説明

電磁レンズ,磁界重畳型電子銃および当該磁界重畳型電子銃を備えた荷電粒子線装置

【課題】真空容器内でベーキングが必要な高真空領域に配置できる電磁レンズを提供すること。
【解決手段】電磁レンズは円筒状の焼結セラミックスまたはガラス等の絶縁体からなるボビンを使用したコイルからなり、そのコイルは複数のボビンからなり、ボビンは同心円状の構造であり、導電線をボビンの軸に対して垂直な溝,平行な溝,切り欠き部を使用しコイル内を一本の金属線で配線する構造にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁レンズを有した電子銃および当該電子銃を備えた荷電粒子線装置、特に電子顕微鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
走査型電子顕微鏡(SEM)は、電子銃から放出される電子線を加速し、電磁レンズで細い電子ビームとし、これを一次電子ビームとして走査偏向器を用いて試料上に走査し、試料より放出される二次電子あるいは反射電子を検出して像を得るものである。SEMで使用される電子銃は、内部に格納される電子源の種類により、冷陰極電界放出型電子銃もしくは熱電界放出型電子銃に大別される。
【0003】
冷陰極電界放出型電子銃は、常温でタングステンの針状のチップの先端に強電界をかけ、トンネル効果により電子を放出させ電子ビームを得る。チップの先端に雰囲気中の気体分子が吸着すると、チップ先端の仕事関数が変化し放出される電流量が変動する。したがって、安定した電子ビームを得るためには、チップ近傍の真空度は10-8Pa以下に保つ必要がある。多量に気体分子が付着した場合は、タングステンに通電を行いチップを加熱し、付着気体分子を取り去るフラッシング作業を行う。フラッシング時にチップは、2000K程度に加熱される、そのためにチップの針の先端の半径が大きくなり、フラッシング前のプローブ電流を得るには引出電圧を大きくする必要がある。
【0004】
熱電界放出型(通称ショットキー電子銃)は、タングステンの針状のチップに仕事関数を下げる物質を塗布し、電界下で加熱して電子を放出させ電子ビームを得る電子銃である。一般的なショットキー電子銃は、酸化ジルコニウム等を塗布したタングステンチップを〜1800Kに常時加熱し、酸化ジルコニウムを拡散させチップをコーティングしポテンシャル障壁を下げた(〜2.7eV)針を、ショットキー効果を利用して電子を放出させるものである。酸化ジルコニウムをコーティングすることにより、冷陰極より低真空で使用でき、チップ近傍の圧力は、10-7〜10-8Pa以下である。
【0005】
10-7〜10-8Pa程度の高真空を得るには、イオンポンプ排気領域の金属表面の吸着気体分子の除去を目的としたベーキングが必要となる。ベーキングの温度は、最大300〜400℃になる。チップ付近を高真空に保つために、チップ近傍を異なる真空内に配置したヒータで加熱する場合もある。
【0006】
一方、SEM内部の電子銃あるいは電子光学系では、光学要素として、電磁レンズが使用される場合が多い。電磁レンズに使用するコイルは、金属性のボビンにポリイミドの皮膜で絶縁を施した銅線を巻き付け、その周りを樹脂材で埋めた構造になっている。電子ビームは電界放出形電子銃および熱電界放出型電子銃の針状のチップから放射状に放出される。大電流を得るためには大きな開角の電子ビームを集める必要がある。広がった電子ビームを電磁レンズで集めると、球面収差のために電子ビーム径が広がってしまう。そのために、電子ビームが広がる前にチップと加速アノード電極間に電場と磁場を重畳させ電子を集める方法が行われている。
【0007】
特開2000−3689号公報(特許文献1)には、永久磁石と電磁レンズを一体化した磁極ユニットを備えた磁界重畳型電子銃を搭載した電子ビーム露光装置が開示されている。
【0008】
また、特開2001−312986号公報(特許文献2)には、永久磁石を使用せずに電磁レンズを使用した磁界重畳型電子銃の一構成が開示されている。当文献に記載された発明では、ベーキング時の加熱を考慮して、電子銃の上部に励磁コイルを配置し、発生した磁界を導くための磁路を電子源のチップ近傍付近まで伸ばすことにより、一次電子ビームの光軸上に磁界を印加できる構成になっている。また、励磁コイルは脱着可能に構成されており、ベーキング時には、励磁コイルを取り外せるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−3689号公報
【特許文献2】特開2001−312986号公報(米国特許7098455号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に示されるような永久磁石を用いた磁界重畳電子銃は、使い勝手が良くないという欠点がある。永久磁石は、ベーキングの熱により減磁し、電子ビーム電流の低下、レンズ系の制御の再調整が必要となる。また、永久磁石は、経時変化による減磁も起こるために、最適なコンディションを常に提供することが難しい。また、永久磁石は磁力を制御することができず、引出電圧,加速電圧の変化に適応した制御ができない。そして、磁場の印加をオフにすることもできない。
【0011】
一方、電磁レンズを用いた磁界重畳電子銃は、電磁レンズに使用されているコイルが熱に弱いという欠点がある。コイルのモールドと配線の被覆には樹脂が使用されており、樹脂性コイルは、最大300〜400℃に達するベーキングで軟化・変質する恐れがある。
【0012】
コイルを用いた磁場レンズを真空内への設置と高温対応を目的に、コイルの樹脂の部分をセラミックスまたはガラスに置き換えることも可能であるが、セラミックスは、焼結時に10〜20%収縮する。従って、コイルの導電線の巻線後に焼結を行うと、セラミックスの収縮により導電線も収縮の力を受け、内部での短絡が発生する。また、セラミックスまたはガラスは、ベーキング時に加熱を行うと、導電線の材料との膨張率の違いにより破損してしまう。
【0013】
そこで、本発明の目的は、ベーキングによる加熱に耐えうる電磁レンズ,当該電磁レンズを搭載した磁界重畳型電子銃、あるいは当該電磁レンズを搭載した荷電粒子線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では、電磁レンズを構成するコイルを、側面(すなわち円筒面)に溝が形成された円筒状絶縁部材と、当該溝に沿って巻き付けられた導電線とを備えるように構成することにより上記課題を解決する。円筒状絶縁部材の溝は、円筒面の緯線方向、すなわち周方向に沿って形成する。溝の形成方法としては、円筒状絶縁部材の軸方向に、複数本の溝を互いに平行になるように形成する手法と、螺旋状の一本の溝を円筒状絶縁部材の円筒面に形成する手法の2通りがある。
【0015】
コイルの詳細については、実施例で説明される。
【発明の効果】
【0016】
従来のコイルと異なり樹脂を使用しないため、ベーキング時の高温加熱に耐えられる電磁レンズが実現できる。また、予め焼結済みの絶縁材料土台にコイルの電流経路を形成するため、焼結時に導電線が破断するなどの問題も無い。以上、本発明によって、ベーキング時の加熱に耐えられる電磁レンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1の磁界重畳型電子銃の全体構成を説明する断面図。
【図2】実施例1のコイルの断面斜視図。
【図3】実施例1のボビンの斜視図。
【図4】実施例1のコイルにおける導電線の巻き付け方の説明図(1)。
【図5】実施例1のコイルにおける導電線の巻き付け方の説明図(2)。
【図6】実施例1のコイルにおける導電線の巻き付け方の説明図(3)。
【図7】実施例1のコイルにおける導電線の巻き付け方の説明図(4)。
【図8】実施例1のボビンの外観図。
【図9】実施例1のコイルにおける真空排気時の気流の流れの説明図。
【図10】実施例1のコイルにおけるボビンの積層面の断面図。
【図11】実施例1の磁界重畳型電子銃における調整ネジと押付けバネの配置を示す上面図。
【図12】実施例1の荷電粒子線装置を示す全体図。
【図13】実施例2のコイルにおける右ネジボビンの斜視図。
【図14】実施例2のコイルにおける左ネジボビンの斜視図。
【図15】実施例3の電磁レンズにおけるコイルの配置例を示す図。
【図16】実施例3の電磁レンズにおけるコイルの配置例を示す図。
【図17】実施例3の電磁レンズを排気口の高さ方向の中心位置で切った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して詳述する。
【実施例1】
【0019】
本実施例では、冷陰極電界放出型電子源電子銃への適用例について説明する。図1は本実施例の冷陰極電界放出型電子源電子銃の構成を示した断面図である。電子銃1,チップ2,絶縁碍子3,電磁レンズ4,イオンポンプ(1)5a,イオンポンプ(2)5b,調整ネジ6,押付けバネ7,内部ヒータ8a,外部ヒータ8b,引出電極9,差動排気アパーチャ(1)10a,差動排気アパーチャ(2)10bで構成される。電子ビーム11は、V0の電圧が印加されたチップ2に対して正バイアスV1を引出電極9に印加することによりV0で加速され、差動排気アパーチャ(1)10a,差動排気アパーチャ(2)10bを通り電子銃外に放出される。
【0020】
内部ヒータ8aと引出電極9は共に円筒形状で、内部ヒータ8aは引出電極9の周囲を取り囲むように配置しベーキング時に引出電極9を加熱する。内部ヒータ8aの電熱線は、電子ビーム引出時はV1の電圧が印加されている。内部ヒータ8aと外部ヒータ8bは、電子銃1内部の付着した気体分子を脱ガスするためのベーキングを行う際に、図示しない制御系より所定の時間通電され加熱する。加熱温度は、最大400℃程度になる。
【0021】
押付けバネ7は、バネ62,押付け板63からなる。バネ62は、電磁レンズ4をZ方向に押付ける方向に力が加わるように配置されている。押付け板63は、バネ62と電磁レンズ4の間にあり、電磁レンズ4との接触部が半円状になっている。これにより、電子レンズ4は、Z方向に動かずX−Y面方向に動かすことができる。
【0022】
筐体12は真空容器の隔壁であり、電子銃室を構成する。以上説明した各構成要素は、電子銃室内に配置され、電子銃の動作時には、各構成要素は真空状態で動作することになる。
【0023】
図2は、図1の電磁レンズ4の詳細形状を断面にした斜視図である。図2に示す電磁コイル4は、断面がC字型のリング状磁路部材の内部にコイル26が格納された構造を備える。電磁レンズ4が電子銃室内に設置される際には、電子ビーム11の光軸と電磁レンズの中心軸とが一致するように(すなわち電子源と電子レンズが同軸になるように)設置される場合が多い。
【0024】
リング磁路部材は、上磁路部材20,下磁路部材21が嵌め合わされて構成され、C字型断面の切り欠き部が磁極ギャップを構成する。上磁路部材20と下磁路部材21は、パーマロイや純鉄などの高透磁率の軟磁性材料からなる。リング磁路部材の上面、すなわち上磁路部材20の上面には固定ネジ25が設けられ、上磁路部材20と下磁路部材21を締結する。また、リング磁路部材の外周面には、電磁レンズ内の真空排気用の開口が設けられる(後述)。本実施例では、下磁路部材21の外周面に開口27を設けているが、上磁路部材20側に設けても良い。
【0025】
コイル26は、ボビン22,導電線24により構成される。ボビンとは、コイルの電流経路である巻線部材を巻き付ける土台となるもので、本実施例では、円筒形状の板材により構成される。材料としては、焼結セラミックスまたはガラス等の絶縁体で構成される。このような導電線を巻き付ける土台となる円筒状絶縁部材を、以下の説明ではボビンと称する。
【0026】
従来の電磁レンズは、コイルのモールドや被覆に樹脂を使用しているため、真空内で樹脂から多量のガスが放出され、超高真空雰囲気での使用には適していなかった。また、導電線の絶縁材としてガラス繊維を使用した場合、ガラス繊維の表面積は大きいため超高真空まで真空排気することが困難である。
【0027】
図2では、4段のボビンを使用した例を示しているが、ボビンの使用数の制限はない。ボビンを1つのみ使用してもコイルは構成でき、所望するコイルのターン数に合わせてボビンの使用数を増やしていけば、所望の起磁力のコイルを構成できる。
【0028】
導電線24は、銅,アルミニウムなどの低電気抵抗金属で、ベーキング時の加熱温度(例えば400℃)でも溶解しない金属からなる。導電線24はボビン22の溝に巻き付けられる。
【0029】
導電線24は、上磁路部材20または下磁路部材21に開けられた穴より電磁レンズ4の外部に導出される。リング状磁路部材の上面には穴が設けられており、絶縁材料でできた絶縁碍子23が設置されている。磁路と導電線24は絶縁碍子3により絶縁される。更に、絶縁碍子23にも穴が設けられており、導電線24はこの穴を介して外部の電流端子(図示せず)と接続される。電磁レンズ4より導出した導電線24はまた、図示していないハーメチックシールを介して電子銃外に導出される。大気中に導出された導電線24は、図示していない電源と制御系に接続され、これらの電源と制御系を用いて導電線24への電流を制御することにより電磁レンズの磁力の強度制御を行う。
【0030】
次に、図3を用いてボビンの詳細について説明する。図3は、ボビン22単体の斜視図である。ボビン22は、ボビンの円筒面(円筒の外面)の緯線方向に形成された周方向溝30(以後、周方向溝)、同じくボビンの円筒面の経線方向に形成された経線方向溝31(以後、経線方向溝),穴32,切り欠き部33などからなる。ここで、「経線方向」とはボビンの円筒面上でボビンの中心軸に垂直な方向を意味し、「緯線方向」とは、ボビンの円筒面上で「経線方向」に直交する方向を意味する。「周方向」と「緯線方向」とはほぼ同義であるが、「周方向」といった場合、本実施例では、経線方向と傾いて交差する方向も含むものとする。本実施例の電子レンズでは、周方向溝は緯線方向溝であり、複数の緯線方向溝が経線方向に対して互いに平行に形成されている。
【0031】
図3中のb1は、ボビン22を構成する円筒部材の内径であり、b2は外径である。ボビン22は、焼結させたアルミナセラミックスまたはガラスなどの絶縁体で、かつ400℃以下で変形せず、高真空で放出ガスの少ない材料である。ボビン22は、円筒形をしており外周に周方向溝30が複数個ある。周方向溝30は、ボビンの軸に対して垂直で外周を一周する様にボビン22に切られた溝であり、等間隔に配列している。周方向溝30の個数に制限はない。
【0032】
経線方向溝31は、ボビン22の周囲に上から下に直線状に位置する溝で、この部分には周方向溝30は存在しない。本実施例の周方向溝形状のコイルの場合、後述するように、経線方向溝31は一つ以上必要である。
【0033】
穴32は、ボビン22の外周から内周に達する貫通孔である。穴32の個数にも制限はない。切り欠き部33は、経線方向溝31の上下に一個ずつ設けられる。
【0034】
複数のボビン22を使用してコイルを構成する場合、形状が同じで内径b1および外径b1の異なる複数のボビンを入れ子状に配置してコイルを構成する。従って、複数のボビンの内径b1,外径b1の関係は、内側ボビンの外径b2より外側ボビンの内径b1が大きいことになる。以上のように、複数のボビンを使用してコイル26を構成する場合、導電線の巻き付けられた径の異なるボビンが同心円状に配置されることになる。
【0035】
次に、図4〜図7を用いて導電線24のボビン22への巻き方を説明する。図4は、最初のボビン22へ導電線24を巻き付けている途中の状態を示している。最初のボビン22は、内径b1が最も小さい。導電線24の巻き付けは、経線方向溝31上の切り欠き部33の位置から始める。一段目の周方向溝30へ巻き付け、巻き付け開始位置に導電線24が達したら、導電線24を巻き付ける溝を経線方向溝31の部分で切り替えて、次の段の溝に導電線を巻き付ける。上から巻き付けた場合は、二段目の周方向溝は次の下側の周方向溝となり、下から巻き付けた場合、次の上側の周方向溝30が二段目の周方向溝となる。以上のように、周方向溝が緯線方向に形成されている場合には、巻線位置を切り替えるために、周方向溝が存在しない経線方向溝31が必要となる。
【0036】
以後、経線方向溝31の部分で巻き付ける溝を切り替えながら、最終段の周方向溝まで巻き進める。図5には、図4に示したボビンの最終段の溝まで導電線を巻き付けた状態を示す。
【0037】
次に、内径b1の一段大きなボビンを初段目のボビンの上側あるいは下側から被せることにより、初段目のボビンと二段目のボビンを組み合わせる。導電線24は、重ね合わせたボビン22の切り欠き部33より引出し、重ね合わせたボビン22の一段目の周方向溝30へ巻き付ける。図6には、初段目のボビンの外側に重ね合わされた二段目のボビンに最後まで導電線を巻き付けた状態を示している。以降、初段目のボビン22と同様に巻き進めて行き、次のボビン22へ移る際は、図5と同じ要領で切り欠き部33の部分より導電線を引出し、巻き進める。図7は、4段のボビンを積層したコイルにおいて、導電線を最後まで巻き終えた状態を示している。この巻き方により、コイル内部での導電線24の短絡および地絡することなく一本の金属線でコイルを巻くことができる。
【0038】
次に、本実施例の電磁レンズの持つ真空排気機構について説明する。
【0039】
図8は、電磁レンズ4をボビンの経線方向溝の中心を通る面で切断した断面図である。本実施例のリング状磁路部材は、側面に排気口41を備えている。本実施例では、下磁路部材21の側面に排気口41を設けているが、上磁路部材20側に設けても構わない。リング状磁路部材内に配置されたコイル26は、コイルの外周側および内周側に、上磁路部材20と下磁路部材21とは接触しないスペース42,43を持つ。図1で示したように電磁レンズ4の側方には、イオンポンプ5bがあり、電子銃1の内部を真空排気している。従って、電磁レンズ4の内部には、図8に矢印で示した排気経路40があり、電子ビーム11が通過する中心部を排気している。排気経路40は、電磁レンズの外周側から順に、排気口41,スペース42,穴32(または切り欠き部33),スペース43,磁極ギャップ44を通る空間からなり、真空排気はその空間の内部を気体分子がイオンポンプ5b側へ移動することにより行われる。これにより、電磁レンズ4が電子銃1の内部に存在しても、電子銃1の中心部を排気できる。また、原理的には、穴32は必ずしも経線方向溝31の位置に形成する必要はないが、複数の穴をボビン円筒面の同じ周方向位置に揃えて形成することにより、真空排気時のコンダクタンスを高めることができる。
【0040】
また、複数のボビンを同心円状に重ねて配置してコイル26を構成する場合を考えると、図8に示す穴32は、複数のボビンを重ねた状態で最外周のボビンから最内周のボビンまでを貫通する貫通孔になっている必要がある。従って、穴32のボビン円筒面の周方向の形成位置は、径の異なる複数のボビン間で同じ必要がある。この点で、穴32は、経線方向溝31上にまとめて形成した方が、複数のボビン間での穴の位置合わせが容易であり、加工もしやすい。
【0041】
図9は、導電線24が巻かれている状態のボビンを側面からみた外観図である。図9に示す図は、見易さを考慮し、穴32が両端に位置する状態から45°回転させた状態のボビンを示している。本実施例では、ボビンに形成された複数の穴32は、ボビンの経線方向に対して各々互い違いになるように配置されており、周方向溝30がボビン22を一周する間に必ず穴32上を通過する。図中に示した矢印はボビン排気経路50を示しており、真空排気時のボビン22の周方向溝30と導電線24の隙間に存在する気体分子の動きを表している。なお、原理的には、穴32の配置は必ずしも互い違いになるように配置する必要はなく、穴に対して周方向溝30が必ず1つ以上通過するよう配置されていればよい。但し、全ての穴に対して均等な数の周方向溝が通過するよう穴を配置する方が形成する穴32の個数が少なくてすみ、従って、ボビンの中心軸方向に対して互い違いになるように穴32を配置するほうが、穴の個数が最も少なくてすむ。
【0042】
図10は、コイル26の断面図の拡大図である。周方向溝30の断面形状は四辺形であり、導電線24の断面形状は円形である。また、ボビン22の材料はセラミックスまたはガラス、導電線24の材料は金属である。導電線24の熱膨張率はボビン22よりも大きいため、ベーキングの加熱時にボビンが破損する恐れがある、そこで、周方向溝30の断面の面積が導電線24の断面積よりも大きくなるように周方向溝を形成する。図10の場合であれば、周方向溝30の断面の四辺形の一辺の長さが導電線24の直径より大きくなるように溝の加工を行う。これにより、熱膨張率の違いを吸収することができボビン22の破損を防ぐことができる。また、周方向溝30と導電線24の間には、間隙51が存在する。ボビン22の周方向溝30と導電線24の隙間に存在する気体分子は、この間隙51を通り穴32より排気され、コイル26の内部を十分に排気することができる。
【0043】
周方向溝30は、断面形状が四辺形以外のV溝,U溝形状となるように形成してもよい。導電線24は、断面形状が円形以外の角線,楕円線などであっても使用可能である。ただし、熱膨張によるボビン22の破損防止と、コイル26内の真空排気の必要性から、周方向溝30の断面積は導電線24の断面積より十分大きい必要がある。
【0044】
図11は、図1に示す電子銃を電磁レンズ4の上面側から見た上面図である。電磁レンズ4の中心は電子ビーム11の光軸に対応する。図1に示すように、電子銃室側面の高さ方向位置が電磁レンズ4に相当する位置には調整ネジ6が設けられており、電子ビーム光軸と電磁レンズ4の中心軸との軸合わせができる。調整ネジ6は、調整ノブ60,ベローズ61からなる。調整ノブ60は、ベローズ61により高真空の電子銃1の内部と隔てられており、電磁レンズ4の位置調整を大気側から行うことができる。調整ノブ60には雄ネジが切られており、電子銃1の鏡筒外壁には雌ネジが切られている。これらの雄ネジと雌ネジがかみ合い挿入量を調整できる。調整ネジ6は4個設けられている。それぞれの調整ネジ6は、電子ビーム光軸を中心とした4回回転対称位置に配置されている。これら4個の調整ネジ6により、X−Y平面上を電子ビーム11と電磁レンズ4の中心を合わせるように調整することができる。押付けバネ7は電磁レンズ4の上部に4箇所ほど設けられており、図1に示すように、筐体12の張り出し部に取り付けられている。
【0045】
図12は、本実施例の電磁レンズを搭載した走査型電子顕微鏡の全体構成を示す図である。図12に示す走査電子顕微鏡は、電子銃部70,鏡体部71,試料室72,電子銃電源73,レンズ制御部74,偏向制御部75,アンプ76,ステージ制御部77,コンピュータ78,表示装置79で構成される。
【0046】
電子ビーム11は、チップ2と引出電極9に印加される引出電圧V1によってチップ2から放出される。電子ビーム11はアノード電極80に印加される加速電圧V0により加速される。引出電圧V1と加速電圧V0は、電子銃電源73で制御される。チップ2から放出された電子ビーム11のビーム径は、電磁レンズ系によって十分に絞られ試料81に到達する。電磁レンズ系はチップ2の後段のレンズ制御部74によって制御される。また、電子ビーム11は、対物レンズ82の上段に配置した偏向制御部75によって制御される偏向コイル83によって、試料81上を二次元的に走査される。
【0047】
電磁レンズ系は、4段の電磁レンズからなり、チップ2側から順に、電子銃部70に設けられた電磁レンズ4および第1電磁レンズ84,鏡体部71に設けられた第2電磁レンズ85,対物レンズ82の順に配置される。本実施例の電磁レンズ4は、チップ2と引出電極9の間に磁界が発生するように配置される。以下に、本実施例の電磁レンズがOFFの場合の電磁レンズ系と電子ビーム11の動作について説明する。
【0048】
第1電磁レンズ84を通過する電子ビーム11は、第1差動排気アパーチャ10aおよび第2差動排気アパーチャ10bを通過した電子である。チップ2から放射される電子の放射角は、0.6rad程であるが、各差動排気アパーチャが数百μm程度の穴であるため、アパーチャを通過する電子は、数mrad程度になる。第1電磁レンズ84を通過した電子ビーム11は、第1電磁レンズ84によりクロスオーバーを第1電磁レンズ84と対物絞り86の間で結ぶように制御される。クロスオーバー位置を制御することによって、対物絞り86上での電子ビーム径を制御することができる。これにより、対物絞り86を通過する電子ビーム量を制御することができる。対物絞り86後段の第2電磁レンズ85は、試料81に照射される際の開き角の制御を行う。対物レンズ82は、電子ビーム11を試料81上で細く絞るように制御される。したがって、試料81に照射される最大電子ビーム量は、数nA程度ある。最大電子ビーム量を増やすためには、第1電磁レンズ84を通過する電子ビーム量を増やす必要がある。
【0049】
試料室72は、内部にステージ87と試料81から構成される。ステージ87は、ステージ制御部77によって制御される5つのモータによりX,Y,Z,Tilt,Rotationの5軸の操作が可能であり、試料81を希望の方向から観察することができる。
【0050】
試料81の電子ビーム照射点からは、0eVより大きく、照射電子ビームのエネルギー以下のエネルギーを持つ信号電子88が放出される。信号電子88は、対物レンズ82上段に配置された偏向器89によって照射電子ビームに軸ずれを起こすことなく検出器90に検出され、アンプ76で増幅される。
【0051】
各制御部,電源,アンプは、装置全体を制御するコンピュータ78によって制御される。増幅された電子信号は表示装置79の画面に試料の拡大像を表示される。
【0052】
試料室72の内部の真空度は、10-4Pa程度であるが、鏡筒内に設けられた複数の差動排気絞りによって、チップ2の周囲の雰囲気は、イオンポンプによって真空排気され1×10-8Pa以下の超高真空に保つようになっている。また、大気圧状態から超高真空を得るために、電子銃を内部ヒータ8aと外部ヒータ8bにより加熱し、鏡体内壁に付着した気体分子の脱ガスを促進し、短時間で超高真空を得ることができる。
【0053】
本実施例の電磁レンズ4を搭載した電磁レンズ系は、電磁レンズ4によりチップ2と引出電極9の間に発生した磁界により、チップ2から放出された電子ビーム11は、差動排気アパーチャ10aを通過前に集束作用を受け、数十mradまでの放射電子が差動排気アパーチャ10aを通過するようになる。これにより、最大電子ビーム量が、数十nAになる。また、電磁レンズ4の強度を変更することによって、電子ビーム量を容易に可変することができる。なお、図12の例では、電子銃部70に本実施例の電磁レンズを配置した構成について示したが、同じ構成の電磁レンズ(導電線を巻き付けたボビンを積層したコイルを持つ電磁レンズ)を第1電磁レンズ84,第2電磁レンズ85あるいは対物レンズ82のいずれに使用しても良いことは言うまでも無い。
【0054】
以上、本実施例の電磁レンズは、予め溝を形成した絶縁体の土台に導電線を巻き付けるため、コイルの層間絶縁を考慮する必要が無い。従って導電線の被覆材やモールドといった樹脂部材を使用する必要が無く、従来の電磁レンズよりも遥かに優れた耐熱性を有する。耐熱性に優れるためベーキングが可能であり、真空容器の中に配置してそのまま動作させることが可能である。また、樹脂を用いないためガスの放出量が少なく、真空特性にも優れる。更に、溝の本数,寸法,ピッチ,断面形状などは任意に設計できる。これは、ボビン単体のみならず入れ子状に重ね合わせる複数ボビン間でも同様であり、例えば、溝の配置を、積層配置するボビン間で少しずつずらすなど、任意のターン数あるいは巻き方のコイルを精度良く実現できる。従って、設計者の意図した特性通りのコイルを製造することが可能であり、製造技術としても非常に優れる。
【0055】
なお、以上の説明では、冷陰極電界放出型電子源電子銃を用いた電子銃および荷電粒子線装置に適用した実施例について説明したが、熱電界放出型電子源電子銃にも適用可能である。また、本実施例の電磁レンズは、電子銃内部の電磁レンズのみならず磁界型集束レンズや対物レンズといった、磁界レンズ一般に対しても適用でき、更には、電子顕微鏡や電子ビーム露光装置といった電子線装置の他、イオン顕微鏡やFIB装置などの荷電粒子線装置一般に適用することが可能である。
【実施例2】
【0056】
実施例1の電磁レンズでは、円筒面の緯線方向に複数の溝を形成したボビンを用いてコイルを構成した。本実施例では、レコードのグルーブのような1本の溝を円筒面に螺旋状に形成したボビンを用いてコイルを構成した電磁レンズについて説明する。
【0057】
図13および図14は、本実施例のボビンを使用したコイルの外観図である。本実施例のコイルで使用されるボビンは、形成される溝の向き(螺旋の向き)に応じて、右ネジボビンと左ネジボビンの2種が存在する。図13に示されるボビンは右ネジボビンであるが、左ネジボビンの外観形状は、周方向溝が左ネジに切られていることを除けば、右ネジボビンと同様である。以下、右ネジボビンに形成された周方向溝を右ネジ溝、左ネジボビンに形成された周方向溝を左ネジ溝と呼ぶことにする。実施例1で説明したボビンと同様、右ネジボビン,左ネジボビンとも、穴と切り欠き部を備えているが、実施例1のボビンのような経線方向溝31は形成されていない。溝が螺旋状に形成されているため、導電線を巻き付ける際に、溝を切り替える必要が無いためである。右ネジボビン,左ネジボビンとも、溝の開始位置および終了位置には切り欠き部が設けられている。穴32と切り欠き部33の位置は、右ネジボビン,左ネジボビンとも円筒面における周方向位置が同じ位置に形成されている。これは、図8で説明したように、複数のボビンを入れ子状に配置してコイルを形成する際、真空排気の必要上、穴はコイル最内周から最外周までの貫通孔になっている必要があるためである。
【0058】
図13は、右ネジボビン100へ導電線24を巻いた状態を示している。導電線24の巻き方は、切り欠き部33から巻き始め、右ネジ溝101に沿って巻いていき、切り欠き部33で巻き終わる。
【0059】
図14は、右ネジボビン100に導電線24を巻いた後に、サイズの一段大きな左ネジボビン102へ導電線24を巻き付け、図13に示した右ネジボビンに重ね合わせた状態を示している。図14中に示す長い矢印は左ネジボビン(図では外側に配置)のネジ溝の向きを示し、短い方の矢印は右ネジボビン(図では内側に配置)のネジ溝の向きを示している。導電線24は、切り欠き部33より引出し左ネジボビン102の切り欠き部33の左ネジ溝103へ巻き付け、左ネジ溝103に沿って巻き進める。以後、ボビンの追加は同様の方法で導電線24の巻き付けを行う。
【0060】
ボビンを重ね合わせる際は、右ネジボビンの次は左ネジボビン,左ネジボビンの次は右ネジボビンと、螺旋溝の向きの異なるボビンを交替して重ね合わせていく。同じ向きのネジ溝同士のボビンを重ね合わせると、コイルに通電した際にそれぞれのボビン同士で磁場を打ち消しあってしまうためである。従って、偶数個のボビンを用いてコイルを構成する場合には、最内周のボビンのネジ溝の向きと最外周のボビンのネジ溝の向きは逆になる。例えば、最内周のボビンが右ネジボビンであれば、最外周のボビンが左ネジボビンである。一方、奇数個のボビンを用いてコイルを構成する場合、最内周のボビンのネジ溝の向きと最外周のボビンのネジ溝の向きは同じになる。例えば、最内周のボビンが右ネジボビンであれば、最外周のボビンも右ネジボビンである。同様に、最内周のボビンが左ネジボビンであれば、最外周のボビンは左ネジボビンである。
【0061】
本実施例に示したネジ溝型のボビンを用いた電磁コイルは、実施例1に示した巻き方と比較して、一段一段溝を替える必要がないため巻き付け作業が容易であるという利点がある。電磁コイルは通常、700〜900ターンほど巻かれることが多く、切り替えの必要が無い点は、コイル製造の生産性を高める上で有利である。また、本実施例の電磁コイルは、導電線の巻き付け位置が常に溝により固定されているため、実施例1の巻き方よりもより緊密に導電線をボビンに巻き付けることができる。
【0062】
なお、本実施例の電子銃が、電子銃内部の電磁レンズのみならず磁界型集束レンズや対物レンズといった磁界レンズ一般に対しても適用できること、陰極電界放出型電子銃,熱電界放出型電子銃の種類を問わず適用できること、更に、イオン顕微鏡やFIB装置といった荷電粒子線装置一般に適用できることは、実施例1と同様である。
【実施例3】
【0063】
本実施例では、リング状磁路部材の内部に配置されるコイルの高さ方向の位置あるいはコイルの端部の配置位置を磁路部材の磁極ギャップ位置に合わせて設定した電磁レンズの実施例について説明する。
【0064】
図15に示す電磁レンズは、コイルの高さ(ボビンの軸方向の長さ)を調整して、コイル26の上端部の位置がリング状磁路部材の磁極ギャップ44よりも下に位置するように構成した電磁レンズの構成例である。同時に、下磁路部材21の外周側壁面には、磁極ギャップ44とほぼ同じ高さ位置に排気口41が設けられている。これにより、リング状磁路部材の内部には真空排気空間104が形成され、図中の矢印で示すように、気体分子が電磁レンズの内部を容易に移動することができる。図示されるように、真空排気空間104上には、コイル26が存在しないため、実施例1,2に示した電磁レンズと比較して真空排気時の排気コンダクタンスが向上する。
【0065】
図16に示す電磁レンズは、リング状磁路部材の磁極ギャップ44位置に合わせてコイルを分割し、リング状磁路部材内部の空間内の上下方向に2つのコイルを配置した電磁レンズの構成例である。
【0066】
図16に示す電磁レンズにおいては、磁極ギャップ44は、高さ方向位置がリング状磁路部材の内周側壁面のおよそ中央部付近となるよう形成されており、外周側壁面の上記磁極ギャップとの対向位置に排気口41が形成されている。排気口41は、リング状磁路部材の外周側壁面に8箇所、8回回転対象となる位置に設けられている。リング状磁路部材内部の上側の凹部には第1コイル161が設置され、下側の凹部には第2コイル162が設置されている。第1コイル161,第2コイル162の高さは、リング状磁路部材内部の凹部の高さよりも小さくなるよう設計されている。
【0067】
また、第1コイル161と第2コイル162の間には、スペーサ105が設けられ、第1コイル161を高さ方向に保持している。
【0068】
図17は、図16に示す電磁レンズを排気口41の高さ方向の中心位置で切った断面図である。スペーサ105は、排気口41を塞がない位置に配置される。これにより、十分な真空排気空間を得ることができる。これにより、リング状磁路部材の内部に、コイルの存在しない真空排気空間104が形成され、図15に示す電磁レンズと同様、実施例1,2と比較して排気コンダクタンスの良い電磁レンズが実現できる。
【0069】
以上のように、本実施例の電磁レンズを用いることにより、実施例1あるいは2と比較して、内部を効率良く排気することが可能な電子銃を実現することができる。
【0070】
なお、本実施例の電子レンズが、陰極電界放出型電子銃,熱電界放出型電子銃,磁界レンズ一般、あるいはイオン顕微鏡やFIB装置といった荷電粒子線装置一般に適用できることは、実施例1と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上説明した本発明は、電子顕微鏡,電子描画装置,集束イオンビーム装置等の荷電粒子装置、特に電子銃あるいはイオン銃で高温および高真空になる電磁レンズに有用である。
【符号の説明】
【0072】
1 電子銃
2 チップ
3,23 絶縁碍子
4 電磁レンズ
5a イオンポンプ(1)
5b イオンポンプ(2)
6 調整ネジ
7 押付けバネ
8a 内部ヒータ
8b 外部ヒータ
9 引出電極
10a 差動排気アパーチャ(1)
10b 差動排気アパーチャ(2)
11 電子ビーム
20 上磁路部材
21 下磁路部材
22 ボビン
24 導電線
25 固定ネジ
26 コイル
30 ボビンの軸に対して垂直な溝
31 ボビンの軸に対して平行な溝
32 穴
33 切り欠き部
40 排気経路
41 排気口
42,43 スペース
44 磁極ギャップ
50 ボビン排気経路
51 間隙
60 調整ノブ
61 ベローズ
62 バネ
63 押付け板
70 電子銃部
71 鏡体部
72 試料室
73 電子銃電源
74 レンズ制御部
75 偏向制御部
76 アンプ
77 ステージ制御部
78 コンピュータ
79 表示装置
80 アノード電極
81 試料
82 対物レンズ
83 偏向コイル
84 第1電磁レンズ
85 第2電磁レンズ
86 対物絞り
87 ステージ
88 信号電子
89 偏向器
90 検出器
100 右ネジボビン
101 右ネジ溝
102 左ネジボビン
103 左ネジ溝
104 真空排気空間
105 スペーサ
161 第1コイル
162 第2コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子を発生させる電子源と、
当該電子源から前記電子を引き出すための電位差を前記電子源との間に形成する電位が印加される引出電極と、
当該引出電極を加熱する内部ヒータと、
励磁用のコイルおよび当該コイルを内部に格納するリング状磁路部材を備える電磁レンズと、
前記電子源,引出電極,内部ヒータおよび電子レンズを格納する電子銃室とを備え、
前記コイルは、
円筒面の周方向に溝が形成された円筒状絶縁部材と、
当該溝に沿って巻き付けられた導電線とを含んで構成されることを特徴とする磁界重畳型電子銃。
【請求項2】
請求項1に記載の磁界重畳型電子銃において、
前記コイルは、前記導電線が巻き付けられた、互いに半径の異なる複数の前記円筒状部材が同心円状に配置されて構成されていることを特徴とする磁界重畳型電子銃。
【請求項3】
請求項1に記載の磁界重畳型電子銃において、
前記円筒状絶縁部材は、焼結セラミックスまたはガラスであることを特徴とする磁界重畳型電子銃。
【請求項4】
請求項1に記載の磁界重畳型電子銃において、
前記真空容器に対して大気側に配置された調整ネジを備え、
当該調整ネジは、前記電子レンズに対してベローズを介して接触するように構成されたことを特徴とする磁界重畳型電子銃。
【請求項5】
請求項1に記載の磁界重畳型電子銃において、
前記コイルが真空中に配置されたことを特徴とする磁界重畳型電子銃。
【請求項6】
荷電粒子電子を発生させ、一次荷電粒子ビームとして放出する荷電粒子銃と、
前記荷電粒子銃から放出された荷電粒子ビームを収束させる機能を備えた荷電粒子光学系とを備えた荷電粒子線装置において、
前記荷電粒子銃あるいは荷電粒子光学系は、励磁用のコイルおよび当該コイルを内部に格納するリング状磁路部材を備える電磁レンズを備え、
前記コイルは、
円筒面の周方向に溝が形成された円筒状絶縁部材と、
当該溝に沿って巻き付けられた導電線とを備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項7】
請求項6に記載の磁界重畳型電子銃において、
前記コイルは、前記導電線が巻き付けられた、互いに半径の異なる複数の前記円筒状部材が同心円状に配置されて構成されていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項8】
請求項6に記載の荷電粒子線装置において、
前記円筒状絶縁部材は、円筒面の経線方向に形成された少なくとも一つ以上の溝を備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項9】
請求項6に記載の荷電粒子線装置において、
前記円筒状絶縁部材は、円筒面に設けられた貫通孔を備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項10】
請求項6に記載の荷電粒子線装置において、
前記円筒状絶縁部材は、円筒面の経線方向に形成された複数の溝と、
当該複数の溝に形成された複数の貫通孔とを備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項11】
請求項6に記載の荷電粒子線装置において、
前記円筒状絶縁部材の端部に設けられた切り欠き部を備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項12】
請求項10に記載の荷電粒子線装置において、
前記複数の溝に形成された貫通孔は、隣接する経線方向の溝の貫通孔に対し、軸方向の位置が互い違いになるように配置されていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項13】
請求項6に記載の荷電粒子線装置において、
前記溝は、前記円筒状絶縁部材の円筒面に螺旋状に形成されたネジ状溝であることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項14】
請求項13に記載の荷電粒子線装置において、
前記円筒状絶縁部材の端部に設けられた切り欠き部を備え
前記ネジ状溝の始点あるいは終点が前記切り欠き部の形成位置であることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項15】
請求項13に記載の荷電粒子線装置において、
前記円筒状絶縁部材は、前記螺旋の向きが互いに異なる右ネジ型円筒状絶縁部材と左ネジ型円筒状絶縁部材とを含み、
前記コイルは、互いに直径の異なる右ネジ型円筒状絶縁部材と左ネジ型円筒状絶縁部材とが交互に同心円状に配置されて構成されたことを特徴とする荷電粒子線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−94462(P2012−94462A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242952(P2010−242952)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】