説明

電磁的心臓生体刺激法

【課題】 電磁放射線による、心筋梗塞またはその多の心臓疾患症の後の心臓機能改善、瘢痕組織形成の減少、および/または、心筋組織再生の促進のための装置を提供する。
【解決手段】 心室内に導入するための細長いプローブ内に収容された導波管の先端部にある光学素子が、生体刺激性電磁放射線を広げるための、あるいは、導波管の断面積より大きい断面積を有するビームを発するための、広角レンズまたは魚眼レンズを備えており、プローブの柔軟性のある部分が心臓壁部の形状に応じて曲がり、光学素子が心臓壁部と物理的に接触するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔関連出願〕
本出願は1996年7月28日出願のイスラエル特許出願第118,968号および1997年1月14日出願のPCT国際特許出願第PCT/IL/97/00011号に基づいて優先権を主張するものであり、これら両方の特許出願は本出願の出願人と出願人を同一にする。さらに、本出願は共に1997年1月3日出願の米国仮特許出願第60/034,703号および同第60/034,704号の恩典を主張するものであり、これらの仮特許出願は本出願の出願人と出願人を同一にする。なお、上記関連特許出願は全て本明細書に参考文献として含まれる。
【0002】
〔発明の技術分野〕
本発明は一般に心臓治療のための方法および装置に関し、特に、心筋梗塞等の虚血性の心臓状態に続く心臓機能改善のための方法および装置に関する。
【0003】
〔発明の開示〕
心筋梗塞に続く心臓病または心臓疾患は依然として西欧域において死亡の主原因となっている。哺乳類の成熟した心臓の筋肉(心筋)細胞は分化の最終段階に達しており、増殖を行なうことはあり得ないと考えられている(P. P. Rumynastevの「心筋細胞の成長と増殖(Growth and Hyperplasia of Cardiac Muscle Cells)」(B. M. Calson. ed., Harwood, New York,1991年、第3頁乃至第68頁)参照)。従って、機械的ストレスや虚血(細胞への不適正な酸素供給)による肥大化(細胞質量の増加であって細胞数の増加ではない)が心筋に生じる恐れがある。さらに、虚血に続いて、心筋梗塞中の細胞への血液供給の閉塞によって、不可逆的で生理学的な変化が細胞内に生じ、この細胞変化が経時的に非収縮状の瘢痕組織(梗塞領域)に変化または置き換えられていく(M. C. Fishbeinおよび M. B. McLean他の「ラットにおける実験的心筋梗塞(Experimental myocardial infarction in the rat)」(Am. J. Pathol. 90:第57頁乃至第70頁、1978年)参照)。
【0004】
特に、梗塞により傷ついた心筋細胞は、主にエネルギー生成と消費の不均衡な速度によって、細胞膜破損、ミトコンドリアの破裂、蛋白分解の増加のような細胞に対する多数の破壊工程につながる毒性の虚血カスケードの過程に入る。また、不充分な酸素供給状態において、無酸素性の糖分解過程がアデノシントリホスフェート(ATP)の一次供給源としての有酸素代謝に置き換わって細胞生存代謝を容易にする。しかしながら、このような無酸素性解糖代謝および関連の無酸素性細胞生存代謝は、自然な解糖作用の増加が主要な解糖酵素であるホスホフラクトキナーゼ(PFK)を阻害する乳酸塩の蓄積によって停止するために短寿命のメカニズムである(E. Hofmannの「糖質代謝調節に対するホスホフラクトキナーゼの意義(The significance of phosphofructokinase to the regulation of carbohydrate metabolism)」(Rev. Physiol. Biochem. Pharmacol. 75:第2頁乃至第68頁、1976年)参照)。
【0005】
最近の急性心筋梗塞の臨床的治療方法には、血栓崩壊療法(W. Ganz, N. BuchbinderおよびH. Marcus他の「心筋梗塞を含む冠状脈血栓崩壊法(Intracoronary thrombolysis involving myocardial infarction)」(Am. Hert 101:第4頁乃至第10頁、1983年))、閉塞動脈に関して行なうPTCA(冠状脈血管形成)法(A. R. Gruentzig他の「経皮および経壁冠状脈血管形成後の長期間追跡調査」(N. Engl. J. Med. 316:第1127頁乃至第1132頁、1987年))、および、心筋梗塞の閉塞部に可能な限り近いバイパス手術法(G. M. Fitzgibon、A. J. LeachおよびH. P. Kafka他の「環静脈バイパス移植片調査、長期間血管造影研究(Coronary bypass graft fate: long-term angiographic study)」(J. Am. Coll. Cardiol. 17:第1075頁乃至第1080頁、1991年))が含まれる。しかしながら、これらの手法は費用がかさみ、高い技術水準の人員および高い技術水準の医者を必要とし、健康管理において常に実用可能とはいえない。さらに、これらの方法は細胞内に生じる不可逆的な虚血性損傷の結果を阻止するというよりは、そのような結果を変更するに留まるものである。従って、高水準の人員および一級の治療法によっても、上記の手法が必ず効果的であるとは限らない。
【0006】
実験動物において心筋梗塞を誘発した後に心筋における梗塞領域を減少する試みがこれまでに幾つか行なわれている。これらの試みには無酸素細胞生存を延長するためのコルチコステロイド、種々の酸化防止剤および化学薬品の使用が含まれる。
【0007】
外因性フルクトース−1,6−ジホスフェート(FDP)は上記PFK酵素の遮断を迂回して無酸素ATP代謝およびクレアチンホスフェート(CP)生成を回復することが知られている(A. K. MarkovおよびN. C. Oglethorpe他の「血行力学的電子心拍記録法および急性心筋梗塞に対するフルクトースジホスフェートの代謝作用(Hemodynamic electrocardiographic and metabolic effects of fructose diphosphate on acute myocardial ischemia)」(Am. Heart J. 100:第639頁乃至第646頁、1980年)参照)。動物に関して行なわれた実験においては、上記FDP酵素は血行力学的パラメータを改善し、不整脈および梗塞範囲を減少して生存率を高めることが分かっている(A. K. MarkovおよびN. C. Oglethorpe他の上記引例およびJ. W. StarnesおよびK. S. Seiler他の「フルクトース−1,6−ジホスフェートが単離した灌流ラット心臓における作用効率を改善する」(Am. J. Physiol. 262: M380-M384, 1992年)参照。なお、これらの文献は全て本明細書に参考文献として含まれる。)
【0008】
虚血心臓組織は冠状脈血管形成のような当該技術分野において知られる種々の治療方法によってそれらの血液供給を回復することが可能である。そのような治療法の過程において、その虚血組織は迅速に血液で再灌流できる。しかしながら、このような迅速な再灌流は、少なくとも一部の場合において、再灌流後傷害、すなわち、その再灌流自体により誘引される損傷が生じる。このような傷害は、特に、再灌流処理に続く酸素供給の急速な増加によって組織内に形成されるスーパーオキシド(超酸化物)に起因する。このスーパーオキシドは反応性が高く、毒性のラジカル物質であるが、有機質および無機質の細胞物質と有害で不所望な反応を生じる。固有および/または外因性の酸化防止剤はこのスーパーオキシドの毒性作用をそれらの形成を阻止したり、形成直後にその遊離ラジカルを捕捉することにより緩和する。このような心筋における再灌流後の傷害を緩和するための外因性遊離ラジカルスカベンジャーの使用が報告されている(E. P. Chen他の「細胞外スーパーオキシドジスムターゼ形質転換過剰発現が単離したねずみ科動物の梗塞後の心筋機能を維持する(Extracellular superoxide dismutase transgene overexpression preserves post-ischemic myocardial function in isolated murine hearts)」(Circulation, 94:第412頁乃至第417頁1996年)参照、本報告は本明細書に参考文献として含まれる。)特に、無毒性セレノ−有機遊離ラジカルスカベンジャーが細胞保護作用を呈することが知られている(V. Ullrich他の「プラズマと目的蛋白質との間のセレノ−結合平衡(Seleno-binding equilibria between plasma and target proteins)」(Biochem. Pharmacol. 52: 15,1996年)参照、なお本報告は本明細書に参考文献として含まれる。)
【0009】
さらに、骨格筋肉原または胎児性心筋細胞(cardiomyocytes)からの心臓の虚血性または梗塞領域細胞内への移植が最近報告されている(R. K. Li他の「心筋細胞移植が心臓機能を改善する(Cardiomyocyte transplantation improves heart function)」(Ann. Thorac. Surg. 62:第454頁乃至第460頁、1996年)参照、なお本報告は本明細書に参考文献として含まれる)。すなわち、この移植細胞は移植後に生存して、その後少なくとも数週間にわたって生存能力を維持した。また、ラットの左心室の低温傷害部分内に移植された細胞が(種々の生理学的パラメータに基づいて)その心臓機能を、細胞移植されていない対照ラットに比して、有意差をもって改善したことが報告されている。また、マウスに関して行なわれた実験において(J. E. Morgan他の「若いマウスおよび老いたマウスの予備照射および非照射の足内に移植した前駆細胞からの正常な筋肉の収率(Yield of normal muscle from precursor cells implanted into preirradiated and nonirradiated legs of young and old max mice)」(Muscle & Nerve 19:第132頁乃至第139頁、1996年)参照、なお本報告は本明細書に参考文献として含まれる)、骨格筋肉細胞原の移植細胞のうちの約10%のみが生き残って移植後に数週間にわたって生存能力を維持している。
【0010】
また、低出力レーザー照射が異なる生物学的体系における種々の処理過程を変調することが最近報告されている(M. Belkin、B. ZaturunskyおよびM. Schwartzの「低出力レーザー生体作用の評価(A critical review of low power laser bioeffects)」(Laser Light Ophthalmol. 2:第63頁乃至第71頁、1988年)およびT. Karuの「低出力レーザー作用の光生物学(Photobiology of low laser effects)」(Health Phys. 56:第691頁乃至第704頁、1988年)参照)。例えば、単離したミトコンドリア内において、He−Neレーザー照射(5J/cm)は膜電位およびATP生成を増加するが、単離した線維芽細胞に同じ照射処理を行なうと、コラーゲン生成の増加が見られる。そこで、外傷に続く再生過程における低出力レーザー照射の作用が皮膚、末梢神経系、骨格筋肉および骨においてさらに調べられている。この結果、適正な時間におけるレーザー照射およびそのエネルギーレベルによって、たいていの生体系において、骨格筋肉の再生過程が調整されて、外傷後の比較的速い回復が達成され、筋肉や骨における再生速度が向上することが分かった(N. WeissおよびU. Oronの「低出力レーザー照射によるラットの腓腹筋における筋肉再生の向上(Enhancement of muscle regeneration in the rat gastrocnemius muscle by low power laser irradiation)」(Anat. Embryol. 186:第497頁乃至第503頁、1992年) およびO. Barushka、T. YaakobiおよびU. Oronの「ラット脛骨の骨修復過程におけるレーザー照射作用(Effect of laser irradiation on the process of bone repair in the rat tibia)」(Bone 16:第47頁乃至第55頁、1995年)参照)。また、低出力レーザー照射は骨格筋肉の傷害領域における新しい血管形成(angiogenesis)において2倍の増殖を誘発することが分かった(A. Bibikova、N. BelkinおよびU. Oronの「低エネルギーレーザー照射によるヒキガエルの腓腹筋再生における血管形成の向上(Enhancement of angiogenesis in regenerating gastrocnemius muscle of the toad by low energy laser irradiation)」(Anat. Embryol. 190:第597頁乃至第602頁、1994年)参照。なお、本報告は本明細書に参考文献として含まれる)。
【0011】
さらに、最近の研究において、心筋梗塞後の患者におけるHe−Neレーザーによる血液(鎖骨下動脈)の照射作用が観察されている(N. N. Kipshidze他の「急性心筋梗塞の脈管内レーザー療法(Intravascular laser therapy of acute myocardial infraction)」(Angiology 第801頁乃至第808頁、1990年9月)参照。なお、本報告は本明細書に参考文献として含まれる)。この研究報告では、血液中における酵素活性(creatine phosphokinase)のレベル(この値は照射した患者において比較的低い)および心臓の不整脈減少に関してレーザー照射した患者においてより優れた回復効果が見られることが分かった。
【0012】
しかしながら、このKipshidze他の文献は心筋自体の生体刺激についてではなく、むしろ血液の生体刺激について教示している。すなわち、この著者はそのアブストラクトにおいて「単色He−Neレーザーを用いる…の新規方法、…この報告は高度の不整脈における脈管内(血管内)レーザー血液照射の作用に関する」と述べている。さらに、第802頁の第2行乃至第3行において、この報告書は「上大静脈の内腔内に導入された光学光案内部材を介するLG−75レーザーによって脈管内レーザー療法を行なう…」と述べている。従って、心筋ではなくて血液が照射されることになる。
【0013】
さらに、当該技術分野においては、He−Neレーザーから発せられるエネルギーが、高出力の場合であっても、血液細胞内のヘモグロビンや生体組織によって吸収されることが知られている(Mester, A. R.の「低出力レーザー使用による物理療法(Modalities of low power laser applications)」(Galletti et al. (eds.) Laser Applications in Medicine and Surgery, Monduzzi Editore(1992年)、第33頁乃至第40頁)参照)。すなわち、特定波長(632.2nm)におけるこの種のエネルギーは生体組織を良好に透過しない。例えば、組織の2mmの深さにおける出力損失は約90%であり、適度の血液供給を伴う組織の3mmを超える深さになると、その出力はほとんど透過能力を失う。また、当該技術分野においては、4mW以下のレーザー出力に対して組織を曝露しても、組織に対して生体刺激的作用が全く得られないことも認識されている(Galletti他の上記文献、およびBradley, P. F.およびB. Gursoyの「低強度レーザ治療用波長における透過性の研究(Penetration studies of low intensity laser therapy (LILT) wavelength)」(Proc. WALT 1996年、第18頁)参照)。
【0014】
従って、He−Neレーザー供給源(Kipshidze他の文献において出力レベルが記載されていないが、高々40mW程度であると考えられる)からのエネルギーが光ファイバー(このことによって供給源からの光エネルギーが約30%乃至40%損失する)を通して伝達されると、光ファイバーの先端部において25mW以下になる。この先端部は心筋から少なくとも5cm離れた血管(上大静脈)の中にあるために、光ファイバーから心筋によって吸収されるエネルギーはほとんどゼロであり、上述した科学的認識に基づく心筋への生体刺激的作用は全くない。
【0015】
さらに、他の研究において、筋系の超微細構造における定性的変化の報告(Ruzov, I. V.およびBaltrushaitis, K. S.の「ヘリウム−ネオンレーザーおよび黒曜石の作用による心筋内の超微細構造的変化(Ultrastructural changes in the myocardium under the action of the helium-neon laser and obzidan)」(Vopr. Kurotol. Fizioter. Lech. Fiz. Kult. 5-6:第62頁乃至第64頁、1992年)参照)、血管における定性的変化の報告(Ruzov, I. V.およびBaltrushaitis, K. S.の「低強度ヘリウム−ネオンレーザーおよびフィノプチンの組合せ作用による不整脈心筋の微小循環流床(The microcirculatory bed of the ischemic myocardium under the combined action of a low-intensity helium-neon laser and finoptin)」(Vopr. Kurotol. Fizioter. Lech. Fiz. Kult. 4:第31頁乃至第33頁、1993年)参照)、および、He−Neレーザーによる血液の照射に続く活性低下段階におけるラビットの心筋のミトコンドリアにおける定性的変化の報告(Ruzov, I. V.およびRishkus, L. A.の「実験的活性低下におけるサイクリックヌクレオチドレベルについてのヘリウム−ネオンレーザーの作用(The effect of the helium-neon laser on the cyclic nucleotide level in experimental hypodynamia)」(Vopr. Kurotol. Fizioter. Lech. Fiz. Kult. 2:第51頁乃至第53頁、1992年)参照)が行なわれている。上記研究における照射はラビットの耳の中の耳静脈に光ファイバーを挿入して行なっている。このロシア共和国においては、UVまたは低出力レーザーの照射が多くの人間の病気を回復する良好な処置として一般的手法となっていることが考えられる(Ruzov, I. V.の「不整脈心筋のエネルギー装置に関するヘリウム−ネオンレーザー、パーリンガナイトおよびヘパリンの作用についての比較研究(A comparative study of the action of the helium-neon laser, perlinganite and heparin on the energy apparatus of the ischemic myocardium)」(Vopr. Lech. Fizioter. Lech. Fiz. Kult. 5-6:第62頁乃至第64頁、1994年)参照)。
【0016】
Ruzov他の上記の4個の科学的報告において、著者はKipshidze他と同様の1.5mWの出力レベルのHe−Neレーザーの実験的システムを使用している。また、同様に、出力エネルギーはラビットの耳の静脈内に挿入した光ファイバーを通して導入している。上記のKipshidze他による報告について述べたように、この耳の静脈から心筋に最終的に伝達されるエネルギーはほとんどゼロであり、これらの科学的報告書に述べられているように、不整脈状態または活性低下した心筋において期待される生体刺激作用効果は全くない。
【0017】
Golikov他に付与されたロシア国特許第1715351号は梗塞後における心臓病の回復を補助するための針療点におけるHe−Neレーザーによる照射療法に関係している。しかしながら、この特許は、He−Neレーザービームがたとえ心臓の上方から人間の患者の胸部に向けられていても2mm乃至3mm以上に浸透することできないので、心筋の照射に関係していない。従って、人間のあばら骨の間の筋肉が少なくとも3cmの厚さを有しているために、このレーザーエネルギーは心筋にほとんど到達することができない。つまり、このレーザー照射患者において得られる作用効果は、この特許の最終パラグラフに著者らが自ら述べているように、針治療または反射発生的療法によるものに限られると考えられる。
【0018】
また、Leveshunov他に付与されたロシア国特許第1806781号は複雑な急逝心筋梗塞を患う患者の臨床的予後を改善するための磁気レーザー療法に関係している。すなわち、パルス化したレーザーおよび赤外線(波長は記載されていない)が患者の胸壁部に照射される。このような組織への磁場とレーザーの組合せ照射の生体作用に関するデータは当該技術分野において把握されていない。この特許に示唆されているパルス化したレーザーは12mWの平均出力を有しており、連続的な赤外放射線は50mWの出力を有している。このレーザービームは心筋に到達する前に約3cm乃至5cmの合計の平均組織幅を有するあばら骨の間の胸部の皮膚および筋肉を透過しなければならない。しかしながら、レーザー出力は深さに関して指数関数的に生体組織内で減少するために、心臓に至る最大レーザー出力は、Leveshunov他が示唆するように、患者の厚い胸壁部を通してほとんどゼロに減少して心筋の刺激作用を得るには明らかに低すぎる値になる。
【0019】
〔発明の概要〕
本発明は、電磁放射線による、心筋梗塞またはその多の心臓疾患症の後の心臓機能改善、瘢痕組織形成の減少、および/または、心筋組織再生の促進のための方法および装置を提供する。
【0020】
本発明の好ましい実施形態による方法は電磁放射線で組織を照射することによって患者の心筋組織を刺激することに基づく。本特許出願およびその特許請求の範囲において、このような方法を電磁心臓生体刺激法(electromagnetic cardiac biostimulation)(ECB)と称する。この本発明の原理に従うECB法は特定の波長範囲に限られず、本発明を実施する最良の態様は赤外(IR)、可視光および紫外(UV)線を含む領域における照射に基づくものと考えられる。さらに、特定波長、出力レベル、照射時間および照射回数は患者の必要性に従って選択できる。
【0021】
上記ECB法において使用される放射線はレーザーにより供給される放射線のように干渉性(coherent)のものが好ましいが、キセノンランプにより供給されるような非干渉性(non-coherent)のものであってもよい。
【0022】
梗塞した心筋の生体刺激の可能な治療作用には、梗塞領域の減少、梗塞域における心筋細胞の生成、心筋細胞内のミトコンドリアの構造および活性の維持、病気の心筋の機能改善が含まれる。本発明の一部の態様の特徴は電磁放射線を用いて心筋細胞内の収縮性蛋白質の構造および方向性の維持を含む急性不整脈症後の心筋細胞の再生および細胞保護を行なうことであり、このような状況下における心筋の再生および細胞保護のための方法はこれまで当該技術分野において知られていなかった。本発明の一部の好ましい実施形態においては、上記ECB法は、患者の皮膚に接して放射線供給源を配置してこれにより心筋を照射する等によって、身体および心臓の両方に対して非侵襲性である。さらに、別の好ましい実施形態においては、患者の胸部または背部における非心筋の筋肉組織のような一部の生体組織が少なくとも部分的に外科的に露光され、これによって、心臓が照射される。この場合は、生体に対して部分的に侵襲性となるが、放射線が比較的薄い筋肉層を透過できるという利点があり、心筋により高いより最適な放射出力を供給できる。さらに、別の好ましい実施形態においては、上記ECB法は、冠状動脈内または血管内を通して心室内に導入したカテーテルによって心臓を照射する等によって、心臓に対して侵襲性である場合もある。
【0023】
また、本発明の一部の好ましい実施形態においては、上記ECB法は電磁放射線による生体刺激と梗塞後の付加的な臨床治療の組合せから構成されていて、これらの協働作用効果を提供する。このような治療方法には、上述したFDPまたは無毒性セレノ−有機遊離ラジカルスカベンジャーのような化合物や薬品の投与および当該技術分野において知られるようなレーザー心筋脈管再生(LMR)が含まれる。
【0024】
このLMR法は不整脈心臓組織内に通路(チャンネル)を形成して当該組織内への血液供給を改善するための当該技術分野において既知の技法である。なお、このLMR法は本明細書に参考文献として含まれる本特許出願の出願人と出願人を同一にする1997年1月14日出願のPCT国際特許出願第PCT/IL97/00011号に詳細に記載されている。本発明の一部の好ましい実施形態においては、上記PCT国際特許出願第PCT/IL97/00011号に記載されるLMRの方法および装置が上記ECB法と共に用いられて後述するように心臓の不整脈領域の治療に協働的に作用することが好ましい。さらに、このECB照射処理はLMR処理の間に行なわれて不整脈領域とその中に形成された通路を照射するのが好ましい。つまり、この照射処理によって、上記通路と不整脈領域がの治癒が促進され、上述したように(A. Bibikova他、1994年参照)、LMR通路の近傍において血管形成が刺激される。
【0025】
上述したように、FDPは無酸素解糖を再活性することにより部分的に(梗塞後の)不整脈を阻止する。また、FDPはATPおよびCPのような高エネルギー代謝の再補充を促進することにより再灌流後の傷害を緩和する。無毒性セレノ−有機遊離ラジカルスカベンジャーもまた再灌流により生じるスーパーオキシドの毒性作用を阻害することにより細胞保護作用を呈すると考えられ、これによって、上述のような再灌流後の傷害を緩和する。同様に、本発明の原理によれば、急性心筋梗塞の直後の梗塞領域への低出力レーザー照射が細胞内のエネルギー生成機能を有する小器官(ミトコンドリア)を急激な損傷から保護すると考えられる。従って、血液系を介して梗塞領域に供給されると細胞保護剤として作用するFDPまたは無毒性セレノ−有機遊離ラジカルスカベンジャーの投与は、ECB処理による局所的治療を伴って、梗塞した心筋領域を協働的に治癒する作用効果があると期待できる。それゆえ、本発明の他の好ましい実施形態によれば、外因性FDPまたは無毒性セレノ−有機遊離ラジカルスカベンジャーの静脈内投与を伴って、梗塞の発生のすぐ後にECB照射が行なわれるのが好ましい。このような照射と薬品の組合せ作用によってより効果的にミトコンドリアの構造および活性が維持できる。
【0026】
また、本発明の一部の好ましい実施形態においては、ECB装置が、少なくとも1個の電磁放射線供給源と、好ましくは少なくとも1個の導波管を備えるリレー用光学部品とから構成されており、当該導波管が上記少なくとも1個の電磁放射線供給源と連結しており、さらに、放射線を導波管から心臓組織上に向けるためのレンズから構成されている。好ましくは、上記ECB装置は、さらに、上記導波管およびレンズの位置決めを容易にする位置センサーと、上記供給源の出力およびスペクトル、照射の持続時間および位置決めの調整を含む当該ECB装置の種々の機能を制御する制御ユニットとから構成されている。好ましくは、上記ECB装置は可視光供給源とこれに光学的に連結する好ましくは光ファイバーから成る光案内部材を備えており、ECB処理中の照射状態が観察できる。
【0027】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記少なくとも1個の電磁放射線供給源が干渉性光供給源から構成されている。この干渉性光供給源はダイオードレーザーを備えていてもよい。好ましくは、このダイオードレーザーは5mW乃至5Wの出力範囲で250nm乃至940nmの波長範囲で動作する。
【0028】
また、上記電磁放射線供給源は好ましくは高強度キセノンランプから成る非干渉性光供給源を備えていてもよい。好ましくは、このキセノンランプは30mW/cm乃至500mW/cmの出力密度を有している。
【0029】
本発明の好ましい実施形態においては、上記リレー用光学部品および位置センサーは心室内または冠状動脈内に導入して心臓内照射できるようにカテーテル内に収容されている。最も好ましくは、このカテーテルは配置可能であって、少なくとも1個の導波管と、レンズと、例えば、本明細書に参考文献として含まれるPCT国際公開第WO 96/05768号に記載される磁気位置センサーのような位置センサーとから構成されていて、後述するような生存能力マップに従って当該カテーテルの操縦および当該カテーテル位置決めが可能になっている。
【0030】
本発明のさらに別の好ましい実施形態においては、上記カテーテルは心筋組織の生存可能および生存不可能を決定するためのセンサーを備えている。このセンサーは1個以上の電子的−または機械的−生理学的検出装置を備えており、当該検出装置は、例えば、共に本明細書に参考文献として含まれる本特許出願と同一出願人の米国特許出願第08/595,365号および米国特許第5,568,809号に記載されるような局所的心筋の電気的または局所的心筋の機械的活性をそれぞれ感知する。さらに、これらの局所的座標に基づいて収集された生存可能性データは照射すべき不整脈領域を決定する生存能力マップを形成するために使用される。
【0031】
あるいは、または、上記に加えて、これらのセンサーは照射後に使用して不整脈傷害の後の心筋の保全を促進する意味での照射効率を評価するために使用することもできる。さらに、必要に応じて、上記検出装置を各ECB処理の間に用いて生存能力マップの有効性を評価し、かつ/または、その更新を行なうこともできる。
【0032】
血液および筋肉組織は生体刺激性電磁放射線波長に対して極めて高い吸収(吸光)係数を有している。それゆえ、生体刺激性放射線は目的領域に対して極めて近くで供給される必要があり、好ましくは、当該領域に接して供給される。従って、本発明の一部の好ましい実施形態においては、上記カテーテルは当該技術分野において知られる1個以上の近接または接触センサーを備えており、当該カテーテルと心室壁部との間の接触を感知かつ確認することができる。
【0033】
また、本発明の別の好ましい実施形態においては、主に非侵襲性ECB法を採用しており、そのECB装置がエコー式画像処理装置と連携するエコー式超音波トランスデューサと共に使用される。このエコー式トランスデューサは梗塞部位に関する位置情報を供給して、照射処理時に梗塞した心臓領域に対する照射光学装置の照準決めを容易にする。最も好ましくは、このエコー式トランスデューサは上記電磁放射線光学装置に固定されて互いにほぼ固定した空間位置関係を保つように構成されている。
【0034】
本発明の一部の好ましい実施形態においては、上記ECB装置は、例えば、上記PCT国際出願第PCT/IL97/00011号に記載されるように、LMR処理と共に動作するように構成されている。従って、一体化カテーテルは、複合動作をするように構成されて、LMRレーザー供給源に連結する少なくとも1個の導波管と、ECB電磁放射線供給源に連結する少なくとも1個の導波管と、適当な光学部品と、少なくとも1個の位置センサーと、必要に応じて、心筋における生理学的活性度を感知するための電極のような少なくとも1個の生理学的検出装置とから構成されている。
【0035】
一般に、心筋における不整脈領域は10cm程度の面積になるが、心臓内カテーテルの断面は数mmである。さらに、上述したように、生体刺激性の的波長は血液または筋肉組織を通して数ミリメートル程度しか透過しない。このような出力の急速な低下によって、放射線発生領域と目的領域との間の最大距離、および/または、最小の可能な電磁放射線供給源の出力が制限される。従って、比較的大きな目的物の照射のために小さい放射線発生面積を使用すると手間と時間がかかる。
【0036】
そこで、本発明の一部の態様の目的は、拡張した目的領域、好ましくは、カテーテル自体の断面よりも広い領域上に、その目的とする組織にカテーテルから効果的なエネルギーを伝達させながら放射線を散布する放射線伝送カテーテルを提供することを目的とする。本発明の一部の好ましい実施形態においては、心臓の侵襲性照射のためのECBカテーテルは、当該カテーテルの先端部(または遠位端)において、照射ビームを広げるための、例えば、当該技術分野において知られる魚眼レンズのような広角レンズを備えている。また、この照射発生面積の拡張は後述するような側面発光型または拡張型光学先端部のカテーテルを使用して行なうこともできる。好ましくは、このカテーテルの光学部品は目的領域の一定部分上にほぼ均一レベルで照射できるように構成されている。
【0037】
本発明の一部の好ましい実施形態においては、側面発光型ECBカテーテルは、当該カテーテルの先端部の近傍の一定部分の長さにわたって半径方向に放射線を供給するための、例えば、窓またはレンズのような長手方向に配置された放射線発光素子を備えている。この放射線発光素子は電磁放射線供給源から放射線を伝達する導波管に連結されており、カテーテルの先端部に沿うスロット部または破断部内に嵌合しているのが好ましい。最も好ましくは、この放射線発光素子は2cm乃至3cmの長さで0.2cm乃至0.3cmの幅を有して約0.5cmの放射線発光面積を形成する。また、必要に応じて、この素子は湾曲した外表面を有しており、この表面によって当該素子の有効照射面積がさらに増加する。
【0038】
上述したように、上記の放射線発光素子は目的領域に近接または接触移動するのが好ましい。従って、一部のこのような実施形態においては、側面発光型カテーテルの先端部は、本明細書に参考文献として含まれる本特許出願と同一出願人の米国仮特許出願第60/034,704号に記載されるように、心臓壁部に押圧される時に、その心臓の内表面に一致するように構成されている。好ましくは、上記米国仮特許出願第60/034,704号に記載されるように、カテーテルは1個以上の位置センサーおよび/または圧力または近接センサーを備えており、これらは照射中の放射線発光素子の心臓壁部に対する位置および心臓壁部に対する方向を確認するために用いられる。
【0039】
あるいは、上記カテーテルは概ね楕円状の放射線発光領域を有してカテーテルの長手軸に対して傾斜する傾斜先端部を備えている。好ましくは、この楕円状領域は外側に湾曲した表面を有していて上述のような有効照射領域をさらに増加する。
【0040】
本発明のさらに別の好ましい実施形態においては、上記カテーテルは拡張光学先端部を備えており、当該先端部は体内への挿入中に一定の狭い構造体の中に保持されていて、挿入後に延伸し、心臓組織に接触しかつ照射するための先端部領域をかなり増加できるように構成されている。
【0041】
このような先端部は、例えば、導波管の先端部のような点状の放射線供給源を囲む光ファイバーの束、または、折りたたみ可能なパラボラ状または多面体形反射鏡のような放射線反射面部材から構成してもよい。また、必要に応じて、上記拡張先端部は、例えば、散乱膜、偏光膜層、半透明膜または当該技術分野において知られる他の適当な光学膜のような光学膜により構成して、導波管により発せられた放射線を散布および/または分散できるようにしてもよい。
【0042】
さらに、本発明の他の好ましい実施形態においては、上記カテーテルは放射線センサーを備えており、当該センサーを照射する心筋組織内またはこれに接して配置して、同組織上の局所的放射線出力レベルを逐次測定してECB処理中に組織に供給された全照射エネルギーを測定するように構成されている。
【0043】
この出力およびエネルギーの読取値はECB供給源の出力レベルの調整および処理持続の決定に用いることができる。また、必要に応じて、この読取値は供給源からのECB照射のリレー用光学部品を介する目的心臓組織領域への伝達の有効性を確認するためにも利用できる。
【0044】
5mW乃至50mWのHe−Neレーザーを用いての血液の脈管内照射が心臓機能を改善することが知られている(N. N. Kipshidzeの上記文献参照)。さらに、本特許出願の発明者はこのHe−Neレーザー照射が冠状動脈におけるアテローム硬化症に有効であり、この照射処理と不整脈領域の生体刺激性照射との組合せが急性心筋梗塞の後の心臓機能に協働作用的効果があると考える。従って、本発明の別の実施形態においては、ECB法がECB照射処理と付加的な血管の脈管内He−Ne照射処理の組み合せを含む。
【0045】
さらに、本発明の別の実施形態においては、上記引例のLiおよびMorganの文献に記載される方法に従って、ECB法が骨格筋または胚心筋から採取した細胞(心筋細胞)をインビトロECB照射処理して当該細胞を心筋不整脈領域に移植する工程を含む。本出願人はこのような細胞の生体刺激性照射がそれらの全体的生存能力を改善し、かつ、不整脈状態における細胞保存に対する生体刺激性照射効果によって移植生存率を高めると考えている。上記LiおよびMorganに記載されるように、このような生存可能な細胞が心臓機能を改善すると考えられる。
【0046】
従って、本発明の好ましい実施形態によれば、心筋組織の生体刺激を引き起こす電磁放射線供給源による心筋組織の照射を含む心筋組織の生体刺激のための方法が提供される。
【0047】
好ましくは、上記電磁放射線は赤外線、可視光線および紫外線から成る群から選択される。
【0048】
好ましくは、上記組織を照射する工程が心筋梗塞後に任意の大きさの梗塞領域に展開して照射する工程を含み、この心筋組織の照射によって梗塞領域の大きさが減少し、および/または、この心筋組織の照射によって梗塞領域内の心筋細胞が再生し、および/または、この心筋組織の照射によって梗塞領域内の心筋細胞におけるミトコンドリアの構造および活性が維持され、および/または、この心筋組織の照射によって梗塞領域内の心筋細胞における収縮蛋白の構造および活性が維持される。
【0049】
上記電磁放射線供給源は、好ましくは、干渉光供給源を備えており、最も好ましくは、5mW乃至5Wの出力範囲で250nm乃至940nmの波長範囲のダイオードレーザーである。
【0050】
好ましくは、上記組織を照射する工程が電磁放射線供給源により心筋組織を照射する複数の工程、および/または、0.5分乃至15分の持続時間で電磁放射線供給源により心筋細胞を照射する工程を含む。
【0051】
さらに、本発明の好ましい実施形態の一例においては、上記組織を照射する工程が上記カテーテルを、好ましくは大動脈を通して、心臓内に導入する工程と、当該カテーテルを心臓壁部に近接して配置する工程と、心臓内にカテーテルにより導入された導波管を介して心筋組織を照射する工程とから構成されており、上記導波管が放射線供給源に連結されている。
【0052】
また、別の好ましい実施形態においては、治療用化学薬品が上記照射処理に伴って投与される。好ましくは、上記化学薬品は、フルクトース−1,6−ジホスフェート(FDP)またはセレノ−有機遊離ラジカルスカベンジャーを投与する工程を含む。好ましくは、上記組織を照射する工程および化学薬品を投与する工程によって再灌流後の傷害が緩和される。
【0053】
さらに、別の好ましい実施形態においては、心筋脈管再生処理が上記照射工程に伴って行なわれ、好ましくは、当該心筋脈管再生処理が上記照射工程と同時に行なわれる。
【0054】
好ましくは、生理学的信号が組織から受信され、上記組織を照射する工程が当該組織から受け取った信号に応じて心臓組織を照射する工程を含む。好ましくは、上記生理学的信号が機械的−生理学的信号および/または電子的−生理学的信号を含む。
【0055】
好ましくは、上記カテーテルを位置決めする工程が1個以上のセンサーを用いてカテーテルの位置座標を追跡する工程を含む。さらに好ましくは、当該カテーテルの位置決め工程が心臓組織内の不整脈領域を指示する生存能力マップに応じてカテーテルを位置決めする工程を含む。あるいは、または、上記に加えて、カテーテルを位置決めする工程が心臓の幾何学形状マップ上に照射する領域を輪郭付ける格子に対してカテーテルを位置決めし、さらに、好ましくは、当該格子上に照射した位置を標識付けする工程を含む。
【0056】
好ましくは、上記組織を照射する工程が導波管の断面積よりも大きい心臓壁部の領域を同時に照射する工程を含む。
【0057】
さらに、本発明の好ましい実施形態においては、上記導波管を介して組織を照射する工程が組織近傍において導波管の半径寸法を拡大する工程を含む。
【0058】
さらに別の好ましい実施形態においては、上記カテーテルを位置決めする工程がカテーテルの柔軟な先端部を心臓壁部に押し当てて当該壁部にその部分を一致させる工程を含み、上記組織を照射する工程が上記先端部の半径方向の近傍における領域を照射する工程を含む。好ましくは、上記組織を照射する工程は上記先端部の第1の部分の近傍における心臓壁部上の第1の細長い片状部分を照射する工程と、当該第1の片状部分にほぼ平行な複数の片状部分を照射する工程を含む。
【0059】
さらに別の好ましい実施形態においては、上記カテーテルが冠状動脈内に導入される。また、さらに別の好ましい実施形態においては、上記心臓組織を照射する工程がカテーテルにより導入される導波管を介する照射工程に加えて、または、その代わりに、心外膜を照射する工程を含む。
【0060】
好ましくは、非心筋組織が心筋組織の側壁部にほぼ垂直に少なくとも部分的に露光され、上記組織を照射する工程が電磁放射線供給源に連結した光学素子を上記少なくとも部分的に露光された非心筋組織上に配置する工程を含む。好ましくは、上記非心筋組織が胸内空孔部の胸部筋肉を含み、上記組織を照射する工程が上記光学素子をその組織近傍の胸内空孔部内、最も好ましくは、胸膜の近傍に配置する工程を含む。
【0061】
本発明の好ましい実施形態においては、上記電磁放射線供給源は収束した非干渉光供給源を含み、好ましくはキセノンランプであり、最も好ましくは30mW/cm乃至500mW/cmの放射出力密度を有している。
【0062】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、心筋組織の生体刺激用装置は、
電磁放射線供給源と、
電磁放射線を受けとって当該放射線を伝達して心筋組織の不整脈領域を照射するためのリレー用光学部品を備えている。
【0063】
本発明の好ましい実施形態においては、上記装置はエコー式画像処理装置に連携するエコー式トランスデューサを備えており、当該エコー式トランスデューサは梗塞領域の位置情報を提供するように動作する。さらに、上記装置は上記リレー用光学部品とエコー式トランスデューサを一体に固定して一定の空間位置関係に維持するファスナーを備えている。
【0064】
上記電磁放射線供給源は好ましくは干渉光供給源を備えており、最も好ましくは5mW乃至5Wの出力範囲で250nm乃至940nmの波長範囲のダイオードレーザーを備えている。
【0065】
あるいは、上記電磁波供給源は非干渉光供給源を備えており、好ましくは30mW/cm乃至500mW/cmの放射出力密度を有するキセノンランプを備えている。
【0066】
本発明の好ましい実施形態においては、上記装置は上記リレー用光学部品を保持する移動アームと当該アームを制御可能に移動するサーボユニットを備えている。
【0067】
好ましくは、上記リレー用光学部品は、患者の胸部内に導入するための先端部(遠位端)と上記電磁放射線供給源に連携する基端部(近位端)を有する光ファイバー式光案内部材を備えている。好ましくは、上記光学部品は電磁放射線出力を減衰するフィルターと上記光ファイバー式光案内部材の先端部に連結するレンズを備えている。
【0068】
さらに、本発明の好ましい実施形態においては、上記装置は心室内に導入するための細長いプローブを備えており、上記リレー用光学部品は当該プローブ内に収容された導波管を備えている。
【0069】
好ましくは、上記プローブは当該プローブを心室内に位置決めするための少なくとも1個の位置センサーを備えており、この位置センサーは外部磁場に応じて信号を発生する磁気位置センサーを備えているのが好ましい。
【0070】
あるいは、または、上記に加えて、上記プローブは心筋の生存能力を指示する心臓からの局所的な生理学的信号を感知するための少なくとも1個の生理学的センサーを備えている。
【0071】
あるいは、または、上記に加えて、上記プローブは心筋組織に到達する局所的電磁放射線出力値を感知するための放射線センサーを備えている。
【0072】
本発明の好ましい実施形態の一例においては、上記プローブはLMR導波管を備えており、この導波管は心筋組織のレーザー脈管再生用のレーザー供給源に連携している。好ましくは、上記LMR導波管は、その先端部において、レーザービームを組織上に収束するように構成されたレンズに接続している。
【0073】
好ましくは、上記導波管は光ファイバーを備えていて、その先端部において、生体刺激性電磁放射線を拡散する光学素子に接続している。好ましくは、上記光学素子は広角レンズを備えており、最も好ましくは、魚眼レンズを備えている。好ましくは、上記光学素子は上記導波管の断面積よりも実質的に大きい断面積を有するビームを発する。
【0074】
さらに、本発明の好ましい実施形態によれば、心臓内照射のための装置は、
基端部(または近位端)および先端部(または遠位端)を有して被検体の心臓の中に挿入するための細長いプローブと、
電磁放射線を上記基端部における供給源から上記先端部に伝送する導波管と、
上記導波管を介して電磁放射線を受け取って当該導波管の断面よりも実質的に大きい断面積を有するビームを発する上記先端部近傍に位置する光学素子を備えている。
【0075】
好ましくは、上記光学素子は上記プローブに対して外側に半径方向にビームを発する細長い長手方向に配置された素子を備えている。
【0076】
好ましくは、上記光学素子は湾曲した外表面を有しており、少なくとも2cmの長さで2mm乃至3mmの幅を有している。
【0077】
また、本発明の好ましい実施形態の一例においては、上記プローブは柔軟性の部分を有しており、当該柔軟性部分に上記光学素子が収容されており、同柔軟性部分が心臓の壁部に一致して光学素子がこの壁部と物理的に接触する。好ましくは、上記プローブは2個以上の近接センサー、最も好ましくは圧力センサーを備えており、これらのセンサーがプローブの心臓壁部への接触を感知する。
【0078】
さらに別の好ましい実施形態においては、上記光学素子が上記プローブの先端部において当該プローブの長手軸に対して傾斜する概ね楕円状の放射線発光領域を備えており、当該素子が凸状の外表面を有しているのが好ましい。
【0079】
さらに別の好ましい実施形態においては、上記光学素子が、その先端部において、心臓内に挿入するための狭くて閉じた形態と心臓内の心筋組織照射用の拡張した形態とを有する拡張用光学先端部を備えている。
【0080】
好ましくは、上記光学先端部は放射線散乱膜を備えている。あるいは、または、上記に加えて、上記光学先端部は放射線発光点状供給源を囲む折りたたみ可能な反射装置を備えており、当該反射装置が多面体反射装置を備えているのが好ましい。また、上記光学先端部は折りたたみ可能な光ファイバーの束を備えている。
【0081】
さらに、本発明の好ましい実施形態においては、上記プローブは外部スリーブと当該外部スリーブ内に摺動可能な内部スリーブを備えており、内部スリーブがプローブの先端部近傍に拡張可能な部分を備えており、この拡張可能な部分が閉じた形態で外部スリーブ内に保持されていて、内部スリーブが外部スリーブの先端側に滑り出た時に、拡張して開いた形態になる。
【0082】
以下、図面に基づいて、本発明の好ましい実施形態を詳述することにより、本発明がより明らかに理解されることとなる。
【0083】
〔好ましい実施形態の詳細な説明〕
図1は本発明の好ましい実施形態に従う電磁気学的心臓刺激法(ECB)の各方法を説明するフローチャートである。これらの方法は電磁放射線供給源による心筋組織の照射に基づき、これによって、心筋組織の生体刺激が引き起こされる。この方法は何らの特定波長範囲に制限されることはない。しかしながら、本発明を実施する最良の態様は赤外線(IR)、可視光および紫外線(UV)を含む範囲内である。この特定波長、出力レベル、照射持続時間および照射回数は患者の必要に応じて選択される。
【0084】
後述するように、放射線はレーザーにより生じる放射線のような干渉光であってもよく、また、キセノンランプにより生じるような非干渉光であってもよい。本発明の方法は放射線トランスデューサを患者の外皮上に置いてそこから心筋を照射するように、身体および心臓の両方に対して非侵襲性である。あるいは、患者の胸部または背部のような非心筋組織である体組織を少なくとも部分的に露光することも可能であり、そこから心臓を照射するようにトランスデューサを使用することができる。このような場合は身体に対して部分的に侵襲性であるが、このような処理は比較的薄い筋肉層を通して照射を浸透させることができ、さらに、比較的高くて最適な心筋上の照射出力が得られる点で有利である。さらに、本発明の方法は大動脈のような血管を介して冠状動脈から心室内に導入したカテーテルによって心臓を照射するように、心臓に対して侵襲性であってもよい。あるいは、本発明の方法は光ファイバーを胸部空孔部内に導入して当該胸部空孔内部から直接に心筋を照射するように、胸部空孔部に対して侵襲性であってもよい。
【0085】
この照射処理は以下に詳述するように心筋の生体刺激を引き起こす。例えば、梗塞の展開後の心筋組織を照射することによって、この照射処理は梗塞領域の大きさを減少し、梗塞領域内の心筋細胞の再生を引き起こし、梗塞領域内の心筋細胞におけるミトコンドリアおよび収縮性蛋白質の構造および活性を維持し、さらに、心筋梗塞または不整脈の発生後の急速な退化を阻止し、かつ/または、病気の心筋機能を改善することができる。
【0086】
本発明の好ましい実施形態の一例によれば、図4Aおよび図4Bに基づいて後述するように、上記ECB処理レーザー心筋脈管再生(LMR)処理中またはこれと共に行なわれる。
【0087】
また、本発明の別の好ましい実施形態によれば、上記照射処理が薬品の注射を伴って行なわれ、最も好ましくは、FDPが、後述するように、照射の前に注射される。このような注射処理は無酸素解糖機能を再活性化することにより(急性および梗塞後の)不整脈を部分的に阻止し、ATPやCPのような高エネルギー代謝物質の補給を促進することにより再灌流後の傷害を緩和すると考えられる。従って、このようなECB処理と細胞保護剤FDPとの組合せは梗塞領域についての治癒効果に対して実質的な協働作用効果があると考えられる。また、必要に応じて、例えば、無毒性のセレノ−有機遊離ラジカルスカベンジャーのような他の細胞保護薬剤をECB処理と組合せて使用することにより上記の協働的治癒効果を得ることも可能である。
【0088】
なお、図1に示す特定の各治療方法は本発明の範囲を限定することを目的としたものではなく、特定の好ましい実施形態を例示的に説明するためのもである。また、当該技術分野において熟練した者であれば、本明細書の図面および記載に示すECB治療法の各態様が異なる組み合せで使用でき、さらに、当該技術分野において知られる他の心臓治療用の方法および装置と組み合せて使用できることが理解できる。
【0089】
実験結果
本発明の好ましい実施形態に従って幾つかの実験を行ない、それらの結果を以下にまとめた。
【0090】
実験例I
49匹の雄のスプラグ−ドーリー(Sprague-Dawley)種のいずれも麻酔をかけた生後6週間乃至8週間(220g乃至260g)のラットを以下の実験に用いた。胸骨の左側にこれと平行に2cmの切開部を形成し、5番目と6番目のあばら骨をクランプにより分離して、胸部の横側に圧力を加えて心臓を体外に出した。次いで、左冠状動脈を単一縫合線により元の状態から2mm乃至3mm閉塞した。その後、胸部を閉じてラットを回復させた。この処理は心筋梗塞および慢性の不整脈を誘発する。
【0091】
23匹のラットを手術直後にダイオードレーザー(波長780nm,38mW)を用いて照射した。この照射処理はレーザー供給源の先端部を露出した肋間筋上に左心室の側壁部にほぼ垂直に置いて軽く押圧しながら行なった。このレーザー供給源は胸骨から左横側に4番目および8番目のあばら骨の間を平均的横方向に胸部域を覆うように2分間一定速度で移動した。
【0092】
個々の実験において、ラットの肋間筋(約2mm厚)を通したレーザーの透過効率をレーザー供給源を上述のように配置して、このレーザー供給源の下方の胸部空孔部内に挿入した特別のレーザーメーターによりレーザー出力を側手することにより決定した。この結果、心筋に到達したレーザーの出力は少なくとも6mWであった。
【0093】
レーザー照射処理を同様にして術後3日目に3分間軽いエーテル麻酔下に再び行なった。なお、対照ラットは上述の処理(レーザー照射)ラットと同様に手術したがレーザー照射は受けていない。全てのラットを術後21日目にエーテルで麻酔し、胸部を開けて、心臓(鼓動している)を切除して速やかに氷冷生理塩水に約5秒漬けて血液を洗い除いた。次いで、心臓をその頂点から3等分(約2mm)に切断して、その中間の部分を中性バッファーホルマリン液に24時間固定した。次いで、これらの切断部分をアルコール中で脱水し、パラフィン中にうめこみ、Massonの三色着色処理法で着色した。
【0094】
すなわち、Massonの着色処理において、各心臓内の梗塞領域(当該領域においては収縮筋組織の代わりに連結瘢痕組織が形成されている)を瘢痕組織の特異的着色によって輪郭付ける。その後、梗塞領域の大きさを左心室の全面積に対する瘢痕連結組織により占められる割合として各切断部分において計算した。さらに、定量的体型測定処理および統計処理を上記文献のN. WeissおよびU. Oronおよび上記文献のO. Barushka, T. YaakobiおよびU. Oronに記載されるように行なった。
【0095】
対照ラットの梗塞領域の大きさは29.6±4.3%であり、レーザー照射したラットの梗塞領域の大きさは僅かに9.5±0.9%で、対照ラットの大きさに比して有意差(P<0.001)を持って小さくなることが分かった。
【0096】
次に、レーザーの不所望な影響を調べるために、擬似的に手術(冠状脈を閉塞することなく心臓を胸部から外に出した)ラットを照射して非照射ラットと比較した。この結果、照射したラットと照射しないラットの両方の心筋におけるクレアチンホスホキナーゼ(細胞生存能力のマーカー)の酵素活性は同じであった。つまり、照射したラットの心筋における超微細構造的変化は照射しない対照ラットに比して全く見られなかった。
【0097】
実験例Iの結果から、心筋梗塞後のレーザー照射は対照の非照射ラットに比して約70%の梗塞領域の大きさの減少を引き起こすことが分かった。なお、低出力レーザーの細胞全体および特に心筋細胞に対する作用モードについてはまだ完全に把握されていない。しかしながら、低出力レーザーおよび光による梗塞領域の大きさの顕著な減少は臨床的に最も重要な結果と考えられる。すなわち、この処理によって、人間、特に、若い人々における急性心筋梗塞の場合の死亡率を減少することが可能である。また、この処理は急性心筋梗塞後のバイパス心臓手術の必要性を減少できる。さらに、このレーザー処理は心臓切開またはバイパス手術中に血液循環から分離された冬眠(冷却)状態の心臓における筋肉組織の維持に役立つ。加えて、この処理によって、種々の心臓病(例えば、狭心症)における心筋機能を改善することが可能である。
【0098】
実験例II
実験例Iに記載したように22匹のラットに心筋梗塞を誘発した。このうちの10匹のラットを対照とし、残る12匹のラットに対して実験例Iとは異なるレーザー照射処理を行なった。すなわち、この場合のレーザー処理は出力47mWで波長830nmのダイオードレーザーを使用し、照射態様は実験例Iと同様であるが、梗塞の誘発直後に5分間行なった。さらに、梗塞発生後3日目および梗塞発生後4日目に、これらのラットを上記と同条件でさらに2回レーザー照射した。21日目にこれらのラットから心臓を除去して、実験例Iと同様にその梗塞領域の大きさを計算した。この結果、対照ラットの梗塞領域の大きさは31±7%であり、レーザー照射したラットの梗塞領域の大きさは僅かに5.5±1.2%であった[有意差をもって(P<0.001)対照よりも低い]。また、この場合のレーザー照射したラットの梗塞領域の大きさは実験例Iにおいてレーザー照射したラットに比しても有意差を持って小さい(P<0.05)。
【0099】
実験例IIの結果から、種々の波長(少なくとも700nm乃至830nmの範囲)、出力、照射時間(この値により組織に供給される全エネルギー量が決定される)および梗塞した心臓に対する有効なレーザー照射作用の梗塞誘発後のタイミングが関係することが分かった。さらに、心筋梗塞の誘発の大きさについての比較は実験例IIの方が実験例Iに比して良好であった。
【0100】
実験例III
別の21匹のラットを実験例Iと同様に心筋梗塞するように処理した。そのうちの10匹を対照とし、残りの11匹のラットを実験例Iに記載したようにレーザー処理した。心筋梗塞誘発後21日目に、心臓を取り出して人工生理用液中においてランゲンドルフ(Langendorff)装置に接続した。その後、これらの心臓に冠状動脈を介してTTC(トリフェニルテトラゾリウムクロライド)を注射した。この溶液は「健康な」傷ついていない心臓細胞を赤色に着色し、心臓内の損傷した瘢痕組織を淡い黄色に着色する。その後、これらの心臓を中性緩衝ホルマリン液に固定して横方向に切断した。さらに、定量的な体型測定および定量的な統計処理を実験例Iと同様に行なった。
【0101】
この結果、心筋梗塞領域の大きさ(左心室の全面積に対する損傷した淡黄色領域の%値)は対照群において32±5%であり、この値はレーザ照射した群の値8±3%よりも有意差を持って(P<0.001)高かった。
【0102】
実験例IV
24匹のラットに実験例Iと同様に心筋梗塞を実験的に誘発した。そのうちの12匹を実験例Iと同様にレーザー照射処理し、残りの12匹を対照として使用した。実験的に心筋梗塞を誘発してから6日目および実験的に心筋梗塞を誘発してから21日目に、6匹の対照ラットおよび6匹のレーザー照射ラットからそれぞれ心臓を取り出して、各心臓から組織学的断片を実験例Iと同様に作成した。次いで、これらの断片をデスミンに対する抗体で着色して新しく形成された筋原性の収縮性蛋白質を合成する細胞を輪郭付けした。なお、当該技術分野において知られるように、デスミンは胚筋細胞のマーカーとして作用する蛋白質である。このデスミンは筋原性の収縮性蛋白質を合成する細胞の細胞質のみにおいて見られる。この結果、レーザー照射したラットにおける梗塞領域内の多くの細胞がデスミンに対して積極的に着色したが、非照射のラットの場合はデスミンについてほとんど全く着色が見られなかった。
【0103】
すなわち、実験例IVから分かるように、レーザー照射処理は新たに再生する心臓細胞の形成または梗塞領域内の部分的に傷ついた細胞内における新しい収縮性蛋白質の合成を誘発するために使用できると考えられる。従って、本発明のこの実施形態は重要な医学的発見であり、心筋細胞の再生誘発を知らない従来技術に比して飛躍的差異を有する。
【0104】
実験例V
実験例Iと同一の(ラットの心筋梗塞誘発)実験システムを使用して、20匹のラットを左心室の心筋内に心筋梗塞を発生するように処理した。このうちの10匹を対照ラットとして擬似的に処理し、残りの10匹のラットをキセノンランプにより生成した収束光で手術直後に照射した。この光源の出力強度は約250mW/cmであった。この光ビーム(直径約2cm)を露出した肋間部に直接当てて10分間心臓の上方位置における胸部筋肉を(胸部空孔部および心臓に光をより効率良く透過させるために)部分的に切断した。さらに、梗塞してから2日目および梗塞してから4日目に、1日1回、上述の光照射を行なった。その後、手術後21日目に、対照および光照射したラットの両方の心臓を取り出して実験例Iと同様に梗塞部の大きさを計測した。この結果、対照ラットの梗塞部の大きさは32±6%であり、光照射したラットの場合は22±4%であった。つまり、30%の有意差(P<0.005)を持って光照射したラットの梗塞部の大きさが減少したことになる。
【0105】
従って、実験例Vの結果から、干渉性のレーザー照射だけでなく、収束光でも梗塞部の大きさを有意差を持って減少できることがわかった。
【0106】
実験例VI
蛇毒の一成分でエンドセリン(endothelin)のように作用するサラフォトキシンは平滑筋を収縮させて、マウスの血流内に一定投与量で注射すると、心室の筋肉性振動を引き起こして心臓発作の場合に見られるのと類似の心臓疾患により注射した被検体は死に至る。
【0107】
10匹のマウス群を用いて以下のようにサラフォトキシン中毒を伴う生体刺激性放射線の作用を調べた。すなわち、群Iは対照群として使用し、尾部静脈に生理塩水溶液を注射した。群IIおよび群IIIは注射した集団の50%が1時間以内に死ぬ投薬量でサラフォトキシンを注射した。さらに、群IIIはサラフォトキシンの注射の直後およびその2日後に実験例Iと同様に照射処理した。サラフォトキシンの注射後7日後に、全てのマウスの心臓を取り出した。
【0108】
この実験において、サラフォトキシンを注射したマウスの心室は対照に比してかなり膨張していることが分かった。電子顕微鏡分析によると、膨張した心室の心筋細胞に損傷が見られた。特に、分解した収縮性組織および他の細胞小器官と共に心筋細胞を含む膨潤した小包体が見られ、ECG解析の場合も注射したマウスの心臓内の伝導系に可能な損傷が見られた。
【0109】
左心室の全容積に対する左心室空孔部の比率(%)として現した膨張率は非照射のサラフォトキシン注射したマウス(群II)において22±7%であった。一方、レーザー照射したマウス(群III)の場合は、この膨張率は12±8%であり、非照射マウスの場合よりも有意差(P<0.05)を持って小さい。さらに、照射したマウスの心筋細胞においては、より組織化された収縮性組織が見られ、小包体も少なかった。
【0110】
従って、実験例VIから分かるように、同実験例において行なったようなレーザー照射処理は心筋細胞とおそらく伝導系組織を含んでサラフォトキシンの毒性作用から保護する。それゆえ、上記実験例I乃至実施例Vに示したような不整脈および梗塞した心臓組織を治療する場合のECB処理の治癒効果に加えて、当該ECB処理は心臓の毒性作用に対処する場合にも有効であると考えられる。
【0111】
実験例VII
2群の9匹のラットをそれぞれ用いてスーパーオキシドの形成および再還流後の傷害が生じていると思われる梗塞および再灌流後の状況下における生体刺激性放射線の作用効果を調べた。まず、左冠状動脈(LAD)を閉塞するために使用した縫合線の一端部を胸部筋肉内に接近可能にしての後にその閉塞部を解放可能にした以外は、実験例Iと同様に、18匹のラット全てに心筋梗塞を誘発した。さらに、9匹のラットから成る群Iを閉塞処理の直後に実験例Iにおけるラットと同様に照射処理した。群IIは対照として使用し、擬似的に処理した群であって、これらのラットは閉塞後に照射されていない。閉塞後45分後に、縫合線の端部を引っ張ってLADの閉塞を解放し、不整脈領域の再灌流を生じさせた。その後14日後に、全てのラットの心臓を取り出して、これらの心臓を実験例Iに記載した組織学的処理を行なった。レーザー照射した(群I)ラットの膨張率(実験例VIにおいて定義したような)は0.1±0.06%であり、非照射(群II)のラットの場合(0.18±0.02%)よりも有意差(P<0.05)を持って低かった。
【0112】
この実験例VIIは、例えば、バルーン式血管形成または薬物治療による冠状動脈内の傷害物の解放時に生じると考えられるような、スーパーオキシド形成および再灌流傷害を含む梗塞および再灌流後(すなわち、梗塞領域における再灌流)の状況を擬似的に行なったものである。この実験例VIIの結果から、同実験例において行なったような、生体刺激性レーザー照射処理が、心室空孔部の膨張率を相対的に下げることによって分かるように、再灌流傷害に対して有効であることが分かる。
【0113】
実験例VIII
13匹のラットを用いて不整脈心臓領域の生体刺激性照射におけるレーザー出力の作用効果について調べた。まず、実験例Iと同一の実験システム(ラットの心筋梗塞誘発)を使用した。6匹のラットを対照として使用して擬似的に手術し、別の7匹のラットは手術直後に実験例Iにおける波長で220mWの出力のレーザー光で照射した。この場合の胸部筋肉を通過して心臓組織に到達するレーザーの最終的出力レベルに相当する値は28mW乃至30mWであり、実験例Iにおいて使用した出力レベルの6倍高い。手術後14日後に、全てのラットの心臓を取り出して、これらの心臓の梗塞部の大きさを実験例Iと同様に評価した。この結果、レーザー照射したラットの梗塞部の大きさは37±8%であり、対照(擬似的手術で非照射)のラットは39±6.5%で照射したラットと有意差を持って異ならなかった。
【0114】
実験例VIIIの結果から、梗塞した心臓領域の生体刺激性作用についての最適なレーザー出力レベルの存在の可能性が示された。すなわち、6倍の出力増加が、これよりも低い出力レベルでの初期の実験例において見られた梗塞部の大きさの減少効果に比べて、梗塞部の大きさに関してほとんど全く効果がないということは、一定レベル以上になると、出力の増加によって生体刺激性効果が低下することを示している。
【0115】
ECB処理の装置および方法
図2AはECB装置として本特許出願および請求の範囲に関連する心筋組織の電磁放射線による生体刺激のための装置10を示している図である。この装置10は制御回路16を備えるコンソール12から構成されているのが好ましく、制御回路16は、特に、照射の持続時間および出力レベルを制御し、治療終了時において照射処理を自動的に停止し、ディスプレイ18上に表示する操作情報を発生し、例えば、キーボード20のような制御インターフェイスを介して治療中の操作パラメータの調節を可能にする。さらに、この装置は電磁放射線リレー用光学部材22を備えており、この光学部材はレーザー供給源のような電磁放射線の供給源24と連携している。光学部材22は適宜に配置されて供給源24からの放射線を心筋組織15の梗塞部14上に伝達する。また、必要に応じて、光学部材22は患者の胸部または背部上の部分的に露出した非心筋組織に接して配置される。
【0116】
好ましくは、装置10はエコー式画像処理装置28に連携するエコー式トランスデューサ26を備えている。このエコー式トランスデューサ26は超音波画像を生成するために用いられ、この超音波画像によって、梗塞部14に関する位置情報を得ることができる。さらに、ファスナー30が光学部材22とエコー式トランスデューサ26を一体固定しており、これらの光学部材およびトランスデューサを互いに一定の空間関係に維持している。このファスナー30は、例えば、バンド、クランプ、ハウジングまたはブラケットのような任意の種類のものでよく、金属またはプラスチックのような任意の適当な剛性材料により形成できる。なお、エコー式トランスデューサ26は梗塞部を光学部材22により照射しながら、この梗塞部14の位置および梗塞部14の大きさを同時にモニターすることができる。
【0117】
供給源24は好ましくは適当な出力供給により励起できるレーザーユニットから構成されている。さらに、このレーザーユニットは630nm乃至940nmの範囲の好ましい波長と5mW乃至5Wの完全調整した出力を有するパルス化または連続的な多数個のダイオードレーザーを備えているのが好ましい。また、供給源24は例えば広帯域幅のキセノンランプまたはUV供給源のような非干渉性の光供給源であってもよい。
【0118】
上記のダイオードレーザーは互いに0.5cm乃至1cm離間してベース上に取り付けられているのが好ましい。さらに、このベースは円弧形状であるのが好ましく、種々のプラスチック材料またはスチールのような適当な剛性を有する材料により形成できる。一般に、このベースは5cm乃至50cmの長さで20cmの幅を有しており、60個乃至100個のダイオードレーザーを取り付けている。このレーザーユニットは好ましくはその操作パラメータの外部制御を可能にする手段を備えている。
【0119】
放射供給源24の他の例は、639nm乃至940nmの範囲の適当な波長で40mW乃至5Wの適当な出力で適当なビーム径の複数の好ましくは小形で可動な(連続的またはパルス化した)ダイオードレーザーまたは他の任意の(例えば、He−Ne)レーザー供給源から成るレーザーユニットである。
【0120】
上記の供給源24または光学部材22はさらに、例えば、自動制御式レバーアームのような自動化した走査装置を備えている。このレバーアームは、好ましくは、「全方向」ホイールを有する調整可能な望遠鏡用の電気式支持部材上に取り付けられているのが好ましい。この種の走査装置を本発明の別の好ましい実施形態に基づく図2Bに示す。
【0121】
図2Bは本発明の別の好ましい実施形態に従う部分的に侵襲性のECB処理用の装置32を示している図である。好ましくは、この装置32は上述の図2Aの装置10に基づいて説明した各ユニットに加えて、光ファイバーの導波管34を備えており、この導波管は電磁放射線供給源24に接続している。さらに、装置32は移動アーム44と剛性スリーブ46を含むサーボユニット42を備えており、このサーボユニットは導波管34を機械的損傷から保護する。また、導波管34はその先端部(または遠位端)36に放射線出力減衰用のフィルター38とレンズ40を備えているのが好ましい。すなわち、部分的に侵襲性のECB処理中に、導波管34の先端部36が胸部における切開部を通して患者の体内に挿入される。その後、心臓外科医または外科医はアーム44を移動して導波管が内側の胸膜に到達するまで移動する。この結果、レンズ40が胸膜部に接近して配置されて、生体刺激性の放射線が胸膜を通して心筋の不整脈領域に当てられ、レンズ40が放射線拡散性光学膜として機能して、当該レンズ40から発せられる放射線ビームが広い目的領域上に拡散する。
【0122】
図3Aは本発明の別の好ましい実施形態に従う侵襲性の心臓内ECB処理用の装置48を概略的に示している図である。この装置48は、好ましくは、上述した図2Aの装置10に基づいて説明した各ユニットに加えて、電磁放射線供給源24および制御回路16に接続する心臓室内に挿入するためのカテーテル50(以下において図3B基づいて詳述する)を備えているのが好ましい。
【0123】
図3Bはカテーテル50の先端部(または遠位端)51の概略図である。すなわち、カテーテル50は基端側で電磁放射線供給源24と先端側でレンズ54に接続する導波管54から構成されている。さらに、このカテーテル50は、好ましくは回路16にワイヤ60を介して接続する磁気コイル58から構成されて上述のPCT国際公開第WO 96/05768号に記載されるような外部供給磁場に基づいて先端部51の位置を決定するための位置センサー56を備えている。従って、このカテーテルは、好ましくは、照射する不整脈領域を標識する心筋の形状マップ上の点格子に沿って、位置センサーにより操縦および位置決めされる。好ましくは、この点格子は心臓の生存能力マップに基づいて決定され、このマップは以下に記載する各方法の使用に先だって作成されて制御回路16に入力されている。あるいは、この生存能力マップの作成は上記ECB処理の途中またはこれに伴って行なうことも可能である。
【0124】
必要に応じて、上記カテーテルは放射線センサー57を備えており、このセンサーは心筋の照射部位に接して配置される。すなわち、この放射線センサーは心筋表面に投射する実際の放射線出力レベルと、ECB処理中に部位に供給される全エネルギーを測定する。これらの出力レベルおよび全エネルギーのデータは供給源24の出力レベル調整および照射中のカテーテルの位置および照射中のカテーテルの方向の適性確認ならびにECB処理中の電磁放射線供給源の方向の適性確認のために使用できる。
【0125】
図3Cは本発明の別の好ましい実施形態に従う装置48(上述の図3Aに示す)と共に使用するカテーテル62の先端部51の概略図である。この実施形態においては、上記ECB処理は生存能力マップ処理と組合せてこれと同時に行なわれる。従って、カテーテル62は少なくとも1個の生理センサー64を備えており、このセンサーは局所的組織の生存能力に応じる心臓からの生理学的信号を感知する。このような生存能力マップは心臓組織の不整脈であるが生存可能な領域を認識する上で有用であり、ECB処理が有用でない梗塞して生存可能でない領域やよく灌流されて健康な領域に比して、ECB治療法が最も有効に適用できる。このような目的のために、センサー64は、例えば、米国特許出願第08/595,365号および米国特許第5,568,809号に記載されるような、電位図信号を感知する電子的−生理学的電極や機械的信号を感知する機械的−生理学的検出装置を備えているのが好ましい。
【0126】
この結果、ECB供給源24はセンサー64により発せられた局所的生存能力データに応じて動作する。必要に応じて、この生存能力データは位置センサー56により生成された位置決め座標と共に用いることによって、ECB処理と共に、かつ、その途中で、心筋組織の生存能力マップを作成する。好ましくは、格子点が照射する不整脈領域を覆ってカテーテル62を位置決めする領域内の点を示すように、上記マップ上に選択および標識される。さらに、このようにして指定した領域の照射処理の進行中に、上記マップは照射している部位を認識するために更新される。必要に応じて、生存可能性検出処理を照射処理後に行なってその治療の有効性を評価することができる。
【0127】
上述の実施形態は電子的−または機械的−生理学的検出装置について説明したが、例えば、微小循環血液の流速を測定する灌流検出装置または局所的血液灌流に関連する蛍光発光を感知する光検出装置のような、他の生理学的検出装置を用いて組織の生存可能性データを得ることもできる。
【0128】
図4Aは本発明の別の好ましい実施形態に従うLMR(レーザー心筋脈管再生)およびECB治療の組み合せ用の装置66を概略的に示している図である。この装置66はLMR制御回路70とECB制御回路16、LMRレーザー供給源46、電磁ECB放射線供給源24および心臓の室内に挿入するためのカテーテル72(図4Bに詳細に示し、これに基づいて後述する)を含むコンソール68を備えている。このカテーテル72はレーザー供給源46に接続する導波管74と電磁放射線供給源24に接続する別の導波管52を備えている。好ましくは、このカテーテルは上述したような位置センサー56も備えている。
【0129】
図4Bは図4Aに示したカテーテル72の先端部51の詳細部を概略的に示している図である。このカテーテルは、後述するように、治療する不整脈領域に操縦されて位置決めされる。すなわち、電磁放射線供給源24に連結する導波管52がECB電磁放射線をレンズ54を通して不整脈領域に伝達する。必要に応じて、LMRレーザー供給源46および電磁放射線供給源24に接続する単一の導波管が両方のビームを一緒にまたは続けてそれぞれの供給源から単一の複合レンズを通して心筋組織に伝達するように構成できる。LMR供給源46は例えばCOレーザーのような遠赤外レーザーから構成するのが好ましく、また、ECB供給源24は可視光放射線供給源から構成するのが好ましいので、レンズ76は、例えば、当該技術分野において知られるような回折性光学部材を用いて、LMRビームを収束し、かつ、ECBビームを発散させるように適当に構成することができる。
【0130】
カテーテル72は大動脈のような血管を通して心臓の室内に供給され、位置センサー56によって不整脈領域に案内される。その後、心臓のマップ上に示された不整脈領域内の各格子点において、上述の如くかつ上記PCT国際出願PCT/IL97/00011号に記載されるように、LMRレーザー供給源46および生体刺激性照射供給源24は共に起動する。次いで、照射された点が格子上に標識される。この時、LMR放射線は各点において脈管再生チャンネルを形成し、形成されたチャンネルおよびその周りの不整脈領域のECB照射処理によって不整脈または梗塞した領域への治癒効果および協働的作用効果が高められると考えられる。あるいは、ECB照射処理を、好ましくは同一マップに従って、全てのLMRチャンネルの形成完了時に行なうことも可能である。また、必要に応じて、上記組合せのECB/LMR処理を上述のFDPまたは無毒性セレノ−有機遊離ラジカルスカベンジャーの投与を伴って行なうこともできる。
【0131】
一般に、不整脈領域は心筋のせいぜい10cm程度であり、典型的なカテーテル50,62およびカテーテル72の断面は数mm程度である。さらに、血液中および筋肉組織中における生体刺激性波長の電磁放射線の吸光係数は放射線が当該血液または組織を通して数ミリメートル以上浸透しない程度に高い。このような出力レベルの減衰のために、カテーテルの発光領域と不整脈組織との間が近接、好ましくは、物理的に接触していることが必要となる。従って、レンズ54は好ましくは、例えば、当該技術分野において知られるような魚眼レズの如き広角レンズから構成されていて、短い焦点距離で放射線ビームを広げることにより、心臓の指示領域を完全に照射するためにカテーテルの再位置決めを要する異なる点の数を減らすことができる。さらに、別の好ましい実施形態においては、後述するように、ECBカテーテルが特別に構成したビーム出力光学部材を備えていて照射面積をさらに増加するようになっている。
【0132】
図5Aは本発明の別の好ましい実施形態に従うECB治療用のカテーテル84を概略的に示している図である。このカテーテル84は柔軟性の先端部82を有しており、この先端部は、本明細書に参考文献として含まれる上記米国仮特許出願第60/034,704号に記載されるように、心臓壁部に対して押圧された時に、当該心臓壁部の内表面に形状一致できる。さらに、複数の圧力センサー80および少なくとも2個の位置センサー56が柔軟性先端部82に沿って離間して配置されて、ワイヤ60を介して回路16にそれぞれ接続している。これらのセンサー56およびセンサー80は心臓壁部に対する先端部82の位置、および、好ましくは、その方向を確認するために使用される。すなわち、センサー80の全ての出力信号がほぼ等しい正の圧力を示せば、柔軟性先端部82が(後述する図5Bに示すように)心臓の内壁形状に一致していると推定できる。なお、圧力センサーの数の増減は可能であり、上記米国仮特許出願第60/034,704号に記載されるように、他のセンサーを先端部82の心臓壁部に対する一致確認のために使用することもできる。
【0133】
カテーテル84はさらに長手方向に配置された放射線発光素子79を備えており、この素子は柔軟性部分82の先端部に沿う破断部78の中に嵌合している。放射線発光素子79は電磁放射線供給源24(例えば、図2Bに示すような)から導波管52を介して電磁放射線を受け取るように連結して、当該素子に近接する心臓組織を照射するように構成されている。この素子79は、例えば、湾曲した外表面を有する円筒形のレンズから構成されていて、このレンズがカテーテル84に対して外側で半径方向に選択的に電磁放射線ビームを発光する一方で、当該レンズの内表面が反射するようにコーティングされている。あるいは、素子79は光学的光案内部材または当該技術分野において知られる他の適当な光学素子の断片により構成してもよい。最も好ましくは、上記破断部78は2mm乃至3mmの長さで0.2mm乃至0.3mmの幅を有していて、約0.5cmの放射線発光面積を形成している。従って、発光ビームの断面は導波管52の断面よりも実質的に大きくなり、カテーテル84の心臓壁部に接する各位置、すなわち、心臓組織の対応する領域全体が照射可能になる。
【0134】
図5Bは心臓71の心室75の中に挿入したカテーテル84を概略的に示している図である。カテーテル84の柔軟性部分82は内部の心臓壁部73に押圧接触してその形状と一致しており、これによって、全センサー80の出力信号がほぼ等しい正の圧力を示す。光学部材79は照射する領域の方に向けられていて当該領域に物理的に接触しているために、心室75の中の血液の吸収による放射線発光ビームの減衰が最小に保たれる。
【0135】
カテーテル84は、上述の図3Bに基づいて詳細に説明したように、位置センサー56により心臓の形状マップ上の格子点に従って操縦および位置決めされるのが好ましい。好ましくは、上記カテーテルは、柔軟性部分82上に配置される位置センサー50のそれぞれの座標が上記マップ上のそれぞれの格子点に対応するように、位置決めおよび方向付けされる。このような状態において、放射線発光素子78は心臓壁部内の既知の位置および大きさの「片状部分(stripe)」に接触してこれを照射する。好ましくは、上記カテーテルは継続して再位置決めされて格子点に沿う一連の平行な片状部分を照射することによって心臓壁部73の所定領域全体を照射処理する。また、必要であれば、カテーテル84は当該一連の片状部分に対してほぼ直角に点格子に沿って角度を変えてこれらの片状部分に直角な第2の一連の片状部分を照射することが可能である。
【0136】
図6は本発明の別の好ましい実施形態に従う傾斜先端状カテーテル86の先端部90を概略的に示している図である。このカテーテル86は、当該カテーテルの長手軸に対して傾斜してビームエクスパンダー89を介して導波管52に接続する概ね楕円形の放射線発光領域88を備えており、このビームエクスパンダーは導波管52の狭い先端部と比較的広い放射線発光領域88を連結している。好ましくは、楕円形放射線発光領域88は凸状の表面を備えていて、発光面積をさらに増加できるように構成されている。好ましくは、カテーテル86は上述のような(簡略化のために図6には示していない)位置感知素子および他の機能組織を供えている。従って、このカテーテル86は図5Aおよび図5Bに示すカテーテル84と同様に、心臓壁部の各点において当該心臓壁部の比較的広い面積を照射できるという利点を有する。
【0137】
次に、図7Aおよび図7Bは本発明の好ましい実施形態の一例に従う拡張用光学先端部92を有するカテーテル99を概略的に示している図である。この先端部92は心臓内への挿入時に図7Aに示すような狭められた形態で収容されていて、心臓内においては、図7Bに示すように広がってその先端部領域を増大する。この先端部92は、導波管52に連結して可動で柔軟性の内部スリーブ94の中に収容される拡張可能な光ファイバーの束98から構成されている。さらに、カテーテル99が心臓の中に挿入されると、スリーブ94が外部スリーブ96の外側に押出されて、光ファイバーの束が図7Bに示すような拡張した形態に開いて、心臓壁部の広い領域を照射できるようになる。その後、カテーテルを心臓から抜き出す前に、上記操作が逆に行なわれて、スリーブ94がスリーブ96の中に滑り戻って先端部92がその最初の圧縮された形態に戻る。
【0138】
図8A,図8Bおよび図8Cは本発明の別の好ましい実施形態に従う別の種類の拡張用光学先端部92を有するカテーテル102を概略的に示している図である。このカテーテル102は図8Aにおいてその圧縮形態が示されており、図8Bにおいてその拡張形態が示されている。さらに、図8Cは図8Bの形態におけるVIII−VIII線に沿う先端部92の断面を概略的に示している。
【0139】
カテーテル102の先端部92は放射線の点状供給源108を囲む複数の反射性部材104を有する折りたたみ可能な反射装置106から構成されており、この反射装置は導波管52の先端部に形成されているのが好ましい。さらに、反射装置106は、好ましくは、適当な機械的支持部材114により支持されている。圧縮形態で心臓の室内にカテーテルが挿入された後に、先端部92および位置センサー56に沿う内部スリーブ94がスリーブ96から押し出されて反射装置106が図8Bに示すような拡張形態に広がる。その後、患者の体から抜き出す前に、先端部92が、図7Aおよび図7Bに基づいて既に説明したように、その初期的な圧縮形態に戻る。
【0140】
図9Aおよび図9Bは本発明のさらに別の好ましい実施形態に従う拡張用光学先端部92を有するカテーテル110を概略的に示している図である。このカテーテル110は、概ね図7Aおよび図7Bに基づいて既に説明したように、内部スリーブ94の操作によって、図9Aに示すような開放形態と図9Bに示すような閉じ形態の間で機械的に形状変換される。カテーテル110の先端部92は、例えば、柔軟性の半透明なプラスチック材料から成る、放射線散乱性光学膜112から構成されている。この膜112は好ましくは適当な拡張機構114上に支持されている。さらに、この光学膜は、その拡張形態において、心臓の内壁部に接して導波管52の先端部から発せられる放射線を心臓組織上に概ねその膜の全面を介して伝達する。すなわち、この光学膜の光散乱性によって、導波管から発せられる放射線ビームが心臓壁部の広い領域に拡散できる。
【0141】
LMR用のカテーテルのような、生体内組織に治療用放射線を伝達するための当該技術分野において知られるカテーテルは、一般に、当該カテーテルの先端部における目的物上に放射線を収束するように構成されている。しかしながら、本発明による図3乃至図9に示しかつこれらに基づいて説明したカテーテルは、このような放射線伝達用カテーテルとは異なって、カテーテルから組織へのエネルギー伝達を効果的に維持しながらカテーテル自体の断面よりも大きな面積で目的物上に放射線を拡散照射することを目的としている。なお、本明細書に記載した好ましい実施形態はこの目的を達成するのに有用な特定の光学的および機械的構成を示しているが、当該技術分野における熟練者であれば、本発明の原理に従って、他の構成がこの目的に同様に有用となることが可能であることを理解し得る。
【0142】
図10は本発明の別の好ましい実施形態に従う心臓の一定部分の侵襲性および部分的侵襲性の組合せ生体刺激性放射処理用装置116を概略的に示している図である。この装置116はカテーテル50と導波管34(図2Bに示す)の両方が連結している、上述の装置48(図3A参照)に基づいて説明したような、コンソール12と同様のコンソール112を備えている。導波管34の先端部(または遠位端)36は、図2Bに基づいて既に説明したように、患者118の体内に挿入されて患者の心臓120の心外膜を照射する。一方、カテーテル50の先端部(または遠位端)51は心臓120の室内に同時に挿入されて心内膜を照射する。従って、ECB照射処理が心臓の内側および心臓の外側の両方から不整脈心臓組織の拡張領域上に作用するので、上述の他の好ましい実施形態に比して、放射線による治療効果が心臓壁部の厚さ方向においてより大きな部分に到達し得る。
【0143】
上記の好ましい実施形態は例示的に説明したものであり、本発明の全範囲は以下に述べる請求の範囲においてのみ制限されるものである。
【0144】
〔関連態様〕
1.心筋組織の生体刺激を引き起こす電磁放射線の供給源により心筋組織を照射する工程からなる心筋組織の生体刺激のための方法。
2.前記電磁放射線が赤外線、可視光線および紫外線からなる群から選択される関連態様1に記載の方法。
3.前記組織を照射する工程が、心筋組織の梗塞部が一定の大きさに展開した後に当該心筋組織を照射してその梗塞部の大きさを減少する工程からなる関連態様1に記載の方法。
4.前記組織を照射する工程が、心筋組織の梗塞部が一定の大きさに展開した後に当該心筋組織を照射してその梗塞部における心筋細胞を再生する工程からなる関連態様1に記載の方法。
5. 前記組織を照射する工程が、心筋組織の梗塞部が一定の大きさに展開した後に当該心筋組織を照射してその梗塞部における心筋細胞内のミトコンドリアの構造および活性を維持する工程からなる関連態様1に記載の方法。
6.前記組織を照射する工程が、心筋組織の梗塞部が一定の大きさに展開した後に当該心筋組織を照射してその梗塞部における心筋細胞内の収縮性蛋白質の構造および活性を維持する工程からなる関連態様1に記載の方法。
7.前記電磁放射線の供給源が干渉光供給源からなる関連態様1に記載の方法。
8.前記干渉光供給源がダイオードレーザーからなる関連態様7に記載の方法。
9.前記供給源が5mW乃至5Wの出力で250nm乃至940nmの範囲の波長を有する関連態様1乃至関連態様8のいずれか1項に記載の方法。
10.前記組織を照射する工程が前記電磁放射線の供給源による心筋組織の複数の照射処理からなる関連態様1乃至関連態様8のいずれか1項に記載の方法。
11.前記組織を照射する工程が0.5分乃至15分の持続時間で前記電磁放射線の供給源による心筋組織の放射処理からなる関連態様1乃至関連態様8のいずれか1項に記載の方法。
12.前記組織を照射する工程が、カテーテルを心臓内に導入し、当該カテーテルを心臓壁部に近接配置してこのカテーテルにより心臓中に導入した導波管を介して心筋組織を照射する工程からなり、この導波管が前記放射線の供給源に連結している関連態様1乃至関連態様8のいずれか1項に記載の方法。
13.前記カテーテルが大動脈を通して導入される関連態様12に記載の方法。
14.さらに、前記照射処理に伴って治療用化学薬品を投与する工程からなる関連態様1乃至関連態様8のいずれか1項に記載の方法。
15.前記化学薬品を投与する工程がフルクトース−1,6−ジホスフェート(FDP)を投与する工程からなる関連態様14に記載の方法。
16.前記化学薬品を投与する工程がセレノ−有機遊離ラジカルスカベンジャーを投与する工程からなる関連態様14に記載の方法。
17.前記組織を照射する工程と前記化学薬品を投与する工程により再灌流後の傷害を緩和する関連態様14に記載の方法。
18.さらに、前記照射処理に伴って心筋脈管再生処理を行なう工程からなる関連態様12に記載の方法。
19.前記心筋脈管再生処理が前記照射処理と同時に脈管再生処理を行なう工程からなる関連態様18に記載の方法。
20.さらに、生体組織から生理学的信号を受け取る工程からなり、前記組織を照射する工程が当該組織から受け取った信号に応じて心臓組織を照射する工程からなる関連態様12に記載の方法。
21.前記生理学的信号が機械的−生理学的信号からなる関連態様20に記載の方法。
22.前記生理学的信号が電子的−生理学的信号からなる関連態様20に記載の方法。
23.前記カテーテルを配置する工程が1個以上のセンサーを用いてカテーテルの位置座標を追跡する工程からなる関連態様12に記載の方法。
24.前記カテーテルを配置する工程が心臓組織内の不整脈領域を指示する生存能力マップに応じてカテーテルを配置する工程からなる関連態様23に記載の方法。
25.前記カテーテルを配置する工程が心臓の形状マップ上に照射領域を輪郭付けする格子点に対してカテーテルを配置する工程からなる関連態様23に記載の方法。
26.さらに、前記格子点上に照射した位置を標識する工程からなる関連態様25に記載の方法。
27.前記組織を照射する工程が前記導波管の断面積よりも実質的に大きい心臓壁部の領域を同時に照射する工程からなる関連態様12に記載の方法。
28.前記導波管を介して組織を照射する工程が当該組織の近傍の導波管の半径方向の寸法を拡大する工程からなる関連態様27に記載の方法。
29.前記カテーテルを配置する工程がカテーテルの柔軟性の先端部を心臓壁部に対して押圧接触することにより当該先端部を心臓壁部に形状一致させる工程からなり、前記組織を照射する工程がカテーテルの先端部近傍において半径方向に一定領域を照射する工程からなる関連態様12に記載の方法。
30.前記組織を照射する工程が前記カテーテルの先端部の第1の位置において当該先端部近傍の心臓壁部における第1の細長い片状部分を照射し、さらに、当該第1の片状部分にほぼ平行な複数の片状部分を照射する工程からなる関連態様29に記載の方法。
31.前記カテーテルが冠状動脈の中に導入される関連態様12に記載の方法。
32.前記心臓組織を照射する工程が、前記カテーテルにより導入される導波管を介して照射する工程に加えて、心外膜を照射する工程からなる関連態様12に記載の方法。
33.さらに、心筋組織の側壁部にほぼ垂直に非心筋組織を少なくとも部分的に曝露する工程からなり、前記組織を照射する工程が前記電磁放射線の供給源に連結する光学素子を当該少なくとも部分的に曝露した非心筋組織上に配置する工程からなる関連態様1乃至関連態様8のいずれか1項に記載の方法。
34.前記非心筋組織が胸部空孔部の胸部筋肉からなり、前記組織を照射する工程が当該非心筋組織の近傍における胸部空孔部内に前記光学素子を配置する工程からなる関連態様33に記載の方法。
35.前記光学素子を配置する工程が胸膜の近傍に当該素子を移動する工程からなる関連態様33に記載の方法。
36.前記電磁放射線の供給源が収束した非干渉光の供給源からなる関連態様1乃至関連態様8のいずれか1項に記載の方法。
37.前記収束した非干渉光の供給源がキセノンランプからなる関連態様36に記載の方法。
38.前記キセノンランプが30mW/cm乃至500mW/cmの放射線出力密度を有する関連態様37に記載の方法。
39.電磁放射線の供給源と、
電磁放射線を受けとって当該放射線を心筋組織の一定領域に伝達して照射することにより当該組織の生体刺激を引き起こすためのリレー用光学部材とからなる心筋組織の生体刺激用装置。
40.さらに、エコー式画像処理装置に連携するエコー式トランスデューサからなり、当該エコー式トランスデューサが梗塞部の位置情報を供給するように動作し、さらに、前記光学部材とエコー式トランスデューサを一体固定してこれらの空間位置関係を一定に維持するファスナーからなる関連態様39に記載の装置。
41.前記電磁放射線供給源が干渉光供給源からなる関連態様39に記載の装置。
42.前記干渉光供給源がダイオードレーザーからなる関連態様41に記載の装置。
43.前記ダイオードレーザーが5mW乃至5Wの範囲の出力と250nm乃至940nmの範囲の波長を有する関連態様42に記載の装置。
44.前記電磁放射線供給源が非干渉光供給源からなる関連態様39に記載の装置。
45.前記非干渉光供給源がキセノンランプからなる関連態様44に記載の装置。
46.前記キセノンランプが30mW/cm乃至500mW/cmの放射線出力密度を有する関連態様45に記載の装置。
47.さらに、前記リレー用光学部材を保持する移動アームと当該アームを制御可能に移動するサーボユニットとからなる関連態様39乃至関連態様46のいずれか1項に記載の装置。
48.前記リレー用光学部材が、患者の胸部内に導入するための先端部と前記電磁放射線供給源に連携する基端部を有する光ファイバー式光案内部材からなる関連態様39乃至関連態様46のいずれか1項に記載の装置。
49.前記光学部材が、電磁放射線出力を減衰するためのフィルターと、前記光ファイバー式光案内部材の先端部(遠位端)に連結するレンズからなる関連態様48に記載の装置。
50.さらに、心室内に導入するための細長いプローブからなり、前記リレー用光学部材が当該プローブ内に収容される導波管を備えている関連態様39乃至関連態様46のいずれか1項に記載の装置。
51.前記プローブが少なくとも1個の位置センサーからなり、当該位置センサーが心臓の室内におけるプローブの位置決めを行なうために使用される関連態様50に記載の装置。
52.前記位置センサーが外部磁場に応じて信号を発生する磁気位置センサーからなる関連態様51に記載の方法。
53.前記プローブが心筋生存能力を指示する心臓からの局所的な生理学的信号を感知するための少なくとも1個の生理学的センサーからなる関連態様50に記載の装置。
54.前記プローブが心筋組織に到達する局所的電磁放射線の出力レベルを感知するための放射線測定センサーからなる関連態様50に記載の装置。
55.前記プローブが心筋組織のレーザー脈管再生用のレーザー供給源に連携するLMR導波管からなる関連態様50に記載の装置。
56.前記LMR導波管が、その先端部において、レーザービームを組織上に収束するように構成されたレンズに接続している関連態様55に記載の装置。
57.前記導波管が光ファイバーからなる関連態様50に記載の装置。
58.前記導波管が、その先端部において、前記生体刺激性電磁放射線を拡散する光学素子に接続している関連態様57に記載の装置。
59.前記光学素子が広角レンズからなる関連態様58に記載の装置。
60.前記レンズが魚眼レンズからなる関連態様59に記載の装置。
61.前記光学素子が前記導波管の断面よりも実質的に大きい断面積を有するビームを発光する関連態様58に記載の装置。
62.基端部および被処理体の心臓内に挿入するための先端部を有する細長いプローブと、
前記基端部における供給源から前記先端部に電磁放射線を伝達する導波管と、
前記先端部近傍に位置する光学素子とからなり、当該光学素子が前記導波管を介して電磁放射線を受け取って当該導波管の断面よりも実質的に大きい断面積を有するビームを発光する心臓内照射用装置。
63.前記光学素子が細長い長手方向に配置された素子からなり、当該素子が前記プローブに対して半径方向に沿って外側にビームを発光する関連態様62に記載の装置。
64.前記光学素子が湾曲した外表面からなる関連態様63に記載の装置。
65.前記素子が少なくとも2cmの長さと2mm乃至3mmの幅を有する関連態様63または関連態様64に記載の装置。
66.前記プローブが柔軟性の部分からなり、当該柔軟性部分が前記光学素子を含み、かつ、同光学素子が心臓の壁部に物理的に接触するように、当該柔軟性部分が心臓の壁部に形状一致する関連態様63または関連態様64に記載の装置。
67.前記プローブが2個以上の近接センサーからなり、当該センサーが心臓壁部に対するプローブの接触を感知する関連態様66に記載の装置。
68.前記近接センサーが圧力センサーからなる関連態様67に記載の装置。
69.前記光学素子が、前記プローブの長手軸に対して傾斜して配置される当該プローブの先端部における概ね楕円形の放射線発光領域からなる関連態様62に記載の装置。
70.前記素子が凸状の外表面を有する関連態様69に記載の装置。
71.前記光学素子が、その先端部において、心臓内に挿入用の狭められて閉じた形態と心臓内部における心筋組織照射用の拡張した形態を有する拡張用光学先端部からなる関連態様62に記載の装置。
72.前記先端部が放射線散乱膜からなる関連態様71に記載の装置。
73.前記先端部が放射線を発光する点状供給源を囲む折りたたみ可能な反射装置からなる関連態様71に記載の装置。
74.前記反射装置が多面体反射装置からなる関連態様73に記載の装置。
75.前記先端部が折りたたみ可能な光ファイバーの束からなる関連態様71に記載の装置。
76.前記プローブが外部スリーブと当該外部スリーブ内において摺動可能な内部スリーブとからなり、当該内部スリーブがプローブの先端部近傍における拡張可能な部分からなり、当該拡張可能な部分が、閉じた形態で前記外部スリーブの中に保持されており、前記内部スリーブが外部スリーブから先端側に摺動外出すると、開放した形態に拡張する関連態様71乃至関連態様75のいずれか1項に記載の装置。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明の好ましい実施形態に従うそれぞれのECBの方法とそれぞれの治療効果を示すフローチャートである。
【図2A】本発明の好ましい実施形態の一例に従って構成されかつ動作するECB用装置の簡略図である。
【図2B】本発明の別の好ましい実施形態の一例に従って構成されかつ動作するECB用装置の簡略図である。
【図3A】本発明の別の好ましい実施形態の一例に従うECB装置の簡略図である。
【図3B】本発明の好ましい実施形態の一例に従うECBカテーテルの概略図である。
【図3C】本発明の別の好ましい実施形態の一例に従うECBカテーテルの概略図である。
【図4A】本発明の好ましい実施形態の一例に従う統合したECBおよびレーザー心筋脈管再生装置の簡略図である。
【図4B】本発明の別の好ましい実施形態の一例に従う統合したECBおよびレーザー心筋脈管再生装置の概略図である。
【図5A】本発明の好ましい実施形態の一例に従うECB側面発光型カテーテルの概略図である。
【図5B】本発明の好ましい実施形態の一例に従う心臓の左心室内に挿入した図5Aのカテーテルを示す概略図である。
【図6】本発明の好ましい実施形態の一例に従う傾斜先端部型カテーテルの断面の概略図である。
【図7A】本発明の好ましい実施形態の一例に従う拡張用光学先端部を有するカテーテルの閉じた形態および解放した形態をそれぞれ示す概略図である。
【図7B】本発明の好ましい実施形態の一例に従う拡張用光学先端部を有するカテーテルの閉じた形態および解放した形態をそれぞれ示す概略図である。
【図8A】本発明の別の好ましい実施形態の一例に従う拡張用光学先端部を有するカテーテルの閉じた形態および解放した形態をそれぞれ示す概略図である。
【図8B】本発明の別の好ましい実施形態の一例に従う拡張用光学先端部を有するカテーテルの閉じた形態および解放した形態をそれぞれ示す概略図である。
【図8C】図8Bのカテーテルの概略的断面図である。
【図9A】本発明の別の好ましい実施形態の一例に従う拡張用光学先端部を有するカテーテルの閉じた形態および解放した形態をそれぞれ示す概略図である。
【図9B】本発明の別の好ましい実施形態の一例に従う拡張用光学先端部を有するカテーテルの閉じた形態および解放した形態をそれぞれ示す概略図である。
【図10】本発明の別の実施形態の一例に従うカテーテルおよび導波管のそれぞれ心室および胸部の中に挿入した状態を示す簡略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心筋組織の生体刺激のための装置において、
電磁放射線供給源と、
前記電磁放射線を受けとって当該放射線を伝達して心筋組織のある領域を照射し、心筋組織の生体刺激を引き起こすためのリレー用光学部品と、
心室内に導入するための細長いプローブであって、前記リレー用光学部品が当該プローブ内に収容された導波管を備えており、当該導波管がその先端部で光学素子に接続している、プローブと、
エコー式画像処理装置と連携するエコー式トランスデューサであって、前記心筋組織の位置情報を提供するように動作するエコー式トランスデューサと、
前記リレー用光学部品と前記エコー式トランスデューサとを一体に固定し、これら二つを互いに固定された空間位置関係に維持するファスナーと
を備え、
前記光学素子が、前記生体刺激性電磁放射線を広げるための、あるいは、前記導波管の断面積より大きい断面積を有するビームを発するための、広角レンズまたは魚眼レンズを備えており、または、
前記プローブが柔軟性の部分を有し、当該柔軟性の部分が前記光学素子を収容し、当該柔軟性の部分が当該心臓壁部の形状に応じて曲がり、当該光学素子が心臓壁部と物理的に接触する、または、
前記光学素子が、前記生体刺激性電磁放射線を広げるための、あるいは、前記導波管の断面積より大きい断面積を有するビームを発するための、広角レンズまたは魚眼レンズを備えており、かつ、前記プローブが柔軟性の部分を有し、当該柔軟性の部分が前記光学素子を収容し、当該柔軟性の部分が当該心臓壁部の形状に応じて曲がり、当該光学素子が心臓壁部と物理的に接触する、
心筋組織の生体刺激のための装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
前記電磁放射線供給源がコヒーレント電磁放射線供給源を含む、装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、
前記コヒーレント電磁放射線供給源がダイオードレーザーを備える、装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置において、
前記ダイオードレーザーが5mW〜5Wの範囲の出力と、250〜940nmの範囲の波長とを有する、装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、
前記電磁放射線供給源が非コヒーレント電磁放射線供給源を含む、装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、
前記非コヒーレント電磁放射線供給源がキセノンランプを備える、装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置において、
前記キセノンランプが、30〜500mW/cmの出力密度を有している、装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の装置において、
前記リレー用光学部品を保持する移動アームと当該アームを制御可能に移動するサーボユニットとを備える、装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の装置において、
前記リレー用光学部品が、患者の胸部内に導入するための遠位端と前記電磁放射線供給源に連携する近位端とを有する光ファイバー式光案内部材を備えている、装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−45454(P2009−45454A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−206790(P2008−206790)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【分割の表示】特願平10−508664の分割
【原出願日】平成9年7月28日(1997.7.28)
【出願人】(508080229)バイオセンス・ウエブスター・インコーポレーテツド (79)
【Fターム(参考)】