説明

電磁波シールド壁紙及び該壁紙を用いた電磁波シールド工法

【課題】電磁波の遮断性を損なうことなく、内外面の通気性を向上し、膨れが発生せず、通常の単なるアルミニウム箔に比べて、可撓性となり、折れるおそれがなくなり、所定の箇所に施工する作業が容易となる壁紙を提供する。
【解決手段】アルミニウム箔13の表面側に接着層12を介して塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂もしくはオレフィン系樹脂フィルムの発泡層11、裏面側に接着層14を介して薄葉紙と中間剥離性紙とよりなる壁紙用裏打ち紙層15を積層して、裏面側より表面側には突出しない程度の針状突起による挿通孔16を設けた電磁波シールド壁紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド機能を有する壁紙及び該壁紙を用いた電磁波シールド工法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の急速な発展に伴い、オフィスビルや一般住居などにおいて、電子機器の誤動作防止や情報の漏洩防止の観点から、建造物の内部に電磁的な遮蔽をすることが要求され、例えば、建物の内部の壁面に電磁波シールド効果のある壁紙を貼り付けることが行なわれている。
【0003】
ここに用いられている電磁波シールド効果のある壁紙としては、特開2000−54523号公報に金属シートを持った壁紙が、特開2001−60789号公報には導電性薄膜に重ね代以外の部分に壁紙材を貼り付けた内装クロスが記載されている。
また特開2007−287752号公報には携帯電話が用いる800MHzの周波数の電磁波の通過を許容し、非接触媒体の13.56MHzの周波数の電磁波を遮断する電磁波遮断シートの製造にあたり、シート状の基材シートに最大徑2mm〜9mmの複数の孔を穿孔ローラーで穿孔突起を形成させる方法が開示されているがその用途は、壁紙ではなく、カバンや衣料である。
【0004】
【特許文献1】特開2000−54523号公報
【特許文献2】特開2001−60789号公報
【特許文献3】特開2007−287752号公報
【0005】
上記特開2000−54523号公報、特開2001−60789号公報等に記載され、且つ実用されている壁紙は、電磁波シールド効果のある金属としてアルミニウム箔を用い、その表面に紙層を樹脂接着剤で貼り付けたものであり、このような構造の壁紙は、アルミニウム箔が通気性が無いために、高温多湿の環境下での貼り付け施行工事に際し、しわが発生したり、膨れが生じるおそれがあった。また、アルミニウム箔は銅箔などに比して廉価であるが、硬く折れやすいので、所定の箇所に施工するのに手間が掛かるという問題があった。また、上記特開2007−287752号公報に記載の方法は、特定の電磁波のみ遮断することを目的とし、特に段落0007に記載のように電磁波遮断かばんや電磁波防止衣料を提供することを目的とするので、壁紙としての問題意識も無く、基材シートをローラーで穿孔することが記載され、しかもその用途から金属箔を用いずに、スパッタリングまたは蒸着によりアルミニウム0.3mm程度の肉厚に形成し、穿孔ローラーで穿孔するものであるから壁紙としての問題点を解決できるものではない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者はかかる実状に鑑み、アルミニウム箔を含む壁紙(中間の接続用テープを含む)に多数の分散した針状突起により穿孔したものを用いることにより、電磁波の遮断性を損なうことなく、内外面の通気性を向上し、膨れが発生せず、通常の単なるアルミニウム箔に比べて、可撓性となるので、折れるおそれがなくなり、所定の箇所に施工する作業が容易となるものを生み出したものである。
【0007】
すなわち、本発明の壁紙は、少なくとも、アルミニウム箔の裏面側に接着層を介して薄葉紙と中間剥離性紙とよりなる壁紙用裏打紙層を設け、これに針状突起による挿通孔を設けたことを特徴とする電磁波シールド壁紙(請求項1)であり、
アルミニウム箔の表面側に接着層を介して塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂もしくはオレフィン系樹脂から選択された樹脂フィルムの発泡層、裏面側に接着層を介して薄葉紙と中間剥離性紙とよりなる壁紙用裏打紙層を積層して、裏面側より表面側には突出しない程度の針状突起による挿通孔を設けたことを特徴とする電磁波シールド壁紙(請求項2)であり、
針状突起による穿孔細孔が最大で1mmφ〜0.2mmφ、孔間隔10cm以下2mm以上であることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の電磁波シールド壁紙(請求項3)であり、
請求項1に記載の壁紙の表面層に接着剤を介して薄葉紙と中間剥離性紙とよりなる壁紙用裏打紙層を積層したものがテープ状で、裏面側より表面側には突出しない程度の針状突起による挿通孔を設けた継ぎ目地用電磁波シールド壁紙(請求項4)である。
【0008】
また工法については、請求項1または2に記載の電磁波シールド壁紙を隙間無く配置したことを特徴とする電磁波シールド工法(請求項5)であり、請求項4に記載の継ぎ目地用電磁波シールド壁紙を用いていない工法である。
また、請求項1または2に記載の電磁波シールド壁紙を隙間無く配置し、且つその隣接する継ぎ目上に請求項4に記載の継ぎ目地用電磁波シールド壁紙を貼り付けたことを特徴とする電磁波シールド工法(請求項6)でよりシールドに完全性を期した工法である。
請求項3の電磁波シールド壁紙と、請求項4の継ぎ目地用電磁波シールド壁紙を併用する場合、孔の位置が同一なものを用意し、その孔が重なるように配置して設定すれば、
内部から表面にいたる通気性が連続するので、シールド効果を損なうことなく、内面のガスを表面に放出し、ふくれはどの部分でも発生しない。
また、有孔の継ぎ目地用テープ状の電磁波シールド壁紙に代えて通常の無孔の継ぎ目地用テープ状の電磁波シールド壁紙を用いてもテープの使用部分以外の壁紙の大部分は孔による通気効果が発揮できるので、本発明の作用効果すなわちふくれの防止効果を発揮することが出来る。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アルミニウム箔を含み、厚さ方向に多数の分散した穿孔があるために、内外の層の通気性、透水性が向上し、ふくれなどを生じることがない。また、穿孔のない従来のアルミニウム箔を用いた壁紙に比べて、折れにくく、取り扱いが容易となり、可撓性がよいので、反発性が小さく、天井など作業困難箇所にも容易に貼着できる。
さらに、水性の糊剤を使用してボードに貼る場合に、糊剤が表面側に染み出すおそれが無く、外観損傷を発生しない。環境温度40℃、湿度90%の高温多湿下でも従来品と異なり、多数の穿孔があるために内外の通気性がよく、ふくれを生じない。
なおまた、各接着層及びその他の層構成にあたり、シックハウスの要因となるトルエン、スチレンなどの溶剤、これを含む接着剤等の化学物質を一切使用していないので、安全である。
また施行工事は従来の単なるアルミ箔を電磁遮蔽に用いたものより可撓性があるために取り扱いが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態について説明する。
図1は本実施形態例の壁紙10の一部表面層除去の一部破断の断面図であり、表面層11は塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂もしくはオレフィン系樹脂などのフィルムの発泡樹脂層でエンボス模様など化粧効果のあるものであり、その下面に、水性接着剤層12を介してアルミニウム箔13の6.5μを接着または融着により設け、更にその下面に、水性接着剤層14を介して壁紙用裏打紙(層間剥離するもの)15を接着し,表面層を除きアルミニウム箔を含む他の層を針状突起を有する穿孔ロールで下面側より穿孔加工して構成されている。孔は16で示されているが表面は、美観上も穴あけしない程度に穿孔するのが好ましい。
この場合、穿孔する孔のサイズはアルミ箔の遮蔽効果を確実に保持するために1mmφ以下が好ましい。孔径が2mmφでも遮蔽効果は十分であるが、ボードに貼る場合に孔径が1mmφを超えて大きいと、接着剤を構成する水性糊が、該孔を通じて表面に滲み出し、場合により表面の樹脂層をかんぼつさせ、壁紙の外観を損ねるおそれがある。しかし孔径が0.2mmφ未満にすると、糊の水分が逃げにくくなり、環境温度40℃、湿度90%になると部分的に水分が集合し、膨れを発生し、概観を損ねるおそれがあるから、孔径は、0.2mm〜1.0mmφが好ましい、また、孔の間隔(孔間の距離)は2mm以上とした方が電磁遮蔽効果を発揮するために好ましい。
【0011】
図2は本実施形態例の壁紙10の一部破断の断面図であり、表面層21は塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、もしくはオレフィン系樹脂などのフィルムの発泡樹脂層でエンボス模様など化粧効果のあるものであり、その下面に、水性接着剤層22を固形分として接着剤3〜10g/m設け、更にその下面にアルミニウム箔23の3〜20g/mを設け、更にその下部に水性接着剤層24の3〜10g/mを設け、次に、紙間剥離可能紙25を接合し、裏面より、表面層を除き全体を針状突起を有する穿孔ロールで穿孔加工して構成されている。孔は26で示されている。表面は勿論穿孔されていない。
この孔のサイズや個数や配列などは、図1の場合と同様である。ただし全部が各行とも同じ列であってもよいが、一行おきに千鳥状に形成されていてもよい。
この構造により、電磁遮蔽効果を発揮するとともに、ふくれは発生しない。
【0012】
図1及び図2に示したアルミニウム箔には、アルミニウム箔の化学的保護及び他の層との接着性を向上するためにアクリル系水溶性樹脂コート剤例えば東洋インキ社商品名M267MFアンダーラッカーRLが用いられる。
また、アルミニウム箔と紙間剥離可能紙の間には、昭和高分子社製スチレン・アクリル酸エステル共重合体エマルジョン酢酸ビニル系エマルジョン商品名ポリゾールL−9400が好ましく用いられる。
水性接着剤には、酢酸ビニル系、アクリル樹脂系、など公知の種々のものが適用できる。
【0013】
図3は本発明の壁紙10,10を用いて、隙間無く配置し施工した場合の部分的に表面層を剥離した上面図であり、孔16は正配列されている。この施工は、アルミニウム箔が十分な硬度を有しているので、容易に実施できる。
図4は、本発明の壁紙10、10を隙間無く配置するが、その突合せ部分を、本発明のテープ状壁紙10Tで接続した場合の部分的に表面層を剥離した上面図であり、壁紙10、10とテープ状壁紙10Tとは同じサイズで、同じ位置に孔16、26が設けられており、孔によるふくれ防止効果は、完全である。
しかし図示していないが、テープ状壁紙10Tは幅が10cm程度で狭いので、ここに用いられるテープは、無孔のものであってもよい。
【0014】
本発明で用いられる孔のサイズは遮蔽効果を確実に保持するために1mmφ以下、0.2mmφ以上が好ましい。孔径が2mmφでも遮蔽効果は十分であるが、ボードに貼る場合の水性糊が、表面に滲み出し外観を損ねるおそれがある。しかし孔径が0.2mmφ未満にすると、糊の水分が逃げにくくなり、環境温度40℃、湿度90%になると部分的に水分が集合し、膨れを発生し、概観を損ねるおそれがあるから、孔径は、0.2mmφ〜1.0mmφが好ましい。更に孔間隔は1cm以下2mm以上あることが電磁波遮蔽上及び強度保持上好ましい。
孔の設定には1cmに1個設けられれば壁紙としての取り扱い中に折れるおそれが無く、施工も容易である。そして電磁波の遮蔽効果は、無孔のアルミニウム箔と何ら変わりはない。
孔径があまり大きく例えば3mmを越えて大きいと、多層に構成した層間接着糊が、反対側のアルミニウム箔の表面に浸出するので、遮蔽効果を阻害するおそれがあり、また、外観が悪くなるおそれがある。
【0015】
ここに、本発明における有孔アルミニウム箔はある程度寸法安定性がよいので、例えば、正確に長方形に切断することは可能であり、このようにしたものは、端縁相互を正確に隙間無く貼り付けることも可能であるが、接合部の遮蔽効果を保障するために、本体部の壁紙と同一構造のテープを用いれば、壁紙相互間を若干隙間があっても、両端の接合部を覆うように貼り付けて目地テープとして使用し、遮蔽効果を得ることが出来る。なお、この目地テープは幅が5cm以下の場合には、電磁波が漏れる危険性がある。
【0016】
本発明において用いられるアルミニウム箔の厚さは通常6.5μmであり、基材とアルミニウム箔の接着剤には一般的にアンダーラッカーが接着剤層となる。また、アルミニウム箔と紙層の間の接着層には酢酸ビニル樹脂系もしくはエチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂系のエマルジョン接着剤が好ましい。
【0017】
本発明において、表面層は塩化ビニル系樹脂フィルムあるいはアクリル系樹脂フィルムもしくはオレフィン系樹脂フィルムの発泡体で構成され、裏打ち紙も使用され、表面層は図柄模様などの意匠的表面を付与したものであり、内面は内装の石膏ボードに接着しやすい粘着性接着剤を塗布したものが好ましい。
【0018】
本発明において、従来の特開2007−2877532号公報には、アルミニウム箔に穿孔するには、ローラーの表面に同一形状、同一サイズの均一に分散されて形成された針状突起を有する穿孔用ローラーが効果的に用いられる。この孔径は2mm〜9mm、好ましくは3mm〜6mmで格子状でも千鳥状でもよい。周波数800MHz及びその1/4の周波数を考慮して、針状突起の最大徑が定められ、遮断したい波長の長さより十分短い長さに定めればよいとされているが、本発明者の目的とする、壁紙のふくれを防止するための条件を満足していない。すなわち、本発明では、アルミニウムのみでなく、壁紙全体を穿孔し、環境によって定められる条件をクリアしなければならない。このため孔径は1mmφ以下としたが、勿論製造上に問題は無く、電磁波遮断効果も孔の数も考慮し前記公報記載のものより優れたものを製造できる。
【0019】
本発明の電磁波シールド壁紙について細孔1mmφ、0.61mmφ、0.2mmφ、孔の密度1cmについて作成した壁紙(実施例1、2、3)及び上記実施例の範囲を外れた細孔2mmφ(比較例1)、細孔0.1mmφ(比較例2)の壁紙試料を作製し、壁面に貼り付け、電磁波遮蔽効果及び湿度90%、温度40℃時間の環境下でのふくれの発生の確認試験を行なった。その結果は表1に示すとおりで、本発明の各実施例は電磁波シールド性能もよく、ふくれの発生も無く、好適であったが、比較例1では電磁波シールド性能がやや劣り、比較例2では若干ふくれの発生が認められた。
なお、ふくれの有無は1ヶ月経過の状態を目視により判断した。
【0020】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一例を示す壁紙の部分的に表面層を剥離した一部剥離断面図
【図2】本発明の他の一例を示す部分的に表面層を剥離した一部剥離断面図
【図3】本発明の壁紙を突合せ配置し、施工した場合の状態の上面図
【図4】本発明の壁紙を突合せ配置し、テープ状壁紙で接続施工した場合の上面図
【符号の説明】
【0022】
10 壁紙
10T テープ壁紙
11、21 表面層
12、22 接着剤層
13、23 アルミニウム箔
14、24 接着剤層
15、25 紙間剥離可能紙
16、26 穿孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、アルミニウム箔の裏面側に接着層を介して薄葉紙と中間剥離性紙とよりなる壁紙用裏打ち紙層を設け、これに針状突起による挿通孔を設けたことを特徴とする電磁波シールド壁紙。
【請求項2】
アルミニウム箔の表面側に接着層を介して塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂もしくはオレフィン系樹脂から選択された樹脂フィルムの発泡層、裏面側に接着層を介して薄葉紙と中間剥離性紙とよりなる壁紙用裏打ち紙層を積層して、裏面側より表面側には突出しない程度の針状突起による挿通孔を設けたことを特徴とする電磁波シールド壁紙。
【請求項3】
針状突起による穿孔細孔が最大で1mmφ〜0.2mmφ、孔間隔10cm以下2mm以上であることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の電磁波シールド壁紙。
【請求項4】
請求項1に記載の壁紙の裏面側に接着層を介して薄葉紙と中間剥離性紙とよりなる壁紙用裏打ち紙層を積層したものがテープ状で、裏面側より表面側には突出しない程度の針状突起による挿通孔を設けた継ぎ目地用電磁波シールド壁紙。
【請求項5】
請求項1または2に記載の電磁波シールド壁紙を隙間無く配置したことを特徴とする電磁波シールド工法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の電磁波シールド壁紙を隙間無く配置し、且つその隣接する継ぎ目上に請求項4に記載の継ぎ目地用電磁波シールド壁紙を貼り付けたことを特徴とする電磁波シールド工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−243138(P2009−243138A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90739(P2008−90739)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(591049343)三協技研株式会社 (2)
【出願人】(390001339)光洋産業株式会社 (46)
【Fターム(参考)】