説明

電磁放射の光学的な分割および変調のための装置

【課題】音響光学素子を用いて、単色のコヒーレントな電磁放射を光学的に分割および変調するための装置において、音波のビートによる光の振幅変動を抑制する。
【解決手段】装置は、ビーム源2と、ビーム源によって生成されたビーム4を複数の部分ビームL1〜4に分割する音響光学素子8と、その下流側に配置される変調器22と、ビーム4を分割するための電気信号12を音響光学素子8に印加するための信号生成器14とを含み、分割されるビームの数にかかわらず、個々の部分ビームL1〜4の強度を一定に保つように、音響光学素子8およびその下流側に配置される音響光学変調器22の駆動波形を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに示される特徴による、電磁放射、特に単色のコヒーレントな放射、特に光ビームおよび/またはレーザビームの光学的な分割および変調のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような装置は、主としてレーザプリンタまたはリソグラフィシステムなどにおいて、例えば光スイッチまたは光変調器として、特に光ビームおよび/またはレーザビームなどのビームを光学的に分割するために使用されている。そのような装置は、ビームを複数の異なるビームに分割するために、異なる周波数を有する複数の電気信号によって制御される音響光学素子を使用して、ビームおよび/または光、例えばレーザビームを複数のビームへと分割するが、例えばレーザプリンタまたはリソグラフィ装置に組み合わせられたとき、複数のレーザビームを、それらのエネルギーおよびそれらの位置の両者に関して影響を及ぼすことができ、したがって速度の点で、ただ1つのレーザビームを用いて動作する従来からの装置に比べて大幅に有利である。これにもかかわらず、音響光学素子を複数のレーザビームの生成に使用するとき、いくつかの問題が生じる。最大の問題の1つは、音響光学素子において回折を受けるビームのエネルギーが、生成されるビームの数、したがって音響光学素子へと加えられる周波数の数とともに異なり、結果として個々のビームのエネルギーの変化につながる点にある。さらに、音響光学素子に同時に供給される複数の周波数を使用するとき、個々の周波数の間でビートが生じ、結果として個々のビームの周期的なエネルギーの変動につながることで、ビームエネルギーに時間的な変化が生じる。装置の品質が、これらの現象に起因する大きな悪影響を被る。
【0003】
したがって、例えば、音響光学素子において電気信号の振幅が線形に変化せず、さらには個々の周波数におけるビート効果ゆえに、信号の振幅に周期的な変化が生じるという問題が生じることがある。これが、振幅の制御の精度および速度の点で大幅な複雑さにつながり、信号の振幅によるビームエネルギーのその場での制御の実行を、ほとんど不可能にしている。さらに、個々の周波数の重畳に起因して生じる非線形な光学的および電子的効果が、高次のビート周波数の発生につながり、この高次のビート周波数の発生は、追加の回折レーザビームを生じさせ、かつレーザプリンタまたはレーザリソグラフィシステムにおける書込みおよび露光のプロセスを妨げる。
【0004】
単色のコヒーレントな電磁放射の放射源としてレーザ源を含み、その光またはレーザビームを、音響光学素子を使用して複数のビームに分割する装置であって、音響光学素子が、レーザビームを複数の異なるビームに分離または分割するために、異なる周波数を有する複数の電気信号によって制御される装置が、米国特許第5,890,789号明細書から知られている。このために、信号生成器、画像プロセッサ、変調回路、および強度制御回路が、第1に、レーザビームを複数のビームに分割できるようにするために、第2に、生成されるビームのエネルギーを一定に保つために、設けられている。強度制御回路が、レーザ源の光強度を生成すべきビームの数に応じて制御し、生成されるレーザビームの数にかかわらずそれらの強度を一定に保つことができるように、レーザ源の光強度が、生成されるビームの数に比例することを保証する。レーザ源を調節することによって個々のレーザビームの強度を一定に保つことで、上述の信号生成器のための電気信号の振幅信号を一定に保ち、かつ振幅の変化に起因する音響光学システムのビート挙動の変化を防止できると考えられている。しかしながら、上述の装置においては、1つには、例えば商用のレーザリソグラフィシステムにおいて求められるような高速でのレーザ源の調節が、きわめてわずかな種類のレーザにおいてのみ可能であり、したがって装置の利用可能性がきわめて限られるという問題が生じる。もう1つには、高次のビート周波数が、音響光学素子において個々の周波数の重畳に起因して生じ、レーザのエネルギーに周期的に影響を及ぼし、例えばレーザプリンタまたはレーザリソグラフィシステムにおける書込みおよび露光のプロセスを妨げる、追加の回折レーザビームを生み出すという上述した影響が依然として残る。
【0005】
米国特許第5,890,789号の1つの代替実施形態において、レーザビームを複数のビームに分割し、かつ生成されるビームのエネルギーを一定に保つために、連続する複数のビームを遮断することができる機械的な遮断部材が設けられる。この場合、例えばレーザプリンタまたはレーザリソグラフィシステムにおいてデータセットの書込みに使用されるビームの数にかかわらず、音響光学素子に加えられる周波数の数が、使用されないビームを遮断するために、遮断部材を使用して一定に保たれ、したがって使用されるビームの強度が、生成されるレーザビームの数にかかわらず一定に保たれる。しかしながら、これは、例えばレーザプリンタまたはレーザリソグラフィシステムにおいて、書込みおよび露光のプロセスを妨げる別の問題につながる。より多数の周波数が使用されるため、上述のビート現象が増幅され、異なる周波数の組み合わせの可能性の数が増すため、事態がさらに複雑になる。この結果、個々のレーザビームの強度が、走査の時間的経過において周期的に一定のままでなくなり、分割されたビームについて一定の一様なエネルギーの分布を保証することが不可能になる。
【0006】
さらに、例えば波長に関して、レーザ源と追加のビーム源との間の相違がわずかであっても、回折されるビームのブラッグ角に関する相違につながり、レーザビームの焦点のずれにつながり、レーザプリンタまたはレーザリソグラフィシステムにおける書込みおよび露光のプロセスを妨げるという問題が生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,890,789号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
たとえ補正信号が、使用されるレーザビームの数に応じて計算される場合でも、個々の周波数の重畳ゆえにビート現象が生じ、使用されるレーザビームの数にかかわらず時間的なエネルギー変動が生じ、レーザプリンタまたはレーザリソグラフィシステムにおける書込みおよび露光のプロセスを妨げるという影響は残る。
【0009】
したがって、本発明の根底にある目的は、上述の形式の装置およびさらに関連の方法を、上述の問題および困難性に改善された解決策がもたらされるよう、さらに発展することにある。さらに、装置が、簡潔かつ機能的に信頼できる構成を有するべきであり、さらに/または放射ビームの数にかかわらず、個々のビームの強度を一定に保つことができることが保証されるべきである。
【0010】
また、生成されるビームの間隔を互いに無関係に調節できるべきである。
【0011】
さらに、生成されるビームの位相を、互いに無関係に変化させることが可能であるべきである。
【0012】
また、分割の手順および変調の手順を、互いに無関係に配置される光学経路上の点において実行でき、さらには/あるいは互いに離して局所的に実行できるべきである。
【0013】
さらに、分割の手順および変調の手順を、互いに固定された時間的関係にて電子制御によって実行できるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、請求項1に記載の特徴にしたがって達成される。
【0015】
本発明の装置は、構造的な複雑さの度合いが低いにもかかわらず高い機能的信頼性で、放射源、特に光源および/またはレーザ源によって放射されるビームを、互いに所望の予め指定できる距離にある所望の数のビームへと分割できるようにする。以下で説明される利点および機能的関係は、本発明の方法にも同様に当てはまる。装置は、放射源によって放射されるビームを複数かつ/または予め指定される数のビームに分割するために、異なる周波数を有する複数かつ/または予め指定される数の電気信号によって動作する音響光学素子を含み、方法は、放射源によって放射されるビームを複数かつ/または予め指定される数のビームへと分割するために、異なる周波数を有する複数かつ/または予め指定される数の電気信号によって動作する音響光学素子を使用する。さらに、音響光学素子が必要とする、異なる周波数を有する電気信号を生成する信号生成器が設けられ、さらに個々のレーザビームの強度を調節できるようにする回路、音響光学変調器に焦点合わせされた分割ビームを再生する光学系、および音響光学変調器に焦点合わせされたビームの変調を可能にする回路が設けられる。さらに、変調後の個々の光ビームの強度を調節できるようにする回路が設けられ、好ましくはトリガ回路が設けられ、音響光学部品における個々のプロセスを、特にトリガ回路の下流側の2つの信号生成器によって時間的に整列させることができるようにする。
【0016】
本発明の装置は、特に、本発明の枠組みにおいて、おおむね同じ機能を有する他の構成要素と交換でき、かつ/または状況に適切なやり方で全てをまとめて、あるいは特別な場合には一部を互いに、組み合わせることができる以下の構成要素を含む。すなわち、
放射源によって放射される単色のコヒーレントな電磁放射、特にレーザ源からの光を複数のビームに分割するため、異なるかつ/または予め指定できる周波数を有する複数の電気信号によって動作する音響光学素子と、
音響光学素子が必要とする種々の周波数を有する電気信号を生成する信号生成器と、
音響光学素子において個々のビームの強度、特にレーザビームの強度を、調節および/または制御できるようにする回路(以下では、強度制御回路と称する)と、
音響光学素子において、個々の周波数の互いに対する位相を調節および/または制御できるようにする回路(以下では、位相変調回路と称する)と、
分割されたビーム、特にレーザビームを、好ましくは焦点合わせされた様相で再生する光学系と、
個々の、好ましくは焦点合わせされた部分ビーム、特にはレーザビームを、もう1つの信号生成器による供給される回路によって、互いに別個に変調できるようにする音響光学変調器と、
変調の際に個々のビームの強度、特にレーザビームの強度を、調節および/または制御できるようにする回路(以下では、やはり強度制御回路と称する)と、
音響光学素子および音響光学変調器における個々のプロセスを、互いに時間的に整列および/または同期させることができるようにするトリガ回路とである。
【0017】
本発明によれば、所望の数のビーム、特にレーザビームが、それらを強度および/または位相を調節することによってエネルギーに関して最適にするために、最初は実際の変調プロセスから分離されて生成される。これは、ビートプロセスの防止を可能にするわけではないが、トリガプロセスによる時間的整列ゆえ、異なる周波数の間のビートによるエネルギーの偏差が、常にトリガ信号後の同じ時点において生じる。この結果、ビートゆえに異なる周波数の間で時間的なエネルギー変動が生じても、それは、常にトリガ信号の後の同じ時点において同じ強度で生じる。
【0018】
これは、音響光学素子における異なる周波数の間のビートに基づくエネルギーの時間的な変動を、下流側の音響光学変調器において、強度制御回路を使用して調節できるようにする。例えばレーザプリンタまたはレーザリソグラフィシステムにおいて、レーザビームが走査される時間は、走査領域によって決定されるため、2つのトリガ信号間の時間期間およびトリガ信号の長さは、どちらも固定される。したがって、下流側の音響光学変調器において実行されるエネルギーの時間的変動の補正は、1回だけ調節されればよく、その後に、本発明によってトリガ信号によって周期的に繰り返すことができる。したがって、印刷および露光のプロセスあるいは特定の場合における他のプロセスの全体において、エネルギーの時間的変動を記録する必要がなく、複雑なその場でのエネルギーの記録はない。
【0019】
特別なさらなる発展および実施形態が、従属請求項および本発明の特別な例示の実施形態についての以下の説明において提示され、本発明の方法にも同様に当てはまる。
【0020】
以下で、本発明を、図面に示した例示の実施形態を使用して説明するが、これは、決して本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】装置の原理および特別な用途を示す。
【図2】時間にわたって追跡した、異なる周波数、周波数振幅、および放射エネルギーを有する振動について線図およびライン2Aから2Fを提示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、ビームの分割および変調のための本発明の装置を示しており、単色のコヒーレントな電磁放射を生成する放射源2を有する。放射源および/または光源は、特に、所望の予め指定できるレーザ波長を有するレーザ源として具現化される。簡潔さのため、以下ではレーザ源またはレーザ光のみについて述べるが、これが決して本発明を限定するものではないことを、ここに明記する。レーザビーム4が、レンズまたはレンズシステム、あるいは概して光学系6を介して、例えば水晶、TeO、ZnO、LiNbO、PbMoO、As、GaAsなどのレーザ源2に一致させた材料を含む音響光学素子8へと注入される。レンズシステム6は、好ましくは、ビーム径、ビーム形状などに関して、音響光学素子8の使用のための最適条件を満足するように、選択および/または具現化されることができる。素子8のための結晶が、高周波信号生成器14によって生成された異なる周波数を有する複数の高周波電気信号12を結晶へと供給できるようにする信号送信器10に接続される。結晶において、高周波電気信号が、それらの周波数に応じて材料の屈折率を周期的に変化させる音響波を生み、回折格子をもたらす。放射されたレーザビームが、結晶の音響波が生成されている領域を通過するとき、レーザビーム4と音響波との間に音響光学的な相互作用が存在し、最終的に放射されるレーザビーム4の回折につながる。レーザビーム4の回折の強さは、いわゆるブラッグ条件に従い、結晶へと供給される周波数の波長に応じる。ブラッグ条件によれば、波長λの光が、格子定数dを有する格子(この場合には、音響光学波によって生み出される回折格子)において散乱させられるとき、光は、ブラッグの関係nλ=2dsinΘ(nは、任意の自然数を表わす)にしたがって、角度Θで回折する。
【0023】
例えば4つ(当然ながら、所望に応じて多数であってよい)の周波数など、複数の音響周波数が、音響光学素子8に加えられる場合、供給される周波数の数に応じた入射レーザビーム4の分割がもたらされる。さらに、回折されないレーザビーム4の経路を通るもう1つのビームL0(ゼロ次ビーム)が生じるが、当該用途にとって無意味であるため遮断することができる。図示のとおり、4つの電気信号F1、F2、F3、F4が、信号生成器14によって生み出され、4つの部分ビームL1、L2、L3、L4およびビームL0へのレーザビームの分割をもたらす。ブラッグ条件に従い、供給される電気信号の周波数が、レーザビームの分割の角度を決定する。しかしながら、強度制御回路16によって使用される周波数の振幅を調節することによって、生成されるビームL1、L2、L3、L4の強さまたは強度を調節することも可能である。
【0024】
複数の異なる周波数が重畳させられるとき、いわゆるビート現象が、常に生じる。例えば、あまり相違しない2つの周波数の振動が重畳させられるとき、重畳させられた振動の振幅が、いわゆるビート周波数にて周期的に変化する。複数の周波数が重畳させられるとき、上述した用途においては、これが、個々の部分ビームL1、L2、L3、L4の信号振幅の時間的変化につながる。この影響を少なくするために、個々の周波数の位相を、互いに無関係に結合してずらすことを可能にする位相変調回路18が、個々の部分ビームL1、L2、L3、L4について信号振幅の時間変動を最小限にするため、信号生成器14と素子8との間で、好ましい態様での強度制御のために使用される。
【0025】
その後、音響光学素子8によって生成された部分レーザビームL1、L2、L3、L4は、第2のレンズまたは第2のレンズシステムあるいは光学系20に当たるが、第2のレンズまたは第2のレンズシステムあるいは光学系20の焦点距離は、レンズの中心点と音響光学素子8における音響波の波面の中心との間の距離に等しい。この光学的配置ゆえ、レンズ20の背後に4つのレーザビームが生じ、それらの間隔は、大まかに、レンズ20または光学系の焦点距離および電気信号の周波数の分離のみに応じる。したがって、電気信号の周波数の分離を変化させることによって、ビームL1、L2、L3、L4の間隔を変化させることが可能である。これら4つの部分レーザビームが、レンズ20の焦点距離の距離でレンズ20の背後で再生され、焦点合わせされる。この位置に、図示のとおり、音響光学変調器22が配置されている。音響光学変調器22は、その間隔が、部分ビームL1、L2、L3、L4のビーム間隔に合わせて調節されていて、それぞれが第2の高周波信号生成器22によって生成される同じ周波数の1つの高周波電気信号を結晶に供給できるようにする4つの信号送信器24を備えている。本発明の枠組みにおいて、それぞれが信号送信器および音響光学結晶を有する4つの別個の音響光学変調器を、4つの信号送信器を有する音響光学変調器22の代わりに使用することが可能である。一方では部分ビームへの分割を、他方ではその変調を、互いに無関係に実行できるよう、音響光学変調器22が、予め指定された音響光学素子8からの距離に配置されており、好ましくは光学系20が、音響光学素子8と音響光学変調器22との間のビームの経路に配置されていることが、特に重要である。
【0026】
音響光学変調器22は、音響光学素子8と同様に機能し、例えば水晶、TeO、ZnO、LiNbO、PbMoO、As、GaAsなどのレーザ源2の波長に一致させた材料を含む。高周波の電気信号が、結晶において音響波を生成し、材料の屈折率を音響波の周波数に応じて周期的に変化させ、回折格子を生み出す。放射された部分レーザビームL1、L2、L3、L4が、音響波が生成されている結晶の領域を通過するとき、それぞれの部分ビームと音響波との間に音響光学的な相互作用が存在し、最終的に放射された部分ビームの回折につながる。レーザビームの回折の強さは、結晶へと供給される周波数の波長および振幅に応じる。さらに、もう1つのゼロ次ビームL0が、信号送信器ごとに再び生じるが、当該用途にとって無意味であるため遮断することができる。もう1つのレンズまたはレンズシステム27が、変調器22の下流側にある。
【0027】
高周波信号生成器26において生成される信号は、本発明によれば、4つの信号送信器24のために生成される4つの高周波電気信号Mf1の周波数および位相の両者が一致していることを保証するため、ただ1つまたは少数のクロック生成器によって生成される。上述の用途においては、音響光学変調器22が、例えばレーザプリンタまたはレーザリソグラフィ装置において、信号生成器26によって生成される電気信号の周波数(通常は、高MHzの範囲にある)のみに応じる、高速でのレーザビームのオンおよびオフを可能にするスイッチとして使用される。オンおよびオフのプロセスは、画像信号を供給する画像プロセッサ30によって制御される変調回路28によって調節される。このやり方で、例えばレーザプリンタまたはレーザリソグラフィ装置において再現されるべき構造を、再現されるべき構造を最終的に生み出すスキャナへと送ることができる。
【0028】
光学部品における小さな偏差、および装置においてビームが移動する光学経路の相違ゆえ、ビームL1、L2、L3、L4の強度分布に偏差が存在し得るため、音響光学変調器22における個々のビームそれぞれのエネルギーも、強度制御回路32によって調節することが可能である。本発明によれば、追加のトリガ回路34が、また、音響光学素子8および音響光学変調器22におけるプロセスを互いに時間的に整列および/または同期させることができるようにする。現代のレーザプリンタおよびレーザリソグラフィシステムにおいて、個々のレーザ走査が必要とする時間期間が、走査素子によって固定されている。これは、同じ長さの走査、すなわち同じ時間間隔の走査が、固定の周期的な間隔で繰り返し開始されることを意味している。本発明の装置は、これを利用する。最初に、同じエネルギーを有する4つのレーザビームL1、L2、L3、L4が生成されるよう、音響光学素子8において分割されるレーザビームL1、L2、L3、L4のエネルギーが、強度制御回路16によって互いに一致させられる。上述のビート現象に基づき、これら4つのレーザビームは、位相変調回路18を使用して最小化できる時間的なエネルギー変動を有する。音響光学素子8が、トリガ回路34によって常に同じ時間間隔で周期的に切り替えられるため、ビート現象およびビート現象に関連したエネルギー変動は、常にトリガ信号の開始後の同じ時点で生じる。これが、やはりトリガ回路34によって制御および/または同期化されている音響光学変調器22によって個々のビームL1、L2、L3、L4のエネルギーを制御し、常に一定のエネルギーを有する4つの変調可能なレーザビームを生成することを可能にする。
【0029】
図2は、ビート効果の発生、および図1に示した種々の回路を使用したこれらビート効果の補正の全プロセスを、簡略化した2つの周波数の場合について簡略化した様相で示している。しかしながら、本発明の機能は、使用される任意の所望の数の周波数について、同じままである。ライン2Aおよび2Bは、類似する2つの周波数の2つの振動を示している。これらの振動が重畳させられた場合、ライン2Cによる重畳の振動の振幅は、いわゆるビート周波数にて周期的に変化し、周波数振幅に周期的な最大値および最小値が生じる。結果として、図1にしたがって音響光学素子8の背後に生じるレーザビームは、周波数ビートに応じたエネルギー変動を有し、すなわち個々のビームのエネルギーが、ライン2Dによって示されるとおり周期的に変動する。位相変調回路18を使用して、個々の周波数の位相を互いに対してずらすことで、周波数振幅およびレーザエネルギーにおける変動を最小限にすることができる。また、同じ効果が、重畳の振動における変動、したがって個々のビームのエネルギー変動を最小限にすることができるよう、個々の周波数それぞれの周波数振幅を意図的に変化させることができる強度制御回路16によって達成される。このようにして、位相変調回路18および/または強度制御回路16による補正が、個々のビームのエネルギーを、ライン2Eに従い、小さなエネルギー変動を除けば全時間期間にわたってほぼ一定に保つことを可能にする。音響光学素子8の制御が、トリガ回路34によって調節されているため、ライン2Eに示した小さなエネルギー変動は、常にトリガ信号後の同じ時点において生じ、すなわち変動が、時間的に正確に定まっている。これが、やはり本発明においてトリガ回路34によって調節または制御される、下流側の音響光学変調器22および/または強度制御回路32を使用して変動を補正することを可能にしている。最終的に、ライン2Fによって示されているように、一定のエネルギーを有し、いかなる時間的なエネルギー変動も有さないビームが、この補正によって生み出される。
【0030】
本発明は、レーザビームの分割および変調を同時に行うただ1つの音響光学素子のみを有するレーザビームの分割および変調のための装置に対して、大きな利点を有する。特に、分割の常に時間的に変化するシーケンスおよび加えられる周波数の変化する数に起因して、ビート現象および個々のレーザビームのエネルギー分布が、常時かつ予測不可能に変化するような、分割のプロセスの間に周期的に繰り返す信号が、生成されることがなくなる。個々のビームのエネルギーまたは比例変数のその場での記録が、過去においては必要とされ、これが大きな技術的複雑さに関連していた。この複雑さは、図1を使用して説明したようなレーザビームの分割および変調のための装置においては、もはや不要である。個々のビームL1、L2、L3、L4のエネルギー変動が、常にトリガ信号の後の同じ時間間隔において周期的に生じるため、個々のビームに関して生じるエネルギー変動が、1回だけ測定され、強度制御回路32によって補正されなければならない。次いで、この補正を、トリガ回路34のトリガ信号を使用して時間的に相関させて音響光学変調器22へと繰り返し供給でき、したがって個々のビームL1、L2、L3、L4に関するエネルギー変動のその場での記録は不必要になる。図1を使用して説明した本発明の他の利点は、レーザビームが分割される位置(音響光学素子8)と、個々のビームが変調される位置(音響光学変調器22)とが、幾何学的に互いから分離されている点にある。これが、音響光学素子8および/または音響光学変調器22を照らすために必要な光学的条件に、ビームの経路を最適に一致させるためのレンズシステム6、20、27の適切な選択の使用を可能にする。これは、分割のプロセスおよび変調のプロセスが、1つのステップにおいて生じ、したがって個々の光学的条件の間の妥協を見つけることが常に必要であり、これが個々の音響光学部品の有効性を損なうことにつながるシステムにおいては不可能である。
【0031】
本発明は、レーザ印刷およびレーザリソグラフィのための上述の用途において使用することができるが、上述の装置および本発明を使用することができる、いくつかの他の用途の領域が存在する。
【0032】
ビーム、特にレーザビームの分割および変調のための上述の装置を、光を、互いに無関係に切り替えられることができ、かつ調節可能なエネルギーを有する平行な光ビームへと分割し、特に追加のレンズシステム27によって、例えばデータ伝送のためのグラスファイバーシステムなどの光学系へと注入するためにも使用することができる。
【0033】
レーザビームの分割および変調のための上述の装置を、光を、互いに無関係に切り替えられることができ、かつ調節可能なエネルギーを有する平行な光ビームへと分割し、複数の平行なレーザビームの放射を励起するために、例えばレーザ活性媒体などの光学システムへと注入するためにも使用することができる。
【0034】
本発明は、上述の用途に使用可能であるが、本発明について、可能であって本発明に含まれるいくつかの変更および修正も存在する。
【0035】
上述した本発明において、音響光学部品を塊状の結晶で製作することが絶対に必要というわけではなく、例えばレーザアブレーション法または他の薄膜製造方法によって製造できる薄膜など、同じ光学的に活性な材料で作られた薄膜も、使用することが可能である。
【0036】
上述した本発明において、入射するレーザビームを4つの部分ビームへと分割することが絶対に必要というわけではなく、それどころかレーザビームを、任意の所望の数のビームへと分割することが可能である。高周波電気信号の数が、部分ビームの数に応じて増加する。生成される部分ビームの数に応じて、音響光学変調器によって所望の数の部分ビームを変調することも可能である。使用される高周波電気信号および信号送信器の数が、部分ビームの数に応じて増加する。
【0037】
最後に、上述した本発明において、レーザ光を使用することが絶対に必要というわけではないことを、ここに明記する。任意の単色のコヒーレントな電磁放射を、光学部品の材料が、電磁放射の波長に一致する限りにおいて、このやり方で分割および変調することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単色のコヒーレントな電磁放射、特に光ビームおよび/またはレーザビームを光学的に分割および変調するための装置であって、ビーム源(2)と、前記ビーム源によって生成されたビーム(4)を複数の部分ビーム(L1、L2、L3、L4)に分割するために、前記ビーム源の下流側に配置された音響光学素子(2)と、変調器(22)と、前記ビーム(4)を分割するために電気信号(12)によって電気音響素子(8)を作動させるための信号生成器(14)とを含み、
前記変調器が、前記音響光学素子(8)の下流側に配置された音響光学変調器(22)として具現化され、前記分割された部分ビーム(L1、L2、L3、L4)が、変調のために前記音響光学変調器(22)に供給され、前記音響光学変調器(22)が、追加の高周波電気信号(Mf1)を用いて制御可能であることを特徴とする、装置。
【請求項2】
光学系(20)が、特に前記部分ビーム(L1、L2、L3、L4)を前記音響光学変調器(22)内または前記音響光学変調器(22)上に焦点合わせするために、前記音響光学素子(8)と前記音響光学変調器(22)との間のビーム経路に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記音響光学変調器(22)が、信号送信器(24)を含み、あるいは複数の音響光学変調器が、信号送信器(24)を備え、前記信号送信器(24)の間隔が、前記部分ビーム(L1、L2、L3、L4)の間隔に一致することを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
第2の高周波信号生成器(26)が、前記音響光学変調器(22)のための高周波電気信号(Mf1)を生成するために設けられること、および/または前記第2の高周波信号生成器(26)が、特に信号クロック生成器によって周波数および位相位置の両者に関して一致した高周波信号(Mf1)を生成することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
変調回路(28)および/または強度制御回路(32)が、前記第2の高周波信号生成器(26)と前記音響光学変調器(22)との間に配置され、追加の信号、特に画像プロセッサ(30)からの画像信号が、好ましくは前記変調回路(28)に供給されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
トリガ回路(34)が設けられ、トリガ回路(34)によって、前記第2の高周波信号生成器(26)、および前記音響光学素子(8)を制御するために設けられた前記信号生成器(14)の両方を制御することができ、異なる周波数を有する電気信号(F1、F2、F3、F4)が、前記音響光学素子(8)によって生成されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記トリガ回路(34)が、前記音響光学素子(2)および前記音響光学素子(2)の下流側に配置された音響光学変調器(22)の両者において、個々のプロセスを互いに時間的に整列および/または同期させるように具現化されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記信号生成器(14)の前記電気信号(F1、F2、F3、F4)の強度を制御するための回路(16)および/または前記信号生成器(14)の前記電気信号(F1、F2、F3、F4)の位相を変調するための回路(18)が、前記信号生成器(14)と前記音響光学素子(8)との間に配置されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記音響光学素子(8)および前記音響光学変調器(22)が、空間的に分離されて配置され、かつ/または互いから離して配置され、前記音響光学素子(8)において、前記ビーム(4)が、部分ビーム(L1、L2、L3、L4)に分割され、好ましくは前記ビーム(4)から空間的に分離されて部分ビーム(L1、L2、L3、L4)に分割され、前記部分ビーム(L1、L2、L3、L4)が、前記音響光学変調器(22)において変調されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
部分ビーム(L1、L2、L3、L4)に分割される単色のコヒーレントな電磁放射の光学的な分割および変調のための方法であって、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置の機能性を特徴とする、方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−212172(P2012−212172A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−152082(P2012−152082)
【出願日】平成24年7月6日(2012.7.6)
【分割の表示】特願2008−528417(P2008−528417)の分割
【原出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(502023653)ハイデルベルク・インストルメンツ・ミクロテヒニツク・ゲー・エム・ベー・ハー (5)
【Fターム(参考)】