説明

電線事故点報知システム、電線事故点報知方法、およびコンピュータプログラム

【課題】システムに大きな負担を強いることなく、高い信頼性をもって電線の事故点をオペレータに示すことができるようにすること。
【解決手段】事故発生時刻と事故発生区間とを特定する事故情報を取り込み、取り込んだ事故情報によって特定される事故発生区間に含まれている撮影ポイントを絞り込み、複数の撮影ポイントで電線(送電線51、配電線61)を撮影した撮影画像を記憶する記憶装置から、取り込んだ事故情報によって特定される事故発生時刻に至る直前所定時間内の絞り込んだ撮影ポイントで撮影された電線(送電線51、配電線61)の撮影画像を取り込み、取り込んだ画像を画像解析して異常画像となっている撮影ポイントを検索し、事故検知システム103にて、検索した撮影ポイントの位置を異常画像のディスプレイ表示と共に報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の事故点をピンポイントで報知できるようにした電線事故点報知システム、電線事故点報知方法、および電線事故点報知用のコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
送電線や配電線に生じた事故、例えば地絡事故や短絡事故を発見するために、従来、様々な仕組みが考えられ、実用化されている。ところが、発電所から個々の需要家に至るまでの経路は広範囲にわたるため、ピンポイントで事故発生点を特定することは容易なことではない。その中でも、特許文献1は、カメラで撮影した映像を用いて事故点をピンポイントで探し出すことができるようにした技術を開示している。
【0003】
特許文献1が開示する技術は、事故が発生していないときに予めカメラで撮影した電線の映像をデータサーバに蓄積しておく。そして、事故が発生した場合、事故点を含む事故点範囲を算出して割り出し、その範囲内の電線をカメラで撮影し、カメラで撮影した映像とデータサーバに蓄積されている同じ部分の映像とを比較することにより、事故点を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−085417公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている技術は、データサーバに蓄積する事故前の映像とカメラで撮影した事故後の映像とを比較して、相違を見出した場合にはここを事故点と評価する、というものである。このため、データサーバに蓄積する事故前の映像は、必ず、その場所における現在の風景にアップデートされていなければならいない。このため、画像のメンテナンスが極めて煩雑であり、非常に負担が大きいシステムであると云える。
【0006】
また、特許文献1に記載されている技術では、データサーバに蓄積する事故前の映像とカメラで撮影した事故後の映像との比較を、画像解析技術のみに頼っている。このため、事故点かどうかの判断の信頼性の高さに疑問が残る。
【0007】
これに加えて、特許文献1に記載されている技術では、仮に、事故点と判断された場所の現在の映像を単独でまたは過去の映像と共にオペレータにディスプレイ表示するようにしたとても、その映像だけからでは、事故発生の有無が判然としない。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、システムに大きな負担を強いることなく、高い信頼性をもって電線の事故点をオペレータに示すことができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の電線事故点報知システムの発明は、事故発生時刻と事故発生区間とを特定する事故情報を取り込む取込手段と、前記取り込んだ事故情報によって特定される事故発生区間に含まれている前記撮影ポイントを絞り込む絞込手段と、複数の撮影ポイントで電線を撮影した撮影画像を記憶する記憶装置から、前記取り込んだ事故情報によって特定される事故発生時刻に至る直前所定時間内の前記絞り込んだ撮影ポイントで撮影された電線の撮影画像を取り込む画像取込手段と、前記取り込んだ画像を画像解析して異常画像となっている前記撮影ポイントを検索する検索手段と、前記検索した撮影ポイントの位置を前記異常画像のディスプレイ表示と共に報知する報知手段と、を備えることによって上記課題を解決する。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電線事故点報知システムにおいて、前記取込手段は、ユーザインターフェースによって手入力された前記事故情報を取り込む。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電線事故点報知システムにおいて、前記取込手段は、前記電線の状態を検知する監視制御システムから送信された前記事故情報を取り込む。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか一に記載の電線事故点報知システムにおいて、複数の撮影ポイントで電線の画像を撮影する撮影装置と、前記撮影装置が撮影した前記電線の撮影画像を記憶する記憶装置と、前記記憶装置が記憶する前記電線の撮影画像を外部機器に送信出力するデータ伝送装置と、を備える。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の電線事故点報知システムにおいて、前記記憶装置から、所定時間経過した前記電線の撮影画像を消去する。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の電線事故点報知システムにおいて、複数の撮影ポイント毎に、前記撮影装置と、前記記憶装置と、前記データ伝送装置と、を設置し、前記データ伝送装置に、前記画像取込手段と前記検索手段との機能を実行させる。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項4または5に記載の電線事故点報知システムにおいて、複数の中継ポイント毎に、グループ分けされた複数個の前記撮影装置に対応付けた前記記憶装置と、前記データ伝送装置と、を設置し、前記データ伝送装置に、前記画像取込手段と前記検索手段との機能を実行させる。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項6または7に記載の電線事故点報知システムにおいて、前記複数のポイントを取りまとめる本部に、前記取込手段と前記絞込手段と前記報知手段との機能を実行する本部情報処理装置を設置した。
【0017】
請求項9に記載の電線事故点報知方法の発明は、事故発生時刻と事故発生区間とを特定する事故情報を取り込む取込工程と、前記取り込んだ事故情報によって特定される事故発生区間に含まれている前記撮影ポイントを特定する絞込工程と、複数の撮影ポイントで電線を撮影した撮影画像を記憶する記憶装置から、前記取り込んだ事故情報によって特定される事故発生時刻に至る直前所定時間内の前記絞り込んだ撮影ポイントで撮影された電線の撮影画像を取り込む画像取込工程と、前記取り込んだ画像を画像解析して異常画像となっている前記撮影ポイントを検索する検索工程と、前記検索した撮影ポイントの位置を前記異常画像のディスプレイ表示と共に報知する報知工程と、を備えることによって上記課題を解決する。
【0018】
請求項10に記載のコンピュータ読み取り可能なコンピュータプログラムの発明は、コンピュータにインストールされ、当該コンピュータに、事故発生時刻と事故発生区間とを特定する事故情報を取り込む取込機能と、前記取り込んだ事故情報によって特定される事故発生区間に含まれている前記撮影ポイントを特定する絞込機能と、複数の撮影ポイントで電線を撮影した撮影画像を記憶する記憶装置から、前記取り込んだ事故情報によって特定される事故発生時刻に至る直前所定時間内の前記絞り込んだ撮影ポイントで撮影された電線の撮影画像を取り込む画像取込機能と、前記取り込んだ画像を画像解析して異常画像となっている前記撮影ポイントを検索する検索機能と、前記検索した撮影ポイントの位置を前記異常画像のディスプレイ表示と共に報知する報知機能と、を実行させることによって、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の電線事故点報知システムの発明によれば、事故が発生した撮影ポイントの事故発生時点の撮影画像をディスプレイ表示と共に報知することができるので、すべての撮影ポイントの撮影画像を比較対照する画像として蓄積する場合には不可避であるメンテナンスの煩雑さからシステムを解放することができ、また、事故発生時点の撮影画像をディスプレイ表示するために事故発生の有無を一目瞭然に示すことができ、したがって、システムに大きな負担を強いることなく、高い信頼性をもって電線の事故点をオペレータに示すことができる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、ユーザインターフェースによって手入力された事故情報を取り込むようにしたので、電線の状態を検知する監視制御システム等との間での連携システムを構築する必要がなく、したがって、システム構成の簡略化を図ることができる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、電線の状態を検知する監視制御システムから送信された事故情報を取り込むようにしたので、人手を介することなく事故情報を容易に取り込むことができ、したがって、操作性の向上を図ることができる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、複数の撮影ポイントで電線の画像を撮影する撮影装置と、その撮影画像を記憶する記憶装置と、その記憶画像を外部機器に送信出力するデータ伝送装置とを備えるので、より完全なシステムを構築することができる。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、所定時間経過した電線の撮影画像を消去するようにしたので、記憶装置に大きな記憶容量を持たせる必要がなく、より手軽なシステムを構築することができる。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、複数の撮影ポイント毎に、撮影装置と、記憶装置と、画像取込手段と検索手段との機能を実行するデータ伝送装置と、を設置したので、とりわけ処理負担が大きな画像取込手段と検索手段との機能を個々の撮影ポイントに分担させることができ、したがって、処理負担を一箇所に負担させることなくタスク分散を図ることができる。
【0025】
請求項7に記載の発明によれば、複数の中継ポイント毎に、グループ分けされた複数個の撮影装置に対応付けた記憶装置と、画像取込手段と検索手段との機能を実行するデータ伝送装置と、を設置したので、とりわけ処理負担が大きな画像取込手段と検索手段との機能を個々の中継ポイントに分担させることができ、したがって、処理負担を一箇所に負担させることなくタスク分散を図ることができる。
【0026】
請求項8に記載の発明によれば、複数のポイントを取りまとめる本部に、取込手段と絞込手段と報知手段との機能を実行する本部情報処理装置を設置したので、電線事故点の確認のための操作を本部一箇所に集中させることができ、したがって、操作性の向上を図ることができる。
【0027】
請求項9に記載の電線事故点報知方法の発明によれば、事故が発生した撮影ポイントの事故発生時点の撮影画像をディスプレイ表示と共に報知することができるので、撮影画像を蓄積する場合には不可避であるメンテナンスの煩雑さからシステムを解放することができ、また、事故発生時点の撮影画像をディスプレイ表示するために事故発生の有無を一目瞭然に示すことができ、したがって、システムに大きな負担を強いることなく、高い信頼性をもって電線の事故点をオペレータに示すことができる。
【0028】
請求項10に記載のコンピュータ読み取り可能なコンピュータプログラムの発明によれば、事故が発生した撮影ポイントの事故発生時点の撮影画像をディスプレイ表示と共に報知することができるので、撮影画像を蓄積する場合には不可避であるメンテナンスの煩雑さからシステムを解放することができ、また、事故発生時点の撮影画像をディスプレイ表示するために事故発生の有無を一目瞭然に示すことができ、したがって、システムに大きな負担を強いることなく、高い信頼性をもって電線の事故点をオペレータに示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の一形態として、電線事故点報知システムが組み込まれた送配電設備の概略を示すブロック図。
【図2】電線事故点報知システムのハードウェア構成を示すブロック図。
【図3】電線事故点報知システムが実行するピンポイント事故点検知および報知処理の流れを示すフローチャート。
【図4】電線の事故発生時に電線事故点報知システムが実行する処理の一部を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
実施の一形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
図1は、実施の一形態として、電線事故点報知システム11が組み込まれた送配電設備12の概略を示すブロック図である。送配電設備12は、発電所または一次変電所(以下、発(変)電所21という)に設置されている遮断器22に接続した送電線51を複数の配電用変電所31の変圧器32に接続している。これにより、発(変)電所21から送電線51を介して配電用変電所31に電気が送られる。配電用変電所31は、送電線51によって送電された電気を変圧器32で変圧し、遮断器33から配電線61を介して需要家に送り届ける。配電線61は、複数本の電柱62に支持されて各所に張り巡らされており、所々に配置された区分開閉器63によって複数の区間に区分けされる。また、個々の配電用変電所31から延びる配電線61はそれぞれ一系統をなし、個々の系統間は、連係開閉器64によって開閉自在に接続されている。
【0032】
以上説明したような送配電設備12は、本部機能を有する中央監視制御局101で各所における運転状態を監視可能に構築されている。つまり、中央監視制御局101は、監視制御システム102を設置しており、この監視制御システム102で各所における運転状態を監視している。監視制御システム102は、各所に設置されてその場所の運転状態を監視可能な機器とネットワーク151を介してデータ通信可能に接続されている。このようなインフラの下、監視制御システム102は、各所から送信されるデータを吸い上げ、各所の運転状態を監視している。
【0033】
ネットワーク151を介して監視制御システム102に接続している機器は、発(変)電所21に設置されている遮断器22の運転状態をモニタする子局23、個々の配電用変電所31に設置されている遮断器33の運転状態をモニタする子局34、遮断器33の2次側に接続されている地絡事故検出用の零相電流検出器35および短絡事故検出用の過電流検出器36、区分開閉器63の運転状態をモニタする子局65、連係開閉器64の運転状態をモニタする子局66等である。
【0034】
ついで、本実施の形態の送配電設備12は、前述したように、電線事故点報知システム11を組み込んでいる。この電線事故点報知システム11というのは、中央監視制御局101に設置されている監視制御システム102が地絡や短絡等の事故を検出した場合、そのような事故がどの地点で発生したのかをピンポイントで検出し報知できるようにしたシステムである。このような電線事故点報知システム11の中核をなすのは、中央監視制御局101に設置されている本部情報処理装置としての事故検知システム103である。この事故検知システム103に、撮影装置としてのビデオカメラ67とデータ伝送装置68とが加わり、電線事故点報知システム11の全体が構築されている。ビデオカメラ67は、個々の電柱62に設置されており、その電柱62の周囲に架設されている配電線61の画像を撮影する。データ伝送装置68は、ネットワーク151を介して、ビデオカメラ67が出力する撮影画像のデータを事故検知システム103に伝送する。
【0035】
ここで、図1中、ビデオカメラ67およびデータ伝送装置68は、配電線61を架設する電柱62にのみ設置されている状態を示している。これに対して、送電線51は、一般的には鉄塔(図示せず)に架設されて個々の発(変)電所21と配電用変電所31とをつないでいる。図1では、このような送電線51を架設する鉄塔を図示していないので、送電線51を撮影するビデオカメラ67およびデータ伝送装置68も図示していないが、本実施の形態においては、個々の鉄塔にも送電線51を撮影するビデオカメラ67およびデータ伝送装置68が設置されている。
【0036】
また、図1では、一つの電柱62に一つのビデオカメラ67を対応付けて設置した状態を示しているが、これに限らず、一つの電柱62に二つ以上のビデオカメラ67を対応付けて設置しても良く、反対に、複数の電柱62に一つのビデオカメラ67を対応付けて設置しても良い。つまり、送電線51や配電線61の画像を満遍なく撮影できれば、鉄塔または電柱62とビデオカメラ67との対応関係は、一対一に限らず、一対複数または複数対一の関係となっていても良い。
【0037】
さらに、図1では、データ伝送装置68をビデオカメラ67の撮影ポイントVPの個々に対応付けて設置し、ビデオカメラ67とデータ伝送装置68とを一対一の関係で示しているが、これに限らず、複数個のビデオカメラ67に一つのデータ伝送装置68を対応付けて設置しても良い。つまり、複数の撮影ポイントVPを取りまとめる中継ポイントを用意しておき、この中継ポイントにデータ伝送装置68を設置するようにしても良い。この場合、データ伝送装置68は、複数個のビデオカメラ67の撮影画像を区別して記憶装置69に所定時間記憶保存し、区別して事故検知システム103に伝送する。
【0038】
図2は、電線事故点報知システム11のハードウェア構成を示すブロック図である。中央監視制御局101内において、事故検知システム103は、構内ネットワーク104を介して監視制御システム102とデータ通信自在に接続されている。そして、構内ネットワーク104を介してデータ通信自在である中央監視制御局101の内部システムは、通信サーバ105によってネットワーク151への接続を実現している。
【0039】
事故検知システム103は、各種処理を実行して各部を制御する制御部111を中心に構築され、この制御部111に、ユーザインターフェース112、画像解析エンジン113、HDD114、およびインターフェース115が接続されて構成されている。制御部111は、所定の処理を実行するプロセッサであり、一例としてCPUおよび各種メモリからなるマイクロコンピュータによって実現され、別の一例としてシーケンサによって実現されている。制御部111がマイクロコンピュータによって実現される場合、このマイクロコンピュータに電線事故点報知システム11としての機能を実行させるコンピュータプログラム116が制御部111にインストールされる。一例として、コンピュータプログラム116はHDD114の所定領域にインストールされ、制御部111の起動時、この制御部111が有しているメモリにコピーされてCPUのアクセスを受ける。これにより、制御部111は、コンピュータプログラム116のプログラムコードに従った処理を実行する。
【0040】
ユーザインターフェース112は、画像表示機器としてディスプレイ117を備え、データ入力機器としてキーボード118およびポインティングデバイス119を備えている。本実施の形態において、ディスプレイ117は、ビデオカメラ67が設置されている撮影ポイントVPの撮影画像を映し出すという重要な役割を担っている。
【0041】
画像解析エンジン113は、ビデオカメラ67が撮影した撮影画像を画像解析し、その撮影画像中に含まれている異常画像を検索するという処理を実行する。このような画像解析エンジン113は、例えば集積回路によって構築されたシーケンサというようなハードウェアとして実現されていても、コンピュータプログラムの形態でソフトウェアとして実現されていても、いずれでも良い。ソフトウェアとして実現されている場合、画像解析エンジン113は、コンピュータプログラム116に組み込まれ、HDD114にインストールされている。このような画像解析エンジン113は、一例として、異常画像の画像パターンを定義している。例えば、送電線51や配電線61等の電線に雷が飛来している画像が含まれている場合、あるいは、そのような電線に地絡が発生している画像が含まれている場合、そのような現象の各種画像パターンが定義パターンとして画像解析エンジン113に定義されている。そこで、画像解析エンジン113は、ビデオカメラ67が撮影した撮影画像にそのような異常画像の定義パターンが含まれていないかどうかを画像解析によって検索し、異常画像の定義パターンを検索した場合、これを異常画像として抽出する。
【0042】
インターフェース115は、構内ネットワーク104に制御部111を接続するほか、大容量記憶装置120も制御部111に接続している。大容量記憶装置120は、例えばHDDやSSD等によって構成されており、相当数のビデオカメラ67が撮影した数十秒程度の撮影画像を一度に記憶しておける程度の記憶容量を備えている。
【0043】
電線事故点報知システム11は、前述したように、以上説明した事故検知システム103ばかりでなく、ビデオカメラ67およびデータ伝送装置68も含んでいる。図2に示すように、データ伝送装置68は、記憶装置69を内蔵しており、ビデオカメラ67が撮影した撮影画像を記憶装置69に記憶保存しておくことができる。この際、データ伝送装置68は、ビデオカメラ67が撮影した撮影画像を半永久的に記憶装置69に記録保存しておくわけではなく、所定時間が経過した撮影画像を順次削除していく。このようなデータ伝送装置68は、インストールしたコンピュータプログラムに従った処理を実行するマイクロコンピュータ、またはシーケンサからなるプロセッサによって構築され、ビデオカメラ67および記憶装置69の動作制御を司る。また、データ伝送装置68は、事故検知システム103からの要求に応じて、記憶装置69に一時的に記憶保存する撮影画像を事故検知システム103に送信出力する機能も有している。
【0044】
図3は、電線事故点報知システム11が実行するピンポイント事故点検知および報知処理の流れを示すフローチャートである。このフローチャートは、必ずしも単一のプロセッサが実行する処理の流れを表しているものではなく、少なくとも、事故検知システム103が有する制御部111が実行する処理に伴う動作と、データ伝送装置68のプロセッサが実行する処理に伴う動作とを混在させて説明している。そこで、以下、図3に示すフローチャート中の動作が、どの機器のプロセッサによって実現されるのかという点も踏まえて、電線事故点報知システム11が実行する処理について説明していく。
【0045】
電線事故点報知システム11は、取込処理(手段、工程、機能)、絞込処理(手段、工程、機能)、画像取込処理(手段、工程、機能)、検索処理(手段、工程、機能)、および報知処理(手段、工程、機能)を順に実行していく。以下、それぞれの処理内容について説明していく。
【0046】
(1)取込処理(手段、工程、機能)
この処理は、事故発生時刻と事故発生区間とを特定する事故情報を取り込む処理である(動作1)。
【0047】
送配電設備12において、送電線51または配電線61についての事故の発生(例えば、無電圧発生)は、監視制御システム102において検出可能である。そこで、作業員は、監視制御システム102によって送電線51または配電線61に生じた電線事故を認識したならば、事故検知システム103に、事故発生時刻および事故発生区間を特定する事故情報を入力する。この場合の入力は、ユーザインターフェース112のディスプレイ117を見ながら、キーボード118およびポインティングデバイス119によって行なうことができる。事故検知システム103の制御部111は、入力された事故情報を取り込むことができる。
【0048】
別の一例として、送電線51または配電線61に事故が発生した場合、監視制御システム102から事故検知システム103に事故発生時刻と事故発生区間とを特定する事故情報を送信し、事故検知システム103にてこの事故情報を取り込むことができるようにしても良い。
【0049】
(2)絞込処理(手段、工程、機能)
この処理は、取り込んだ事故情報によって特定される事故発生区間に含まれているビデオカメラ67の撮影ポイントVPを絞り込む処理である(動作2)。
【0050】
事故検知システム103は、区間と撮影ポイントVPとの対応関係の定義を、例えばHDD114に記憶している。そこで、事故検知システム103の制御部111は、事故情報に含まれている事故発生区間の情報に基づいて、その事故発生区間に含まれているビデオカメラ67の撮影ポイントVPを絞り込むことができる。
【0051】
(3)画像取込処理(手段、工程、機能)
この処理は、絞り込んだ撮影ポイントVPに設置されているデータ伝送装置68が内蔵する記憶装置69から、ビデオカメラ67によって撮影された送電線51または配電線61の撮影画像を取り込む処理である(動作3)。
【0052】
前述したように、記憶装置69は、ビデオカメラ67が撮影した撮影画像を所定時間だけ記憶保存するようにデータ伝送装置68に制御されている。図3中の動作3における画像取込処理で取り込むのは、そのような記憶装置69が記憶する所定時間の撮影画像のうち、動作1で取り込んだ事故情報が含んでいる事故発生時刻に至る直前所定時間内の撮影画像のみである。
【0053】
図4は、送電線51または配電線61の事故発生時に電線事故点報知システム11が実行する処理の一部を示す模式図である。図4中、「DT−A」というのは、上記絞込処理(図3の動作2参照)によって絞り込まれた撮影ポイントVPに設置されているビデオカメラ67が撮影してデータ伝送装置68が記憶装置69に記憶する撮影画像である。図4に示す一例では、DT−A1〜DT−ANまでの撮影ポイントVPにおける撮影画像に絞り込まれている。前述したように、記憶装置69には、対応するビデオカメラ67が撮影した撮影画像が半永久的に残されているわけではなく、所定時間が経過した撮影画像は順次削除されていく。一例として、記憶装置69は、直前1時間程度の撮影画像を保存しているに過ぎない。図4では、事故発生時点を基準として、記憶装置69が残している直前の撮影画像の区間を「保存区間」として示している。これに対して、上記画像取込処理(図3の動作3参照)では、記憶装置69が保存して残している直前1時間程度である保存区間の撮影画像に対して、事故発生時刻に至るより短時間分の直前所定時間内の撮影画像のみを取り込む。一例として、撮影画像を取り込むのは、事故発生時刻に至る直前60秒程度の撮影画像である。図4では、その時間を「データ取り込み」としてハッチングで示している。
【0054】
以上説明したような画像取込処理は、一例として、事故検知システム103の制御部111が絞り込んだ撮影ポイントVPに設置されているデータ伝送装置68に要求を送信し、この要求を受けたデータ伝送装置68が記憶装置69から必要な撮影画像のデータを抜き出し、これを事故検知システム103に送信することによって実現する。
【0055】
あるいは、別の一例として、事故検知システム103の制御部111が絞り込んだ撮影ポイントVPを取りまとめて中継ポイントに設置されているデータ伝送装置68に要求を送信し、この要求を受けたデータ伝送装置68が記憶装置69から必要な撮影画像のデータを抜き出し、これを事故検知システム103に送信することによって実現する。
【0056】
事故検知システム103は、データ伝送装置68から送信された撮影データを大容量記憶装置120に記憶する。
【0057】
このように、画像取込処理は、事故検知システム103の制御部111とデータ伝送装置68のプロセッサ(図示せず)との協働によって実行されるが、中でも、データ伝送装置68のプロセッサが主体的に実行することになる。
【0058】
さらに別の実施の形態として、データ伝送装置68がビデオカメラ67の撮影画像を記憶装置69に記憶させず、事故検知システム103に伝送してその制御部111が大容量記憶装置120にビデオカメラ67の撮影画像を記憶保存するようにしても良く、この場合には、制御部111が画像取込処理の全体を実行することになる。
【0059】
(4)検索処理(手段、工程、機能)
この処理は、取り込んだ画像を画像解析して異常画像となっている撮影ポイントVPを検索する処理である(動作4、動作5)。
【0060】
事故検知システム103の制御部111は、大容量記憶装置120に取り込んだ撮影画像に対して、画像解析エンジン113を用いた画像解析処理を施す。画像解析エンジン113は、前述したように、ビデオカメラ67が撮影した撮影画像を画像解析し、異常画像の定義パターンと照らし合わせ、その撮影画像中に含まれている異常画像を検索する(動作4)。制御部111は、画像解析エンジン113が異常画像ありを判定しなければそのまま処理を終了し(動作5のNO)、異常画像ありを判定すると(動作5のYES)、後述する報知処理(動作6)に移る。
【0061】
ここで、上記画像取込処理(図3の動作3)および検索処理(図3の動作4、動作5)の別の実施の一例を紹介する。本別例は、これらの画像取込処理および検索処理を事故検知システム103が実行するのではなく、撮影ポイントVPまたは中継ポイントに設置されているデータ伝送装置68が実行する一例である。
【0062】
つまり、事故検知システム103は、絞込処理(図3の動作2)によって絞り込んだビデオカメラ67の撮影ポイントVPに対応するデータ伝送装置68に対して、取込処理(図3の動作1)で取り込んだ事故情報(事故発生時刻、事故発生区間)のデータと共に検索処理の実行指令を送信する。検索処理の実行指令を受信したデータ伝送装置68は、記憶装置69が記憶している個々のビデオカメラ67の撮影画像中、受信した事故情報に含まれている事故発生区間を撮影ポイントVPとする撮影画像から、その事故情報に含まれている事故発生時刻の直前所定時間分の撮影画像を、記憶装置69の別領域またはその他の情報記憶媒体に保存する。図4に示す一例を用いて説明すると、データ伝送装置68は、個々の撮影画像DT−A毎に、記憶装置69が保存している保存区間の撮影画像のうち、ハッチングで示す事故発生時刻の直前所定時間分の撮影画像のみを、記憶装置69の別領域またはその他の情報記憶媒体に保存するわけである。
【0063】
そして、本別例では、データ伝送装置68自らが、上記記憶装置69の別領域またはその他の情報記憶媒体に保存した撮影画像に対して画像解析処理を施し、異常画像が含まれているかどうかを検索する。このため、本別例では、データ伝送装置68に画像解析エンジン113が設けられている必要がある。データ伝送装置68は、異常画像を見出した場合、その撮影ポイントVPを示すデータと共に、当該異常画像の撮影画像のビデオデータを事故検知システム103に送信する。
【0064】
(5)報知処理(手段、工程、機能)
この処理は、事故検知システム103が自ら検索し、または個々のデータ伝送装置68が検索した異常画像が撮影されている撮影ポイントVPの位置を、異常画像のディスプレイ表示と共に報知する処理である。
【0065】
事故検知システム103の制御部111は、異常画像が検索された場合、その異常画像の撮影ポイントVPの位置をディスプレイ117に表示してオペレータに報知する。この際、事故検知システム103の制御部111は、異常画像となっている撮影画像のビデオデータを再生してディスプレイ117に表示する処理も実行する。
【0066】
以上説明したように、電線事故点報知用のコンピュータプログラムがインストールされたマイクロコンピュータ構成の事故検知システム103もしくはデータ伝送装置68、またはシーケンサ構成の事故検知システム103もしくはデータ伝送装置68を有する本実施の形態の電線事故点報知システム、および電線事故点報知方法によれば、事故が発生したかもしれない撮影ポイントVPを、事故発生時点の撮影画像のディスプレイ表示と共に報知することができる。つまり、本実施の形態によれば、事故が発生した場合、事故発生地点をある程度の範囲に絞り込み(取込処理、絞込処理)、その範囲の撮影ポイントVPを撮影した事故発生以前の撮影データを画像解析して異常画像を検索し、異常画像が検索された撮影ポイントVPを、異常画像のディスプレイ表示と共に報知する。これにより、事故検知システム103のオペレータは、ディスプレイ表示された異常画像を見ることで、その撮影ポイントVPに本当に事故が発生したのかどうかを目で見て確認することができる。
【0067】
したがって、本実施の形態によれば、すべての撮影ポイントVPの撮影画像を比較対照する画像として蓄積する場合には不可避であるメンテナンスの煩雑さからシステムを解放することができ、また、事故発生時点の撮影画像をディスプレイ表示するために事故発生の有無を一目瞭然に示すことができる。したがって、システムに大きな負担を強いることなく、高い信頼性をもって電線(送電線51、配電線61)の事故点をオペレータに示すことができる。
【0068】
また、本実施の形態において、手入力によって事故情報を入力するようにした場合には、送電線51または配電線61の状態を検知する監視制御システム102等との間での連携システムを構築する必要がなく、したがって、システム構成の簡略化を図ることができる。
【0069】
あるいは、本実施の形態において、電線(送電線51、配電線61)の状態を検知する監視制御システム102から送信された事故情報を取り込むようにした場合には、人手を介することなく事故情報を事故検知システム103に容易に取り込むことができ、したがって、操作性の向上を図ることができる。
【0070】
また、本実施の形態によれば、記憶装置69から、所定時間経過した撮影ポイントVPの撮影画像を消去するようにしたので、記憶装置69に大きな記憶容量を持たせる必要がなく、より手軽なシステムを構築することができる。
【0071】
また、本実施の形態において、複数の撮影ポイントVPまたは中継ポイント毎に設置したデータ伝送装置68で、画像取込処理および検索処理を実行するようにした場合には、とりわけ処理負担が大きなそれらの画像取込処理と検索処理とを個々の撮影ポイントVPまたは中継ポイントに分担させることができる。これにより、処理負担を事故検知システム103一箇所に負担させることなく、タスク分散による効率化を図ることができる。
【0072】
そして、本実施の形態によれば、複数のポイント(撮影ポイントVP、中継ポイント)を取りまとめる本部機能を有する中央監視制御局101に、取込手段と絞込手段と報知手段との機能を実行する本部情報処理装置としての事故検知システム103を設置したので、電線事故点の確認のための操作を本部一箇所に集中させることができ、したがって、操作性の向上を図ることができる。
【0073】
なお、本実施の形態では、撮影ポイントVP毎にビデオカメラ67を設置し、送電線51または配電線61を動画撮影する一例を示したが、実施に当たってはこれに限らず、静止画撮影用のカメラを用いた連続撮影という手法を採用しても良い。この場合、連続撮影は、例えば、1秒〜数秒程度であることが好適である。
【符号の説明】
【0074】
11 …電線事故点報知システム
67 …ビデオカメラ(撮影装置)
68 …データ伝送装置
69 …記憶装置
102 …監視制御システム
103 …事故検知システム(本部情報処理装置)
112 …ユーザインターフェース
116 …コンピュータプログラム
動作1 …取込処理(取込手段、取込工程、取込機能)
動作2 …絞込処理(絞込手段、絞込工程、絞込機能)
動作3 …画像取込処理(画像取込手段、画像取込工程、画像取込機能)
動作4〜5…検索処理(検索手段、検索工程、検索機能)
動作6 …報知処理(報知手段、報知工程、報知機能)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
事故発生時刻と事故発生区間とを特定する事故情報を取り込む取込手段と、
前記取り込んだ事故情報によって特定される事故発生区間に含まれている前記撮影ポイントを絞り込む絞込手段と、
複数の撮影ポイントで電線を撮影した撮影画像を記憶する記憶装置から、前記取り込んだ事故情報によって特定される事故発生時刻に至る直前所定時間内の前記絞り込んだ撮影ポイントで撮影された電線の撮影画像を取り込む画像取込手段と、
前記取り込んだ画像を画像解析して異常画像となっている前記撮影ポイントを検索する検索手段と、
前記検索した撮影ポイントの位置を前記異常画像のディスプレイ表示と共に報知する報知手段と、
を備える、電線事故点報知システム。
【請求項2】
前記取込手段は、ユーザインターフェースによって手入力された前記事故情報を取り込む、請求項1に記載の電線事故点報知システム。
【請求項3】
前記取込手段は、前記電線の状態を検知する監視制御システムから送信された前記事故情報を取り込む、請求項1に記載の電線事故点報知システム。
【請求項4】
複数の撮影ポイントで電線の画像を撮影する撮影装置と、
前記撮影装置が撮影した前記電線の撮影画像を記憶する記憶装置と、
前記記憶装置が記憶する前記電線の撮影画像を外部機器に送信出力するデータ伝送装置と、
を備える、請求項1ないし3のいずれか一に記載の電線事故点報知システム。
【請求項5】
前記記憶装置から、所定時間経過した前記電線の撮影画像を消去する、請求項4に記載の電線事故点報知システム。
【請求項6】
複数の撮影ポイント毎に、
前記撮影装置と、
前記記憶装置と、
前記データ伝送装置と、
を設置し、前記データ伝送装置に、前記画像取込手段と前記検索手段との機能を実行させる、請求項4または5に記載の電線事故点報知システム。
【請求項7】
複数の中継ポイント毎に、
グループ分けされた複数個の前記撮影装置に対応付けた前記記憶装置と、
前記データ伝送装置と、
を設置し、前記データ伝送装置に、前記画像取込手段と前記検索手段との機能を実行させる、請求項4または5に記載の電線事故点報知システム。
【請求項8】
前記複数のポイントを取りまとめる本部に、前記取込手段と前記絞込手段と前記報知手段との機能を実行する本部情報処理装置を設置した、請求項6または7に記載の電線事故点報知システム。
【請求項9】
事故発生時刻と事故発生区間とを特定する事故情報を取り込む取込工程と、
前記取り込んだ事故情報によって特定される事故発生区間に含まれている前記撮影ポイントを特定する絞込工程と、
複数の撮影ポイントで電線を撮影した撮影画像を記憶する記憶装置から、前記取り込んだ事故情報によって特定される事故発生時刻に至る直前所定時間内の前記絞り込んだ撮影ポイントで撮影された電線の撮影画像を取り込む画像取込工程と、
前記取り込んだ画像を画像解析して異常画像となっている前記撮影ポイントを検索する検索工程と、
前記検索した撮影ポイントの位置を前記異常画像のディスプレイ表示と共に報知する報知工程と、
を備える、電線事故点報知方法。
【請求項10】
コンピュータにインストールされ、当該コンピュータに、
事故発生時刻と事故発生区間とを特定する事故情報を取り込む取込機能と、
前記取り込んだ事故情報によって特定される事故発生区間に含まれている前記撮影ポイントを特定する絞込機能と、
複数の撮影ポイントで電線を撮影した撮影画像を記憶する記憶装置から、前記取り込んだ事故情報によって特定される事故発生時刻に至る直前所定時間内の前記絞り込んだ撮影ポイントで撮影された電線の撮影画像を取り込む画像取込機能と、
前記取り込んだ画像を画像解析して異常画像となっている前記撮影ポイントを検索する検索機能と、
前記検索した撮影ポイントの位置を前記異常画像のディスプレイ表示と共に報知する報知機能と、
を実行させるコンピュータ読み取り可能なコンピュータプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−179999(P2011−179999A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45168(P2010−45168)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】