説明

電磁誘導部品および電源装置

【課題】磁性体の体積を大きくすることが可能であって電流容量を比較的大きくとることが可能な薄型かつ小型の電磁誘導部品を提供する。
【解決手段】半導体基板からなるコイル基板10に磁性体からなる円環状のコア11が積層される。コア11の断面は半円状であって、コイル基板10と対向する下側面11aを除く表面には、平面視での周方向に沿って配列された導電層からなる複数本の上巻線パターン12aが形成される。コイル基板10には、平面視での周方向において隣接する各一対の上巻線パターン12aの一方の内側端と他方の外側端とを電気的に接続する導電層からなる下巻線パターン12bが形成される。したがって、コイル基板10にコア11を載置して上巻線パターン12aと下巻線パターン12bとを電気的に接続すると、コア11に巻装された巻線が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型の電磁誘導部品およびその電磁誘導部品を用いた電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、平面型インダクタあるいは平面型トランスと称する薄型の電磁誘導部品が種々提案されている。また、コイル基板として半導体基板を用いることにより半導体製造プロセスを利用して小型化することも考えられている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、電源の小型軽量化のために半導体基板を用い、また磁気誘導型銅損を減少させるためにコイル導体の厚みを大きくすることが考えられており、コイル基板上にコイル導体を形成した2個の平面コイルをコイル面同士が電気的に接続されるように重ね合わせた構造を有しており、さらにコイル基板とコイル導体との間に磁性薄膜を配置した構成が記載されている。
【特許文献1】特開平11−176639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載された電磁誘導部品では、磁性薄膜がコイル導体を挟む形で配置されているから、両磁性薄膜の間は磁気的に結合されておらず磁束漏れが生じるから磁気効率はあまり高くないと言える。また、磁性体薄膜であるから飽和しやすく、コイル導体の厚みを大きくしているにもかかわらずコイル導体に通電できる電流を大きくとることはできない。つまり、容量の小さい電源にしか用いることができないという問題を有している。
【0005】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、小型かつ薄型に形成することができるのはもちろんのこと、磁気効率の高い構造であり、しかも従来構成に比較して磁性体の体積を大きくすることが可能であって電流容量を比較的大きくとることが可能な電磁誘導部品を提供するとともに、その電磁誘導部品を用いた電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、平面視において環状であって断面において直線になる下側面を有した磁性体からなるコアであって、下側面を除く表面に平面視での周方向に配列された導電層からなる複数本の上巻線パターンが形成されたコアと、コアが下側面を当接させる形で載置されるコイル基板であって、平面視での周方向において隣接する各一対の上巻線パターンの一方の一端と他方の他端とを電気的に接続する導電層からなる複数本の下巻線パターンが形成されたコイル基板とを備え、コアに形成された上巻線パターンとコイル基板に形成された下巻線パターンとが電気的に接続されることによりコアに巻装された巻線が形成されてなることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、コアが環状に形成されており、コアに形成された上巻線パターンとコイル基板に形成された下巻線パターンとによりコアに巻装される巻線が形成されており、トロイダルコアに導線を巻装した電磁誘導部品と同様の構造になる。しかも、コイル基板の表面に直交する方向におけるコアを厚み寸法を小さくすることにより電磁誘導部品を薄型化することができ、小型かつ薄型の電磁誘導部品を提供することができる。また、トロイダルコアに導線を巻装した電磁誘導部品と同様の構成であるから、巻線に通電することにより形成される磁束はコア内を通り磁気漏れが少なく磁気効率が高くなる。しかも、上巻線パターンを形成した磁性体のコアをコイル基板に載置する構成であるから、磁性薄膜を用いる従来構成に比較してコアの体積を大きくすることができ、結果的にコアに磁気飽和が生じにくく電流容量を大きくとることができる。すなわち、小型かつ薄型でありながら、サイズ当たりの磁気効率および電流容量を従来構成よりも大きくとることができるという利点がある。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記コイル基板が半導体基板であることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、半導体基板を用いているから他の回路部品とともに1チップに集積回路化することが可能になる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明において、前記コイル基板に複数個の前記コアが載置され、各コアに対応する前記下巻線パターンが導電層からなる接続パターンにより互いに接続されて成ることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、1枚のコイル基板に複数個のコアを配列することにより各コアに巻線を巻装した単位構成をアレイ状に配列した構成になる。しかも、下巻線パターンを接続パターンにより接続しているから、単位構成を直列に接続すればインダクタンスを大きくすることができ、単位構成を並列に接続すれば電流容量を大きくとることができる。つまり、単位構成をアレイ状に配列し、単位構成間を接続パターンによって直列または並列または両者を適宜に組み合わせて接続することにより、所望のインダクタンスを持ちかつ所望の電流容量となる電磁誘導部品を作製することができる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3の発明において、前記上巻線パターンと前記下巻線パターンとにより1次巻線と2次巻線とが形成されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、1個のコアに1次巻線と2次巻線とを形成するから、トランスとして用いることができる。ここに、1次巻線と2次巻線とは絶縁型と非絶縁型(つまり、オートトランス)とのどちらの構成を採用してもよい。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電磁誘導部品とスイッチング素子とを備える電源装置であって、スイッチング素子のオン時に直流電源から電磁誘導部品に蓄積される電磁エネルギをスイッチング素子のオフ時に出力として取り出すことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、チョッパ回路におけるインダクタを小型かつ薄型に形成することができ、結果的にチョッパ回路を用いた電源装置の小型化かつ薄型化が可能になる。
【0016】
請求項6の発明は、請求項4記載の電磁誘導部品の1次巻線とスイッチング素子との直列回路が直流電源に接続された電源装置であって、スイッチング素子のオンオフにより2次巻線から出力を取り出すことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、出力にトランスを用いるスイッチング電源の小型化かつ薄型化が可能になる。
【0018】
請求項7の発明は、請求項5または請求項6の発明において、前記電磁誘導部品を除く回路部品を実装する実装基板に前記コイル基板が積層され、前記コイル基板の表裏に貫通する貫通導体からなる接続部により前記コイル基板と実装基板とが電気的に接続されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、電源装置を構成する際に電磁誘導部品以外の回路部品を実装するコイル基板を電磁誘導部品を実装したコイル基板とは別に設けた実装基板としているから、電磁誘導部品と他の回路部品とを異なる工程で製造することができ、電磁誘導部品の検査を別途に行うことができる。また、電磁誘導部品と他の回路部品とが熱的に分離され熱設計が容易になる。しかも、他の回路部品を実装した実装基板に電磁誘導部品を形成したコイル基板を積層するから、電磁誘導部品を他の回路部品とともに実装基板に実装することが可能になる。さらに、コイル基板と実装基板とを貫通導体からなる接続部により接続しているから、実装基板に設ける回路部品とコアとを互いに反対面に設けることができ、電源装置の占有面積を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の構成によれば、トロイダルコアに導線を巻装した電磁誘導部品と同様の構成になるから、巻線に通電することにより形成される磁束はコア内を通り磁気漏れが少なく磁気効率が高いという利点を有する。また、上巻線パターンを形成した磁性体のコアをコイル基板に載置する構成であるから、磁性薄膜に比較してコアの体積を大きくすることができ、コアに磁気飽和が生じにくく電流容量を大きくとることができるという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(実施形態1)
本実施形態では、電磁誘導部品として、磁性体からなるコアに巻線を巻装したインダクタを例示する。本実施形態のインダクタは、図1、図2に示すように、コイル基板10にフェライトのような磁性体からなるコア11を載置した構成を有する。コア11は平面視においては円環状に形成されており、断面においては半円状に形成されている。したがって、コア11の一面には断面において直線になる下側面11aが形成され、下側面11aがコイル基板10に当接する。つまり、コア11においてコイル基板10と対向する面を下側面11aと呼ぶ。コア11において下側面11aを除く表面には導電層からなる上巻線パターン12aが形成される。上巻線パターン12aはコア11の周方向(円環の周方向)において複数本が離間して配列されており、それぞれ円環の内外周に跨り、両端がそれぞれ下側面11aと揃うように形成される。上巻線パターン12aは薄膜形成法により形成する。上巻線パターン12aの両端部をそれぞれ下側面11aに回り込むように形成してもよい。また、コア11を平面視において円環状に形成するのが望ましいが、環状であれば必ずしも円環状ではなくてもよく、たとえば矩形環状であってもよい。
【0022】
コイル基板10はガラスエポキシのような絶縁材料を用いることが可能であるが、本実施形態では半導体基板であるシリコン基板を用いている。コイル基板10においてコア11が載置される面には、導電層からなる複数本の下巻線パターン12bが形成される。下巻線パターン12bは、図3に示すように、コア11が載置される領域に対応して形成され、コア11が下巻線パターン12bの上に載置されたときにコア11の周方向において隣接する各一対の上巻線パターン12aの一方の一端部(内側端部)と他方の他端部(外側端部)とを電気的に接続する形に形成されている。したがって、コア11に形成した上巻線パターン12aとコイル基板10に形成した下巻線パターン12bとが互いに電気的に接続されるように位置を合わせ、コイル基板10にコア11を載置し結合すると、コア11の周方向において隣接する各一対の上巻線パターン12aの間が下巻線パターン12bを介して接続され、コア11に巻き付けられた1回路の巻線が形成される。
【0023】
すなわち、コイル基板10に設けた1本の下巻線パターン12bがコア11に形成された1本の上巻線パターン12aに接続され、当該上巻線パターン12aが先の下巻線パターン12bの隣りの下巻線パターン12bに接続されるという接続関係によって、各上巻線パターン12aが順次接続され、結果的に1回路の巻線が形成される。また、巻線の末端はコイル基板10に形成した引出パターン12cに接続され、引出パターン12cを通して他回路と接続される。ここにおいて、上巻線パターン12aと下巻線パターン12bとは、銅あるいはアルミニウムのような金属により形成されており、上巻線パターン12aと下巻線パターン12bとを接合することによって、上巻線パターン12aと下巻線パターン12bとの電気的な接続と同時にコイル基板10に対するコア11の固定がなされる。上巻線パターン12aと下巻線パターン12bとは、通常は半田のような接合材料を用いて接合するが、上巻線パターン12aを下側面11aに回り込ませている場合には、上巻線パターン12aにバンプを形成して下巻線パターン12bと接合してもよい。
【0024】
上述した例では、1個のコア11に対して1回路の巻線を形成しているが、図4に示すように、1個のコア11について2回路以上の巻線を形成すれば、トランスとして用いることができる。2回路以上の巻線を形成するには、コア11の周方向において下巻線パターン12bを複数種類のパターンに分割すればよく、上巻線パターン12aについては変更せずに、下巻線パターン12bの形状を変更するだけで、1回路の巻線と2回路以上の巻線とを設けることができる。図示例では1次巻線n1と2次巻線n2とを備えた2回路の巻線を形成する際の下巻線パターン12bを示している。また、本実施形態ではコア11の断面形状を図2に示すような半円状としているが、図5に示すように断面矩形状であって角部を面取りした形状に形成してもよい。
【0025】
(実施形態2)
実施形態1はコイル基板10に1個のコア11を設ける例を示したが、1個のコア11は微小であるから、インダクタンスは小さくまた上巻線パターン12aおよび下巻線パターン12bは細いから電流容量を大きくとることはできない。インダクタンスを大きくするには複数個のコア11を設け巻線を直列に接続すればよく、また電流容量を大きくとるには複数個のコア11を設け巻線を並列に接続すればよい。
【0026】
本実施形態では、図6に示すように、コイル基板10に複数個のコア11をアレイ状に配列してあり、各コア11に対応して形成された下巻線パターン12bを引出パターン12c(図1参照)に接続される接続パターン12dにより互いに接続してある。接続パターン12dによる接続関係は、適宜に選択される。すなわち、巻線を直列接続にする場合と、巻線を並列接続にする場合と、直列接続と並列接続とを併用する場合とがあり、接続パターン12dに応じてこれらの3種類の場合を選択することができる。上述のようにインダクタンスを高めるには直列接続を採用し、電流容量を大きくするには並列接続を採用する。インダクタンスと電流容量とをともに高める場合には直列接続と並列接続とを併用する。他の構成は実施形態1と同様である。
【0027】
ところで、実施形態1、実施形態2ではコイル基板10が半導体基板であるから、コイル基板10に他の素子を形成することが可能であり、電磁誘導部品を備える回路を集積回路化することが可能である。もっとも、実施形態1、実施形態2のような電磁誘導部品をスイッチング電源のような電源装置の部品として用いる場合には、巻線に大きな電流が流れるから、電磁誘導部品が発熱部品になり、またスイッチング素子も発熱部品になる。放熱効率を高めるには、電磁誘導部品と他の発熱部品とは分離することが望ましい。
【0028】
そこで、電源装置のような何らかの回路を構成する部品のうち、電磁誘導部品を除く部品を実装する実装基板13を設け、実装基板13とコイル基板10とを積層してもよい。実装基板13として半導体基板を用いる場合には、スイッチング素子のような部品を実装基板13に形成すればよく、この場合にはコイル基板10と実装基板13とを陽極接合などの技術を用いて接合することが可能である。また、実装基板13としてプリント基板を用いることもできる。プリント基板を用いる場合は面実装部品を用いるのが望ましい。
【0029】
コイル基板10と実装基板13とは、コイル基板10においてコア11が実装されていない面と、実装基板13において部品が実装ないし形成されていない面とを貼り合わせる。したがって、コイル基板10と実装基板13との間の電気的接続には、図7に示すように、コイル基板10と実装基板13とを貫通する貫通導体である接続部14a,14bを用いる。ここに、コイル基板10と実装基板13とにそれぞれ接続部14a,14bを形成しておき、接続部14a,14b同士を接合することによって、コイル基板10と実装基板13との電気的接続と同時に機械的結合を行うようにしてもよい。
【0030】
ところで、実施形態1、実施形態2に示した電磁誘導部品を用いて構成される電源装置としては、降圧型、昇圧型、極性反転型などのチョッパ回路と、フライバック型、フォワード型などのDC−DCコンバータとが広く知られている。チョッパ回路ではインダクタに蓄積した電磁エネルギを利用するからインダクタを用い、DC−DCコンバータではトランスを用いる。
【0031】
図8に一例として降圧型のチョッパ回路の基本的な構成を示す。この構成では、商用電源をダイオードブリッジで整流することなどにより得られる直流電源(図示せず)の両端間にスイッチング素子(MOSFETなど)Q1とインダクタLと平滑コンデンサC1との直列回路が接続され、インダクタLと平滑コンデンサC1との直列回路に環流用のダイオードD1が並列接続された構成を有している。また、スイッチング素子Q1のオンオフは制御回路CN1により制御される。
【0032】
この種のチョッパ回路は周知のものであるが、簡単に動作を説明すると、スイッチング素子Q1のオン期間において直流電源からインダクタLを通して平滑コンデンサC1が充電され、この間にインダクタLに電磁エネルギが蓄積される。また、インダクタLに蓄積された電磁エネルギは、スイッチング素子Q1のオフ期間において平滑コンデンサC1とダイオードD1とを通るループ回路を通して流れ、平滑コンデンサC1に充電電流を流す。この電源装置の出力は平滑コンデンサC1の両端から取り出される。
【0033】
上述した電源装置を構成する際に、インダクタLとして実施形態1、実施形態2において説明した平面型インダクタを採用すれば、小型かつ薄型の電源装置を構成することができる。ここに、平面型インダクタはごく小型であるから、蓄積できる電磁エネルギは比較的小さいものである。したがって、スイッチング素子Q1のオンオフの周波数(つまり、スイッチング周波数)は100kHz〜数MHz程度の高周波とするのが望ましい。
【0034】
このような電源装置を構成する場合に、半導体基板であるコイル基板10に、スイッチング素子Q1とダイオードD1と制御回路CN1とを形成して集積回路化しておけば、平滑コンデンサC1を外付するだけで電源装置を構成することが可能になる。実装基板13が半導体基板であるときには、実装基板13にこれらの素子を形成すればよい。また、上述したインダクタLを電源装置に用いることにより、電源装置の構成部品のうちの大型部品であったインダクタLを小型化することができる。しかも、スイッチング素子Q1とともにインダクタLを集積回路化することによりスイッチング素子Q1の近傍にインダクタLを設けることができ、結果的に、スイッチング素子Q1のオンオフを高周波で行う場合に問題となる寄生容量の影響を軽減することができる。
【0035】
DC−DCコンバータを構成する場合も同様であって、代表的な構成のDC−DCコンバータでは、図9に示すように、トランスTの1次巻線n1にスイッチング素子Q2を直列接続し、トランスTの2次巻線n2に整流用のダイオードD2と平滑コンデンサC2との直列回路を接続し、スイッチング素子Q2のオンオフを制御回路CN2により制御するから、半導体基板であるコイル基板10に、スイッチング素子Q2、ダイオードD2、制御回路CN2などを集積回路化することができる。トランスTを構成する場合も半導体基板からなる実装基板13を用いる場合には、これらの素子を実装基板13に形成すればよい。
【0036】
上述した小型の電源装置を用いた配線システムの例を図10に示す。図示する配線システムでは、建物内の適所に埋込配置されたスイッチボックス3にゲート装置4と称する配線器具を収納する。ゲート装置4には壁内に先行配線された電力線Lpと情報線Liとが接続される。スイッチボックス3およびゲート装置4は1個ずつでもよいが、以下では複数個設ける場合について説明する。また、図示例では、ルータとハブとを内蔵したゲートウェイの機能を有している基本モジュール1と、メインブレーカMBおよび分岐ブレーカBBとを内蔵した配線盤5を用いている。
【0037】
基本モジュール1には、複数系統(図示例では3系統)の情報線Liが接続され、ゲートウェイとして各情報線Liを外部のインターネット網NTに接続する。基本モジュール1は、情報線Liを複数系統に分岐したり情報線Liをインターネット網NTに接続するだけでなく、情報線Liを通して後述する各機能モジュール2の動作状態を監視する機能も備えている。また、メインブレーカMBは商用電源ACに接続され、分岐ブレーカBBに電力線Lpが接続される。図示例では分岐ブレーカBBを1系統で代表して示しているが通常は複数系統の分岐ブレーカBBを設ける。
【0038】
図10に示す例では、機能モジュール2として、コンセントあるいはスイッチのように負荷制御を主な機能とするものと、スピーカあるいは表示器のように情報の授受を主な機能とするものとを示している。本実施形態の構成では、負荷制御を主な機能とする場合であっても、コンセントに接続した負荷で使用した電力量やスイッチを操作した回数などを情報として情報線Liを介して監視することが可能になる。
【0039】
各系統のゲート装置4の間は電力線Lpおよび情報線Liの送り配線によって接続される。また、各系統のゲート装置4のうちの1個は配線盤5との間で電力線Lpおよび情報線Liを介して接続される。つまり、各系統のゲート装置4は電力線Lpに並列接続され、また情報線Liに並列接続されることになる。
【0040】
ゲート装置4は、電力線Lpと情報線Liとに接続されたコネクタからなる接続口6(図11参照)を備える。したがって、後述する機能モジュール2のコネクタをゲート装置4の接続口6に接続するだけで、機能モジュール2に電力を供給する電力路と、機能モジュール2との間で通信するための情報路とを同時に確保することができる。しかも、ゲート装置4は電力線Lpと情報線Liとにそれぞれ並列接続されているだけであるから、機能モジュール2はどのゲート装置4にも接続することができる。つまり、機能モジュール2は、ゲート装置4の配置されている範囲内で自由に配置することができるから、レイアウトの自由度が高い施工性に優れた配線システムを提供することができる。
【0041】
スイッチボックス3は、たとえばJIS規格(C 8375)に規定する取付枠9(図11参照)を取り付けることができるものを用いる。図示する取付枠9は一連形と呼ばれており、JIS規格(C 8304)において大角連用形スイッチの1個モジュールとして規格化されている埋込形の配線器具を3個取り付けることができる。
【0042】
取付枠9は、図11に示すように、中央部に表裏に貫通した器具取付用の矩形状の窓孔9aを備える。取付枠9に取付対象である配線器具を取り付けるには、窓孔9aの後方から配線器具の前部を挿入し、取付枠9の左右両側の枠片9bに設けた器具係止部に配線器具の左右両側に設けた被係止部を結合させる。図示例では、配線器具に被係止部として爪を設け取付枠9の枠片9bに器具係止部として間隙を設けている。ただし、配線器具に被係止部として穴を設け取付枠9の枠片9bに器具係止部として爪を設けた構成もある。取付枠9の上下の枠片9cには挿入孔9dが貫設されている。取付枠9をスイッチボックス3に取り付けるには、取付枠9に配線器具を装着した状態で、図示しない取付ねじを挿入孔9dに前方から挿入してスイッチボックス3に設けたねじ受け(図示せず)に螺入させる。
【0043】
なお、取付枠9を壁パネルに取り付ける場合には、壁パネルに取付孔を貫設し、挿入孔9dに挿入される引締ねじを挟み金具(図示せず)と称する部材に螺合させ、壁パネルに貫設した取付孔の周部を取付枠9と挟み金具との間で挟持するように引締ねじを締め付けてもよい。あるいはまた、取付枠9を通して壁材に木ねじを螺合させることによって、取付枠9を壁に取り付けることも可能である。
【0044】
本実施形態では、各スイッチボックス3の上部からは、配電ボックス1または他のスイッチボックス3に接続された電力線Lpおよび情報線Liが導入され、各系統の末端に位置するスイッチボックス3を除いた各スイッチボックス3の下部からは他のスイッチボックス3への送り配線である電力線Lpおよび情報線Liが導出される。また、ゲート装置4を取り付けた取付枠9を各スイッチボックス3に取り付けることによって、上述したように、各スイッチボックス3にそれぞれゲート装置4が収納される。ここにおいて、ゲート装置4には、電力線Lpと情報線Liとが接続されるから、電力線Lpと情報線Liとの混触を防止するために、電力線Lpと情報線Liとのスイッチボックス3への導入口および導出口はそれぞれ個別に設けるのが望ましい。
【0045】
ゲート装置4は、板ばねのばね力を利用して電線を結線する、いわゆる速結端子構造の端子を器体に内蔵しており、器体の背面に開口する電線挿入口に電線を挿入することにより、電線の機械的保持と電気的接続とがなされる構成を採用している。電線挿入口は、電力線Lpと情報線Liとについて2対ずつ設けてある。各1対は送り配線を接続するために用いられる。ゲート装置4の器体の前面には、電力線Lpが接続される端子に電気的に接続されている接触部を設けた電力路接続口6aと、情報線Liが接続される端子に電気的に接続されている接触部を設けた情報路接続口6bとが配置される。
【0046】
電力路接続口6aと情報路接続口6bとは1個の接続口6としてモジュール化されている。配線システム内の各ゲート装置4において、各電力路接続口6aと各情報路接続口6bとはそれぞれ同仕様(接触部の配列や接続口のサイズなど)であり、また電力路接続口6aおよび情報路接続口6bの位置関係は統一されている。接続口6には、機能モジュール2の背面に設けた接続体7が着脱可能に結合される。すなわち、機能モジュール2の接続体7には、電力路接続口6aに着脱可能に結合される電力路接続体7aと、情報路接続口6bに着脱可能に結合される情報路接続体7bとをモジュール化した接続体7が設けられる。機能モジュール2の接続体7をゲート装置4の接続口6に接続した状態において、機能モジュール2はゲート装置4の前面を覆う。ここに、接続口6と接続体7とはコネクタを構成する。
【0047】
機能モジュール2は、図12に示すように、ゲート装置4に対して1台だけ接続することによって単独で用いることができる基本機能モジュール2aと、基本機能モジュール2aに対して壁面に沿う面内で配列され基本機能モジュール2aと組み合わせて用いることにより基本機能モジュール2aの機能を拡張する拡張機能モジュール2bとがある。拡張機能モジュール2aは、基本機能モジュール2aに対して1台接続するだけではなく、複数台を接続することも可能である。
【0048】
以下の説明においては、基本機能モジュール2aを単独で用いるか、基本機能モジュール2aに拡張機能モジュール2bを結合して用いるかにかかわらず、どちらの場合についても機能モジュール2として説明する。
【0049】
機能モジュール2は、図13、図14に示すように、合成樹脂製の扁平なハウジング8aを備える。すなわち、ゲート装置4に取り付けたときに壁面からの突出寸法が小さく、かつハウジング8aの前面側に露出する表示、報知、操作などの各種機能を持つ機能部に割り当てる面積を大きくとることができる薄型に形成されている。ハウジング8aの背面には接続体7が設けられ、接続体7をゲート装置4の接続口6に結合すれば、機能モジュール2が電力線Lpおよび情報線Liと電気的に接続される。ハウジング8aの上部および下部には取付用孔8cが開口しており、ハウジング8aをゲート装置4に結合した状態で、ハウジング8aの前面側から取付用孔8cに取付ねじ(図示せず)を挿入し、取付枠9の取付ねじ孔10eに取付ねじを螺入することにより、機能モジュール2が取付枠9に対して機械的に固定され、結果的に機能モジュール2のゲート装置4に対する結合強度を高めることができる。ハウジング8aの前面部には化粧カバー8bが着脱可能に被着され、化粧カバー8bをハウジング8aに装着した状態では、取付ねじの頭部が隠される。
【0050】
上述の構成から明らかなように、機能モジュール2には電力線Lpを通して商用電源ACから電力が供給されるから、機能モジュール2の内部回路の動作用の電源を生成するために商用電源ACから内部回路の動作用に用いる直流電圧を生成する電源装置が必要である。また、ハウジング8aは扁平で小型であるから、このようなハウジング8aに収納可能な薄型かつ小型の電源装置が必要である。したがって、実施形態1、実施形態2において説明した平面型インダクタや実施形態3において説明した平面型トランスを用いる電源装置は、この種の機能モジュール2に用いるのに適した電源装置になる。
【0051】
機能モジュール2が、基本機能モジュール2aだけではなく拡張機能モジュール2bも含んでいる場合には、電源装置は拡張機能モジュール2bにも電力を供給する。基本機能モジュール2aから拡張機能モジュール2bへの電力の供給は交流を用いる。また、基本機能モジュール2aと拡張機能モジュール2bとの内部においては、交流−直流変換を行って直流電力を内部回路に供給する。そのため、基本機能モジュール2aと拡張機能モジュール2bとには、それぞれ電源装置が設けられる。拡張機能モジュール2bに設けた電源装置においても実施形態1、実施形態2において説明した電磁誘導部品を用いることにより、拡張機能モジュール2bのハウジングに収納可能な薄型かつ小型の電源装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態1を示す分解斜視図である。
【図2】同上の断面図である。
【図3】同上に用いるコイル基板を示す平面図である。
【図4】同上のトランスに用いる場合のコイル基板を示す平面図である。
【図5】同上に用いるコアの他例を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態2を示す分解斜視図である。
【図7】同上の断面図である。
【図8】電磁誘導部品を用いた電源装置の構成例を示す回路図である。
【図9】電磁誘導部品を用いた電源装置の他の構成例を示す回路図である。
【図10】電磁誘導部品を用いる配線システムの全体構成を示す構成図である。
【図11】機能モジュールを取付枠に取り付けた状態の正面図である。
【図12】機能モジュールの他の構成例を示す構成図である。
【図13】ゲート装置と機能モジュールとを示す斜視図である。
【図14】機能モジュールを示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
1 基本モジュール
2 機能モジュール
10 コイル基板
11 コア
12a 上巻線パターン
12b 下巻線パターン
13 実装基板
14a,14b 接続部
CN1,CN2 制御回路
L インダクタ
Li 情報線
Lp 電力線
n1 1次巻線
n2 2次巻線
Q1,Q2 スイッチング素子
T トランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視において環状であって断面において直線になる下側面を有した磁性体からなるコアであって、下側面を除く表面に平面視での周方向に配列された導電層からなる複数本の上巻線パターンが形成されたコアと、コアが下側面を当接させる形で載置されるコイル基板であって、平面視での周方向において隣接する各一対の上巻線パターンの一方の一端と他方の他端とを電気的に接続する導電層からなる複数本の下巻線パターンが形成されたコイル基板とを備え、コアに形成された上巻線パターンとコイル基板に形成された下巻線パターンとが電気的に接続されることによりコアに巻装された巻線が形成されてなることを特徴とする電磁誘導部品。
【請求項2】
前記コイル基板が半導体基板であることを特徴とする請求項1記載の電磁誘導部品。
【請求項3】
前記コイル基板に複数個の前記コアが載置され、各コアに対応する前記下巻線パターンが導電層からなる接続パターンにより互いに接続されて成ることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電磁誘導部品。
【請求項4】
前記上巻線パターンと前記下巻線パターンとにより1次巻線と2次巻線とが形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電磁誘導部品。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電磁誘導部品とスイッチング素子とを備える電源装置であって、スイッチング素子のオン時に直流電源から電磁誘導部品に蓄積される電磁エネルギをスイッチング素子のオフ時に出力として取り出すことを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項4記載の電磁誘導部品の1次巻線とスイッチング素子との直列回路が直流電源に接続された電源装置であって、スイッチング素子のオンオフにより2次巻線から出力を取り出すことを特徴とする電源装置。
【請求項7】
前記電磁誘導部品を除く回路部品を実装する実装基板に前記コイル基板が積層され、前記コイル基板の表裏に貫通する貫通導体からなる接続部により前記コイル基板と実装基板とが電気的に接続されていることを特徴とする請求項5または請求項6記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−180435(P2007−180435A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−379794(P2005−379794)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】