電磁波遮蔽具
【課題】電子部品又はプリント基板から放射される電磁波を遮蔽できるようにする。
【解決手段】一方の面をCPU等に対峙して配設される導電シート11と、所定の長さ及び幅で導電シート11に開孔されて並行する少なくとも一対のペアスリット部12を備えている。この構成によって、導電シート11に吸収された電磁波のエネルギーが、ペアスリット部12で、略同じ振幅で逆位相の相対する電圧及び相対する電流に変換されて相殺される。これにより、導電シート11に吸収された電磁波のエネルギーを軽減できる。
【解決手段】一方の面をCPU等に対峙して配設される導電シート11と、所定の長さ及び幅で導電シート11に開孔されて並行する少なくとも一対のペアスリット部12を備えている。この構成によって、導電シート11に吸収された電磁波のエネルギーが、ペアスリット部12で、略同じ振幅で逆位相の相対する電圧及び相対する電流に変換されて相殺される。これにより、導電シート11に吸収された電磁波のエネルギーを軽減できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、CPU,LSI,IC等の電子部品、及び、それらが実装されたプリント基板のシールド板に適用可能な電磁波遮蔽具に関する。
【0002】
詳しくは、一方の面をCPU等に対峙して配設される導電性の板部材に、開孔されて並行する少なくとも一対の長孔を備え、板部材に吸収された電磁波のエネルギーが、一対の長孔で、略同じ振幅で逆位相の電圧及び電流に変換されて相殺されるようにして、電磁波のエネルギーを軽減できるようにしたものである。
【背景技術】
【0003】
近年において、テレビ、コンピュータ、デジタルカメラ、携帯電話といった電子機器は、高性能化、小型化が推進されており、それらを構成するCPU,LSI,クロック用IC等の電子部品は、高速度化、高集積化されている。同様に、それらが実装されるプリント基板は高密度化されている。
【0004】
こうした高密度な電子部品やプリント基板からは、多くの電磁波が放射(輻射)される。電磁波は、他の電子部品やプリント基板の正常な動作を阻害するとともに、人体にも悪影響を与えるものである。
【0005】
従って、電子機器及びプリント基板が、所定の電磁環境適合性(EMC:Electro Magnetic Compatibility)を維持することが重要である。つまり、電子機器及びプリント基板が、他の機器や人体に電磁妨害(EMI:Electro Magnetic Interference)を与えないことと、他の機器からの電磁波によって、自身の動作が阻害されない電磁感受性(EMS:Electro Magnetic Susceptibility)を持つことが求められる。
【0006】
EMCを維持するためにシールド板を用いる場合がある。主にプリント基板間に用いられるシールド板として、特許文献1に示す電磁波干渉抑制体が開示されている。この電磁波干渉抑制体によれば、導電性の基材の片面もしくは両面に絶縁性の軟磁性体層が設けられている。このようにシールド板を構成すると、導電性の基板による電磁波の反射を増大化させることなく、透過減衰を大きくできるというものである。
【0007】
また、特にEMIの対策としてシールドケースを用いる場合もある。シールドケースに応用可能な吸収材として、特許文献2の放射ノイズ吸収材が開示されている。この放射ノイズ吸収材によれば、銀で被覆された繊維、又は、硫化処理された銀被覆繊維で成り、例えばシールドケースの材料内に混入されるものである。このようにシールドケースを構成すると、導電性に優れる銀に被覆されたプラスチック等の高分子繊維が、良好なアンテナとして機能し、広い周波数帯域に亘って高いノイズ低減効果が得られるというものである。また通常、シールドケースは、ネジ、ガスケット、板バネ等でプリント基板に固定されることが多い。
【0008】
主にプリント配線用のEMI対策として、特許文献3のようなEMI対策方法が開示されている。このEMI対策方法によれば、CPUと外部回路とのバスラインの少なくとも一部を、粘着層、樹脂層を介した複合磁性体で覆うようになされる。このように複合磁性体を配置することにより、バスラインがアンテナとして機能することを防ぎ、バスラインからの電磁波の放射が防止できるようになるというものである。
【0009】
更に、電磁波遮蔽シートが用いられる場合がある。例えば特許文献4に開示される電磁波遮蔽シートは、例えばプラズマディスプレイパネルに用いられる。この電磁波遮蔽シートによれば、銅メッシュ層、粘着剤層、被着体層で成り、粘着剤層が酸化防止剤を含んでいる。この構成によって、長時間、特に高音高湿化における使用によっても、銅メッシュ層の酸化による変色が起こらないというものである。
【0010】
【特許文献1】特開平7−212079号公報(第2,3及び7頁、図1)
【特許文献2】特開平11−354969号公報(第2及び3頁)
【特許文献3】特開平9−312489号公報(第2乃至5頁、図1)
【特許文献4】特開2007−95971号公報(第3及び4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、特許文献1に係る電磁波干渉抑制体によれば、構造が複雑でコストが高くなるという問題がある。また、主にプリント基板間に、CPU等の電子部品と所定距離で配設されるものであり、CPU等、単体の電子部品に応用することが難しい。
【0012】
また、特許文献2に係る放射ノイズ吸収材は、シールドケースに混入する必要があるので、シールドケースの製造コスト増加に繋がるおそれがある。更に、シールドケースによる場合は、シールドケースをプリント基板にネジ止め等で設置する煩雑な工程が必要になり、組立工程の作業効率が低下するおそれがある。なお、シールドケースの構造も複雑化していてコストの増加に繋がっている。
【0013】
更に、特許文献3に係るEMI対策方法によれば、バスラインのスイッチング動作に伴い放射される、いわゆる伝導ノイズを抑制することが難しいという問題がある。更に、CPU等の単体の電子部品からの電磁波を吸収することが難しいという問題もある。
【0014】
特許文献4に係る電磁波遮蔽シートは、銅メッシュ層によるもので、電子部品やプリント基板に応用するにはコストが高いという問題がある。更に、変色を防ぐために混入される酸化防止剤や混入工程の増加によって、更に製造コストが高くなるおそれがある。
【0015】
そこで本発明は、上述の課題を解決したものであって、製造コストの増加を最小限に抑えて、電子部品又はプリント基板から放射される電磁波を軽減できるようにした電磁波遮蔽具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題は、一方の面を電磁波放射物に対峙して配設される導電性の板部材と、所定の長さ及び幅で板部材に開孔されて並行する少なくとも一対の長孔を備えることを特徴とする電磁波遮蔽具によって解決される。
【0017】
この発明に係る第1の電磁波遮蔽具によれば、一方の面を電磁波放射物に対峙して配設される導電性の板部材に、少なくとも一対の長孔が開孔されている。従って、板部材に吸収された電磁波のエネルギーが、一対の長孔で、略同じ振幅で逆位相の相対する電圧及び相対する電流に変換される。
【0018】
この発明に係る第2の電磁波遮蔽具は、一方の面を電磁波放射物に対峙して配設される導電性の第1の板部材と、第1の板部材の他方の面に設けられた絶縁部材と、絶縁部材を介し、第1の板部材の他方の面と対峙して配設された導電性の第2の板部材とを備え、第1及び第2の板部材の各々は、所定の長さ及び幅で開孔されて並行する少なくとも一対の長孔を有することを特徴とするものである。
【0019】
この発明に係る第2の電磁波遮蔽具によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される第1の板部材と、絶縁部材を介して対峙する第2の板部材との各々に、少なくとも一対の長孔が開孔されている。従って、電磁波放射物から放射された電磁波のエネルギーが、第1の板部材に吸収されて第1の板部材の一対の長孔で略同じ振幅で逆位相の電圧及び電流に変換され、更に、第1の板部材から漏洩した電磁波のエネルギーが第2の板部材に吸収され、第2の板部材の一対の長孔で略同じ振幅で逆位相の電圧及び電流に変換される。
【発明の効果】
【0020】
この発明に係る第1の電磁波遮蔽具によれば、一方の面を電磁波放射物に対峙して配設される導電性の板部材に、開孔されて並行する少なくとも一対の長孔を備えている。この構成によって、板部材に吸収された電磁波のエネルギーが、一対の長孔で略同じ振幅で逆位相の相対する電圧及び相対する電流に変換され、互いに相殺されて減衰する。これにより、板部材に吸収された電磁波のエネルギーを軽減できる。
【0021】
この発明に係る第2の電磁波遮蔽具によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される第1の板部材に、絶縁部材を介して対峙する第2の板部材を備え、第1及び第2の板部材の各々が、所定の長さ及び幅で開孔されて並行する少なくとも一対の長孔を有している。この構成によって、電磁波放射物から放射された電磁波のエネルギーが、第1の板部材に吸収され、第1の板部材の一対の長孔で略同じ振幅で逆位相の電圧及び電流に変換され、互いに相殺されて減衰する。更に、第1の板部材から漏洩した電磁波のエネルギーが、第2の板部材に吸収されて、第2の板部材の一対の長孔で略同じ振幅で逆位相の電圧及び電流に変換され、互いに相殺されて減衰する。このようにして、電磁波遮蔽物から放射された電磁波のエネルギーを二重に遮蔽できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
続いて、この発明に係る電磁波遮蔽具について、図面を参照しながら説明をする。
【実施例1】
【0023】
図1は、この発明の第1の実施例としての電磁波遮蔽シート10の構成例を示す図である。図1に示す電磁波遮蔽シート10は、電磁波遮蔽具(第1の電磁波遮蔽具)の一例を構成し、導電シート11とペアスリット部12とを有している。この例の電磁波遮蔽シート10は、電磁波放射物の一例であるCPU等(CPU、LSI、IC等の電子部品)に貼付され、CPU等から放射される電磁波を遮蔽(遮断)する。
【0024】
導電シート11は、導電性の板部材の一例を構成し、一方の面をCPU等に対峙して配設される。この例で説明する導電シート11は、一方の面に粘着性の物質を塗布又は貼付された導電性の部材、銅、アルミ等で構成されてCPU等の上面に接着される。導電シート11は、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成、一体形成することもできる。導電シート11はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形(図4参照)又はCPU等と略同等の外形に設定される。
【0025】
導電シート11は、例えば、0.09mmの厚みのアルミシートで、上面形状が35mm角の正方形に設定される。導電シート11はCPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。
【0026】
導電シート11には、一対の長孔の一例を構成するペアスリット部12が設けられる。ペアスリット部12は一対のスリット12a、12bから成り、導電シート11に吸収された電磁波のエネルギーを減衰させる機能を有する。スリット12a及び12bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート11の略中心部に開孔されて並行する。
【0027】
図2はペアスリット部12の構成例及び機能例を示す図である。電磁波遮蔽シート10がCPU等に貼付されると、導電シート11に電磁波のエネルギーが吸収され、導電シート11に電界が生じる。導電シート11に生じた電界は、スリット12a及び12bに電圧を誘発する。
【0028】
図2に示すスリット12a及び12bは、例えば、長さL1:7.5mm、幅W1:0.4mmを有する同形状に構成され、一定の幅W2:0.4mmの間隔を維持して平行に配置される。スリット12aとスリット12bとの間には、導電シート11で成る幅W2の帯状の導電部12cが構成される。
【0029】
この例の電磁波遮蔽シート10は、CPU等から放射される100MHz〜800MHzの電磁波を遮断するように設定される。スリット12a及び12bの長さL1は、電磁波の波長λよりも充分小さい長さ、この例ではλ/50に設定される。このようにスリット12a及び12bの長さL1を設定することによって、電磁波遮蔽シート10が電磁波の高調波成分にも対応できるようになる。
【0030】
スリット12a及び12bには、それぞれ、電界に誘発された電圧Va,Vbが発生する。電圧Vaは、スリット12aの一方のエッジe1から他方のエッジe1’に向けて生じる。電圧Vbは、スリット12bの一方のエッジe2から他方のエッジe2’に向けて生じる。電圧Va及びVbは、振幅が同等で位相が逆相の電圧信号である。従って、電圧Va及びVbは互いに対向して打ち消しあう。
【0031】
また、電界と直交して生じる磁界によって、スリット12a及び12bの周囲に、それぞれ電流Ia,Ibが流れる。電流Ia及びIbは、スリット12aとスリット12bとの間の導電部12cで対向して打ち消しあう。
【0032】
このように、ペアスリット部12で電磁波のエネルギーから変換された電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こり、導電シート11に吸収された電磁波のエネルギーが減衰する。更に、電気エネルギーに変換された電流Ia及びIbのうちの所定量は、導電シート11で熱エネルギーに変換されて消費される。次に、電磁波遮蔽シート10の製造方法について説明をする。
【0033】
図3A〜Dは、電磁波遮蔽シート10の製造例を示す図である。この例は、図3Aに示す金属シート15から電磁波遮蔽シート10を製造する場合について説明をする。金属シート15は、剥離シートF1と、接着剤G1と、メタルシートM1とが積層された帯状のシートである。剥離シートF1は例えば帯状の剥離紙で構成される。接着剤G1は、例えば、アクリル系の接着剤で構成される。メタルシートM1は、例えば、銅箔やアルミ箔で構成される。
【0034】
金属シート15から電磁波遮蔽シート10を形成するには、所定形状の抜き型を準備して、ペアスリット部12と電磁波遮蔽シート10の外縁部10aとを同時に打ち抜くとよい(図3B)。
【0035】
このとき、剥離シートF1は打ち抜かないようにすると、図3Cのように連続する電磁波遮蔽シート10が形成される。電磁波遮蔽シート10が連続形成された金属シート15は、図3Dのようにロール状に巻くとよい。以上のようにして、電磁波遮蔽シート10を製造できる。以下で、電磁波遮蔽シート10をCPU等に装着する方法について説明する。
【0036】
図4は、電磁波遮蔽シート10の装着例を示す斜視図である。図4に示す電磁波遮蔽シート10をCPU1に装着するには、図3C及びDに示した、メタルシートM1と接着剤G1とで成る電磁波遮蔽シート10を剥離シートF1から剥がし、CPU1の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート10がCPU1より大きい外形に設定されていると、CPU1の全面を容易に覆うことができる。
【0037】
このように、この発明の第1の実施例に係る電磁波遮蔽シート10によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される導電シート11に、開孔されて並行するペアスリット部12を備えている。
【0038】
この構成によって、導電シート11に吸収された電磁波のエネルギーが、ペアスリット部12のスリット12a及び12bで、略同じ振幅で逆位相の相対する電圧及び相対する電流に変換される。スリット12a及び12bに生じた一対の電圧及び電流は、互いに相殺されて減衰するので、導電シート11に吸収された電磁波のエネルギーを軽減できる。
【0039】
また、導電シート11を接地する必要がないので設置用の配線等を要しない。従って、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大しない。更に、設置工程を要せず簡単な貼付工程で装着可能である。
なお、この例では、銅箔で成るメタルシートM1から導電シート11を形成する場合について説明をしたが、これに限られることはなく、印刷形成による導電性の薄膜や、アルミ板等のような導電性の板部材を用いてもよい。
【実施例2】
【0040】
図5は、この発明の第2の実施例としての電磁波遮蔽シート20の構成例を示す図である。図5に示す電磁波遮蔽シート20は電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート21と、複数のペアスリット部22〜25とを有している。4組のペアスリット部22〜25は、導電シート21に其々が一辺を成す四角形状に配置される。電磁波遮蔽シート20は、CPU等に貼付され、CPU等から放射される電磁波を遮蔽する。
【0041】
導電シート21は導電性の板部材の一例を構成し、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート21は、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成され、CPU等の上面に接着される。導電シート21は、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成、又は、一体形成することもできる。導電シート21はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又はCPU等と同等の外形に設定される。導電シート21はCPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。
【0042】
導電シート21には、一対の長孔の一例を構成するペアスリット部22〜25が、複数、ここでは4組開孔される。例えば、ペアスリット部22は一対のスリット22a及び22bで成り、ペアスリット部23は一対のスリット23a及び23bで成り、ペアスリット部24は一対のスリット24a及び24bで成り、ペアスリット部25は一対のスリット25a及び25bで成る。ペアスリット部22〜25は、導電シート21に吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0043】
ペアスリット部22〜25は、各々、図2に示したペアスリット部12と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部22のスリット22a及び22bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート21に開孔されて並行する。ペアスリット部23〜25も並行する2本のスリットで成る。
【0044】
また、この例のペアスリット部22〜25は、導電シート21に、其々が一辺を成す四角形状に配設される。例えば、互いに隣設されるペアスリット部22とペアスリット部23とは、一方の端部同士が接近して略直角に配され、略L字状を成す。同様に、ペアスリット部22〜25が配されて四角形状を構成する。ペアスリット部22〜25は互いに分離している。
【0045】
電磁波遮蔽シート20では、複数のペアスリット部22〜25の各々で、電気エネルギーの相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部22では、スリット22a及び22bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部22〜25が配設された導電シート21の各位置で、電磁波のエネルギーが分割されて相殺され、減衰する。
【0046】
ところで、電磁波遮蔽シート20では、四角形の対辺を成すペアスリット部22とペアスリット部24とが平行に配設され、ペアスリット部23とペアスリット部25とが平行に配設される。この場合、互いに平行なペアスリット部同士が干渉しあい、電磁波や電気信号の発振、増幅等の原因となるおそれがある。
【0047】
これを防止するため、対辺を成すペアスリット部同士、例えばペアスリット部22とペアスリット部24との距離D1を、波長λの1/4(λ/4)の整数倍ではない長さに設定するとよい。例えば、波長λが0.375m程度である場合、距離D1は、例えば0.0075m(λ/50)に設定する。このように互いに平行なペアスリット部の離間距離を設定することにより、電界、磁界、電圧、電流等の干渉を防止できる。以上のように電磁波遮蔽シート20が構成される。
【0048】
電磁波遮蔽シート20は、第1の実施例の電磁波遮蔽シート10と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート20を製造するには、所定の抜き型を準備して図3Aに示した金属シート15から抜き出すとよい。所定の抜き型は、電磁波遮蔽シート20の外縁部と、ペアスリット部22〜25が一時に抜き出せる構成にするとよい。このようにして、電磁波遮蔽シート20を製造することができる。
【0049】
製造した電磁波遮蔽シート20をCPU1に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート20を剥離シートF1から剥がし、CPU1の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート20がCPU1より大きい外形を有していると、CPU1の全面を容易に覆うことができる。
【0050】
このように、この発明の第2の実施例に係る電磁波遮蔽シート20によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される導電シート21に、開孔されて並行する複数のペアスリット部22〜25を備え、ペアスリット部22〜25が其々が一辺を成す四角形状に配設されている。
【0051】
この構成によって、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、導電シート21の各位置で、導電シート21を伝搬する電磁波を減衰できるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品やプリント基板に応用した場合にも、効率よく電磁波を遮蔽できるようになる。
【0052】
また、電磁波遮蔽シート20は接地しなくてよい構成なので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【実施例3】
【0053】
図6は、この発明の第3の実施例としての電磁波遮蔽シート30の構成例を示す図である。図6に示す電磁波遮蔽シート30は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート31と、複数のペアスリット部32〜35とを有している。4組のペアスリット部32〜35は、導電シート31に四角形の対辺の一方が他方に対して突出する縮小四角形状に配設される。電磁波遮蔽シート30は、CPU等に貼付され、CPU等から放射される電磁波を遮蔽する。
【0054】
導電シート31は導電性の板部材の一例を構成し、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート31は、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成され、CPU等の上面に接着される。導電シート31は、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成、又は、一体形成することもできる。導電シート31はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又はCPU等と略同等の外形に設定される。導電シート31はCPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。
【0055】
導電シート31には、一対の長孔の一例を構成するペアスリット部32〜35が、複数、ここでは4組開孔される。例えば、ペアスリット部32は一対のスリット32a及び32bで成り、ペアスリット部33は一対のスリット33a及び33bで成り、ペアスリット部34は一対のスリット34a及び34bで成り、ペアスリット部35は一対のスリット35a及び35bで成る。ペアスリット部32〜35は、導電シート31に吸収された電磁波のエネルギーを減衰させる機能を有する。
【0056】
ペアスリット部32〜35は、各々、図2に示したペアスリット部12と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部32のスリット32a及び32bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート31に貫通開孔されて並行する。ペアスリット部33〜35も並行する2本のスリットで成る。
【0057】
この例のペアスリット部32〜35は、導電シート31に、其々が一辺を成す縮小四角形状に配設される。ここでいう縮小四角形状とは、ペアスリット部同士が互いに略直角に配されて、直角の対辺を成す2組のペアスリット部の一方が、他方に対して端部を突出することで、ペアスリット部に囲まれた四角形状が縮小される形状をいう。例えば、互いに隣設されるペアスリット部32とペアスリット部33とは、ペアスリット部32の一方の端部32cが、ペアスリット部33の中腹部に隣設されるT字状を成す。ペアスリット部32〜35は互いに分離している。
【0058】
また、縮小四角形状の四角形は、回転放射形状の四角形ともいえる。ここでいう回転放射形状とは、複数のペアスリット部(一辺)が、所定の角度で傾斜して円形に配置されたかざぐるま型の風車羽状をいう。
【0059】
電磁波遮蔽シート30では、複数のペアスリット部32〜35で、各々電磁波のエネルギーが電気エネルギーに変換され、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部32では、スリット32a及び32bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部32〜35が配設された導電シート31の各位置で電磁波のエネルギーが電気エネルギーに変換されて減衰する。
【0060】
ところで、電磁波遮蔽シート30では、四角形の対辺を成すペアスリット部32とペアスリット部34とが平行に配設され、ペアスリット部33とペアスリット部35とが平行に配設される。この場合、互いに平行なペアスリット部同士が干渉しあい、電磁波や電気信号の発振等が起こるおそれがある。
【0061】
これを防止するため、対辺を成すペアスリット部同士、例えばペアスリット部33とペアスリット部35との距離D2は、波長λの1/4(λ/4)の整数倍ではない長さに設定するとよい。例えば、波長λが0.375m程度である場合、距離D2は、例えば0.0075m(λ/50)に設定する。このように互いに平行なペアスリット部の離間距離を設定することにより、電界、磁界、電圧、電流等の干渉を防止できる。以上のように電磁波遮蔽シート30が構成される。
【0062】
電磁波遮蔽シート30は、第1の実施例の電磁波遮蔽シート10と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート30を製造するには、所定の抜き型を準備して図3Aに示した金属シート15から抜き出すとよい。所定の抜き型は、電磁波遮蔽シート30の外縁部と、ペアスリット部32〜35とが一時に抜き出せる構成にする。このようにして、電磁波遮蔽シート30を製造することができる。
【0063】
製造した電磁波遮蔽シート30をCPU等に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート30を剥離シートF1から剥がし、CPU等の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート30がCPU等より大きい外形を有していると、CPU等の全面を容易に覆うことができる。
【0064】
このように、この発明の第3の実施例に係る電磁波遮蔽シート30によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される導電シート31に、開孔されて並行する複数のペアスリット部32〜35を備え、ペアスリット部32〜35が其々が一辺を成す縮小四角形状に配設されている。
【0065】
この構成によって、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、導電シート31の各位置で、導電シート31を伝搬する電磁波のエネルギーを減衰できるので、電磁波の発生源の近くで電磁波を減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品やプリント基板に応用する場合にも効率よく電磁波を遮蔽できるようになる。また、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
また、ペアスリット部32〜35の一方の端部の延長線上に、他のペアスリット部32〜35が遮るように配されている。例えば、ペアスリット部32の一方の端部32cの延長線上にペアスリット部33が略直角に配されている。従って、導電シート31を周回する渦電流の発生を防止できる。
【実施例4】
【0066】
図7は、この発明の第4の実施例としての電磁波遮蔽シート40の構成例を示す図である。図7に示す電磁波遮蔽シート40は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート41と、複数のペアスリット部42〜44とを有している。3組のペアスリット部42〜44は、導電シート41に三角形状に配置される。電磁波遮蔽シート40は、CPU等に貼付され、CPU等から放射される電磁波を遮蔽する。
【0067】
導電シート41は導電性の板部材の一例を構成し、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート41は、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成され、CPU等の上面に接着される。導電シート41は、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成、一体形成することもできる。導電シート41はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。導電シート41はCPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。
【0068】
導電シート41には、一対の長孔の一例を構成するペアスリット部42〜44が、複数、ここでは3組開孔される。例えば、ペアスリット部42は一対のスリット42a及び42bで成り、ペアスリット部43は一対のスリット43a及び43bで成り、ペアスリット部44は一対のスリット44a及び44bで成る。ペアスリット部42〜44は、導電シート41に吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0069】
ペアスリット部42〜44は、各々、図2に示したペアスリット部12と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部42のスリット42a及び42bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート41に貫通開孔されて並行する。ペアスリット部43及び44も並行する2本のスリットで成る。
【0070】
また、この例のペアスリット部42〜44は、導電シート41に、其々が一辺を成す三角形状に配設される。隣設されるペアスリット部同士、例えばペアスリット部42とペアスリット部43とは三角形の対辺を成す。ペアスリット部42〜44は互いに分離している。
【0071】
電磁波遮蔽シート40では、複数のペアスリット部42〜44で、各々電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部42では、スリット42a及び42bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部42〜44が配設された導電シート41の各位置で電磁波のエネルギーが減衰する。以上のように電磁波遮蔽シート40が構成される。
【0072】
電磁波遮蔽シート40は、第1の実施例の電磁波遮蔽シート10と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート40を製造するには、所定の抜き型を準備して図3Aに示した金属シート15から抜き出すとよい。所定の抜き型は、電磁波遮蔽シート40の外縁部と、ペアスリット部42〜44が一時に抜き出せる構成にする。このようにして、電磁波遮蔽シート40を製造することができる。
【0073】
製造した電磁波遮蔽シート40をCPU等に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート40を剥離シートF1から剥がし、CPU等の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート40がCPU等より大きい外形を有していると、CPU等の全面を容易に覆うことができる。
【0074】
このように、この発明の第4の実施例に係る電磁波遮蔽シート40によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される導電シート41に、開孔されて並行する複数のペアスリット部42〜44を備え、ペアスリット部42〜44が其々が一辺を成す三角形状に配設されている。
【0075】
この構成によって、ペアスリット部同士が互いに平行に配設されないので、ペアスリット部同士の干渉を容易に防止できる。また、各ペアスリット部が各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、導電シート41の各位置で、導電シート41を伝搬する電磁波のエネルギーを減衰できるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品やプリント基板等に適用する場合にも効率よく電磁波を遮蔽できる。更に、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【実施例5】
【0076】
図8は、この発明の第5の実施例としての電磁波遮蔽シート50の構成例を示す図である。図8に示す電磁波遮蔽シート50は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート51と、複数のペアスリット部52〜54とを有している。3組のペアスリット部52〜54は、導電シート51に縮小三角形状に配置される。電磁波遮蔽シート50は、CPU等に貼付され、CPU等から放射される電磁波を遮蔽する。
【0077】
導電シート51は導電性の板部材の一例を構成し、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート51は、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成され、CPU等の上面に接着される。導電シート51は、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成、一体形成することもできる。導電シート51はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。導電シート51はCPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。
【0078】
導電シート51には、一対の長孔の一例を構成するペアスリット部52〜54が、複数、ここでは3組開孔される。例えば、ペアスリット部52は一対のスリット52a及び52bで成り、ペアスリット部53は一対のスリット53a及び53bで成り、ペアスリット部54は一対のスリット54a及び54bで成る。ペアスリット部52〜54は、導電シート51に吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰する機能を有する。
【0079】
ペアスリット部52〜54は、各々、図2に示したペアスリット部12と略同等に構成されて略同等の機能を有するものである。例えば、ペアスリット部52のスリット52a及び52bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート51に貫通開孔されて並行する。ペアスリット部53及び54も並行する2本のスリットで成る。
【0080】
また、この例のペアスリット部52〜54は、導電シート51に、其々が一辺を成す三角形状に配設されるとともに、対辺の一方が他方に対して突出する縮小三角形状に配設される。例えば、三角形の対辺に相当するペアスリット部52とペアスリット部53とでは、ペアスリット部52の一方の端部52cが、ペアスリット部53に対して突出するようになされる。これで、ペアスリット部52〜54の中心に形成される三角形の一辺の長さは、ペアスリット部52〜54の長さに比べて小さくなる。また同時に、ペアスリット部52〜54は回転放射形状の三角形を構成する。ペアスリット部52〜54は互いに分離している。
【0081】
電磁波遮蔽シート50では、複数のペアスリット部52〜54で、各々電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部52では、スリット52a及び52bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部52〜54が配設された導電シート51の各位置で電磁波のエネルギーが減衰する。以上のように電磁波遮蔽シート50が構成される。
【0082】
電磁波遮蔽シート50は、第1の実施例の電磁波遮蔽シート10と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート50を製造するには、所定の抜き型を準備して図3Aに示した金属シート15から抜き出すとよい。所定の抜き型は、電磁波遮蔽シート50の外縁部と、ペアスリット部52〜54が一時に抜き出せる構成にする。このようにして、電磁波遮蔽シート50を製造することができる。
【0083】
製造した電磁波遮蔽シート50をCPU等に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート50を剥離シートF1から剥がし、CPU等の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート50がCPU等より大きい外形を有していると、CPU等の全面を容易に覆うことができる。
【0084】
このように、この発明の第5の実施例に係る電磁波遮蔽シート50によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される導電シート51に、開孔されて並行する複数のペアスリット部52〜54を備え、ペアスリット部52〜54が其々が一辺を成す縮小三角形状に配設されている。
【0085】
この構成によって、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、導電シート51の各位置で、導電シート51を伝搬する電磁波のエネルギーを減衰できるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品やプリント基板に適用する場合に、効率よく電磁波を遮蔽できる。また、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【0086】
加えて、三角形に配設されたペアスリット部同士が互いに平行に配設されないので、ペアスリット部同士の干渉を容易に防止できる。更に、回転放射形状に配設されたペアスリット部52〜54の一方の端部の延長線上に、他のペアスリット部52〜54が配されている。例えば、ペアスリット部53の一方の端部53cの延長線上に、ペアスリット部52が遮るように配されている。従って、導電シート51を周回する渦電流の発生を防止できる。
【実施例6】
【0087】
図9は、この発明の第6の実施例としての電磁波遮蔽シート60の構成例を示す図である。図9に示す電磁波遮蔽シート60は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート61と、複数のペアスリット部62〜65とを有している。4組のペアスリット部62〜65は、導電シート61に十字形状に配置される。電磁波遮蔽シート60は、CPU等に貼付され、CPU等から放射される電磁波を遮蔽する。
【0088】
導電シート61は導電性の板部材の一例を構成し、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート61は、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成され、CPU等の上面に接着される。導電シート61は、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成、又は、一体形成することもできる。導電シート61はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。導電シート61はCPU等から放射される電磁波を吸収する。
【0089】
導電シート61には、一対の長孔の一例を構成するペアスリット部62〜65が、複数、ここでは4組開孔される。例えば、ペアスリット部62は一対のスリット62a及び62bで成り、ペアスリット部63は一対のスリット63a及び63bで成り、ペアスリット部64は一対のスリット64a及び64bで成り、ペアスリット部65は一対のスリット65a及び65bで成る。ペアスリット部62〜65は、導電シート61に吸収された電磁波のエネルギーを減衰する機能を有する。
【0090】
ペアスリット部62〜65は、各々、図2に示したペアスリット部12と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部62のスリット62a及び62bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート61に貫通開孔されて並行する。ペアスリット部63〜65も並行する2本のスリットで成る。
【0091】
また、この例のペアスリット部62〜65は、導電シート61に、其々が一辺を成す十字(クロス:cross)形状に配設される。ペアスリット部62〜65は、一方の端部が中心部で隣設する放射状を成している。ペアスリット部62とペアスリット部64とは同一直線状に配され、ペアスリット部63とペアスリット部65とは同一直線状に配される。ペアスリット部62とペアスリット部63とは、略直角なL字状を成す。同様に、回転方向に隣り合うペアスリット部同士が互いにL字状を成す。ペアスリット部62〜65は互いに分離している。
【0092】
電磁波遮蔽シート60では、複数のペアスリット部62〜65で、各々電磁波のエネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部62では、スリット62a及び62bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部62〜65が配設された導電シート61の各位置で電磁波のエネルギーが電気エネルギーに変換されて減衰する。以上のように電磁波遮蔽シート60が構成される。
【0093】
電磁波遮蔽シート60は、第1の実施例の電磁波遮蔽シート10と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート60を製造するには、所定の抜き型を準備して図3Aに示した金属シート15から抜き出すとよい。所定の抜き型は、電磁波遮蔽シート60の外縁部と、ペアスリット部62〜65が一時に抜き出せる構成にする。このようにして、電磁波遮蔽シート60を製造することができる。
【0094】
製造した電磁波遮蔽シート60をCPU等に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート60を剥離シートF1から剥がし、CPU等の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート60がCPU等より大きい外形を有していると、CPU等の全面を容易に覆うことができる。
【0095】
このように、この発明の第6の実施例に係る電磁波遮蔽シート60によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される導電シート61に、開孔されて並行する複数のペアスリット部62〜65を備え、ペアスリット部62〜65が十字状に配設されている。
【0096】
この構成によって、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、導電シート61の各位置で、導電シート61を伝搬する電磁波を減衰できるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品やプリント基板に応用する場合に効率よく電磁波を遮蔽できる。また、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【0097】
加えて、ペアスリット部同士が並行しないので、平行なペアスリット部同士による干渉を防止できる。更に、複数のペアスリット部の一方の端部が中心部で隣設して、他方の端部は、外周部で離間して配されるので、導電シート61を周回する渦電流の発生を防止できる。
【実施例7】
【0098】
図10は、この発明の第7の実施例としての電磁波遮蔽シート70の構成例を示す図である。図10に示す電磁波遮蔽シート70は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート71と、複数のペアスリット部72〜75とを有している。4組のペアスリット部72〜75は、其々が弧形状を有して導電シート71に円形状に配置される。電磁波遮蔽シート70は、CPU等に貼付され、CPU等から放射される電磁波を遮蔽する。
【0099】
導電シート71は導電性の板部材の一例を構成し、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート71は、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成され、CPU等の上面に接着される。導電シート71は、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成、又は、一体形成することもできる。導電シート71はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。導電シート71はCPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。
【0100】
導電シート71には、一対の長孔の一例を構成する円弧状のペアスリット部72〜75が、複数、ここでは4組開孔される。例えば、ペアスリット部72は一対のスリット72a及び72bで成り、ペアスリット部73は一対のスリット73a及び73bで成り、ペアスリット部74は一対のスリット74a及び74bで成り、ペアスリット部75は一対のスリット75a及び75bで成る。ペアスリット部72〜75は、導電シート71に吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰する機能を有する。
【0101】
ペアスリット部72〜75は、各々、弧形状に湾曲して並行する2本のスリットから構成される。例えば、ペアスリット部72のスリット72a及び72bは、幅W3の湾曲した長孔(スリット)である。スリット72a及び72bは同心円状に配置されて互いに並行する。外側のスリット72aは長さL2を有し、内側のスリット72bは長さL3を有する。長さL2は長さL3よりも長く設定される。同様に、ペアスリット部73〜75も並行する2本の弧形状のスリットから成る。ペアスリット部72〜75は互いに分離して略円形状に配設される。
【0102】
電磁波遮蔽シート70では、複数のペアスリット部72〜75で、各々電磁波のエネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部72では、スリット72a及び72bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部72〜75が配設された導電シート71の各位置で電磁波のエネルギーが減衰する。以上のように電磁波遮蔽シート70が構成される。
【0103】
電磁波遮蔽シート70は、第1の実施例の電磁波遮蔽シート10と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート70を製造するには、所定の抜き型を準備して図3Aに示した金属シート15から抜き出すとよい。所定の抜き型は、電磁波遮蔽シート70の外縁部と、ペアスリット部72〜75が一時に抜き出せる構成にする。このようにして、電磁波遮蔽シート70を製造することができる。
【0104】
製造した電磁波遮蔽シート70をCPU等に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート70を剥離シートF1から剥がし、CPU等の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート70がCPU等より大きい外形を有していると、CPU等の全面を容易に覆うことができる。
【0105】
このように、この発明の第7の実施例に係る電磁波遮蔽シート70によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される導電シート71に、弧形状に開孔されて並行する複数のペアスリット部72〜75を備え、弧形状のペアスリット部72〜75が円形に配設されている。
【0106】
この構成によって、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、ペアスリット部同士が平行に配されることがないので、エネルギーの干渉を容易に防止できる。
【0107】
また、導電シート71の各位置で、導電シート71を伝搬する電磁波のエネルギーを減衰できるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、特に、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子機器やプリント基板に応用する場合に効率よく電磁波を遮蔽できる。更に、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【実施例8】
【0108】
図11は、この発明の第8の実施例としての電磁波遮蔽シート80の構成例を示す図である。図11に示す電磁波遮蔽シート80は、電磁波遮蔽具(第2の電磁波遮蔽具)の一例を構成し、導電シート81a,81c、絶縁シート81b、ペアスリット部82,83を備えている。
【0109】
電磁波遮蔽シート80は、互いに絶縁されて重ねられた2枚の導電シート81a及び81cによる二重遮蔽構造を有する。この例の導電シート81a及び81cには、同一形状のペアスリット部が1組ずつ開孔されていて、開孔されたペアスリット部が、互いに異なる角度で対峙する位置に配設されている。
【0110】
電磁波遮蔽シート80は、CPU等に例えば貼付され、CPU等から放射される電磁波を遮蔽する。電磁波遮蔽シート80は、CPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。電磁波遮蔽シート80は、例えば35mm角の正方形に設定される。また、電磁波遮蔽シート80の外形を構成する導電シート81a及び81cの各々は、例えば、0.09mmの厚みのアルミシートで構成される。
【0111】
導電シート81aは導電性の第1の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート81aは、導電性の部材、銅、アルミ等で構成され、例えば、一方の面に粘着性の物質を塗布又は貼付されてCPU等の上面に接着される。導電シート81aは、CPU等の側の1枚目の遮蔽層を構成する。また導電シート81aは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成、一体形成することもできる。導電シート81aには、一対の長孔としてのペアスリット部82が、ここでは外縁に対して所定の角度で傾斜して開孔される。
【0112】
1枚目の導電シート81aに開孔されたペアスリット部82は、一対のスリット82a、82bから成り、導電シート81aに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。図12は、ペアスリット部82の構成例及び機能例を示す図である。スリット82a及び82bは、例えば、長さL1’及び幅W1’を有して導電シート81aに開孔されて並行する。
【0113】
スリット82a及び82bは、例えば、長さL1’:7.5mm、幅W1’:0.4mmを有し、一定の幅W2’:0.4mmの間隔を維持して平行に配置される。スリット82aとスリット82bとの間には、導電シート81aで成る幅W2’の帯状の導電部82cが構成される。
【0114】
この例の電磁波遮蔽シート80は、CPU等から放射される100MHz〜800MHzの電磁波を遮断するように設定される。スリット82a及び82bの長さL1’は、電磁波の波長λよりも充分小さい長さ、この例ではλ/50に設定される。このようにスリット82a及び82bの長さL1’を設定することによって、電磁波遮蔽シート80が電磁波の高調波成分にも対応できるようになる。
【0115】
電磁波遮蔽シート80がCPU等に貼付されると、まず、1枚目の導電シート81aに電磁波のエネルギーが吸収される。電磁波のエネルギーによって導電シート81aに生じた電界は、スリット82a及び82bに電圧を誘発する。
【0116】
スリット82a及び82bには、それぞれ、電界に誘発された電圧Va’,Vb’が発生する。電圧Va’は、スリット12aの一方のエッジe3から他方のエッジe3’に向けて生じる。電圧Vb’は、スリット12bの一方のエッジe4から他方のエッジe4’に向けて生じる。電圧Va’及びVb’は、振幅が略同等で位相が逆相の電圧信号である。電圧Va’及びVb’は互いに対向して打ち消しあう。
【0117】
また、電界と直交して生じる磁界によって、スリット82a及び82bの周囲に、それぞれ電流Ia’,Ib’が流れる。電流Ia’及びIb’は、スリット82aとスリット82bとの間の導電部82cで対向して打ち消しあう。このように、ペアスリット部82で電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こり、導電シート81aに吸収された電磁波のエネルギーは減衰する。
【0118】
導電シート81aの他方の面には、絶縁シート81bの一方の面が接着される。絶縁シート81bは、絶縁部材の一例を構成し、導電シート81aと略同形状を有して導電シート81aの全面に接着される。絶縁シート81bは、アクリル性の接着剤、樹脂等の絶縁性の部材で構成される。絶縁シート81bの他方の面には、導電シート81cの一方の面が接着される。
【0119】
導電シート81cは導電性の第2の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、絶縁シート81bを介し、導電シート81aの他方の面と対峙する。導電シート81cは、導電性の部材、銅、アルミ等で構成され、CPU等の外側に配されて2枚目の遮蔽層を構成する。導電シート81cは、導電シート81aと同様に、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成、又は、一体形成することもできる。導電シート81cには、一対の長孔としてのペアスリット部83が、ペアスリット部82と異なる方向に傾斜して線対称に配される。この例では、ペアスリット部82とペアスリット部83とが、十字を成して互いに略垂直に交差する。
【0120】
2枚目の導電シート81cには、ペアスリット部83が開孔される。ペアスリット部83は、導電シート81cに吸収された電磁波を減衰させる機能を有する。ペアスリット部83は、一対のスリット83a、83bで成る。
【0121】
スリット83a及び83bは、例えば、スリット82a及び82bと同形状を有し、長さL1’及び幅W1’の大きさで、幅W2’離間して導電シート81cに開孔されて並行する。2枚目の導電シート81cには、1枚目の導電シート81aから漏れ出た電磁波による電界が生じる。導電シート81cに生じた電界は、スリット83a及び83bに電圧を誘発する。
【0122】
スリット83a及び83bに発生する電圧は、振幅が同等で位相が逆相の電圧信号で、互いに対向して打ち消しあう。同様に、電界と直交する磁界によってスリット83a及び83bの周囲に誘発される電流は、スリット83aとスリット83bとの間の導電部で対向して打ち消しあう。
【0123】
このように、ペアスリット部83で電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こり、2枚目の導電シート81cに吸収された電磁波のエネルギーが減衰する。こうして、導電シート81a及び81cによる二重遮蔽構造を備えた電磁波遮蔽シート80が構成される。次に、電磁波遮蔽シート80の製造方法について説明をする。
【0124】
図13A〜Eは、電磁波遮蔽シート80の製造例を示す図である。ここでは、図13Aに示す金属シート16に基づいて電磁波遮蔽シート80を製造する場合について説明する。金属シート16は、剥離シートF1’と、接着剤G1’と、メタルシートM1’とが積層された帯状のシートである。剥離シートF1’は例えば帯状の剥離紙で構成される。接着剤G1’は、例えば、アクリル系の接着剤で構成される。メタルシートM1’は、例えば、銅箔やアルミ箔で構成される。
【0125】
金属シート16に基づいて電磁波遮蔽シート80を形成するには、まず、ペアスリット部82を象った抜き型を準備して、メタルシートM1’にペアスリット部82を所定間隔で連続して打ち抜く。このとき、接着剤G1’は打ち抜かないようにするとよい(図13B)。
【0126】
次に、ペアスリット部82が連続形成されたメタルシートM1’の上面に、接着剤G2’を塗布又は貼付するとともに、接着剤G2’の上面にメタルシートM2’を形成する。接着剤G2’は、例えば、アクリル系の接着剤や両面接着シートで構成される。メタルシートM2’は、例えば、銅箔やアルミ箔で構成される。更に、ペアスリット部83を象った抜き型で、メタルシートM2’にペアスリット部83を所定間隔で連続して打ち抜く(図13C)。ここでは、接着剤G2’を打ち抜かないようにする。
【0127】
最後に、図13Dに示すように、外縁用の抜き型でメタルシートM2’、接着剤G2’、メタルシートM1’を一度に打ち抜き、外縁部80aを形成する。以上のようにして、図3Eに示すような電磁波遮蔽シート80を製造できる。
【0128】
また、ペアスリット部83と外縁部80aとを一度に抜き出せる抜き型を準備して、図13C及びDの打ち抜き工程を同時に実行してもよい。電磁波遮蔽シート80が形成された金属シート16はロール状に巻くとよい。以上のようにして、電磁波遮蔽シート80を製造できる。以下で、電磁波遮蔽シート80をCPU等に装着する方法について説明する。
【0129】
図14は、電磁波遮蔽シート80の装着例を示す斜視図である。図14に示す電磁波遮蔽シート80をCPU1に装着するには、所定の電磁波遮蔽シート80を剥離シートF1’から剥がし、CPU1の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート80がCPU1より大きい外形を有していると、CPU1の全面を容易に覆うことができる。
【0130】
このように、この発明の第8の実施例に係る電磁波遮蔽シート80によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される1枚目の導電シート81aに、絶縁シート81bを介して対峙する2枚目の導電シート81cを備え、導電シート81a及び81cの各々が、略同等の形状を有して配設され、かつ、異なる角度で対峙する位置に配設されたペアスリット部を有している。
【0131】
この構成によって、1枚目のスリットから漏れた電磁界や1枚目の導電シートを通過した電磁界、つまり、2次放射分の電磁波のエネルギーを効率よく遮蔽できる。これにより、CPU等から放射された電磁波のエネルギーを二重に軽減できる二重遮蔽構造の電磁波遮蔽具を提供できるようになった。
【0132】
また、1枚目のペアスリット部82と2枚目のペアスリット部83とが、互いに異なる角度で対峙するので、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、1枚目の導電シート81aに発生した電界が、進行方向を遮るように配設されたペアスリット部83に遮蔽される。これによって、CPU等から上面に放射される電界の多くを軽減できる。また、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【0133】
なお、この例では、金属シート16に基づいて電磁波遮蔽シート80を製造する場合について説明をしたが、それに限られることはなく、導電性の薄板を用意して絶縁シート81bとし、その両面に導電シート81a及び81cを形成するようにしてもよい。この場合は、導電シート81a及び81cを象ったパターンを印刷形成することもできる。
【実施例9】
【0134】
図15は、この発明の第9の実施例としての電磁波遮蔽シート90の構成例を示す図である。図15に示す電磁波遮蔽シート90は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート91a,91c、絶縁シート91b、複数のペアスリット部92〜99を備えている。電磁波遮蔽シート90は、互いに絶縁されて重ねられた導電シート91a及び91cによる二重遮蔽構造を有する。
【0135】
導電シート91a及び91cの各々は、略同一形状を有して配設された複数のペアスリット部を有し、複数のスリットが互いに異なる角度で対峙する位置に配設されている。この例の導電シート91a及び91cは、其々、四角形状に配設された4組のペアスリット部を有し、ペアスリット部で構成された四角形が、45°傾斜して対峙している。
【0136】
電磁波遮蔽シート90は、CPU等に例えば貼付されてCPU等から放射される電磁波を遮蔽するものである。電磁波遮蔽シート90はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。
【0137】
1枚目の導電シート91aは導電性の第1の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート91aは、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔又はアルミ箔から構成されてCPU等の上面に接着される。導電シート91aは、CPU等の側の1枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。また導電シート91aは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成、又は、一体形成することもできる。導電シート91aには、一対の長孔であるペアスリット部92〜95が開孔される。
【0138】
導電シート91aに開孔されたペアスリット部92〜95は、ペアスリット部92が一対のスリット92a及び92bで成り、ペアスリット部93が一対のスリット93a及び93bで成り、ペアスリット部94が一対のスリット94a及び94bで成り、ペアスリット部95が一対のスリット95a及び95bで成る。ペアスリット部92〜95は、導電シート91aに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0139】
各々のペアスリット部92〜95は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部92のスリット92a及び92bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート91aに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部93〜95も並行する2本のスリットで成る。
【0140】
また、この例のペアスリット部92〜95は、導電シート91aに、其々が一辺を成す四角形状に配設される。例えば、互いに隣設されるペアスリット部92とペアスリット部93とは、一方の端部同士が接近して略直角に配され、略L字状を成す。同様に、ペアスリット部92〜95が配されて四角形状を構成する。ペアスリット部92〜95は互いに分離している。
【0141】
導電シート91aでは、複数のペアスリット部92〜95の各々で、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部92では、スリット92a及び92bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部92〜95が配設された導電シート91aの各位置で、電磁波のエネルギーが減衰する。
【0142】
ところで、導電シート91aでは、四角形の対辺を成すペアスリット部92とペアスリット部94とが平行に配設され、ペアスリット部93とペアスリット部95とが平行に配設される。この場合、互いに平行なペアスリット部同士が干渉しあい、電磁波や電気信号の発振、増幅等の原因となるおそれがある。
【0143】
これを防止するため、対辺を成すペアスリット部同士、ペアスリット部93とペアスリット部95との距離D3を、電磁波の波長λの1/4(λ/4)の整数倍と等しくない長さに設定するとよい。例えば、波長λが0.375m程度である場合、距離D3は、例えば0.0075m(λ/50)に設定する。このように互いに平行なペアスリット部の離間距離を設定することにより、電界、磁界、電圧、電流等の干渉を防止できる。以上のように導電シート91aが構成される。導電シート91aの他方の面には、絶縁シート91bが接着される。
【0144】
絶縁シート91bは、絶縁部材の一例を構成し、導電シート91aの全面に接着される。絶縁シート91bは、アクリル性の接着剤、樹脂等の絶縁性の部材で構成される。
【0145】
絶縁シート91bを介して、2枚目の導電シート91cが設けられる。導電シート91cは導電性の第2の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、導電シート91aの他方の面と対峙して配設される。導電シート91cは、例えば、絶縁シート91bの側の一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔、アルミ箔等から構成される。導電シート91cは2枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。導電シート91cは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0146】
2枚目の導電シート91cに四角形状に配設されたペアスリット部96〜99は、ペアスリット部96が一対のスリット96a及び96bで成り、ペアスリット部97が一対のスリット97a及び97bで成り、ペアスリット部98が一対のスリット98a及び98bで成り、ペアスリット部99が一対のスリット99a及び99bで成る。ペアスリット部96〜99は、導電シート91cに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0147】
ペアスリット部96〜99の各々は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部96のスリット96a及び96bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート91cに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部97〜99も並行する2本のスリットで成る。
【0148】
また、この例のペアスリット部96〜99は、導電シート91cに、其々が一辺を成す四角形状を構成する。ここで、導電シート91cに構成された四角形は、導電シート91aに構成された四角形に対して略45°傾斜している。
【0149】
導電シート91cにおいても、複数のペアスリット部96〜99の各々で、電磁波のエネルギーが電気エネルギーに変換され、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部96では、スリット96a及び96bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部96〜99が配設された2枚目の導電シート91cの各位置で、電磁波のエネルギーから変換された電気エネルギーが減衰する。
【0150】
ところで、導電シート91cでは、四角形の対辺を成すペアスリット部96とペアスリット部98とが平行に配設され、ペアスリット部97とペアスリット部99とが平行に配設される。この場合、互いに平行なペアスリット部同士が干渉しあい、電磁波や電気信号の発振、増幅等の原因となるおそれがある。
【0151】
これを防止するため、対辺を成すペアスリット部同士、例えばペアスリット部97とペアスリット部99との距離D3を、電磁波の波長λの1/4(λ/4)の整数倍と等しくない長さに設定するとよい。例えば、波長λが0.375m程度である場合、距離D3は、例えば0.0075m(λ/50)に設定する。このように互いに平行なペアスリット部の離間距離を設定することにより、電界、磁界、電圧、電流等の干渉を防止できる。以上のように導電シート91cが構成される。以下で、電磁波遮蔽シート90の製造方法について説明をする。
【0152】
電磁波遮蔽シート90は、第8の実施例の電磁波遮蔽シート80と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート90を製造するには、まず、金属シート16、接着剤G2’及びメタルシートM2’等の原料となる部材と、電磁波遮蔽シート90用の抜き型とを準備する。
【0153】
電磁波遮蔽シート90用の抜き型には、ペアスリット部92〜95を一時に抜き出せるものと、ペアスリット部96〜99を一時に抜き出せるものと、電磁波遮蔽シート90の外縁部を抜き出せるものとを準備する。
【0154】
所定の部材と、電磁波遮蔽シート90用の抜き型が準備できたら、図13A〜Eに示した工程を電磁波遮蔽シート90用の抜き型を用いて実行する。こうして、電磁波遮蔽シート90が連続貼付されたロール状のシートを製造できる。
【0155】
製造した電磁波遮蔽シート90をCPU1に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート90を剥離シートF1’から剥がし、CPU1の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート90がCPU1より大きい外形を有していると、CPU1の全面を容易に覆うことができる。
【0156】
このように、この発明の第9の実施例に係る電磁波遮蔽シート90によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される1枚目の導電シート91aに、絶縁シート91bを介して対峙する2枚目の導電シート91cを備え、導電シート91a及び91cの各々が、其々が一辺を成す四角形状に配設された複数のペアスリット部を有し、当該ペアスリット部が、異なる角度で対峙している。
【0157】
この構成によって、1枚目のスリットから漏れた電磁界や1枚目の導電シートを通過した電磁界、つまり、2次放射分の電磁波のエネルギーを効率よく遮蔽できる。これにより、CPU等から放射された電磁波のエネルギーを二重に軽減できる二重遮蔽構造の電磁波遮蔽具を提供できるようになった。
【0158】
なお、1枚目のペアスリット部92〜95による四角形と2枚目のペアスリット部96〜99による四角形とが、所定角度、ここでは略45°傾斜して対峙するので、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、1枚目の導電シート91aに発生した電界が、進行方向を遮るように配設された2枚目の導電シート91cのペアスリット部に遮蔽される。これによって、CPU等から上面に放射される電界の多くを軽減できる。
【0159】
また、複数のペアスリット部を有しているので、導電シート91a及び91cの各位置で、導電シートを伝搬する電磁波を減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品又はプリント基板に応用する場合にも効率よく電磁波を遮蔽できる。また、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【実施例10】
【0160】
図16は、この発明の第10の実施例としての電磁波遮蔽シート100の構成例を示す図である。図16に示す電磁波遮蔽シート100は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート101a,101c、絶縁シート101b、ペアスリット部102〜109を備えている。電磁波遮蔽シート100は、互いに絶縁されて重ねられた導電シート101a及び101cによる二重遮蔽構造を有する。導電シート101a及び101cの各々は、縮小四角形状に配設された4組のペアスリット部を有し、ペアスリット部で構成された縮小された四角形が、異なる角度で対峙する位置に配設されている。
【0161】
電磁波遮蔽シート100は、CPU等に例えば貼付されてCPU等から放射される電磁波を遮蔽するものである。電磁波遮蔽シート100はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。
【0162】
電磁波遮蔽シート100の外形を構成する導電シート101a及び導電シート101cには、各々、一対の長孔であるペアスリット部が、複数、ここでは4組開孔されている。1枚目の導電シート101aにはペアスリット部102〜105が開孔され、2枚目の導電シート101cにはペアスリット部106〜109が開孔されている。
【0163】
ペアスリット部102〜105は、導電シート101aに、其々が一辺を成す縮小四角形状に配設されている。ペアスリット部106〜109は、導電シート101cに、其々が一辺を成す縮小四角形状に配設されている。ここでいう縮小四角形状とは、ペアスリット部同士が互いに略直角に配されて、直角の対辺を成す2組のペアスリット部の一方が、他方に対して端部を突出することで、ペアスリット部に囲まれた四角形状が縮小される形状をいう。また、縮小四角形状の四角形は、回転放射形状の四角形ともいえる。ここでいう回転放射形状とは、複数のペアスリット部(一辺)が、所定の角度で傾斜して円形に配置されたかざぐるま型の風車羽状をいう。
【0164】
また、導電シート101a及び導電シート101cにペアスリット部で形成される縮小四角形状は、互いに異なる角度で対峙するように配設されている。この例では、導電シート101aのペアスリット部102〜105が成す縮小四角形状に対して、導電シート101cのペアスリット部106〜109が成す縮小四角形状が、何れかのペアスリット部に平行な中心線を対称軸とする線対称になされる。ペアスリット部102〜109を透過して重ねると、ペアスリット部102〜109による井桁形状が構成される。
【0165】
1枚目の導電シート101aは導電性の第1の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート101aは、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成されてCPU等の上面に接着される。導電シート101aは、CPU等の側の1枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。また導電シート101aは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0166】
1枚目の導電シート101aに開孔されたペアスリット部102〜105は、ペアスリット部102が一対のスリット102a及び102bで成り、ペアスリット部103が一対のスリット103a及び103bで成り、ペアスリット部104が一対のスリット104a及び104bで成り、ペアスリット部105が一対のスリット105a及び105bで成る。ペアスリット部102〜105は、導電シート101aに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0167】
また、各々のペアスリット部102〜105は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部102のスリット102a及び102bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート101aに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部103〜105も並行する2本のスリットで成る。
【0168】
また、この例のペアスリット部102〜105は、導電シート101aに、其々が一辺を成す縮小四角形状に配設される。例えば、互いに隣設されるペアスリット部、例えば、ペアスリット部102とペアスリット部103とは、ペアスリット部102の一方の端部が、ペアスリット部103の中腹部に隣設されるT字状を成す。ペアスリット部102〜105は互いに分離している。
【0169】
導電シート101aでは、複数のペアスリット部102〜105の各々で、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部102では、スリット102a及び102bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部102〜105が配設された導電シート101aの各位置で、電磁波のエネルギーが減衰する。
【0170】
ところで、導電シート101aでは、ペアスリット部102とペアスリット部104とが平行に配設され、ペアスリット部103とペアスリット部105とが平行に配設される。この場合、互いに平行なペアスリット部同士が干渉しあい、電磁波や電気信号の発振、増幅等の原因となるおそれがある。
【0171】
これを防止するため、平行なペアスリット部同士、例えば、ペアスリット部102とペアスリット部104との距離D4を、電磁波の波長λの1/4(λ/4)の整数倍と等しくない長さに設定するとよい。例えば、波長λが0.375m程度である場合、距離D4は、例えば0.0075m(λ/50)に設定する。このように互いに平行なペアスリット部の離間距離を設定することにより、電界、磁界、電圧、電流等の干渉を防止できる。以上のように導電シート101aが構成される。
【0172】
導電シート101aの他方の全面には、絶縁シート101bが接着される。絶縁シート101bは、絶縁部材の一例を構成し、アクリル性の接着剤、樹脂等の絶縁性の部材で構成される。
【0173】
絶縁シート101bを介して、2枚目の導電シート101cが設けられる。導電シート101cは導電性の第2の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、導電シート101aの他方の面と対峙して配設される。導電シート101cは、例えば、絶縁シート101bの側の一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成される。導電シート101cは2枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。導電シート101cは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0174】
2枚目の導電シート101cに開孔されたペアスリット部106〜109は、ペアスリット部106が一対のスリット106a及び106bで成り、ペアスリット部107が一対のスリット107a及び107bで成り、ペアスリット部108が一対のスリット108a及び108bで成り、ペアスリット部109が一対のスリット109a及び109bで成る。ペアスリット部106〜109は、導電シート101cに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0175】
ペアスリット部106〜109の各々は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部106のスリット106a及び106bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート101cに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部107〜109も並行する2本のスリットで成る。
【0176】
また、この例のペアスリット部106〜109は、導電シート101cに、其々が一辺を成す縮小四角形状に配設される。例えば、互いに隣設されるペアスリット部、例えば、ペアスリット部106とペアスリット部107とは、ペアスリット部106の一方の端部が、ペアスリット部107の中腹部に隣設されるT字状を成す。ペアスリット部106〜109は互いに分離している。ペアスリット部106〜109で成る縮小四角形状は、ペアスリット部102〜105で成る縮小四角形状に対して、何れかのペアスリット部に平行な中心線を対称軸とする線対称になされる。
【0177】
導電シート101cでは、複数のペアスリット部106〜109の各々で、電磁波のエネルギーが電気エネルギーに変換され、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部106では、スリット106a及び106bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部106〜109が配設された導電シート101cの各位置で、電磁波のエネルギーから変換された電気エネルギーが減衰する。
【0178】
ところで、導電シート101cでは、ペアスリット部106とペアスリット部108とが平行に配設され、ペアスリット部107とペアスリット部109とが平行に配設される。この場合、互いに平行なペアスリット部同士が干渉しあい、電磁波や電気信号の発振、増幅等の原因となるおそれがある。
【0179】
これを防止するため、平行なペアスリット部同士、例えばペアスリット部107とペアスリット部109との距離D4を、電磁波の波長λの1/4(λ/4)の整数倍でない長さに設定するとよい。例えば、波長λが0.375m程度である場合、距離D4は、例えば0.0075m(λ/50)に設定する。このように互いに平行なペアスリット部の離間距離を設定することにより、電界、磁界、電圧、電流等の干渉を防止できる。以上のように導電シート101cが構成される。以下で、電磁波遮蔽シート100の製造方法について説明をする。
【0180】
電磁波遮蔽シート100は、第8の実施例の電磁波遮蔽シート80と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート100を製造するには、まず、金属シート16、接着剤G2’及びメタルシートM2’等の原料となる部材と、電磁波遮蔽シート100用のの抜き型とを準備する。
【0181】
電磁波遮蔽シート100用の抜き型としては、ペアスリット部102〜105を一時に抜き出せるものと、ペアスリット部106〜109を一時に抜き出せるものと、電磁波遮蔽シート100の外縁部を抜き出せるものとを準備する。
【0182】
所定の部材と電磁波遮蔽シート100用の抜き型は準備できたら、図13A〜Eに示した工程を電磁波遮蔽シート100用の抜き型を用いて実行する。こうして、電磁波遮蔽シート100が連続して貼付されたロール状のシートを製造できる。
【0183】
製造した電磁波遮蔽シート100をCPU1に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート100を剥離シートF1’から剥がし、CPU1の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート100がCPU1より大きい外形を有していると、CPU1の全面を容易に覆うことができる。
【0184】
このように、この発明の第10の実施例に係る電磁波遮蔽シート100によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される1枚目の導電シート101aに、絶縁シート101bを介して対峙する2枚目の導電シート101cを備え、導電シート101a及び101cの各々が、其々が一辺を成す縮小四角形状に配設されたペアスリット部を有し、ペアスリット部で構成された縮小四角形状が異なる角度で対峙している。
【0185】
この構成によって、1枚目のスリットから漏れた電磁界や1枚目の導電シートを通過した電磁界、つまり、2次放射分の電磁波のエネルギーを効率よく遮蔽できる。これにより、CPU等から放射された電磁波のエネルギーを二重に軽減できる二重遮蔽構造の電磁波遮蔽具を提供できるようになった。
【0186】
なお、1枚目のペアスリット部102〜105と2枚目のペアスリット部106〜109とが、互いに異なる位置に配設されているので、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、1枚目の導電シート101aから漏洩した電磁波のエネルギーが、2枚目の導電シート101cのペアスリット部によって効率よく軽減されるようになる。
【0187】
また、ペアスリット部102〜105及びペアスリット部106〜109が其々が一辺を成す縮小四角形状に配設されている。この構成によって、導電シート101a及び101cの各位置で、導電シートを伝搬する電磁波を減衰できるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品又はプリント基板に応用する場合にも効率よく電磁波を遮蔽できる。加えて、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【実施例11】
【0188】
図17は、この発明の第11の実施例としての電磁波遮蔽シート110の構成例を示す図である。図17に示す電磁波遮蔽シート110は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート111a,111c、絶縁シート111b、ペアスリット部112〜117を備えている。電磁波遮蔽シート110は、互いに絶縁されて重ねられた導電シート111a及び111cによる二重遮蔽構造を有する。導電シート111a及び111cの各々は、三角形状に配設された3組のペアスリット部を有し、導電シート111aの三角形と導電シート111cの三角形とが、互いに異なる角度で対峙するようになされる。
【0189】
電磁波遮蔽シート110は、CPU等に例えば貼付されてCPU等から放射される電磁波を遮蔽するものである。電磁波遮蔽シート110はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。
【0190】
電磁波遮蔽シート110の外形を構成する導電シート111a及び導電シート111cには、各々、一対の長孔であるペアスリット部が、複数、ここでは3組開孔されている。1枚目の導電シート111aにはペアスリット部112〜114が開孔され、2枚目の導電シート111cにはペアスリット部115〜117が開孔されている。
【0191】
ペアスリット部112〜114は、導電シート111aに、其々が一辺を成す三角形状に配設されている。ペアスリット部115〜117は、導電シート111cに、其々が一辺を成す三角形状に配設されている。
【0192】
また、導電シート111a及び導電シート111cにペアスリット部で形成される三角形は、互いに異なる角度で対峙している。この例では、導電シート111aの上面に形成された三角形に対して、導電シート111cの上面に形成された三角形が、45°傾斜している。
【0193】
1枚目の導電シート111aは導電性の第1の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート111aは、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成されてCPU等の上面に接着される。導電シート111aは、CPU等の側の1枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。また導電シート111aは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0194】
1枚目の導電シート111aに開孔されたペアスリット部112〜114は、ペアスリット部112が一対のスリット112a及び112bで成り、ペアスリット部113が一対のスリット113a及び113bで成り、ペアスリット部114が一対のスリット114a及び114bで成る。ペアスリット部112〜114は、導電シート111aに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0195】
また、各々のペアスリット部112〜114は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部112のスリット112a及び112bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート111aに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部113及び114も各々並行する2本のスリットで成る。
【0196】
また、この例のペアスリット部112〜114は、導電シート111aに、其々が一辺を成す三角形に配設される。例えば、互いに隣設されるペアスリット部、例えば、ペアスリット部112とペアスリット部113とは、三角形の対辺を成す。ペアスリット部112〜114は互いに分離している。
【0197】
導電シート111aでは、複数のペアスリット部112〜114の各々で、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部112では、スリット112a及び112bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部112〜114が配設された導電シート111aの各位置で、電磁波のエネルギーが減衰する。
【0198】
導電シート111aの他方の全面には、絶縁シート111bが接着される。絶縁シート111bは、絶縁部材の一例を構成し、アクリル性の接着剤、樹脂等の絶縁性の部材で構成される。
【0199】
絶縁シート111bを介して、2枚目の導電シート111cが設けられる。導電シート111cは導電性の第2の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、導電シート111aの他方の面と対峙して配設される。導電シート111cは、例えば、絶縁シート111bの側の一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成される。導電シート111cは2枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。導電シート111cは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0200】
2枚目の導電シート111cに開孔されたペアスリット部115〜117は、ペアスリット部115が一対のスリット115a及び115bで成り、ペアスリット部116が一対のスリット116a及び116bで成り、ペアスリット部117が一対のスリット117a及び117bで成る。ペアスリット部115〜117は、導電シート111cに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0201】
ペアスリット部115〜117の各々は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部115のスリット115a及び115bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート111cに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部116及び117も並行する2本のスリットで成る。
【0202】
また、この例のペアスリット部115〜117は、導電シート111cに、其々が一辺を成す三角形に配設される。例えば、互いに隣設されるペアスリット部、例えば、ペアスリット部115とペアスリット部116とは三角形の対辺を成す。ペアスリット部115〜117は互いに分離している。
【0203】
導電シート111cでは、複数のペアスリット部115〜117の各々で、電磁波のエネルギーが電気エネルギーに変換され、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部115では、スリット115a及び115bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部115〜117が配設された導電シート111cの各位置で、電磁波のエネルギーから変換された電気エネルギーが減衰する。以上のように導電シート111cが構成される。以下で、電磁波遮蔽シート110の製造方法について説明をする。
【0204】
電磁波遮蔽シート110は、第8の実施例の電磁波遮蔽シート80と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート110を製造するには、まず、金属シート16、接着剤G2’及びメタルシートM2’等の原料となる部材と、電磁波遮蔽シート110用の抜き型とを準備する。
【0205】
電磁波遮蔽シート110用の抜き型としては、ペアスリット部112〜114を一時に抜き出せるものと、ペアスリット部115〜117を一時に抜き出せるものと、電磁波遮蔽シート110の外縁部を抜き出せるものとを準備する。
【0206】
所定の部材と電磁波遮蔽シート110用の抜き型は準備できたら、図13A〜Eに示した工程を電磁波遮蔽シート110用の抜き型を用いて実行する。こうして、電磁波遮蔽シート110が連続して貼付されたロール状のシートを製造できる。
【0207】
製造した電磁波遮蔽シート110をCPU1に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート110を剥離シートF1’から剥がし、CPU1の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート110がCPU1より大きい外形を有していると、CPU1の全面を容易に覆うことができる。
【0208】
このように、この発明の第11の実施例に係る電磁波遮蔽シート110によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される1枚目の導電シート111aに、絶縁シート111bを介して対峙する2枚目の導電シート111cを備え、導電シート111a及び111cの各々が、其々が一辺を成す三角形に配設されて、異なる角度で対峙する複数のペアスリット部を有している。
【0209】
この構成によって、1枚目のスリットから漏れた電磁界や1枚目の導電シートを通過した電磁界、つまり、2次放射分の電磁波のエネルギーを効率よく遮蔽できる。これにより、CPU等から放射された電磁波のエネルギーを二重に軽減できる二重遮蔽構造の電磁波遮蔽具を提供できるようになった。
【0210】
なお、1枚目の導電シート111aのペアスリット部による三角形と、2枚目の導電シート111cのペアスリット部による三角形とが、互いに異なる角度で対峙するので、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、1枚目の導電シート111aから漏洩した電磁波のエネルギーが、2枚目の導電シート111cでペアスリット部に遮蔽される。これによって、電界の多くを軽減できる。
【0211】
また、ペアスリット部112〜114及びペアスリット部115〜117が其々が一辺を成す三角形に配設されている。この構成によって、導電シート111a及び111cの各位置で、導電シートを伝搬する電磁波を減衰できるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品又はプリント基板に応用する場合にも効率よく電磁波を遮蔽できる。
【0212】
また、ペアスリット部112〜114及びペアスリット部115〜117が、同一の導電シートで平行に配置されないので、ペアスリット部同士の干渉を防止できる。加えて、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【実施例12】
【0213】
図18は、この発明の第12の実施例としての電磁波遮蔽シート120の構成例を示す図である。図18に示す電磁波遮蔽シート120は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート121a,121c、絶縁シート121b、ペアスリット部122〜127を備えている。電磁波遮蔽シート120は、互いに絶縁されて重ねられた導電シート121a及び121cによる二重遮蔽構造を有する。導電シート121a及び121cの各々は、縮小三角形状に配設された3組のペアスリット部を有し、2枚の導電シートに構成された縮小三角形が異なる角度で対峙するようになされる。
【0214】
電磁波遮蔽シート120は、CPU等に例えば貼付されてCPU等から放射される電磁波を遮蔽するものである。電磁波遮蔽シート120はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。
【0215】
電磁波遮蔽シート120の外形を構成する導電シート121a及び導電シート121cには、各々、一対の長孔であるペアスリット部が、複数、ここでは3組開孔されている。1枚目の導電シート121aにはペアスリット部122〜124が開孔され、2枚目の導電シート121cにはペアスリット部125〜127が開孔されている。
【0216】
また、この例のペアスリット部122〜124及びペアスリット部125〜127は、導電シート121a又は121cに、其々が一辺を成す縮小三角形状に配設される。ここで、縮小三角形状とは、三角形の対辺に相当する2組のペアスリット部のうち、一方のペアスリット部が、他方のペアスリット部に対して、一端部が突出するように配置された三角形である。縮小三角形状は、同時に回転放射状の三角形を構成する。ペアスリット部122〜124は互いに分離し、ペアスリット部125〜127は互いに分離している。
【0217】
また、導電シート121a及び導電シート121cに形成されたペアスリット部による縮小三角形は、互いに異なる角度で対峙している。この例では、導電シート121aの上面に形成された縮小三角形に対して、導電シート121cの上面に形成された縮小三角形が、ペアスリット部127に平行な中心線を対称軸とする線対称になされる。
【0218】
1枚目の導電シート121aは導電性の第1の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート121aは、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成されてCPU等の上面に接着される。導電シート121aは、CPU等の側の1枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。また導電シート121aは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0219】
1枚目の導電シート121aに開孔されたペアスリット部122〜124は、ペアスリット部122が一対のスリット122a及び122bで成り、ペアスリット部123が一対のスリット123a及び123bで成り、ペアスリット部124が一対のスリット124a及び124bで成る。ペアスリット部122〜124は、導電シート121aに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0220】
また、各々のペアスリット部122〜124は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部122のスリット122a及び122bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート121aに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部123及び124も各々並行する2本のスリットで成る。
【0221】
導電シート121aでは、複数のペアスリット部122〜124の各々で、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部122では、スリット122a及び122bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部122〜124が配設された導電シート121aの各位置で、電磁波のエネルギーが減衰する。
【0222】
導電シート121aの他方の全面には、絶縁シート121bが接着される。絶縁シート121bは、絶縁部材の一例を構成し、アクリル性の接着剤、樹脂等の絶縁性の部材で構成される。
【0223】
絶縁シート121bを介して、2枚目の導電シート121cが設けられる。導電シート121cは導電性の第2の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、導電シート121aの他方の面と対峙して配設される。導電シート121cは、例えば、絶縁シート121bの側の一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成される。導電シート121cは2枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。導電シート121cは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0224】
2枚目の導電シート121cに開孔されたペアスリット部125〜127は、ペアスリット部125が一対のスリット125a及び125bで成り、ペアスリット部126が一対のスリット126a及び126bで成り、ペアスリット部127が一対のスリット127a及び127bで成る。ペアスリット部125〜127は、導電シート121cに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0225】
ペアスリット部125〜127の各々は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部125のスリット125a及び125bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート121cに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部126及び127も並行する2本のスリットで成る。
【0226】
導電シート121cでは、複数のペアスリット部125〜127の各々で、電磁波のエネルギーが電気エネルギーに変換され、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部126では、スリット126a及び126bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部125〜127が配設された導電シート121cの各位置で、電磁波のエネルギーから変換された電気エネルギーが減衰する。以上のように導電シート121cが構成される。以下で、電磁波遮蔽シート120の製造方法について説明をする。
【0227】
電磁波遮蔽シート120は、第8の実施例の電磁波遮蔽シート80と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート120を製造するには、まず、金属シート16、接着剤G2’及びメタルシートM2’等の原料となる部材と、電磁波遮蔽シート120用の抜き型とを準備する。
【0228】
電磁波遮蔽シート120用の抜き型としては、ペアスリット部122〜124を一時に抜き出せるものと、ペアスリット部125〜127を一時に抜き出せるものと、電磁波遮蔽シート120の外縁部を抜き出せるものとを準備する。
【0229】
所定の部材と電磁波遮蔽シート120用の抜き型は準備できたら、図13A〜Eに示した工程を電磁波遮蔽シート120用の抜き型を用いて実行する。こうして、電磁波遮蔽シート120が連続して貼付されたロール状のシートを製造できる。
【0230】
製造した電磁波遮蔽シート120をCPU1に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート120を剥離シートF1’から剥がし、CPU1の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート120がCPU1より大きい外形を有していると、CPU1の全面を容易に覆うことができる。
【0231】
このように、この発明の第12の実施例に係る電磁波遮蔽シート120によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される1枚目の導電シート121aに、絶縁シート121bを介して対峙する2枚目の導電シート121cを備え、導電シート121a及び121cの各々が、其々が一辺を成す縮小三角形状に配設されて、異なる角度で対峙する複数のペアスリット部を有している。
【0232】
この構成によって、1枚目のスリットから漏れた電磁界や1枚目の導電シートを通過した電磁界、つまり、2次放射分の電磁波のエネルギーを効率よく遮蔽できる。これにより、CPU等から放射された電磁波のエネルギーを二重に軽減できる二重遮蔽構造の電磁波遮蔽具を提供できるようになった。
【0233】
なお、1枚目の導電シート121aのペアスリット部による縮小三角形状と、2枚目の導電シート121cのペアスリット部による縮小三角形状とが、互いに異なる角度で対峙するので、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、1枚目の導電シート121aから漏洩した電磁波のエネルギーが、2枚目の導電シート121cでペアスリット部に遮蔽される。これによって、CPU等から上面に放射される電界の多くを軽減できる。
【0234】
また、ペアスリット部122〜124及びペアスリット部125〜127が、同一の導電シートで平行に配置されないので、ペアスリット部同士の干渉を防止できる。
【0235】
更に、回転放射形状に配設されたペアスリット部122〜124の一方の端部の延長線上に、他のペアスリット部122〜124が配されている。例えば、ペアスリット部123の一方の端部の延長線上に、ペアスリット部124が遮るように配されている。従って、導電シート121aを周回する渦電流の発生を防止できる。
【0236】
同様に、ペアスリット部125〜127の一方の端部の延長線上に、他のペアスリット部125〜127が配されているので、導電シート121cを周回する渦電流の発生を防止できる。
【0237】
更に、ペアスリット部122〜124及びペアスリット部125〜127が、導電シート121a及び121cの広い領域に配設されるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品又はプリント基板に応用する場合にも効率よく電磁波を遮蔽できる。加えて、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【実施例13】
【0238】
図19は、この発明の第13の実施例としての電磁波遮蔽シート130の構成例を示す図である。図19に示す電磁波遮蔽シート130は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート131a,131c、絶縁シート131b、ペアスリット部132〜139を備えている。電磁波遮蔽シート130は、互いに絶縁されて重ねられた導電シート131a及び131cによる二重遮蔽構造を有する。導電シート131a及び131cの各々は、十字(クロス:cross)形状に配設された4組のペアスリット部を有し、2枚の導電シートに構成された十字形状が、互いに異なる角度で対峙するようになされる。この例では、導電シート131aの十字形状と、導電シート131cの十字形状とが45°傾斜して対向する。
【0239】
電磁波遮蔽シート130は、CPU等に例えば貼付されてCPU等から放射される電磁波を遮蔽するものである。電磁波遮蔽シート130はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。
【0240】
電磁波遮蔽シート130の外形を構成する導電シート131a及び導電シート131cには、各々、一対の長孔であるペアスリット部が、複数、ここでは4組開孔されている。1枚目の導電シート131aにはペアスリット部132〜135が開孔され、2枚目の導電シート131cにはペアスリット部136〜139が開孔されている。
【0241】
また、この例のペアスリット部132〜135及びペアスリット部136〜139は、導電シート131a又は131cに、其々が一辺を成す十字形状に配設される。ここで十字形状とは、4組のペアスリット部の一方の端部が中心部で隣設し、他方の端部が放射されて成る十字形状をいう。回転方向に隣設されるペアスリット部同士はL字状を成す。個々のペアスリット部は互いに分離している。
【0242】
また、導電シート131a及び導電シート131cに形成された十字形状は、互いに異なる角度で対峙している。この例では、導電シート131aの上面の十字形状に対して、導電シート131cの上面の十字形状が45°傾斜している。
【0243】
1枚目の導電シート131aは導電性の第1の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート131aは、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成されてCPU等の上面に接着される。導電シート131aは、CPU等の側の1枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。また導電シート131aは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0244】
1枚目の導電シート131aに開孔されたペアスリット部132〜135は、ペアスリット部132が一対のスリット132a及び132bで成り、ペアスリット部133が一対のスリット133a及び133bで成り、ペアスリット部134が一対のスリット134a及び134bで成り、ペアスリット部135が一対のスリット135a及び135bで成る。ペアスリット部132〜135は、導電シート131aに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0245】
また、各々のペアスリット部132〜135は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部132のスリット132a及び132bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート131aに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部133〜135も各々並行する2本のスリットで成る。
【0246】
導電シート131aでは、複数のペアスリット部132〜135の各々で、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部132では、スリット132a及び132bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部132〜135が配設された導電シート131aの各位置で、電磁波のエネルギーが減衰する。
【0247】
導電シート131aの他方の全面には、絶縁シート131bが接着される。絶縁シート131bは、絶縁部材の一例を構成し、アクリル性の接着剤、樹脂等の絶縁性の部材で構成される。
【0248】
絶縁シート131bを介して、2枚目の導電シート131cが設けられる。導電シート131cは導電性の第2の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、導電シート131aの他方の面と対峙して配設される。導電シート131cは、例えば、絶縁シート131bの側の一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成される。導電シート131cは2枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。導電シート131cは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0249】
2枚目の導電シート131cに開孔されたペアスリット部136〜139は、ペアスリット部136が一対のスリット136a及び136bで成り、ペアスリット部137が一対のスリット137a及び137bで成り、ペアスリット部138が一対のスリット138a及び138bで成り、ペアスリット部139が一対のスリット139a及び139bで成る。ペアスリット部136〜139は、導電シート131cに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0250】
ペアスリット部136〜139の各々は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部136のスリット136a及び136bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート131cに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部137〜139も並行する2本のスリットで成る。
【0251】
導電シート131cでは、複数のペアスリット部136〜139の各々で、電磁波のエネルギーが電気エネルギーに変換され、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部136では、スリット136a及び136bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部136〜139が配設された導電シート131cの各位置で、電磁波のエネルギーから変換された電気エネルギーが減衰する。以上のように導電シート131cが構成される。以下で、電磁波遮蔽シート130の製造方法について説明をする。
【0252】
電磁波遮蔽シート130は、第8の実施例の電磁波遮蔽シート80と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート130を製造するには、まず、金属シート16、接着剤G2’及びメタルシートM2’等の原料となる部材と、電磁波遮蔽シート130用の抜き型とを準備する。
【0253】
電磁波遮蔽シート130用の抜き型としては、ペアスリット部132〜135を一時に抜き出せるものと、ペアスリット部136〜139を一時に抜き出せるものと、電磁波遮蔽シート130の外縁部を抜き出せるものとを準備する。
【0254】
所定の部材と電磁波遮蔽シート130用の抜き型は準備できたら、図13A〜Eに示した工程を電磁波遮蔽シート130用の抜き型を用いて実行する。こうして、電磁波遮蔽シート130が連続して貼付されたロール状のシートを製造できる。
【0255】
製造した電磁波遮蔽シート130をCPU1に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート130を剥離シートF1’から剥がし、CPU1の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート130がCPU1より大きい外形を有していると、CPU1の全面を容易に覆うことができる。
【0256】
このように、この発明の第13の実施例に係る電磁波遮蔽シート130によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される1枚目の導電シート131aに、絶縁シート131bを介して対峙する2枚目の導電シート131cを備え、導電シート131a及び131cの各々が、其々が一辺を成す十字形状に配設された複数のペアスリット部を有し、ペアスリット部で構成される十字形状が異なる角度で対峙している。
【0257】
この構成によって、1枚目のスリットから漏れた電磁界や1枚目の導電シートを通過した電磁界、つまり、2次放射分の電磁波のエネルギーを効率よく遮蔽できる。これにより、CPU等から放射された電磁波のエネルギーを二重に軽減できる二重遮蔽構造の電磁波遮蔽具を提供できるようになった。
【0258】
なお、1枚目の導電シート131aの十字形状と、2枚目の導電シート131cの十字形状とが、互いに異なる角度、ここでは略45°傾斜して対峙するので、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、1枚目の導電シート131aから漏洩した電磁波のエネルギーが2枚目の導電シート131cのペアスリット部に効率よく遮蔽される。また、ペアスリット部同士が並行していないので、ペアスリット部同士による干渉を防止できる。
【0259】
更に、ペアスリット部132〜135及びペアスリット部136〜139が、導電シート131a及び131cの広い領域に配設されるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品又はプリント基板に応用する場合にも効率よく電磁波を遮蔽できる。加えて、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を増加させず、簡単な工程で装着可能である。
【実施例14】
【0260】
図20は、この発明の第14の実施例としての電磁波遮蔽シート140の構成例を示す図である。図20に示す電磁波遮蔽シート140は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート141a,141c、絶縁シート141b、ペアスリット部142〜149を備えている。電磁波遮蔽シート140は、互いに絶縁されて重ねられた導電シート141a及び141cによる二重遮蔽構造を有する。
【0261】
CPU等の側の1枚目の導電シート141aは、四角形状に配設された4組のペアスリット部を有し、表層側の2枚目の導電シート141cは、十字形状に配設された4組のペアスリット部を有している。導電シート141aのペアスリット部と、導電シート141cのペアスリット部とは、互いに異なる形状に配設されている。
【0262】
電磁波遮蔽シート140は、CPU等に例えば貼付されてCPU等から放射される電磁波を遮蔽するものである。電磁波遮蔽シート140はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。
【0263】
電磁波遮蔽シート140の外形を構成する導電シート141a及び導電シート141cには、各々、一対の長孔であるペアスリット部が、複数、ここでは4組開孔されている。1枚目の導電シート141aにはペアスリット部142〜145が四角形に開孔され、2枚目の導電シート141cにはペアスリット部146〜149が十字形状に開孔されている。個々のペアスリット部は互いに分離している。また、導電シート141aの四角形状と、導電シート141cの十字形状とは、互いに異なる角度、この例では45°傾斜して配置される。また、導電シート141aの四角形状と、導電シート141cの十字形状とは、互いに重なることなく異なる位置に配設されている。
【0264】
1枚目の導電シート141aは導電性の第1の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート141aは、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成されてCPU等の上面に接着される。導電シート141aは、CPU等の側の1枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。また導電シート141aは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0265】
1枚目の導電シート141aに四角形に開孔されたペアスリット部142〜145は、ペアスリット部142が一対のスリット142a及び142bで成り、ペアスリット部143が一対のスリット143a及び143bで成り、ペアスリット部144が一対のスリット144a及び144bで成り、ペアスリット部145が一対のスリット145a及び145bで成る。ペアスリット部142〜145は、導電シート141aに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0266】
ペアスリット部142〜145の各々は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部142のスリット142a及び142bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート141aに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部143〜145も各々並行する2本のスリットで成る。
【0267】
導電シート141aでは、四角形に配設されたペアスリット部142〜145の各々で、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部142では、スリット142a及び142bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部142〜145が配設された導電シート141aの各位置で、電磁波のエネルギーが減衰する。
【0268】
ところで、導電シート141aでは、ペアスリット部142とペアスリット部144とが平行に配設され、ペアスリット部143とペアスリット部145とが平行に配設される。この場合、互いに平行なペアスリット部同士が干渉しあい、電磁波や電気信号の発振、増幅等の原因となるおそれがある。
【0269】
これを防止するため、平行なペアスリット部同士、例えば、ペアスリット部142とペアスリット部144との距離を、電磁波の波長λの1/4(λ/4)の整数倍でない長さに設定するとよい。例えば、波長λが0.375m程度である場合、ペアスリット部142とペアスリット部144との距離は、例えば0.0075m(λ/50)に設定する。このように互いに平行なペアスリット部の離間距離を設定することにより、電界、磁界、電圧、電流等の干渉を防止できるようになる。
【0270】
導電シート141aの他方の全面には、絶縁シート141bが接着される。絶縁シート141bは、絶縁部材の一例を構成し、アクリル性の接着剤、樹脂等の絶縁性の部材で構成される。
【0271】
絶縁シート141bを介して、2枚目の導電シート141cが設けられる。導電シート141cは導電性の第2の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、導電シート141aの他方の面と対峙して配設される。導電シート141cは、例えば、絶縁シート141bの側の一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成される。導電シート141cは2枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。導電シート141cは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0272】
2枚目の導電シート141cに十字に開孔されたペアスリット部146〜149は、ペアスリット部146が一対のスリット146a及び146bで成り、ペアスリット部147が一対のスリット147a及び147bで成り、ペアスリット部148が一対のスリット148a及び148bで成り、ペアスリット部149が一対のスリット149a及び149bで成る。ペアスリット部146〜149は、導電シート141cに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0273】
ペアスリット部146〜149の各々は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部146のスリット146a及び146bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート141cに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部147〜149も並行する2本のスリットで成る。
【0274】
導電シート141cでは、十字形状に配設されたペアスリット部146〜149の各々で、電磁波のエネルギーが電気エネルギーに変換され、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部146では、スリット146a及び146bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部146〜149が配設された導電シート141cの各位置で、電磁波のエネルギーから変換された電気エネルギーが減衰する。以上のように導電シート141cが構成される。以下で、電磁波遮蔽シート140の製造方法について説明をする。
【0275】
電磁波遮蔽シート140は、第8の実施例の電磁波遮蔽シート80と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート140を製造するには、まず、金属シート16、接着剤G2’及びメタルシートM2’等の原料となる部材と、電磁波遮蔽シート140用のの抜き型とを準備する。
【0276】
電磁波遮蔽シート140用の抜き型としては、ペアスリット部142〜145を一時に抜き出せるものと、ペアスリット部146〜149を一時に抜き出せるものと、電磁波遮蔽シート140の外縁部を抜き出せるものとを準備する。
【0277】
所定の部材と電磁波遮蔽シート140用の抜き型は準備できたら、図13A〜Eに示した工程を電磁波遮蔽シート140用の抜き型を用いて実行する。こうして、電磁波遮蔽シート140が連続して貼付されたロール状のシートを製造できる。
【0278】
製造した電磁波遮蔽シート140をCPU1に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート140を剥離シートF1’から剥がし、CPU1の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート140がCPU1より大きい外形を有していると、CPU1の全面を容易に覆うことができる。
【0279】
このように、この発明の第14の実施例に係る電磁波遮蔽シート140によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される1枚目の導電シート141aに、絶縁シート141bを介して対峙する2枚目の導電シート141cを備え、導電シート141a及び141cが、異なる形状に配設された複数のペアスリット部を有して対峙している。
【0280】
この構成によって、1枚目のスリットから漏れた電磁界や1枚目の導電シートを通過した電磁界、つまり、2次放射分の電磁波のエネルギーを効率よく遮蔽できる。これにより、CPU等から放射された電磁波のエネルギーを二重に軽減できる二重遮蔽構造の電磁波遮蔽具を提供できるようになった。
【0281】
なお、1枚目の導電シート141aの四角形状と、2枚目の導電シート141cの十字形状とが、互いに異なる角度、ここでは略45°傾斜して対峙するので、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、1枚目の導電シート141aから漏洩した電磁波のエネルギーが2枚目の導電シート141cのペアスリット部に効率よく遮蔽される。
【0282】
更に、ペアスリット部142〜145及びペアスリット部146〜149が、互いに重なることなく配設され、導電シート141a及び141cの広い領域に配置されるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品又はプリント基板に応用する場合にも効率よく電磁波を遮蔽できる。加えて、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【実施例15】
【0283】
図21は、この発明の第15の実施例としての電磁波遮蔽シート150の構成例を示す図である。図21に示す電磁波遮蔽シート150は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート151a,151c、絶縁シート151b、ペアスリット部152〜159を備えている。電磁波遮蔽シート150は、互いに絶縁されて重ねられた導電シート151a及び151cによる二重遮蔽構造を有する。
【0284】
CPU等の側の1枚目の導電シート151aは、縮小四角形状に配設された4組のペアスリット部を有し、表層側の2枚目の導電シート151cは、十字形状に配設された4組のペアスリット部を有している。導電シート151aのペアスリット部と、導電シート151cのペアスリット部とは、互いに異なる形状に配設されて、対峙するようになされる。
【0285】
電磁波遮蔽シート150は、CPU等に例えば貼付されてCPU等から放射される電磁波を遮蔽するものである。電磁波遮蔽シート150はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。
【0286】
電磁波遮蔽シート150の外形を構成する導電シート151a及び導電シート151cの各々には、一対の長孔であるペアスリット部が、複数、ここでは4組開孔されている。1枚目の導電シート151aにはペアスリット部152〜155が縮小四角形状に開孔され、2枚目の導電シート151cにはペアスリット部156〜159が十字に開孔されている。個々のペアスリット部は互いに分離している。また、導電シート151aの縮小四角形状と、導電シート151cの十字形状とは、互いに異なる角度、この例では45°傾斜して配置される。
【0287】
1枚目の導電シート151aは導電性の第1の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート151aは、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成されてCPU等の上面に接着される。導電シート151aは、CPU等の側の1枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。また導電シート151aは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0288】
1枚目の導電シート151aに縮小四角形状に開孔されたペアスリット部152〜155は、ペアスリット部152が一対のスリット152a及び152bで成り、ペアスリット部153が一対のスリット153a及び153bで成り、ペアスリット部154が一対のスリット154a及び154bで成り、ペアスリット部155が一対のスリット155a及び155bで成る。ペアスリット部152〜155は、導電シート151aに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0289】
ペアスリット部152〜155の各々は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部152のスリット152a及び152bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート151aに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部153〜155も各々並行する2本のスリットで成る。
【0290】
導電シート151aでは、縮小四角形状に配設されたペアスリット部152〜155の各々で、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部152では、スリット152a及び152bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部152〜155が配設された導電シート151aの各位置で、電磁波のエネルギーが減衰する。
【0291】
ところで、導電シート151aでは、ペアスリット部152とペアスリット部154とが平行に配設され、ペアスリット部153とペアスリット部155とが平行に配設される。この場合、互いに平行なペアスリット部同士が干渉しあい、電磁波や電気信号の発振、増幅等の原因となるおそれがある。
【0292】
これを防止するため、平行なペアスリット部同士、例えば、ペアスリット部152とペアスリット部154との距離を、電磁波の波長λの1/4(λ/4)の整数倍でない長さに設定するとよい。例えば、波長λが0.375m程度である場合、ペアスリット部152とペアスリット部154との距離は、例えば0.0075m(λ/50)に設定する。このように互いに平行なペアスリット部の離間距離を設定することにより、電界、磁界、電圧、電流等の干渉を防止できるようになる。
【0293】
導電シート151aの他方の全面には、絶縁シート151bが接着される。絶縁シート151bは、絶縁部材の一例を構成し、アクリル性の接着剤、樹脂等の絶縁性の部材で構成される。
【0294】
絶縁シート151bを介して、2枚目の導電シート151cが設けられる。導電シート151cは導電性の第2の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、導電シート151aの他方の面と対峙して配設される。導電シート151cは、例えば、絶縁シート151bの側の一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成される。導電シート151cは2枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。導電シート151cは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0295】
2枚目の導電シート151cに十字に開孔されたペアスリット部156〜159は、ペアスリット部156が一対のスリット156a及び156bで成り、ペアスリット部157が一対のスリット157a及び157bで成り、ペアスリット部158が一対のスリット158a及び158bで成り、ペアスリット部159が一対のスリット159a及び159bで成る。ペアスリット部156〜159は、導電シート151cに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0296】
ペアスリット部156〜159の各々は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部156のスリット156a及び156bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート151cに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部157〜159も並行する2本のスリットで成る。
【0297】
導電シート151cでは、十字に配設されたペアスリット部156〜159の各々で、電磁波のエネルギーが電気エネルギーに変換され、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部156では、スリット156a及び156bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部156〜159が配設された導電シート151cの各位置で、電磁波のエネルギーから変換された電気エネルギーが減衰する。以上のように導電シート151cが構成される。以下で、電磁波遮蔽シート150の製造方法について説明をする。
【0298】
電磁波遮蔽シート150は、第8の実施例の電磁波遮蔽シート80と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート150を製造するには、まず、金属シート16、接着剤G2’及びメタルシートM2’等の原料となる部材と、電磁波遮蔽シート150用の抜き型とを準備する。
【0299】
電磁波遮蔽シート150用の抜き型としては、ペアスリット部152〜155を一時に抜き出せるものと、ペアスリット部156〜159を一時に抜き出せるものと、電磁波遮蔽シート150の外縁部を抜き出せるものとを準備する。
【0300】
所定の部材と電磁波遮蔽シート150用の抜き型は準備できたら、図13A〜Eに示した工程を電磁波遮蔽シート150用の抜き型を用いて実行する。こうして、電磁波遮蔽シート150が連続して貼付されたロール状のシートを製造できる。
【0301】
製造した電磁波遮蔽シート150をCPU1に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート150を剥離シートF1’から剥がし、CPU1の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート150がCPU1より大きい外形を有していると、CPU1の全面を容易に覆うことができる。
【0302】
このように、この発明の第15の実施例に係る電磁波遮蔽シート150によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される1枚目の導電シート151aに、絶縁シート151bを介して対峙する2枚目の導電シート151cを備え、導電シート151a及び151cが、異なる形状に配設された複数のペアスリット部を有して対峙している。
【0303】
この構成によって、1枚目のスリットから漏れた電磁界や1枚目の導電シートを通過した電磁界、つまり、2次放射分の電磁波のエネルギーを効率よく遮蔽できる。これにより、CPU等から放射された電磁波のエネルギーを二重に軽減できる二重遮蔽構造の電磁波遮蔽具を提供できるようになった。
【0304】
なお、1枚目の導電シート151aの縮小四角形状と、2枚目の導電シート151cの十字形状とが、互いに異なる角度、ここでは略45°傾斜して対峙するので、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、1枚目の導電シート151aから漏洩した電磁波のエネルギーが2枚目の導電シート151cのペアスリット部に効率よく遮蔽される。
【0305】
更に、ペアスリット部152〜155及びペアスリット部156〜159が、導電シート151a及び151cの広い領域に配設されるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品又はプリント基板に応用する場合にも効率よく電磁波を遮蔽できる。加えて、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【実施例16】
【0306】
図22は、この発明の第16の実施例としての電磁波遮蔽シート160の構成例を示す図である。図22に示す電磁波遮蔽シート160は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート161a,161c、絶縁シート161b、ペアスリット部162〜169を備えている。電磁波遮蔽シート160は、互いに絶縁されて重ねられた導電シート161a及び161cによる二重遮蔽構造を有する。
【0307】
CPU等の側の1枚目の導電シート161aは、円形状に配設された4組の弧形状のペアスリット部を有し、表層側の2枚目の導電シート161cは、十字形状に配設された4組のペアスリット部を有している。導電シート161aのペアスリット部と、導電シート161cのペアスリット部とは、互いに異なる形状で配設されて対峙している。
【0308】
電磁波遮蔽シート160は、CPU等に例えば貼付されてCPU等から放射される電磁波を遮蔽するものである。電磁波遮蔽シート160はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。
【0309】
電磁波遮蔽シート160の外形を構成する導電シート161a及び導電シート161cには、各々、一対の長孔であるペアスリット部が、複数、ここでは4組開孔されている。1枚目の導電シート161aには、湾曲した弧形状のペアスリット部162〜165が円形状に配置され、2枚目の導電シート161cには、ペアスリット部166〜169が十字に配置されている。個々のペアスリット部は互いに分離している。また、導電シート161aの円形状と、導電シート161cの十字形状とは、この例では、互いに重ならないような異なる位置に配置される。
【0310】
1枚目の導電シート161aは導電性の第1の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート161aは、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成されてCPU等の上面に接着される。導電シート161aは、CPU等の側の1枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。また導電シート161aは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0311】
1枚目の導電シート161aに円形に配置された、弧形状の開孔部であるペアスリット部162〜165は、ペアスリット部162が一対のスリット162a及び162bで成り、ペアスリット部163が一対のスリット163a及び163bで成り、ペアスリット部164が一対のスリット164a及び164bで成り、ペアスリット部165が一対のスリット165a及び165bで成る。ペアスリット部162〜165は、導電シート161aに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0312】
ペアスリット部162〜165は、各々、弧形状の湾曲した2本のスリットから構成される。例えば、ペアスリット部162のスリット162a及び162bは、同心円状に配置されて互いに並行する。外側のスリット162aの長さは、内側のスリット162bの長さよりも長く設定される。同様に、ペアスリット部163〜165も並行する2本の湾曲したスリットから成る。
【0313】
導電シート161aでは、円形に配設されたペアスリット部162〜165の各々で、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部162では、スリット162a及び162bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部162〜165が配設された導電シート161aの外周部側の各位置で、電磁波のエネルギーが減衰する。
【0314】
導電シート161aの他方の全面には、絶縁シート161bが接着される。絶縁シート161bは、絶縁部材の一例を構成し、アクリル性の接着剤、樹脂等の絶縁性の部材で構成される。
【0315】
絶縁シート161bを介して、2枚目の導電シート161cが設けられる。導電シート161cは導電性の第2の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、導電シート161aの他方の面と対峙して配設される。導電シート161cは、例えば、絶縁シート161bの側の一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成される。導電シート161cは2枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。導電シート161cは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0316】
2枚目の導電シート161cに十字に開孔されたペアスリット部166〜169は、ペアスリット部166が一対のスリット166a及び166bで成り、ペアスリット部167が一対のスリット167a及び167bで成り、ペアスリット部168が一対のスリット168a及び168bで成り、ペアスリット部169が一対のスリット169a及び169bで成る。ペアスリット部166〜169は、導電シート161cに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0317】
ペアスリット部166〜169の各々は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部166のスリット166a及び166bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート161cに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部167〜169も並行する2本のスリットで成る。
【0318】
導電シート161cでは、十字に配設されたペアスリット部166〜169の各々で、電磁波のエネルギーが電気エネルギーに変換され、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部166では、スリット166a及び166bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部166〜169が配設された導電シート161cの中心部側の各位置で、電磁波のエネルギーから変換された電気エネルギーが減衰する。以上のように導電シート161cが構成される。以下で、電磁波遮蔽シート160の製造方法について説明をする。
【0319】
電磁波遮蔽シート160は、第8の実施例の電磁波遮蔽シート80と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート160を製造するには、まず、金属シート16、接着剤G2’及びメタルシートM2’等の原料となる部材と、電磁波遮蔽シート160用の抜き型とを準備する。
【0320】
電磁波遮蔽シート160用の抜き型としては、ペアスリット部162〜165を一時に抜き出せるものと、ペアスリット部166〜169を一時に抜き出せるものと、電磁波遮蔽シート160の外縁部を抜き出せるものとを準備する。
【0321】
所定の部材と電磁波遮蔽シート160用の抜き型は準備できたら、図13A〜Eに示した工程を電磁波遮蔽シート160用の抜き型を用いて実行する。こうして、電磁波遮蔽シート160が連続して貼付されたロール状のシートを製造できる。
【0322】
製造した電磁波遮蔽シート160をCPU1に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート160を剥離シートF1’から剥がし、CPU1の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート160がCPU1より大きい外形を有していると、CPU1の全面を容易に覆うことができる。
【0323】
このように、この発明の第16の実施例に係る電磁波遮蔽シート160によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される1枚目の導電シート161aに、絶縁シート161bを介して対峙する2枚目の導電シート161cを備え、導電シート161a及び161cが、異なる形状で配設された複数のペアスリット部を有して対峙している。
【0324】
この構成によって、1枚目のスリットから漏れた電磁界や1枚目の導電シートを通過した電磁界、つまり、2次放射分の電磁波のエネルギーを効率よく遮蔽できる。これにより、CPU等から放射された電磁波のエネルギーを二重に軽減できる二重遮蔽構造の電磁波遮蔽具を提供できるようになった。
【0325】
なお、1枚目の導電シート161aの円形状と、2枚目の導電シート161cの十字形状とが、互いに異なる位置に配置されているので、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、1枚目の導電シート161aから漏洩した電磁波のエネルギーが2枚目の導電シート161cのペアスリット部に効率よく遮蔽される。
【0326】
更に、ペアスリット部162〜165及びペアスリット部166〜169が、導電シート161a及び161cの広い領域に配設されるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品又はプリント基板に応用する場合にも効率よく電磁波を遮蔽できる。加えて、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【実施例17】
【0327】
図23は、この発明の第17の実施例としての電磁波遮蔽シート170の構成例を示す図である。図23に示す電磁波遮蔽シート170は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート171a,171c、絶縁シート171b、ペアスリット部172〜179を備えている。電磁波遮蔽シート170は、互いに絶縁されて重ねられた導電シート171a及び171cによる二重遮蔽構造を有する。
【0328】
導電シート171a及び171cの各々は、縮小四角形状に配設された4組のペアスリット部を有し、ペアスリット部で構成された縮小四角形状が、互いに略45°の傾斜角度を有して対峙するようになされる。
【0329】
電磁波遮蔽シート170は、CPU等に例えば貼付されてCPU等から放射される電磁波を遮蔽するものである。電磁波遮蔽シート170はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。
【0330】
電磁波遮蔽シート170の外形を構成する導電シート171a及び導電シート171cには、各々、一対の長孔であるペアスリット部が、複数、ここでは4組開孔されている。1枚目の導電シート171aにはペアスリット部172〜175が開孔され、2枚目の導電シート171cにはペアスリット部176〜179が開孔されている。
【0331】
ペアスリット部172〜175は、導電シート171aに、其々が一辺を成す縮小四角形状に配設されている。ここでいう縮小四角形状とは、ペアスリット部同士が互いに略直角に配されて、直角の対辺を成す2組のペアスリット部の一方が、他方に対して端部を突出することで、ペアスリット部に囲まれた四角形状が縮小される形状をいう。同様に、ペアスリット部176〜179は、導電シート171cに、其々が一辺を成す縮小四角形状に配設されている。また、縮小四角形状の四角形は、回転放射形状の四角形ともいえる。ここでいう回転放射形状とは、複数のペアスリット部(一辺)が、所定の角度で傾斜して円形に配置されたかざぐるま型の風車羽状をいう。
【0332】
また、導電シート171a及び導電シート171cにペアスリット部で形成される縮小四角形状は、互いに異なる角度で対峙するように配設されている。この例では、導電シート171aのペアスリット部172〜175が成す縮小四角形状に対して、導電シート171cのペアスリット部176〜179が成す縮小四角形状が、所定の角度、ここでは略45°傾斜している。ペアスリット部172〜179が透過して互いに重ね合わせられると、8組のペアスリット部で成る回転放射形状を構成する。
【0333】
1枚目の導電シート171aは導電性の第1の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート171aは、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成されてCPU等の上面に接着される。導電シート171aは、CPU等の側の1枚目の遮蔽層を構成し、CPU等の上面から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。また導電シート171aは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0334】
1枚目の導電シート171aに開孔されたペアスリット部172〜175は、ペアスリット部172が一対のスリット172a及び172bで成り、ペアスリット部173が一対のスリット173a及び173bで成り、ペアスリット部174が一対のスリット174a及び174bで成り、ペアスリット部175が一対のスリット175a及び175bで成る。ペアスリット部172〜175は、導電シート171aに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0335】
また、各々のペアスリット部172〜175は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部172のスリット172a及び172bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート171aに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部173〜175も並行する2本のスリットで成る。
【0336】
また、この例のペアスリット部172〜175は、導電シート171aに、其々が一辺を成す縮小四角形状に配設される。例えば、互いに隣設されるペアスリット部、例えば、ペアスリット部172とペアスリット部173とは、ペアスリット部172の一方の端部が、ペアスリット部173の中腹部に隣設されたT字状を成す。ペアスリット部172〜175は互いに分離している。
【0337】
導電シート171aでは、複数のペアスリット部172〜175の各々で、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部172では、スリット172a及び172bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部172〜175が配設された導電シート171aの各位置で、電磁波のエネルギーが減衰する。
【0338】
ところで、導電シート171aでは、ペアスリット部172とペアスリット部174とが平行に配設され、ペアスリット部173とペアスリット部175とが平行に配設される。この場合、互いに平行なペアスリット部同士が干渉しあい、電磁波や電気信号の発振、増幅等の原因となるおそれがある。
【0339】
これを防止するため、平行なペアスリット部同士、例えば、ペアスリット部172とペアスリット部174との距離D5を、電磁波の波長λの1/4(λ/4)の整数倍でない長さに設定するとよい。例えば、波長λが0.375m程度である場合、距離D5は、例えば0.0075m(λ/50)に設定する。このように互いに平行なペアスリット部の離間距離を設定することにより、電界、磁界、電圧、電流等の干渉を防止できる。以上のように導電シート171aが構成される。
【0340】
導電シート171aの他方の面には、全面に絶縁シート171bが接着される。絶縁シート171bは、絶縁部材の一例を構成し、アクリル性の接着剤、樹脂等の絶縁性の部材で構成される。
【0341】
絶縁シート171bを介して、2枚目の導電シート171cが設けられる。導電シート171cは導電性の第2の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、導電シート171aの他方の面と対峙して配設される。導電シート171cは、例えば、絶縁シート171bの側の一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成される。導電シート171cは2枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。導電シート171cは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0342】
2枚目の導電シート171cに縮小四角形状に配設されたペアスリット部176〜179は、ペアスリット部176が一対のスリット176a及び176bで成り、ペアスリット部177が一対のスリット177a及び177bで成り、ペアスリット部178が一対のスリット178a及び178bで成り、ペアスリット部179が一対のスリット179a及び179bで成る。ペアスリット部176〜179は、導電シート171cに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0343】
ペアスリット部176〜179の各々は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部176のスリット176a及び176bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート171cに開孔されて並行する。ペアスリット部177〜179も並行する2本のスリットで成る。
【0344】
また、この例のペアスリット部176〜179は、導電シート171cに、其々が一辺を成す縮小四角形状に配設される。例えば、互いに隣設されるペアスリット部、例えば、ペアスリット部176とペアスリット部177とは、ペアスリット部176の一方の端部が、ペアスリット部177の中腹部に隣設されるT字状を成す。ペアスリット部176〜179は互いに分離している。
【0345】
導電シート171cでは、複数のペアスリット部176〜179の各々で、電磁波のエネルギーが電気エネルギーに変換され、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部176では、スリット176a及び176bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部176〜179が配設された導電シート171cの各位置で、電磁波のエネルギーから変換された電気エネルギーが減衰する。
【0346】
ところで、導電シート171cでは、ペアスリット部176とペアスリット部178とが平行に配設され、ペアスリット部177とペアスリット部179とが平行に配設される。この場合、互いに平行なペアスリット部同士が干渉しあい、電磁波や電気信号の発振、増幅等の原因となるおそれがある。
【0347】
これを防止するため、平行なペアスリット部同士、例えばペアスリット部177とペアスリット部179との距離を、電磁波の波長λの1/4(λ/4)の整数倍でない長さに設定するとよい。例えば、波長λが0.375m程度である場合、ペアスリット部177とペアスリット部179との距離は、例えば0.0075m(λ/50)に設定する。このように互いに平行なペアスリット部の離間距離を設定することにより、電界、磁界、電圧、電流等の干渉を防止できる。以上のように導電シート171cが構成される。以下で、電磁波遮蔽シート170の製造方法について説明をする。
【0348】
電磁波遮蔽シート170は、第8の実施例の電磁波遮蔽シート80と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート170を製造するには、まず、金属シート16、接着剤G2’及びメタルシートM2’等の原料となる部材と、電磁波遮蔽シート170用の抜き型とを準備する。
【0349】
電磁波遮蔽シート170用の抜き型としては、ペアスリット部172〜175を一時に抜き出せるものと、ペアスリット部176〜179を一時に抜き出せるものと、電磁波遮蔽シート170の外縁部を抜き出せるものとを準備する。
【0350】
所定の部材と電磁波遮蔽シート170用の抜き型は準備できたら、図13A〜Eに示した工程を電磁波遮蔽シート170用の抜き型を用いて実行する。こうして、電磁波遮蔽シート170が連続して貼付されたロール状のシートを製造できる。
【0351】
製造した電磁波遮蔽シート170をCPU1に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート170を剥離シートF1’から剥がし、CPU1の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート170がCPU1より大きい外形を有していると、CPU1の全面を容易に覆うことができる。以上のようにして、電磁波遮蔽シート170がCPU1を対峙するようになる。以下で、電磁波遮蔽シート170の遮蔽効果について説明をする。また比較のため、第3の実施例の電磁波遮蔽シート30(図6参照)の遮蔽効果も調べる。
【0352】
図24A及びBは、電磁波遮蔽シート30及び170の装着例を示す斜視図である。この例では、それぞれの電磁波遮蔽シートをプリント基板2に実装されたIC素子3へ装着した場合を例に挙げて説明をする。また、電磁波遮蔽シートが装着されない場合と、1枚の導電シートが装着された場合と、2枚の導電シートが装着された場合とで、IC素子3から放射される電磁波を測定して遮蔽効果を比較する。
【0353】
IC素子3は電子部品の一例であり、パッケージに封入された集積回路を備えている。IC素子3は、クロック回路等の発振部を有して比較的大きいレベルの電磁波を放射するものである。IC素子3はプリント基板2に実装されて、プリント基板2上に構築された所定の回路に接続されて動作する。
【0354】
図24Aに示す電磁波遮蔽シート30は、第3の実施例で説明した1枚の導電シートで成る電磁波遮蔽具の一例であり、プリント基板2に実装されたIC素子3の上面に貼付可能な外形を有する。電磁波遮蔽シート30は、図6に示したように、導電シート31の上面に、縮小四角形状に配設されたペアスリット部32〜35を有している。
【0355】
一方、図24Bに示す電磁波遮蔽シート170は、この例の二重遮蔽構造の電磁波遮蔽具であり、プリント基板2に実装されたIC素子3の上面に貼付可能な外形を有する。電磁波遮蔽シート170は、図23に示したように導電シート171a及び171cを有している。導電シート171a及び171cの各々には、ペアスリット部172〜175、ペアスリット部176〜179が縮小四角形状に設けられ、互いに略45°傾斜して対峙している。
【0356】
電磁波遮蔽シート30又は170をIC素子3に装着するには、電磁波遮蔽シートを剥離シートから剥がし、IC素子3の上面に貼付するとよい。電磁波遮蔽シート30及び170は、プリント基板2に実装される前のIC素子3に装着してもよく、プリント基板2に実装された後のIC素子3に装着してもよい。
【0357】
またこのとき、電磁波遮蔽シート30又は170がIC素子3より大きい外形に設定されていると、IC素子3の全面を容易に覆うことができる。また、IC素子3と略同等の外形に設定されていると、IC素子3の実装面積を拡大することなく装着できる。
【0358】
図25は、測定回路4の構成例を示すブロック図である。図25に示す測定回路4は、IC素子3から放射される電磁波のレベルを測定する為に構築されるものである。測定回路4は、IC素子3が実装されたプリント基板2、電源装置5、信号発生装置6、電磁波検出装置7、プリアンプ8及びスペクトル分析装置9を備え、シールドボックス18の内外に構成される。
【0359】
シールドボックス18は電磁波遮蔽機能を備えた電磁暗箱であり、電磁波を内外で遮断するものである。シールドボックス18の中には、プリント基板2と電磁波検出装置7とが収納される。プリント基板2の上面には、IC素子3とともにIC素子3を動作させるための回路が構築されている。
【0360】
シールドボックス18は、配線を内外で導通させるコネクタ部を有し、コネクタ部を介して配線が接続可能になっている。プリント基板2には、シールドボックス18の外側に配された電源装置5及び信号発生装置6が接続される。電源装置5は、IC素子3及びその他の回路に電力を供給し、信号発生装置6は、IC素子3に所定の電気信号を出力する。
【0361】
電源装置5及び信号発生装置6から所定の電力又は電気信号が入力されると、IC素子3は所定の動作を開始し、シールドボックス18内に電磁波EM1を放射する。IC素子3の上面には、同じくシールドボックス18内に収められた電磁波検出装置7のプローブ(探針)が配されていて、IC素子3から放射される電磁波EM1の大きさを測定する。また、電磁波検出装置7の本体をシールドボックス18の外側に配置して、プローブだけをシールドボックス18の中に延在させてもよい。
【0362】
電磁波検出装置7から出力された電磁波EM1の測定データは、プリアンプ8に増幅及び波形整形されて、スペクトル分析装置9に入力される。スペクトル分析装置9は、図示しないPC等の制御装置に接続されて制御される。PC等の制御装置は、電磁波の分布図や電磁波の周波数特性を出力する。このようにして測定回路4が構成される。
【0363】
図26A〜Cは、電磁波EM1の測定例を示す分布図である。図26A〜Cに示す分布図は、測定回路4の電磁波検出装置7によって検出された、IC素子3の上面から放射される電磁波EM1の表面分布を示している。
【0364】
図26Aは、電磁波遮蔽シートが装着されない場合を示している。等値線n1〜n6は、IC素子3の上面から放射される電磁波EM1のレベルが等しい領域を示している。等値線n1は電磁波EM1が60dBμV程度の領域を示し、等値線n6は電磁波EM1が68dBμV程度の領域を示している。図26Aに示すように、何も装着されていないIC素子3の上面からは、等値線n6で囲まれた領域から最大の電磁波EM1(約68dBμV)が放出される。
【0365】
図26Bは、電磁波遮蔽シート30が装着された場合を示している。導電シートが1枚だけ装着されたIC素子3の上面からは、等値線n3で囲まれた領域から最大の電磁波(約63.7dBμV)が放出される。
【0366】
図26Cは、電磁波遮蔽シート170が装着された場合を示している。等値線n1’は電磁波EM1が45dBμV程度の領域を示している。導電シートを2枚装着されたIC素子3の上面からは、等値線n1’で囲まれた領域から最大の電磁波(約45dBμV)が放出される。
【0367】
以上の測定結果から、IC素子3から放射される電磁波EM1が、1枚目の導電シートによって所定量遮蔽され、2枚目の導電シートによって更に遮蔽されることがわかる。次に、IC素子3から放射される電磁波EM1の周波数成分について説明をする。
【0368】
図27A〜Cは、IC素子3の上面に設定された所定の点P1(図26参照)から放射される電磁波EM1の周波数特性を示す図である。図27A〜Cにおいて、横軸は周波数を示し、縦軸は電磁波のレベルを示している。
【0369】
図27Aは、電磁波遮蔽シートが装着されない場合の、点P1からの電磁波EM1の周波数特性を示している。図27Aに示すように、何も装着されないIC素子3から放射される電磁波EM1は、低周波から高周波に渡る広い範囲の周波数成分を有している。
【0370】
図27Bは、電磁波遮蔽シート30が装着された場合を示している。図27Bに示すように、1枚の導電シートを有する電磁波遮蔽シート30が装着されたIC素子3から放射される電磁波EM1は、低周波から高周波にかけて全体的に放射レベルが低下している。但し、ペアスリット部を通過する等して2次放射される特定の周波数成分、例えば、略330MHzの成分は抑制されずに放射されている。
【0371】
図27Cは、電磁波遮蔽シート170が装着された場合を示している。図27Cに示す電磁波EM1は、全ての周波数成分で、放射レベルが充分に抑制されている。電磁波遮蔽シート30では抑制されずに残っていた周波数成分、例えば、略330MHzの成分も遮蔽されている。以上の測定結果から、IC素子3から放射される電磁波EM1が、1枚目の導電シートによって多くの周波数成分を遮蔽され、2枚目の導電シートによって略全ての周波数成分を遮蔽されることがわかった。
【0372】
このように、この発明の第17の実施例に係る電磁波遮蔽シート170によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される1枚目の導電シート171aに、絶縁シート171bを介して対峙する2枚目の導電シート171cを備え、導電シート171a及び171cの各々が、其々が一辺を成す縮小四角形状に配設された複数のペアスリット部を有している。また、ペアスリット部で構成された縮小四角形状が、互いに略45°傾斜して対峙している。
【0373】
この構成によって、1枚目のペアスリット部から漏れた電磁界や1枚目の導電シートを通過した電磁界、つまり、2次放射分の電磁波のエネルギーが、2枚目の導電シートのペアスリット部に進行方向を遮られる。これにより、CPU等から放射された電磁波のエネルギーを、効率よく二重に軽減できる。
【0374】
また、導電シート171a及び171cの各位置で、導電シートを伝搬する電磁波を減衰できるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品又はプリント基板に応用する場合にも効率よく電磁波を遮蔽できる。加えて、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上でのCPU等の装着面積を増加することなく、簡単な貼付工程で装着できる。
【0375】
なおこの例では、図23に示すように、1枚目のペアスリット部172〜175と2枚目のペアスリット部176〜179とが、互いに重なるように配設されている場合について説明をしたが、これに限られることはなく、ペアスリット部同士が重ならないように配設してもよい。
【実施例18】
【0376】
図28は、この発明の第18の実施例としての電磁波遮蔽シート170’の装着例を示す図である。この例では、外形が比較的大きく設定された二重遮蔽構造の電磁波遮蔽シート170’を、プリント基板2’に搭載された複数の電磁部品に装着する場合について説明をする。
【0377】
図28に示す電磁波遮蔽シート170’は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート171a’,171c’、絶縁シート171b’、ペアスリット部172’〜179’を備えている。電磁波遮蔽シート170’は、互いに絶縁されて重ねられた導電シート171a’及び171c’による二重遮蔽構造を有している。電磁波遮蔽シート170’は、外形の大きさ等の他は、第17の実施例の電磁波遮蔽シート170と略同等に構成される。
【0378】
導電シート171a’及び171c’の各々は、縮小四角形状に配設された4組のペアスリット部を有し、ペアスリット部で構成された縮小四角形状が、互いに略45°傾斜して対峙するようになされる。
【0379】
一方、プリント基板2’は、IC素子3の他、IC素子26、IC素子27が実装されている。IC素子3,IC素子26,IC素子27は、発信器(クロック)、水晶発振器(クリスタル)等を備え、比較的多くの電磁波を放射する電子部品である。IC素子3,IC素子26,IC素子27は、プリント基板2’上に形成された配線によって、互いに接続されて動作する。この例の電磁波遮蔽シート170’は、IC素子3,IC素子26,IC素子27及びそれらを接続する配線を覆うように、プリント基板2’に装着される。
【0380】
この例の電磁波遮蔽シート170’は、IC素子3、IC素子26及びIC素子27の上面に貼付可能な外形に設定される。また、ペアスリット部172’〜175’及びペアスリット部176’〜179’は、第17の実施例のペアスリット部172〜175及びペアスリット部176〜179と略同等な、縮小四角形状に構成され、電磁波遮蔽シート170’の略中心部に配置される。ペアスリット部は、所定の幅及び長さを有した一対のスリットで構成され、電磁波の分割作用及び相殺作用を実現する。以上のようにして、電磁波遮蔽シート170’が構成される。
【0381】
電磁波遮蔽シート170’をプリント基板2’に装着するには、IC素子3,IC素子26,IC素子27の上面に接着剤等を貼付して、電磁波遮蔽シート170’を装着するとよい。また、電磁波遮蔽シート170’の装着面には、全面に絶縁シートを設けておいて、プリント基板2’上面の導電部との電気的接触を防止するとよい。このようにして電磁波遮蔽シート170’が、プリント基板2’と対峙するようになる。以下で、電磁波遮蔽シート170’の遮蔽効果について説明をする。
【0382】
図29A及びBは、電磁波EM1の測定例を示す分布図である。図29Aは、電磁波遮蔽シート170’が装着されない場合を示し、図29Bは、電磁波遮蔽シート170’が装着された場合を示している。
【0383】
図29Aに示す分布図は、点線で囲まれた領域A1の測定結果を示している。等値線n1〜n6は、放射される電磁波のレベルが等しい位置を示している。等値線n1は電磁波が60dBμV程度の位置を示し、等値線n6は電磁波が68dBμV程度の位置を示している。図29Aに示すように、何も装着されていないプリント基板2’の上面からは、等値線n6で囲まれた位置から最大の電磁波(約68dBμV)が放出される。
【0384】
図29Bは、電磁波遮蔽シート170’が装着された場合の測定結果を示している。等値線n1’は電磁波EM1が45dBμV程度の位置を示している。導電シートを2枚有する電磁波遮蔽シート170’が装着されたプリント基板2’の上面からは、等値線n1’で囲まれた位置から最大の電磁波(約45dBμV)が放出される。
【0385】
以上の測定結果から、プリント基板2’から放射される電磁波が、電磁波遮蔽シート170’によって充分に遮蔽されることがわかる。次に、プリント基板2’から放射される電磁波の周波数成分について説明をする。
【0386】
図30A〜Dは、プリント基板2’の上面に設定された所定の点P2及びP3(図29参照)から放射される電磁波EM1の周波数特性である。横軸は周波数を示し、縦軸は電磁波のレベルを示している。
【0387】
図30A及びBは、図29Aのように電磁波遮蔽シート170’が装着されない場合である。図30Aは、点P2から放射される電磁波の周波数分布を示し、図30Bは、点P3から放射される電磁波の周波数分布を示している。図30A及びBに示されるように、プリント基板2’の上面から放射される電磁波は、低周波から高周波に渡る広い範囲の周波数成分から成る。
【0388】
図30C及びDは、電磁波遮蔽シート170’が装着された場合である。図30Cは、点P2から放射される電磁波の周波数分布を示し、図30Dは点P3から放射される電磁波の周波数分布を示している。図30C及びDに示されるように、プリント基板2’の上面から放射される電磁波は、電磁波遮蔽シート170’により広い周波数範囲で軽減されている。以上の測定結果から、電磁波遮蔽シート170’によって、低周波から高周波にかけて、電磁波が全体的に抑制されていることがわかる。
【0389】
このように、この発明の第18の実施例に係る電磁波遮蔽シート170’によれば、プリント基板2’に実装されたIC素子3,26,27及びそれらを接続する配線を同時に覆うようになされる。この構成によって、プリント基板2’に実装された複数の電子部品からの電磁波を一の電磁波遮蔽シートで遮蔽できる。
【0390】
また、電磁波遮蔽シート170’は接地を要しないので、プリント基板2’上における電子部品の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着できる。
【実施例19】
【0391】
図31は、第19の実施例としてのシールドケース37aの構成例を示す概略断面図である。この例では、電磁波遮蔽シート36aをシールドケース37aに応用する場合について説明をする。
【0392】
図31に示すシールドケース37aは、プリント基板2に実装された電子部品を電磁シールドする筐体である。シールドケース37aは、CPU等の一例であるIC素子3を電磁遮蔽するようになされる。シールドケース37aは、例えば導電性の板部材や、絶縁性の樹脂等から構成される。
【0393】
シールドケース37aは電磁波遮蔽シート36aを備えている。電磁波遮蔽シート36aは、電磁波遮蔽具の一例を構成し、CPU等から放射される電磁波を吸収して減衰するものである。電磁波遮蔽シート36aには、上述の電磁波遮蔽シート10,20,30,40,50,60,70,80,90,100,110,120,130,140,150,160,170を適用できる。
【0394】
電磁波遮蔽シート36aは、シールドケース37aの内面に、例えば、接着剤で装着される。シールドケース37aの上面に装着された電磁波遮蔽シート36aは、IC素子3と対峙して、IC素子3から放射される電磁波を吸収して減衰する。
【0395】
シールドケース37aを製造するには、まず、IC素子3を電磁シールドするのに適した形状、例えば、下方のみが開口された直方体の筐体を形成する。筐体は、導電性の板部材や、絶縁性の樹脂等から形成することができる。所定形状の筐体を形成できたら、筐体の内側上面のIC素子3と対峙する位置に、電磁波遮蔽シート36aを例えば接着剤で装着する。このようにして、電磁波を吸収して減衰できるシールドケース37aを製造することができる。
【0396】
シールドケース37aは、IC素子3を内側に収納するように、プリント基板2にネジ等で固定する。電磁波遮蔽シート36aは接地を要しないので、シールドケース37aの装着面積を拡大せずに装着できる。
【0397】
このように、この発明の第19の実施例に係る電磁波遮蔽シート36aによれば、シールドケース37aに装着されてIC素子3と対峙する。従って、電磁波遮蔽シート36aがIC素子3の上面と所定の間隙を保持して対峙できるので、電磁波遮蔽シート36aに生じる熱エネルギーがIC素子3へ影響することを最小限に抑えられる。
【実施例20】
【0398】
図32は、第20の実施例としてのシールドケース37bの構成例を示す概略断面図である。この例では、電磁波遮蔽シート36bをシールドケース37bに一体に形成する場合について説明をする。
【0399】
図32に示すシールドケース37bは、プリント基板2に実装された電子部品を電磁シールドする筐体である。この例では、CPU等の一例であるIC素子3を電磁遮蔽するようになされる。シールドケース37bは、例えば導電性の板部材や、絶縁性の樹脂等から構成される。
【0400】
シールドケース37bに応用される電磁波遮蔽シート36bは、電磁波遮蔽具の一例を構成し、CPU等から放射される電磁波を吸収して減衰するものである。電磁波遮蔽シート36bには、上述の電磁波遮蔽シート10,20,30,40,50,60,70,80,90,100,110,120,130,140,150,160,170を適用できる。
【0401】
この例の電磁波遮蔽シート36bは、シールドケース37bと一体に形成される。電磁波遮蔽シート36bは、シールドケース37bの所定部に埋め込まれてIC素子3と対峙するようになされる。シールドケース37bを樹脂から製造する場合は、例えば、シールドケース37bの成型時に電磁波遮蔽シート36bを一体成形することができる。
【0402】
電磁波遮蔽シート36bと一体の樹脂製のシールドケース37bを製造するには、所定の金型と、電磁波遮蔽シート36bとを準備し、金型に電磁波遮蔽シート36bを設置した状態で樹脂を流し込んで固化するとよい。
【0403】
また、所定形状のシールドケース37bを樹脂で形成したあとで、電磁波遮蔽シート36bをシールドケース37bに印刷形成することもできる。この場合は、電磁波遮蔽シート36bをシールドケース37bの両面に印刷形成して二重遮蔽構造の電磁波遮蔽シートを容易に構成することもできる。
【0404】
また、シールドケース37bを金属製の板部材から製造する場合は、シールドケース37b本体を導電シートとして機能させて、電磁波遮蔽シート36bを構成することもできる。
【0405】
導電シート1枚で成る電磁波遮蔽シート36bを備えたシールドケース37bを製造するには、まず、金属製の板部材で、IC素子3を電磁シールドするのに適した形状、例えば、下方のみが開口された直方体の筐体を形成する。
【0406】
所定形状の筐体を準備できたら、IC素子3と対峙する位置例えば上面に、所定形状に配設されたペアスリット部を開孔する。このようにして、導電シート1枚で成る電磁波遮蔽シートを有するシールドケース37bを製造することができる。またこの場合、ペアスリット部は、シールドケース37bの上面に限らず側面に開孔してもよい。
【0407】
導電シート2枚で成る電磁波遮蔽シート36bを備えるシールドケース37bを製造するには、まず、金属製の部材で、IC素子3を電磁シールドするのに適した形状の筐体を形成する。所定の筐体を準備できたら、IC素子3と対峙する例えば上面に、所定形状に配設された第1のペアスリット部を開孔する。
【0408】
次に、IC素子3と対峙可能な所定の大きさの導電性の板部材を準備して、当該板部材に所定形状に配設された第2のペアスリット部を開孔する。
【0409】
第2のペアスリット部が開孔された板部材が準備できたら、第1のスリット部が開孔された筐体の所定部に、絶縁シートを設け、絶縁シートを介して第2のペアスリット部を有する板部材を貼付する。このとき、第1のペアスリット部と第2のペアスリット部とが対峙する角度を傾ける場合は、所定の角度で傾けて対峙させるようにする。このようにして、二重遮蔽構造の電磁波遮蔽シートを有するシールドケース37bを製造できる。
【0410】
また、金属製のシールドケース37bのうちIC素子3と対峙する所定部に、電磁波遮蔽シート36bの外形と同じ大きさの嵌合孔又は嵌合穴を形成して、別に製造した電磁波遮蔽シート36bを嵌合して、接着又は溶着することもできる。
【0411】
このように、この発明の第20の実施例に係る電磁波遮蔽シート36bによれば、シールドケース37bと一体で形成されてIC素子3と対峙する。従って、電磁波遮蔽シート36bをシールドケース37bに確実に装着できるとともに、電磁波遮蔽シート36bの貼付工程を省略できる。これにより、プリント基板2の組立工程を簡略化できる。
【0412】
また、電磁波遮蔽シート36bがIC素子3と所定の間隙を保持して対峙できるので、電磁波のエネルギーから変換された熱エネルギーによるIC素子3への影響を最小限に抑えることができる。
【実施例21】
【0413】
図33は、第21の実施例としてのICパッケージ38の構成例を示す概略断面図である。図33に示すICパッケージ38は、集積回路が構築されたシリコン等の基板を配線引出用電極とともに一体化封止するものである。この例のICパッケージ38には、電磁波遮蔽シート36cが一体で形成される。
【0414】
電磁波遮蔽シート36cは、電磁波遮蔽具の一例を構成し、CPU等から放射される電磁波を吸収して減衰する機能を備えている。電磁波遮蔽シート36cには、上述の電磁波遮蔽シート10,20,30,40,50,60,70,80,90,100,110,120,130,140,150,160,170を適用できる。
【0415】
この例の電磁波遮蔽シート36cは、例えば、パッケージの表面に印刷形成された導電性の薄膜で成る。電磁波遮蔽シート36cを備えたICパッケージ38を製造するには、ICのパッケージング工程で、導電性の薄膜を印刷する工程を実行するとよい。
【0416】
また、電磁波遮蔽シート36cを、所定の金属製の薄板で形成し、IC素子3のパッケージ形成時に埋め込んで一体形成してもよい。この場合は、例えば、セラミックやプラスチックのようなパッケージ用の樹脂の形成時に、電磁波遮蔽シート36cを同時に埋め込むようにする。この場合は、IC素子3と対峙する表層部側に埋め込むようにするとよい。電磁波遮蔽シート36cは設置を要しないので、容易にICパッケージ38に形成、又は埋め込むことができる。
【0417】
このように、この発明の第21の実施例に係る電磁波遮蔽シート36cによれば、ICパッケージ38への一体形成が可能である。従って、電磁波遮蔽シート36cをCPU等に確実に装着できるようになるとともに、プリント基板2の組立時における電磁波遮蔽シートの貼付工程を省略できる。
【産業上の利用可能性】
【0418】
本発明は、CPU,LSI,IC等の電子部品、及び、それらが実装されたプリント基板のシールド板に適用して極めて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0419】
【図1】第1の実施例としての電磁波遮蔽シート10の構成例を示す図である。
【図2】ペアスリット部12の構成例及び機能例を示す図である。
【図3】(A)〜(D)は、電磁波遮蔽シート10の製造例を示す図である。
【図4】電磁波遮蔽シート10の装着例を示す斜視図である。
【図5】第2の実施例としての電磁波遮蔽シート20の構成例を示す図である。
【図6】第3の実施例としての電磁波遮蔽シート30の構成例を示す図である。
【図7】第4の実施例としての電磁波遮蔽シート40の構成例を示す図である。
【図8】第5の実施例としての電磁波遮蔽シート50の構成例を示す図である。
【図9】第6の実施例としての電磁波遮蔽シート60の構成例を示す図である。
【図10】第7の実施例としての電磁波遮蔽シート70の構成例を示す図である。
【図11】第8の実施例としての電磁波遮蔽シート80の構成例を示す図である。
【図12】ペアスリット部82の構成例及び機能例を示す図である。
【図13】(A)〜(E)は、電磁波遮蔽シート80の製造例を示す図である。
【図14】電磁波遮蔽シート80の装着例を示す斜視図である。
【図15】第9の実施例としての電磁波遮蔽シート90の構成例を示す図である。
【図16】第10の実施例としての電磁波遮蔽シート100の構成例を示す図である。
【図17】第11の実施例としての電磁波遮蔽シート110の構成例を示す図である。
【図18】第12の実施例としての電磁波遮蔽シート120の構成例を示す図である。
【図19】第13の実施例としての電磁波遮蔽シート130の構成例を示す図である。
【図20】第14の実施例としての電磁波遮蔽シート140の構成例を示す図である。
【図21】第15の実施例としての電磁波遮蔽シート150の構成例を示す図である。
【図22】第16の実施例としての電磁波遮蔽シート160の構成例を示す図である。
【図23】第17の実施例としての電磁波遮蔽シート170の構成例を示す図である。
【図24】(A)及び(B)は、電磁波遮蔽シート30及び170の装着例を示す斜視図である。
【図25】測定回路4の構成例を示すブロック図である。
【図26】(A)〜(C)は、電磁波EM1の測定例を示す分布図である。
【図27】(A)〜(C)は、電磁波EM1の周波数特性例を示す図である。
【図28】第18の実施例としての電磁波遮蔽シート170’の装着例を示す図である。
【図29】(A)及び(B)は、電磁波の測定例を示す分布図である。
【図30】(A)〜(D)は、電磁波の周波数特性例を示す図である。
【図31】第19の実施例としてのシールドケース37aの構成例を示す概略断面図である。
【図32】第20の実施例としてのシールドケース37bの構成例を示す概略断面図である。
【図33】第21の実施例としてのICパッケージ38の構成例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0420】
1・・・CPU、2,2’・・・プリント基板、3,26,27・・・IC素子、4・・・測定回路、5・・・電源装置、6・・・信号発生装置、7・・・電磁波検出装置、8・・・プリアンプ、9・・・スペクトル分析装置、10,20,30,40,50,60,70,80,90,100,110,120,130,140,150,160,170・・・電磁波遮蔽シート、11,21,31,41,51,61,71,81a,81c,91a,91c,101a,101c,111a,111c,121a,121c,131a,131c,141a,141c,151a,151c,161a,161c,171a,171c・・・導電シート、12,22,32,42,52,62,72,82,83,92,93,102,103,112,113,122,123,132,133,142,143,152,153,162,163,172,173・・・ペアスリット部
【技術分野】
【0001】
この発明は、CPU,LSI,IC等の電子部品、及び、それらが実装されたプリント基板のシールド板に適用可能な電磁波遮蔽具に関する。
【0002】
詳しくは、一方の面をCPU等に対峙して配設される導電性の板部材に、開孔されて並行する少なくとも一対の長孔を備え、板部材に吸収された電磁波のエネルギーが、一対の長孔で、略同じ振幅で逆位相の電圧及び電流に変換されて相殺されるようにして、電磁波のエネルギーを軽減できるようにしたものである。
【背景技術】
【0003】
近年において、テレビ、コンピュータ、デジタルカメラ、携帯電話といった電子機器は、高性能化、小型化が推進されており、それらを構成するCPU,LSI,クロック用IC等の電子部品は、高速度化、高集積化されている。同様に、それらが実装されるプリント基板は高密度化されている。
【0004】
こうした高密度な電子部品やプリント基板からは、多くの電磁波が放射(輻射)される。電磁波は、他の電子部品やプリント基板の正常な動作を阻害するとともに、人体にも悪影響を与えるものである。
【0005】
従って、電子機器及びプリント基板が、所定の電磁環境適合性(EMC:Electro Magnetic Compatibility)を維持することが重要である。つまり、電子機器及びプリント基板が、他の機器や人体に電磁妨害(EMI:Electro Magnetic Interference)を与えないことと、他の機器からの電磁波によって、自身の動作が阻害されない電磁感受性(EMS:Electro Magnetic Susceptibility)を持つことが求められる。
【0006】
EMCを維持するためにシールド板を用いる場合がある。主にプリント基板間に用いられるシールド板として、特許文献1に示す電磁波干渉抑制体が開示されている。この電磁波干渉抑制体によれば、導電性の基材の片面もしくは両面に絶縁性の軟磁性体層が設けられている。このようにシールド板を構成すると、導電性の基板による電磁波の反射を増大化させることなく、透過減衰を大きくできるというものである。
【0007】
また、特にEMIの対策としてシールドケースを用いる場合もある。シールドケースに応用可能な吸収材として、特許文献2の放射ノイズ吸収材が開示されている。この放射ノイズ吸収材によれば、銀で被覆された繊維、又は、硫化処理された銀被覆繊維で成り、例えばシールドケースの材料内に混入されるものである。このようにシールドケースを構成すると、導電性に優れる銀に被覆されたプラスチック等の高分子繊維が、良好なアンテナとして機能し、広い周波数帯域に亘って高いノイズ低減効果が得られるというものである。また通常、シールドケースは、ネジ、ガスケット、板バネ等でプリント基板に固定されることが多い。
【0008】
主にプリント配線用のEMI対策として、特許文献3のようなEMI対策方法が開示されている。このEMI対策方法によれば、CPUと外部回路とのバスラインの少なくとも一部を、粘着層、樹脂層を介した複合磁性体で覆うようになされる。このように複合磁性体を配置することにより、バスラインがアンテナとして機能することを防ぎ、バスラインからの電磁波の放射が防止できるようになるというものである。
【0009】
更に、電磁波遮蔽シートが用いられる場合がある。例えば特許文献4に開示される電磁波遮蔽シートは、例えばプラズマディスプレイパネルに用いられる。この電磁波遮蔽シートによれば、銅メッシュ層、粘着剤層、被着体層で成り、粘着剤層が酸化防止剤を含んでいる。この構成によって、長時間、特に高音高湿化における使用によっても、銅メッシュ層の酸化による変色が起こらないというものである。
【0010】
【特許文献1】特開平7−212079号公報(第2,3及び7頁、図1)
【特許文献2】特開平11−354969号公報(第2及び3頁)
【特許文献3】特開平9−312489号公報(第2乃至5頁、図1)
【特許文献4】特開2007−95971号公報(第3及び4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、特許文献1に係る電磁波干渉抑制体によれば、構造が複雑でコストが高くなるという問題がある。また、主にプリント基板間に、CPU等の電子部品と所定距離で配設されるものであり、CPU等、単体の電子部品に応用することが難しい。
【0012】
また、特許文献2に係る放射ノイズ吸収材は、シールドケースに混入する必要があるので、シールドケースの製造コスト増加に繋がるおそれがある。更に、シールドケースによる場合は、シールドケースをプリント基板にネジ止め等で設置する煩雑な工程が必要になり、組立工程の作業効率が低下するおそれがある。なお、シールドケースの構造も複雑化していてコストの増加に繋がっている。
【0013】
更に、特許文献3に係るEMI対策方法によれば、バスラインのスイッチング動作に伴い放射される、いわゆる伝導ノイズを抑制することが難しいという問題がある。更に、CPU等の単体の電子部品からの電磁波を吸収することが難しいという問題もある。
【0014】
特許文献4に係る電磁波遮蔽シートは、銅メッシュ層によるもので、電子部品やプリント基板に応用するにはコストが高いという問題がある。更に、変色を防ぐために混入される酸化防止剤や混入工程の増加によって、更に製造コストが高くなるおそれがある。
【0015】
そこで本発明は、上述の課題を解決したものであって、製造コストの増加を最小限に抑えて、電子部品又はプリント基板から放射される電磁波を軽減できるようにした電磁波遮蔽具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題は、一方の面を電磁波放射物に対峙して配設される導電性の板部材と、所定の長さ及び幅で板部材に開孔されて並行する少なくとも一対の長孔を備えることを特徴とする電磁波遮蔽具によって解決される。
【0017】
この発明に係る第1の電磁波遮蔽具によれば、一方の面を電磁波放射物に対峙して配設される導電性の板部材に、少なくとも一対の長孔が開孔されている。従って、板部材に吸収された電磁波のエネルギーが、一対の長孔で、略同じ振幅で逆位相の相対する電圧及び相対する電流に変換される。
【0018】
この発明に係る第2の電磁波遮蔽具は、一方の面を電磁波放射物に対峙して配設される導電性の第1の板部材と、第1の板部材の他方の面に設けられた絶縁部材と、絶縁部材を介し、第1の板部材の他方の面と対峙して配設された導電性の第2の板部材とを備え、第1及び第2の板部材の各々は、所定の長さ及び幅で開孔されて並行する少なくとも一対の長孔を有することを特徴とするものである。
【0019】
この発明に係る第2の電磁波遮蔽具によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される第1の板部材と、絶縁部材を介して対峙する第2の板部材との各々に、少なくとも一対の長孔が開孔されている。従って、電磁波放射物から放射された電磁波のエネルギーが、第1の板部材に吸収されて第1の板部材の一対の長孔で略同じ振幅で逆位相の電圧及び電流に変換され、更に、第1の板部材から漏洩した電磁波のエネルギーが第2の板部材に吸収され、第2の板部材の一対の長孔で略同じ振幅で逆位相の電圧及び電流に変換される。
【発明の効果】
【0020】
この発明に係る第1の電磁波遮蔽具によれば、一方の面を電磁波放射物に対峙して配設される導電性の板部材に、開孔されて並行する少なくとも一対の長孔を備えている。この構成によって、板部材に吸収された電磁波のエネルギーが、一対の長孔で略同じ振幅で逆位相の相対する電圧及び相対する電流に変換され、互いに相殺されて減衰する。これにより、板部材に吸収された電磁波のエネルギーを軽減できる。
【0021】
この発明に係る第2の電磁波遮蔽具によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される第1の板部材に、絶縁部材を介して対峙する第2の板部材を備え、第1及び第2の板部材の各々が、所定の長さ及び幅で開孔されて並行する少なくとも一対の長孔を有している。この構成によって、電磁波放射物から放射された電磁波のエネルギーが、第1の板部材に吸収され、第1の板部材の一対の長孔で略同じ振幅で逆位相の電圧及び電流に変換され、互いに相殺されて減衰する。更に、第1の板部材から漏洩した電磁波のエネルギーが、第2の板部材に吸収されて、第2の板部材の一対の長孔で略同じ振幅で逆位相の電圧及び電流に変換され、互いに相殺されて減衰する。このようにして、電磁波遮蔽物から放射された電磁波のエネルギーを二重に遮蔽できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
続いて、この発明に係る電磁波遮蔽具について、図面を参照しながら説明をする。
【実施例1】
【0023】
図1は、この発明の第1の実施例としての電磁波遮蔽シート10の構成例を示す図である。図1に示す電磁波遮蔽シート10は、電磁波遮蔽具(第1の電磁波遮蔽具)の一例を構成し、導電シート11とペアスリット部12とを有している。この例の電磁波遮蔽シート10は、電磁波放射物の一例であるCPU等(CPU、LSI、IC等の電子部品)に貼付され、CPU等から放射される電磁波を遮蔽(遮断)する。
【0024】
導電シート11は、導電性の板部材の一例を構成し、一方の面をCPU等に対峙して配設される。この例で説明する導電シート11は、一方の面に粘着性の物質を塗布又は貼付された導電性の部材、銅、アルミ等で構成されてCPU等の上面に接着される。導電シート11は、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成、一体形成することもできる。導電シート11はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形(図4参照)又はCPU等と略同等の外形に設定される。
【0025】
導電シート11は、例えば、0.09mmの厚みのアルミシートで、上面形状が35mm角の正方形に設定される。導電シート11はCPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。
【0026】
導電シート11には、一対の長孔の一例を構成するペアスリット部12が設けられる。ペアスリット部12は一対のスリット12a、12bから成り、導電シート11に吸収された電磁波のエネルギーを減衰させる機能を有する。スリット12a及び12bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート11の略中心部に開孔されて並行する。
【0027】
図2はペアスリット部12の構成例及び機能例を示す図である。電磁波遮蔽シート10がCPU等に貼付されると、導電シート11に電磁波のエネルギーが吸収され、導電シート11に電界が生じる。導電シート11に生じた電界は、スリット12a及び12bに電圧を誘発する。
【0028】
図2に示すスリット12a及び12bは、例えば、長さL1:7.5mm、幅W1:0.4mmを有する同形状に構成され、一定の幅W2:0.4mmの間隔を維持して平行に配置される。スリット12aとスリット12bとの間には、導電シート11で成る幅W2の帯状の導電部12cが構成される。
【0029】
この例の電磁波遮蔽シート10は、CPU等から放射される100MHz〜800MHzの電磁波を遮断するように設定される。スリット12a及び12bの長さL1は、電磁波の波長λよりも充分小さい長さ、この例ではλ/50に設定される。このようにスリット12a及び12bの長さL1を設定することによって、電磁波遮蔽シート10が電磁波の高調波成分にも対応できるようになる。
【0030】
スリット12a及び12bには、それぞれ、電界に誘発された電圧Va,Vbが発生する。電圧Vaは、スリット12aの一方のエッジe1から他方のエッジe1’に向けて生じる。電圧Vbは、スリット12bの一方のエッジe2から他方のエッジe2’に向けて生じる。電圧Va及びVbは、振幅が同等で位相が逆相の電圧信号である。従って、電圧Va及びVbは互いに対向して打ち消しあう。
【0031】
また、電界と直交して生じる磁界によって、スリット12a及び12bの周囲に、それぞれ電流Ia,Ibが流れる。電流Ia及びIbは、スリット12aとスリット12bとの間の導電部12cで対向して打ち消しあう。
【0032】
このように、ペアスリット部12で電磁波のエネルギーから変換された電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こり、導電シート11に吸収された電磁波のエネルギーが減衰する。更に、電気エネルギーに変換された電流Ia及びIbのうちの所定量は、導電シート11で熱エネルギーに変換されて消費される。次に、電磁波遮蔽シート10の製造方法について説明をする。
【0033】
図3A〜Dは、電磁波遮蔽シート10の製造例を示す図である。この例は、図3Aに示す金属シート15から電磁波遮蔽シート10を製造する場合について説明をする。金属シート15は、剥離シートF1と、接着剤G1と、メタルシートM1とが積層された帯状のシートである。剥離シートF1は例えば帯状の剥離紙で構成される。接着剤G1は、例えば、アクリル系の接着剤で構成される。メタルシートM1は、例えば、銅箔やアルミ箔で構成される。
【0034】
金属シート15から電磁波遮蔽シート10を形成するには、所定形状の抜き型を準備して、ペアスリット部12と電磁波遮蔽シート10の外縁部10aとを同時に打ち抜くとよい(図3B)。
【0035】
このとき、剥離シートF1は打ち抜かないようにすると、図3Cのように連続する電磁波遮蔽シート10が形成される。電磁波遮蔽シート10が連続形成された金属シート15は、図3Dのようにロール状に巻くとよい。以上のようにして、電磁波遮蔽シート10を製造できる。以下で、電磁波遮蔽シート10をCPU等に装着する方法について説明する。
【0036】
図4は、電磁波遮蔽シート10の装着例を示す斜視図である。図4に示す電磁波遮蔽シート10をCPU1に装着するには、図3C及びDに示した、メタルシートM1と接着剤G1とで成る電磁波遮蔽シート10を剥離シートF1から剥がし、CPU1の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート10がCPU1より大きい外形に設定されていると、CPU1の全面を容易に覆うことができる。
【0037】
このように、この発明の第1の実施例に係る電磁波遮蔽シート10によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される導電シート11に、開孔されて並行するペアスリット部12を備えている。
【0038】
この構成によって、導電シート11に吸収された電磁波のエネルギーが、ペアスリット部12のスリット12a及び12bで、略同じ振幅で逆位相の相対する電圧及び相対する電流に変換される。スリット12a及び12bに生じた一対の電圧及び電流は、互いに相殺されて減衰するので、導電シート11に吸収された電磁波のエネルギーを軽減できる。
【0039】
また、導電シート11を接地する必要がないので設置用の配線等を要しない。従って、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大しない。更に、設置工程を要せず簡単な貼付工程で装着可能である。
なお、この例では、銅箔で成るメタルシートM1から導電シート11を形成する場合について説明をしたが、これに限られることはなく、印刷形成による導電性の薄膜や、アルミ板等のような導電性の板部材を用いてもよい。
【実施例2】
【0040】
図5は、この発明の第2の実施例としての電磁波遮蔽シート20の構成例を示す図である。図5に示す電磁波遮蔽シート20は電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート21と、複数のペアスリット部22〜25とを有している。4組のペアスリット部22〜25は、導電シート21に其々が一辺を成す四角形状に配置される。電磁波遮蔽シート20は、CPU等に貼付され、CPU等から放射される電磁波を遮蔽する。
【0041】
導電シート21は導電性の板部材の一例を構成し、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート21は、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成され、CPU等の上面に接着される。導電シート21は、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成、又は、一体形成することもできる。導電シート21はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又はCPU等と同等の外形に設定される。導電シート21はCPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。
【0042】
導電シート21には、一対の長孔の一例を構成するペアスリット部22〜25が、複数、ここでは4組開孔される。例えば、ペアスリット部22は一対のスリット22a及び22bで成り、ペアスリット部23は一対のスリット23a及び23bで成り、ペアスリット部24は一対のスリット24a及び24bで成り、ペアスリット部25は一対のスリット25a及び25bで成る。ペアスリット部22〜25は、導電シート21に吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0043】
ペアスリット部22〜25は、各々、図2に示したペアスリット部12と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部22のスリット22a及び22bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート21に開孔されて並行する。ペアスリット部23〜25も並行する2本のスリットで成る。
【0044】
また、この例のペアスリット部22〜25は、導電シート21に、其々が一辺を成す四角形状に配設される。例えば、互いに隣設されるペアスリット部22とペアスリット部23とは、一方の端部同士が接近して略直角に配され、略L字状を成す。同様に、ペアスリット部22〜25が配されて四角形状を構成する。ペアスリット部22〜25は互いに分離している。
【0045】
電磁波遮蔽シート20では、複数のペアスリット部22〜25の各々で、電気エネルギーの相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部22では、スリット22a及び22bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部22〜25が配設された導電シート21の各位置で、電磁波のエネルギーが分割されて相殺され、減衰する。
【0046】
ところで、電磁波遮蔽シート20では、四角形の対辺を成すペアスリット部22とペアスリット部24とが平行に配設され、ペアスリット部23とペアスリット部25とが平行に配設される。この場合、互いに平行なペアスリット部同士が干渉しあい、電磁波や電気信号の発振、増幅等の原因となるおそれがある。
【0047】
これを防止するため、対辺を成すペアスリット部同士、例えばペアスリット部22とペアスリット部24との距離D1を、波長λの1/4(λ/4)の整数倍ではない長さに設定するとよい。例えば、波長λが0.375m程度である場合、距離D1は、例えば0.0075m(λ/50)に設定する。このように互いに平行なペアスリット部の離間距離を設定することにより、電界、磁界、電圧、電流等の干渉を防止できる。以上のように電磁波遮蔽シート20が構成される。
【0048】
電磁波遮蔽シート20は、第1の実施例の電磁波遮蔽シート10と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート20を製造するには、所定の抜き型を準備して図3Aに示した金属シート15から抜き出すとよい。所定の抜き型は、電磁波遮蔽シート20の外縁部と、ペアスリット部22〜25が一時に抜き出せる構成にするとよい。このようにして、電磁波遮蔽シート20を製造することができる。
【0049】
製造した電磁波遮蔽シート20をCPU1に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート20を剥離シートF1から剥がし、CPU1の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート20がCPU1より大きい外形を有していると、CPU1の全面を容易に覆うことができる。
【0050】
このように、この発明の第2の実施例に係る電磁波遮蔽シート20によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される導電シート21に、開孔されて並行する複数のペアスリット部22〜25を備え、ペアスリット部22〜25が其々が一辺を成す四角形状に配設されている。
【0051】
この構成によって、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、導電シート21の各位置で、導電シート21を伝搬する電磁波を減衰できるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品やプリント基板に応用した場合にも、効率よく電磁波を遮蔽できるようになる。
【0052】
また、電磁波遮蔽シート20は接地しなくてよい構成なので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【実施例3】
【0053】
図6は、この発明の第3の実施例としての電磁波遮蔽シート30の構成例を示す図である。図6に示す電磁波遮蔽シート30は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート31と、複数のペアスリット部32〜35とを有している。4組のペアスリット部32〜35は、導電シート31に四角形の対辺の一方が他方に対して突出する縮小四角形状に配設される。電磁波遮蔽シート30は、CPU等に貼付され、CPU等から放射される電磁波を遮蔽する。
【0054】
導電シート31は導電性の板部材の一例を構成し、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート31は、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成され、CPU等の上面に接着される。導電シート31は、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成、又は、一体形成することもできる。導電シート31はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又はCPU等と略同等の外形に設定される。導電シート31はCPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。
【0055】
導電シート31には、一対の長孔の一例を構成するペアスリット部32〜35が、複数、ここでは4組開孔される。例えば、ペアスリット部32は一対のスリット32a及び32bで成り、ペアスリット部33は一対のスリット33a及び33bで成り、ペアスリット部34は一対のスリット34a及び34bで成り、ペアスリット部35は一対のスリット35a及び35bで成る。ペアスリット部32〜35は、導電シート31に吸収された電磁波のエネルギーを減衰させる機能を有する。
【0056】
ペアスリット部32〜35は、各々、図2に示したペアスリット部12と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部32のスリット32a及び32bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート31に貫通開孔されて並行する。ペアスリット部33〜35も並行する2本のスリットで成る。
【0057】
この例のペアスリット部32〜35は、導電シート31に、其々が一辺を成す縮小四角形状に配設される。ここでいう縮小四角形状とは、ペアスリット部同士が互いに略直角に配されて、直角の対辺を成す2組のペアスリット部の一方が、他方に対して端部を突出することで、ペアスリット部に囲まれた四角形状が縮小される形状をいう。例えば、互いに隣設されるペアスリット部32とペアスリット部33とは、ペアスリット部32の一方の端部32cが、ペアスリット部33の中腹部に隣設されるT字状を成す。ペアスリット部32〜35は互いに分離している。
【0058】
また、縮小四角形状の四角形は、回転放射形状の四角形ともいえる。ここでいう回転放射形状とは、複数のペアスリット部(一辺)が、所定の角度で傾斜して円形に配置されたかざぐるま型の風車羽状をいう。
【0059】
電磁波遮蔽シート30では、複数のペアスリット部32〜35で、各々電磁波のエネルギーが電気エネルギーに変換され、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部32では、スリット32a及び32bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部32〜35が配設された導電シート31の各位置で電磁波のエネルギーが電気エネルギーに変換されて減衰する。
【0060】
ところで、電磁波遮蔽シート30では、四角形の対辺を成すペアスリット部32とペアスリット部34とが平行に配設され、ペアスリット部33とペアスリット部35とが平行に配設される。この場合、互いに平行なペアスリット部同士が干渉しあい、電磁波や電気信号の発振等が起こるおそれがある。
【0061】
これを防止するため、対辺を成すペアスリット部同士、例えばペアスリット部33とペアスリット部35との距離D2は、波長λの1/4(λ/4)の整数倍ではない長さに設定するとよい。例えば、波長λが0.375m程度である場合、距離D2は、例えば0.0075m(λ/50)に設定する。このように互いに平行なペアスリット部の離間距離を設定することにより、電界、磁界、電圧、電流等の干渉を防止できる。以上のように電磁波遮蔽シート30が構成される。
【0062】
電磁波遮蔽シート30は、第1の実施例の電磁波遮蔽シート10と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート30を製造するには、所定の抜き型を準備して図3Aに示した金属シート15から抜き出すとよい。所定の抜き型は、電磁波遮蔽シート30の外縁部と、ペアスリット部32〜35とが一時に抜き出せる構成にする。このようにして、電磁波遮蔽シート30を製造することができる。
【0063】
製造した電磁波遮蔽シート30をCPU等に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート30を剥離シートF1から剥がし、CPU等の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート30がCPU等より大きい外形を有していると、CPU等の全面を容易に覆うことができる。
【0064】
このように、この発明の第3の実施例に係る電磁波遮蔽シート30によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される導電シート31に、開孔されて並行する複数のペアスリット部32〜35を備え、ペアスリット部32〜35が其々が一辺を成す縮小四角形状に配設されている。
【0065】
この構成によって、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、導電シート31の各位置で、導電シート31を伝搬する電磁波のエネルギーを減衰できるので、電磁波の発生源の近くで電磁波を減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品やプリント基板に応用する場合にも効率よく電磁波を遮蔽できるようになる。また、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
また、ペアスリット部32〜35の一方の端部の延長線上に、他のペアスリット部32〜35が遮るように配されている。例えば、ペアスリット部32の一方の端部32cの延長線上にペアスリット部33が略直角に配されている。従って、導電シート31を周回する渦電流の発生を防止できる。
【実施例4】
【0066】
図7は、この発明の第4の実施例としての電磁波遮蔽シート40の構成例を示す図である。図7に示す電磁波遮蔽シート40は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート41と、複数のペアスリット部42〜44とを有している。3組のペアスリット部42〜44は、導電シート41に三角形状に配置される。電磁波遮蔽シート40は、CPU等に貼付され、CPU等から放射される電磁波を遮蔽する。
【0067】
導電シート41は導電性の板部材の一例を構成し、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート41は、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成され、CPU等の上面に接着される。導電シート41は、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成、一体形成することもできる。導電シート41はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。導電シート41はCPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。
【0068】
導電シート41には、一対の長孔の一例を構成するペアスリット部42〜44が、複数、ここでは3組開孔される。例えば、ペアスリット部42は一対のスリット42a及び42bで成り、ペアスリット部43は一対のスリット43a及び43bで成り、ペアスリット部44は一対のスリット44a及び44bで成る。ペアスリット部42〜44は、導電シート41に吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0069】
ペアスリット部42〜44は、各々、図2に示したペアスリット部12と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部42のスリット42a及び42bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート41に貫通開孔されて並行する。ペアスリット部43及び44も並行する2本のスリットで成る。
【0070】
また、この例のペアスリット部42〜44は、導電シート41に、其々が一辺を成す三角形状に配設される。隣設されるペアスリット部同士、例えばペアスリット部42とペアスリット部43とは三角形の対辺を成す。ペアスリット部42〜44は互いに分離している。
【0071】
電磁波遮蔽シート40では、複数のペアスリット部42〜44で、各々電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部42では、スリット42a及び42bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部42〜44が配設された導電シート41の各位置で電磁波のエネルギーが減衰する。以上のように電磁波遮蔽シート40が構成される。
【0072】
電磁波遮蔽シート40は、第1の実施例の電磁波遮蔽シート10と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート40を製造するには、所定の抜き型を準備して図3Aに示した金属シート15から抜き出すとよい。所定の抜き型は、電磁波遮蔽シート40の外縁部と、ペアスリット部42〜44が一時に抜き出せる構成にする。このようにして、電磁波遮蔽シート40を製造することができる。
【0073】
製造した電磁波遮蔽シート40をCPU等に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート40を剥離シートF1から剥がし、CPU等の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート40がCPU等より大きい外形を有していると、CPU等の全面を容易に覆うことができる。
【0074】
このように、この発明の第4の実施例に係る電磁波遮蔽シート40によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される導電シート41に、開孔されて並行する複数のペアスリット部42〜44を備え、ペアスリット部42〜44が其々が一辺を成す三角形状に配設されている。
【0075】
この構成によって、ペアスリット部同士が互いに平行に配設されないので、ペアスリット部同士の干渉を容易に防止できる。また、各ペアスリット部が各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、導電シート41の各位置で、導電シート41を伝搬する電磁波のエネルギーを減衰できるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品やプリント基板等に適用する場合にも効率よく電磁波を遮蔽できる。更に、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【実施例5】
【0076】
図8は、この発明の第5の実施例としての電磁波遮蔽シート50の構成例を示す図である。図8に示す電磁波遮蔽シート50は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート51と、複数のペアスリット部52〜54とを有している。3組のペアスリット部52〜54は、導電シート51に縮小三角形状に配置される。電磁波遮蔽シート50は、CPU等に貼付され、CPU等から放射される電磁波を遮蔽する。
【0077】
導電シート51は導電性の板部材の一例を構成し、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート51は、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成され、CPU等の上面に接着される。導電シート51は、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成、一体形成することもできる。導電シート51はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。導電シート51はCPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。
【0078】
導電シート51には、一対の長孔の一例を構成するペアスリット部52〜54が、複数、ここでは3組開孔される。例えば、ペアスリット部52は一対のスリット52a及び52bで成り、ペアスリット部53は一対のスリット53a及び53bで成り、ペアスリット部54は一対のスリット54a及び54bで成る。ペアスリット部52〜54は、導電シート51に吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰する機能を有する。
【0079】
ペアスリット部52〜54は、各々、図2に示したペアスリット部12と略同等に構成されて略同等の機能を有するものである。例えば、ペアスリット部52のスリット52a及び52bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート51に貫通開孔されて並行する。ペアスリット部53及び54も並行する2本のスリットで成る。
【0080】
また、この例のペアスリット部52〜54は、導電シート51に、其々が一辺を成す三角形状に配設されるとともに、対辺の一方が他方に対して突出する縮小三角形状に配設される。例えば、三角形の対辺に相当するペアスリット部52とペアスリット部53とでは、ペアスリット部52の一方の端部52cが、ペアスリット部53に対して突出するようになされる。これで、ペアスリット部52〜54の中心に形成される三角形の一辺の長さは、ペアスリット部52〜54の長さに比べて小さくなる。また同時に、ペアスリット部52〜54は回転放射形状の三角形を構成する。ペアスリット部52〜54は互いに分離している。
【0081】
電磁波遮蔽シート50では、複数のペアスリット部52〜54で、各々電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部52では、スリット52a及び52bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部52〜54が配設された導電シート51の各位置で電磁波のエネルギーが減衰する。以上のように電磁波遮蔽シート50が構成される。
【0082】
電磁波遮蔽シート50は、第1の実施例の電磁波遮蔽シート10と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート50を製造するには、所定の抜き型を準備して図3Aに示した金属シート15から抜き出すとよい。所定の抜き型は、電磁波遮蔽シート50の外縁部と、ペアスリット部52〜54が一時に抜き出せる構成にする。このようにして、電磁波遮蔽シート50を製造することができる。
【0083】
製造した電磁波遮蔽シート50をCPU等に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート50を剥離シートF1から剥がし、CPU等の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート50がCPU等より大きい外形を有していると、CPU等の全面を容易に覆うことができる。
【0084】
このように、この発明の第5の実施例に係る電磁波遮蔽シート50によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される導電シート51に、開孔されて並行する複数のペアスリット部52〜54を備え、ペアスリット部52〜54が其々が一辺を成す縮小三角形状に配設されている。
【0085】
この構成によって、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、導電シート51の各位置で、導電シート51を伝搬する電磁波のエネルギーを減衰できるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品やプリント基板に適用する場合に、効率よく電磁波を遮蔽できる。また、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【0086】
加えて、三角形に配設されたペアスリット部同士が互いに平行に配設されないので、ペアスリット部同士の干渉を容易に防止できる。更に、回転放射形状に配設されたペアスリット部52〜54の一方の端部の延長線上に、他のペアスリット部52〜54が配されている。例えば、ペアスリット部53の一方の端部53cの延長線上に、ペアスリット部52が遮るように配されている。従って、導電シート51を周回する渦電流の発生を防止できる。
【実施例6】
【0087】
図9は、この発明の第6の実施例としての電磁波遮蔽シート60の構成例を示す図である。図9に示す電磁波遮蔽シート60は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート61と、複数のペアスリット部62〜65とを有している。4組のペアスリット部62〜65は、導電シート61に十字形状に配置される。電磁波遮蔽シート60は、CPU等に貼付され、CPU等から放射される電磁波を遮蔽する。
【0088】
導電シート61は導電性の板部材の一例を構成し、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート61は、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成され、CPU等の上面に接着される。導電シート61は、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成、又は、一体形成することもできる。導電シート61はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。導電シート61はCPU等から放射される電磁波を吸収する。
【0089】
導電シート61には、一対の長孔の一例を構成するペアスリット部62〜65が、複数、ここでは4組開孔される。例えば、ペアスリット部62は一対のスリット62a及び62bで成り、ペアスリット部63は一対のスリット63a及び63bで成り、ペアスリット部64は一対のスリット64a及び64bで成り、ペアスリット部65は一対のスリット65a及び65bで成る。ペアスリット部62〜65は、導電シート61に吸収された電磁波のエネルギーを減衰する機能を有する。
【0090】
ペアスリット部62〜65は、各々、図2に示したペアスリット部12と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部62のスリット62a及び62bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート61に貫通開孔されて並行する。ペアスリット部63〜65も並行する2本のスリットで成る。
【0091】
また、この例のペアスリット部62〜65は、導電シート61に、其々が一辺を成す十字(クロス:cross)形状に配設される。ペアスリット部62〜65は、一方の端部が中心部で隣設する放射状を成している。ペアスリット部62とペアスリット部64とは同一直線状に配され、ペアスリット部63とペアスリット部65とは同一直線状に配される。ペアスリット部62とペアスリット部63とは、略直角なL字状を成す。同様に、回転方向に隣り合うペアスリット部同士が互いにL字状を成す。ペアスリット部62〜65は互いに分離している。
【0092】
電磁波遮蔽シート60では、複数のペアスリット部62〜65で、各々電磁波のエネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部62では、スリット62a及び62bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部62〜65が配設された導電シート61の各位置で電磁波のエネルギーが電気エネルギーに変換されて減衰する。以上のように電磁波遮蔽シート60が構成される。
【0093】
電磁波遮蔽シート60は、第1の実施例の電磁波遮蔽シート10と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート60を製造するには、所定の抜き型を準備して図3Aに示した金属シート15から抜き出すとよい。所定の抜き型は、電磁波遮蔽シート60の外縁部と、ペアスリット部62〜65が一時に抜き出せる構成にする。このようにして、電磁波遮蔽シート60を製造することができる。
【0094】
製造した電磁波遮蔽シート60をCPU等に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート60を剥離シートF1から剥がし、CPU等の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート60がCPU等より大きい外形を有していると、CPU等の全面を容易に覆うことができる。
【0095】
このように、この発明の第6の実施例に係る電磁波遮蔽シート60によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される導電シート61に、開孔されて並行する複数のペアスリット部62〜65を備え、ペアスリット部62〜65が十字状に配設されている。
【0096】
この構成によって、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、導電シート61の各位置で、導電シート61を伝搬する電磁波を減衰できるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品やプリント基板に応用する場合に効率よく電磁波を遮蔽できる。また、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【0097】
加えて、ペアスリット部同士が並行しないので、平行なペアスリット部同士による干渉を防止できる。更に、複数のペアスリット部の一方の端部が中心部で隣設して、他方の端部は、外周部で離間して配されるので、導電シート61を周回する渦電流の発生を防止できる。
【実施例7】
【0098】
図10は、この発明の第7の実施例としての電磁波遮蔽シート70の構成例を示す図である。図10に示す電磁波遮蔽シート70は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート71と、複数のペアスリット部72〜75とを有している。4組のペアスリット部72〜75は、其々が弧形状を有して導電シート71に円形状に配置される。電磁波遮蔽シート70は、CPU等に貼付され、CPU等から放射される電磁波を遮蔽する。
【0099】
導電シート71は導電性の板部材の一例を構成し、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート71は、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成され、CPU等の上面に接着される。導電シート71は、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成、又は、一体形成することもできる。導電シート71はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。導電シート71はCPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。
【0100】
導電シート71には、一対の長孔の一例を構成する円弧状のペアスリット部72〜75が、複数、ここでは4組開孔される。例えば、ペアスリット部72は一対のスリット72a及び72bで成り、ペアスリット部73は一対のスリット73a及び73bで成り、ペアスリット部74は一対のスリット74a及び74bで成り、ペアスリット部75は一対のスリット75a及び75bで成る。ペアスリット部72〜75は、導電シート71に吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰する機能を有する。
【0101】
ペアスリット部72〜75は、各々、弧形状に湾曲して並行する2本のスリットから構成される。例えば、ペアスリット部72のスリット72a及び72bは、幅W3の湾曲した長孔(スリット)である。スリット72a及び72bは同心円状に配置されて互いに並行する。外側のスリット72aは長さL2を有し、内側のスリット72bは長さL3を有する。長さL2は長さL3よりも長く設定される。同様に、ペアスリット部73〜75も並行する2本の弧形状のスリットから成る。ペアスリット部72〜75は互いに分離して略円形状に配設される。
【0102】
電磁波遮蔽シート70では、複数のペアスリット部72〜75で、各々電磁波のエネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部72では、スリット72a及び72bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部72〜75が配設された導電シート71の各位置で電磁波のエネルギーが減衰する。以上のように電磁波遮蔽シート70が構成される。
【0103】
電磁波遮蔽シート70は、第1の実施例の電磁波遮蔽シート10と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート70を製造するには、所定の抜き型を準備して図3Aに示した金属シート15から抜き出すとよい。所定の抜き型は、電磁波遮蔽シート70の外縁部と、ペアスリット部72〜75が一時に抜き出せる構成にする。このようにして、電磁波遮蔽シート70を製造することができる。
【0104】
製造した電磁波遮蔽シート70をCPU等に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート70を剥離シートF1から剥がし、CPU等の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート70がCPU等より大きい外形を有していると、CPU等の全面を容易に覆うことができる。
【0105】
このように、この発明の第7の実施例に係る電磁波遮蔽シート70によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される導電シート71に、弧形状に開孔されて並行する複数のペアスリット部72〜75を備え、弧形状のペアスリット部72〜75が円形に配設されている。
【0106】
この構成によって、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、ペアスリット部同士が平行に配されることがないので、エネルギーの干渉を容易に防止できる。
【0107】
また、導電シート71の各位置で、導電シート71を伝搬する電磁波のエネルギーを減衰できるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、特に、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子機器やプリント基板に応用する場合に効率よく電磁波を遮蔽できる。更に、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【実施例8】
【0108】
図11は、この発明の第8の実施例としての電磁波遮蔽シート80の構成例を示す図である。図11に示す電磁波遮蔽シート80は、電磁波遮蔽具(第2の電磁波遮蔽具)の一例を構成し、導電シート81a,81c、絶縁シート81b、ペアスリット部82,83を備えている。
【0109】
電磁波遮蔽シート80は、互いに絶縁されて重ねられた2枚の導電シート81a及び81cによる二重遮蔽構造を有する。この例の導電シート81a及び81cには、同一形状のペアスリット部が1組ずつ開孔されていて、開孔されたペアスリット部が、互いに異なる角度で対峙する位置に配設されている。
【0110】
電磁波遮蔽シート80は、CPU等に例えば貼付され、CPU等から放射される電磁波を遮蔽する。電磁波遮蔽シート80は、CPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。電磁波遮蔽シート80は、例えば35mm角の正方形に設定される。また、電磁波遮蔽シート80の外形を構成する導電シート81a及び81cの各々は、例えば、0.09mmの厚みのアルミシートで構成される。
【0111】
導電シート81aは導電性の第1の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート81aは、導電性の部材、銅、アルミ等で構成され、例えば、一方の面に粘着性の物質を塗布又は貼付されてCPU等の上面に接着される。導電シート81aは、CPU等の側の1枚目の遮蔽層を構成する。また導電シート81aは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成、一体形成することもできる。導電シート81aには、一対の長孔としてのペアスリット部82が、ここでは外縁に対して所定の角度で傾斜して開孔される。
【0112】
1枚目の導電シート81aに開孔されたペアスリット部82は、一対のスリット82a、82bから成り、導電シート81aに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。図12は、ペアスリット部82の構成例及び機能例を示す図である。スリット82a及び82bは、例えば、長さL1’及び幅W1’を有して導電シート81aに開孔されて並行する。
【0113】
スリット82a及び82bは、例えば、長さL1’:7.5mm、幅W1’:0.4mmを有し、一定の幅W2’:0.4mmの間隔を維持して平行に配置される。スリット82aとスリット82bとの間には、導電シート81aで成る幅W2’の帯状の導電部82cが構成される。
【0114】
この例の電磁波遮蔽シート80は、CPU等から放射される100MHz〜800MHzの電磁波を遮断するように設定される。スリット82a及び82bの長さL1’は、電磁波の波長λよりも充分小さい長さ、この例ではλ/50に設定される。このようにスリット82a及び82bの長さL1’を設定することによって、電磁波遮蔽シート80が電磁波の高調波成分にも対応できるようになる。
【0115】
電磁波遮蔽シート80がCPU等に貼付されると、まず、1枚目の導電シート81aに電磁波のエネルギーが吸収される。電磁波のエネルギーによって導電シート81aに生じた電界は、スリット82a及び82bに電圧を誘発する。
【0116】
スリット82a及び82bには、それぞれ、電界に誘発された電圧Va’,Vb’が発生する。電圧Va’は、スリット12aの一方のエッジe3から他方のエッジe3’に向けて生じる。電圧Vb’は、スリット12bの一方のエッジe4から他方のエッジe4’に向けて生じる。電圧Va’及びVb’は、振幅が略同等で位相が逆相の電圧信号である。電圧Va’及びVb’は互いに対向して打ち消しあう。
【0117】
また、電界と直交して生じる磁界によって、スリット82a及び82bの周囲に、それぞれ電流Ia’,Ib’が流れる。電流Ia’及びIb’は、スリット82aとスリット82bとの間の導電部82cで対向して打ち消しあう。このように、ペアスリット部82で電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こり、導電シート81aに吸収された電磁波のエネルギーは減衰する。
【0118】
導電シート81aの他方の面には、絶縁シート81bの一方の面が接着される。絶縁シート81bは、絶縁部材の一例を構成し、導電シート81aと略同形状を有して導電シート81aの全面に接着される。絶縁シート81bは、アクリル性の接着剤、樹脂等の絶縁性の部材で構成される。絶縁シート81bの他方の面には、導電シート81cの一方の面が接着される。
【0119】
導電シート81cは導電性の第2の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、絶縁シート81bを介し、導電シート81aの他方の面と対峙する。導電シート81cは、導電性の部材、銅、アルミ等で構成され、CPU等の外側に配されて2枚目の遮蔽層を構成する。導電シート81cは、導電シート81aと同様に、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成、又は、一体形成することもできる。導電シート81cには、一対の長孔としてのペアスリット部83が、ペアスリット部82と異なる方向に傾斜して線対称に配される。この例では、ペアスリット部82とペアスリット部83とが、十字を成して互いに略垂直に交差する。
【0120】
2枚目の導電シート81cには、ペアスリット部83が開孔される。ペアスリット部83は、導電シート81cに吸収された電磁波を減衰させる機能を有する。ペアスリット部83は、一対のスリット83a、83bで成る。
【0121】
スリット83a及び83bは、例えば、スリット82a及び82bと同形状を有し、長さL1’及び幅W1’の大きさで、幅W2’離間して導電シート81cに開孔されて並行する。2枚目の導電シート81cには、1枚目の導電シート81aから漏れ出た電磁波による電界が生じる。導電シート81cに生じた電界は、スリット83a及び83bに電圧を誘発する。
【0122】
スリット83a及び83bに発生する電圧は、振幅が同等で位相が逆相の電圧信号で、互いに対向して打ち消しあう。同様に、電界と直交する磁界によってスリット83a及び83bの周囲に誘発される電流は、スリット83aとスリット83bとの間の導電部で対向して打ち消しあう。
【0123】
このように、ペアスリット部83で電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こり、2枚目の導電シート81cに吸収された電磁波のエネルギーが減衰する。こうして、導電シート81a及び81cによる二重遮蔽構造を備えた電磁波遮蔽シート80が構成される。次に、電磁波遮蔽シート80の製造方法について説明をする。
【0124】
図13A〜Eは、電磁波遮蔽シート80の製造例を示す図である。ここでは、図13Aに示す金属シート16に基づいて電磁波遮蔽シート80を製造する場合について説明する。金属シート16は、剥離シートF1’と、接着剤G1’と、メタルシートM1’とが積層された帯状のシートである。剥離シートF1’は例えば帯状の剥離紙で構成される。接着剤G1’は、例えば、アクリル系の接着剤で構成される。メタルシートM1’は、例えば、銅箔やアルミ箔で構成される。
【0125】
金属シート16に基づいて電磁波遮蔽シート80を形成するには、まず、ペアスリット部82を象った抜き型を準備して、メタルシートM1’にペアスリット部82を所定間隔で連続して打ち抜く。このとき、接着剤G1’は打ち抜かないようにするとよい(図13B)。
【0126】
次に、ペアスリット部82が連続形成されたメタルシートM1’の上面に、接着剤G2’を塗布又は貼付するとともに、接着剤G2’の上面にメタルシートM2’を形成する。接着剤G2’は、例えば、アクリル系の接着剤や両面接着シートで構成される。メタルシートM2’は、例えば、銅箔やアルミ箔で構成される。更に、ペアスリット部83を象った抜き型で、メタルシートM2’にペアスリット部83を所定間隔で連続して打ち抜く(図13C)。ここでは、接着剤G2’を打ち抜かないようにする。
【0127】
最後に、図13Dに示すように、外縁用の抜き型でメタルシートM2’、接着剤G2’、メタルシートM1’を一度に打ち抜き、外縁部80aを形成する。以上のようにして、図3Eに示すような電磁波遮蔽シート80を製造できる。
【0128】
また、ペアスリット部83と外縁部80aとを一度に抜き出せる抜き型を準備して、図13C及びDの打ち抜き工程を同時に実行してもよい。電磁波遮蔽シート80が形成された金属シート16はロール状に巻くとよい。以上のようにして、電磁波遮蔽シート80を製造できる。以下で、電磁波遮蔽シート80をCPU等に装着する方法について説明する。
【0129】
図14は、電磁波遮蔽シート80の装着例を示す斜視図である。図14に示す電磁波遮蔽シート80をCPU1に装着するには、所定の電磁波遮蔽シート80を剥離シートF1’から剥がし、CPU1の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート80がCPU1より大きい外形を有していると、CPU1の全面を容易に覆うことができる。
【0130】
このように、この発明の第8の実施例に係る電磁波遮蔽シート80によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される1枚目の導電シート81aに、絶縁シート81bを介して対峙する2枚目の導電シート81cを備え、導電シート81a及び81cの各々が、略同等の形状を有して配設され、かつ、異なる角度で対峙する位置に配設されたペアスリット部を有している。
【0131】
この構成によって、1枚目のスリットから漏れた電磁界や1枚目の導電シートを通過した電磁界、つまり、2次放射分の電磁波のエネルギーを効率よく遮蔽できる。これにより、CPU等から放射された電磁波のエネルギーを二重に軽減できる二重遮蔽構造の電磁波遮蔽具を提供できるようになった。
【0132】
また、1枚目のペアスリット部82と2枚目のペアスリット部83とが、互いに異なる角度で対峙するので、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、1枚目の導電シート81aに発生した電界が、進行方向を遮るように配設されたペアスリット部83に遮蔽される。これによって、CPU等から上面に放射される電界の多くを軽減できる。また、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【0133】
なお、この例では、金属シート16に基づいて電磁波遮蔽シート80を製造する場合について説明をしたが、それに限られることはなく、導電性の薄板を用意して絶縁シート81bとし、その両面に導電シート81a及び81cを形成するようにしてもよい。この場合は、導電シート81a及び81cを象ったパターンを印刷形成することもできる。
【実施例9】
【0134】
図15は、この発明の第9の実施例としての電磁波遮蔽シート90の構成例を示す図である。図15に示す電磁波遮蔽シート90は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート91a,91c、絶縁シート91b、複数のペアスリット部92〜99を備えている。電磁波遮蔽シート90は、互いに絶縁されて重ねられた導電シート91a及び91cによる二重遮蔽構造を有する。
【0135】
導電シート91a及び91cの各々は、略同一形状を有して配設された複数のペアスリット部を有し、複数のスリットが互いに異なる角度で対峙する位置に配設されている。この例の導電シート91a及び91cは、其々、四角形状に配設された4組のペアスリット部を有し、ペアスリット部で構成された四角形が、45°傾斜して対峙している。
【0136】
電磁波遮蔽シート90は、CPU等に例えば貼付されてCPU等から放射される電磁波を遮蔽するものである。電磁波遮蔽シート90はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。
【0137】
1枚目の導電シート91aは導電性の第1の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート91aは、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔又はアルミ箔から構成されてCPU等の上面に接着される。導電シート91aは、CPU等の側の1枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。また導電シート91aは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成、又は、一体形成することもできる。導電シート91aには、一対の長孔であるペアスリット部92〜95が開孔される。
【0138】
導電シート91aに開孔されたペアスリット部92〜95は、ペアスリット部92が一対のスリット92a及び92bで成り、ペアスリット部93が一対のスリット93a及び93bで成り、ペアスリット部94が一対のスリット94a及び94bで成り、ペアスリット部95が一対のスリット95a及び95bで成る。ペアスリット部92〜95は、導電シート91aに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0139】
各々のペアスリット部92〜95は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部92のスリット92a及び92bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート91aに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部93〜95も並行する2本のスリットで成る。
【0140】
また、この例のペアスリット部92〜95は、導電シート91aに、其々が一辺を成す四角形状に配設される。例えば、互いに隣設されるペアスリット部92とペアスリット部93とは、一方の端部同士が接近して略直角に配され、略L字状を成す。同様に、ペアスリット部92〜95が配されて四角形状を構成する。ペアスリット部92〜95は互いに分離している。
【0141】
導電シート91aでは、複数のペアスリット部92〜95の各々で、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部92では、スリット92a及び92bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部92〜95が配設された導電シート91aの各位置で、電磁波のエネルギーが減衰する。
【0142】
ところで、導電シート91aでは、四角形の対辺を成すペアスリット部92とペアスリット部94とが平行に配設され、ペアスリット部93とペアスリット部95とが平行に配設される。この場合、互いに平行なペアスリット部同士が干渉しあい、電磁波や電気信号の発振、増幅等の原因となるおそれがある。
【0143】
これを防止するため、対辺を成すペアスリット部同士、ペアスリット部93とペアスリット部95との距離D3を、電磁波の波長λの1/4(λ/4)の整数倍と等しくない長さに設定するとよい。例えば、波長λが0.375m程度である場合、距離D3は、例えば0.0075m(λ/50)に設定する。このように互いに平行なペアスリット部の離間距離を設定することにより、電界、磁界、電圧、電流等の干渉を防止できる。以上のように導電シート91aが構成される。導電シート91aの他方の面には、絶縁シート91bが接着される。
【0144】
絶縁シート91bは、絶縁部材の一例を構成し、導電シート91aの全面に接着される。絶縁シート91bは、アクリル性の接着剤、樹脂等の絶縁性の部材で構成される。
【0145】
絶縁シート91bを介して、2枚目の導電シート91cが設けられる。導電シート91cは導電性の第2の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、導電シート91aの他方の面と対峙して配設される。導電シート91cは、例えば、絶縁シート91bの側の一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔、アルミ箔等から構成される。導電シート91cは2枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。導電シート91cは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0146】
2枚目の導電シート91cに四角形状に配設されたペアスリット部96〜99は、ペアスリット部96が一対のスリット96a及び96bで成り、ペアスリット部97が一対のスリット97a及び97bで成り、ペアスリット部98が一対のスリット98a及び98bで成り、ペアスリット部99が一対のスリット99a及び99bで成る。ペアスリット部96〜99は、導電シート91cに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0147】
ペアスリット部96〜99の各々は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部96のスリット96a及び96bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート91cに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部97〜99も並行する2本のスリットで成る。
【0148】
また、この例のペアスリット部96〜99は、導電シート91cに、其々が一辺を成す四角形状を構成する。ここで、導電シート91cに構成された四角形は、導電シート91aに構成された四角形に対して略45°傾斜している。
【0149】
導電シート91cにおいても、複数のペアスリット部96〜99の各々で、電磁波のエネルギーが電気エネルギーに変換され、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部96では、スリット96a及び96bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部96〜99が配設された2枚目の導電シート91cの各位置で、電磁波のエネルギーから変換された電気エネルギーが減衰する。
【0150】
ところで、導電シート91cでは、四角形の対辺を成すペアスリット部96とペアスリット部98とが平行に配設され、ペアスリット部97とペアスリット部99とが平行に配設される。この場合、互いに平行なペアスリット部同士が干渉しあい、電磁波や電気信号の発振、増幅等の原因となるおそれがある。
【0151】
これを防止するため、対辺を成すペアスリット部同士、例えばペアスリット部97とペアスリット部99との距離D3を、電磁波の波長λの1/4(λ/4)の整数倍と等しくない長さに設定するとよい。例えば、波長λが0.375m程度である場合、距離D3は、例えば0.0075m(λ/50)に設定する。このように互いに平行なペアスリット部の離間距離を設定することにより、電界、磁界、電圧、電流等の干渉を防止できる。以上のように導電シート91cが構成される。以下で、電磁波遮蔽シート90の製造方法について説明をする。
【0152】
電磁波遮蔽シート90は、第8の実施例の電磁波遮蔽シート80と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート90を製造するには、まず、金属シート16、接着剤G2’及びメタルシートM2’等の原料となる部材と、電磁波遮蔽シート90用の抜き型とを準備する。
【0153】
電磁波遮蔽シート90用の抜き型には、ペアスリット部92〜95を一時に抜き出せるものと、ペアスリット部96〜99を一時に抜き出せるものと、電磁波遮蔽シート90の外縁部を抜き出せるものとを準備する。
【0154】
所定の部材と、電磁波遮蔽シート90用の抜き型が準備できたら、図13A〜Eに示した工程を電磁波遮蔽シート90用の抜き型を用いて実行する。こうして、電磁波遮蔽シート90が連続貼付されたロール状のシートを製造できる。
【0155】
製造した電磁波遮蔽シート90をCPU1に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート90を剥離シートF1’から剥がし、CPU1の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート90がCPU1より大きい外形を有していると、CPU1の全面を容易に覆うことができる。
【0156】
このように、この発明の第9の実施例に係る電磁波遮蔽シート90によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される1枚目の導電シート91aに、絶縁シート91bを介して対峙する2枚目の導電シート91cを備え、導電シート91a及び91cの各々が、其々が一辺を成す四角形状に配設された複数のペアスリット部を有し、当該ペアスリット部が、異なる角度で対峙している。
【0157】
この構成によって、1枚目のスリットから漏れた電磁界や1枚目の導電シートを通過した電磁界、つまり、2次放射分の電磁波のエネルギーを効率よく遮蔽できる。これにより、CPU等から放射された電磁波のエネルギーを二重に軽減できる二重遮蔽構造の電磁波遮蔽具を提供できるようになった。
【0158】
なお、1枚目のペアスリット部92〜95による四角形と2枚目のペアスリット部96〜99による四角形とが、所定角度、ここでは略45°傾斜して対峙するので、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、1枚目の導電シート91aに発生した電界が、進行方向を遮るように配設された2枚目の導電シート91cのペアスリット部に遮蔽される。これによって、CPU等から上面に放射される電界の多くを軽減できる。
【0159】
また、複数のペアスリット部を有しているので、導電シート91a及び91cの各位置で、導電シートを伝搬する電磁波を減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品又はプリント基板に応用する場合にも効率よく電磁波を遮蔽できる。また、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【実施例10】
【0160】
図16は、この発明の第10の実施例としての電磁波遮蔽シート100の構成例を示す図である。図16に示す電磁波遮蔽シート100は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート101a,101c、絶縁シート101b、ペアスリット部102〜109を備えている。電磁波遮蔽シート100は、互いに絶縁されて重ねられた導電シート101a及び101cによる二重遮蔽構造を有する。導電シート101a及び101cの各々は、縮小四角形状に配設された4組のペアスリット部を有し、ペアスリット部で構成された縮小された四角形が、異なる角度で対峙する位置に配設されている。
【0161】
電磁波遮蔽シート100は、CPU等に例えば貼付されてCPU等から放射される電磁波を遮蔽するものである。電磁波遮蔽シート100はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。
【0162】
電磁波遮蔽シート100の外形を構成する導電シート101a及び導電シート101cには、各々、一対の長孔であるペアスリット部が、複数、ここでは4組開孔されている。1枚目の導電シート101aにはペアスリット部102〜105が開孔され、2枚目の導電シート101cにはペアスリット部106〜109が開孔されている。
【0163】
ペアスリット部102〜105は、導電シート101aに、其々が一辺を成す縮小四角形状に配設されている。ペアスリット部106〜109は、導電シート101cに、其々が一辺を成す縮小四角形状に配設されている。ここでいう縮小四角形状とは、ペアスリット部同士が互いに略直角に配されて、直角の対辺を成す2組のペアスリット部の一方が、他方に対して端部を突出することで、ペアスリット部に囲まれた四角形状が縮小される形状をいう。また、縮小四角形状の四角形は、回転放射形状の四角形ともいえる。ここでいう回転放射形状とは、複数のペアスリット部(一辺)が、所定の角度で傾斜して円形に配置されたかざぐるま型の風車羽状をいう。
【0164】
また、導電シート101a及び導電シート101cにペアスリット部で形成される縮小四角形状は、互いに異なる角度で対峙するように配設されている。この例では、導電シート101aのペアスリット部102〜105が成す縮小四角形状に対して、導電シート101cのペアスリット部106〜109が成す縮小四角形状が、何れかのペアスリット部に平行な中心線を対称軸とする線対称になされる。ペアスリット部102〜109を透過して重ねると、ペアスリット部102〜109による井桁形状が構成される。
【0165】
1枚目の導電シート101aは導電性の第1の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート101aは、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成されてCPU等の上面に接着される。導電シート101aは、CPU等の側の1枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。また導電シート101aは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0166】
1枚目の導電シート101aに開孔されたペアスリット部102〜105は、ペアスリット部102が一対のスリット102a及び102bで成り、ペアスリット部103が一対のスリット103a及び103bで成り、ペアスリット部104が一対のスリット104a及び104bで成り、ペアスリット部105が一対のスリット105a及び105bで成る。ペアスリット部102〜105は、導電シート101aに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0167】
また、各々のペアスリット部102〜105は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部102のスリット102a及び102bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート101aに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部103〜105も並行する2本のスリットで成る。
【0168】
また、この例のペアスリット部102〜105は、導電シート101aに、其々が一辺を成す縮小四角形状に配設される。例えば、互いに隣設されるペアスリット部、例えば、ペアスリット部102とペアスリット部103とは、ペアスリット部102の一方の端部が、ペアスリット部103の中腹部に隣設されるT字状を成す。ペアスリット部102〜105は互いに分離している。
【0169】
導電シート101aでは、複数のペアスリット部102〜105の各々で、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部102では、スリット102a及び102bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部102〜105が配設された導電シート101aの各位置で、電磁波のエネルギーが減衰する。
【0170】
ところで、導電シート101aでは、ペアスリット部102とペアスリット部104とが平行に配設され、ペアスリット部103とペアスリット部105とが平行に配設される。この場合、互いに平行なペアスリット部同士が干渉しあい、電磁波や電気信号の発振、増幅等の原因となるおそれがある。
【0171】
これを防止するため、平行なペアスリット部同士、例えば、ペアスリット部102とペアスリット部104との距離D4を、電磁波の波長λの1/4(λ/4)の整数倍と等しくない長さに設定するとよい。例えば、波長λが0.375m程度である場合、距離D4は、例えば0.0075m(λ/50)に設定する。このように互いに平行なペアスリット部の離間距離を設定することにより、電界、磁界、電圧、電流等の干渉を防止できる。以上のように導電シート101aが構成される。
【0172】
導電シート101aの他方の全面には、絶縁シート101bが接着される。絶縁シート101bは、絶縁部材の一例を構成し、アクリル性の接着剤、樹脂等の絶縁性の部材で構成される。
【0173】
絶縁シート101bを介して、2枚目の導電シート101cが設けられる。導電シート101cは導電性の第2の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、導電シート101aの他方の面と対峙して配設される。導電シート101cは、例えば、絶縁シート101bの側の一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成される。導電シート101cは2枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。導電シート101cは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0174】
2枚目の導電シート101cに開孔されたペアスリット部106〜109は、ペアスリット部106が一対のスリット106a及び106bで成り、ペアスリット部107が一対のスリット107a及び107bで成り、ペアスリット部108が一対のスリット108a及び108bで成り、ペアスリット部109が一対のスリット109a及び109bで成る。ペアスリット部106〜109は、導電シート101cに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0175】
ペアスリット部106〜109の各々は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部106のスリット106a及び106bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート101cに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部107〜109も並行する2本のスリットで成る。
【0176】
また、この例のペアスリット部106〜109は、導電シート101cに、其々が一辺を成す縮小四角形状に配設される。例えば、互いに隣設されるペアスリット部、例えば、ペアスリット部106とペアスリット部107とは、ペアスリット部106の一方の端部が、ペアスリット部107の中腹部に隣設されるT字状を成す。ペアスリット部106〜109は互いに分離している。ペアスリット部106〜109で成る縮小四角形状は、ペアスリット部102〜105で成る縮小四角形状に対して、何れかのペアスリット部に平行な中心線を対称軸とする線対称になされる。
【0177】
導電シート101cでは、複数のペアスリット部106〜109の各々で、電磁波のエネルギーが電気エネルギーに変換され、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部106では、スリット106a及び106bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部106〜109が配設された導電シート101cの各位置で、電磁波のエネルギーから変換された電気エネルギーが減衰する。
【0178】
ところで、導電シート101cでは、ペアスリット部106とペアスリット部108とが平行に配設され、ペアスリット部107とペアスリット部109とが平行に配設される。この場合、互いに平行なペアスリット部同士が干渉しあい、電磁波や電気信号の発振、増幅等の原因となるおそれがある。
【0179】
これを防止するため、平行なペアスリット部同士、例えばペアスリット部107とペアスリット部109との距離D4を、電磁波の波長λの1/4(λ/4)の整数倍でない長さに設定するとよい。例えば、波長λが0.375m程度である場合、距離D4は、例えば0.0075m(λ/50)に設定する。このように互いに平行なペアスリット部の離間距離を設定することにより、電界、磁界、電圧、電流等の干渉を防止できる。以上のように導電シート101cが構成される。以下で、電磁波遮蔽シート100の製造方法について説明をする。
【0180】
電磁波遮蔽シート100は、第8の実施例の電磁波遮蔽シート80と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート100を製造するには、まず、金属シート16、接着剤G2’及びメタルシートM2’等の原料となる部材と、電磁波遮蔽シート100用のの抜き型とを準備する。
【0181】
電磁波遮蔽シート100用の抜き型としては、ペアスリット部102〜105を一時に抜き出せるものと、ペアスリット部106〜109を一時に抜き出せるものと、電磁波遮蔽シート100の外縁部を抜き出せるものとを準備する。
【0182】
所定の部材と電磁波遮蔽シート100用の抜き型は準備できたら、図13A〜Eに示した工程を電磁波遮蔽シート100用の抜き型を用いて実行する。こうして、電磁波遮蔽シート100が連続して貼付されたロール状のシートを製造できる。
【0183】
製造した電磁波遮蔽シート100をCPU1に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート100を剥離シートF1’から剥がし、CPU1の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート100がCPU1より大きい外形を有していると、CPU1の全面を容易に覆うことができる。
【0184】
このように、この発明の第10の実施例に係る電磁波遮蔽シート100によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される1枚目の導電シート101aに、絶縁シート101bを介して対峙する2枚目の導電シート101cを備え、導電シート101a及び101cの各々が、其々が一辺を成す縮小四角形状に配設されたペアスリット部を有し、ペアスリット部で構成された縮小四角形状が異なる角度で対峙している。
【0185】
この構成によって、1枚目のスリットから漏れた電磁界や1枚目の導電シートを通過した電磁界、つまり、2次放射分の電磁波のエネルギーを効率よく遮蔽できる。これにより、CPU等から放射された電磁波のエネルギーを二重に軽減できる二重遮蔽構造の電磁波遮蔽具を提供できるようになった。
【0186】
なお、1枚目のペアスリット部102〜105と2枚目のペアスリット部106〜109とが、互いに異なる位置に配設されているので、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、1枚目の導電シート101aから漏洩した電磁波のエネルギーが、2枚目の導電シート101cのペアスリット部によって効率よく軽減されるようになる。
【0187】
また、ペアスリット部102〜105及びペアスリット部106〜109が其々が一辺を成す縮小四角形状に配設されている。この構成によって、導電シート101a及び101cの各位置で、導電シートを伝搬する電磁波を減衰できるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品又はプリント基板に応用する場合にも効率よく電磁波を遮蔽できる。加えて、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【実施例11】
【0188】
図17は、この発明の第11の実施例としての電磁波遮蔽シート110の構成例を示す図である。図17に示す電磁波遮蔽シート110は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート111a,111c、絶縁シート111b、ペアスリット部112〜117を備えている。電磁波遮蔽シート110は、互いに絶縁されて重ねられた導電シート111a及び111cによる二重遮蔽構造を有する。導電シート111a及び111cの各々は、三角形状に配設された3組のペアスリット部を有し、導電シート111aの三角形と導電シート111cの三角形とが、互いに異なる角度で対峙するようになされる。
【0189】
電磁波遮蔽シート110は、CPU等に例えば貼付されてCPU等から放射される電磁波を遮蔽するものである。電磁波遮蔽シート110はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。
【0190】
電磁波遮蔽シート110の外形を構成する導電シート111a及び導電シート111cには、各々、一対の長孔であるペアスリット部が、複数、ここでは3組開孔されている。1枚目の導電シート111aにはペアスリット部112〜114が開孔され、2枚目の導電シート111cにはペアスリット部115〜117が開孔されている。
【0191】
ペアスリット部112〜114は、導電シート111aに、其々が一辺を成す三角形状に配設されている。ペアスリット部115〜117は、導電シート111cに、其々が一辺を成す三角形状に配設されている。
【0192】
また、導電シート111a及び導電シート111cにペアスリット部で形成される三角形は、互いに異なる角度で対峙している。この例では、導電シート111aの上面に形成された三角形に対して、導電シート111cの上面に形成された三角形が、45°傾斜している。
【0193】
1枚目の導電シート111aは導電性の第1の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート111aは、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成されてCPU等の上面に接着される。導電シート111aは、CPU等の側の1枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。また導電シート111aは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0194】
1枚目の導電シート111aに開孔されたペアスリット部112〜114は、ペアスリット部112が一対のスリット112a及び112bで成り、ペアスリット部113が一対のスリット113a及び113bで成り、ペアスリット部114が一対のスリット114a及び114bで成る。ペアスリット部112〜114は、導電シート111aに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0195】
また、各々のペアスリット部112〜114は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部112のスリット112a及び112bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート111aに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部113及び114も各々並行する2本のスリットで成る。
【0196】
また、この例のペアスリット部112〜114は、導電シート111aに、其々が一辺を成す三角形に配設される。例えば、互いに隣設されるペアスリット部、例えば、ペアスリット部112とペアスリット部113とは、三角形の対辺を成す。ペアスリット部112〜114は互いに分離している。
【0197】
導電シート111aでは、複数のペアスリット部112〜114の各々で、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部112では、スリット112a及び112bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部112〜114が配設された導電シート111aの各位置で、電磁波のエネルギーが減衰する。
【0198】
導電シート111aの他方の全面には、絶縁シート111bが接着される。絶縁シート111bは、絶縁部材の一例を構成し、アクリル性の接着剤、樹脂等の絶縁性の部材で構成される。
【0199】
絶縁シート111bを介して、2枚目の導電シート111cが設けられる。導電シート111cは導電性の第2の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、導電シート111aの他方の面と対峙して配設される。導電シート111cは、例えば、絶縁シート111bの側の一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成される。導電シート111cは2枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。導電シート111cは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0200】
2枚目の導電シート111cに開孔されたペアスリット部115〜117は、ペアスリット部115が一対のスリット115a及び115bで成り、ペアスリット部116が一対のスリット116a及び116bで成り、ペアスリット部117が一対のスリット117a及び117bで成る。ペアスリット部115〜117は、導電シート111cに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0201】
ペアスリット部115〜117の各々は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部115のスリット115a及び115bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート111cに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部116及び117も並行する2本のスリットで成る。
【0202】
また、この例のペアスリット部115〜117は、導電シート111cに、其々が一辺を成す三角形に配設される。例えば、互いに隣設されるペアスリット部、例えば、ペアスリット部115とペアスリット部116とは三角形の対辺を成す。ペアスリット部115〜117は互いに分離している。
【0203】
導電シート111cでは、複数のペアスリット部115〜117の各々で、電磁波のエネルギーが電気エネルギーに変換され、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部115では、スリット115a及び115bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部115〜117が配設された導電シート111cの各位置で、電磁波のエネルギーから変換された電気エネルギーが減衰する。以上のように導電シート111cが構成される。以下で、電磁波遮蔽シート110の製造方法について説明をする。
【0204】
電磁波遮蔽シート110は、第8の実施例の電磁波遮蔽シート80と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート110を製造するには、まず、金属シート16、接着剤G2’及びメタルシートM2’等の原料となる部材と、電磁波遮蔽シート110用の抜き型とを準備する。
【0205】
電磁波遮蔽シート110用の抜き型としては、ペアスリット部112〜114を一時に抜き出せるものと、ペアスリット部115〜117を一時に抜き出せるものと、電磁波遮蔽シート110の外縁部を抜き出せるものとを準備する。
【0206】
所定の部材と電磁波遮蔽シート110用の抜き型は準備できたら、図13A〜Eに示した工程を電磁波遮蔽シート110用の抜き型を用いて実行する。こうして、電磁波遮蔽シート110が連続して貼付されたロール状のシートを製造できる。
【0207】
製造した電磁波遮蔽シート110をCPU1に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート110を剥離シートF1’から剥がし、CPU1の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート110がCPU1より大きい外形を有していると、CPU1の全面を容易に覆うことができる。
【0208】
このように、この発明の第11の実施例に係る電磁波遮蔽シート110によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される1枚目の導電シート111aに、絶縁シート111bを介して対峙する2枚目の導電シート111cを備え、導電シート111a及び111cの各々が、其々が一辺を成す三角形に配設されて、異なる角度で対峙する複数のペアスリット部を有している。
【0209】
この構成によって、1枚目のスリットから漏れた電磁界や1枚目の導電シートを通過した電磁界、つまり、2次放射分の電磁波のエネルギーを効率よく遮蔽できる。これにより、CPU等から放射された電磁波のエネルギーを二重に軽減できる二重遮蔽構造の電磁波遮蔽具を提供できるようになった。
【0210】
なお、1枚目の導電シート111aのペアスリット部による三角形と、2枚目の導電シート111cのペアスリット部による三角形とが、互いに異なる角度で対峙するので、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、1枚目の導電シート111aから漏洩した電磁波のエネルギーが、2枚目の導電シート111cでペアスリット部に遮蔽される。これによって、電界の多くを軽減できる。
【0211】
また、ペアスリット部112〜114及びペアスリット部115〜117が其々が一辺を成す三角形に配設されている。この構成によって、導電シート111a及び111cの各位置で、導電シートを伝搬する電磁波を減衰できるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品又はプリント基板に応用する場合にも効率よく電磁波を遮蔽できる。
【0212】
また、ペアスリット部112〜114及びペアスリット部115〜117が、同一の導電シートで平行に配置されないので、ペアスリット部同士の干渉を防止できる。加えて、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【実施例12】
【0213】
図18は、この発明の第12の実施例としての電磁波遮蔽シート120の構成例を示す図である。図18に示す電磁波遮蔽シート120は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート121a,121c、絶縁シート121b、ペアスリット部122〜127を備えている。電磁波遮蔽シート120は、互いに絶縁されて重ねられた導電シート121a及び121cによる二重遮蔽構造を有する。導電シート121a及び121cの各々は、縮小三角形状に配設された3組のペアスリット部を有し、2枚の導電シートに構成された縮小三角形が異なる角度で対峙するようになされる。
【0214】
電磁波遮蔽シート120は、CPU等に例えば貼付されてCPU等から放射される電磁波を遮蔽するものである。電磁波遮蔽シート120はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。
【0215】
電磁波遮蔽シート120の外形を構成する導電シート121a及び導電シート121cには、各々、一対の長孔であるペアスリット部が、複数、ここでは3組開孔されている。1枚目の導電シート121aにはペアスリット部122〜124が開孔され、2枚目の導電シート121cにはペアスリット部125〜127が開孔されている。
【0216】
また、この例のペアスリット部122〜124及びペアスリット部125〜127は、導電シート121a又は121cに、其々が一辺を成す縮小三角形状に配設される。ここで、縮小三角形状とは、三角形の対辺に相当する2組のペアスリット部のうち、一方のペアスリット部が、他方のペアスリット部に対して、一端部が突出するように配置された三角形である。縮小三角形状は、同時に回転放射状の三角形を構成する。ペアスリット部122〜124は互いに分離し、ペアスリット部125〜127は互いに分離している。
【0217】
また、導電シート121a及び導電シート121cに形成されたペアスリット部による縮小三角形は、互いに異なる角度で対峙している。この例では、導電シート121aの上面に形成された縮小三角形に対して、導電シート121cの上面に形成された縮小三角形が、ペアスリット部127に平行な中心線を対称軸とする線対称になされる。
【0218】
1枚目の導電シート121aは導電性の第1の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート121aは、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成されてCPU等の上面に接着される。導電シート121aは、CPU等の側の1枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。また導電シート121aは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0219】
1枚目の導電シート121aに開孔されたペアスリット部122〜124は、ペアスリット部122が一対のスリット122a及び122bで成り、ペアスリット部123が一対のスリット123a及び123bで成り、ペアスリット部124が一対のスリット124a及び124bで成る。ペアスリット部122〜124は、導電シート121aに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0220】
また、各々のペアスリット部122〜124は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部122のスリット122a及び122bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート121aに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部123及び124も各々並行する2本のスリットで成る。
【0221】
導電シート121aでは、複数のペアスリット部122〜124の各々で、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部122では、スリット122a及び122bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部122〜124が配設された導電シート121aの各位置で、電磁波のエネルギーが減衰する。
【0222】
導電シート121aの他方の全面には、絶縁シート121bが接着される。絶縁シート121bは、絶縁部材の一例を構成し、アクリル性の接着剤、樹脂等の絶縁性の部材で構成される。
【0223】
絶縁シート121bを介して、2枚目の導電シート121cが設けられる。導電シート121cは導電性の第2の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、導電シート121aの他方の面と対峙して配設される。導電シート121cは、例えば、絶縁シート121bの側の一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成される。導電シート121cは2枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。導電シート121cは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0224】
2枚目の導電シート121cに開孔されたペアスリット部125〜127は、ペアスリット部125が一対のスリット125a及び125bで成り、ペアスリット部126が一対のスリット126a及び126bで成り、ペアスリット部127が一対のスリット127a及び127bで成る。ペアスリット部125〜127は、導電シート121cに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0225】
ペアスリット部125〜127の各々は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部125のスリット125a及び125bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート121cに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部126及び127も並行する2本のスリットで成る。
【0226】
導電シート121cでは、複数のペアスリット部125〜127の各々で、電磁波のエネルギーが電気エネルギーに変換され、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部126では、スリット126a及び126bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部125〜127が配設された導電シート121cの各位置で、電磁波のエネルギーから変換された電気エネルギーが減衰する。以上のように導電シート121cが構成される。以下で、電磁波遮蔽シート120の製造方法について説明をする。
【0227】
電磁波遮蔽シート120は、第8の実施例の電磁波遮蔽シート80と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート120を製造するには、まず、金属シート16、接着剤G2’及びメタルシートM2’等の原料となる部材と、電磁波遮蔽シート120用の抜き型とを準備する。
【0228】
電磁波遮蔽シート120用の抜き型としては、ペアスリット部122〜124を一時に抜き出せるものと、ペアスリット部125〜127を一時に抜き出せるものと、電磁波遮蔽シート120の外縁部を抜き出せるものとを準備する。
【0229】
所定の部材と電磁波遮蔽シート120用の抜き型は準備できたら、図13A〜Eに示した工程を電磁波遮蔽シート120用の抜き型を用いて実行する。こうして、電磁波遮蔽シート120が連続して貼付されたロール状のシートを製造できる。
【0230】
製造した電磁波遮蔽シート120をCPU1に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート120を剥離シートF1’から剥がし、CPU1の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート120がCPU1より大きい外形を有していると、CPU1の全面を容易に覆うことができる。
【0231】
このように、この発明の第12の実施例に係る電磁波遮蔽シート120によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される1枚目の導電シート121aに、絶縁シート121bを介して対峙する2枚目の導電シート121cを備え、導電シート121a及び121cの各々が、其々が一辺を成す縮小三角形状に配設されて、異なる角度で対峙する複数のペアスリット部を有している。
【0232】
この構成によって、1枚目のスリットから漏れた電磁界や1枚目の導電シートを通過した電磁界、つまり、2次放射分の電磁波のエネルギーを効率よく遮蔽できる。これにより、CPU等から放射された電磁波のエネルギーを二重に軽減できる二重遮蔽構造の電磁波遮蔽具を提供できるようになった。
【0233】
なお、1枚目の導電シート121aのペアスリット部による縮小三角形状と、2枚目の導電シート121cのペアスリット部による縮小三角形状とが、互いに異なる角度で対峙するので、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、1枚目の導電シート121aから漏洩した電磁波のエネルギーが、2枚目の導電シート121cでペアスリット部に遮蔽される。これによって、CPU等から上面に放射される電界の多くを軽減できる。
【0234】
また、ペアスリット部122〜124及びペアスリット部125〜127が、同一の導電シートで平行に配置されないので、ペアスリット部同士の干渉を防止できる。
【0235】
更に、回転放射形状に配設されたペアスリット部122〜124の一方の端部の延長線上に、他のペアスリット部122〜124が配されている。例えば、ペアスリット部123の一方の端部の延長線上に、ペアスリット部124が遮るように配されている。従って、導電シート121aを周回する渦電流の発生を防止できる。
【0236】
同様に、ペアスリット部125〜127の一方の端部の延長線上に、他のペアスリット部125〜127が配されているので、導電シート121cを周回する渦電流の発生を防止できる。
【0237】
更に、ペアスリット部122〜124及びペアスリット部125〜127が、導電シート121a及び121cの広い領域に配設されるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品又はプリント基板に応用する場合にも効率よく電磁波を遮蔽できる。加えて、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【実施例13】
【0238】
図19は、この発明の第13の実施例としての電磁波遮蔽シート130の構成例を示す図である。図19に示す電磁波遮蔽シート130は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート131a,131c、絶縁シート131b、ペアスリット部132〜139を備えている。電磁波遮蔽シート130は、互いに絶縁されて重ねられた導電シート131a及び131cによる二重遮蔽構造を有する。導電シート131a及び131cの各々は、十字(クロス:cross)形状に配設された4組のペアスリット部を有し、2枚の導電シートに構成された十字形状が、互いに異なる角度で対峙するようになされる。この例では、導電シート131aの十字形状と、導電シート131cの十字形状とが45°傾斜して対向する。
【0239】
電磁波遮蔽シート130は、CPU等に例えば貼付されてCPU等から放射される電磁波を遮蔽するものである。電磁波遮蔽シート130はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。
【0240】
電磁波遮蔽シート130の外形を構成する導電シート131a及び導電シート131cには、各々、一対の長孔であるペアスリット部が、複数、ここでは4組開孔されている。1枚目の導電シート131aにはペアスリット部132〜135が開孔され、2枚目の導電シート131cにはペアスリット部136〜139が開孔されている。
【0241】
また、この例のペアスリット部132〜135及びペアスリット部136〜139は、導電シート131a又は131cに、其々が一辺を成す十字形状に配設される。ここで十字形状とは、4組のペアスリット部の一方の端部が中心部で隣設し、他方の端部が放射されて成る十字形状をいう。回転方向に隣設されるペアスリット部同士はL字状を成す。個々のペアスリット部は互いに分離している。
【0242】
また、導電シート131a及び導電シート131cに形成された十字形状は、互いに異なる角度で対峙している。この例では、導電シート131aの上面の十字形状に対して、導電シート131cの上面の十字形状が45°傾斜している。
【0243】
1枚目の導電シート131aは導電性の第1の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート131aは、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成されてCPU等の上面に接着される。導電シート131aは、CPU等の側の1枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。また導電シート131aは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0244】
1枚目の導電シート131aに開孔されたペアスリット部132〜135は、ペアスリット部132が一対のスリット132a及び132bで成り、ペアスリット部133が一対のスリット133a及び133bで成り、ペアスリット部134が一対のスリット134a及び134bで成り、ペアスリット部135が一対のスリット135a及び135bで成る。ペアスリット部132〜135は、導電シート131aに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0245】
また、各々のペアスリット部132〜135は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部132のスリット132a及び132bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート131aに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部133〜135も各々並行する2本のスリットで成る。
【0246】
導電シート131aでは、複数のペアスリット部132〜135の各々で、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部132では、スリット132a及び132bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部132〜135が配設された導電シート131aの各位置で、電磁波のエネルギーが減衰する。
【0247】
導電シート131aの他方の全面には、絶縁シート131bが接着される。絶縁シート131bは、絶縁部材の一例を構成し、アクリル性の接着剤、樹脂等の絶縁性の部材で構成される。
【0248】
絶縁シート131bを介して、2枚目の導電シート131cが設けられる。導電シート131cは導電性の第2の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、導電シート131aの他方の面と対峙して配設される。導電シート131cは、例えば、絶縁シート131bの側の一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成される。導電シート131cは2枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。導電シート131cは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0249】
2枚目の導電シート131cに開孔されたペアスリット部136〜139は、ペアスリット部136が一対のスリット136a及び136bで成り、ペアスリット部137が一対のスリット137a及び137bで成り、ペアスリット部138が一対のスリット138a及び138bで成り、ペアスリット部139が一対のスリット139a及び139bで成る。ペアスリット部136〜139は、導電シート131cに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0250】
ペアスリット部136〜139の各々は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部136のスリット136a及び136bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート131cに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部137〜139も並行する2本のスリットで成る。
【0251】
導電シート131cでは、複数のペアスリット部136〜139の各々で、電磁波のエネルギーが電気エネルギーに変換され、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部136では、スリット136a及び136bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部136〜139が配設された導電シート131cの各位置で、電磁波のエネルギーから変換された電気エネルギーが減衰する。以上のように導電シート131cが構成される。以下で、電磁波遮蔽シート130の製造方法について説明をする。
【0252】
電磁波遮蔽シート130は、第8の実施例の電磁波遮蔽シート80と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート130を製造するには、まず、金属シート16、接着剤G2’及びメタルシートM2’等の原料となる部材と、電磁波遮蔽シート130用の抜き型とを準備する。
【0253】
電磁波遮蔽シート130用の抜き型としては、ペアスリット部132〜135を一時に抜き出せるものと、ペアスリット部136〜139を一時に抜き出せるものと、電磁波遮蔽シート130の外縁部を抜き出せるものとを準備する。
【0254】
所定の部材と電磁波遮蔽シート130用の抜き型は準備できたら、図13A〜Eに示した工程を電磁波遮蔽シート130用の抜き型を用いて実行する。こうして、電磁波遮蔽シート130が連続して貼付されたロール状のシートを製造できる。
【0255】
製造した電磁波遮蔽シート130をCPU1に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート130を剥離シートF1’から剥がし、CPU1の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート130がCPU1より大きい外形を有していると、CPU1の全面を容易に覆うことができる。
【0256】
このように、この発明の第13の実施例に係る電磁波遮蔽シート130によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される1枚目の導電シート131aに、絶縁シート131bを介して対峙する2枚目の導電シート131cを備え、導電シート131a及び131cの各々が、其々が一辺を成す十字形状に配設された複数のペアスリット部を有し、ペアスリット部で構成される十字形状が異なる角度で対峙している。
【0257】
この構成によって、1枚目のスリットから漏れた電磁界や1枚目の導電シートを通過した電磁界、つまり、2次放射分の電磁波のエネルギーを効率よく遮蔽できる。これにより、CPU等から放射された電磁波のエネルギーを二重に軽減できる二重遮蔽構造の電磁波遮蔽具を提供できるようになった。
【0258】
なお、1枚目の導電シート131aの十字形状と、2枚目の導電シート131cの十字形状とが、互いに異なる角度、ここでは略45°傾斜して対峙するので、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、1枚目の導電シート131aから漏洩した電磁波のエネルギーが2枚目の導電シート131cのペアスリット部に効率よく遮蔽される。また、ペアスリット部同士が並行していないので、ペアスリット部同士による干渉を防止できる。
【0259】
更に、ペアスリット部132〜135及びペアスリット部136〜139が、導電シート131a及び131cの広い領域に配設されるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品又はプリント基板に応用する場合にも効率よく電磁波を遮蔽できる。加えて、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を増加させず、簡単な工程で装着可能である。
【実施例14】
【0260】
図20は、この発明の第14の実施例としての電磁波遮蔽シート140の構成例を示す図である。図20に示す電磁波遮蔽シート140は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート141a,141c、絶縁シート141b、ペアスリット部142〜149を備えている。電磁波遮蔽シート140は、互いに絶縁されて重ねられた導電シート141a及び141cによる二重遮蔽構造を有する。
【0261】
CPU等の側の1枚目の導電シート141aは、四角形状に配設された4組のペアスリット部を有し、表層側の2枚目の導電シート141cは、十字形状に配設された4組のペアスリット部を有している。導電シート141aのペアスリット部と、導電シート141cのペアスリット部とは、互いに異なる形状に配設されている。
【0262】
電磁波遮蔽シート140は、CPU等に例えば貼付されてCPU等から放射される電磁波を遮蔽するものである。電磁波遮蔽シート140はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。
【0263】
電磁波遮蔽シート140の外形を構成する導電シート141a及び導電シート141cには、各々、一対の長孔であるペアスリット部が、複数、ここでは4組開孔されている。1枚目の導電シート141aにはペアスリット部142〜145が四角形に開孔され、2枚目の導電シート141cにはペアスリット部146〜149が十字形状に開孔されている。個々のペアスリット部は互いに分離している。また、導電シート141aの四角形状と、導電シート141cの十字形状とは、互いに異なる角度、この例では45°傾斜して配置される。また、導電シート141aの四角形状と、導電シート141cの十字形状とは、互いに重なることなく異なる位置に配設されている。
【0264】
1枚目の導電シート141aは導電性の第1の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート141aは、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成されてCPU等の上面に接着される。導電シート141aは、CPU等の側の1枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。また導電シート141aは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0265】
1枚目の導電シート141aに四角形に開孔されたペアスリット部142〜145は、ペアスリット部142が一対のスリット142a及び142bで成り、ペアスリット部143が一対のスリット143a及び143bで成り、ペアスリット部144が一対のスリット144a及び144bで成り、ペアスリット部145が一対のスリット145a及び145bで成る。ペアスリット部142〜145は、導電シート141aに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0266】
ペアスリット部142〜145の各々は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部142のスリット142a及び142bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート141aに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部143〜145も各々並行する2本のスリットで成る。
【0267】
導電シート141aでは、四角形に配設されたペアスリット部142〜145の各々で、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部142では、スリット142a及び142bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部142〜145が配設された導電シート141aの各位置で、電磁波のエネルギーが減衰する。
【0268】
ところで、導電シート141aでは、ペアスリット部142とペアスリット部144とが平行に配設され、ペアスリット部143とペアスリット部145とが平行に配設される。この場合、互いに平行なペアスリット部同士が干渉しあい、電磁波や電気信号の発振、増幅等の原因となるおそれがある。
【0269】
これを防止するため、平行なペアスリット部同士、例えば、ペアスリット部142とペアスリット部144との距離を、電磁波の波長λの1/4(λ/4)の整数倍でない長さに設定するとよい。例えば、波長λが0.375m程度である場合、ペアスリット部142とペアスリット部144との距離は、例えば0.0075m(λ/50)に設定する。このように互いに平行なペアスリット部の離間距離を設定することにより、電界、磁界、電圧、電流等の干渉を防止できるようになる。
【0270】
導電シート141aの他方の全面には、絶縁シート141bが接着される。絶縁シート141bは、絶縁部材の一例を構成し、アクリル性の接着剤、樹脂等の絶縁性の部材で構成される。
【0271】
絶縁シート141bを介して、2枚目の導電シート141cが設けられる。導電シート141cは導電性の第2の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、導電シート141aの他方の面と対峙して配設される。導電シート141cは、例えば、絶縁シート141bの側の一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成される。導電シート141cは2枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。導電シート141cは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0272】
2枚目の導電シート141cに十字に開孔されたペアスリット部146〜149は、ペアスリット部146が一対のスリット146a及び146bで成り、ペアスリット部147が一対のスリット147a及び147bで成り、ペアスリット部148が一対のスリット148a及び148bで成り、ペアスリット部149が一対のスリット149a及び149bで成る。ペアスリット部146〜149は、導電シート141cに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0273】
ペアスリット部146〜149の各々は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部146のスリット146a及び146bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート141cに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部147〜149も並行する2本のスリットで成る。
【0274】
導電シート141cでは、十字形状に配設されたペアスリット部146〜149の各々で、電磁波のエネルギーが電気エネルギーに変換され、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部146では、スリット146a及び146bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部146〜149が配設された導電シート141cの各位置で、電磁波のエネルギーから変換された電気エネルギーが減衰する。以上のように導電シート141cが構成される。以下で、電磁波遮蔽シート140の製造方法について説明をする。
【0275】
電磁波遮蔽シート140は、第8の実施例の電磁波遮蔽シート80と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート140を製造するには、まず、金属シート16、接着剤G2’及びメタルシートM2’等の原料となる部材と、電磁波遮蔽シート140用のの抜き型とを準備する。
【0276】
電磁波遮蔽シート140用の抜き型としては、ペアスリット部142〜145を一時に抜き出せるものと、ペアスリット部146〜149を一時に抜き出せるものと、電磁波遮蔽シート140の外縁部を抜き出せるものとを準備する。
【0277】
所定の部材と電磁波遮蔽シート140用の抜き型は準備できたら、図13A〜Eに示した工程を電磁波遮蔽シート140用の抜き型を用いて実行する。こうして、電磁波遮蔽シート140が連続して貼付されたロール状のシートを製造できる。
【0278】
製造した電磁波遮蔽シート140をCPU1に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート140を剥離シートF1’から剥がし、CPU1の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート140がCPU1より大きい外形を有していると、CPU1の全面を容易に覆うことができる。
【0279】
このように、この発明の第14の実施例に係る電磁波遮蔽シート140によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される1枚目の導電シート141aに、絶縁シート141bを介して対峙する2枚目の導電シート141cを備え、導電シート141a及び141cが、異なる形状に配設された複数のペアスリット部を有して対峙している。
【0280】
この構成によって、1枚目のスリットから漏れた電磁界や1枚目の導電シートを通過した電磁界、つまり、2次放射分の電磁波のエネルギーを効率よく遮蔽できる。これにより、CPU等から放射された電磁波のエネルギーを二重に軽減できる二重遮蔽構造の電磁波遮蔽具を提供できるようになった。
【0281】
なお、1枚目の導電シート141aの四角形状と、2枚目の導電シート141cの十字形状とが、互いに異なる角度、ここでは略45°傾斜して対峙するので、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、1枚目の導電シート141aから漏洩した電磁波のエネルギーが2枚目の導電シート141cのペアスリット部に効率よく遮蔽される。
【0282】
更に、ペアスリット部142〜145及びペアスリット部146〜149が、互いに重なることなく配設され、導電シート141a及び141cの広い領域に配置されるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品又はプリント基板に応用する場合にも効率よく電磁波を遮蔽できる。加えて、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【実施例15】
【0283】
図21は、この発明の第15の実施例としての電磁波遮蔽シート150の構成例を示す図である。図21に示す電磁波遮蔽シート150は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート151a,151c、絶縁シート151b、ペアスリット部152〜159を備えている。電磁波遮蔽シート150は、互いに絶縁されて重ねられた導電シート151a及び151cによる二重遮蔽構造を有する。
【0284】
CPU等の側の1枚目の導電シート151aは、縮小四角形状に配設された4組のペアスリット部を有し、表層側の2枚目の導電シート151cは、十字形状に配設された4組のペアスリット部を有している。導電シート151aのペアスリット部と、導電シート151cのペアスリット部とは、互いに異なる形状に配設されて、対峙するようになされる。
【0285】
電磁波遮蔽シート150は、CPU等に例えば貼付されてCPU等から放射される電磁波を遮蔽するものである。電磁波遮蔽シート150はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。
【0286】
電磁波遮蔽シート150の外形を構成する導電シート151a及び導電シート151cの各々には、一対の長孔であるペアスリット部が、複数、ここでは4組開孔されている。1枚目の導電シート151aにはペアスリット部152〜155が縮小四角形状に開孔され、2枚目の導電シート151cにはペアスリット部156〜159が十字に開孔されている。個々のペアスリット部は互いに分離している。また、導電シート151aの縮小四角形状と、導電シート151cの十字形状とは、互いに異なる角度、この例では45°傾斜して配置される。
【0287】
1枚目の導電シート151aは導電性の第1の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート151aは、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成されてCPU等の上面に接着される。導電シート151aは、CPU等の側の1枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。また導電シート151aは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0288】
1枚目の導電シート151aに縮小四角形状に開孔されたペアスリット部152〜155は、ペアスリット部152が一対のスリット152a及び152bで成り、ペアスリット部153が一対のスリット153a及び153bで成り、ペアスリット部154が一対のスリット154a及び154bで成り、ペアスリット部155が一対のスリット155a及び155bで成る。ペアスリット部152〜155は、導電シート151aに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0289】
ペアスリット部152〜155の各々は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部152のスリット152a及び152bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート151aに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部153〜155も各々並行する2本のスリットで成る。
【0290】
導電シート151aでは、縮小四角形状に配設されたペアスリット部152〜155の各々で、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部152では、スリット152a及び152bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部152〜155が配設された導電シート151aの各位置で、電磁波のエネルギーが減衰する。
【0291】
ところで、導電シート151aでは、ペアスリット部152とペアスリット部154とが平行に配設され、ペアスリット部153とペアスリット部155とが平行に配設される。この場合、互いに平行なペアスリット部同士が干渉しあい、電磁波や電気信号の発振、増幅等の原因となるおそれがある。
【0292】
これを防止するため、平行なペアスリット部同士、例えば、ペアスリット部152とペアスリット部154との距離を、電磁波の波長λの1/4(λ/4)の整数倍でない長さに設定するとよい。例えば、波長λが0.375m程度である場合、ペアスリット部152とペアスリット部154との距離は、例えば0.0075m(λ/50)に設定する。このように互いに平行なペアスリット部の離間距離を設定することにより、電界、磁界、電圧、電流等の干渉を防止できるようになる。
【0293】
導電シート151aの他方の全面には、絶縁シート151bが接着される。絶縁シート151bは、絶縁部材の一例を構成し、アクリル性の接着剤、樹脂等の絶縁性の部材で構成される。
【0294】
絶縁シート151bを介して、2枚目の導電シート151cが設けられる。導電シート151cは導電性の第2の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、導電シート151aの他方の面と対峙して配設される。導電シート151cは、例えば、絶縁シート151bの側の一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成される。導電シート151cは2枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。導電シート151cは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0295】
2枚目の導電シート151cに十字に開孔されたペアスリット部156〜159は、ペアスリット部156が一対のスリット156a及び156bで成り、ペアスリット部157が一対のスリット157a及び157bで成り、ペアスリット部158が一対のスリット158a及び158bで成り、ペアスリット部159が一対のスリット159a及び159bで成る。ペアスリット部156〜159は、導電シート151cに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0296】
ペアスリット部156〜159の各々は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部156のスリット156a及び156bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート151cに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部157〜159も並行する2本のスリットで成る。
【0297】
導電シート151cでは、十字に配設されたペアスリット部156〜159の各々で、電磁波のエネルギーが電気エネルギーに変換され、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部156では、スリット156a及び156bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部156〜159が配設された導電シート151cの各位置で、電磁波のエネルギーから変換された電気エネルギーが減衰する。以上のように導電シート151cが構成される。以下で、電磁波遮蔽シート150の製造方法について説明をする。
【0298】
電磁波遮蔽シート150は、第8の実施例の電磁波遮蔽シート80と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート150を製造するには、まず、金属シート16、接着剤G2’及びメタルシートM2’等の原料となる部材と、電磁波遮蔽シート150用の抜き型とを準備する。
【0299】
電磁波遮蔽シート150用の抜き型としては、ペアスリット部152〜155を一時に抜き出せるものと、ペアスリット部156〜159を一時に抜き出せるものと、電磁波遮蔽シート150の外縁部を抜き出せるものとを準備する。
【0300】
所定の部材と電磁波遮蔽シート150用の抜き型は準備できたら、図13A〜Eに示した工程を電磁波遮蔽シート150用の抜き型を用いて実行する。こうして、電磁波遮蔽シート150が連続して貼付されたロール状のシートを製造できる。
【0301】
製造した電磁波遮蔽シート150をCPU1に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート150を剥離シートF1’から剥がし、CPU1の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート150がCPU1より大きい外形を有していると、CPU1の全面を容易に覆うことができる。
【0302】
このように、この発明の第15の実施例に係る電磁波遮蔽シート150によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される1枚目の導電シート151aに、絶縁シート151bを介して対峙する2枚目の導電シート151cを備え、導電シート151a及び151cが、異なる形状に配設された複数のペアスリット部を有して対峙している。
【0303】
この構成によって、1枚目のスリットから漏れた電磁界や1枚目の導電シートを通過した電磁界、つまり、2次放射分の電磁波のエネルギーを効率よく遮蔽できる。これにより、CPU等から放射された電磁波のエネルギーを二重に軽減できる二重遮蔽構造の電磁波遮蔽具を提供できるようになった。
【0304】
なお、1枚目の導電シート151aの縮小四角形状と、2枚目の導電シート151cの十字形状とが、互いに異なる角度、ここでは略45°傾斜して対峙するので、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、1枚目の導電シート151aから漏洩した電磁波のエネルギーが2枚目の導電シート151cのペアスリット部に効率よく遮蔽される。
【0305】
更に、ペアスリット部152〜155及びペアスリット部156〜159が、導電シート151a及び151cの広い領域に配設されるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品又はプリント基板に応用する場合にも効率よく電磁波を遮蔽できる。加えて、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【実施例16】
【0306】
図22は、この発明の第16の実施例としての電磁波遮蔽シート160の構成例を示す図である。図22に示す電磁波遮蔽シート160は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート161a,161c、絶縁シート161b、ペアスリット部162〜169を備えている。電磁波遮蔽シート160は、互いに絶縁されて重ねられた導電シート161a及び161cによる二重遮蔽構造を有する。
【0307】
CPU等の側の1枚目の導電シート161aは、円形状に配設された4組の弧形状のペアスリット部を有し、表層側の2枚目の導電シート161cは、十字形状に配設された4組のペアスリット部を有している。導電シート161aのペアスリット部と、導電シート161cのペアスリット部とは、互いに異なる形状で配設されて対峙している。
【0308】
電磁波遮蔽シート160は、CPU等に例えば貼付されてCPU等から放射される電磁波を遮蔽するものである。電磁波遮蔽シート160はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。
【0309】
電磁波遮蔽シート160の外形を構成する導電シート161a及び導電シート161cには、各々、一対の長孔であるペアスリット部が、複数、ここでは4組開孔されている。1枚目の導電シート161aには、湾曲した弧形状のペアスリット部162〜165が円形状に配置され、2枚目の導電シート161cには、ペアスリット部166〜169が十字に配置されている。個々のペアスリット部は互いに分離している。また、導電シート161aの円形状と、導電シート161cの十字形状とは、この例では、互いに重ならないような異なる位置に配置される。
【0310】
1枚目の導電シート161aは導電性の第1の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート161aは、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成されてCPU等の上面に接着される。導電シート161aは、CPU等の側の1枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。また導電シート161aは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0311】
1枚目の導電シート161aに円形に配置された、弧形状の開孔部であるペアスリット部162〜165は、ペアスリット部162が一対のスリット162a及び162bで成り、ペアスリット部163が一対のスリット163a及び163bで成り、ペアスリット部164が一対のスリット164a及び164bで成り、ペアスリット部165が一対のスリット165a及び165bで成る。ペアスリット部162〜165は、導電シート161aに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0312】
ペアスリット部162〜165は、各々、弧形状の湾曲した2本のスリットから構成される。例えば、ペアスリット部162のスリット162a及び162bは、同心円状に配置されて互いに並行する。外側のスリット162aの長さは、内側のスリット162bの長さよりも長く設定される。同様に、ペアスリット部163〜165も並行する2本の湾曲したスリットから成る。
【0313】
導電シート161aでは、円形に配設されたペアスリット部162〜165の各々で、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部162では、スリット162a及び162bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部162〜165が配設された導電シート161aの外周部側の各位置で、電磁波のエネルギーが減衰する。
【0314】
導電シート161aの他方の全面には、絶縁シート161bが接着される。絶縁シート161bは、絶縁部材の一例を構成し、アクリル性の接着剤、樹脂等の絶縁性の部材で構成される。
【0315】
絶縁シート161bを介して、2枚目の導電シート161cが設けられる。導電シート161cは導電性の第2の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、導電シート161aの他方の面と対峙して配設される。導電シート161cは、例えば、絶縁シート161bの側の一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成される。導電シート161cは2枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。導電シート161cは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0316】
2枚目の導電シート161cに十字に開孔されたペアスリット部166〜169は、ペアスリット部166が一対のスリット166a及び166bで成り、ペアスリット部167が一対のスリット167a及び167bで成り、ペアスリット部168が一対のスリット168a及び168bで成り、ペアスリット部169が一対のスリット169a及び169bで成る。ペアスリット部166〜169は、導電シート161cに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0317】
ペアスリット部166〜169の各々は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部166のスリット166a及び166bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート161cに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部167〜169も並行する2本のスリットで成る。
【0318】
導電シート161cでは、十字に配設されたペアスリット部166〜169の各々で、電磁波のエネルギーが電気エネルギーに変換され、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部166では、スリット166a及び166bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部166〜169が配設された導電シート161cの中心部側の各位置で、電磁波のエネルギーから変換された電気エネルギーが減衰する。以上のように導電シート161cが構成される。以下で、電磁波遮蔽シート160の製造方法について説明をする。
【0319】
電磁波遮蔽シート160は、第8の実施例の電磁波遮蔽シート80と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート160を製造するには、まず、金属シート16、接着剤G2’及びメタルシートM2’等の原料となる部材と、電磁波遮蔽シート160用の抜き型とを準備する。
【0320】
電磁波遮蔽シート160用の抜き型としては、ペアスリット部162〜165を一時に抜き出せるものと、ペアスリット部166〜169を一時に抜き出せるものと、電磁波遮蔽シート160の外縁部を抜き出せるものとを準備する。
【0321】
所定の部材と電磁波遮蔽シート160用の抜き型は準備できたら、図13A〜Eに示した工程を電磁波遮蔽シート160用の抜き型を用いて実行する。こうして、電磁波遮蔽シート160が連続して貼付されたロール状のシートを製造できる。
【0322】
製造した電磁波遮蔽シート160をCPU1に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート160を剥離シートF1’から剥がし、CPU1の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート160がCPU1より大きい外形を有していると、CPU1の全面を容易に覆うことができる。
【0323】
このように、この発明の第16の実施例に係る電磁波遮蔽シート160によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される1枚目の導電シート161aに、絶縁シート161bを介して対峙する2枚目の導電シート161cを備え、導電シート161a及び161cが、異なる形状で配設された複数のペアスリット部を有して対峙している。
【0324】
この構成によって、1枚目のスリットから漏れた電磁界や1枚目の導電シートを通過した電磁界、つまり、2次放射分の電磁波のエネルギーを効率よく遮蔽できる。これにより、CPU等から放射された電磁波のエネルギーを二重に軽減できる二重遮蔽構造の電磁波遮蔽具を提供できるようになった。
【0325】
なお、1枚目の導電シート161aの円形状と、2枚目の導電シート161cの十字形状とが、互いに異なる位置に配置されているので、各ペアスリット部が、各々の方向性を持った電界及び磁界に対応することができる。更に、1枚目の導電シート161aから漏洩した電磁波のエネルギーが2枚目の導電シート161cのペアスリット部に効率よく遮蔽される。
【0326】
更に、ペアスリット部162〜165及びペアスリット部166〜169が、導電シート161a及び161cの広い領域に配設されるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品又はプリント基板に応用する場合にも効率よく電磁波を遮蔽できる。加えて、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上におけるCPU等の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着可能である。
【実施例17】
【0327】
図23は、この発明の第17の実施例としての電磁波遮蔽シート170の構成例を示す図である。図23に示す電磁波遮蔽シート170は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート171a,171c、絶縁シート171b、ペアスリット部172〜179を備えている。電磁波遮蔽シート170は、互いに絶縁されて重ねられた導電シート171a及び171cによる二重遮蔽構造を有する。
【0328】
導電シート171a及び171cの各々は、縮小四角形状に配設された4組のペアスリット部を有し、ペアスリット部で構成された縮小四角形状が、互いに略45°の傾斜角度を有して対峙するようになされる。
【0329】
電磁波遮蔽シート170は、CPU等に例えば貼付されてCPU等から放射される電磁波を遮蔽するものである。電磁波遮蔽シート170はCPU等を覆うのに適した外形、例えば、CPU等より少し大きい外形、又は、CPU等と略同等の外形に設定される。
【0330】
電磁波遮蔽シート170の外形を構成する導電シート171a及び導電シート171cには、各々、一対の長孔であるペアスリット部が、複数、ここでは4組開孔されている。1枚目の導電シート171aにはペアスリット部172〜175が開孔され、2枚目の導電シート171cにはペアスリット部176〜179が開孔されている。
【0331】
ペアスリット部172〜175は、導電シート171aに、其々が一辺を成す縮小四角形状に配設されている。ここでいう縮小四角形状とは、ペアスリット部同士が互いに略直角に配されて、直角の対辺を成す2組のペアスリット部の一方が、他方に対して端部を突出することで、ペアスリット部に囲まれた四角形状が縮小される形状をいう。同様に、ペアスリット部176〜179は、導電シート171cに、其々が一辺を成す縮小四角形状に配設されている。また、縮小四角形状の四角形は、回転放射形状の四角形ともいえる。ここでいう回転放射形状とは、複数のペアスリット部(一辺)が、所定の角度で傾斜して円形に配置されたかざぐるま型の風車羽状をいう。
【0332】
また、導電シート171a及び導電シート171cにペアスリット部で形成される縮小四角形状は、互いに異なる角度で対峙するように配設されている。この例では、導電シート171aのペアスリット部172〜175が成す縮小四角形状に対して、導電シート171cのペアスリット部176〜179が成す縮小四角形状が、所定の角度、ここでは略45°傾斜している。ペアスリット部172〜179が透過して互いに重ね合わせられると、8組のペアスリット部で成る回転放射形状を構成する。
【0333】
1枚目の導電シート171aは導電性の第1の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、一方の面をCPU等に対峙して配設される。導電シート171aは、例えば、CPU等と対峙する一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成されてCPU等の上面に接着される。導電シート171aは、CPU等の側の1枚目の遮蔽層を構成し、CPU等の上面から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。また導電シート171aは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0334】
1枚目の導電シート171aに開孔されたペアスリット部172〜175は、ペアスリット部172が一対のスリット172a及び172bで成り、ペアスリット部173が一対のスリット173a及び173bで成り、ペアスリット部174が一対のスリット174a及び174bで成り、ペアスリット部175が一対のスリット175a及び175bで成る。ペアスリット部172〜175は、導電シート171aに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0335】
また、各々のペアスリット部172〜175は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部172のスリット172a及び172bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート171aに貫通開孔されて並行する。ペアスリット部173〜175も並行する2本のスリットで成る。
【0336】
また、この例のペアスリット部172〜175は、導電シート171aに、其々が一辺を成す縮小四角形状に配設される。例えば、互いに隣設されるペアスリット部、例えば、ペアスリット部172とペアスリット部173とは、ペアスリット部172の一方の端部が、ペアスリット部173の中腹部に隣設されたT字状を成す。ペアスリット部172〜175は互いに分離している。
【0337】
導電シート171aでは、複数のペアスリット部172〜175の各々で、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部172では、スリット172a及び172bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部172〜175が配設された導電シート171aの各位置で、電磁波のエネルギーが減衰する。
【0338】
ところで、導電シート171aでは、ペアスリット部172とペアスリット部174とが平行に配設され、ペアスリット部173とペアスリット部175とが平行に配設される。この場合、互いに平行なペアスリット部同士が干渉しあい、電磁波や電気信号の発振、増幅等の原因となるおそれがある。
【0339】
これを防止するため、平行なペアスリット部同士、例えば、ペアスリット部172とペアスリット部174との距離D5を、電磁波の波長λの1/4(λ/4)の整数倍でない長さに設定するとよい。例えば、波長λが0.375m程度である場合、距離D5は、例えば0.0075m(λ/50)に設定する。このように互いに平行なペアスリット部の離間距離を設定することにより、電界、磁界、電圧、電流等の干渉を防止できる。以上のように導電シート171aが構成される。
【0340】
導電シート171aの他方の面には、全面に絶縁シート171bが接着される。絶縁シート171bは、絶縁部材の一例を構成し、アクリル性の接着剤、樹脂等の絶縁性の部材で構成される。
【0341】
絶縁シート171bを介して、2枚目の導電シート171cが設けられる。導電シート171cは導電性の第2の板部材の一例を構成し、少なくとも一対の長孔を有して、導電シート171aの他方の面と対峙して配設される。導電シート171cは、例えば、絶縁シート171bの側の一方の面に、粘着性の物質を塗布又は貼付された銅箔から構成される。導電シート171cは2枚目の遮蔽層を構成し、CPU等から放射される電磁波のエネルギーを吸収する。導電シート171cは、シールドケース、電子部品のパッケージ等に印刷形成又は一体形成することもできる。
【0342】
2枚目の導電シート171cに縮小四角形状に配設されたペアスリット部176〜179は、ペアスリット部176が一対のスリット176a及び176bで成り、ペアスリット部177が一対のスリット177a及び177bで成り、ペアスリット部178が一対のスリット178a及び178bで成り、ペアスリット部179が一対のスリット179a及び179bで成る。ペアスリット部176〜179は、導電シート171cに吸収された電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換して減衰させる機能を有する。
【0343】
ペアスリット部176〜179の各々は、図12に示したペアスリット部82と略同等に構成されて略同等の機能を有する。例えば、ペアスリット部176のスリット176a及び176bは、所定の長さ及び幅を有して導電シート171cに開孔されて並行する。ペアスリット部177〜179も並行する2本のスリットで成る。
【0344】
また、この例のペアスリット部176〜179は、導電シート171cに、其々が一辺を成す縮小四角形状に配設される。例えば、互いに隣設されるペアスリット部、例えば、ペアスリット部176とペアスリット部177とは、ペアスリット部176の一方の端部が、ペアスリット部177の中腹部に隣設されるT字状を成す。ペアスリット部176〜179は互いに分離している。
【0345】
導電シート171cでは、複数のペアスリット部176〜179の各々で、電磁波のエネルギーが電気エネルギーに変換され、電気エネルギーの分割作用及び相殺作用が起こる。例えば、ペアスリット部176では、スリット176a及び176bに、互いに対向する電圧及び電流が発生して相殺される。このようにして、ペアスリット部176〜179が配設された導電シート171cの各位置で、電磁波のエネルギーから変換された電気エネルギーが減衰する。
【0346】
ところで、導電シート171cでは、ペアスリット部176とペアスリット部178とが平行に配設され、ペアスリット部177とペアスリット部179とが平行に配設される。この場合、互いに平行なペアスリット部同士が干渉しあい、電磁波や電気信号の発振、増幅等の原因となるおそれがある。
【0347】
これを防止するため、平行なペアスリット部同士、例えばペアスリット部177とペアスリット部179との距離を、電磁波の波長λの1/4(λ/4)の整数倍でない長さに設定するとよい。例えば、波長λが0.375m程度である場合、ペアスリット部177とペアスリット部179との距離は、例えば0.0075m(λ/50)に設定する。このように互いに平行なペアスリット部の離間距離を設定することにより、電界、磁界、電圧、電流等の干渉を防止できる。以上のように導電シート171cが構成される。以下で、電磁波遮蔽シート170の製造方法について説明をする。
【0348】
電磁波遮蔽シート170は、第8の実施例の電磁波遮蔽シート80と同様の工程で製造することができる。電磁波遮蔽シート170を製造するには、まず、金属シート16、接着剤G2’及びメタルシートM2’等の原料となる部材と、電磁波遮蔽シート170用の抜き型とを準備する。
【0349】
電磁波遮蔽シート170用の抜き型としては、ペアスリット部172〜175を一時に抜き出せるものと、ペアスリット部176〜179を一時に抜き出せるものと、電磁波遮蔽シート170の外縁部を抜き出せるものとを準備する。
【0350】
所定の部材と電磁波遮蔽シート170用の抜き型は準備できたら、図13A〜Eに示した工程を電磁波遮蔽シート170用の抜き型を用いて実行する。こうして、電磁波遮蔽シート170が連続して貼付されたロール状のシートを製造できる。
【0351】
製造した電磁波遮蔽シート170をCPU1に装着するには、抜き出された電磁波遮蔽シート170を剥離シートF1’から剥がし、CPU1の上面に貼付するとよい。このとき、電磁波遮蔽シート170がCPU1より大きい外形を有していると、CPU1の全面を容易に覆うことができる。以上のようにして、電磁波遮蔽シート170がCPU1を対峙するようになる。以下で、電磁波遮蔽シート170の遮蔽効果について説明をする。また比較のため、第3の実施例の電磁波遮蔽シート30(図6参照)の遮蔽効果も調べる。
【0352】
図24A及びBは、電磁波遮蔽シート30及び170の装着例を示す斜視図である。この例では、それぞれの電磁波遮蔽シートをプリント基板2に実装されたIC素子3へ装着した場合を例に挙げて説明をする。また、電磁波遮蔽シートが装着されない場合と、1枚の導電シートが装着された場合と、2枚の導電シートが装着された場合とで、IC素子3から放射される電磁波を測定して遮蔽効果を比較する。
【0353】
IC素子3は電子部品の一例であり、パッケージに封入された集積回路を備えている。IC素子3は、クロック回路等の発振部を有して比較的大きいレベルの電磁波を放射するものである。IC素子3はプリント基板2に実装されて、プリント基板2上に構築された所定の回路に接続されて動作する。
【0354】
図24Aに示す電磁波遮蔽シート30は、第3の実施例で説明した1枚の導電シートで成る電磁波遮蔽具の一例であり、プリント基板2に実装されたIC素子3の上面に貼付可能な外形を有する。電磁波遮蔽シート30は、図6に示したように、導電シート31の上面に、縮小四角形状に配設されたペアスリット部32〜35を有している。
【0355】
一方、図24Bに示す電磁波遮蔽シート170は、この例の二重遮蔽構造の電磁波遮蔽具であり、プリント基板2に実装されたIC素子3の上面に貼付可能な外形を有する。電磁波遮蔽シート170は、図23に示したように導電シート171a及び171cを有している。導電シート171a及び171cの各々には、ペアスリット部172〜175、ペアスリット部176〜179が縮小四角形状に設けられ、互いに略45°傾斜して対峙している。
【0356】
電磁波遮蔽シート30又は170をIC素子3に装着するには、電磁波遮蔽シートを剥離シートから剥がし、IC素子3の上面に貼付するとよい。電磁波遮蔽シート30及び170は、プリント基板2に実装される前のIC素子3に装着してもよく、プリント基板2に実装された後のIC素子3に装着してもよい。
【0357】
またこのとき、電磁波遮蔽シート30又は170がIC素子3より大きい外形に設定されていると、IC素子3の全面を容易に覆うことができる。また、IC素子3と略同等の外形に設定されていると、IC素子3の実装面積を拡大することなく装着できる。
【0358】
図25は、測定回路4の構成例を示すブロック図である。図25に示す測定回路4は、IC素子3から放射される電磁波のレベルを測定する為に構築されるものである。測定回路4は、IC素子3が実装されたプリント基板2、電源装置5、信号発生装置6、電磁波検出装置7、プリアンプ8及びスペクトル分析装置9を備え、シールドボックス18の内外に構成される。
【0359】
シールドボックス18は電磁波遮蔽機能を備えた電磁暗箱であり、電磁波を内外で遮断するものである。シールドボックス18の中には、プリント基板2と電磁波検出装置7とが収納される。プリント基板2の上面には、IC素子3とともにIC素子3を動作させるための回路が構築されている。
【0360】
シールドボックス18は、配線を内外で導通させるコネクタ部を有し、コネクタ部を介して配線が接続可能になっている。プリント基板2には、シールドボックス18の外側に配された電源装置5及び信号発生装置6が接続される。電源装置5は、IC素子3及びその他の回路に電力を供給し、信号発生装置6は、IC素子3に所定の電気信号を出力する。
【0361】
電源装置5及び信号発生装置6から所定の電力又は電気信号が入力されると、IC素子3は所定の動作を開始し、シールドボックス18内に電磁波EM1を放射する。IC素子3の上面には、同じくシールドボックス18内に収められた電磁波検出装置7のプローブ(探針)が配されていて、IC素子3から放射される電磁波EM1の大きさを測定する。また、電磁波検出装置7の本体をシールドボックス18の外側に配置して、プローブだけをシールドボックス18の中に延在させてもよい。
【0362】
電磁波検出装置7から出力された電磁波EM1の測定データは、プリアンプ8に増幅及び波形整形されて、スペクトル分析装置9に入力される。スペクトル分析装置9は、図示しないPC等の制御装置に接続されて制御される。PC等の制御装置は、電磁波の分布図や電磁波の周波数特性を出力する。このようにして測定回路4が構成される。
【0363】
図26A〜Cは、電磁波EM1の測定例を示す分布図である。図26A〜Cに示す分布図は、測定回路4の電磁波検出装置7によって検出された、IC素子3の上面から放射される電磁波EM1の表面分布を示している。
【0364】
図26Aは、電磁波遮蔽シートが装着されない場合を示している。等値線n1〜n6は、IC素子3の上面から放射される電磁波EM1のレベルが等しい領域を示している。等値線n1は電磁波EM1が60dBμV程度の領域を示し、等値線n6は電磁波EM1が68dBμV程度の領域を示している。図26Aに示すように、何も装着されていないIC素子3の上面からは、等値線n6で囲まれた領域から最大の電磁波EM1(約68dBμV)が放出される。
【0365】
図26Bは、電磁波遮蔽シート30が装着された場合を示している。導電シートが1枚だけ装着されたIC素子3の上面からは、等値線n3で囲まれた領域から最大の電磁波(約63.7dBμV)が放出される。
【0366】
図26Cは、電磁波遮蔽シート170が装着された場合を示している。等値線n1’は電磁波EM1が45dBμV程度の領域を示している。導電シートを2枚装着されたIC素子3の上面からは、等値線n1’で囲まれた領域から最大の電磁波(約45dBμV)が放出される。
【0367】
以上の測定結果から、IC素子3から放射される電磁波EM1が、1枚目の導電シートによって所定量遮蔽され、2枚目の導電シートによって更に遮蔽されることがわかる。次に、IC素子3から放射される電磁波EM1の周波数成分について説明をする。
【0368】
図27A〜Cは、IC素子3の上面に設定された所定の点P1(図26参照)から放射される電磁波EM1の周波数特性を示す図である。図27A〜Cにおいて、横軸は周波数を示し、縦軸は電磁波のレベルを示している。
【0369】
図27Aは、電磁波遮蔽シートが装着されない場合の、点P1からの電磁波EM1の周波数特性を示している。図27Aに示すように、何も装着されないIC素子3から放射される電磁波EM1は、低周波から高周波に渡る広い範囲の周波数成分を有している。
【0370】
図27Bは、電磁波遮蔽シート30が装着された場合を示している。図27Bに示すように、1枚の導電シートを有する電磁波遮蔽シート30が装着されたIC素子3から放射される電磁波EM1は、低周波から高周波にかけて全体的に放射レベルが低下している。但し、ペアスリット部を通過する等して2次放射される特定の周波数成分、例えば、略330MHzの成分は抑制されずに放射されている。
【0371】
図27Cは、電磁波遮蔽シート170が装着された場合を示している。図27Cに示す電磁波EM1は、全ての周波数成分で、放射レベルが充分に抑制されている。電磁波遮蔽シート30では抑制されずに残っていた周波数成分、例えば、略330MHzの成分も遮蔽されている。以上の測定結果から、IC素子3から放射される電磁波EM1が、1枚目の導電シートによって多くの周波数成分を遮蔽され、2枚目の導電シートによって略全ての周波数成分を遮蔽されることがわかった。
【0372】
このように、この発明の第17の実施例に係る電磁波遮蔽シート170によれば、一方の面をCPU等に対峙して配設される1枚目の導電シート171aに、絶縁シート171bを介して対峙する2枚目の導電シート171cを備え、導電シート171a及び171cの各々が、其々が一辺を成す縮小四角形状に配設された複数のペアスリット部を有している。また、ペアスリット部で構成された縮小四角形状が、互いに略45°傾斜して対峙している。
【0373】
この構成によって、1枚目のペアスリット部から漏れた電磁界や1枚目の導電シートを通過した電磁界、つまり、2次放射分の電磁波のエネルギーが、2枚目の導電シートのペアスリット部に進行方向を遮られる。これにより、CPU等から放射された電磁波のエネルギーを、効率よく二重に軽減できる。
【0374】
また、導電シート171a及び171cの各位置で、導電シートを伝搬する電磁波を減衰できるので、電磁波の発生源の近くでエネルギーを減衰できる。従って、電磁波のエネルギーが大きい場合や、面積が大きい電子部品又はプリント基板に応用する場合にも効率よく電磁波を遮蔽できる。加えて、装着時に接地しなくてよいので、プリント基板上でのCPU等の装着面積を増加することなく、簡単な貼付工程で装着できる。
【0375】
なおこの例では、図23に示すように、1枚目のペアスリット部172〜175と2枚目のペアスリット部176〜179とが、互いに重なるように配設されている場合について説明をしたが、これに限られることはなく、ペアスリット部同士が重ならないように配設してもよい。
【実施例18】
【0376】
図28は、この発明の第18の実施例としての電磁波遮蔽シート170’の装着例を示す図である。この例では、外形が比較的大きく設定された二重遮蔽構造の電磁波遮蔽シート170’を、プリント基板2’に搭載された複数の電磁部品に装着する場合について説明をする。
【0377】
図28に示す電磁波遮蔽シート170’は、電磁波遮蔽具の一例を構成し、導電シート171a’,171c’、絶縁シート171b’、ペアスリット部172’〜179’を備えている。電磁波遮蔽シート170’は、互いに絶縁されて重ねられた導電シート171a’及び171c’による二重遮蔽構造を有している。電磁波遮蔽シート170’は、外形の大きさ等の他は、第17の実施例の電磁波遮蔽シート170と略同等に構成される。
【0378】
導電シート171a’及び171c’の各々は、縮小四角形状に配設された4組のペアスリット部を有し、ペアスリット部で構成された縮小四角形状が、互いに略45°傾斜して対峙するようになされる。
【0379】
一方、プリント基板2’は、IC素子3の他、IC素子26、IC素子27が実装されている。IC素子3,IC素子26,IC素子27は、発信器(クロック)、水晶発振器(クリスタル)等を備え、比較的多くの電磁波を放射する電子部品である。IC素子3,IC素子26,IC素子27は、プリント基板2’上に形成された配線によって、互いに接続されて動作する。この例の電磁波遮蔽シート170’は、IC素子3,IC素子26,IC素子27及びそれらを接続する配線を覆うように、プリント基板2’に装着される。
【0380】
この例の電磁波遮蔽シート170’は、IC素子3、IC素子26及びIC素子27の上面に貼付可能な外形に設定される。また、ペアスリット部172’〜175’及びペアスリット部176’〜179’は、第17の実施例のペアスリット部172〜175及びペアスリット部176〜179と略同等な、縮小四角形状に構成され、電磁波遮蔽シート170’の略中心部に配置される。ペアスリット部は、所定の幅及び長さを有した一対のスリットで構成され、電磁波の分割作用及び相殺作用を実現する。以上のようにして、電磁波遮蔽シート170’が構成される。
【0381】
電磁波遮蔽シート170’をプリント基板2’に装着するには、IC素子3,IC素子26,IC素子27の上面に接着剤等を貼付して、電磁波遮蔽シート170’を装着するとよい。また、電磁波遮蔽シート170’の装着面には、全面に絶縁シートを設けておいて、プリント基板2’上面の導電部との電気的接触を防止するとよい。このようにして電磁波遮蔽シート170’が、プリント基板2’と対峙するようになる。以下で、電磁波遮蔽シート170’の遮蔽効果について説明をする。
【0382】
図29A及びBは、電磁波EM1の測定例を示す分布図である。図29Aは、電磁波遮蔽シート170’が装着されない場合を示し、図29Bは、電磁波遮蔽シート170’が装着された場合を示している。
【0383】
図29Aに示す分布図は、点線で囲まれた領域A1の測定結果を示している。等値線n1〜n6は、放射される電磁波のレベルが等しい位置を示している。等値線n1は電磁波が60dBμV程度の位置を示し、等値線n6は電磁波が68dBμV程度の位置を示している。図29Aに示すように、何も装着されていないプリント基板2’の上面からは、等値線n6で囲まれた位置から最大の電磁波(約68dBμV)が放出される。
【0384】
図29Bは、電磁波遮蔽シート170’が装着された場合の測定結果を示している。等値線n1’は電磁波EM1が45dBμV程度の位置を示している。導電シートを2枚有する電磁波遮蔽シート170’が装着されたプリント基板2’の上面からは、等値線n1’で囲まれた位置から最大の電磁波(約45dBμV)が放出される。
【0385】
以上の測定結果から、プリント基板2’から放射される電磁波が、電磁波遮蔽シート170’によって充分に遮蔽されることがわかる。次に、プリント基板2’から放射される電磁波の周波数成分について説明をする。
【0386】
図30A〜Dは、プリント基板2’の上面に設定された所定の点P2及びP3(図29参照)から放射される電磁波EM1の周波数特性である。横軸は周波数を示し、縦軸は電磁波のレベルを示している。
【0387】
図30A及びBは、図29Aのように電磁波遮蔽シート170’が装着されない場合である。図30Aは、点P2から放射される電磁波の周波数分布を示し、図30Bは、点P3から放射される電磁波の周波数分布を示している。図30A及びBに示されるように、プリント基板2’の上面から放射される電磁波は、低周波から高周波に渡る広い範囲の周波数成分から成る。
【0388】
図30C及びDは、電磁波遮蔽シート170’が装着された場合である。図30Cは、点P2から放射される電磁波の周波数分布を示し、図30Dは点P3から放射される電磁波の周波数分布を示している。図30C及びDに示されるように、プリント基板2’の上面から放射される電磁波は、電磁波遮蔽シート170’により広い周波数範囲で軽減されている。以上の測定結果から、電磁波遮蔽シート170’によって、低周波から高周波にかけて、電磁波が全体的に抑制されていることがわかる。
【0389】
このように、この発明の第18の実施例に係る電磁波遮蔽シート170’によれば、プリント基板2’に実装されたIC素子3,26,27及びそれらを接続する配線を同時に覆うようになされる。この構成によって、プリント基板2’に実装された複数の電子部品からの電磁波を一の電磁波遮蔽シートで遮蔽できる。
【0390】
また、電磁波遮蔽シート170’は接地を要しないので、プリント基板2’上における電子部品の装着面積を拡大せず、簡単な工程で装着できる。
【実施例19】
【0391】
図31は、第19の実施例としてのシールドケース37aの構成例を示す概略断面図である。この例では、電磁波遮蔽シート36aをシールドケース37aに応用する場合について説明をする。
【0392】
図31に示すシールドケース37aは、プリント基板2に実装された電子部品を電磁シールドする筐体である。シールドケース37aは、CPU等の一例であるIC素子3を電磁遮蔽するようになされる。シールドケース37aは、例えば導電性の板部材や、絶縁性の樹脂等から構成される。
【0393】
シールドケース37aは電磁波遮蔽シート36aを備えている。電磁波遮蔽シート36aは、電磁波遮蔽具の一例を構成し、CPU等から放射される電磁波を吸収して減衰するものである。電磁波遮蔽シート36aには、上述の電磁波遮蔽シート10,20,30,40,50,60,70,80,90,100,110,120,130,140,150,160,170を適用できる。
【0394】
電磁波遮蔽シート36aは、シールドケース37aの内面に、例えば、接着剤で装着される。シールドケース37aの上面に装着された電磁波遮蔽シート36aは、IC素子3と対峙して、IC素子3から放射される電磁波を吸収して減衰する。
【0395】
シールドケース37aを製造するには、まず、IC素子3を電磁シールドするのに適した形状、例えば、下方のみが開口された直方体の筐体を形成する。筐体は、導電性の板部材や、絶縁性の樹脂等から形成することができる。所定形状の筐体を形成できたら、筐体の内側上面のIC素子3と対峙する位置に、電磁波遮蔽シート36aを例えば接着剤で装着する。このようにして、電磁波を吸収して減衰できるシールドケース37aを製造することができる。
【0396】
シールドケース37aは、IC素子3を内側に収納するように、プリント基板2にネジ等で固定する。電磁波遮蔽シート36aは接地を要しないので、シールドケース37aの装着面積を拡大せずに装着できる。
【0397】
このように、この発明の第19の実施例に係る電磁波遮蔽シート36aによれば、シールドケース37aに装着されてIC素子3と対峙する。従って、電磁波遮蔽シート36aがIC素子3の上面と所定の間隙を保持して対峙できるので、電磁波遮蔽シート36aに生じる熱エネルギーがIC素子3へ影響することを最小限に抑えられる。
【実施例20】
【0398】
図32は、第20の実施例としてのシールドケース37bの構成例を示す概略断面図である。この例では、電磁波遮蔽シート36bをシールドケース37bに一体に形成する場合について説明をする。
【0399】
図32に示すシールドケース37bは、プリント基板2に実装された電子部品を電磁シールドする筐体である。この例では、CPU等の一例であるIC素子3を電磁遮蔽するようになされる。シールドケース37bは、例えば導電性の板部材や、絶縁性の樹脂等から構成される。
【0400】
シールドケース37bに応用される電磁波遮蔽シート36bは、電磁波遮蔽具の一例を構成し、CPU等から放射される電磁波を吸収して減衰するものである。電磁波遮蔽シート36bには、上述の電磁波遮蔽シート10,20,30,40,50,60,70,80,90,100,110,120,130,140,150,160,170を適用できる。
【0401】
この例の電磁波遮蔽シート36bは、シールドケース37bと一体に形成される。電磁波遮蔽シート36bは、シールドケース37bの所定部に埋め込まれてIC素子3と対峙するようになされる。シールドケース37bを樹脂から製造する場合は、例えば、シールドケース37bの成型時に電磁波遮蔽シート36bを一体成形することができる。
【0402】
電磁波遮蔽シート36bと一体の樹脂製のシールドケース37bを製造するには、所定の金型と、電磁波遮蔽シート36bとを準備し、金型に電磁波遮蔽シート36bを設置した状態で樹脂を流し込んで固化するとよい。
【0403】
また、所定形状のシールドケース37bを樹脂で形成したあとで、電磁波遮蔽シート36bをシールドケース37bに印刷形成することもできる。この場合は、電磁波遮蔽シート36bをシールドケース37bの両面に印刷形成して二重遮蔽構造の電磁波遮蔽シートを容易に構成することもできる。
【0404】
また、シールドケース37bを金属製の板部材から製造する場合は、シールドケース37b本体を導電シートとして機能させて、電磁波遮蔽シート36bを構成することもできる。
【0405】
導電シート1枚で成る電磁波遮蔽シート36bを備えたシールドケース37bを製造するには、まず、金属製の板部材で、IC素子3を電磁シールドするのに適した形状、例えば、下方のみが開口された直方体の筐体を形成する。
【0406】
所定形状の筐体を準備できたら、IC素子3と対峙する位置例えば上面に、所定形状に配設されたペアスリット部を開孔する。このようにして、導電シート1枚で成る電磁波遮蔽シートを有するシールドケース37bを製造することができる。またこの場合、ペアスリット部は、シールドケース37bの上面に限らず側面に開孔してもよい。
【0407】
導電シート2枚で成る電磁波遮蔽シート36bを備えるシールドケース37bを製造するには、まず、金属製の部材で、IC素子3を電磁シールドするのに適した形状の筐体を形成する。所定の筐体を準備できたら、IC素子3と対峙する例えば上面に、所定形状に配設された第1のペアスリット部を開孔する。
【0408】
次に、IC素子3と対峙可能な所定の大きさの導電性の板部材を準備して、当該板部材に所定形状に配設された第2のペアスリット部を開孔する。
【0409】
第2のペアスリット部が開孔された板部材が準備できたら、第1のスリット部が開孔された筐体の所定部に、絶縁シートを設け、絶縁シートを介して第2のペアスリット部を有する板部材を貼付する。このとき、第1のペアスリット部と第2のペアスリット部とが対峙する角度を傾ける場合は、所定の角度で傾けて対峙させるようにする。このようにして、二重遮蔽構造の電磁波遮蔽シートを有するシールドケース37bを製造できる。
【0410】
また、金属製のシールドケース37bのうちIC素子3と対峙する所定部に、電磁波遮蔽シート36bの外形と同じ大きさの嵌合孔又は嵌合穴を形成して、別に製造した電磁波遮蔽シート36bを嵌合して、接着又は溶着することもできる。
【0411】
このように、この発明の第20の実施例に係る電磁波遮蔽シート36bによれば、シールドケース37bと一体で形成されてIC素子3と対峙する。従って、電磁波遮蔽シート36bをシールドケース37bに確実に装着できるとともに、電磁波遮蔽シート36bの貼付工程を省略できる。これにより、プリント基板2の組立工程を簡略化できる。
【0412】
また、電磁波遮蔽シート36bがIC素子3と所定の間隙を保持して対峙できるので、電磁波のエネルギーから変換された熱エネルギーによるIC素子3への影響を最小限に抑えることができる。
【実施例21】
【0413】
図33は、第21の実施例としてのICパッケージ38の構成例を示す概略断面図である。図33に示すICパッケージ38は、集積回路が構築されたシリコン等の基板を配線引出用電極とともに一体化封止するものである。この例のICパッケージ38には、電磁波遮蔽シート36cが一体で形成される。
【0414】
電磁波遮蔽シート36cは、電磁波遮蔽具の一例を構成し、CPU等から放射される電磁波を吸収して減衰する機能を備えている。電磁波遮蔽シート36cには、上述の電磁波遮蔽シート10,20,30,40,50,60,70,80,90,100,110,120,130,140,150,160,170を適用できる。
【0415】
この例の電磁波遮蔽シート36cは、例えば、パッケージの表面に印刷形成された導電性の薄膜で成る。電磁波遮蔽シート36cを備えたICパッケージ38を製造するには、ICのパッケージング工程で、導電性の薄膜を印刷する工程を実行するとよい。
【0416】
また、電磁波遮蔽シート36cを、所定の金属製の薄板で形成し、IC素子3のパッケージ形成時に埋め込んで一体形成してもよい。この場合は、例えば、セラミックやプラスチックのようなパッケージ用の樹脂の形成時に、電磁波遮蔽シート36cを同時に埋め込むようにする。この場合は、IC素子3と対峙する表層部側に埋め込むようにするとよい。電磁波遮蔽シート36cは設置を要しないので、容易にICパッケージ38に形成、又は埋め込むことができる。
【0417】
このように、この発明の第21の実施例に係る電磁波遮蔽シート36cによれば、ICパッケージ38への一体形成が可能である。従って、電磁波遮蔽シート36cをCPU等に確実に装着できるようになるとともに、プリント基板2の組立時における電磁波遮蔽シートの貼付工程を省略できる。
【産業上の利用可能性】
【0418】
本発明は、CPU,LSI,IC等の電子部品、及び、それらが実装されたプリント基板のシールド板に適用して極めて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0419】
【図1】第1の実施例としての電磁波遮蔽シート10の構成例を示す図である。
【図2】ペアスリット部12の構成例及び機能例を示す図である。
【図3】(A)〜(D)は、電磁波遮蔽シート10の製造例を示す図である。
【図4】電磁波遮蔽シート10の装着例を示す斜視図である。
【図5】第2の実施例としての電磁波遮蔽シート20の構成例を示す図である。
【図6】第3の実施例としての電磁波遮蔽シート30の構成例を示す図である。
【図7】第4の実施例としての電磁波遮蔽シート40の構成例を示す図である。
【図8】第5の実施例としての電磁波遮蔽シート50の構成例を示す図である。
【図9】第6の実施例としての電磁波遮蔽シート60の構成例を示す図である。
【図10】第7の実施例としての電磁波遮蔽シート70の構成例を示す図である。
【図11】第8の実施例としての電磁波遮蔽シート80の構成例を示す図である。
【図12】ペアスリット部82の構成例及び機能例を示す図である。
【図13】(A)〜(E)は、電磁波遮蔽シート80の製造例を示す図である。
【図14】電磁波遮蔽シート80の装着例を示す斜視図である。
【図15】第9の実施例としての電磁波遮蔽シート90の構成例を示す図である。
【図16】第10の実施例としての電磁波遮蔽シート100の構成例を示す図である。
【図17】第11の実施例としての電磁波遮蔽シート110の構成例を示す図である。
【図18】第12の実施例としての電磁波遮蔽シート120の構成例を示す図である。
【図19】第13の実施例としての電磁波遮蔽シート130の構成例を示す図である。
【図20】第14の実施例としての電磁波遮蔽シート140の構成例を示す図である。
【図21】第15の実施例としての電磁波遮蔽シート150の構成例を示す図である。
【図22】第16の実施例としての電磁波遮蔽シート160の構成例を示す図である。
【図23】第17の実施例としての電磁波遮蔽シート170の構成例を示す図である。
【図24】(A)及び(B)は、電磁波遮蔽シート30及び170の装着例を示す斜視図である。
【図25】測定回路4の構成例を示すブロック図である。
【図26】(A)〜(C)は、電磁波EM1の測定例を示す分布図である。
【図27】(A)〜(C)は、電磁波EM1の周波数特性例を示す図である。
【図28】第18の実施例としての電磁波遮蔽シート170’の装着例を示す図である。
【図29】(A)及び(B)は、電磁波の測定例を示す分布図である。
【図30】(A)〜(D)は、電磁波の周波数特性例を示す図である。
【図31】第19の実施例としてのシールドケース37aの構成例を示す概略断面図である。
【図32】第20の実施例としてのシールドケース37bの構成例を示す概略断面図である。
【図33】第21の実施例としてのICパッケージ38の構成例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0420】
1・・・CPU、2,2’・・・プリント基板、3,26,27・・・IC素子、4・・・測定回路、5・・・電源装置、6・・・信号発生装置、7・・・電磁波検出装置、8・・・プリアンプ、9・・・スペクトル分析装置、10,20,30,40,50,60,70,80,90,100,110,120,130,140,150,160,170・・・電磁波遮蔽シート、11,21,31,41,51,61,71,81a,81c,91a,91c,101a,101c,111a,111c,121a,121c,131a,131c,141a,141c,151a,151c,161a,161c,171a,171c・・・導電シート、12,22,32,42,52,62,72,82,83,92,93,102,103,112,113,122,123,132,133,142,143,152,153,162,163,172,173・・・ペアスリット部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面を電磁波放射物に対峙して配設される導電性の板部材と、
所定の長さ及び幅で前記板部材に開孔されて並行する少なくとも一対の長孔を備えることを特徴とする電磁波遮蔽具。
【請求項2】
前記板部材は、
前記一対の長孔を複数有することを特徴とする請求項1に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項3】
前記複数の一対の長孔は、
其々が一辺を成す四角形状に配設されることを特徴とする請求項2に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項4】
前記複数の一対の長孔は、
四角形の対辺の一方が他方に対して突出する縮小四角形状に配設されることを特徴とする請求項3に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項5】
前記複数の一対の長孔は、
其々が一辺を成す三角形状に配設されることを特徴とする請求項2に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項6】
前記複数の一対の長孔は、
三角形の対辺の一方が他方に対して突出する縮小三角形状に配設されることを特徴とする請求項5に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項7】
前記複数の一対の長孔は、
其々が一辺を成す十字形状に配設されることを特徴とする請求項2に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項8】
前記複数の一対の長孔は、
其々が弧形状を有し、円形状に配設されることを特徴とする請求項2に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項9】
一方の面を電磁波放射物に対峙して配設される導電性の第1の板部材と、
前記第1の板部材の他方の面に設けられた絶縁部材と、
前記絶縁部材を介し、前記第1の板部材の他方の面と対峙して配設された導電性の第2の板部材とを備え、
前記第1及び第2の板部材の各々は、
所定の長さ及び幅で開孔されて並行する少なくとも一対の長孔を有することを特徴とする電磁波遮蔽具。
【請求項10】
前記第1及び/又は第2の板部材の各々は、
前記一対の長孔を複数有することを特徴とする請求項9に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項11】
前記第1の板部材が有する前記複数の一対の長孔と、
前記第2の板部材が有する前記複数の一対の長孔とが、
略同一形状を有して配設され、かつ、互いに異なる角度で対峙する位置に配設されることを特徴とする請求項10に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項12】
前記第1の板部材が有する前記複数の一対の長孔と、
前記第2の板部材が有する前記複数の一対の長孔とが、
互いに異なる形状を有して配設されることを特徴とする請求項10に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項13】
前記第1及び/又は第2の板部材が有する前記複数の一対の長孔は、
其々が一辺を成す四角形状に配設されることを特徴とする請求項11又は12に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項14】
前記第1及び/又は第2の板部材が有する前記複数の一対の長孔は、
四角形の対辺の一方が他方に対して突出する縮小四角形状に配設されることを特徴とする請求項13に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項15】
前記第1及び/又は第2の板部材が有する前記複数の一対の長孔は、
其々が一辺を成す三角形状に配設されることを特徴とする請求項11又は12に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項16】
前記複数の一対の長孔は、
三角形の対辺の一方が他方に対して突出する縮小三角形状に配設されることを特徴とする請求項15に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項17】
前記第1及び/又は第2の板部材が有する前記複数の一対の長孔は、
其々が一辺を成す十字形状に配設されることを特徴とする請求項11又は12に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項18】
前記第1及び/又は第2の板部材が有する前記複数の一対の長孔は、
其々が弧形状を有し、円形状に配設されることを特徴とする請求項11又は12に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項1】
一方の面を電磁波放射物に対峙して配設される導電性の板部材と、
所定の長さ及び幅で前記板部材に開孔されて並行する少なくとも一対の長孔を備えることを特徴とする電磁波遮蔽具。
【請求項2】
前記板部材は、
前記一対の長孔を複数有することを特徴とする請求項1に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項3】
前記複数の一対の長孔は、
其々が一辺を成す四角形状に配設されることを特徴とする請求項2に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項4】
前記複数の一対の長孔は、
四角形の対辺の一方が他方に対して突出する縮小四角形状に配設されることを特徴とする請求項3に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項5】
前記複数の一対の長孔は、
其々が一辺を成す三角形状に配設されることを特徴とする請求項2に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項6】
前記複数の一対の長孔は、
三角形の対辺の一方が他方に対して突出する縮小三角形状に配設されることを特徴とする請求項5に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項7】
前記複数の一対の長孔は、
其々が一辺を成す十字形状に配設されることを特徴とする請求項2に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項8】
前記複数の一対の長孔は、
其々が弧形状を有し、円形状に配設されることを特徴とする請求項2に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項9】
一方の面を電磁波放射物に対峙して配設される導電性の第1の板部材と、
前記第1の板部材の他方の面に設けられた絶縁部材と、
前記絶縁部材を介し、前記第1の板部材の他方の面と対峙して配設された導電性の第2の板部材とを備え、
前記第1及び第2の板部材の各々は、
所定の長さ及び幅で開孔されて並行する少なくとも一対の長孔を有することを特徴とする電磁波遮蔽具。
【請求項10】
前記第1及び/又は第2の板部材の各々は、
前記一対の長孔を複数有することを特徴とする請求項9に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項11】
前記第1の板部材が有する前記複数の一対の長孔と、
前記第2の板部材が有する前記複数の一対の長孔とが、
略同一形状を有して配設され、かつ、互いに異なる角度で対峙する位置に配設されることを特徴とする請求項10に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項12】
前記第1の板部材が有する前記複数の一対の長孔と、
前記第2の板部材が有する前記複数の一対の長孔とが、
互いに異なる形状を有して配設されることを特徴とする請求項10に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項13】
前記第1及び/又は第2の板部材が有する前記複数の一対の長孔は、
其々が一辺を成す四角形状に配設されることを特徴とする請求項11又は12に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項14】
前記第1及び/又は第2の板部材が有する前記複数の一対の長孔は、
四角形の対辺の一方が他方に対して突出する縮小四角形状に配設されることを特徴とする請求項13に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項15】
前記第1及び/又は第2の板部材が有する前記複数の一対の長孔は、
其々が一辺を成す三角形状に配設されることを特徴とする請求項11又は12に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項16】
前記複数の一対の長孔は、
三角形の対辺の一方が他方に対して突出する縮小三角形状に配設されることを特徴とする請求項15に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項17】
前記第1及び/又は第2の板部材が有する前記複数の一対の長孔は、
其々が一辺を成す十字形状に配設されることを特徴とする請求項11又は12に記載の電磁波遮蔽具。
【請求項18】
前記第1及び/又は第2の板部材が有する前記複数の一対の長孔は、
其々が弧形状を有し、円形状に配設されることを特徴とする請求項11又は12に記載の電磁波遮蔽具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公開番号】特開2009−135154(P2009−135154A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308088(P2007−308088)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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