説明

電線破砕機

【課題】 本発明は、廃電線や切断屑電線などのリサイクル電線を破砕して、素材ごとに効率よく分離・分別できるようにした電線破砕機を提供するものである。
【解決手段】 かゝる本発明は、投入されたリサイクル電線を破砕する回転刃30と回転刃30の外周長手方向に添設されて破砕された電線破砕片を篩う概略半円形状の樋状排出メッシュ40を備えた電線破砕機において、樋状排出メッシュのメッシュ穴を、樋状の全メッシュ形成面に対して、例えば、樋状の全メッシュ形成面において、左右の両上部縁側を除いて開口させたり、メッシュ穴の開口間隔を、樋状の円周方向と長手方向において異にするなどして、不均一に開口させた電線破砕機にあり、これにより、長いままの電線の排出や、不十分な分離・分別の電線破砕片の排出を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃電線や切断屑電線などのリサイクル電線を破砕して、素材ごとに効率よく分離・分別できるようにした電線破砕機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、布設交換された廃電線や、接続作業時などに発生する切断屑電線などを、素材ごとに分別して、リサイクル(再利用)することが行われている。このリサイクルにあっては、リサイクルする電線を100cm程度の長さに切断し(これ以下の短い電線はそのまま)、電線破砕機に投入し、破砕して、素材ごと(被覆のプラスチックや導体の金属など)に分離・分別して、回収している。
【0003】
このような電線破砕機として、従来から種々のものが提案されている(例えば引用文献1〜2)。これらの電線破砕機では、電線を破砕する回転刃の外周長手方向に概略半円形状の樋状排出メッシュを添設させた構造を取っている。そして、図5〜図6に示すように、通常樋状排出メッシュ10にあっては、そのメッシュ穴11を、樋状のほぼ全面、即ち、全メッシュ形成面(図6中の領域A1 〜A2 )に対して、ほぼ均等に開口させてあり、回転刃で破砕された電線破砕片は、主として樋状排出メッシュ10の底面側のメッシュ穴11から、分離・分別して、排出されるようになっている。
【特許文献1】特開昭59−025111号
【特許文献2】実公平07−004735号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来構造の電線破砕機では、投入されたリサイクル電線の一部が、所定の細かい電線破砕片とならず、長いままの形で排出されるという問題があった。また、素材ごとの分離・分別が不十分であるという問題もあった。
【0005】
本発明者は、この原因として、破砕が不十分で長いままのものは、メッシュ底面側から排出されず、回転刃により巻き上げられて、樋状の左右の両上部縁側に引っ掛かり、この部分のメッシュ穴から長いままで排出されるのではないかと推論した。
つまり、通常の樋状排出メッシュ10の場合、底面側から上記両上部縁側に掛けては(図6中の領域A1 部分)、ほぼ円形状の断面であるが、両上部縁側にあっては(図6中の領域A2 部分)、直線状の断面としてある。このため、この両上部縁部分の内側では、回転刃との間に比較的広い隙間ができることになり、ここに、上記のような破砕が不十分で長いままの電線が引っ掛かるものと思われる。
また、素材ごとの分離・分別が不十分なのは、メッシュ穴11が樋状のほぼ全面にあると、穴の多い分だけ、電線の装置内における滞留時間が短く、不十分で、回転刃やメッシュ内での衝撃回数などが少ないことによるのではないかと推論した。
【0006】
そこで、本発明者が、樋状の左右の両上部縁にあって、所定の範囲をメッシュ穴のない非メッシュ領域とした樋状排出メッシュを試作し、試験したところ、長いままの電線破砕片の排出が大幅に低減できることを見出した。また、この非メッシュ領域の形成により、電線破砕時における、分離・分別までの滞留時間が長くなるため、素材ごとの分離・分別性能が改善させることも解った。さらに、この分離・分別性能の向上は、メッシュ穴の開口間隔を、例えば、樋状の円周方向に対して長手方向を間引くなどして違えることでも得られることが解った。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、リサイクル電線を破砕して、素材ごとに効率よく分離できるようにした電線破砕機を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の本発明は、投入されたリサイクル電線を破砕する回転刃と当該回転刃の外周長手方向に添設されて破砕された電線破砕片を篩う概略半円形状の樋状排出メッシュを備えた電線破砕機において、前記樋状排出メッシュのメッシュ穴を、樋状の全メッシュ形成面に対して、不均一に開口させたことを特徴とする電線破砕機にある。
【0009】
請求項2記載の本発明は、前記樋状の全メッシュ形成面において、前記メッシュ穴を、両上部縁側を除いて開口させたことを特徴とする請求項1記載の電線破砕機にある。
【0010】
請求項3記載の本発明は、前記メッシュ穴の開口されない両上部縁側の範囲が、前記樋状の全メッシュ形成面を約180°としたとき、俯角が約30°の範囲であることを特徴とする請求項2記載の電線破砕機にある。
【0011】
請求項4記載の本発明は、前記樋状の全メッシュ形成面におけるメッシュ穴の開口間隔を、樋状の円周方向と長手方向において異にしたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の電線破砕機にある。
【0012】
請求項5記載の本発明は、前記メッシュ穴の樋状の円周方向の開口間隔に対して、長手方向の開口間隔を大きくしたことを特徴とする請求項4記載の電線破砕機にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電線破砕機によると、樋状排出メッシュのメッシュ穴を、樋状の全メッシュ形成面に対して、不均一に開口させてあるため、結果として、装置内でのリサイクル電線の滞留時間が長くなり、良好な素材ごとの分離・分別が得られる。
また、メッシュ穴を、両上部縁側を除いて開口させた場合には、長いままの電線破砕片の排出を大幅に低減させることができる。さらにまた、メッシュ穴の開口間隔を、樋状の円周方向と長手方向において異にすれば、例えば長手方向のメッシュ穴を間引けば、より良好な分離・分別性能が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明に係る電線破砕機の一例になる要部を示したものである。
図中、20は電線破砕機の要部をなす破砕部、30は回転軸31の軸方向に多数の刃部32が適宜形状で配列された回転刃(回転刃部)、40は回転刃30の外周長手方向に添設させた概略半円形状の樋状排出メッシュ、50は回転刃30が収納されると共に、上部の開口51からリサイクル電線Lが投入される枠部である。
【0015】
概略半円形状の樋状排出メッシュ40は、図2の如くで、また、図3〜図4に示すように、樋状の全メッシュ形成面に対して、メッシュ穴41を、樋状の左右の両上部縁42、42側を除いて開口させてある。このメッシュ穴41の開口されない両上部縁42、42側の範囲としては、特に限定されないが、例えば、樋状の全メッシュ形成面を約180°としたとき、俯角θが約30°の範囲とすればよい。即ち、メッシュ形成面の範囲は、図4中の領域B(約120°の範囲)となる。なお、上記樋状の左右の両上部縁42、42部分は、通常直線状の断面形状としてある。
【0016】
また、樋状の全メッシュ形成面におけるメッシュ穴41の開口間隔を、樋状の円周方向と長手方向において異にするとよい。例えば、図3に示すように、樋状の円周方向に対して、長手方向の開口間隔を大きくするとよい。この場合、長手方向の開口間隔を、メッシュ穴41の1個分を間引いている。なお、この間引きは2個分程度などとすることもできる。また、間引きの方向は、上記とは逆にすることもできる。さらには、円周方向や長手方向にとらわれず、特殊形状のランダム方向の間引きとすることもできる。広くは結果として、全メッシュ形成面積に対して、穴の開口面積を減らす方法であればよい。
【0017】
このようにメッシュ穴41を、樋状の左右の両上部縁42、42側に設けず、また、長手方向の開口間隔を、間引いてあるため、従来構造のメッシュに比較して、本発明の樋状排出メッシュ40によると、破砕時におけるリサイクル電線Lの滞留時間を長くすることができる。結果として、破砕される電線、破砕が進行中の電線は、装置側から衝撃回数などが大きくなるため、電線の良好な分離・分別が得られた。つまり、十分分離・分別された電線破砕片L1が、樋状排出メッシュ40から篩い落とされた形て排出される。
また、両上部縁42、42側の非メッシュ形成面により、破砕が不十分で長いままの形のものでも、メッシュ穴41がないことから、引っ掛かることがなくなるため、良好な破砕効果が得られる。
【0018】
従来構造の電線破砕機では、長いままの形で排出される電線や、不十分な分離・分別の電線の混入が多いと、これらの複数回の再投入が必要とされるが、本発明の電線破砕機では、この再投入回数を大幅に低減させることができる。勿論、再投入量が少ないと、その分新規投入分を多くできるため、作業効率の向上が得られる。
【0019】
因みに、本発明の電線破砕機における効果を明らかにするため、実施例になる樋状排出メッシュ(実施例1〜2)と従来構造の樋状排出メッシュ(比較例1)によって、リサイクル電線を1回投入して破砕した場合の結果を、表1に示した。
同表1では、リサイクル電線の投入量100に対して、排出量1(長いままの電線破砕片の排出量、%)、排出量2(不十分な分離・分別の電線破砕片の排出量、%)、総不良排出量はこれらの合計排出量(排出量1+排出量2)を示してある。
【0020】
なお、実施例、比較例のいずれでも、樋状排出メッシュ以外はほぼ同構造の電線破砕機を用いた。回転刃外径は400mm、概略半円形状の樋状排出メッシュの長さは1000mm、半径は200mm、メッシュ穴の外径は6mmである。リサイクル電線は銅線径=1.6mm、樹脂被覆厚さ=2mmである。実施例1の樋状排出メッシュは、樋状の左右の両上部縁側を除いて(樋状の全メッシュ形成面を約180°としたとき、俯角が約30°の範囲)メッシュ穴を、その円周方向と長手方向にほぼ均等に開口させたものである。実施例2の樋状排出メッシュは、上記図2〜図4に示すように、樋状の左右の両上部縁側を除いて(樋状の全メッシュ形成面を約180°としたとき、俯角が約30°の範囲)メッシュ穴を、その円周方向に対して、長手方向でメッシュ穴1個分を間引いたものである。比較例1の樋状排出メッシュは、上記図5〜図6に示すように、樋状の全メッシュ形成面にメッシュ穴をほぼ均等に開口させたものである。
【0021】
【表1】

【0022】
この表1から、本発明の実施例1〜2では、比較例1に比べて、いずもの排出量1〜2も小さいことが分かる。このことから、本発明の実施例1〜2では、未処理分の再投入量が少なくて済むのに対して、比較例1の場合には、未処理分の再投入量が多いため、より多くの投入を繰り返さなければならず、作業性の低下が避けられないことが分かる。
【0023】
なお、本発明の樋状排出メッシュにおけるメッシュ穴の大きさ(外径)は、対応するリサイクル電線の大きさ(導体金属外径や樹脂被覆外径)や種類(単線、複合線、光ファイバ含有線など)に応じて、適宜変更するものとする。例えば、6〜13mm程度の範囲で変更するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る電線破砕機の要部の概略説明図である。
【図2】図1の電線破砕機に用いられる樋状排出メッシュの斜視図である。
【図3】図2の樋状排出メッシュの側面図である。
【図4】図2の樋状排出メッシュの端面図である。
【図5】従来の電線破砕機における樋状排出メッシュの側面図である。
【図6】図5の樋状排出メッシュの端面図である。
【符号の説明】
【0025】
20・・・電線破砕機の要部をなす破砕部、30・・・回転刃、40・・・樋状排出メッシュ、41・・・メッシュ穴、50・・・枠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入されたリサイクル電線を破砕する回転刃と当該回転刃の外周長手方向に添設されて破砕された電線破砕片を篩う概略半円形状の樋状排出メッシュを備えた電線破砕機において、前記樋状排出メッシュのメッシュ穴を、樋状の全メッシュ形成面に対して、不均一に開口させたことを特徴とする電線破砕機。
【請求項2】
前記樋状の全メッシュ形成面において、前記メッシュ穴を、両上部縁側を除いて開口させたことを特徴とする請求項1記載の電線破砕機。
【請求項3】
前記メッシュ穴の開口されない両上部縁側の範囲が、前記樋状の全メッシュ形成面を約180°としたとき、俯角が約30°の範囲であることを特徴とする請求項2記載の電線破砕機。
【請求項4】
前記樋状の全メッシュ形成面におけるメッシュ穴の開口間隔を、樋状の円周方向と長手方向において異にしたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の電線破砕機。
【請求項5】
前記メッシュ穴の樋状の円周方向の開口間隔に対して、長手方向の開口間隔を大きくしたことを特徴とする請求項4記載の電線破砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−37990(P2009−37990A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203760(P2007−203760)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】