説明

電線識別装置

【課題】迅速且つ確実に電線を識別することができる電線識別装置を提供する。
【解決手段】親機3は、子機に接続された検査対象電線を検出するとともに当該検査対象電線を識別する識別情報を取得し、検査対象電線を介して識別情報を子機4に送信する。子機4は、識別情報を受信し、識別情報を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気工事における配線の引き回し、接続作業を容易に行うための電線識別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、配線の引き回し、接続作業において、電線の識別は、電線の本数が増えるほど大変な作業であった。例えば、電線毎に導通検査を行い、接続されている電線が間違いないかをチェックする場合、配線の引き回し前に電線先端への記号等の記入、電線の色分け、識別ラベルの取り付け等を行わなければならず、さらに、配線元と、配線先に少なくとも1人ずつの作業者が必要であった。
【0003】
このような問題に対し、特許文献1及び特許文献2には、多芯ケーブルの一方の端部にて、一の芯線に対して、対応する識別信号を出力し、同様な動作を他の芯線に対し順次行い、他方の端部にて、任意の一本の芯線を選択し、識別信号を受信することにより、その芯線を識別することが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−52895号公報
【特許文献2】特開平10−82817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1及び特許文献2に記載された発明は、各芯線にそれぞれ識別信号を送信しているため、芯線の数が多い場合、識別信号の送信を一巡させるのに数秒程度の時間が必要となり、迅速に芯線を識別することができなかった。
【0006】
また、例えば、一部の芯線が他の機器に接続され、短絡やいわゆる回り込みが生じた場合、上記特許文献1及び特許文献2に記載された発明では、エラー表示されるのみであった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、迅速且つ確実に電線を識別することができる電線識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、上述した目的を達成するために、本発明に係る電線識別装置は、電線束の一方の端部を接続する親機と、上記電線束の他方の端部のうち検査対象電線を接続する子機とからなる電線識別装置において、上記親機は、上記電線束から上記子機に接続された検査対象電線を検出するとともに当該検査対象電線を識別する識別情報を取得する検知手段と、上記検知手段にて検知された検査対象電線を介し、上記識別情報を上記子機に送信する送信手段とを備え、上記子機は、上記検査対象電線を介し上記識別情報を受信する受信手段と、上記識別情報を報知する報知手段とを備えることを特徴としている。
【0009】
また、上記子機は、閉回路を検出し、上記検査対象電線の接続情報を取得する取得手段をさらに備え、上記報知手段は、上記識別情報及び上記接続情報を報知することを特徴としている。
【0010】
ここで、上記報知手段は、一の検査対象電線に対して複数の識別情報及び接続情報がある場合、複数の識別情報及び接続情報を報知することを特徴としている。
【0011】
また、上記接続情報は、抵抗値と相関関係を有する情報を含んでいることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電線識別装置によれば、親機が、電線束から子機に接続された検査対象電線を検出するとともに当該検査対象電線を識別する識別情報を取得する検知手段と、検知された検査対象電線を介して識別情報を送信する送信手段とを備え、子機が、識別情報を受信する受信手段と、識別情報を報知する報知手段とを備えることにより、電線毎に識別情報を送信するよりも、迅速且つ確実に電線を識別することができる。
【0013】
また、子機が、閉回路を検出し、上記検査対象電線の接続情報を取得する取得手段を備えることにより、親機は検出した電線の識別情報のみを送信すればよく、測定データの測定及び送信に費やす時間を省くことができる。
【0014】
さらに、報知手段は、一の検査対象電線に対して複数の識別情報及び接続情報がある場合、複数の識別情報及び接続情報を報知することにより、いわゆる回り込みが生じている電線を識別することができる。
【0015】
またさらに、接続情報は、抵抗値と相関関係を有する情報を含んでいることにより、短絡やいわゆる回り込みが生じた場合でも、使用者に電線の識別を正確に判断させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明の具体例として示す電線識別装置は、電線束の両端に親機及び子機をそれぞれ配置し、子機側に電線の識別結果を報知するようにしたものである。
【0017】
図1は、本実施の形態における電線識別装置1の全体構成を示す模式図である。電線識別装置1は、電線束2の一方の端部を接続する親機3と、この電線束の他方の端部を接続する子機4とを備えて構成されている。
【0018】
親機3は、電線束2の一方の端部を接続する複数の接続端子31〜31と、接続端子31〜31毎に設けられ、各接続端子への接続をオンオフする光結合素子32〜32と、各光結合素子32〜32のオンオフを制御するチャンネルセレクタ33と、コモン線を接続するコモン端子34と、光結合素子35を介して検査対象電線の接続を検出するとともに検査対象電線の識別情報を取得する検知部36と、識別情報の送信を制御するとともに各構成部を統括的に制御する制御部37とを備えて構成されている。
【0019】
接続端子31〜31には、電線束2の各電線がそれぞれ接続される。光結合素子32〜32は、発光ダイオードを光らせ、その光でフォトトランジスタを導通させるものであり、電気信号を生成する。チャンネルセレクタ33は、接続端子31〜31毎に設けられた光結合素子32〜32を選択し、その光結合素子32〜32のオンオフを制御する。
【0020】
コモン端子34には、例えばシールド線等のコモン線が接続される。このコモン線及び光結合素子35は、検査対象電線の接続検出に用いられる。なお、コモン線には、電線束2とは別に仮設した電線を使用してもよい。また、コモン線を用意できない場合は、アース接地でも動作可能である。これにより、専用のコモン線を特定する必要がない。検知部36は、光結合素子35を介して検査対象電線の接続を検出するとともにその識別情報を取得する。具体的には、チャンネルセレクタ33の切り換えに対応して電流値を測定し、検査対象電線の接続を検出するとともに接続端子31〜31に対応する識別番号を認識する。制御部37は、識別情報の送信を制御するとともに各構成部を統括的に制御する。
【0021】
子機4は、検査対象電線を接続する検査端子41と、コモン線を接続するコモン端子42と、光結合素子43により閉回路を検出し、その電流値から接続情報を取得するとともに、親機3からの識別情報を受信する制御部44と、識別情報及び接続情報を報知する報知部45とを備えて構成されている。
【0022】
検査端子41には、電線束2の中から検査対象となる任意の1本の電線が接続される。コモン端子42には、親機3のコモン端子34に接続されるコモン線が接続される。
【0023】
制御部44は、閉回路を検出し、その電流値から抵抗値を求め、抵抗値と相関関係を有する情報を含む接続情報を取得する。また、親機3から検査対象電線を介して送信された識別情報を受信する。報知部45は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)を備える表示装置からなり、検査対象電線の識別番号などを表示する。
【0024】
ここで、電線識別装置1の動作について説明する。先ず、子機4の検査端子41に接続された検査対象電線の接続を検出するため、親機3の制御部37は、接続端子31〜31を順次走査する。具体的には、チャンネルセレクタ33が光結合素子32〜32を順次選択することにより、各電線に一定電圧が印加される。
【0025】
検査対象電線に一定電圧が印加されると、光結合素子35がオン状態となり、抵抗によりプルアップされた出力がローレベルとなるため、検知部36は、閉回路が構成されたことを検出する。また、検査対象電線が接続された接続端子31〜31を特定し、接続端子31〜31に対応する識別番号を認識し、識別情報を取得する。
【0026】
また、子機4の光結合素子43は電流値に対応したオン状態となり、出力が電流値に対応した電圧となるため、制御部44は、閉回路が構成されたことを検出し、その電流値から接続情報を取得する。
【0027】
制御部37は、検査対象電線が認識されると、検査対象電線を介して識別情報を子機4に送信する。
【0028】
子機4は、親機3から送信された識別情報を受信し、この識別情報を取得した接続情報とともに報知部45にて報知する。
【0029】
このように、子機4への接続が検出された電線のみに識別情報を送信することにより、親機に接続された全ての電線にそれぞれ識別情報を送信するよりも迅速且つ確実に電線を識別することができる。また、子機側で電流値等を測定するようにしたことにより、親機3は識別情報のみを送信すればよいため、送信にかかる時間を短くすることができる。
【0030】
次に、例えば、一部の電線が他の機器に接続され、短絡やいわゆる回り込みが生じた場合について説明する。この場合、検知部36では複数の電線の接続が検出され、複数の識別情報が取得される。制御部37は、接続が検出された全ての電線の識別情報を、検査対象電線を介し送信する。そして、子機4は、受信した電線の識別情報と、取得した抵抗値と相関関係がある情報を含む接続情報とを対応付けて表示装置等で報知する。具体的には、閉回路を検出する毎に、子機4は、接続情報を取得するとともに親機3から識別情報を受信する。このように閉回路が検出された全ての情報を報知することにより、作業者は、短絡やいわゆる回り込みを認識することができる。
【0031】
例えば、回り込みが生じた場合、子機4の表示装置には図2に示すような画面が表示される。ここでは、3つ電線が検出されていることを示している。例えば、1つ目の電線は、識別番号であるケーブル番号が21番で、抵抗値と相対関係を示すデータが52であることを示している。ここで、例えば、ケーブル番号が35番の電線のデータが低いことから、作業者は検査対象電線であることを判断することができる。
【0032】
また、例えば、電線束の途中で短絡がある場合、検出された識別番号の電線を親機から1つずつ外し、検査することにより、検査対象電線を識別することができる。
【0033】
このように短絡や回り込みが生じた場合でも、短絡や回り込みを判断する指標を使用者に提供することにより、電線を正確に識別することができる。
【0034】
なお、本実施の形態では、子機側に電線の識別結果を報知することとしたが、親機側にも識別結果を報知するようにしてもよい。これにより、例えば、短絡や回り込みが生じた場合における親機側での作業を容易に行うことができる。また、子機側で電流値等を測定することとしたが親機側で測定するようにしてもよい。
【0035】
また、報知手段として、表示装置を用いて説明したが、これに限られるものではなく、例えば、音声合成回路を備え、検査対象電線の識別番号を音声で読み上げるようにすることにより、表示装置を備える場合のように目視確認しなくてもよい。また、例えば、プリンタを備え、報知される識別番号をラベル等に印刷するようにすることにより、作業者が識別番号を読み取り、記入する作業が自動化され、人為的な記入ミスを防ぐことができる。
【0036】
さらに、本実施の形態では、電線束2が通電されていないものとして説明したが、高周波を搬送波として使用することにより、活線での電線識別も容易である。
【0037】
さらにまた、親機3が送信する識別番号にユニット番号を付加し、識別のための情報をユニット番号+識別番号とすることにより、複数の親機3を接続させるようにしてもよい。これは、配線元の電線数が多い場合や配線元が点在している場合に有効な手段である。また、子機4を複数接続させるようにしてもよい。これは、配線先が複数の場所へ点在する場合に特に有効な手段である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施の形態における電線識別装置を示す模式図である。
【図2】子機における表示画面例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0039】
1 電線識別装置、 2 電線束、 3 親機、 4 子機、 31〜31 接続端子、 32〜32 光結合素子、 33 チャンネルセレクタ、 34 コモン端子、 35 光結合素子、 36 検知部、37 制御部、 41 検査端子、 42 コモン端子、 43 光結合素子、 44 制御部、 45 報知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線束の一方の端部を接続する親機と、上記電線束の他方の端部のうち検査対象電線を接続する子機とからなる電線識別装置において、
上記親機は、
上記電線束から上記子機に接続された検査対象電線を検出するとともに当該検査対象電線を識別する識別情報を取得する検知手段と、
上記検知手段にて検知された検査対象電線を介し、上記識別情報を上記子機に送信する送信手段とを備え、
上記子機は、
上記検査対象電線を介し上記識別情報を受信する受信手段と、
上記識別情報を報知する報知手段と
を備えることを特徴とする電線識別装置。
【請求項2】
上記子機は、閉回路を検出し、上記検査対象電線の接続情報を取得する取得手段をさらに備え、
上記報知手段は、上記識別情報及び上記接続情報を報知することを特徴とする請求項1記載の電線識別装置。
【請求項3】
上記報知手段は、一の検査対象電線に対して複数の識別情報及び接続情報がある場合、複数の識別情報及び接続情報を報知することを特徴とする請求項2記載の電線識別装置。
【請求項4】
上記接続情報は、抵抗値と相関関係を有する情報を含んでいることを特徴とする請求項2記載の電線識別装置。

【図1】
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【図2】
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