説明

電線供給装置

【課題】 極細電線を供給する場合でも、大きな張力が掛からないようにして電線を所定の電線処理装置に供給できる電線供給装置を提供する。
【解決手段】 この電線供給装置1は、電線束3からの電線3aを所定の電線処理装置5に供給するものであり、電線束3からの電線3aを巻回して一時的に蓄線する畜線部9と、畜線部9と電線処理装置5との間に上下動自在に配設され、自身の重さにより、畜線部9から電線供給装置5側に送出される電線3aを下方に撓ませる様にガイドする可動ガイド滑車17とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線束からの電線を所定の電線処理装置に供給する電線供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の電線供給装置では、電線交換毎に電線処理装置を停止させており、電線処理装置を再始動させる毎に、電線供給装置から電線処理装置に供給される電線に対し、電線処理装置から引っ張られる形で大きな張力が掛かるという欠点があった。
【0003】
この欠点を解決すべく、従来の電線供給装置では、電線交換時でも電線処理装置を止めないで電線交換できる様にその畜線部での畜線量を増大させる様にしている。
【0004】
尚、この種の電線供給装置に関する先行技術文献として例えば特許文献1がある。
【0005】
【特許文献1】特開平9−108763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の解決策では、通常の電線(通常の径の太さの電線)に対してはある程度の効果(即ち電線に大きな張力が掛からないようにする効果)が得られるが、極細電線に対しては十分な効果が得られないという欠点があった。
【0007】
そこで、この発明の課題は、極細電線を供給する場合でも、大きな張力が掛からないようにして電線を所定の電線処理装置に供給できる電線供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為に、請求項1に記載の発明は、電線束からの電線を所定の電線処理装置に供給する電線供給装置であって、電線束からの電線を巻回して一時的に蓄線する畜線部と、前記畜線部と前記電線処理装置との間に上下動自在に配設され、自身の重さにより、前記畜線部から前記電線処理装置側に送出される前記電線を下方に撓ませる様にガイドする可動ガイド滑車と、を備えるものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記畜線部は、固定滑車と、可動滑車と、前記可動滑車を前記固定滑車に接近させる接近駆動手段とを有し、電線束からの電線をそれら各滑車間で巻回して一時的に蓄線し、前記電線処理装置に供給される前記電線に掛かる張力を検出する張力検出手段と、前記張力検出手段により検出される張力に応じて前記接近駆動手段を制御して前記可動滑車を前記固定滑車に接近させる制御手段と、を更に備えるものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記固定滑車を回転駆動する回転駆動手段とを更に備え、前記制御手段は、前記回転駆動手段を介して前記固定滑車の回転を制御することで、前記可動滑車の前記固定滑車への接近量に対応する量の電線を前記畜線部から送出させるものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記電線処理装置に供給される前記電線の供給量を検出する電線供給量検出手段と、前記畜線部から送出される前記電線の送出量を検出する電線送出量検出手段と、前記固定滑車を回転駆動する回転駆動手段と、を更に備え、前記制御手段は、前記電線供給量検出手段および前記電線送出量検出手段の各検出結果に基づき前記回転駆動手段を介して前記固定滑車の回転を制御して、前記電線処理装置に供給される電線量に応じた量の電線を前記畜線部から送出させるものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、電線処理装置から引っ張られる形で電線に張力が掛かると、その張力により可動ガイド滑車が上方に押し上げられ、この可動ガイド滑車の上方への押し上げによりその張力が緩和されるので、極細電線を供給する場合でも、大きな張力が掛からないようにして電線を所定の電線処理装置に供給できる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、電線に掛かる張力に応じて可動滑車を固定滑車に接近させるので、電線に掛かる張力に応じて可動滑車と固定滑車との間で電線を弛ませてその弛みで電線に掛かる張力を吸収でき、より一層、大きな張力が掛からないようにして電線を所定の電線処理装置に供給できる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、固定滑車の回転を制御することで、可動滑車の固定滑車への接近量に対応する量の電線を畜線部から送出させるので、可動滑車と固定滑車との間で弛んだ電線を速やかに電線処理装置側に送出でき、より一層、大きな張力が掛からないようにして電線を所定の電線処理装置に供給できる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、固定滑車の回転を制御して、電線処理装置に供給される電線量に応じた量の電線を畜線部から送出させるので、電線の供給中においても大きな張力が掛からないようにして電線を所定の電線処理装置に供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この実施の形態に係る電線供給装置1は、図1の様に、電線束3からの電線(例えば極細電線)3aを所定の電線処理装置(例えば圧切機)5に供給するものであり、電線束3を載置する載置台7と、載置台7上に載置された例えば巻回状の電線束3と、電線束3から引き出された電線3aを一時的に畜線する畜線部9と、固定台11に配設され、畜線部9から送出された電線3aを電線処理装置5側にガイドする固定ガイド滑車13と、固定ガイド滑車13の前段に位置する様に固定台11に配置され、固定ガイド滑車13から電線処理処置5側に送出される電線3aに掛かる張力を検出する張力検出部(張力検出手段)15と、張力検出部15と畜線部9との間(即ち電線処理装置5と畜線部9との間)において上下動自在に固定台11に配設され、自身の重さにより、畜線部9から送出される電線3aを下方に撓ませる様にガイドする可動ガイド滑車17と、固定ガイド滑車13の回転量に基づき電線処理装置5に供給される電線量を検出するエンコーダ等の電線供給量検出部(電線供給量検出手段)19と、畜線部9からの電線の送出および畜線部9での畜線量を制御する制御部(制御手段)21とを備える。
【0017】
載置台7は、電線束3が載置される載置台本体7aと、電線束3の上方に配置する様に載置台7に配設され、電線束3からの電線3aを収集するラッパ状の収集器7bと、収集器7bの上方に配置する様に載置台7に配設され、収集器7bで収集された電線3aを畜線部9側にガイドする固定ガイド滑車7cおよびガイドリング7dとを備える。
【0018】
畜線部9は、固定枠体9aと、固定枠体9aに固定された固定滑車9bと、固定枠体9aにおいて固定滑車9bの下方に上下動自在に(即ち固定滑車9bに接近離反自在に)配設された可動滑車9cと、固定滑車9bを回転駆動するモータ等の回転駆動部(回転駆動手段)9dと、可動滑車9cを昇降する(即ち固定滑車9bに対して接近離反させる)昇降駆動部(接近駆動手段)9eと、固定滑車9bの回転量に基づき畜線部9から送出される電線量を検出する電線送出量検出部(電線送出量検出手段)9fと、固定枠体9aに配設され、固定ガイド滑車7cからの電線3aを固定滑車9bにガイドするガイドリング9pとを備える。
【0019】
この畜線部9では、固定滑車9bの上部を通って可動滑車9cの下部を回って再び固定滑車9bの上部側に戻る様にして滑車9b,9c間に渡って電線3aが何重にも巻回されることで、電線3aが滑車9b,9c間に一時的に畜線される。そのため、各滑車9b,9cの周側面にはそれぞれ、電線3aを掛けるための溝が複数周設されている。
【0020】
昇降駆動部9eは、固定枠体9aにおいて上下に離間配置する様に配設された1対のタイミングプーリ9g,9hと、各タイミングプーリ9g,9hに渡って張設されると共に可動滑車9cの軸受けと連結部材9kを介して連結されたタイミングベルト9jと、タイミングプーリ9hを回転駆動するモータ等の回転駆動部9iとを備える。この昇降駆動部9eでは、回転駆動部9iがタイミングプーリ9hを回転駆動すると、そのタイミングプーリ9hを介してタイミングベルト9jが回転駆動される。そして、そのタイミングベルト9jの回転駆動に伴って、そのタイミングベルト9jに連結された可動滑車9cがそのタイミングベルト9jの回転方向に応じて昇降される。
【0021】
この畜線部9では、制御部21により、(1)張力検出部15により検出される張力に応じて昇降駆動部9eを制御して可動滑車9cが昇降される(例えば張力が大きいほど可動滑車9cは高く上昇される、または所定値以上の張力が掛かり続ける間、可動滑車9cは上昇され続ける。そして張力が無くなると(例えば所定値未満になると)可動滑車9cは元の位置(例えば最下位置)に戻される)と共に、(2)可動滑車9cの昇降に応じて回転駆動部9dを介して固定滑車9bの回転が制御され、これにより畜線部9からの電線3aの送出および畜線部9での畜線量の調整が速やかに行われる(例えば可動滑車9cの上昇時は、固定滑車9bの回転速度が速められ、可動滑車9cの上昇量に対応する量の電線3aが畜線部9から速やかに送出される)。
【0022】
また、この畜線部9では、上記(1)(2)の動作に併行して、制御部21により、電線供給量検出部19および電線送出量検出部9fの各検出結果に基づき回転駆動部9dを介して畜線部9の固定滑車9bの回転速度が制御され、これにより固定ガイド滑車13から電線処理装置5に供給される電線量に応じた量の電線3aが畜線部9から送出される。
【0023】
張力検出部15は、互いに左右に離間する様に固定台11に配設された1対の固定ローラ15a,15bと、固定台11における固定ローラ15a,15b間に上下動自在に配設された可動ローラ15cと、可動ローラ15cの上下動に基づき各ローラ15a,15b,15c間(即ち固定ローラ15aの上部、可動ローラ15cの下部、固定ローラ15bの上部)を通過する電線3aの張力を検出する検出センサ(例えばロードセル)15dと、固定ローラ15bから送出された電線3aを固定ガイド滑車13側にガイドする固定ガイドローラ15eとを備える。
【0024】
この張力検出部15では、電線3aに張力が掛かると、その張力の大きさに応じて可動ローラ15cが電線3aにより上方に押し上げられる。そして、その押し上げ量に基づき検出センサ15dにより電線3aに掛かる張力が検出される。
【0025】
次に、この電線供給装置1の動作を説明する。
【0026】
この電線供給装置1では、載置台7上に載置された電線束3からの電線3aは、収集器7b、固定ガイド滑車7cおよびガイドリング7d,9pを介して畜線部9に引き込まれ、畜線部9の滑車9b,9c間で複数回巻回されて一時的に滑車9b,9c間に蓄積された後、可動ガイド滑車17の下部を回って張力検出部15のローラ15a,15b,15c間を通って固定ガイドローラ15eの下部を回って固定ガイド滑車13の上部を通って電線処理装置5に供給される。
【0027】
この供給状態では、電線供給量検出部19により固定ガイド滑車13から電線処理装置5に供給される電線量が検出されていると共に、電線送出量検出部9fにより畜線部9から送出される電線量が検出されており、それらの検出結果に基づき、制御部21により回転駆動部9dを介して畜線部9の固定滑車9bの回転が制御されて、電線処理装置5に供給される電線量に応じた量の電線3aが畜線部9から送出される。これにより電線3aに大きな張力が掛からない様にして電線供給装置1から電線処理装置5に電線3aが供給されている。尚、この供給状態では、可動ガイド滑車17は、所定の低位置に配置し、自身の重さにより、畜線部9から張力検出部15に送出される電線3aを下方に撓ませる様にガイドしている。また、畜線部9の可動滑車9cは、制御部21の制御により昇降駆動部9eを介して所定の低位置に配置されている。
【0028】
そして、電線供給中または電線供給開始時において、電線処理装置5から引っ張られる形で電線3aに大きな張力が掛かると、(1)その張力の掛かった電線3aにより瞬間的に可動ガイド滑車17が上方に押し上げられ、その押し上げによりその電線3aに掛かる張力が瞬間的に緩和される。そして更に、(2)張力検出部15によりその張力が検出され、その検出結果に基づき、制御部21により、昇降駆動部9eを介して畜線部9の可動滑車9cが上降される(例えば張力が大きいほど可動滑車9cは高く上昇される、または所定値以上の張力が掛かり続ける間は可動滑車9cは上昇され続ける)と共に、制御部21により、可動滑車9cのその上昇に応じて回転駆動部9dを介して畜線部9の固定滑車9bの回転が速く制御され、これにより可動滑車9cの上昇量に対応する量の電線3aが畜線部9から速やかに送出されて張力が更に緩和される。
【0029】
そして、上記(1)(2)により電線3aに掛かる前記張力が無くなると、それが張力検出部15を介して制御部21により検知され、その制御部21により、昇降駆動部9eを介して畜線部9の可動滑車9cが降下されて元の低位置(例えば最下位置)に戻されると共に、可動滑車9cのその降下に応じて回転駆動部9dを介して固定滑車9bの回転が制御され、これにより畜線部9からの電線3a送出量が速やかに調整されて可動ガイド滑車17が降下されて元の低位置(上昇前の位置)に速やかに戻される。
【0030】
以上の様に構成された電線供給装置1によれば、電線処理装置5から引っ張られる形で電線3aに張力が掛かると、その張力により可動ガイド滑車17が上方に押し上げられ、この可動ガイド滑車9cの上方への押し上げによりその張力が緩和されるので、極細電線を供給する場合でも、大きな張力が掛からないようにして電線3aを所定の電線処理装置5に供給できる。
【0031】
また、電線3aに掛かる張力に応じて畜線部9の可動滑車9cを固定滑車9bに接近(ここでは上昇)させるので、電線3aに掛かる張力に応じて可動滑車9cと固定滑車9bとの間で電線3aを弛ませてその弛みで電線3aに掛かる張力を吸収でき、より一層、大きな張力が掛からないようにして電線3aを所定の電線処理装置5に供給できる。
【0032】
また、固定滑車9bの回転を制御することで、可動滑車9cの固定滑車9bへの接近量に対応する量の電線3aを畜線部9から送出させるので、可動滑車9cと固定滑車9bとの間で弛んだ電線3aを速やかに電線処理装置5側に送出でき、より一層、大きな張力が掛からないようにして電線3aを所定の電線処理装置5に供給できる。
【0033】
また、固定滑車9bの回転を制御して、電線処理装置5に供給される電線量に応じた量の電線3aを畜線部9から送出させるので、電線3aの供給中においても大きな張力が掛からないようにして電線3aを所定の電線処理装置5に供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係る電線供給装置の構成概略図である。
【符号の説明】
【0035】
1 電線供給装置
3 電線束
3a 電線
5 電線処理装置
9 畜線部
9b 固定滑車
9c 可動滑車
9d 回転駆動部
9e 昇降駆動部
9f 電線送出量検出部
9i 回転駆動部
15 張力検出部
17 可動ガイド滑車
19 電線供給量検出部
21 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線束からの電線を所定の電線処理装置に供給する電線供給装置であって、
電線束からの電線を巻回して一時的に蓄線する畜線部と、
前記畜線部と前記電線処理装置との間に上下動自在に配設され、自身の重さにより、前記畜線部から前記電線処理装置側に送出される前記電線を下方に撓ませる様にガイドする可動ガイド滑車と、
を備えることを特徴とする電線供給装置。
【請求項2】
前記畜線部は、固定滑車と、可動滑車と、前記可動滑車を前記固定滑車に接近させる接近駆動手段とを有し、電線束からの電線をそれら各滑車間で巻回して一時的に蓄線し、
前記電線処理装置に供給される前記電線に掛かる張力を検出する張力検出手段と、
前記張力検出手段により検出される張力に応じて前記接近駆動手段を制御して前記可動滑車を前記固定滑車に接近させる制御手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の電線供給装置。
【請求項3】
前記固定滑車を回転駆動する回転駆動手段とを更に備え、
前記制御手段は、
前記回転駆動手段を介して前記固定滑車の回転を制御することで、前記可動滑車の前記固定滑車への接近量に対応する量の電線を前記畜線部から送出させることを特徴とする請求項2に記載の電線供給装置。
【請求項4】
前記電線処理装置に供給される前記電線の供給量を検出する電線供給量検出手段と、
前記畜線部から送出される前記電線の送出量を検出する電線送出量検出手段と、
前記固定滑車を回転駆動する回転駆動手段と、を更に備え、
前記制御手段は、
前記電線供給量検出手段および前記電線送出量検出手段の各検出結果に基づき前記回転駆動手段を介して前記固定滑車の回転を制御して、前記電線処理装置に供給される電線量に応じた量の電線を前記畜線部から送出させることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電線供給装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−115423(P2007−115423A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302678(P2005−302678)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】