説明

電磁超音波センサ

【課題】ノイズを抑え高い測定精度を備えた電磁超音波センサを提供する。
【解決手段】この電磁超音波センサ1は、静磁場発生用の永久磁石2及び永久磁石3と、被検査体10の表面側の内部に渦電流6を発生するための送信コイル5と、反射した超音波を受信するための受信コイル4と、永久磁石2及び永久磁石3の底部にコイルの存在位置に対応して設けられた強磁性体薄板7とから構成される。さらに、強磁性体薄板7は、隣り合う永久磁石2及び永久磁石3の異極間で分割されていて空隙部40を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、鋼材の欠陥検査や配管減肉検査などを非接触で行なうための小型の電磁超音波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
金属内の疵の検査方法及び板厚測定方法の一つとして超音波探傷が挙げられる。従来の圧電素子による探触方法においては、センサ内で発生した超音波を、水や油などの接触媒質を介して被検査体に伝達させていた。これに対して、被検査体に非接触で超音波探傷ができる電磁超音波探触子(EMAT:Electro Magnetic Acoustic Transducer)が知られている。この電磁超音波探触子は、電磁気的な作用を利用して、接触媒質を介することなく、直接、被検査体内に超音波を発生させ伝播させることができる。
このEMATには、ローレンツ型があり、ローレンツ型EMATの原理は、永久磁石により発生する静磁場と、コイルにパルス電流を流すことにより発生する渦電流との相互作用によりローレンツ力を発生させて、それによって被検査体内に超音波を発生させる。このようなEMATにおいては、被検査体と非接触で超音波を伝達させることができるが、受信感度が圧電素子に比べて2桁低くまた電磁気的な作用で超音波の送受信を行なっているため電磁気的なノイズが大きくなるという課題がある。
【0003】
特に、永久磁石には焼結タイプの希土類磁石(例えば、ネオジム磁石)が使用されることが多いが、希土類磁石は金属のように導電性が良い。このため、コイルにパルス電流を流すと、被検査体に対面する永久磁石の底面に渦電流が発生する。この渦電流により永久磁石内でも超音波が発生し永久磁石内を伝播・反射する。この超音波はノイズの原因となる。
特許文献1には、この課題に対応する電磁超音波探傷装置が開示されている。
この電磁超音波探傷装置は、被検査体に静磁界を発生させる永久磁石と、パルス電流を流すことにより被検査体内に渦電流を発生させる送信コイルと、永久磁石と送信コイルにより被検査体内に発生した静磁界と渦電流との作用によりローレンツ力を誘起させ、被検査体の表面を加振することで超音波を発生させ、その超音波の探傷部に対する反射エコーを検出する受信コイルとを備える。この電磁超音波探傷装置においては、永久磁石と送信コイルの間に強磁性箔が設けられている。また、同電磁超音波探傷装置において、永久磁石と送信コイルの間に磁性粉末を含有したシートを設けることも開示されている。
【0004】
詳しくは、この電磁超音波探傷装置は、永久磁石と送信コイルとの間に例えばパーマロイ、センダスト、アモルファスなどの強磁性箔、Fe34やバリウムフェライトなどの磁性粉末を混入するか又は表面に塗付した磁気シートを配置している。そのため、永久磁石内に発生する渦電流は、送信コイルから強磁性箔内に発生した渦電流により強磁性箔と永久磁石との間の相互誘導により発生したものである。すなわち、直接的に、送信コイルから永久磁石に発生したものではないので、永久磁石内での渦電流の強度を低下させることができる。
【特許文献1】特開平11−248688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、薄い箔では永久磁石内に発生する渦電流を低減できるとしても十分なノイズ低減の効果は得られない。そのため、ノイズ低減の効果を向上するために、箔に代えて、永久磁石と送信コイルの間に被導電性の強磁性体であるフェライトを設けることも考えられる。渦電流が物体のごく表面のみに発生することは周知の通りであり、このフェライトにより、永久磁石の底面に発生する渦電流を大きく抑制することが可能となる。
ところが、逆にフェライトの内部を多量の磁束が通過するようになりに、被検査体(強磁性体)の内部に垂直磁場が形成されることが阻害されてしまい、ひいては、被検査体内に電磁超音波が発生しづらい状況下となることは否めない。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点を鑑み、強磁性体を被検査体とした電磁超音波センサであって、磁場発生部(永久磁石)の底面に渦電流が形成されることを抑えノイズを低減して、精度よく疵探傷を行うことのできる電磁超音波センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明に係る電磁超音波センサは、強磁性体材料の被検査体に対向する面に異極を有していて且つ当該被検査体に磁場を印加する磁場発生部と、前記磁場発生部により磁場が印加された被検査体に渦電流を発生させて当該被検査体内に電磁超音波を生じさせるコイルと、前記コイルと磁場発生部の間の領域であって、前記コイルの巻線が存在する領域で磁場発生部に接するように設けられた非導電強磁性体と、を有し、前記非導電強磁性体は、前記磁場発生部の異極間で分割されて空隙部を有する構成となっていることを特徴とする。
【0008】
この発明の構成により、送信コイルと磁場発生部との間に設けられた非導電強磁性体の導電率が低いために(抵抗値が高いために)、磁場発生部の内部の渦電流の発生が抑制される。さらに、非導電強磁性体は、コイルの巻線が存在しない位置には空隙部が存在することとなっていて、この非導電強磁性体の内部を通過する磁場が形成されることもない。これにより、磁路を調節し、コイルが存在する被検査体の部分にのみ強い磁場分布を発生させることが可能になる。ここで、非導電強磁性体の抵抗率は100Ω・m以上であることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る電磁超音波センサは、強磁性体材料の被検査体に対向する面に異極を有し且つ当該被検査体に磁場を印加するて磁場発生部と、前記磁場発生部により磁場が印加された被検査体に渦電流を発生させて当該被検査体内に電磁超音波を生じさせるコイルと、を備え、前記コイルと磁場発生部の間の領域であって、前記コイルの巻線が存在する領域に設けられた第1の非導電強磁性体と、前記磁場発生部の異極間を跨ぐように設けられた第2の非導電強磁性体とを有し、前記第1の非導電強磁性体と第2の非導電強磁性とは互いに分割されて空隙部を有する構成となっていることを特徴とする。
【0010】
この発明の構成により、コイルの巻線が存在する領域及び巻線が存在しない領域に設けられた分割された非導電強磁性体により、磁路をさらに調節し、コイルが存在する部分にのみ強い磁場分布を発生させることが可能になる。
さらに、この電磁超音波センサにおいては、前記第2の非導電強磁性体の厚みは、第1の非導電強磁性体の厚みよりも薄いことを特徴とする。
この発明の構成により、コイルの巻線が存在する領域及び巻線が存在しない領域に設けられた「分割され且つ厚みの異なる」非導電強磁性体により、磁路をさらに調節し、コイルが存在する部分にのみ強い磁場分布を発生させることが可能になる。
【0011】
好ましくは、前記非導電強磁性体の厚みは、前記磁場発生部の厚みの1/50以上1/10以下であるとよい。前記第1の非導電強磁性体の厚みは、前記磁場発生部の厚みの1/50以上1/10以下であるとよい。
例えば、1/50(0.02)以上であると磁場発生部内に発生する渦電流を、ノイズが問題とならないと判定できる値の60%以下に抑えることができる。また、1/10(0.1)以下であると、被検査体内の磁場を検査に適切な磁場が形成されていると判定できる値の65%以上にできる。
【0012】
前記空隙部の幅は、前記磁場発生部の幅の1/400以上1/100以下であるとよい。
こうすることで、非導電強磁性体の内部を多量の磁束が通過することを抑制でき、被検査体の表面に垂直磁場を確実に形成することができるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、強磁性体を被検査体としたEMATにおける磁場発生部の底部に発生する渦電流を抑制してノイズを抑え、被検査体の探傷を精度よく非接触で行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図を基に説明する。
なお、以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る電磁超音波センサについて説明する。
図1は、本実施形態に係る電磁超音波センサ1の側面図である。図1に示す電磁超音波センサ1は、ローレンツ型横波発生用センサである。この電磁超音波センサ1は、配管の減肉検査等に用いられるセンサであって、携帯可能なハンディタイプの小型センサである。永久磁石2,3の幅は、例えば50mm程度であって、電磁超音波センサ1は、名刺の大きさの半分程度の大きさである。
【0015】
このローレンツ型の電磁超音波センサ1の動作原理は、被検査体表面上に磁場発生部(永久磁石2,3)とコイル4,5とを配置し、送信コイル5にパルス電流を流す。これにより、被検査体内に誘起される渦電流と磁界との相互作用により発生するローレンツ力が音源となって被検査体内に超音波を発生させる。発生した超音波は被検査体10内を進み、疵等の内部欠陥により反射され反射波となり、電磁超音波センサ1側へ戻ってくる。反射波は送信コイル4での現象の逆の原理により受信コイル4で検出され、非接触探傷が行われる。
【0016】
電磁超音波センサ1のより具体的な構成についてさらに説明する。
図1に示すように、電磁超音波センサ1は、静磁場発生用の磁場発生部(ネオジム磁石で構成された永久磁石2及び永久磁石3)と、被検査体10の表面内部に渦電流6を発生するための送信コイル5と、反射した超音波を受信するための受信コイル4と、永久磁石2及び永久磁石3のそれぞれの下面に貼り付けられた非導電性の強磁性体薄板7(抵抗率100Ω・m以上、初透磁率(B−Hカーブの最初の値)1000H/m以上)とから構成される。送信コイル5は被検査体10の上方空間に配置し、さらにその送信コイル5の上側に受信コイル4が配置されている。
【0017】
なお、図1の丸印の中に点を備えた印は、紙面裏側から紙面表側への電流の流れを示す記号である。丸印の中に×を備えた印は、紙面表側から紙面裏側への電流の流れを示す記号である。また、強磁性体薄板7の厚みは、永久磁石2,3の幅50mm〜100mm程度に対して、1mm〜10mm程度である。
図1に示すように、電磁超音波センサ1においては、磁場発生部は2つの永久磁石2,3が幅方向に隣接配置されており、一方の永久磁石2の下面側(被検査体10に対面する側)はN極で、他方の永久磁石3の下面側はS極となっている。つまり、磁場発生部の下面は略中央部で異極となるように構成されていて、被検査体10の表面に垂直磁場を構成可能な配置となっている。
【0018】
永久磁石2,3の下方に配置された送信コイル5にパルス波を流すことにより被検査体10の表面内部に渦電流6を発生する。ここで、渦電流6の発生は、送信コイル5にパルス電流を流したときに周りに磁場を発生し、その磁場を妨げるように渦電流6が発生する。このため、渦電流は被検査体10だけではなく永久磁石2及び永久磁石3の表面(被検査体10に対面する側の表面)内部にも発生しうる。
しかしながら、本実施形態に係る電磁超音波センサ1においては、送信コイル5と永久磁石2,3との間であって、永久磁石2,3の下面に接するように設けられた強磁性体薄板7の導電率が低いために、永久磁石2,3おける渦電流の発生が可及的に抑制される。そのため、従来の電磁超音波センサによる被検査体10中へ超音波を入射した場合には、計測すべき被検査体10の底面又は疵反射信号の他に、永久磁石2及び永久磁石3内に発生する超音波信号がノイズとして現れる。それに対して、本実施形態に係る電磁超音波センサ1内の超音波信号は抑制され、所望する底面反射信号のみを計測することができる。
【0019】
さらに、強磁性体薄板7は、その形状が薄板であって、コイル4,5が存在しない部分で2つに分割されている、すなわち、磁場発生部の異極間で分割されて空隙部40が形成された構成となっており、空隙部40が永久磁石2と永久磁石3との幅方向接合部に対応して設けられていることとなっている。ゆえに、空隙部40により、強磁性体薄板7による磁路形成が妨げられ、本来、被検査体10の垂直磁場を構成するべき磁束が強磁性体薄板7内部を通ることを防ぐことができる。
図2に、本実施形態に係る電磁超音波センサ1により形成される被検査体10の表面の垂直方向磁場を示す。
【0020】
また、図3に、図2と比較するために、従来の電磁超音波センサにより形成される被検査体の表面の垂直方向磁場を示す。図2(b)は、図2(a)と紙面水平方向の位置が対応しており、図3(b)は、図3(a)と紙面水平方向の位置が対応している。なお、図2,図3,図5〜図7のグラフの横軸は永久磁石2,3の幅Dと対応している。
図3(a)に示すように、従来の電磁超音波センサのように、永久磁石2,3とコイル4,5との間に何も存在しない場合には、永久磁石2及び永久磁石3内に渦電流9が発生している。加えて、図3(b)に示すように、送信コイル4,受信コイル4を配備するために永久磁石2,3と被検査体10との距離が大であって、被検査体10の表面に、測定に適切な垂直方向の磁場(コイル4,5が存在する部分のみに強い磁場)を形成することができず、結果的に高感度で信号を受信できない状況となっている。
【0021】
一方、本実施形態に係る電磁超音波センサ1においては、図2(b)に示すように、強磁性体薄板7の作用により、永久磁石2及び永久磁石3内に発生する渦電流を抑制できている。加えて、強磁性体薄板7が設けられることで、永久磁石2,3が被検査体10に近づいた状況となり、コイル4,5が存在する部分に強くて均一な垂直磁場分布を発生させている。これにより、確実に超音波を発生させると共に高感度で信号(反射超音波)を受信することができる。
しかしながら、コイル4,5が存在する部分の垂直磁場のピーク値を鑑みるに、例えば、図2(b)のフラットなピーク値が、図3(b)の山型のピーク値よりも若干低い。ただし、図3(b)に示す磁場分布は、均一ではなく且つ送信コイル5が無い永久磁石2,3の略中央部にも存在するものとなっている。すなわち、被検査体10の表面に適切な磁場が形成されているとは到底言えない。
【0022】
なお、図2(a)に示す、永久磁石2,3の幅Dと強磁性体薄板7の厚みdとの比率は、以下に示すように、1/50〜1/10が好ましく、特に、1/25〜1/16が好ましい。さらに、2枚の強磁性体薄板7の間隙(空隙部40の幅)は、永久磁石2,3の幅Dに対して1/400〜1/100が好ましく、特に、1/400〜1/200が好ましい。
以下、本実施形態に係る電磁超音波センサ1における永久磁石2及び永久磁石3の幅Dと強磁性体薄板7の厚みdとの比率について説明する。
【0023】
上述したように、電磁超音波センサ1の感度を向上させるためには。永久磁石2及び永久磁石3内に発生する渦電流を抑制して、かつ、コイル4,5が存在する部分にのみ強い磁場分布を発生させることが必要である。このことには、強磁性体薄板7の厚みが大きく影響を与える。
つまり、強磁性体薄板7を薄くすると、ノイズの原因となる永久磁石2及び永久磁石3内の渦電流が発生しやすくなる。一方、強磁性体薄板7を厚くすると、永久磁石2及び永久磁石3と被検査体10との間の距離が小さくなり、被検査体10内に形成される磁場が均一になる傾向はあるものの、本来、被検査体10の垂直磁場を構成するべき磁束が強磁性体薄板7の内部を通るようになり、被検査体10表面での垂直磁場が弱くなる。詳説すれば、本来、永久磁石3のN極から被検査体10の表面を通り、永久磁石2のS極へ到達すべき磁力線が、永久磁石3のN極→厚く連続した強磁性体薄板7→永久磁石2のS極と言う経路をたどるようになる。このことから、強磁性体薄板7の厚みには、適正な範囲が明らかに存在する。
【0024】
強磁性体薄板7の厚みと、永久磁石2及び永久磁石3内の渦電流及び被検査体10内の磁場との関係を調べた。なお、強磁性体薄板7の厚みは、永久磁石2及び永久磁石3の幅Dと強磁性体薄板7の厚みdとの比率にて規定した。その結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
この結果は、相対的な関係を明らかにするために正規化されている。強磁性体薄板7の厚さが永久磁石2及び永久磁石3の幅に対して1/50(0.02)以上であると永久磁石2及び永久磁石3内に発生する渦電流を(ノイズが問題とならないと判定できる)60%以下に抑えることができる。
また、強磁性体薄板7の厚さが永久磁石2及び永久磁石3の幅に対して1/10(0.1)以下であると被検査体10内の磁場を(検査に適切な磁場が形成されていると判定できる)65%以上にできる。よって、強磁性体薄板の厚さの有効な範囲は、対極する二つの永久磁石の幅Dを基準として、1/50〜1/10となる。
【0027】
以上のように、本実施形態に係る電磁超音波センサ1によると以下の効果がある。
被検査体10中に超音波を発生させるためにはローレンツ力が必要になり、これは被検査体10中に発生する渦電流と磁場とにより発生する。よって、渦電流の発生する部分、つまりコイル4,5の存在する部分にのみ強い磁場を分布させることが必要になる。電磁超音波センサ1においては、コイル4,5の存在する部分に強磁性体薄板7を設けるとともにコイル4,5が存在しない部分で強磁性体薄板7に間隙(空隙部40)を設けて配置している。これにより、磁路を調節し、コイル4,5が存在する部分にのみ強い磁場分布を発生させることが可能になる。この結果、高感度で信号を受信することが可能となる。
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態に係る電磁超音波センサについて説明する。
【0028】
なお、以下の説明において、上述した第1実施形態と同一の部品には同一の符号を付してある。
図4は、本実施形態に係る電磁超音波センサ11の側面図である。電磁超音波センサ11が電磁超音波センサ1と異なる点は、2枚の強磁性体薄板17(第1の非導電強磁性体)の幅方向間であって、永久磁石2と永久磁石3との幅方向接合部に対応して、強磁性体薄板17と同じ厚みの中央部強磁性体薄板18(第2の非導電強磁性体)を備える点である。
【0029】
これ以外については、第1実施形態と同じである。また、強磁性体薄板17の厚みは、例えば、1mmであって、強磁性体薄板17と中央部強磁性体薄板18との間隙は、例えば、0.1mmである。
図5に、本実施形態に係る電磁超音波センサ11により形成される被検査体10の表面の垂直方向磁場を示す。
上述の第1実施形態で説明したように(図2(b)参照)、電磁超音波センサ1により形成される被検査体10の表面の垂直方向磁場のピーク値は、従来のもの(強磁性体薄板を備えないもの)より若干減少してしまい、結果的にセンサの感度は落ちる傾向がある。
【0030】
これに対して、本実施形態に係る電磁超音波センサ11においては、2枚の強磁性体薄板17の間隙に、強磁性体薄板17と同じ厚みの中央部強磁性体薄板18を備える。この中央部強磁性体薄板18の存在により、永久磁石2及び永久磁石3内の渦電流19はほぼ抑制され、かつ、強磁性体薄板による磁路が分断されて、被検査体10の表面に適切な垂直方向磁場を形成することが可能となる。ここで、強磁性体薄板17及び中央部強磁性体薄板18の適切な配置は、コイル4,5の存在する部分には、できるだけ薄い強磁性体薄板17を配置し、そこから間隙を設けて、コイル4,5のない部分には、コイル4,5の存在する部分に配置した強磁性体薄板17の厚さと同じ厚さの中央部強磁性体薄板18を配置している。
【0031】
これにより対極する2つの永久磁石2と永久磁石3との間の磁路が小さくなることにより被検査体10中に入る磁束を多くしている。すなわち、図5(b)に示す如く、コイル4,5の存在する部分つまり静磁場を発生させたい領域のみへの高磁場分布を可能にし、さらに、永久磁石2及び永久磁石3磁石内に発生する渦電流を抑制できるため、ノイズを抑えることが可能になる。この結果、高感度で信号を受信することができる。
なお、図5に示す、永久磁石2,3の幅Dと強磁性体薄板17の厚みdとの比率は、1/50〜1/10が好ましく、特に、1/25〜1/16が好ましい。さらに、強磁性体薄板17と中央部強磁性体薄板18の空隙部の幅は、永久磁石2,3の幅Dに対して1/400〜1/100が好ましく、特に、1/400〜1/200が好ましい。
【0032】
以上のように、本実施形態に係る電磁超音波センサ11によると以下の効果がある。
電磁超音波センサ11においては、コイル4,5の存在する部分に強磁性体薄板17を設けると共に、永久磁石2と永久磁石3との幅方向接合部を跨ぐように中央部強磁性体薄板18を設ける、さらに強磁性体薄板17と中央部強磁性体薄板18との間に間隙を設けて配置している。これにより、磁路をさらに限定的に調節し、コイル4,5が存在する部分にのみさらに強い磁場分布を発生させることが可能になる。この結果、さらなる高感度で信号を受信することが可能となる。
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態に係る電磁超音波センサについて説明する。
【0033】
なお、以下の説明において、上述した第1実施形態又は第2実施形態と同一の部品には同一の符号を付してある。
図6は、本実施形態に係る電磁超音波センサ21の側面図である。電磁超音波センサ21が電磁超音波センサ11と異なる点は、中央部強磁性体薄板28が中央部強磁性体薄板18とは異なる厚さである点である。これ以外は第2実施形態と同じである。
また、強磁性体薄板17の厚みは、例えば、1mmであって、中央部強磁性体薄板28の厚みは、例えば、0.5mmであって、強磁性体薄板17と中央部強磁性体薄板28との間隙は、例えば、0.1mmである。
【0034】
図7に、本実施形態に係る電磁超音波センサ21により形成される被検査体10の表面の垂直方向磁場を示す。
図7においては、上述の第2実施形態に係る電磁超音波センサ11により形成される被検査体10の表面の垂直方向磁場を一点鎖線で、本実施形態に係る電磁超音波センサ21により形成される被検査体10の表面の垂直方向磁場を実線で示す。
本実施形態に係る電磁超音波センサ21においては、2枚の強磁性体薄板17の間隙に強磁性体薄板17よりも薄い厚み(半分の厚み)の中央部強磁性体薄板28を備える。この中央部強磁性体薄板28の存在により、永久磁石2及び永久磁石3内の渦電流29はほぼ抑制され、かつ、被検査体10の表面にさらに適切な垂直方向磁場を形成することが可能となる。ここで、強磁性体薄板17及び中央部強磁性体薄板18の適切な配置は、コイル4,5の存在する部分には、できるだけ薄い強磁性体薄板17を配置し、そこから間隙を設けて、コイル4,5のない部分には、コイル4,5の存在する部分に配置した強磁性体薄板17の厚さよりも薄い(ここでは半分の厚み)中央部強磁性体薄板28を配置している。
【0035】
これにより対極する2つの永久磁石2と永久磁石3との間の磁路が小さくなることにより被検査体10中に入る磁束を多くしている。すなわち、コイル4,5の存在する部分つまり静磁場を発生させたい領域のみへのさらなる高磁場分布を可能にし、さらに、永久磁石2及び永久磁石3磁石内に発生する渦電流を抑制できるため、ノイズを抑えることが可能になる。この結果、高感度で信号を受信することができる。
なお、図7に示す、永久磁石2,3の幅Dと強磁性体薄板17の厚みdとの比率は、1/50〜1/10が好ましく、特に、1/25〜1/16が好ましい。さらに、強磁性体薄板27と中央部強磁性体薄板28の間隙は、永久磁石2,3の幅Dに対して1/400〜1/100が好ましく、特に、1/400〜1/200が好ましい。さらに、強磁性体薄板27と中央部強磁性体薄板28との厚みの比率は、1/3〜2/3が好ましく、特に、1/3〜1/2が好ましい。
【0036】
こうすることで、図7(b)に示すように、コイル4,5に対応する部分の垂直磁場の強度は約0.8Tで、強磁性体薄板17を有さない従来のセンサ(図3(b)を参照)とほぼ同じとなるばかりか、磁場分布が非常に均一なものとなる。
以上のように、本実施形態に係る電磁超音波センサ21によると以下の効果がある。
電磁超音波センサ21においては、コイル4,5の存在する部分に強磁性体薄板17を、コイル4,5の存在しない部分に強磁性体薄板17よりも薄い中央部強磁性体薄板28を設けるとともに、これらの強磁性体薄板17と中央部強磁性体薄板28との間に間隙を設けて配置している。これにより、磁路をさらに限定的に調節し、コイル4,5が存在する部分にのみさらに強い磁場分布を発生させることが可能になる。この結果、さらなる高感度で信号を受信することが可能となる。
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態に係る電磁超音波センサについて説明する。
【0037】
なお、以下の説明において、上述した実施形態と同一の部品には同一の符号を付してある。
図8は、本実施形態に係る電磁超音波センサ31の側面図である。電磁超音波センサ31が電磁超音波センサ1、電磁超音波センサ11及び電磁超音波センサ21と異なる点は、横波発生用センサではなく表面SH波発生用センサである点である。
図8に示すように、電磁超音波センサ31は、磁極の向きを表裏交互に反転させ且つ千鳥状に配置してある複数個の永久磁石32及び永久磁石33と、強磁性体の被検査体10の表面側の内部に渦電流6を発生するための送信コイル5と、反射した超音波を受信するための受信コイル4と、これらのコイルと永久磁石32及び永久磁石33との間にある強磁性体薄板27(第1の非導電強磁性体)及び中央部強磁性体薄板28(第2の非導電強磁性体)から構成される。強磁性体薄板27は、中央部強磁性体薄板28よりも厚い。
【0038】
この電磁超音波センサ31は、送信コイル5にパルス電流を流すことにより、被検査体10中に発生する渦電流と、交互に反転した永久磁石32及び永久磁石33により発生する静磁場との相互作用によりローレンツ力を発生させて、それにより表面を水平方向に伝播する表面SH波を発生させる。
この電磁超音波センサ31の複数の永久磁石32及び永久磁石33の下部には、強磁性体薄板27及び中央部強磁性体薄板28が設けられている。永久磁石32及び永久磁石33が配置された位置に対応して厚い強磁性体薄板27が、永久磁石32と永久磁石33とが接する位置に対応して薄い中央部強磁性体薄板28が設けられている。
【0039】
これにより、隣接する永久磁石32,33の間の磁路が小さくなることにより被検査体10中に入り込む磁束を多くしている。すなわち、上述の第1実施形態〜第3実施形態における横波発生用センサと同様に、コイル4,5の存在する部分つまり静磁場を発生させたい領域のみに高磁場分布を形成し、さらに永久磁石32及び永久磁石33内の渦電流の発生を抑制している。
この結果、コイル4,5の存在する部分つまり静磁場を発生させたい領域に対し更なる高磁場分布の形成を可能にし、さらに、永久磁石32,33内に発生する渦電流を抑制できるため、ノイズを抑えることが可能になる。表面SH波を用いた電磁超音波センサにおいて、高感度で信号を受信することができる。
【0040】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電磁超音波センサの側面図である。
【図2】(a)は本発明の第1実施形態に係る電磁超音波センサの側面図、(b)は本発明の第1実施形態に係る電磁超音波センサによる被検査体表面の垂直方向磁場を示す図である。
【図3】(a)は従来の電磁超音波センサの側面図、(b)は従来の電磁超音波センサによる被検査体表面の垂直方向磁場を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る電磁超音波センサの側面図である。
【図5】(a)は本発明の第2実施形態に係る電磁超音波センサの側面図、(b)は本発明の第2実施形態に係る電磁超音波センサによる被検査体表面の垂直方向磁場を示す図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る電磁超音波センサの側面図である。
【図7】(a)は本発明の第3実施形態に係る電磁超音波センサの側面図、(b)は本発明の第3実施形態に係る電磁超音波センサによる被検査体表面の垂直方向磁場を示す図である。
【図8】(a)は本発明の第4実施形態に係る電磁超音波センサの側面図、(b)は当該電磁超音波センサの磁場発生部の下面に設けられる第1の非導電強磁性体及び第2の非導電強磁性体の平面図である。
【符号の説明】
【0042】
1,11,21,31 電磁超音波センサ
2,3,32,33 永久磁石
4 受信コイル
5 送信コイル
6,9,19,29 渦電流
7,17,27 強磁性体薄板
18,28 中央部強磁性体薄板
40 空隙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性体材料の被検査体に対向する面に異極を有していて且つ当該被検査体に磁場を印加する磁場発生部と、
前記磁場発生部により磁場が印加された被検査体に渦電流を発生させて当該被検査体内に電磁超音波を生じさせるコイルと、
前記コイルと磁場発生部の間の領域であって、前記コイルの巻線が存在する領域で磁場発生部に接するように設けられた非導電強磁性体と、を有し、
前記非導電強磁性体は、前記磁場発生部の異極間で分割されて空隙部を有する構成となっていることを特徴とする電磁超音波センサ。
【請求項2】
強磁性体材料の被検査体に対向する面に異極を有していて且つ当該被検査体に磁場を印加するて磁場発生部と、
前記磁場発生部により磁場が印加された被検査体に渦電流を発生させて当該被検査体内に電磁超音波を生じさせるコイルと、を備え、
前記コイルと磁場発生部の間の領域であって、前記コイルの巻線が存在する領域に設けられた第1の非導電強磁性体と、前記磁場発生部の異極間を跨ぐように設けられた第2の非導電強磁性体とを有し、
前記第1の非導電強磁性体と第2の非導電強磁性との間には空隙部が設けられる構成となっていることを特徴とする電磁超音波センサ。
【請求項3】
前記第2の非導電強磁性体の厚みは、第1の非導電強磁性体の厚みよりも薄いことを特徴とする請求項2に記載の電磁超音波センサ。
【請求項4】
前記非導電強磁性体の厚みは、前記磁場発生部の厚みの1/50以上1/10以下であることを特徴とする請求項1に記載の電磁超音波センサ。
【請求項5】
前記第1の非導電強磁性体の厚みは、前記磁場発生部の厚みの1/50以上1/10以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の電磁超音波センサ。
【請求項6】
前記空隙部の幅は、前記磁場発生部の幅の1/400以上1/100以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電磁超音波センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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