説明

電磁シールドを有する航空機のコックピット窓、航空機

【課題】電磁ノイズを防止するための電磁シールド膜を、確実かつ容易、低コストに設けることのできる航空機のコックピット窓、航空機を提供する。
【解決手段】窓部21に電磁シールド膜27が設けられ、電磁シールド膜27と導電性材料からなるアウターリテーナ22との間に導電性フィルム41が設けられている。導電性フィルム41は、電磁シールド膜27と接続部材40を介して接続され、窓部21の外周側に導出されて窓部21の外周部に沿うよう設けられ、アウターリテーナ22に電気的に接続されている。これにより、窓部21とアウターリテーナ22との取り合い部分に、隙間なく導電性材料からなる膜を形成する。また、導電性フィルム41は柔軟性を有するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁シールドを有する航空機のコックピット窓、航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機は、ラジオ(Radio)、テレビジョン(Television)、レーダー(Radar)、送信機(Emitters)、および他のソースからの電磁環境(Electro-Magnetic Environment)である高放射電界強度(HIRF: High Intensity Radiated Fields)に対し、巡航飛行中或いは離着陸時において、誤作動や不時の挙動(Up-Set)等が発生せず、安全に飛行できるようにしなければならない。このため、FAA(連邦航空局:Federal Aviation Administration)のRegulations(耐審要求)である、(14CFR)§§23.1308, 25.1317, 27.1317及び29.1317, High-intensity Radiated Fields (HIRF) protectionで要求されるHIRF保護対策を施さなければならない。
【0003】
以下の理由から、近年、航空機の電気/電子システムの保護の重要性は著しく増加している。
1)航空機の継続的な安全な飛行と着陸のために必要な機能を実行する電気/電子システムへの、より大きな依存、
2)航空機の設計で用いられるある種の複合材による電磁遮蔽の低下、
3)データ・バスやプロセッサの動作速度の高速化、より高密度のICやカード、そして電子機器のより高い感度に伴う、電気/電子システムのHIRFに対するサセプティビリティ(感受性)の上昇、
4)使用周波数の特に1GHz以上の高周波帯域への拡大、
5)RF送信器の数と電力の増加に伴う、HIRF環境の苛酷さの上昇、
6)HIRFに曝された時に一部の航空機が受けた悪影響。
【0004】
一方、航空機内においては、携帯電話やゲーム機、ノート型パーソナルコンピュータ等の各種電子機器や航空貨物に付けられるアクティブタイプのRFID(Radio Frequency IDentification)タグ等のPED(Personal Electro Device)が発する電波や電磁ノイズ(以下、単に電磁ノイズと称する)により、例えば、管制塔との通信、所定のルートで飛行を行うための航法(Navigation)の通信や制御に悪影響が生じ得る。そこで、機内での各種電子機器の使用を控えることを乗客に求めているのは周知の通りである。
【0005】
航空機の機体は、一般に金属で形成されているため、キャビン(客席空間)からコックピット(フライトデッキ)や電子機器室(Avionics Bay)へは、主にキャビンの窓、およびコックピットの窓を通して電磁ノイズが出入りする。そこで、障害となり得る電磁ノイズがコックピットや電子機器室に侵入するのを防ぐため、複数枚のアクリル等からなるウインドウパネルを積層してなるキャビンの窓に、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)、金、銀等の膜を挟み込んで設けることが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2003−523911
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、コックピットの窓においては、既に、防氷、防曇のために、やはりITO、金、銀等の膜からなるヒータが挟み込まれている。そこで、このヒータを構成する膜を、電磁ノイズ侵入防止のために用いることも考えられる。窓の外周部には、金属製のリテーナ取付枠が一体に設けられ、この取付枠を、機体側に設けられる金属(導電性)材料からなる窓フレームにファスナで固定することで、コックピットの窓が機体に取り付けられている。しかしながら、ヒータ膜は電気的に絶縁する必要があるため、ヒータ膜と固定枠との間に電気的な隙間があると、この隙間から電磁ノイズがコックピット内に侵入してしまう。そこで、この部分における膜と固定枠との取り合いを確実に行う必要があるが、特許文献1に記載の技術では、キャビンの窓を対象としているがために、そこまでの考慮がなされていない。
【0008】
また、コックピットの窓は、前面側のメイン窓と、その側方に位置するサイド窓とがある。そして、前記の膜は、メイン窓においては主に防氷のために設けられ、サイド窓においては防曇のために設けられている。そのため防曇ヒータに求められる抵抗値ではヒータ膜が薄くなるため十分な電磁シールド減衰効果が得られない。さらに、コックピットの窓においては、ワイパーでの雨滴等の拭き取りを行うために、少なくとも外側の層がガラスで形成されているのに対し、それ以外の層は、ガラスに限らず、アクリル等で形成されることもある。
このように、メイン窓とサイド窓とでは、膜の用途も、そのウインドウパネルの材質や積層構成等も異なり得るため、上記のように膜と固定枠との取り合いがそれぞれにおいて専用の構造となり、コスト上昇に繋がる。
【0009】
また、複数枚のウインドウパネルの締結および取付枠への固定のために、外周部をファスナで締結することがある。このとき、ウインドウパネルをガラス製とした場合、ファスナの締結力によってウインドウパネルへのクラックが発生するのを防ぐため、ウインドウパネル外周部のファスナで締結する部分をガラスよりも柔軟な材料(例えばファイバーグラス)で形成する。すると、ファスナの締結力によって、この部分が変形し、その結果、膜が剥離してしまう可能性もある。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、電磁ノイズを防止するための膜を、確実かつ容易、低コストに設けることのできる航空機のコックピット窓、航空機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的のもと、本発明の航空機のコックピット窓は、複数枚が積層された透明なウインドウパネルと、ウインドウパネルの外周部に設けられ、ウインドウパネルを挟み込み、かつ内側のインナーリテーナおよび導電性材料からなる外側のアウターリテーナと、インナーリテーナとアウターリテーナとを連結する連結部材と、アウターリテーナとウインドウパネルとの間に設けられたウェザーシールと、互いに対向する二枚のウインドウパネルの間に設けられ、導電性材料からなる電磁シールド膜と、電磁シールド膜の外周部とアウターリテーナとを電気的に接続する導電性材料からなる接続フィルムと、を備えることを特徴とする。
このように、互いに対向する二枚のウインドウパネルの間に設けられた電磁シールド膜の外周部と、導電性材料からなるアウターリテーナとを接続フィルムで接続することで、電磁シールド膜とアウターリテーナとを確実に導通させることができる。
さらに、接続フィルムは、一端が互いに対向する二枚のウインドウパネルの間に挟み込まれて電磁シールド膜に電気的に接続され、他端がウインドウパネルの外部でアウターリテーナに接続され、一端と他端との間の中間部が、ウインドウパネルの外周面に沿い、電磁シールド膜の外周部とアウターリテーナとの間を塞ぐよう設けるのが好ましい。これにより、電磁シールド膜の外周部とアウターリテーナとの間からの電磁ノイズの侵入を防ぐことができる。
このとき、電磁シールド膜は、インナーリテーナとアウターリテーナにより締結される部位よりも内周側に設けられ、この部位には接続フィルムが挟み込まれていることを特徴とすることもできる。これにより、インナーリテーナとアウターリテーナによる締結力が電磁シールド膜に作用するのを防ぐことができ、ウインドウパネルの外周部をガラスよりも柔軟な材料で形成した場合にも電磁シールド膜が剥離するのを防ぐことができる。
【0011】
接続フィルムと電磁シールド膜は、電磁シールド膜の外周部を囲うよう設けられた導電性材料からなる帯状の接続部材を介して接続することができる。このような接続部材としては編組線を用いることができる。
【0012】
さらに、複数枚のウインドウパネルの間に、防氷または防曇のためのヒータ層を備えることもできる。
【0013】
本発明は、上記したような電磁シールドを有するコックピット窓を備えた航空機とすることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、互いに対向する二枚のウインドウパネルの間に設けられた電磁シールド膜の外周部と、導電性材料からなるアウターリテーナとを接続フィルムで接続するという簡易な構成により、電磁シールド膜とアウターリテーナとの間を電気的に塞ぎ、電磁シールド膜の外周部とアウターリテーナとの間からの電波や電磁ノイズの侵入を防ぐことができる。
また、ウインドウパネル外周部のファスナで締結する部分をガラスよりも柔軟な材料で形成した場合にも、ファスナの締結力によって、電磁シールド膜が剥離してしまうのを防ぐことができる。
このようにして、電磁ノイズを防止するための電磁シールド膜を、確実かつ容易、低コストに設けることが可能となる。また、電磁シールド膜を積層したウインドウパネルの間に挟み込むことにより、塵や跳ね石等による傷やワイパーによる擦れが影響しないため、機体整備時のメインテナンスが不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態における航空機のコックピット部分を示す図である。
【図2】コックピット窓の断面構造、および機体への取付構造を示す断面図である。
【図3】(a)は電磁シールド膜と導電性フィルムとの接続部分の拡大断面図、(b)は導電性フィルムとアウターリテーナとの接続部分の拡大断面図である。
【図4】サイド窓の断面構造を示す図である。
【図5】コックピット窓の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における航空機10のコックピット窓20の構成を説明するための図である。
図1に示すように、コックピット窓(メイン窓)20は、航空機10のコックピットの前方に設けられている。
【0017】
図2に示すように、コックピット窓20は、航空機10の機体を構成する外皮11に形成された開口12に取り付けられている。コックピット窓20は、窓部21と、その外周部の全周を囲うアウターリテーナ22とを有している。
【0018】
窓部21は、複数枚、本実施形態では、3枚のウインドウパネル23A〜23Cを積層することで構成されている。ここで、メイン窓としてのコックピット窓20においては、ウインドウパネル23A〜23Cのうち、少なくとも航空機10の機体の外側に臨む表層のウインドウパネル23Aは、ガラス製とされる。さらに、本実施形態においては、ウインドウパネル23A〜23Cのすべてがガラス製とされている。
【0019】
ウインドウパネル23A、23Bの間、およびウインドウパネル23B、23Cの間には、PVB(ポリビニルブチラール)等からなる樹脂フィルム24A、24Bが挟み込まれている。
【0020】
また、ウインドウパネル23Aと樹脂フィルム24Aの間には、防氷のためのヒータを構成する導電性材料からなるヒータ層25が形成されている。このヒータ層25は、ITO、金、銀等の導電性材料からなる薄膜から形成される。
さらに、ヒータ層25と樹脂フィルム24Aとの間には、ウレタン樹脂等からなる中間層26が設けられている。
【0021】
樹脂フィルム24Aとウインドウパネル23Bとの間には、電磁シールド膜27が挟み込まれている。電磁シールド膜27は、ITO、金、銀等の導電性材料から形成された薄膜である。
【0022】
ウインドウパネル23B、23Cの外周部には、ウインドウパネル23B、23Cと同じ厚さを有したスペーサ28A、28Bが、その全周を囲って設けられている。スペーサ28A、28Bは、その表裏に設けられたストラップ29A、29Bにより、ウインドウパネル23B、23Cに連結されている。ここで、スペーサ28A、28Bおよびストラップ29A、29Bは、例えばファイバーグラス製とされる。
そしてスペーサ28A、28B、および樹脂フィルム24Bは、ウインドウパネル23A、樹脂フィルム24A、ヒータ層25、電磁シールド膜27に対し外周側に張り出している。
【0023】
このような窓部21の外周部とアウターリテーナ22との間、具体的には、ウインドウパネル23Aの表面の外周部、およびその外周側に張り出すウインドウパネル23Bの表面に沿った部分に、ゴム系材料、樹脂等からなるウェザーシール31が設けられている。ウェザーシール31は、窓部21の外周部の全周を囲うように設けられている。ウェザーシール31は、スペーサ28Aおよびウインドウパネル23Bに沿う部分31aと、樹脂フィルム24Aおよびウインドウパネル23Aの外周面に沿って立ち上がる部分31bと、ウインドウパネル23Aの表面に沿う部分31cとからなるクランク状の断面形状を有している。そして、ウェザーシール31は、同様にクランク状の断面形状を有したZリテーナ(芯材)31Zを内包している。芯材32は、非導電性材料からなり、例えばファイバーグラス製とすることができる。
【0024】
ウインドウパネル23Aよりも外周側に張り出した部分において、ウェザーシール31、スペーサ28A、28B、樹脂フィルム24Bは、外側に配置される金属(導電性材料)製のアウターリテーナ22と、内側に配置されるシール材30およびインナーリテーナ32とに挟み込まれている。そして、これらアウターリテーナ22、ウェザーシール31、スペーサ28A、樹脂フィルム24B、スペーサ28B、シール材30、インナーリテーナ32には、貫通孔33が形成されている。貫通孔33の内周面には、予め定められた長さを有する筒状のスリーブ34が嵌め込まれ、アウターリテーナ22とインナーリテーナ32との間隔を規制している。
【0025】
そして、貫通孔33にファスナ(連結部材)35が挿入され、インナーリテーナ32から機内側に突出したファスナ35の先端部にワッシャー36およびナット37を装着することで、アウターリテーナ22とインナーリテーナ32でウェザーシール31、ウインドウパネル23B、23C、樹脂フィルム24Bを締結固定している。
【0026】
アウターリテーナ22は、航空機10の機体を構成する桁材13に、ボルトやリベット等の締結具14により締結されている。この桁材13は、導電性材料である金属からなり、その一方の側に外皮11が固定され、他方の側にアウターリテーナ22がシール材を介して固定されるようになっている。
【0027】
さて、上記したような構成において、電磁シールド膜27は、アウターリテーナ22、インナーリテーナ32によって締結される部分よりも窓部21の内側(中心側)に形成されている。これは、アウターリテーナ22、インナーリテーナ32による締結力によって、電磁シールド膜27が剥離するのを防ぐためである。電磁シールド膜27がアウターリテーナ22、インナーリテーナ32によって締結される部分よりも内側に設けられていれば、アウターリテーナ22、インナーリテーナ32による締結力が電磁シールド膜27に直接作用しないからである。
【0028】
図2、図3(a)に示すように、電磁シールド膜27の外周縁部には、バスバー状の接続部材40が、その全周を囲うように設けられている。この接続部材40には、平編組線が好適であるが、他の導電性材料から形成してもよい。この接続部材40は、電磁シールド膜27の表面と、樹脂フィルム24Aとの間に挟みこまれて設けられており、はんだ付け等によって電磁シールド膜27に電気的に接続されている。
【0029】
また、接続部材40の外周側には、Ag、Al、Ni、Cu等の材料からなる、柔軟性を有した導電性フィルム(接続フィルム)41が、電磁シールド膜27の全周を囲うように設けられている。導電性フィルム41は、一端41aが接続部材40に電気的に接続されている。さらに、導電性フィルム41は、ウインドウパネル23Bの表面とウェザーシール31との間に挟みこまれ、窓部21から外周側に突出するよう導出されている。
【0030】
図3(b)に示すように、導電性フィルム41において、窓部21から外周側に突出した突出部(中間部)41bは、アウターリテーナ22側(機体外方側)に向けて折り曲げられ、ウェザーシール31の外周部に沿うよう設けられている。この突出部41bは、ウェザーシール31の全周を囲い、その先端部41cがアウターリテーナ22に隙間が無いよう設けられている。ウェザーシール31の角が曲面形状の場合には導電性フィルムを折り曲げ切断した上から別の導電性フィルムをウェザーシールの外周部に沿うよう貼り付けても良い。
突出部41bには、その周方向の一部にタブ(他端)41dが突出して形成されている。タブ41dは、アウターリテーナ22の裏面側に沿うよう折り曲げられ、アウターリテーナ22にファスナ等により電気的に接地(Bonding)されている。接地箇所は最小のポイントとするが、シールド性能を向上させるため全周(Peripheral)としても良い。
【0031】
上述したような構成によれば、窓部21に電磁シールド膜27が設けられ、この電磁シールド膜27と導電性材料からなるアウターリテーナ22との間に導電性フィルム41が設けられている。この導電性フィルム41は、窓部21の外周側に突出してウェザーシール31(窓部21)の外周部に沿うよう設けられて、アウターリテーナ22に電気的に接地されている。これにより、窓部21とアウターリテーナ22、機体の外皮11との取り合い部分に、電気的に隙間なく導電性材料からなる膜を形成することができ、電磁ノイズのコックピットへの侵入を確実に防止することができる。
このとき、導電性フィルム41は柔軟性を有しているため、アウターリテーナ22とインナーリテーナ32の締結力が作用したときも、これが剥離したり破損するのを回避できる。また、このように柔軟性を有する導電性フィルム41は、窓部21の外周側に張り出した部分をウェザーシール31の外周部に沿って折り曲げる場合にも、その施工を容易に行える。
このようにして、電磁ノイズ侵入防止のための電磁シールド膜を、確実かつ容易、低コストに設けることが可能となる。
【0032】
なお、上記したような構成は、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。以下、その変形例を挙げる。なおここで、以下の変形例において、上記に示した構成と共通する構成については同符号を付してその説明を省略する。
まず、上記構成は、メイン窓としてのコックピット窓20について説明したが、コックピットのサイド窓50にも適用することができる。図4は、コックピットのサイド窓50に本発明を適用した場合の構成を示す図である。
この図4に示すように、サイド窓50においては、ヒータ層25を、防曇のために用いるため、より機内側となる、ウインドウパネル23Cと樹脂フィルム24Bとの間に設けられている。これ以外の構成は、図2に示したコックピット窓20と同様である。
これにより、電磁シールド膜27に接続部材40を介して導電性フィルム41が同層に設けられ、さらに、導電性フィルム41は、ウェザーシール31の外周側に導出されてウェザーシール31aの外周部に沿うよう折り曲げられ、アウターリテーナ22に電気的に接地されている。電磁ノイズ侵入防止のための電磁シールド膜を設ける構成は、コックピット窓20とサイド窓50とで共通化することができる。これにより、生産コスト上昇を抑えることができる。
【0033】
また、上記した構成では、ウインドウパネル23B、23Cをガラス製としたが、これをアクリル樹脂製とすることも可能である。図5は、ウインドウパネル23D、23Eをアクリル製とした場合の例を示す図である。この場合、スペーサ28A、28Bを設けず、ウインドウパネル23D、23Eにそのまま貫通孔33を形成してファスナ35により締結することが可能である。
この場合、電磁シールド膜27は、ウインドウパネル23D、23Eの間に介在させ、その外周部に、導電性フィルム(接続フィルム)52を接続する。この導電性フィルム52は、窓部21の外周部、すなわちウインドウパネル23Dの外周面に沿うよう設けられ、周方向複数箇所に設けられたタブ52aによりアウターリテーナ22に電気的に接地(Bonding)される。
【0034】
このような構成においても、導電性フィルム52により、電磁シールド膜27とアウターリテーナ22との隙間を塞ぐことができるので、上記図2、4に示した場合と同様の効果を得ることができる。
【0035】
なお、上記実施形態において、窓部21を構成するウインドウパネルの層数、積層構成、材質等は適宜変更することが可能である。また、電磁シールド膜27を設ける層も、上記以外の層としても良い。その場合も、導電性フィルム41、52によりアウターリテーナ22との間を塞ぐことが必須である。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
10…航空機、11…外皮、12…開口、13…桁材、14…締結具、20…コックピット窓、21…窓部、22…アウターリテーナ、23A〜23E…ウインドウパネル、24A〜24C…樹脂フィルム、25…ヒータ層、27…電磁シールド膜、28A、28B…スペーサ、31…ウェザーシール、32…インナーリテーナ、33…貫通孔、34…スリーブ、35…ファスナ(連結部材)、40…接続部材、41、52…導電性フィルム(接続フィルム)、41a…一端、41b…突出部(中間部)、41c…先端部、41d…タブ(他端)、50…サイド窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚が積層された透明なウインドウパネルと、
前記ウインドウパネルの外周部に設けられ、前記ウインドウパネルを挟み込み、かつ導電性材料からなる内側のインナーリテーナおよび外側のアウターリテーナと、
前記インナーリテーナと前記アウターリテーナとを連結する連結部材と、
前記アウターリテーナと前記ウインドウパネルとの間に設けられたウェザーシールと、
互いに対向する二枚の前記ウインドウパネルの間に設けられ、導電性材料からなる電磁シールド膜と、
前記電磁シールド膜の外周部と前記アウターリテーナとを電気的に接続する導電性材料からなる接続フィルムと、を備えることを特徴とする電磁シールドを有する航空機のコックピット窓。
【請求項2】
前記接続フィルムは、一端が互いに対向する二枚の前記ウインドウパネルの間に挟み込まれて前記電磁シールド膜に電気的に接続され、他端が前記ウインドウパネルの外部で前記アウターリテーナに接続され、前記一端と前記他端との間の中間部が、前記ウインドウパネルの外周面に沿い、前記電磁シールド膜の外周部と前記アウターリテーナとの間を塞ぐよう設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電磁シールドを有する航空機のコックピット窓。
【請求項3】
前記接続フィルムと前記電磁シールド膜は、前記電磁シールド膜の外周部を囲うよう設けられた導電性材料からなる帯状の接続部材を介して接続されていることを特徴とする請求項2に記載の電磁シールドを有する航空機のコックピット窓。
【請求項4】
前記電磁シールド膜は、前記インナーリテーナと前記アウターリテーナにより締結される部位よりも内周側に設けられ、前記部位には前記接続フィルムが挟み込まれていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電磁シールドを有する航空機のコックピット窓。
【請求項5】
複数枚の前記ウインドウパネルの間に、防氷または防曇のためのヒータ層をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電磁シールドを有する航空機のコックピット窓。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の電磁シールドを有するコックピット窓を備えた航空機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−225076(P2011−225076A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95810(P2010−95810)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(508208007)三菱航空機株式会社 (32)
【Fターム(参考)】