説明

電磁波シールドガスケット

【課題】導電性、弾力性に優れ、耐熱性を向上させることにより、リフロー半田付けによる表面実装可能な電磁波シールドガスケットを提供する。
【解決手段】耐熱弾性高分子材料製の長尺芯材11の外周面の一部である接合用面と、耐熱性樹脂フィルム13の表面に易半田付性の導電性薄膜層14が形成された導電性薄膜形成フィルム20の導電性薄膜層14側とが一体的に接合され、長尺芯材11と導電性薄膜形成フィルム20よりなるシールド材本体10の外周に、易半田付性を有する導電性線材15を螺旋状に巻回し固定して電磁波シールドガスケット1を形成する。長尺芯材11と導電性薄膜形成フィルム20を接合したシールド材本体10の外周に易半田付性の導電性線材15を巻回しただけの単純な構造であるため、材料費が安価であり作業工程を簡素化することができ、高い電気的導通性を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温環境下において耐熱性を有する電磁波シールドガスケット、特に自動実装装置により印刷回路基板等に自動実装するに際して有利な耐熱性電磁波シールドガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品が組み込まれた各種電子機器においては、電磁干渉または電波障害対策のため、基板等に電磁波シールドガスケットが取り付けられる。これらの電子機器が小型化される傾向から、電磁波シールドガスケットも小型化が要求され、電子部品と同様に表面実装によって装着されるようになった。こうした用途の電磁波シールドガスケットは、電気伝導度が良好で、弾性回復力が優れ、かつ小型であり、加えて半田付け温度に耐え得る耐熱性能が要求される。
【0003】
前記表面実装技術を説明すると、電磁波シールドガスケット等の表面実装部品を表面実装装置の吸着ヘッドによって吸着し、プリント配線基板上に搭載後、吸着ヘッドを表面実装部品から離し、局所加熱装置により加熱することによって実装および半田付けが行われる。半田付けに際して、一般的にはプリント配線基板上で表面実装部品を接続する箇所にあらかじめ半田金属を供給し、表面実装部品を配置しながら融着するリフロー半田付けが行われる(例えば、特許文献4参照)。
【0004】
また表面実装技術は、元々回路上に配置される半導体等の電子部品を対象として開発されたものであるが、近年、電磁波シールドガスケット等のシールド部品も対象として拡大されてきている。
【0005】
前記表面実装の要求を満たすべく電磁波シールドガスケットの公知例として、本出願人により先に提案した特許文献1に記載されたものがある。これを、図6に基づいて説明すると、図中100は電磁波シールドガスケットである電気接触端子で、絶縁発泡ゴム110を芯材とし、絶縁非発泡ゴムコーティング層120を介して耐熱ポリマーフィルム130が接合され、その外周表面に金属層140が形成されている。この電磁波シールドガスケット100は、外周面に金属層140を含む耐熱ポリマーフィルム130が設けられているため電気伝導度に優れ、回路基板等に対して半田付けが可能である。また絶縁非発泡ゴムコーティング層120にシリコーンゴム系材料、耐熱ポリマーフィルム130にポリイミド樹脂系フィルムを使用することにより、電磁波シールドガスケット100として耐熱性を損なうことなく、良好な保持性能を確保している。このため電磁波シールド用の通常のガスケットとしては勿論、リフロー半田付け可能なガスケットとして印刷回路基板に表面実装することができる。
【0006】
また表面実装可能な電磁波シールドガスケットとして、特許文献2には、ポリマーに導電性粒子を分散させた発泡性材料の表面の1つに、半田付け可能な金属層を接着したガスケットが提案されている。このガスケットは、弾力性を有する導電性ポリマーと金属層の組合せにより構造が簡単で、表面実装装置(SMT:Surface Mount Technology)を用いて印刷回路基板上へ効率的に装着することができる。
【0007】
さらに電磁波シールドガスケットとして、特許文献3には特許文献2に記載の電磁波シールドガスケットにおける金属層に換え、金属線材をコイル形状に形成したものが開示されている。このガスケットは金属製の線材のみで構成され、両面テープなど接着用樹脂成分を使用しないので、高温下、低温下において弾性が劣化することなく導電性能を良好に保持することができ、接着剤を使用しないので高温下においても樹脂成分が溶出することがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−014942号公報
【特許文献2】特表2002−510873号公報
【特許文献3】特開2002−208792号公報
【特許文献4】特開平05−211390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前掲の特許文献1に記載された電磁波シールドガスケットは、芯材として発泡体を用い、その外周に絶縁非発泡ゴムコーティング層を介して、金属層を形成した耐熱ポリマーフィルムを設けたものである。しかしながら金属層を形成したポリマーフィルムは一般に高価であり、芯材に接合する際の作業工程が複雑になる。さらに芯材が有する弾力性に対してポリマーフィルムの材質、厚みを程よく適合させなければ、ガスケットに必要な柔軟性が損なわれるおそれがある。
【0010】
前掲の特許文献2に記載された電磁波シールドガスケットは、ポリマーに導電性粒子を分散させることによって導電体としたものであるが、十分な導電性を具備させるためには、ポリマーに対して導電性粒子を多量に分散させる必要があり、その結果ポリマー本来に有する物理的特性を損ない、弾力性が失われたり強度が著しく低下することになる。
【0011】
さらに前掲の特許文献3に記載された電磁波シールドガスケットは、金属層に換えて単に金属製線材をコイル状に巻いただけのもので、巻きつけ用の芯材に相当するものがなく、回路基板等に装着した場合に面接触せず点接触になるため、電気的導通性が不安定になりやすい。そしてこのガスケットの構成より、自動実装装置による装着を想定したものではない。
そこで本発明の目的は、導電性、弾力性に優れ、かつリフロー半田付けによる表面実装可能な電磁波シールドガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明の第1の構成の耐熱性電磁波シールドガスケットは、耐熱弾性高分子材料製の長尺芯材の外周面の一部である接合用面と、耐熱性樹脂フィルムの両面のうち少なくとも一方の面に易半田付性の導電性薄膜層が形成された導電性薄膜形成フィルムにおける前記耐熱性樹脂フィルムの他方の面とが接合され、前記接合された長尺芯材と導電性薄膜形成フィルムとからなるシールド材本体の外周に易半田付性の導電性線材を螺旋状に巻回し固定してなるものである。
【0013】
本発明の第2の構成は、前記導電性薄膜層が、易半田付性の金属薄膜層または金属箔層である。
【0014】
本発明の第3の構成は、銅、錫またはこれらの合金より選ばれた易半田付性金属である。
【0015】
本発明の第4の構成は、前記導電性線材が、樹脂製線材に対して銅、錫またはこれらの合金より選ばれた易半田付性金属によりメッキを施し薄膜を形成したものである。
【0016】
本発明の第5の構成は、前記長尺芯材を構成する耐熱弾性高分子材料が、発泡体、中空体、もしくは稠密体を含む形態の加硫ゴムである。
【0017】
本発明の第6の構成は、前記耐熱弾性高分子材料よりなる長尺芯材と前記導電性薄膜形成フィルムとの接合、および前記シールド材本体の外周に対し螺旋状に巻回する導電性線材の固定が、熱硬化性耐熱接着剤を用いた接着によるものである。
【0018】
本発明の第7の構成は、前記電磁波シールドガスケットが、リフロー半田付けによる表面実装に用いられるものである。
【0019】
本発明の第8の構成は、次の工程を含む電磁波シールドガスケットの製造方法である。
a)少なくとも一方の面に導電性薄膜層を形成した耐熱性樹脂フィルムの他方の面に耐熱性接着剤を塗工する工程、
b)前記耐熱性樹脂フィルムの耐熱性接着剤塗工面に、耐熱弾性高分子材料製の長尺芯材の外周面の一部である接合用面を接合しシールド材本体を形成する工程、
c)前記シールド材本体の外周または導電性線材の少なくとも一方に耐熱性接着剤を塗工した後、前記導電性線材を巻回固定する工程。
【0020】
なお、明細書において易半田付性の金属とは、材料表面において半田付けが容易ないし可能な性質を有する金属をいう。
【発明の効果】
【0021】
前記構成によって、本発明は次の効果を奏する。
(1)長尺芯材と導電性薄膜形成フィルムを接合したシールド材本体の外周に易半田付性の導電性線材を巻回しただけの単純な構造であるため、材料費が安価であり作業工程を簡素化することができる。そして前記導電性線材が金属で構成されているので、外被に導電性布帛を用いた場合と比べてはるかに、高い電気的導通性を確保することができる。
【0022】
(2)さらに電磁波シールドガスケットとして好適な弾力性および優れた耐熱性を具備しているため、特に高温下で表面実装する際のリフロー半田付けに適したものとなる。また好ましくはこの導電性線材を圧延して断面扁平な形状とすることにより、回路基板等と面接触し、上下間圧縮や長手方向伸縮に柔軟に対応して安定した形状を保持するとともに、さらに高い電気的導通性を確保してシールド効果の向上に貢献することができる。
【0023】
(3)シールド材本体外周に導電性線材を巻回した場合、金属箔を被覆した場合と比べて有利な熱的効果を得ることができる。すなわち、半田付けに際して導電性線材に熱を加えたとき、金属箔のように面方向に熱が拡散することなく、線方向に伝導するだけであるので、供給する熱量を低減化し熱源を小型化することができる。また金属箔を被覆した場合のようにシールド材本体側に熱がこもることなく、速やかに放熱するためシールド材本体を構成する長状芯材や接着剤を熱的損傷から防止し、良好な弾力性を維持することができる。
【0024】
(4)シールド材本体外周側の接着剤としてシリコーンゴム系等の接着材料を用いることにより、耐熱性に優れ、硬化後に再度溶融することなく信頼性の高い接着力を保持できる。また長尺芯材の任意の面と金属薄膜とを接合する接着剤を、ポリイミド系樹脂材料を用いると一層耐熱性に優れ、特に回路基板等に半田付けをする場合に溶融することがなく安定した形状を保持することができる。
【0025】
(5)シールド材本体の長尺芯材に、発泡性材料でなく気泡空間のない稠密組織を有する非発泡材料を用いた場合は、断面形状を中空体形成とすることにより、弱い力を加えるだけで回路基板等と確実に密接し、外周表面に発泡性材料によっては得られない稠密な表面を有するので、長尺芯材の外周に巻回した導電性線材が内側に向けて侵入することによる変形がなく、また安定した圧縮復元性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る電磁波シールドガスケットを示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電磁波シールドガスケットを示す側面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る電磁波シールドガスケットを示す断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る電磁波シールドガスケットを示す側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る長尺芯材の形状を変化させた例を示す断面図である。
【図6】従来の電磁波シールドガスケットを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の第1の形態は、耐熱弾性高分子材料製の長尺芯材の外周面の一部である接合用面と、耐熱性樹脂フィルムの両面のうち少なくとも一方の面に易半田付性の導電性薄膜層が形成された導電性薄膜形成フィルムにおける前記耐熱性樹脂フィルムの他方の面とが接合され、前記接合された長尺芯材と導電性薄膜形成フィルムとからなるシールド材本体の外周に易半田付性の導電性線材を螺旋状に巻回し固定するものである。
【0028】
本発明の第2の形態は、前記導電性薄膜層は、易半田付性の金属薄膜層または金属箔層を形成したものである。
【0029】
本発明の第3の形態は、前記導電性線材は、銅、錫またはこれらの合金より選ばれた易半田付性金属である。
【0030】
本発明の第4の構成は、前記導電性線材が、樹脂製線材に対して銅、錫またはこれらの合金より選ばれた易半田付性金属によりメッキを施し薄膜を形成したものである。
【0031】
本発明の第5の形態は、前記長尺芯材を構成する耐熱弾性高分子材料は、発泡体、中空体、もしくは稠密体を含む形態の加硫ゴムである。
【0032】
本発明の第6の形態は、前記耐熱弾性高分子材料よりなる長尺芯材と前記導電性薄膜形成フィルムとの接合、および前記シールド材本体の外周に対し螺旋状に巻回する導電性線材の固定が、熱硬化性耐熱接着剤を用いた接着によるものである。
【0033】
本発明の第7の形態は、前記電磁波シールドガスケットが、リフロー半田付けによる表面実装に用いられるものである。
【0034】
本発明の第8の形態は、次の工程を含む電磁波シールドガスケットの製造方法である。
a)少なくとも一方の面に導電性薄膜層を形成した耐熱性樹脂フィルムの他方の面に耐熱性接着剤を塗工する工程、
b)前記耐熱性樹脂フィルムの耐熱性接着剤塗工面に、耐熱弾性高分子材料製の長尺芯材の外周面の一部である接合用面を接合しシールド材本体を形成する工程、
c)前記シールド材本体の外周または導電性線材の少なくとも一方に耐熱性接着剤を塗工した後、前記導電性線材を巻回固定する工程。
【実施例】
【0035】
本発明の好ましい実施の形態に係る電磁波シールドガスケットを図1、図2に示す。
本発明の実施の形態に係る耐熱性電磁波シールドガスケット1は、耐熱弾性高分子材料製の長尺芯材11の外周面の一部である接合用面と、耐熱性樹脂フィルム13の両面の内一方の面に易半田付性の導電性薄膜層14が形成された導電性薄膜形成フィルム20における耐熱性樹脂フィルム13の他方の面とが接合され、長尺芯材11と導電性薄膜形成フィルム20よりなるシールド材本体10の外周に、易半田付性を有する導電性線材15を螺旋状に巻回し固定してなるものである。なお、導電性薄膜層14は、耐熱性樹脂フィルム13の表面だけでなく、両面に設けても良い。この場合は、長尺芯材11の作用面の一部である接合面と接合されるのは、導電性薄膜形成フィルム20のどちらの面であってもよい。
【0036】
電磁波シールドガスケット1の長尺芯材11に用いる耐熱性高分子材料としては、弾性、および耐熱性に優れた発泡性または非発泡性の高分子材料から選択することができる。例えばポリテトロフルオロエチレン等のフッ素樹脂、耐熱性シリコーンゴム等が挙げられる。なお、発泡性高分子材料では、導電性線材15を巻回する際に圧力が加わり、導電性線材15が長尺芯材11の材料組織の内方に食い込む安定した形状を得ることが難しい場合がある。したがって何れかと言えば、表層が稠密なスキン(皮膜)層として作用し、外周表面に外力が加わっても該部分に変形や損傷を起こし難い非発泡性の前記高分子材料がより好ましく、特に耐熱性の優れた非発泡性シリコーンゴム系材料が好ましい。
【0037】
しかし非発泡性材料を用いた場合、長尺芯材11が全体として圧縮弾性が少なからず低下する傾向がある。このため、長尺芯材11の外周形状に適宜窪みを設けたり、必要により断面を中空形状にすることによりこうした問題を解消することができる。長尺芯材11断面形状は、装着箇所に応じ、または素材の物性に応じて任意の形状とすることができる。例えば、多角形状として三角形、四角形、五角形、六角形等、曲線形状として円形、楕円形、欠円形、また前記多角形と曲線形との組合せ、さらにはこれらの形状に対し切欠き形状としたものや凹凸を設けた形状等があげられる。長尺芯材11の断面の中空部16の形状も、外縁の断面形状等に合わせて相似形、あるいは長尺芯材11の断面とは別の各種形状でよく、類似形、異形の各種形状等から選ぶことができる。例えば、図5にこれらの一部を例示する。
【0038】
一方前記長尺芯材11に一体化して接合する導電性薄膜形成フィルム20は、耐熱性樹脂フィルム13の少なくとも一方の面に金属薄膜層14を形成したものである。すなわち導電性薄膜形成フィルム20は有効な電気的導通性を確保するとともに、シールド材本体10全体の形状を安定させるための支持体となるものである。耐熱性樹脂フィルム13としては、ポリイミド系、エポキシ系、シリコーン系、フェノール系等の樹脂を用いたフィルムが好ましく、また、金属薄膜層を積層した耐熱性樹脂フィルムの代わりに金属箔そのものを用いても良い。なお耐熱性樹脂フィルムを使用する場合には、工業的に一般利用されていることからポリイミド樹脂系フィルムが特に好適である。耐熱温度としては、半田付けに耐えうる温度であるとの観点から250℃以上を有する必要があり、好ましくは300℃以上、更に好ましくは350℃以上である。
【0039】
また耐熱性樹脂フィルム13の少なくとも一方の面に形成する導電性薄膜層14としては、易半田付性、導電性、耐食性、価格等を考慮して選定される。EMI対策分野で一般的に使用されている銅、ニッケル、錫、銀、金等よりなる材料から1層または多層の金属被膜層14が形成されているが、なかでも電解錫を用いた軟性錫メッキ銅箔が特に好ましい。耐熱性樹脂フィルム13に対する導電性薄膜層14は、無電解メッキ、真空蒸着、各種スパッタリング等によって形成することができるが、これらのなかでは十分な電気的導通性を確保しうる所要厚みの金属薄膜層を形成することができ、大がかりな設備を必要としないことから特に無電解メッキが好ましい。
【0040】
前記長尺芯材11と導電性薄膜形成フィルム20とを一体的に接合する耐熱性接着剤12bとしては、エポキシ系、シリコーン系、フェノール系等の樹脂製接着剤が挙げられるが、耐熱性にすぐれたシリコーンゴム系材料が好ましく、とりわけ取り扱いの簡便な1液型シリコーンゴムが特に好ましく、RTV系シリコーンゴムまたはHTV系シリコーンゴムから選択することができる。接合は耐熱性接着剤12bを、長尺芯材11の所定面または導電性薄膜形成フィルム20の導電性薄膜層14を形成していない裏面のいずれかに塗工を施して行うが、作業性のうえで導電性薄膜形成フィルム20に塗工するのが好ましい。
【0041】
RTV系シリコーンゴムの場合は、大気中の水分との反応によって硬化するものの、硬化するまでに時間がかかるため、何れかと言えば硬化時間の短いHTV系シリコーンゴムの方が好ましく、150℃以上、好ましくは180℃、10秒の条件下で迅速に硬化するため、製造時間を大幅に短縮することができる。硬化した被膜層は熱によって再び溶融することなく、瞬時300℃程度の耐熱温度を有し、250〜270℃でリフロー半田する際の電磁波シールドガスケット1として耐用可能である。
【0042】
長尺芯材11と導電性薄膜形成フィルム20との接合は、耐熱性接着剤12bが硬化にいたる前の液状面に相手面を貼り合わされる。耐熱性接着剤12bの層厚は10〜200μmが好ましく、80〜120μmが特に好ましい。この点、厚みが薄すぎると接着力が低くなり、厚すぎると硬化するのに時間がかかるという問題がある。
【0043】
長尺芯材11と導電性薄膜形成フィルム20とを貼り合わせた後の耐熱性接着剤12bの硬化条件は150℃以上、10秒程度が好適である。
【0044】
長尺芯材11と導電性薄膜形成フィルム20とを一体化したシールド材本体10の外周には、耐熱性接着剤12bと同じまたはそれに準じた接着性、耐熱性を有する耐熱性接着剤12aが塗工されている。耐熱性接着剤12aの層厚は耐熱性接着剤12bと同様、10〜200μmが好ましく、80〜120μmが特に好ましい。この点、厚みが薄すぎると接着力が低くなり、厚すぎると硬化するのに時間がかかるという問題がある。
【0045】
長尺芯材11と導電性薄膜形成フィルム20よりなる接合体の外周に塗工された耐熱性接着剤12a面には、さらに導電性線材15が巻回され固定されている。
【0046】
導電性線材15としては、導電性、価格等を考慮し、導電性薄膜形成フィルム20に用いた金属材料と同様、銅、ニッケル、錫、銀、金等の金属、またはこれらの合金から選定することができる。さらに導電性と耐蝕性を考慮すれば、前記導電性薄膜形成フィルム20と同等の樹脂材料で、例えばポリイミド樹脂に軟性錫メッキ銅を形成するのが特に好ましい。
【0047】
導電性線材15における材料段階での元々の形状は断面円形であるが、これを圧延して断面形状を扁平状の楕円形または矩形に形成することにより、長尺芯材11や導電性薄膜層14よりなる内側層との接触面積が増し、反力が減少して柔軟性が増すことにより各内側層に追従して良好に密着し、導電性の向上と安定した巻回状態を得ることができる。
導電性線材15は、材料元々の線径として0.05〜0.5mm、好ましくは0.3mm程度である。断面円形で巻回した場合、0.05mm以下では断線しやすく、0.5mm以上ではシールド材本体10外周に対して螺旋状に巻回したとき長尺芯材11に追従し難くなる。導電性線材を圧延した場合の厚さは0.01mm以上とするのが好ましく、特に0.02mm以上が好ましい。導電性線材を圧延した場合の厚さは0.01〜0.05mmが好ましく、特に0.02〜0.03mmが好ましい。また、幅は0.3〜0.5mm程度が好ましい。
【0048】
長尺芯材11と導電性薄膜形成フィルム20とにより一体化されたシールド材本体10に導電性線材15を巻回後、耐熱性接着剤12aの硬化条件は、耐熱性接着剤12bの場合と同様、硬化条件は150℃以上、10秒程度が好適である。
【0049】
図3、図4の電磁波シールドガスケット1は、本発明の他の実施の形態を示すものである。すなわち導電性薄膜形成フィルム20の断面形状を、図示したようにU字形に形成したもので、それによって長尺芯材11を補強するとともに導電性線材15を安定して巻回することができ、また半田付けする際、導電性薄膜形成フィルム20の底面両端の屈曲部付近に半田フィレット(突起状の盛り上がり)が形成しやすくなるため、半田付け後の強度が増すことになり一層好ましい。
【0050】
導電性薄膜形成フィルム20の形状としては、図1に示した「一」文字形、図2に示した「U」字形以外の他の形状を適用してもよい。例えば片方のみ屈曲させた「L」字形、中央部を窪ませた「へ」の字形、「W」字形等があげられ、またそれらの屈曲部分が角形や曲線形に形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、電磁波シールドガスケットにおいて、耐熱性ガスケットとしての用途のほか、易半田付性ガスケットとして、表面実装装置による自動実装を可能するものである。
【符号の説明】
【0052】
1 電磁波シールドガスケット
10 シールド材本体
11 長尺芯材
12a 耐熱性接着剤
12b 耐熱性接着剤
13 耐熱性樹脂フィルム
14 導電性薄膜層
15 導電性線材
16 中空部
20 導電性薄膜形成フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱弾性高分子材料製の長尺芯材の外周面の一部である接合用面と、耐熱性樹脂フィルムの両面のうち少なくとも一方の面に易半田付性の導電性薄膜層が形成された導電性薄膜形成フィルムにおける前記耐熱性樹脂フィルムの他方の面とが接合され、前記接合された長尺芯材と導電性薄膜形成フィルムとからなるシールド材本体の外周に易半田付性の導電性線材を螺旋状に巻回し固定してなる電磁波シールドガスケット。
【請求項2】
前記導電性薄膜層は、易半田付性の金属薄膜層または金属箔層である請求項1に記載の電磁波シールドガスケット。
【請求項3】
前記導電性線材は、銅、錫またはこれらの合金より選ばれた易半田付性金属である請求項1または請求項2に記載の電磁波シールドガスケット。
【請求項4】
前記導電性線材が、樹脂製線材に対して銅、錫またはこれらの合金より選ばれた易半田付性金属によりメッキを施し薄膜を形成したものである請求項1または請求項2に記載の電磁波シールドガスケット。
【請求項5】
前記長尺芯材を構成する耐熱弾性高分子材料は、発泡体、中空体、もしくは稠密体を含む形態の加硫ゴムである請求項1〜請求項4のいずれかの項に記載の電磁波シールドガスケット。
【請求項6】
前記耐熱弾性高分子材料よりなる長尺芯材と前記導電性薄膜形成フィルムとの接合、および前記シールド材本体の外周に対し螺旋状に巻回する導電性線材の固定が、熱硬化性耐熱接着剤を用いた接着によるものである請求項1〜請求項5のいずれかの項に記載の電磁波シールドガスケット。
【請求項7】
前記電磁波シールドガスケットが、リフロー半田付けによる表面実装に用いられるものである請求項1〜請求項6のいずれかの項に記載の電磁波シールドガスケット。
【請求項8】
次の工程を含む電磁波シールドガスケットの製造方法。
a)少なくとも一方の面に導電性薄膜層を形成した耐熱性樹脂フィルムの他方の面に耐熱性接着剤を塗工する工程、
b)前記耐熱性樹脂フィルムの耐熱性接着剤塗工面に、耐熱弾性高分子材料製の長尺芯材の外周面の一部である接合用面を接合しシールド材本体を形成する工程、
c)前記シールド材本体の外周または導電性線材の少なくとも一方に耐熱性接着剤を塗工した後、前記導電性線材を巻回固定する工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−283008(P2010−283008A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132968(P2009−132968)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(391020078)日本ジッパーチュービング株式会社 (13)
【Fターム(参考)】