説明

電線プロテクタ

【課題】種々の分岐形態の電気ケーブルに適合可能で且つ安価に製造できる電線プロテクタを提供する。
【解決手段】電線プロテクタ10は、絶縁材料からなる帯状平板をコイル状に巻いて成形され、周方向の一巻き分を構成する各コイル部151−155が周方向の一部に折曲部16をそれぞれ有する。電線プロテクタ10の端部11を構成するコイル部151−155の各折曲部16は略山型に折れ曲がった状態で軸方向に重なり合う位置に形成されており、電気ケーブル1の支線分岐領域8の周囲に配置される複数のコイル部151−155は折曲部16が周方向に広がることで内周形状が、略扇状に分岐する各支線1a,1b,1cに応じて電気コネクタ側へ向けて次第に大きくなるように変形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線プロテクタに係り、特に、複数の支線ケーブルを含む電気ケーブルの幹線部の周囲および支線分岐領域の周囲に配置されて電気ケーブルを保護する電線プロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図5に示すような電気ケーブル1および電気コネクタ2が公知である。このような電気ケーブル1および電気コネクタ2は、たとえばハイブリッド自動車、電気自動車等の電動車両に搭載されたインバータとモータとの間を電気的に接続して電力授受を行うために使用されている。
【0003】
電気ケーブル1は、たとえば3本の支線1a,1b,1cがテープ、バンド、クリップ、コルゲートチューブ等の結束部材によって束ねられている幹線部3を有する。そして、この幹線部3から略扇状に分岐して拡がる各支線1a,1b,1cの端部が間隔を空けて横一列に並んだ状態で電気コネクタ2にそれぞれ連結されている。
【0004】
電気コネクタ2は、絶縁性材料である樹脂成形品により形成されるのが一般的である。電気コネクタ2内において上記支線1a,1b,1cは互いに平行に整列された状態に保持され、各支線1a,1b,1cの先端に露出された導線にそれぞれ圧着された金属端子板4a,4b,4cが電気コネクタ2の端面から突出している。
【0005】
電気コネクタ2から突出した金属端子板4a,4b,4cの先端部には、貫通穴5がそれぞれ形成されており、この貫通穴5を介して電気機器、たとえばインバータのU相、V相、W相に対応する3つの出力端子にねじ留め固定されるようになっている。また、電気コネクタ2の両側には、貫通穴6が形成された取付タブ7が構成されており、この貫通穴6にねじ等を通してインバータ筐体に締結することにより、電気コネクタ2がインバータに対して固定される。
【0006】
なお、図5では電気ケーブル1のインバータ側の端部だけを示すが、電気ケーブル1のモータ側の端部も同様に構成されることができ、または、モータの接続端子の構成に応じて図5とは異なる電気コネクタを介してモータに接続されてもよい。
【0007】
電動車両において、電気ケーブル1はモータや電力変換機器が近接して搭載された空間内で狭いスペースを通して配索されることが多く、その配索作業を容易にするため及び車両構成部材(たとえば車両ボディ等)と直に接触しないようにするために、テープ等で結束されたり或いはチューブやシースによって被覆されたりする。
【0008】
また、電気ケーブル1の幹線部3から複数の支線が分岐して略扇状に拡がった領域(以下、適宜に支線分岐領域という)8において各支線1a,1b,1cの端部が露出していると、上述したような車両構成部材との接触等が起こりうるため、この分岐領域8についても従来、樹脂成形品からなる電線プロテクタを設けて保護することが行われている。
【0009】
たとえば、特開2007−306733号公報(特許文献1)には、ワイヤハーネスの幹線先端から支線が分岐する分岐部に外装するプロテクタの小型化を図ることを課題としたプロテクタが開示されている。このプロテクタは、ワイヤハーネスの幹線先端から2本以上の支線が分岐する部分に外装するプロテクタであって、本体とカバーとの分岐用筒部の内面には、扇型支点側の基端開口位置から支線分岐側の先端へと向けて幹線に外嵌する円弧状の窪み部と該窪み部の両端から突設するガイド部からなる幹線収容部が設けられ、本体とカバーとの接合時に前記窪み部とガイド部とで幹線全周を囲んで位置決め保持する形状とし、かつ、前記本体とカバーとは支線用筒部の一側端支線用筒部の分割端を薄肉ヒンジ部を介して連結すると共に、他側端支線用筒部の外側分割端および前記分岐用筒部の扇形両側端にそれぞれに互いに結合するロック部と被ロック部とが設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−306733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
インバータ等の電力変換機器およびこれに接続される電気ケーブルの車両搭載状況に応じて、3本の支線ケーブルを略三角形状に結束された状態から、間隔を置いて横一列に3本並んだ状態に変化する形態は様々である。例えば、各支線ケーブルの太さが異なったり、あるいは、分岐して電気コネクタに接続される3本の支線ケーブル間の間隔が異なったりすることがある。そのような場合、上記特許文献1のプロテクタでは一種類の分岐形態に適応しても、他の分岐形態では適合しないこととなるため、各形態に合わせて設計された各種のケーブルプロテクタを製造する必要がある。そうすると、このようなケーブルプロテクタは、樹脂材料を金型で成形して製造されるのが一般的であるため、製造コストが高くなるという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、種々の分岐形態の電気ケーブルに適合可能で且つ安価に製造できる電線プロテクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る電線プロテクタは、絶縁材料からなる帯状平板をコイル状に巻いて成形され、複数の支線を含む電気ケーブルの幹線部の周囲および前記幹線部から各支線が略扇状に分岐して電気コネクタにそれぞれ連結する支線分岐領域における各支線の周囲に配置される電線プロテクタであって、周方向の一巻き分を構成する各コイル部が周方向の一部に折曲部をそれぞれ有し、各折曲部は略山型に折れ曲がった状態で各コイル部間で軸方向に重なり合う位置に形成されており、前記電気ケーブルの幹線部の周囲に配置される複数のコイル部は前記折曲部が周方向に狭まっていることで内周形状が小さくなる一方、前記支線分岐領域の周囲に配置される複数のコイル部は前記折曲部が周方向に広がることで内周形状が前記略扇状に分岐する前記各支線に応じて前記電気コネクタ側へ向けて次第に大きくなるように変形するものである。
【0014】
本発明に係る電線プロテクタにおいて、前記各コイル部の折曲部は軸方向頂点部で連結する2つの辺部を含み、各辺部の外側縁部には切り込み部がそれぞれ形成されており、前記各コイル部の折曲部に形成された前記切り込み部をジグザグ状に通りながら軸方向に延伸する紐状または糸状の細線部材を設け、この細線部材を緩めることにより前記折曲部が周方向に広げられるように構成されてもよい。
【0015】
この場合、前記折曲部における切り込み部は各辺部に2つ隣接して形成され、前記2つの切り込み部間を仕切る仕切り部の前記細線部材の挿入側の先端が、前記切り込み部の挿入開口幅を狭めるように突出させるのが好ましい。また、この場合、前記仕切り部の先端が略矢印形状に形成されてもよい。
【0016】
また、本発明に係る電線プロテクタにおいて、前記折曲部は3つの折曲箇所で山型に折り曲げられて形成され、各折曲箇所は各コイル部における薄肉部として形成されてもよい。
【0017】
さらに、本発明に係る電線プロテクタにおいて、前記支線分岐領域に沿って内周形状が広げられたプロテクタ端部が粘着テープを巻き付けることにより前記電気コネクタに固定されてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電線プロテクタによれば、絶縁材料からなる帯状平板をコイル状に巻いて成形される電線プロテクタの各コイル部が折曲部をそれぞれ有し、電気ケーブルの幹線部の周囲に配置される複数のコイル部は折曲部が周方向に狭まっていることで内周形状が小さくなる一方、電気ケーブルの支線分岐領域の周囲に配置される複数のコイル部では折曲部が周方向に広がることで内周形状が支線分岐領域の略扇状形態に応じて電気コネクタ側へ向けて次第に大きくなるように変形するため、幹線部の太さ、支線の太さ、支線分岐間隔等が異なる種々の分岐形態の電気ケーブルに対して柔軟に適合することができる。そのため、1つの電線プロテクタを種々の電気ケーブルの幹線部および支線分岐領域の保護に用いることができ、電線プロテクタの製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態である電線プロテクタの端面および側面を示す図である。
【図2】本実施形態の電線プロテクタにおいてか各コイル部に形成された折曲部を示す拡大図である。
【図3】折曲部に形成された切り込み部を示す、図2中のA−A線に沿った線材断面を含む平面拡大図である。
【図4】電気ケーブルの支線分岐領域の周囲に配置されるプロテクタ端部の端面および側面を示す図である。
【図5】電気ケーブルおよびこれに連結される電気コネクタを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る実施の形態(以下、実施形態という)について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。
【0021】
本実施形態の電線プロテクタは、電動車両に搭載されるインバータおよびモータ間を電気接続する電気ケーブルに好適に適用可能であるが、これに限定されるものではなく、たとえば、自動車のインストールパネル内に配索されるワイヤーハーネスの支線分岐領域に適用されてもよいし、自動車以外の産業機械、ロボット等の電動機器で使用される電気ケーブルに適用されてもよい。
【0022】
また、以下の説明では、図5を参照して上述した電気ケーブル1および電気コネクタ2と同一の又は対応する構成要素については同一の又は対応する符号を付して説明を行うこととする。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態である電線プロテクタ10の端面(上図)および側面(下図)を示す。電線プロテクタ10は、たとえば、樹脂、ゴム等の絶縁材料からなる帯状平板12をコイル状に巻いて成形される。電線プロテクタ10は、周方向の一巻き分に相当する多数のコイル部が軸方向に複数または多数連なって構成されている。図1では、5巻き分に相当するコイル部141〜145が例示されている。
【0024】
電線プロテクタ10は、帯状平板12をコイル状に連続して長く成形したものから、電気ケーブル1の長さに応じた必要分を切断することによって得ることができる。このような電線プロテクタ10が切り出される連続成形体は、たとえば、射出成形、切り込み部および薄肉部の形成、折曲部の折り曲げ加工、ならびに、棒状型の周囲への巻き付け等を連続的に行うことによって長く成形可能である。したがって、分割可能な複数の金型で電線プロテクタを1個または複数個ずつ成形する場合に比べて、製造コストを大幅に低減することができる。
【0025】
電線プロテクタ10の内周形状は、3本の支線ケーブル1a,1b,1cが略三角状に結束されてなる電気ケーブル1の幹線部3を収容するのに適した大きさの長円形状に形成されている。また、電線プロテクタを構成する各コイル部141〜145は、それぞれ、軸方向に適当な間隔dをあけて隣り合うように巻回されている。
【0026】
電線プロテクタ10の構成する各コイル部141−145は、周方向の一部に折曲部16をそれぞれ有している。折曲部16は、平面視で略長円形状をなす各コイル部の短辺方向に対向して2箇所設けられているが、そのうち一方の折曲部16だけに後述する細線部材を通すための切り欠き部が形成されている。また、各折曲部16は、略V字状(または略逆V字状)の山型に折れ曲がった状態で、各コイル部141〜145間で軸方向に重なり合う位置に形成されている。ただし、折曲部16の折れ曲がり形状は、略V字状に限定されるものではなく、たとえば略U字状、略矩形状等の他の形状の山型に形成されてもよい。
【0027】
図2および図3に、折曲部16の全部または一部を拡大して示す。図2に示すように、折曲部16は、軸方向頂点部17で連結する2つの辺部18a,18bを含み、各辺部18a,18bが略三角山型に折り曲げられて形成される。各コイル部141−145を構成する帯状平板12には、各コイル半周当りに3箇所の薄肉部20が形成されている。具体的には、折曲部16の両側に位置する2つの薄肉部20と、折曲部16の軸方向頂点部17に対応する1つの薄肉部20である。各薄肉部20は、帯状平板12の表面に断面略半円形状の溝22が形成されることによって厚みが減じられている。
【0028】
このように薄肉部20を予め形成しておくことによって、折曲部16の折り曲げ加工を正確な位置で且つ容易に行うことができる。薄肉部20を形成するため溝22は、折れ曲がり方向の表面に形成されるのが好ましい。ただし、これに限定されるものではなく、折れ曲がり箇所の厚みを小さくするものであれば少なくとも何れかの平板表面に形成されていればよい。
【0029】
なお、各コイル部141−145における折り曲げ箇所を規定するために、上記溝22に代えて又はこれに加えて、帯状平板12の(長手方向と直交する)幅を他の部分よりも短く形成してもよいし、あるいは、複数の貫通穴を幅方向に並べて形成することによって折れ曲がり易くしてもよい。
【0030】
図1の上図および図2を参照すると、折曲部16をなす2つの辺部18a,18bにおいて径方向外側の縁部には、それぞれ、切り込み部24が形成されている。切り込み部24は、図3に示すように、仕切り部26によって仕切られた2つの切り込み部24a,24bで構成される。仕切り部26の先端は、略矢印形状に形成され、両側に突出した部分を有している。これにより、後述する細線部材30が切り込み部24a,24bが挿入配置されるときの挿入側の開口幅wが細線部材30の直径よりも小さくなるように狭められている。なお、細線部材30の挿入時には、仕切り部26および細線部材30の少なくともいずれかが変形可能であるために、上記のように狭められた開口から切り込み部24a,24b内に細線部材30を押し入れることができる。
【0031】
このように切り込み部24a,24bの間にある仕切り部26の先端27を略矢印形状とすることで、切り込み部24a,24b内へ細線部材30を入れ込むときは仕切り部26の先端の傾斜面となっているために比較的容易に挿入することができる一方、細線部材30が切り込み部24a,24b内に一旦配置されると仕切り部26の先端の突出部が反しとなって外れにくくすることができる。ただし、仕切り部26の先端27の形状は、略矢印形状に限定されるものではなく、たとえば半円形状、矩形状等の他の形状で仕切り部側面から突出して挿入開口幅を狭められていてもよい。
【0032】
本実施形態の電線プロテクタ10では、さらに、各コイル部141〜145の折曲部16に形成された切り込み部24をジグザグ状に通りながら軸方向に延伸する紐状または糸状の細線部材30が設けられている。細線部材30は、たとえば、樹脂製ワイヤ、天然繊維製の紐または糸等の柔軟性がある細い線材によって好適に構成される。この細線部材30は、電線プロテクタ10の内周形状を、内部に収容した電気ケーブル1に応じた所望の大きさ及び形状に維持または規制する役割を果たすものである。
【0033】
図1の下図および図2を参照して第3コイル部143から第4コイル部144にかけての細線部材30の通し方を例に説明すると、細線部材30は、第3コイル部143の折曲部16において、一方の辺部18bにある1つの切り込み部24bを通って裏面から表面へ抜け、そして直ちに隣接する切り込み部24aを通って表面から裏面へと折り返し、そこから他方の辺部18aの1つの切り込み部24aを介して裏面から表面へと通り抜けている。それから、細線部材30は、第3コイル部143の反対側へと渡り、第3コイル部143の折曲部16の辺部18aの一方の切り込み部24bから他方の切り込み部24aを通り抜けて折り返し、第4コイル部144の辺部18bの一方の切り込み部24aに通っている。
【0034】
このようにして細線部材30は、各コイル部の折曲部16において、辺部18aまたは18bで2つの切り込み部24a,24bを通って折り返して辺部18bまたは18aの1つの切り込み部24aを通り抜けて次のコイル部の折曲部16へ渡るというようにして連続的に通されている。
【0035】
このように軸方向において隣り合うコイル部141〜145間で細線部材30が各折曲部の切り込み部24をジグザグに通してあることで、細線部材30の引っ張り具合を調整することによって、略三角山型形状の折曲部16の折れ曲り具合または折れ曲がり角度を周方向に狭まった状態に維持することができ、これにより電線プロテクタ10の内周形状を電気ケーブル1の幹線部3の太さに応じた大きさおよび形状に保持することができる。
【0036】
次に、図4を参照して、本実施形態の電線プロテクタ10が電気ケーブル1の支線分岐領域8の周囲に配置される様子を説明する。図4は、電線プロテクタ10において電気ケーブル1の支線分岐領域8に配置されたプロテクタ端部11の端面(上図)および側面(下図)を示す。
【0037】
電線プロテクタ10は、軸方向の全長に亘って上記と略同様の構成を有している。異なるところは、細線部材30の端部30aが、プロテクタ端部11から更に余裕をもって軸方向外側へ長く延びている点である。ここでは、プロテクタ端部11が5巻き分のコイル部15(151〜155)で構成される例を示す。
【0038】
電気ケーブル1の支線分岐領域8では、3本の支線ケーブル1a,1b,1cが幹線部3から分岐して略扇状に広がり、所定間隔を空けて横一列に並んだ状態で電気コネクタ2にそれぞれ連結する。そのため、電気ケーブル1の支線分岐領域8の周囲に配置される電線プロテクタ10のプロテクタ端部11も、横一列に並んだ支線ケーブル1a,1b,1cの広がり形態に応じて内周形状が電気コネクタ側へ向けて次第に大きくなるように変形させている。
【0039】
具体的には、プロテクタ端部11において細線部材30を緩めて各コイル部151〜155の折曲部16の折れ曲り具合または折れ曲り角度が周方向に広がるようにする。これにより、プロテクタ端部11を構成するコイル部151〜155の内周形状が、電気ケーブル1の幹線部3の周囲に対応した短い長円形状から、各支線ケーブル1a,1b,1cの配列方向に長くなった長円形状へと徐々に大きく変形することができる。
【0040】
電線プロテクタ10のプロテクタ端部11を上記のように広げて電気ケーブル1の支線分岐領域8の周囲に配置した状態で、たとえば粘着テープを巻き付けることによって電線プロテクタ10を電気コネクタ2に固定することができる。
【0041】
また、最終的に余剰となった細線部材30の端部30aを電気コネクタ2の周囲に巻いて結びつけてもよい。これにより、細線部材30のさらなる緩みによって電線プロテクタ10のプロテクタ端部11の形状が変化するのを防止できるとともに、電線プロテクタ10が電気コネクタ2から外れて位置ずれするのをより確実に防止することができる。
【0042】
さらに、電線プロテクタ10を電気コネクタ2に固定する前に、プロテクタ細線部材30の端部30aを引っ張ってプロテクタ端部11の内周縁部を適度な押圧力で外側の支線ケーブル1a,1cに圧接させた状態にしてから粘着テープ等で固定してもよい。このようにすれば、支線ケーブルに対するプロテクタ端部11の圧接力によっても電気プロテクタ10が電気ケーブル1の支線分岐領域8にしっかりと固定される。
【0043】
上述したように本実施形態の電線プロテクタ10によれば、樹脂材料からなる帯状平板をコイル状に巻いて成形される電線プロテクタ10の各コイル部14,15が折曲部をそれぞれ有し、電気ケーブル1の幹線部3の周囲に配置される複数のコイル部14は折曲部16の曲がり具合または曲がり角度が周方向に狭まっていることで内周形状が小さくなる一方、電気ケーブル1の支線分岐領域8の周囲に配置される複数のコイル部15では折曲部16の曲がり具合または曲がり角度が周方向に広がることで内周形状が支線分岐領域8の略扇状形態に応じて電気コネクタ側へ向けて次第に大きくなるように変形するため、幹線部3の太さ、支線ケーブル1a,1b,1cの太さ、支線分岐間隔等が異なる種々の分岐形態の電気ケーブル1に対して柔軟に適合することができる。そのため、1つの電線プロテクタ10を種々の電気ケーブルの幹線部および支線分岐領域の保護に用いることができ、電線プロテクタ10の製造コストを低減できる。
【0044】
また、本実施形態によれば、幹線部3およびその両端の支線分岐領域8を含む電気ケーブル1の全長にわたって1つの電線プロテクタ10で保護することができ、電気ケーブルの分岐部用に特別のプロテクタを準備する必要がなくなる。したがって、部品数の削減によるコスト低減効果も見込める。
【0045】
なお、本発明に係る電線プロテクタは、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更または改良が可能である。
【0046】
たとえば、上記では3本の支線ケーブル1a,1b,1cを含む電気ケーブル1について電線プロテクタ10を適用する例について説明したが、これに限定されるものではなく、2本または4本以上の支線ケーブルを含む電気ケーブルの支線分岐領域の保護のために用いられてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、1つの折曲部16を構成する2つの辺部18a,18bに切り込み部24を2つずつ形成したが、これに限定されるものではなく、たとえば、細線部材30を上記のように通した場合に1回しか通過しない辺部には切り込み部を1つだけ形成してよいし、あるいは、各辺部18a,18bに切り込み部を1つずつ形成して隣接する各折曲部16を順次に反対方向へ通り抜けるように細線部材をジグザグ状に配置してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では電線プロテクタ10により電気ケーブル1の幹線部3および支線分岐領域8の両方を保護するものとして説明したが、これに限定されるものではなく、上記構成の電線プロテクタにより電気ケーブルの支線分岐領域の周囲およびこれに近接する幹線部の周囲だけを覆って保護するようにしてもよく、この場合、電気ケーブルの幹線部の大部分は従来公知のテープ、クリップ、チューブ、シース等によって結束および保護する構成とすればよい。
【0049】
さらに、上記実施形態においては細線部材30によって電線プロテクタの形状を規制するものとして説明したが、これに限定されるものではなく、折曲部を構成する帯状平板の折れ曲がり箇所が塑性変形していることで、外力を加えて一旦決められた折れ曲がり形状がそのまま保持される場合には、細線部材自体、および、そのための切り込み部の形成を省略することができ、さらなるコスト低減を図れる。
【符号の説明】
【0050】
1 電気ケーブル、1a,1b,1c 支線または支線ケーブル、2 電気コネクタ、3 幹線部、4a,4b,4c 金属端子板、5,6 貫通穴、7 取付タブ、8 支線分岐領域、8 支線分岐領域、10 電線プロテクタ、11 プロテクタ端部、12 帯状平板、14,141−145 コイル部、15,151−155 コイル部、16 折曲部、17 軸方向頂点部、18a,18b 辺部、20 薄肉部、22 溝、24,24a,24b 切り込み部、26 仕切り部、27 先端、30 細線部材、30a 端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料からなる帯状平板をコイル状に巻いて成形され、複数の支線を含む電気ケーブルの幹線部の周囲および前記幹線部から各支線が略扇状に分岐して電気コネクタにそれぞれ連結する支線分岐領域における各支線の周囲に配置される電線プロテクタであって、
周方向の一巻き分を構成する各コイル部が周方向の一部に折曲部をそれぞれ有し、各折曲部は略山型に折れ曲がった状態で各コイル部間で軸方向に重なり合う位置に形成されており、前記電気ケーブルの幹線部の周囲に配置される複数のコイル部は前記折曲部が周方向に狭まっていることで内周形状が小さくなる一方、前記支線分岐領域の周囲に配置される複数のコイル部は前記折曲部が周方向に広がることで内周形状が前記略扇状に分岐する前記各支線に応じて前記電気コネクタ側へ向けて次第に大きくなるように変形する、
電線プロテクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の電線プロテクタにおいて、
前記各コイル部の折曲部は軸方向頂点部で連結する2つの辺部を含み、各辺部の外側縁部には切り込み部がそれぞれ形成されており、前記各コイル部の折曲部に形成された前記切り込み部をジグザグ状に通りながら軸方向に延伸する紐状または糸状の細線部材を設け、この細線部材を緩めることにより前記折曲部が周方向に広げられるように構成されていることを特徴とする電線プロテクタ。
【請求項3】
請求項2に記載の電線プロテクタにおいて、
前記折曲部における切り込み部は各辺部に2つ隣接して形成され、前記2つの切り込み部間を仕切る仕切り部の前記細線部材の挿入側の先端が、前記切り込み部の挿入開口幅を狭めるように突出することを特徴とする電線プロテクタ。
【請求項4】
請求項3に記載の電線プロテクタにおいて、
前記仕切り部の先端が略矢印形状に形成されていることを特徴とする電線プロテクタ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の電線プロテクタにおいて、
前記折曲部は3つの折曲箇所で山型に折り曲げられて形成され、各折曲箇所は各コイル部における薄肉部として形成されていることを特徴とする電線プロテクタ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の電線プロテクタにおいて、
前記支線分岐領域に沿って内周形状が広げられたプロテクタ端部が粘着テープを巻き付けることにより前記電気コネクタに固定されることを特徴とする電線プロテクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−223006(P2012−223006A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88082(P2011−88082)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】