電磁接触器
【課題】複数の永久磁石を使用することなく1つの永久磁石で必要な磁力を確保するとともに、永久磁石の磁力を効率的に使用することができる電磁接触器を提供する。
【解決手段】所定間隔を保って配置された一対の固定接触子111,112及び当該一対の固定接触子に対して接離自在に配設された可動接触子130と、前記可動接触子130を駆動する電磁石ユニット200とを備えている。電磁石ユニット200は、プランジャ駆動部を囲む磁気ヨーク201,210と、先端が前記磁気ヨークに形成された開口を通じて突出され且つ復帰スプリングで付勢された可動プランジャ215と、該可動プランジャ215の突出端側に形成された周鍔部216を囲むように固定配置された前記可動プランジャ215の可動方向に着磁された環状永久磁石220とを備えている。
【解決手段】所定間隔を保って配置された一対の固定接触子111,112及び当該一対の固定接触子に対して接離自在に配設された可動接触子130と、前記可動接触子130を駆動する電磁石ユニット200とを備えている。電磁石ユニット200は、プランジャ駆動部を囲む磁気ヨーク201,210と、先端が前記磁気ヨークに形成された開口を通じて突出され且つ復帰スプリングで付勢された可動プランジャ215と、該可動プランジャ215の突出端側に形成された周鍔部216を囲むように固定配置された前記可動プランジャ215の可動方向に着磁された環状永久磁石220とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定接触子及びこれに接離可能な可動接触子と、可動接触子を駆動する電磁石ユニットとを備えた電磁接触器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電磁接触器では、固定接触子に対して接離可能に配置された可動接触子を駆動する駆動装置として、永久磁石の吸引力と電磁コイルによる吸引力との合成吸引力により、可動鉄心部分をばねの復帰力に抗して駆動する有極電磁石装置であって、コの字形の固定鉄心の2つの中央片にそれぞれ永久磁石の一方の磁極面を当接させ、他方の磁極面を固定鉄心内で電磁コイルの外側に配置した一対のLの字形の磁極板の中央片に当接させるようにした有極電磁石装置が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−91901号公報
【特許文献2】米国特許第5959519号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1及び2に記載された従来例にあっては、電磁コイルの外側に一対のLの字形の磁極板を配置し、これら磁極板の電磁コイルと対向する板部と固定鉄心との間にそれぞれ永久磁石を左右対象に配置するようにしている。したがって、左右2つの永久磁石を必要とするとともに、永久磁石と可動鉄心の吸引力作用部との距離が長く、永久磁石の磁力を効率的に使用することができないという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、複数の永久磁石を使用することなく1つの永久磁石で必要な磁力を確保するとともに、永久磁石の磁力を効率的に使用することができる電磁接触器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一の形態に係る電磁接触器は、所定間隔を保って配置された一対の固定接触子及び当該一対の固定接触子に対して接離自在に配設された可動接触子と、前記可動接触子を駆動する電磁石ユニットとを備えている。前記電磁石ユニットは、プランジャ駆動部を囲む磁気ヨークと、先端が前記磁気ヨークに形成された開口を通じて突出され且つ復帰スプリングで付勢された可動プランジャと、該可動プランジャの突出端側に形成された周鍔部を囲むように固定配置された前記可動プランジャの可動方向に着磁された環状永久磁石とを備えている。
【0006】
この構成によると、可動プランジャの周鍔部を囲むように永久磁石を設けるようにしているので、環状永久磁石の磁力を漏れなく可動プランジャの周鍔部に作用させることができ、環状永久磁石の磁力を効率的に使用することができる。また、可動プランジャに可動接触子を釈放方向に可動させる吸引力を作用させて、復帰スプリングの付勢力を減少させることができる。このため、励磁コイルの起磁力を減少させて電磁石ユニットを小型化することができる。また、釈放状態で、永久磁石の磁力によって可動プランジャの周鍔部を吸引することができ、釈放時に高い耐誤動作性能を確保することができる。
【0007】
また、本発明の他の形態に係る電磁接触器は、前記磁気ヨークが、上部を開放し励磁コイルを巻装し且つ中央部に前記可動プランジャを可動可能に配置したスプールを支持する断面U字状の磁気ヨークと、該磁気ヨークの上部開放部に橋架された上部磁気ヨークとで構成されている。そして、前記上部磁気ヨークに前記可動プランジャを挿通する開口が形成され、該開口の周囲に前記環状永久磁石が配置されている。
この構成によると、釈放状態で可動プランジャを環状永久磁石の磁力で吸引し、投入時にはU字状の磁気ヨーク及び上部磁気ヨークと可動プランジャとで磁路を形成することができる。
【0008】
また、本発明の他の形態に係る電磁接触器は、前記環状永久磁石が、前記上部磁気ヨークの外面における開口の周囲に配置され、前記上部磁気ヨークとは反対側に前記可動プランジャの前記周鍔部の前記上部磁気ヨークとは反対側に対向する補助ヨークを備えている。
この構成によると、環状永久磁石の磁力が補助ヨークを介して直接可動プランジャの周鍔部に作用するので、漏れ磁束を抑制してより効率よく環状永久磁石の磁力を使用することができる。
【0009】
また、本発明の他の形態に係る電磁接触器は、前記永久磁石の厚みが前記可動プランジャの周鍔部の厚みと当該可動プランジャのストロークとの和に設定されている。
この構成によると、永久磁石の厚みで可動プランジャのストロークを決定することができ、可動プランジャのストロークに影響する累積の部品点数や形状交差を最小限とすることができる。また、環状永久磁石の厚みと可動プランジャの周鍔部の厚みのみで可動プランジャのストロークを決定することができ、ストロークのバラツキを極小化することができる。
【0010】
また、本発明の他の形態に係る電磁接触器は、少なくとも前記固定接触子及び可動接触子と、前記可動プランジャとがガス封入容器内に配置されている。
この構成によると、大電流の通電・遮断が可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、1つの環状永久磁石で可動プランジャの周鍔部を吸引することができ、部品点数を減少させてコストダウンを図ることができる。
また、環状永久磁石を可動プランジャの周鍔部を囲むように配置するので、吸引力を作用させる位置の近傍に環状永久磁石を配置することができ、環状永久磁石の磁力を効率的に使用することができる。
【0012】
さらに、環状永久磁石の吸引力を釈放状態の可動プランジャを吸引するように作用させることができ、この分可動プランジャを釈放状態に復帰させる復帰スプリングの付勢力を抑制することができる。このため、励磁コイルの起磁力を減少させて、電磁石ユニットの高さを低くすることができ、電磁接触器全体を小型化することができる。これと同時に、釈放時に永久磁石で可動プランジャを吸引して振動や衝撃等によって可動接触子が一対の固定接触子に誤接触することを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る電磁接触器の一実施形態を示す断面図である。
【図2】接点収納ケースの分解斜視図である。
【図3】接点装置の絶縁カバーを示す図であって、(a)は斜視図、(b)は装着前の平面図、(c)は装着後の平面図である。
【図4】絶縁カバーの装着方法を示す説明図である。
【図5】図1のA−A線上の断面図である。
【図6】本発明によるアーク消弧用永久磁石によるアーク消弧の説明に供する説明図である。
【図7】アーク消弧用永久磁石を絶縁ケースの外側に配置した場合のアーク消弧の説明に供する説明図である。
【図8】永久磁石と可動プランジャとの位置関係を示す拡大断面図である。
【図9】永久磁石による可動プランジャ吸引動作を説明する図であって、(a)は釈放状態、(b)は投入状態を示す部分断面図である。
【図10】本発明の接点装置における消弧室の他の例を示す断面図である。
【図11】本発明の接点装置における接点機構の変形例を示す図であって、(a)は断面図、(b)は斜視図である。
【図12】本発明の接点装置における接点機構の他の変形例を示す図であって、(a)は断面図、(b)は斜視図である。
【図13】電磁石ユニットの円筒状補助ヨークの変形例を示す図であって、(a)は断面図、(b)は分解斜視図である。
【図14】電磁石ユニットの円筒状補助ヨークの変形例を示す図であって、(a)は断面図、(b)は分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る電磁開閉器の一例を示す断面図、図2は消弧室の分解斜視図である。この図1及び図2において、10は電磁接触器であり、この電磁接触器10は接点機構を配置した接点装置100と、この接点装置100を駆動する電磁石ユニット200とで構成されている。
接点装置100は、図1及び図2から明らかなように、接点機構101を収納する消弧室102を有する。この消弧室102は、図2(a)に示すように、金属製の下端部に外方と突出するフランジ部103を有する金属角筒体104と、この金属角筒体104の上端を閉塞する平板状のセラミック絶縁基板で構成される固定接点支持絶縁基板105とを備えている。
【0015】
金属角筒体104は、そのフランジ部103が後述する電磁石ユニット200の上部磁気ヨーク210にシール接合されて固定されている。
また、固定接点支持絶縁基板105には、中央部に後述する一対の固定接触子111及び112を挿通する貫通孔106及び107が所定間隔を保って形成されている。この固定接点支持絶縁基板105の上面側における貫通孔106及び107の周囲及び下面側における角筒体104に接触する位置にメタライズ処理が施されている。このメタライズ処理を行うには、平面上に複数の固定接点支持絶縁基板105を縦横に配列した状態で、貫通孔106及び107の周囲及び角筒体104に接触する位置に銅箔を形成する。
【0016】
接点機構101は、図1に示すように、消弧室102の固定接点支持絶縁基板105の貫通孔106及び107に挿通されて固定された一対の固定接触子111及び112を備えている。これら固定接触子111及び112のそれぞれは、固定接点支持絶縁基板105の貫通孔106及び107に挿通される上端に外方に突出するフランジ部を有する支持導体部114と、この支持導体部114に連結されて固定接点支持絶縁基板105の下面側に配設され内方側を開放したC字状部115とを備えている。
【0017】
C字状部115は、固定接点支持絶縁基板105の下面に沿って外側に延長する上板部116とこの上板部116の外側端部から下方に延長する中間板部117と、この中間板部117の下端側から上板部116と平行に内方側すなわち固定接触子111及び112の対面方向に延長する下板部118とで中間板部117及び下板部118で形成されるL字状に上板部116を加えたC字状に形成されている。
【0018】
ここで、支持導体部114とC字状部115とは、支持導体部114の下端面に突出形成されたピン114aをC字状部115の上板部116に形成された貫通孔120内に挿通した状態で例えばろう付けによって固定されている。なお、支持導体部114及びC字状部115の固定は、ろう付けに限らず、ピン114aを貫通孔120に嵌合させたり、ピン114aに雄ねじを形成し、貫通孔120に雌ねじを形成して両者を螺合させたりしてもよい。
【0019】
そして、固定接触子111及び112のC字状部115にそれぞれ、アークの発生を規制する合成樹脂材製の絶縁カバー121が装着されている。この絶縁カバー121は、図3(a)及び(b)に示すように、C字状部115の上板部116及び中間板部117の内周面を被覆するものである。
絶縁カバー121は、上板部116及び中間板部117の内周面に沿うL字状板部122と、このL字状板部122の前後端部からそれぞれ上方及び外方に延長してC字状部115の上板部116及び中間板部117の側面を覆う側板部123及び124と、これら側板部123及び124の上端から内方側に形成された固定接触子111及び112の支持導体部114に形成された小径部114bに係合する嵌合部125とを備えている。
【0020】
したがって、絶縁カバー121が、図3(a)及び(b)に示すように、固定接触子111及び112の支持導体部114の小径部114bに嵌合部125を対向させた状態とし、次いで、図3(c)に示すように、絶縁カバー121を押し込むことにより、嵌合部125を支持導体部114の小径部114bに係合させる。
実際には、図4(a)に示すように、固定接触子111及び112を取付けた後の接点収納ケース102を、固定接点支持絶縁基板105を下側とした状態で、上方の開口部から絶縁カバー121を図3(a)〜(c)とは上下逆にした状態で、固定接触子111及び112間に挿入する。
【0021】
次いで、図4(b)に示すように、嵌合部125を固定接点支持絶縁基板105に接触させた状態で、図4(c)に示すように、絶縁カバー121を外側に押し込むことにより、嵌合部125を固定接触子111及び112の支持導体部114の小径部114bに嵌合させて固定する。
このように、固定接触子111及び112のC字状部115に絶縁カバー121を装着することにより、このC字状部115の内周面では下板部118の上面側のみが露出されて接点部118aとされている。
【0022】
そして、固定接触子111及び112のC字状部115内に両端部を配置するように可動接触子130が配設されている。この可動接触子130は後述する電磁石ユニット200の可動プランジャ215に固定された連結軸131に支持されている。この可動接触子130は、図1及び図5に示すように、中央部の連結軸131の近傍が下方に突出する凹部132が形成され、この凹部132に連結軸131を挿通する貫通孔133が形成されている。
【0023】
連結軸131は、上端に外方に突出するフランジ部131aが形成されている。この連結軸131に下端側から接触スプリング134に挿通し、次いで可動接触子130の貫通孔133を挿通して、接触スプリング134の上端をフランジ部131aに当接させこの接触スプリング134で所定の付勢力を得るように可動接触子130を例えばCリング135によって位置決めする。
【0024】
この可動接触子130は、釈放状態で、両端の接点部と固定接触子111及び112のC字状部115の下板部118の接点部118aとが所定間隔を保って離間した状態となる。また、可動接触子130は、投入位置で、両端の接点部が固定接触子111及び112のC字状部115の下板部118の接点部118aに、接触スプリング134による所定の接触圧で接触するように設定されている。
【0025】
さらに、接点収納ケース102の角筒体104の内周面には、例えば合成樹脂製の絶縁筒体140が配設され、この絶縁筒体140の可動接触子130の側面に対向する位置に磁石収納ポケット141及び142が形成されている。この磁石収納ポッケと141及び142には、アーク消弧用永久磁石143及び144が挿通されて固定されている。
【0026】
このアーク消弧用永久磁石143及び144は、厚み方向に互いの対向面が同極例えばN極となるように着磁されている。また、アーク消弧用永久磁石143及び144は、左右方向の両端部がそれぞれ、図5に示すように、固定接触子111及び112の接点部118aと可動接触子130の接点部との対向位置より僅かに内側となるよう設定されている。そして、磁石収納ポケット141及び142の左右方向の外側にそれぞれアーク消弧空間145及び146が形成されている。
【0027】
このように、アーク消弧用永久磁石143及び144を絶縁筒体140の内周面側に配置することにより、アーク消弧用永久磁石143及び144を可動接触子130に近接させることができる。このため、両アーク消弧用永久磁石143及び144のN極側から出る磁束φが、図6(a)に示すように、固定接触子111及び112の接点部118aと可動接触子130の接点部130aとの対向部を左右方向に内側から外側に大きな磁束密度で横切ることになる。
【0028】
したがって、固定接触子111を電流供給源に接続し、固定接触子112を負荷側に接続するものとすると、投入状態の電流の方向は、図6(b)に示すように、固定接触子111から可動接触子130を通じて固定接触子112に流れることになる。そして、投入状態から可動接触子130を固定接触子111及び112から上方に離間させて釈放状態とする場合に、固定接触子111及び112の接点部118aと可動接触子130の接点部130aとの間にアークが発生する。
【0029】
このアークは、アーク消弧用永久磁石143及び144からの磁束φにより、アーク消弧用永久磁石143側のアーク消弧空間145側に引き伸ばされる。このとき、アーク消弧空間145及び146はアーク消弧用永久磁石143及び144の厚み分広く形成されているので、長いアーク長をとることができ、アークを確実に消弧することができる。
因みに、アーク消弧用永久磁石143及び144を、図7(a)〜(c)に示すように、絶縁筒体140の外側に配置する場合には、固定接触子111及び112の接点部118aと可動接触子130の接点部130aとの対向位置までの距離が長くなり、本実施形態と同一の永久磁石を適用した場合に、アークを横切る磁束密度が少なくなる。
【0030】
このため、投入状態から釈放状態に移行する際に発生するアークに作用するローレンツ力が小さくなり、アークを十分に引き伸ばすことができなる。アークの消弧性能を向上させるために、アーク消弧用永久磁石143及び144の着磁量を増加させる必要がある。
しかも、アーク消弧用永久磁石143及び144を固定接触子111及び112と可動接触子130の接点部との距離を短くするためには絶縁筒体140の前後方向の奥行きを狭くする必要があり、アークを消弧するための十分なアーク消弧空間を確保することができないという問題点がある。
【0031】
しかしながら、上記実施形態によると、アーク消弧用永久磁石143及び144を絶縁筒体140の内側に配置するので、上述した絶縁筒体140の外側にアーク消弧用永久磁石143及び144を配置する場合の問題点を全て解決することができる。
電磁石ユニット200は、図1に示すように、側面から見て扁平なU字形状の磁気ヨーク201を有し、この磁気ヨーク201の底板部202の中央部に円筒状補助ヨーク203が固定されている。この円筒状補助ヨーク203の外側にプランジャ駆動部としてのスプール204が配置されている。
【0032】
このスプール204は、円筒状補助ヨーク203を挿通する中央円筒部205と、この中央円筒部205の下端部から半径方向外方に突出する下フランジ部206と、中央円筒部205の上端より僅かに下側から半径方向外方に突出する上フランジ部207とで構成されている。そして、中央円筒部205、下フランジ部206及び上フランジ部207で構成される収納空間に励磁コイル208が巻装されている。
【0033】
そして、磁気ヨーク201の開放端となる上端間に上部磁気ヨーク210が固定されている。この上部磁気ヨーク210は、中央部にスプール204の中央円筒部205に対向する貫通孔210aが形成されている。
そして、スプール204の中央円筒部205内に、底部と磁気ヨーク201の底板部202との間に復帰スプリング214を配設した可動プランジャ215が上下に摺動可能に配設されている。この可動プランジャ215には、上部磁気ヨーク210から上方に突出する上端部に半径方向外方に突出する周鍔部216が形成されている。
【0034】
また、上部磁気ヨーク210の上面に、環状に形成された永久磁石220が可動プランジャ215の周鍔部216を囲むように固定されている。この永久磁石220は周鍔部216を囲む貫通孔221を有する。この永久磁石220は上下方向すなわち厚み方向に上端側を例えばN極とし、下端側をS極とするように着磁されている。なお、永久磁石220の貫通孔221の形状は周鍔部216の形状に合わせた形状とし、外周面の形状は円形、方形等の任意の形状とすることができる。
【0035】
そして、永久磁石220の上端面に、永久磁石220と同一外形で可動プランジャ215の周鍔部216の外径より小さい内径の貫通孔224を有する補助ヨーク225が固定されている。この補助ヨーク225の下面に可動プランジャ215の周鍔部216が対向されている。
ここで、永久磁石220の厚みTは、図8に示すように、可動プランジャ215のストロークLと可動プランジャ215の周鍔部216の厚みtとを加算した値(T=L+t)に設定されている。したがって、可動プランジャ215のストロークLが永久磁石220の厚みTで規制されている。
【0036】
このため、可動プランジャ215のストロークに影響する累積の部品数や形状公差を最小限とすることができる。また、可動プランジャ215のストロークLを永久磁石220の厚みTと周鍔部216の厚みtのみで決定することができ、ストロークLのバラツキを最小化することができる。特に、小型の電磁接触器でストロークが小さい場合により効果的である。
【0037】
また、永久磁石220を環状に形成したので、特許文献1及び2に記載されているように永久磁石を左右対象に2つ配置する場合に比較して、部品点数が少なくなってコストダウンが図れる。また、永久磁石220に成形した貫通孔221の内周面近傍に可動プランジャ215の周鍔部216が配置されるため、永久磁石220で生じる磁束を通す閉回路に無駄がなく、漏れ磁束が少なくなり、永久磁石の磁力を効率的に使用することができる。
【0038】
また、可動プランジャ215の上端面には可動接触子130を支持する連結軸131が螺着されている。
そして、釈放状態では、可動プランジャ215が復帰スプリング214によって上方に付勢されて、周鍔部216の上面が補助ヨーク225の下面に当接する釈放位置となる。この状態で、可動接触子130の接点部130aが固定接触子111及び112の接点部118aから上方に離間して、電流遮断状態となっている。
この釈放状態では、可動プランジャ215の周鍔部216が永久磁石220の磁力によって補助ヨーク225に吸引されており、復帰スプリング214の付勢力と相まって可動プランジャ215が外部からの振動や衝撃等によって不用意に下方に移動することなく補助ヨーク225に当接された状態が確保される。
【0039】
また、釈放状態では、図9(a)に示すように、可動プランジャ215の周鍔部216の下面と上部磁気ヨーク210の上面との間のギャップg1、可動プランジャ215の外周面と上部磁気ヨーク210の貫通孔210aとの間のギャップg2、可動プランジャ215の外周面と円筒状補助ヨーク203との間のギャップg3、可動プランジャ215の下面と磁気ヨーク201の底板部202の上面とのギャップg4と関係が以下のように設定されている。
g1<g2 且つ g3<g4
【0040】
このため、釈放状態で、励磁コイル208を励磁したときに、図9(a)に示すように、可動プランジャ215から周鍔部216を通り、周鍔部216と上部磁気ヨーク210との間のギャップg1を通って上部磁気ヨーク210に達する。この上部磁気ヨーク210からU字状の磁気ヨーク201を通って円筒状補助ヨーク203を通って可動プランジャ215に至る閉磁路が形成される。
このため、可動プランジャ215の周鍔部216の下面と上部磁気ヨーク210の上面との間のギャップg1の磁束密度を高めることができ、より大きな吸引力を発生して、可動プランジャ215を復帰スプリング214の付勢力及び永久磁石220の吸引力に抗して下降させる。
【0041】
したがって、この可動プランジャ215に連結軸131を介して連結されている可動接触子130の接点部130aを固定接触子111及び112の接点部118aに接触されて固定接触子111から可動接触子130を通じて固定接触子112に向かう電流路が形成されて投入状態となる。
この投入状態となると、図9(b)に示すように、可動プランジャ215の下端面がU字状の磁気ヨーク201の底板部202に近づくので、前述した各ギャップg1〜g4が下記のようになる。
g1<g2 且つ g3>g4
【0042】
このため、励磁コイル208によって発生される磁束が、図9(b)に示すように、可動プランジャ215から周鍔部216を通って直接上部磁気ヨーク210に入り、この上部磁気ヨーク210からU字状の磁気ヨーク201を通り、その底板部202から直接可動プランジャ215に戻る閉磁路が形成される。
このため、ギャップg1及びギャップg4で大きな吸引力が作用して可動プランジャ215が下降位置に保持される。このため、可動プランジャ215に連結軸213を介して連結された可動接触子130の接点部130aが固定接触子111及び112の接点部118aへの接触状態が継続される。
【0043】
そして、可動プランジャ215が非磁性体製で有底筒状に形成されたキャップ230で覆われ、このキャップ230の開放端に半径方向外方に延長して形成されたフランジ部231が上部磁気ヨーク210の下面にシール接合されている。これによって、消弧室102及びキャップ230が上部磁気ヨーク210の貫通孔210aを介して連通される密封容器が形成されている。そして、消弧室102及びキャップ230で形成される密封容器内に水素ガス、窒素ガス、水素及び窒素の混合ガス、空気、SF6等のガスが封入されている。
【0044】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、固定接触子111が例えば大電流を供給する電力供給源に接続され、固定接触子112が負荷に接続されているものとする。
この状態で、電磁石ユニット200における励磁コイル208が非励磁状態にあって、電磁石ユニット200で可動プランジャ215を下降させる励磁力を発生していない釈放状態にあるものとする。この釈放状態では、可動プランジャ215が復帰スプリング214によって、上部磁気ヨーク210から離れる上方向に付勢される。
【0045】
これと同時に、永久磁石220の磁力による吸引力が補助ヨーク225に作用されて、可動プランジャ215の周鍔部216が吸引される。このため、可動プランジャ215の周鍔部216の上面が補助ヨーク225の下面に当接している。
このため、可動プランジャ215に連結軸131を介して連結されている接点機構101の可動接触子130の接点部130aが固定接触子111及び112の接点部118aから上方に所定距離だけ離間している。このため、固定接触子111及び112間の電流路が遮断状態にあり、接点機構101が開極状態となっている。
【0046】
このように、釈放状態では、可動プランジャ215に復帰スプリング214による付勢力と環状永久磁石220による吸引力との双方が作用しているので、可動プランジャ215が外部からの振動や衝撃等によって不用意に下降することがなく、誤動作を確実に防止することができる。
この釈放状態から、電磁石ユニット200の励磁コイル208を励磁すると、この電磁石ユニット200で励磁力を発生させて、可動プランジャ215を復帰スプリング214の付勢力及び環状永久磁石220の吸引力に抗して下方に押し下げる。
【0047】
このとき、図9(a)に示すように、可動プランジャ215の底面と磁気ヨーク201の底板部202との間のギャップg4が大きく、このギャップg4を通る磁束は殆どない。しかしながら、可動プランジャ215の下部外周面には円筒状補助ヨーク203が対向しており、この円筒状補助ヨーク203との間のギャップg3がギャップg4に比較して小さく設定されている。
【0048】
このため、可動プランジャ215及び磁気ヨーク201の底板部202間には、円筒状ヨーク203を通じて磁路が形成される。さらに、可動プランジャ215の外周面と上部磁気ヨーク210の貫通孔210aの内周面との間ギャップg2に比較して可動プランジャ215の周鍔部216の下面と上部磁気ヨーク210との間のギャップg1が小さく設定されている。このため、可動プランジャ215の周鍔部216の下面と上部磁気ヨーク210の上面との間の磁束密度が大きくなり、可動プランジャ215の周鍔部216を吸引する大きな吸引力が作用する。
【0049】
したがって、可動プランジャ215が復帰スプリング214の付勢力及び環状永久磁石220の吸引力に抗して速やかに下降する。これにより、可動プランジャ215の下降が、図9(b)に示すように、周鍔部216の下面が上部磁気ヨーク210の上面に当接することにより停止される。
このように、可動プランジャ215が下降することにより、可動プランジャ215に連結軸131を介して連結されている可動接触子130も下降し、その接点部130aが固定接触子111及び112の接点部118aに接触スプリング13の接触圧で接触する。
【0050】
このため、外部電力供給源の大電流が固定接触子111、可動接触子130、及び固定接触子112を通じて負荷に供給される閉極状態となる。
このとき、固定接触子111及び112と可動接触子130との間に可動接触子130を開極させる方向の電磁反発力が発生する。
しかしながら、固定接触子111及び112は、図1に示すように、上板部116、中間板部117及び下板部118によってC字状部115が形成されているので、上板部116及び下板部118とこれに対向する可動接触子130とで逆方向の電流が流れることになる。
【0051】
このため、固定接触子111及び112の下板部118が形成する磁界と可動接触子130に流れる電流の関係からフレミング左手の法則により可動接触子130を固定接触子111及び112の接点部118aに押し付けるローレンツ力を発生することができる。
このローレンツ力によって、固定接触子111及び112の接点部118aと可動接触子130の接点部130a間に発生する開極方向の電磁反発力に抗することが可能となり、可動接触子130の接点部130aが開極することを確実に防止することができる。
【0052】
このため、可動接触子130を支持する接触スプリング134の押圧力を小さくすることができ、これに応じて励磁コイル208で発生する推力も小さくすることができ、電磁接触器全体の構成を小型化することができる。
この接点機構101の閉極状態から、負荷への電流供給を遮断する場合には、電磁石ユニット200の励磁コイル208の励磁を停止する。
これによって、電磁石ユニット200で可動プランジャ215を下方に移動させる励磁力がなくなることにより、可動プランジャ215が復帰スプリング214の付勢力によって上昇し、周鍔部216が補助ヨーク225に近づくに従って環状永久磁石220の吸引力が増加する。
【0053】
この可動プランジャ215が上昇することにより、連結軸131を介して連結された可動接触子130が上昇する。これに応じて接触スプリング134で接触圧を与えている間は可動接触子130が固定接触子111及び112に接触している。その後、接触スプリング134の接触圧がなくなった時点で可動接触子130が固定接触子111及び112から上方に離間する開極開始状態となる。
この開極開始状態となると、固定接触子111及び112の接点部118aと可動接触子130の接点部130aとの間にアークが発生し、このアークによって電流の通電状態が継続される。
【0054】
このとき、固定接触子111及び112のC字状部115の上板部116及び中間板部117を覆う絶縁カバー121が装着されているので、アークが固定接触子111及び112の接点部118aと可動接触子130の接点部130aとの間のみに発生させることができる。このため、アークの発生状態を安定させることができ、消弧性能を向上させることができる。
【0055】
また、C字状部115の上板部116及び中間板部117が絶縁カバー121で覆われているので、可動接触子130の両端部とC字状部115の上板部116及び中間板部117の間の絶縁カバー121によって絶縁距離を確保することができ、可動接触子130の可動方向の高さを短縮することができる。したがって、接点装置100を小型化することができる。
【0056】
さらに、固定接触子111,112の中間板部117の内側面には磁性体板119によって覆われているので、この中間板部117を流れる電流によって発生する磁場が磁性体板119によってシールドされる。このため、固定接触子111,112の接点部118a及び可動接触子130の接点部130a間に発生するアークによる磁場と中間板部117を流れる電流によって発生する磁場とが干渉することはなく、中間板部117を流れる電流によって発生する磁場にアークが影響されることを防止できる。
【0057】
このとき、アーク消弧用永久磁石143及び144の対向磁極面が同極のN極であり、その外側がS極であるので、このN極が出た磁束が、平面から見て図6(a)に示すように、各アーク消弧用永久磁石143及び144固定接触子111の接点部118aと可動接触子130の接点部130aとの対向部のアーク発生部を可動接触子130の長手方向に内側から外側に横切ってS極に達して磁界が形成される。
【0058】
同様に、固定接触子112の接点部118aと可動接触子130の接点部130aのアーク発生部を可動接触子130の長手方向に内側から外側に横切ってS極に達して磁界が形成される。
したがって、アーク消弧用永久磁石143及び144の磁束がともに固定接触子111の接点部118a及び可動接触子130の接点部130a間と、固定接触子112の接点部118a及び可動接触子130の接点部130a間を可動接触子130の長手方向で互いに逆方向に横切ることになる。
【0059】
このため、固定接触子111の接点部118aと可動接触子130の接点部130aとの間では、図6(b)に示すように、電流Iが固定接触子111側から可動接触子130側に流れるとともに、磁束Φの向きが内側から外側に向かう方向となる。このため、フレミングの左手の法則によって、図6(c)に示すように、可動接触子130の長手方向と直交し且つ固定接触子111の接点部118aと可動接触子130との開閉方向と直交してアーク消弧空間145側に向かう大きなローレンツ力Fが作用する。
【0060】
このローレンツ力Fによって、固定接触子111の接点部118aと可動接触子130の接点部130aとの間に発生したアークが、固定接触子111の接点部118aの側面からアーク消弧空間145内を通って可動接触子130の上面側に達するように大きく引き伸ばされて消弧される。
また、消弧空間145では、その下方側及び上方側で、固定接触子111の接点部118a及び可動接触子130の接点部130a間の磁束の向きに対して下方側に及び上方側に磁束が傾くことになる。このため、傾いた磁束によってアーク消弧空間145に引き伸ばされたアークがアーク消弧空間145の隅の方向へさらに引き伸ばされ、アーク長を長くすることができ、良好な遮断性能を得ることができる。
【0061】
一方、固定接触子112の接点部118aと可動接触子130との間では、図6(b)に示すように、電流Iが可動接触子130側から固定接触子112側に流れるとともに、磁束Φの向きが内側から外側に向かう右方向となる。
このため、フレミングの左手の法則によって、可動接触子130の長手方向と直交し且つ固定接触子112の接点部118aと可動接触子130との開閉方向と直交してアーク消弧空間145側に向かう大きなローレンツ力Fが作用する。
【0062】
このローレンツ力Fによって、固定接触子112の接点部118aと可動接触子130との間に発生したアークが、可動接触子130の上面側からアーク消弧空間145内を通って固定接触子112の側面側に達するように大きく引き伸ばされて消弧される。
また、アーク消弧空間145では、上述したように、その下方側及び上方側で、固定接触子112の接点部118a及び可動接触子130の接点部130a間の磁束の向きに対して下方側及び上方側に磁束が傾くことになる。
【0063】
このため、傾いた磁束によってアーク消弧空間145に引き伸ばされたアークがアーク消弧空間145の隅の方向へさらに引き伸ばされ、アーク長を長くすることができ、良好な遮断性能を得ることができる。
一方、電磁接触器10の投入状態で、負荷側から直流電源側に回生電流が流れている状態で、釈放状態とする場合には、前述した図6(b)における電流の方向が逆となることから、ローレンツ力Fがアーク消弧空間146側に作用し、アークがアーク消弧空間146側に引き伸ばされることを除いては同様の消弧機能が発揮される。
【0064】
このとき、アーク消弧用永久磁石143及び144は絶縁筒体140に形成された磁石収納ポケット141及び142内に配置されているので、アークが直接アーク消弧用永久磁石143及び144に接触することがない。このため、アーク消弧用永久磁石143及び144の磁気特性を安定して維持することができ、遮断性能を安定化させることができる。
【0065】
また、絶縁筒体140によって、金属製の接点収納ケース102の内周面を覆って絶縁できるので、電流遮断時のアークの短絡がなく、確実に電流遮断を行うことができる。
さらに、絶縁機能、アーク消弧用永久磁石143及び144の位置決め機能及びアーク消弧用永久磁石143及び144のアークからの保護機能を1つの絶縁筒体140で行うことができるので、製造コストを低減させることができる。
【0066】
このように、上記実施形態によると、接点装置100では、固定接触子111及び112のC字状部115と可動接触子130の接触圧を付与する接触スプリング134とが並列に配置されているので、固定接触子、可動接触子及び接触スプリング直列に配置する場合に比較して接点機構101の高さを短くすることができる。このため、接点装置100を小型化することができる。
【0067】
また、接点収納ケース102を角筒体104とその上面を閉塞し、固定接触子111及び112をろう付けによって固定保持する平板状の固定接点支持絶縁基板105とをろう付けすることにより形成するようにしている。このため、固定接点支持絶縁基板105を同一平面上で縦及び横に密着して配列させることができ、一度に複数の固定接点支持絶縁基板105のメタライズ処理を行うことができ、生産性を向上させることができる。
【0068】
また、固定接点支持絶縁基板105に固定接触子111及び112をろう付け支持してから角筒体104にろう付けすることが可能となり、固定接触子111及び112の固定保持を容易に行うことができ、ろう付け用治具が簡単な構成で済み、組み立て治具のコストダウンを図ることができる。
固定接点支持絶縁基板105の平面度、反りの抑制や管理も接点収納ケース102を桶状に形成する場合に比較して容易となる。さらに、接点収納ケース102を纏めて大量に製作することが可能となり、製作コストを低減させることができる。
【0069】
また、電磁石ユニット200については、可動プランジャ215の可動方向に着磁された環状永久磁石220を上部磁気ヨーク210上に配置し、その上面に補助ヨーク225を形成したので、1つの環状永久磁石220で可動プランジャ215の周鍔部216を吸引する吸引力を発生することができる。
このため、釈放状態における可動プランジャ215の固定を環状永久磁石220の磁力と復帰スプリング214の付勢力とで行うことができるので、誤動作衝撃に対する保持力を向上させることができる。
【0070】
また、復帰スプリング214の付勢力を低下させることができ、接触スプリング134及び復帰スプリング214によるトータル負荷を低減させることができる。したがって,トータル負荷の低下分に応じて励磁コイル208で発生する吸引力を低下させることが可能となり、励磁コイル208の起磁力を減少させることができる。このため、スプール204の軸方向長さを短くすることができ、電磁石ユニット200の可動プランジャ215の可動方向の高さを低くすることができる。
【0071】
このように、接点装置100及び電磁石ユニット200の双方で可動プランジャ215の可動方向の高さを低くすることができるので、電磁接触器10の全体構成を大幅に短縮することができ、小型化を図ることができる。
さらに、環状永久磁石220の内周面内に可動プランジャ215の周鍔部216を配置することにより、環状永久磁石220から生じる磁束を通す閉磁路に無駄がなく、漏れ磁束を少なくして永久磁石の磁力を効率的に使用することができる。
【0072】
また、可動プランジャ215の周鍔部216を上部磁気ヨーク210と環状永久磁石220の上面に形成した補助ヨーク225との間に配置したので、可動プランジャ215のストロークを環状永久磁石220の厚みと可動プランジャ215の周鍔部216の厚みとで調整することができる。
このため、可動プランジャ215のストークに影響する累積の部品数や形状公差を最小限とすることができる。しかも、可動プランジャ215のストローク調整を環状永久磁石220の厚み及び可動プランジャ215の周鍔部216の厚みのみで行うので、ストロークのバラツキを極小化することができる。
【0073】
なお、上記実施形態においては、接点装置100の消弧室102を角筒体104及び固定接点支持絶縁基板105で構成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、他の構成とすることができる。例えば、図10及び図2(b)に示すように、セラミックスや合成樹脂材によって角筒部301とその上端を閉塞する天面板部302とを一体成形して桶状体303を形成し、この桶状体303の開放端面側にメタライズ処理して金属箔を形成し、この金属箔に金属製の接続部材304をシール接合して消弧室102を形成するようにしてもよい。
【0074】
また、接点機構101も上記実施形態の構成に限定されるものではなく、任意の構成の接点機構を適用することができる。
例えば、図11(a)及び(b)に示すように、支持導体部114にC字状部115における上板部116を省略した形状となるL字状部160を連結するようにしてもよい。この場合でも、固定接触子111及び112に可動接触子130を接触させた閉極状態で、L字状部160の垂直板部を流れる電流によって生じる磁束を固定接触子111及び112と可動接触子130との接触部に作用させることができる。このため、固定接触子111及び112と可動接触子130との接触部における磁束密度を高めて電磁反発力に抗するローレンツ力を発生させることができる。
【0075】
また、図12(a)及び(b)に示すように、凹部132を省略して平板状に形成するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、可動プランジャ215に連結軸131を螺合させる場合について説明したが、螺合に限らず、任意の接続方法を適用することができ、さらには可動プランジャ215と連結軸131とを一体に形成するようにしてもよい。
【0076】
また、連結軸131と可動接触子130との連結が、連結軸131の先端部にフランジ部131aを形成し、接触スプリング134及び可動接触子130を挿通してから可動接触子130の下端をCリングで固定する場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、連結軸131のCリング位置に半径方向に突出する位置決め大径部を形成し、これに可動接触子130を当接させてから接触スプリング134を配置し、この接触スプリング134の上端をCリングによって固定するようにしてもよい。
【0077】
また、上記実施形態においては、可動プランジャ215の下端側に近接させて円筒状補助ヨーク203を配置した場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、磁気ヨーク201を、図13(a)及び(b)に示すように有底円筒状に形成し、補助ヨーク203を、磁気ヨーク201の底板部202に沿う円環状板部203aとこの円環状板部203aの内周面から上方に立ち上がる円筒部203bとで構成するようにしてもよい。
【0078】
また、図14(a)及び(b)に示すように、U字状の磁気ヨーク210の底板部202に貫通孔202aを形成し、この貫通孔202a内に凸状の補助ヨーク203を嵌合させ、この補助ヨーク203の小径部203cを可動プランジャ215に形成した挿通穴217に挿通するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、消弧室102及びキャップ230で密封容器を構成し、この密封容器内にガスを封入する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、遮断する電流が低い場合にはガス封入を省略するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10…電磁接触器、11…外装絶縁容器、100…接点装置、101…接点機構、102…接点収納ケース、104…角筒体、105…固定接点支持絶縁基板、111,112…固定接触子、114…支持導体部、115…C字状部、116…上板部、117…中間板部、118…下板部、118a…接点部、121…絶縁カバー、122…L字状板部、123,124…側板部、125…嵌合部、130…可動接触子、130a…接点部、131…連結軸、132…凹部、134…接触スプリング、140…絶縁筒体、141,142…磁石収納ポケット、143,144…アーク消弧用永久磁石、145,146…アーク消弧空間、160…L字状部、200…電磁石ユニット、201…磁気ヨーク、203…円筒状補助ヨーク、204…スプール、208…励磁コイル、210…上部磁気ヨーク、214…復帰スプリング、215…可動プランジャ、216…周鍔部、220…永久磁石、225…補助ヨーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定接触子及びこれに接離可能な可動接触子と、可動接触子を駆動する電磁石ユニットとを備えた電磁接触器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電磁接触器では、固定接触子に対して接離可能に配置された可動接触子を駆動する駆動装置として、永久磁石の吸引力と電磁コイルによる吸引力との合成吸引力により、可動鉄心部分をばねの復帰力に抗して駆動する有極電磁石装置であって、コの字形の固定鉄心の2つの中央片にそれぞれ永久磁石の一方の磁極面を当接させ、他方の磁極面を固定鉄心内で電磁コイルの外側に配置した一対のLの字形の磁極板の中央片に当接させるようにした有極電磁石装置が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−91901号公報
【特許文献2】米国特許第5959519号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1及び2に記載された従来例にあっては、電磁コイルの外側に一対のLの字形の磁極板を配置し、これら磁極板の電磁コイルと対向する板部と固定鉄心との間にそれぞれ永久磁石を左右対象に配置するようにしている。したがって、左右2つの永久磁石を必要とするとともに、永久磁石と可動鉄心の吸引力作用部との距離が長く、永久磁石の磁力を効率的に使用することができないという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、複数の永久磁石を使用することなく1つの永久磁石で必要な磁力を確保するとともに、永久磁石の磁力を効率的に使用することができる電磁接触器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一の形態に係る電磁接触器は、所定間隔を保って配置された一対の固定接触子及び当該一対の固定接触子に対して接離自在に配設された可動接触子と、前記可動接触子を駆動する電磁石ユニットとを備えている。前記電磁石ユニットは、プランジャ駆動部を囲む磁気ヨークと、先端が前記磁気ヨークに形成された開口を通じて突出され且つ復帰スプリングで付勢された可動プランジャと、該可動プランジャの突出端側に形成された周鍔部を囲むように固定配置された前記可動プランジャの可動方向に着磁された環状永久磁石とを備えている。
【0006】
この構成によると、可動プランジャの周鍔部を囲むように永久磁石を設けるようにしているので、環状永久磁石の磁力を漏れなく可動プランジャの周鍔部に作用させることができ、環状永久磁石の磁力を効率的に使用することができる。また、可動プランジャに可動接触子を釈放方向に可動させる吸引力を作用させて、復帰スプリングの付勢力を減少させることができる。このため、励磁コイルの起磁力を減少させて電磁石ユニットを小型化することができる。また、釈放状態で、永久磁石の磁力によって可動プランジャの周鍔部を吸引することができ、釈放時に高い耐誤動作性能を確保することができる。
【0007】
また、本発明の他の形態に係る電磁接触器は、前記磁気ヨークが、上部を開放し励磁コイルを巻装し且つ中央部に前記可動プランジャを可動可能に配置したスプールを支持する断面U字状の磁気ヨークと、該磁気ヨークの上部開放部に橋架された上部磁気ヨークとで構成されている。そして、前記上部磁気ヨークに前記可動プランジャを挿通する開口が形成され、該開口の周囲に前記環状永久磁石が配置されている。
この構成によると、釈放状態で可動プランジャを環状永久磁石の磁力で吸引し、投入時にはU字状の磁気ヨーク及び上部磁気ヨークと可動プランジャとで磁路を形成することができる。
【0008】
また、本発明の他の形態に係る電磁接触器は、前記環状永久磁石が、前記上部磁気ヨークの外面における開口の周囲に配置され、前記上部磁気ヨークとは反対側に前記可動プランジャの前記周鍔部の前記上部磁気ヨークとは反対側に対向する補助ヨークを備えている。
この構成によると、環状永久磁石の磁力が補助ヨークを介して直接可動プランジャの周鍔部に作用するので、漏れ磁束を抑制してより効率よく環状永久磁石の磁力を使用することができる。
【0009】
また、本発明の他の形態に係る電磁接触器は、前記永久磁石の厚みが前記可動プランジャの周鍔部の厚みと当該可動プランジャのストロークとの和に設定されている。
この構成によると、永久磁石の厚みで可動プランジャのストロークを決定することができ、可動プランジャのストロークに影響する累積の部品点数や形状交差を最小限とすることができる。また、環状永久磁石の厚みと可動プランジャの周鍔部の厚みのみで可動プランジャのストロークを決定することができ、ストロークのバラツキを極小化することができる。
【0010】
また、本発明の他の形態に係る電磁接触器は、少なくとも前記固定接触子及び可動接触子と、前記可動プランジャとがガス封入容器内に配置されている。
この構成によると、大電流の通電・遮断が可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、1つの環状永久磁石で可動プランジャの周鍔部を吸引することができ、部品点数を減少させてコストダウンを図ることができる。
また、環状永久磁石を可動プランジャの周鍔部を囲むように配置するので、吸引力を作用させる位置の近傍に環状永久磁石を配置することができ、環状永久磁石の磁力を効率的に使用することができる。
【0012】
さらに、環状永久磁石の吸引力を釈放状態の可動プランジャを吸引するように作用させることができ、この分可動プランジャを釈放状態に復帰させる復帰スプリングの付勢力を抑制することができる。このため、励磁コイルの起磁力を減少させて、電磁石ユニットの高さを低くすることができ、電磁接触器全体を小型化することができる。これと同時に、釈放時に永久磁石で可動プランジャを吸引して振動や衝撃等によって可動接触子が一対の固定接触子に誤接触することを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る電磁接触器の一実施形態を示す断面図である。
【図2】接点収納ケースの分解斜視図である。
【図3】接点装置の絶縁カバーを示す図であって、(a)は斜視図、(b)は装着前の平面図、(c)は装着後の平面図である。
【図4】絶縁カバーの装着方法を示す説明図である。
【図5】図1のA−A線上の断面図である。
【図6】本発明によるアーク消弧用永久磁石によるアーク消弧の説明に供する説明図である。
【図7】アーク消弧用永久磁石を絶縁ケースの外側に配置した場合のアーク消弧の説明に供する説明図である。
【図8】永久磁石と可動プランジャとの位置関係を示す拡大断面図である。
【図9】永久磁石による可動プランジャ吸引動作を説明する図であって、(a)は釈放状態、(b)は投入状態を示す部分断面図である。
【図10】本発明の接点装置における消弧室の他の例を示す断面図である。
【図11】本発明の接点装置における接点機構の変形例を示す図であって、(a)は断面図、(b)は斜視図である。
【図12】本発明の接点装置における接点機構の他の変形例を示す図であって、(a)は断面図、(b)は斜視図である。
【図13】電磁石ユニットの円筒状補助ヨークの変形例を示す図であって、(a)は断面図、(b)は分解斜視図である。
【図14】電磁石ユニットの円筒状補助ヨークの変形例を示す図であって、(a)は断面図、(b)は分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る電磁開閉器の一例を示す断面図、図2は消弧室の分解斜視図である。この図1及び図2において、10は電磁接触器であり、この電磁接触器10は接点機構を配置した接点装置100と、この接点装置100を駆動する電磁石ユニット200とで構成されている。
接点装置100は、図1及び図2から明らかなように、接点機構101を収納する消弧室102を有する。この消弧室102は、図2(a)に示すように、金属製の下端部に外方と突出するフランジ部103を有する金属角筒体104と、この金属角筒体104の上端を閉塞する平板状のセラミック絶縁基板で構成される固定接点支持絶縁基板105とを備えている。
【0015】
金属角筒体104は、そのフランジ部103が後述する電磁石ユニット200の上部磁気ヨーク210にシール接合されて固定されている。
また、固定接点支持絶縁基板105には、中央部に後述する一対の固定接触子111及び112を挿通する貫通孔106及び107が所定間隔を保って形成されている。この固定接点支持絶縁基板105の上面側における貫通孔106及び107の周囲及び下面側における角筒体104に接触する位置にメタライズ処理が施されている。このメタライズ処理を行うには、平面上に複数の固定接点支持絶縁基板105を縦横に配列した状態で、貫通孔106及び107の周囲及び角筒体104に接触する位置に銅箔を形成する。
【0016】
接点機構101は、図1に示すように、消弧室102の固定接点支持絶縁基板105の貫通孔106及び107に挿通されて固定された一対の固定接触子111及び112を備えている。これら固定接触子111及び112のそれぞれは、固定接点支持絶縁基板105の貫通孔106及び107に挿通される上端に外方に突出するフランジ部を有する支持導体部114と、この支持導体部114に連結されて固定接点支持絶縁基板105の下面側に配設され内方側を開放したC字状部115とを備えている。
【0017】
C字状部115は、固定接点支持絶縁基板105の下面に沿って外側に延長する上板部116とこの上板部116の外側端部から下方に延長する中間板部117と、この中間板部117の下端側から上板部116と平行に内方側すなわち固定接触子111及び112の対面方向に延長する下板部118とで中間板部117及び下板部118で形成されるL字状に上板部116を加えたC字状に形成されている。
【0018】
ここで、支持導体部114とC字状部115とは、支持導体部114の下端面に突出形成されたピン114aをC字状部115の上板部116に形成された貫通孔120内に挿通した状態で例えばろう付けによって固定されている。なお、支持導体部114及びC字状部115の固定は、ろう付けに限らず、ピン114aを貫通孔120に嵌合させたり、ピン114aに雄ねじを形成し、貫通孔120に雌ねじを形成して両者を螺合させたりしてもよい。
【0019】
そして、固定接触子111及び112のC字状部115にそれぞれ、アークの発生を規制する合成樹脂材製の絶縁カバー121が装着されている。この絶縁カバー121は、図3(a)及び(b)に示すように、C字状部115の上板部116及び中間板部117の内周面を被覆するものである。
絶縁カバー121は、上板部116及び中間板部117の内周面に沿うL字状板部122と、このL字状板部122の前後端部からそれぞれ上方及び外方に延長してC字状部115の上板部116及び中間板部117の側面を覆う側板部123及び124と、これら側板部123及び124の上端から内方側に形成された固定接触子111及び112の支持導体部114に形成された小径部114bに係合する嵌合部125とを備えている。
【0020】
したがって、絶縁カバー121が、図3(a)及び(b)に示すように、固定接触子111及び112の支持導体部114の小径部114bに嵌合部125を対向させた状態とし、次いで、図3(c)に示すように、絶縁カバー121を押し込むことにより、嵌合部125を支持導体部114の小径部114bに係合させる。
実際には、図4(a)に示すように、固定接触子111及び112を取付けた後の接点収納ケース102を、固定接点支持絶縁基板105を下側とした状態で、上方の開口部から絶縁カバー121を図3(a)〜(c)とは上下逆にした状態で、固定接触子111及び112間に挿入する。
【0021】
次いで、図4(b)に示すように、嵌合部125を固定接点支持絶縁基板105に接触させた状態で、図4(c)に示すように、絶縁カバー121を外側に押し込むことにより、嵌合部125を固定接触子111及び112の支持導体部114の小径部114bに嵌合させて固定する。
このように、固定接触子111及び112のC字状部115に絶縁カバー121を装着することにより、このC字状部115の内周面では下板部118の上面側のみが露出されて接点部118aとされている。
【0022】
そして、固定接触子111及び112のC字状部115内に両端部を配置するように可動接触子130が配設されている。この可動接触子130は後述する電磁石ユニット200の可動プランジャ215に固定された連結軸131に支持されている。この可動接触子130は、図1及び図5に示すように、中央部の連結軸131の近傍が下方に突出する凹部132が形成され、この凹部132に連結軸131を挿通する貫通孔133が形成されている。
【0023】
連結軸131は、上端に外方に突出するフランジ部131aが形成されている。この連結軸131に下端側から接触スプリング134に挿通し、次いで可動接触子130の貫通孔133を挿通して、接触スプリング134の上端をフランジ部131aに当接させこの接触スプリング134で所定の付勢力を得るように可動接触子130を例えばCリング135によって位置決めする。
【0024】
この可動接触子130は、釈放状態で、両端の接点部と固定接触子111及び112のC字状部115の下板部118の接点部118aとが所定間隔を保って離間した状態となる。また、可動接触子130は、投入位置で、両端の接点部が固定接触子111及び112のC字状部115の下板部118の接点部118aに、接触スプリング134による所定の接触圧で接触するように設定されている。
【0025】
さらに、接点収納ケース102の角筒体104の内周面には、例えば合成樹脂製の絶縁筒体140が配設され、この絶縁筒体140の可動接触子130の側面に対向する位置に磁石収納ポケット141及び142が形成されている。この磁石収納ポッケと141及び142には、アーク消弧用永久磁石143及び144が挿通されて固定されている。
【0026】
このアーク消弧用永久磁石143及び144は、厚み方向に互いの対向面が同極例えばN極となるように着磁されている。また、アーク消弧用永久磁石143及び144は、左右方向の両端部がそれぞれ、図5に示すように、固定接触子111及び112の接点部118aと可動接触子130の接点部との対向位置より僅かに内側となるよう設定されている。そして、磁石収納ポケット141及び142の左右方向の外側にそれぞれアーク消弧空間145及び146が形成されている。
【0027】
このように、アーク消弧用永久磁石143及び144を絶縁筒体140の内周面側に配置することにより、アーク消弧用永久磁石143及び144を可動接触子130に近接させることができる。このため、両アーク消弧用永久磁石143及び144のN極側から出る磁束φが、図6(a)に示すように、固定接触子111及び112の接点部118aと可動接触子130の接点部130aとの対向部を左右方向に内側から外側に大きな磁束密度で横切ることになる。
【0028】
したがって、固定接触子111を電流供給源に接続し、固定接触子112を負荷側に接続するものとすると、投入状態の電流の方向は、図6(b)に示すように、固定接触子111から可動接触子130を通じて固定接触子112に流れることになる。そして、投入状態から可動接触子130を固定接触子111及び112から上方に離間させて釈放状態とする場合に、固定接触子111及び112の接点部118aと可動接触子130の接点部130aとの間にアークが発生する。
【0029】
このアークは、アーク消弧用永久磁石143及び144からの磁束φにより、アーク消弧用永久磁石143側のアーク消弧空間145側に引き伸ばされる。このとき、アーク消弧空間145及び146はアーク消弧用永久磁石143及び144の厚み分広く形成されているので、長いアーク長をとることができ、アークを確実に消弧することができる。
因みに、アーク消弧用永久磁石143及び144を、図7(a)〜(c)に示すように、絶縁筒体140の外側に配置する場合には、固定接触子111及び112の接点部118aと可動接触子130の接点部130aとの対向位置までの距離が長くなり、本実施形態と同一の永久磁石を適用した場合に、アークを横切る磁束密度が少なくなる。
【0030】
このため、投入状態から釈放状態に移行する際に発生するアークに作用するローレンツ力が小さくなり、アークを十分に引き伸ばすことができなる。アークの消弧性能を向上させるために、アーク消弧用永久磁石143及び144の着磁量を増加させる必要がある。
しかも、アーク消弧用永久磁石143及び144を固定接触子111及び112と可動接触子130の接点部との距離を短くするためには絶縁筒体140の前後方向の奥行きを狭くする必要があり、アークを消弧するための十分なアーク消弧空間を確保することができないという問題点がある。
【0031】
しかしながら、上記実施形態によると、アーク消弧用永久磁石143及び144を絶縁筒体140の内側に配置するので、上述した絶縁筒体140の外側にアーク消弧用永久磁石143及び144を配置する場合の問題点を全て解決することができる。
電磁石ユニット200は、図1に示すように、側面から見て扁平なU字形状の磁気ヨーク201を有し、この磁気ヨーク201の底板部202の中央部に円筒状補助ヨーク203が固定されている。この円筒状補助ヨーク203の外側にプランジャ駆動部としてのスプール204が配置されている。
【0032】
このスプール204は、円筒状補助ヨーク203を挿通する中央円筒部205と、この中央円筒部205の下端部から半径方向外方に突出する下フランジ部206と、中央円筒部205の上端より僅かに下側から半径方向外方に突出する上フランジ部207とで構成されている。そして、中央円筒部205、下フランジ部206及び上フランジ部207で構成される収納空間に励磁コイル208が巻装されている。
【0033】
そして、磁気ヨーク201の開放端となる上端間に上部磁気ヨーク210が固定されている。この上部磁気ヨーク210は、中央部にスプール204の中央円筒部205に対向する貫通孔210aが形成されている。
そして、スプール204の中央円筒部205内に、底部と磁気ヨーク201の底板部202との間に復帰スプリング214を配設した可動プランジャ215が上下に摺動可能に配設されている。この可動プランジャ215には、上部磁気ヨーク210から上方に突出する上端部に半径方向外方に突出する周鍔部216が形成されている。
【0034】
また、上部磁気ヨーク210の上面に、環状に形成された永久磁石220が可動プランジャ215の周鍔部216を囲むように固定されている。この永久磁石220は周鍔部216を囲む貫通孔221を有する。この永久磁石220は上下方向すなわち厚み方向に上端側を例えばN極とし、下端側をS極とするように着磁されている。なお、永久磁石220の貫通孔221の形状は周鍔部216の形状に合わせた形状とし、外周面の形状は円形、方形等の任意の形状とすることができる。
【0035】
そして、永久磁石220の上端面に、永久磁石220と同一外形で可動プランジャ215の周鍔部216の外径より小さい内径の貫通孔224を有する補助ヨーク225が固定されている。この補助ヨーク225の下面に可動プランジャ215の周鍔部216が対向されている。
ここで、永久磁石220の厚みTは、図8に示すように、可動プランジャ215のストロークLと可動プランジャ215の周鍔部216の厚みtとを加算した値(T=L+t)に設定されている。したがって、可動プランジャ215のストロークLが永久磁石220の厚みTで規制されている。
【0036】
このため、可動プランジャ215のストロークに影響する累積の部品数や形状公差を最小限とすることができる。また、可動プランジャ215のストロークLを永久磁石220の厚みTと周鍔部216の厚みtのみで決定することができ、ストロークLのバラツキを最小化することができる。特に、小型の電磁接触器でストロークが小さい場合により効果的である。
【0037】
また、永久磁石220を環状に形成したので、特許文献1及び2に記載されているように永久磁石を左右対象に2つ配置する場合に比較して、部品点数が少なくなってコストダウンが図れる。また、永久磁石220に成形した貫通孔221の内周面近傍に可動プランジャ215の周鍔部216が配置されるため、永久磁石220で生じる磁束を通す閉回路に無駄がなく、漏れ磁束が少なくなり、永久磁石の磁力を効率的に使用することができる。
【0038】
また、可動プランジャ215の上端面には可動接触子130を支持する連結軸131が螺着されている。
そして、釈放状態では、可動プランジャ215が復帰スプリング214によって上方に付勢されて、周鍔部216の上面が補助ヨーク225の下面に当接する釈放位置となる。この状態で、可動接触子130の接点部130aが固定接触子111及び112の接点部118aから上方に離間して、電流遮断状態となっている。
この釈放状態では、可動プランジャ215の周鍔部216が永久磁石220の磁力によって補助ヨーク225に吸引されており、復帰スプリング214の付勢力と相まって可動プランジャ215が外部からの振動や衝撃等によって不用意に下方に移動することなく補助ヨーク225に当接された状態が確保される。
【0039】
また、釈放状態では、図9(a)に示すように、可動プランジャ215の周鍔部216の下面と上部磁気ヨーク210の上面との間のギャップg1、可動プランジャ215の外周面と上部磁気ヨーク210の貫通孔210aとの間のギャップg2、可動プランジャ215の外周面と円筒状補助ヨーク203との間のギャップg3、可動プランジャ215の下面と磁気ヨーク201の底板部202の上面とのギャップg4と関係が以下のように設定されている。
g1<g2 且つ g3<g4
【0040】
このため、釈放状態で、励磁コイル208を励磁したときに、図9(a)に示すように、可動プランジャ215から周鍔部216を通り、周鍔部216と上部磁気ヨーク210との間のギャップg1を通って上部磁気ヨーク210に達する。この上部磁気ヨーク210からU字状の磁気ヨーク201を通って円筒状補助ヨーク203を通って可動プランジャ215に至る閉磁路が形成される。
このため、可動プランジャ215の周鍔部216の下面と上部磁気ヨーク210の上面との間のギャップg1の磁束密度を高めることができ、より大きな吸引力を発生して、可動プランジャ215を復帰スプリング214の付勢力及び永久磁石220の吸引力に抗して下降させる。
【0041】
したがって、この可動プランジャ215に連結軸131を介して連結されている可動接触子130の接点部130aを固定接触子111及び112の接点部118aに接触されて固定接触子111から可動接触子130を通じて固定接触子112に向かう電流路が形成されて投入状態となる。
この投入状態となると、図9(b)に示すように、可動プランジャ215の下端面がU字状の磁気ヨーク201の底板部202に近づくので、前述した各ギャップg1〜g4が下記のようになる。
g1<g2 且つ g3>g4
【0042】
このため、励磁コイル208によって発生される磁束が、図9(b)に示すように、可動プランジャ215から周鍔部216を通って直接上部磁気ヨーク210に入り、この上部磁気ヨーク210からU字状の磁気ヨーク201を通り、その底板部202から直接可動プランジャ215に戻る閉磁路が形成される。
このため、ギャップg1及びギャップg4で大きな吸引力が作用して可動プランジャ215が下降位置に保持される。このため、可動プランジャ215に連結軸213を介して連結された可動接触子130の接点部130aが固定接触子111及び112の接点部118aへの接触状態が継続される。
【0043】
そして、可動プランジャ215が非磁性体製で有底筒状に形成されたキャップ230で覆われ、このキャップ230の開放端に半径方向外方に延長して形成されたフランジ部231が上部磁気ヨーク210の下面にシール接合されている。これによって、消弧室102及びキャップ230が上部磁気ヨーク210の貫通孔210aを介して連通される密封容器が形成されている。そして、消弧室102及びキャップ230で形成される密封容器内に水素ガス、窒素ガス、水素及び窒素の混合ガス、空気、SF6等のガスが封入されている。
【0044】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、固定接触子111が例えば大電流を供給する電力供給源に接続され、固定接触子112が負荷に接続されているものとする。
この状態で、電磁石ユニット200における励磁コイル208が非励磁状態にあって、電磁石ユニット200で可動プランジャ215を下降させる励磁力を発生していない釈放状態にあるものとする。この釈放状態では、可動プランジャ215が復帰スプリング214によって、上部磁気ヨーク210から離れる上方向に付勢される。
【0045】
これと同時に、永久磁石220の磁力による吸引力が補助ヨーク225に作用されて、可動プランジャ215の周鍔部216が吸引される。このため、可動プランジャ215の周鍔部216の上面が補助ヨーク225の下面に当接している。
このため、可動プランジャ215に連結軸131を介して連結されている接点機構101の可動接触子130の接点部130aが固定接触子111及び112の接点部118aから上方に所定距離だけ離間している。このため、固定接触子111及び112間の電流路が遮断状態にあり、接点機構101が開極状態となっている。
【0046】
このように、釈放状態では、可動プランジャ215に復帰スプリング214による付勢力と環状永久磁石220による吸引力との双方が作用しているので、可動プランジャ215が外部からの振動や衝撃等によって不用意に下降することがなく、誤動作を確実に防止することができる。
この釈放状態から、電磁石ユニット200の励磁コイル208を励磁すると、この電磁石ユニット200で励磁力を発生させて、可動プランジャ215を復帰スプリング214の付勢力及び環状永久磁石220の吸引力に抗して下方に押し下げる。
【0047】
このとき、図9(a)に示すように、可動プランジャ215の底面と磁気ヨーク201の底板部202との間のギャップg4が大きく、このギャップg4を通る磁束は殆どない。しかしながら、可動プランジャ215の下部外周面には円筒状補助ヨーク203が対向しており、この円筒状補助ヨーク203との間のギャップg3がギャップg4に比較して小さく設定されている。
【0048】
このため、可動プランジャ215及び磁気ヨーク201の底板部202間には、円筒状ヨーク203を通じて磁路が形成される。さらに、可動プランジャ215の外周面と上部磁気ヨーク210の貫通孔210aの内周面との間ギャップg2に比較して可動プランジャ215の周鍔部216の下面と上部磁気ヨーク210との間のギャップg1が小さく設定されている。このため、可動プランジャ215の周鍔部216の下面と上部磁気ヨーク210の上面との間の磁束密度が大きくなり、可動プランジャ215の周鍔部216を吸引する大きな吸引力が作用する。
【0049】
したがって、可動プランジャ215が復帰スプリング214の付勢力及び環状永久磁石220の吸引力に抗して速やかに下降する。これにより、可動プランジャ215の下降が、図9(b)に示すように、周鍔部216の下面が上部磁気ヨーク210の上面に当接することにより停止される。
このように、可動プランジャ215が下降することにより、可動プランジャ215に連結軸131を介して連結されている可動接触子130も下降し、その接点部130aが固定接触子111及び112の接点部118aに接触スプリング13の接触圧で接触する。
【0050】
このため、外部電力供給源の大電流が固定接触子111、可動接触子130、及び固定接触子112を通じて負荷に供給される閉極状態となる。
このとき、固定接触子111及び112と可動接触子130との間に可動接触子130を開極させる方向の電磁反発力が発生する。
しかしながら、固定接触子111及び112は、図1に示すように、上板部116、中間板部117及び下板部118によってC字状部115が形成されているので、上板部116及び下板部118とこれに対向する可動接触子130とで逆方向の電流が流れることになる。
【0051】
このため、固定接触子111及び112の下板部118が形成する磁界と可動接触子130に流れる電流の関係からフレミング左手の法則により可動接触子130を固定接触子111及び112の接点部118aに押し付けるローレンツ力を発生することができる。
このローレンツ力によって、固定接触子111及び112の接点部118aと可動接触子130の接点部130a間に発生する開極方向の電磁反発力に抗することが可能となり、可動接触子130の接点部130aが開極することを確実に防止することができる。
【0052】
このため、可動接触子130を支持する接触スプリング134の押圧力を小さくすることができ、これに応じて励磁コイル208で発生する推力も小さくすることができ、電磁接触器全体の構成を小型化することができる。
この接点機構101の閉極状態から、負荷への電流供給を遮断する場合には、電磁石ユニット200の励磁コイル208の励磁を停止する。
これによって、電磁石ユニット200で可動プランジャ215を下方に移動させる励磁力がなくなることにより、可動プランジャ215が復帰スプリング214の付勢力によって上昇し、周鍔部216が補助ヨーク225に近づくに従って環状永久磁石220の吸引力が増加する。
【0053】
この可動プランジャ215が上昇することにより、連結軸131を介して連結された可動接触子130が上昇する。これに応じて接触スプリング134で接触圧を与えている間は可動接触子130が固定接触子111及び112に接触している。その後、接触スプリング134の接触圧がなくなった時点で可動接触子130が固定接触子111及び112から上方に離間する開極開始状態となる。
この開極開始状態となると、固定接触子111及び112の接点部118aと可動接触子130の接点部130aとの間にアークが発生し、このアークによって電流の通電状態が継続される。
【0054】
このとき、固定接触子111及び112のC字状部115の上板部116及び中間板部117を覆う絶縁カバー121が装着されているので、アークが固定接触子111及び112の接点部118aと可動接触子130の接点部130aとの間のみに発生させることができる。このため、アークの発生状態を安定させることができ、消弧性能を向上させることができる。
【0055】
また、C字状部115の上板部116及び中間板部117が絶縁カバー121で覆われているので、可動接触子130の両端部とC字状部115の上板部116及び中間板部117の間の絶縁カバー121によって絶縁距離を確保することができ、可動接触子130の可動方向の高さを短縮することができる。したがって、接点装置100を小型化することができる。
【0056】
さらに、固定接触子111,112の中間板部117の内側面には磁性体板119によって覆われているので、この中間板部117を流れる電流によって発生する磁場が磁性体板119によってシールドされる。このため、固定接触子111,112の接点部118a及び可動接触子130の接点部130a間に発生するアークによる磁場と中間板部117を流れる電流によって発生する磁場とが干渉することはなく、中間板部117を流れる電流によって発生する磁場にアークが影響されることを防止できる。
【0057】
このとき、アーク消弧用永久磁石143及び144の対向磁極面が同極のN極であり、その外側がS極であるので、このN極が出た磁束が、平面から見て図6(a)に示すように、各アーク消弧用永久磁石143及び144固定接触子111の接点部118aと可動接触子130の接点部130aとの対向部のアーク発生部を可動接触子130の長手方向に内側から外側に横切ってS極に達して磁界が形成される。
【0058】
同様に、固定接触子112の接点部118aと可動接触子130の接点部130aのアーク発生部を可動接触子130の長手方向に内側から外側に横切ってS極に達して磁界が形成される。
したがって、アーク消弧用永久磁石143及び144の磁束がともに固定接触子111の接点部118a及び可動接触子130の接点部130a間と、固定接触子112の接点部118a及び可動接触子130の接点部130a間を可動接触子130の長手方向で互いに逆方向に横切ることになる。
【0059】
このため、固定接触子111の接点部118aと可動接触子130の接点部130aとの間では、図6(b)に示すように、電流Iが固定接触子111側から可動接触子130側に流れるとともに、磁束Φの向きが内側から外側に向かう方向となる。このため、フレミングの左手の法則によって、図6(c)に示すように、可動接触子130の長手方向と直交し且つ固定接触子111の接点部118aと可動接触子130との開閉方向と直交してアーク消弧空間145側に向かう大きなローレンツ力Fが作用する。
【0060】
このローレンツ力Fによって、固定接触子111の接点部118aと可動接触子130の接点部130aとの間に発生したアークが、固定接触子111の接点部118aの側面からアーク消弧空間145内を通って可動接触子130の上面側に達するように大きく引き伸ばされて消弧される。
また、消弧空間145では、その下方側及び上方側で、固定接触子111の接点部118a及び可動接触子130の接点部130a間の磁束の向きに対して下方側に及び上方側に磁束が傾くことになる。このため、傾いた磁束によってアーク消弧空間145に引き伸ばされたアークがアーク消弧空間145の隅の方向へさらに引き伸ばされ、アーク長を長くすることができ、良好な遮断性能を得ることができる。
【0061】
一方、固定接触子112の接点部118aと可動接触子130との間では、図6(b)に示すように、電流Iが可動接触子130側から固定接触子112側に流れるとともに、磁束Φの向きが内側から外側に向かう右方向となる。
このため、フレミングの左手の法則によって、可動接触子130の長手方向と直交し且つ固定接触子112の接点部118aと可動接触子130との開閉方向と直交してアーク消弧空間145側に向かう大きなローレンツ力Fが作用する。
【0062】
このローレンツ力Fによって、固定接触子112の接点部118aと可動接触子130との間に発生したアークが、可動接触子130の上面側からアーク消弧空間145内を通って固定接触子112の側面側に達するように大きく引き伸ばされて消弧される。
また、アーク消弧空間145では、上述したように、その下方側及び上方側で、固定接触子112の接点部118a及び可動接触子130の接点部130a間の磁束の向きに対して下方側及び上方側に磁束が傾くことになる。
【0063】
このため、傾いた磁束によってアーク消弧空間145に引き伸ばされたアークがアーク消弧空間145の隅の方向へさらに引き伸ばされ、アーク長を長くすることができ、良好な遮断性能を得ることができる。
一方、電磁接触器10の投入状態で、負荷側から直流電源側に回生電流が流れている状態で、釈放状態とする場合には、前述した図6(b)における電流の方向が逆となることから、ローレンツ力Fがアーク消弧空間146側に作用し、アークがアーク消弧空間146側に引き伸ばされることを除いては同様の消弧機能が発揮される。
【0064】
このとき、アーク消弧用永久磁石143及び144は絶縁筒体140に形成された磁石収納ポケット141及び142内に配置されているので、アークが直接アーク消弧用永久磁石143及び144に接触することがない。このため、アーク消弧用永久磁石143及び144の磁気特性を安定して維持することができ、遮断性能を安定化させることができる。
【0065】
また、絶縁筒体140によって、金属製の接点収納ケース102の内周面を覆って絶縁できるので、電流遮断時のアークの短絡がなく、確実に電流遮断を行うことができる。
さらに、絶縁機能、アーク消弧用永久磁石143及び144の位置決め機能及びアーク消弧用永久磁石143及び144のアークからの保護機能を1つの絶縁筒体140で行うことができるので、製造コストを低減させることができる。
【0066】
このように、上記実施形態によると、接点装置100では、固定接触子111及び112のC字状部115と可動接触子130の接触圧を付与する接触スプリング134とが並列に配置されているので、固定接触子、可動接触子及び接触スプリング直列に配置する場合に比較して接点機構101の高さを短くすることができる。このため、接点装置100を小型化することができる。
【0067】
また、接点収納ケース102を角筒体104とその上面を閉塞し、固定接触子111及び112をろう付けによって固定保持する平板状の固定接点支持絶縁基板105とをろう付けすることにより形成するようにしている。このため、固定接点支持絶縁基板105を同一平面上で縦及び横に密着して配列させることができ、一度に複数の固定接点支持絶縁基板105のメタライズ処理を行うことができ、生産性を向上させることができる。
【0068】
また、固定接点支持絶縁基板105に固定接触子111及び112をろう付け支持してから角筒体104にろう付けすることが可能となり、固定接触子111及び112の固定保持を容易に行うことができ、ろう付け用治具が簡単な構成で済み、組み立て治具のコストダウンを図ることができる。
固定接点支持絶縁基板105の平面度、反りの抑制や管理も接点収納ケース102を桶状に形成する場合に比較して容易となる。さらに、接点収納ケース102を纏めて大量に製作することが可能となり、製作コストを低減させることができる。
【0069】
また、電磁石ユニット200については、可動プランジャ215の可動方向に着磁された環状永久磁石220を上部磁気ヨーク210上に配置し、その上面に補助ヨーク225を形成したので、1つの環状永久磁石220で可動プランジャ215の周鍔部216を吸引する吸引力を発生することができる。
このため、釈放状態における可動プランジャ215の固定を環状永久磁石220の磁力と復帰スプリング214の付勢力とで行うことができるので、誤動作衝撃に対する保持力を向上させることができる。
【0070】
また、復帰スプリング214の付勢力を低下させることができ、接触スプリング134及び復帰スプリング214によるトータル負荷を低減させることができる。したがって,トータル負荷の低下分に応じて励磁コイル208で発生する吸引力を低下させることが可能となり、励磁コイル208の起磁力を減少させることができる。このため、スプール204の軸方向長さを短くすることができ、電磁石ユニット200の可動プランジャ215の可動方向の高さを低くすることができる。
【0071】
このように、接点装置100及び電磁石ユニット200の双方で可動プランジャ215の可動方向の高さを低くすることができるので、電磁接触器10の全体構成を大幅に短縮することができ、小型化を図ることができる。
さらに、環状永久磁石220の内周面内に可動プランジャ215の周鍔部216を配置することにより、環状永久磁石220から生じる磁束を通す閉磁路に無駄がなく、漏れ磁束を少なくして永久磁石の磁力を効率的に使用することができる。
【0072】
また、可動プランジャ215の周鍔部216を上部磁気ヨーク210と環状永久磁石220の上面に形成した補助ヨーク225との間に配置したので、可動プランジャ215のストロークを環状永久磁石220の厚みと可動プランジャ215の周鍔部216の厚みとで調整することができる。
このため、可動プランジャ215のストークに影響する累積の部品数や形状公差を最小限とすることができる。しかも、可動プランジャ215のストローク調整を環状永久磁石220の厚み及び可動プランジャ215の周鍔部216の厚みのみで行うので、ストロークのバラツキを極小化することができる。
【0073】
なお、上記実施形態においては、接点装置100の消弧室102を角筒体104及び固定接点支持絶縁基板105で構成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、他の構成とすることができる。例えば、図10及び図2(b)に示すように、セラミックスや合成樹脂材によって角筒部301とその上端を閉塞する天面板部302とを一体成形して桶状体303を形成し、この桶状体303の開放端面側にメタライズ処理して金属箔を形成し、この金属箔に金属製の接続部材304をシール接合して消弧室102を形成するようにしてもよい。
【0074】
また、接点機構101も上記実施形態の構成に限定されるものではなく、任意の構成の接点機構を適用することができる。
例えば、図11(a)及び(b)に示すように、支持導体部114にC字状部115における上板部116を省略した形状となるL字状部160を連結するようにしてもよい。この場合でも、固定接触子111及び112に可動接触子130を接触させた閉極状態で、L字状部160の垂直板部を流れる電流によって生じる磁束を固定接触子111及び112と可動接触子130との接触部に作用させることができる。このため、固定接触子111及び112と可動接触子130との接触部における磁束密度を高めて電磁反発力に抗するローレンツ力を発生させることができる。
【0075】
また、図12(a)及び(b)に示すように、凹部132を省略して平板状に形成するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、可動プランジャ215に連結軸131を螺合させる場合について説明したが、螺合に限らず、任意の接続方法を適用することができ、さらには可動プランジャ215と連結軸131とを一体に形成するようにしてもよい。
【0076】
また、連結軸131と可動接触子130との連結が、連結軸131の先端部にフランジ部131aを形成し、接触スプリング134及び可動接触子130を挿通してから可動接触子130の下端をCリングで固定する場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、連結軸131のCリング位置に半径方向に突出する位置決め大径部を形成し、これに可動接触子130を当接させてから接触スプリング134を配置し、この接触スプリング134の上端をCリングによって固定するようにしてもよい。
【0077】
また、上記実施形態においては、可動プランジャ215の下端側に近接させて円筒状補助ヨーク203を配置した場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、磁気ヨーク201を、図13(a)及び(b)に示すように有底円筒状に形成し、補助ヨーク203を、磁気ヨーク201の底板部202に沿う円環状板部203aとこの円環状板部203aの内周面から上方に立ち上がる円筒部203bとで構成するようにしてもよい。
【0078】
また、図14(a)及び(b)に示すように、U字状の磁気ヨーク210の底板部202に貫通孔202aを形成し、この貫通孔202a内に凸状の補助ヨーク203を嵌合させ、この補助ヨーク203の小径部203cを可動プランジャ215に形成した挿通穴217に挿通するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、消弧室102及びキャップ230で密封容器を構成し、この密封容器内にガスを封入する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、遮断する電流が低い場合にはガス封入を省略するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10…電磁接触器、11…外装絶縁容器、100…接点装置、101…接点機構、102…接点収納ケース、104…角筒体、105…固定接点支持絶縁基板、111,112…固定接触子、114…支持導体部、115…C字状部、116…上板部、117…中間板部、118…下板部、118a…接点部、121…絶縁カバー、122…L字状板部、123,124…側板部、125…嵌合部、130…可動接触子、130a…接点部、131…連結軸、132…凹部、134…接触スプリング、140…絶縁筒体、141,142…磁石収納ポケット、143,144…アーク消弧用永久磁石、145,146…アーク消弧空間、160…L字状部、200…電磁石ユニット、201…磁気ヨーク、203…円筒状補助ヨーク、204…スプール、208…励磁コイル、210…上部磁気ヨーク、214…復帰スプリング、215…可動プランジャ、216…周鍔部、220…永久磁石、225…補助ヨーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔を保って配置された一対の固定接触子及び当該一対の固定接触子に対して接離自在に配設された可動接触子と、前記可動接触子を駆動する電磁石ユニットとを備え、
前記電磁石ユニットは、
プランジャ駆動部を囲む磁気ヨークと、
先端が前記磁気ヨークに形成された開口を通じて突出され且つ復帰スプリングで付勢された可動プランジャと、
該可動プランジャの突出端側に形成された周鍔部を囲むように固定配置された前記可動プランジャの可動方向に着磁された環状永久磁石と
を備えていること特徴とする電磁接触器。
【請求項2】
前記磁気ヨークは、上部を開放し励磁コイルを巻装し且つ中央部に前記可動プランジャを可動可能に配置したスプールを支持する断面U字状の磁気ヨークと、該磁気ヨークの上部開放部に橋架された上部磁気ヨークとで構成され、前記上部磁気ヨークに前記可動プランジャを挿通する開口が形成され、該開口の周囲に前記環状永久磁石が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【請求項3】
前記環状永久磁石は、前記上部磁気ヨークの外面における開口の周囲に配置され、前記上部磁気ヨークとは反対側に前記可動プランジャの前記周鍔部の前記上部磁気ヨークとは反対側に対向する補助ヨークを備えていることを特徴とする請求項2に記載の電磁接触器。
【請求項4】
前記永久磁石の厚みが前記可動プランジャの周鍔部の厚みと当該可動プランジャのストロークとの和に設定されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電磁接触器。
【請求項5】
少なくとも前記固定接触子及び可動接触子と、前記可動プランジャとがガス封入容器内に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電磁接触器。
【請求項1】
所定間隔を保って配置された一対の固定接触子及び当該一対の固定接触子に対して接離自在に配設された可動接触子と、前記可動接触子を駆動する電磁石ユニットとを備え、
前記電磁石ユニットは、
プランジャ駆動部を囲む磁気ヨークと、
先端が前記磁気ヨークに形成された開口を通じて突出され且つ復帰スプリングで付勢された可動プランジャと、
該可動プランジャの突出端側に形成された周鍔部を囲むように固定配置された前記可動プランジャの可動方向に着磁された環状永久磁石と
を備えていること特徴とする電磁接触器。
【請求項2】
前記磁気ヨークは、上部を開放し励磁コイルを巻装し且つ中央部に前記可動プランジャを可動可能に配置したスプールを支持する断面U字状の磁気ヨークと、該磁気ヨークの上部開放部に橋架された上部磁気ヨークとで構成され、前記上部磁気ヨークに前記可動プランジャを挿通する開口が形成され、該開口の周囲に前記環状永久磁石が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【請求項3】
前記環状永久磁石は、前記上部磁気ヨークの外面における開口の周囲に配置され、前記上部磁気ヨークとは反対側に前記可動プランジャの前記周鍔部の前記上部磁気ヨークとは反対側に対向する補助ヨークを備えていることを特徴とする請求項2に記載の電磁接触器。
【請求項4】
前記永久磁石の厚みが前記可動プランジャの周鍔部の厚みと当該可動プランジャのストロークとの和に設定されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電磁接触器。
【請求項5】
少なくとも前記固定接触子及び可動接触子と、前記可動プランジャとがガス封入容器内に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電磁接触器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−243583(P2012−243583A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112906(P2011−112906)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(508296738)富士電機機器制御株式会社 (299)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(508296738)富士電機機器制御株式会社 (299)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
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