形成されるとともに等角度(60°)間隔に形成されるため、回転駆動力をバランス良く伝達することができる。
(9)ウォームホイール13の中心孔13aに固定され、ロータ17と一体回転する回転軸18が相対回転可能に挿入される軸受16には、ウォームホイール13に対する板ばね14の環状部14aの軸方向の移動を規制するための規制部16aが一体成形されている。よって、部品点数の増加を抑えながら、動力伝達片14bが軸方向に撓んでしまうことを防止することができる。尚、動力伝達片14bが軸方向に撓んでしまうことを防止することは、動力伝達片14bの軸方向の位置を確実に一定とし、回転係合面14dを常に一定の面積でウォームホイール13と回転方向に係合させた状態として局部的に大きな力が加わってしまうことを確実に安定して緩和することに寄与する。
【0063】
上記実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、ウォームホイール13に連結される動力伝達片14b及びアーマチャ部材15に連結される撓み片14cは、それぞれ環状部14aから径方向外側に延びるとしたが、これに限定されず、逆に環状部からそれぞれ径方向内側に延びるようにしてもよい。
【0064】
・上記実施の形態では、動力伝達片14bはその圧入部14eがウォームホイール13の被圧入部13cに圧入されることでウォームホイール13に連結されるとしたが、これに限定されず、締結部材(ネジやリベット等)にて連結してもよい。又、上記実施の形態では、撓み片14cはアーマチャ部材15とリベット31によって連結されるとしたが、これに限定されず、他の構成(圧入等)で連結してもよい。
【0065】
・上記実施の形態の圧入部14eの構成(屈曲部14g、円弧部14h及び圧入回転係合部14fを含む)は、ウォームホイール13に形成される被圧入部に圧入される構成であれば、被圧入部の形状とともに変更してもよい。例えば、圧入部14eには、径方向外側に延びて被圧入部13c(その放射状凹部13e)の内壁と回転方向に係合する圧入回転係合部14fが形成されるとしたが、これに限定されず、径方向内側に延びる圧入回転係合部14fとしてもよいし、圧入回転係合部14f(及び放射状凹部13e)が形成されていない構成としてもよい。
【0066】
・上記実施の形態では、撓み片14cには、ウォームホイール13と回転方向に係合する第1出力側回転係合面14i及び第2出力側回転係合面14lが形成されるとしたが、これに限定されず、例えばこのような(第1及び第2)出力側回転係合面が形成されていない構成としてもよい。
【0067】
・上記実施の形態では、撓み片14cは、その径方向の中間部に板厚方向に貫通する貫通孔14kが形成されるとしたが、これに限定されず、貫通孔14kが形成されていない構成としてもよい。
【0068】
・上記実施の形態では、動力伝達片14b及び撓み片14cは、周方向に交互に形成されるとともに等角度(60°)間隔に形成されるとしたが、これに限定されず、例えば、不等角度間隔に形成してもよい。又、動力伝達片14b及び撓み片14cの数は、それぞれ他の数に変更してもよい。
【0069】
・上記実施の形態では、ウォームホイール13の中心孔13aには、規制部16aが一体成形された軸受16が固定されるとしたが、これに限定されず、規制部16aが一体成形されていない軸受に変更してもよい。
【0070】
・上記実施の形態では、動力伝達片14bには回転係合面14dが形成されるとしたが、これに限定されず、例えば、係合凸部13g,13hを設けずにウォームホイール13と回転方向に係合する回転係合面14dを設けない構成としてもよい。この場合でも、環状部14aからウォームホイール13に連結される動力伝達片14b及びアーマチャ部材15に連結される撓み片14cを径方向外側に延びる構成とすれば、上記実施の形態の効果(2)と同様の効果を得ることができる。
【0071】
・上記実施の形態では、コイル部材19(図2参照)への通電がなされていない状態では、板ばね14の撓み片14cは撓まずに環状部14a及び動力伝達片14b(圧入部14eを除く)と同じ平面上にあるとしたが、これに限定されず、通電されていない状態でも撓み片14cが極僅かに撓んだ状態となるように構成してもよい。即ち、ウォームホイール13における軸方向から見て撓み片14cと重なる位置に、極僅かに突出する段差を設けてもよい。このようにすると、アーマチャ部材15がウォームホイール13側に引き付けられる際に他の箇所(動力伝達片14b等)に衝突することが抑制され、ひいては衝突音が発生してしまうことを抑制することができる。
【0072】
・上記実施の形態では、動力伝達片14bは、その軸方向から見た幅が、一対の係合凸部13g,13h(詳しくはその第1動力伝達部13iの側面)の間隔より僅かに(軸方向から間に容易に挿入可能な程度に)小さな幅に設定されるとしたが、回転駆動時に回転方向に係合すればよく、例えば、周方向に全く隙間が生じない幅に変更してもよい。このようにすると、動力伝達片14bの組み付け性が多少劣るが、回転方向のがたつきをなくすことができる。尚、勿論、上記した僅かに(軸方向から間に容易に挿入可能な程度に)小さな幅とは、回転駆動時に(板ばね14の各部の撓み等によって)その回転方向の隙間が無くなり、回転係合面14dが係合凸部13g,13h(詳しくはその第1動力伝達部13iの側面)に確実に係合する程度のものである。
【0073】
・上記実施の形態では、ロータ17とセンサマグネット21とは、固定用部材20を介して固定されるとしたが、これに限定されず、例えば、センサマグネットをロータに対して接着剤を用いて固定してもよい。
【0074】
・上記実施の形態では、コイル部材19は、ロータ17と一体回転可能に固定されるものとしたが、これに限定されず、ロータ17と対向してケースカバー12に固定されるものとしてもよい。尚、この場合、固定用部材20に陽極側及び陰極側のブラシ34,35を設けたり、ケースカバー12に陽極側及び陰極側の導電板38,39を設けるといった必要がなくなる。
【0075】
・上記実施の形態の駆動装置は、車両用スライドドアの開閉動作を行うためのものとしたが、これに限定されず、他の動作を行うための駆動装置に具体化してもよい。
【符号の説明】
【0076】
13…ウォームホイール(第1の回転体)、13a…中心孔、13c…被圧入部、14…板ばね、14a…環状部、14b…動力伝達片、14c…撓み片、14d…回転係合面、14e…圧入部、14f…圧入回転係合部、14g…屈曲部、14h…円弧部、14i,14l…第1及び第2出力側回転係合面(出力側回転係合面)、14k…貫通孔、15…アーマチャ部材、16…軸受、16a…規制部、17…ロータ(第2の回転体)、18…回転軸、19…コイル部材(磁力発生手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動される第1の回転体と、
前記第1の回転体に軸方向に可撓性を有する板ばねを介して連結されて前記第1の回転体と一体回転可能に設けられるアーマチャ部材と、
前記アーマチャ部材と軸方向に対向し同アーマチャ部材と相対回転可能に設けられる第2の回転体と、
通電により磁力を発生し、該磁力によって前記板ばねを撓ませながら前記アーマチャ部材を前記第2の回転体側に吸引させて該第2の回転体と一体回転可能に駆動連結させるための磁力発生手段と
を備えた電磁クラッチであって、
前記板ばねは、環状部と、前記環状部から径方向に延びて前記第1の回転体に連結される周方向に複数の動力伝達片と、前記環状部から径方向に延びるとともに前記動力伝達片より撓み易く形成され、前記アーマチャ部材に連結される周方向に複数の撓み片とを有し、
前記動力伝達片における板厚方向に沿った面には、前記第1の回転体と回転方向に係合する回転係合面が形成されたことを特徴とする電磁クラッチ。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁クラッチにおいて、
前記動力伝達片及び前記撓み片は、前記環状部から径方向外側に延びることを特徴とする電磁クラッチ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電磁クラッチにおいて、
前記動力伝達片には板厚方向に延びる圧入部が屈曲形成され、該圧入部が前記第1の回転体の被圧入部に圧入されることで前記動力伝達片が前記第1の回転体に連結されたことを特徴とする電磁クラッチ。
【請求項4】
請求項3に記載の電磁クラッチにおいて、
前記圧入部には、径方向に延びて前記被圧入部の内壁と回転方向に係合する圧入回転係合部が形成されたことを特徴とする電磁クラッチ。
【請求項5】
請求項4に記載の電磁クラッチにおいて、
前記圧入部は、前記動力伝達片の先端部から径方向に直交する面を有するように屈曲形成された屈曲部と、該屈曲部から周方向に突出して延びるように形成された円弧部と、該円弧部の先端から屈曲形成された前記圧入回転係合部とを有し、
前記圧入回転係合部は、前記圧入部が前記被圧入部に圧入されることで前記被圧入部の内壁と周方向に圧接するように設けられたことを特徴とする電磁クラッチ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電磁クラッチにおいて、
前記撓み片における板厚方向に沿った面には、前記第1の回転体と回転方向に係合する出力側回転係合面が形成されたことを特徴とする電磁クラッチ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電磁クラッチにおいて、
径方向に延びる前記撓み片は、その先端部で前記アーマチャ部材に連結されるものであって、径方向の中間部に板厚方向に貫通する貫通孔が形成されたことを特徴とする電磁クラッチ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電磁クラッチにおいて、
前記動力伝達片及び前記撓み片は、周方向に交互に形成されるとともに等角度間隔に形成されたことを特徴とする電磁クラッチ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電磁クラッチにおいて、
前記動力伝達片及び前記撓み片は、前記環状部から径方向外側に延びるものであって、
前記第1の回転体の中心孔には、前記第2の回転体と一体回転する回転軸が相対回転可能に挿入される軸受が固定され、
前記軸受には、前記第1の回転体に対する前記環状部の軸方向の移動を規制するための規制部が一体成形されたことを特徴とする電磁クラッチ。
【請求項10】
回転駆動される第1の回転体と、
前記第1の回転体に軸方向に可撓性を有する板ばねを介して連結されて前記第1の回転体と一体回転可能に設けられるアーマチャ部材と、
前記アーマチャ部材と軸方向に対向し同アーマチャ部材と相対回転可能に設けられる第2の回転体と、
通電により磁力を発生し、該磁力によって前記板ばねを撓ませながら前記アーマチャ部材を前記第2の回転体側に吸引させて該第2の回転体と一体回転可能に駆動連結させるための磁力発生手段と
を備えた電磁クラッチであって、
前記板ばねは、環状部と、前記環状部から径方向外側に延びて前記第1の回転体に連結される周方向に複数の動力伝達片と、前記環状部から径方向外側に延びるとともに前記動力伝達片より撓み易く形成され、前記アーマチャ部材に連結される周方向に複数の撓み片とを有することを特徴とする電磁クラッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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