説明

電線

色落ちを確実に防止できる電線を提供する。電線1は芯線4と被覆部5と印23とコーティング層6とを備えている。被覆部5は芯線4を被覆している。印23は被覆部5の外表面5aに形成されている。印23は着色材が外表面5aに付着して形成されている。コーティング層6は印23上と外表面5a上に形成されている。コーティング層6はPVAからなる。PVAからなるコーティング層6の厚さは0.02mm以上でかつ0.22mm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、導電性の芯線と、この芯線を被覆する絶縁性の被覆部と、この被覆部の外表面上に形成された印と、印を覆うコーティング層とを備えた電線に関する。
【背景技術】
移動体としての自動車などには、種々の電子機器が搭載される。このため、前記自動車などは、前記電子機器に電源などからの電力やコンピュータなどからの制御信号などを伝えるために、ワイヤハーネスを配索している。ワイヤハーネスは、複数の電線と、該電線の端部などに取り付けられたコネクタなどを備えている。
電線は、導電性の芯線と該芯線を被覆する絶縁性の合成樹脂からなる被覆部とを備えている。電線は、所謂被覆電線である。コネクタは、導電性の端子金具と絶縁性のコネクタハウジングとを備えている。端子金具は、電線の端部などに取りつけられかつ該電線の芯線と電気的に接続する。コネクタハウジングは、箱状に形成されかつ端子金具を収容する。
前記ワイヤハーネスを組み立てる際には、まず電線を所定の長さに切断した後、該電線の端部などに端子金具を取り付ける。必要に応じて電線同士を接続する。その後、端子金具をコネクタハウジング内に挿入する。こうして、前述したワイヤハーネスを組み立てる。
前述したワイヤハーネスの電線は、芯線の大きさと、被覆部の材質(耐熱性の有無などによる材質の変更)と、使用目的などを識別する必要がある。なお、使用目的とは、例えば、エアバック、ABS(Antilock Brake System)や車速情報などの制御信号や、動力伝達系統などの電線が用いられる自動車の系統(システム)である。
ワイヤハーネスの電線は、前述した使用目的(系統)を識別するために、例えば、外表面が互いに異なる2色でストライプ模様に形成されてきた。そこで、従来から芯線の周りに合成樹脂を押し出し被覆して、被覆部を形成する際に、まず被覆部を構成する合成樹脂に所望の色の着色剤を混入する。そして、芯線を被覆した合成樹脂即ち被覆部の外表面の一部に、前記着色剤と異なる色の着色剤を付着させる。こうして、被覆部の外表面の一部を着色して、電線をストライプ模様に着色してきた。
一方、自動車は、例えば数年から十数年などの長期間用いられる。さらに、自動車は、寒冷地から高温となる地域で用いられる。このため、前述した自動車に用いられる電線では、前述したようにストライプ模様に着色すると、特に後に付ける着色剤が時間の経過とともに電線の外表面から落ちる傾向となっていた。
さらに、自動車は、前述したように長期間用いられるため、使用中に新たな電子機器を追加することがある。このため、前述したように外表面の直色剤が落ちると、電線同士の識別が困難となり、所望の電線と追加する電子機器とを電気的に接続することが困難となる。このため、特に、自動車に用いられる電線では、過酷な環境下で長期間、外表面の色が落ちないことが望まれている。。
したがって、本発明の目的は、色落ちを確実に防止できる電線を提供することにある。
【発明の開示】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の電線は、導電性の芯線と、この芯線を被覆しかつ合成樹脂からなる被覆部とを備えた電線において、前記被覆部の外表面の一部に着色材が付着して形成された印と、前記印を覆いかつ該印上と被覆部の外表面上に形成されたコーティング層と、備え、前記コーティング層は、ポリビニルアルコールからなることを特徴としている。
このことによれば、電線の外表面に形成された印上にコーティング層が形成されている。コーティング層が、ポリビニルアルコール(Polyvinylalcohol)からなる。
本明細書に記した着色材とは、色材(工業用有機物質)が水以外の溶媒に溶解、分散した液状物質である。有機物質としては、染料、顔料(大部分は有機物であり、合成品)があり、時には染料が顔料として、顔料が染料として用いられることがある。より具体的な例として、本明細書でいう着色材とは、着色液と塗料との双方を示している。
着色液とは、溶媒中に染料が溶けているもの又は分散しているものを示しており、塗料とは、分散液中に顔料が分散しているものを示している。このため、着色液で電線の外表面を着色すると、染料が被覆部内にしみ込み、塗料で電線の外表面を着色すると、顔料が被覆部内にしみ込むことなく外表面に接着する。即ち、本明細書でいう電線の外表面を着色するとは、電線の外表面の全体又は一部を染料で染めることと、電線の外表面の全体又は一部に顔料を塗ることとを示している。
また、前記溶媒と分散液は、電線の被覆部を構成する合成樹脂と親和性のあるものが望ましい。この場合、染料が被覆部内に確実にしみ込んだり、顔料が被覆部の外表面に確実に接着することとなる。また、着色液の染料と塗料の顔料は、油溶性である。則ち、着色液の染料は、水に溶けないまたは水中に分散しない。塗料の顔料は、水に溶けない。
着色液の染料と塗料の顔料が油溶性であるので、着色材は、水溶性のポリビニルアルコールからなるコーティング層中を通りにくくなる。このため、コーティング層により、印を形成する着色材が電線の外表面から落ちることを防止できる。
請求項2に記載の本発明の電線は、請求項1記載の電線において、前記コーティング層の厚さが、0.02mm以上でかつ0.22mm以下であることを特徴としている。
このことによれば、コーティング層の厚さが0.02mm以上でかつ0.22mm以下である。このため、コーティング層により、印を形成する着色材が電線の外表面から落ちることを確実に防止できる。
請求項3に記載の本発明の電線は、請求項1記載の電線において、前記コーティング層の厚さが、0.023mm以上でかつ0.22mm以下であることを特徴としている。
このことによれば、コーティング層の厚さが0.023mm以上でかつ0.22mm以下である。このため、コーティング層により、印を形成する着色材が電線の外表面から落ちることをより一層確実に防止できる。
請求項4に記載の本発明の電線は、導電性の芯線と、この芯線を被覆しかつ合成樹脂からなる被覆部とを備えた電線において、前記被覆部の外表面の一部に着色材が付着して形成された印と、前記印を覆いかつ該印上と被覆部の外表面上に形成されたコーティング層と、を備え、前記コーティング層は、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなることを特徴としている。
このことによれば、電線の外表面に形成された印上にコーティング層が形成されている。コーティング層が、エチレン−ビニルアルコール(Ethylene−vinylalcohol)共重合体からなる。着色液の染料と塗料の顔料が油溶性であるので、着色材は、水溶性のエチレン−ビニルアルコールからなるコーティング層中を通りにくくなる。このため、コーティング層により、印を形成する着色材が電線の外表面から落ちることを防止できる。
請求項5に記載の本発明の電線は、請求項4記載の電線において、前記コーティング層の厚さが、0.03mm以上でかつ0.175mm以下であることを特徴としている。
このことによれば、コーティング層の厚さが0.03mm以上でかつ0.175mm以下である。このため、コーティング層により、印を形成する着色材が電線の外表面から落ちることを確実に防止できる。
請求項6に記載の本発明の電線は、請求項4記載の電線において、前記コーティング層の厚さが、0.1mm以上でかつ0.175mm以下であることを特徴としている。
このことによれば、コーティング層の厚さが0.1mm以上でかつ0.175mm以下である。このため、コーティング層により、印を形成する着色材が電線の外表面から落ちることをより一層確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の一実施形態にかかる電線を得るための電線切断装置の構成を示す斜視図である。
第2図は、第1図に示された電線切断装置に取り付けられた電線のコーティング装置の構成を示す説明図である。
第3図は、第2図に示された電線のコーティング装置の主に制御装置の構成を示す説明図である。
第4図は、第2図に示された電線のコーティング装置の噴出ユニットが動作した状態を示す説明図である。
第5図は、本発明の一実施形態にかかる電線の斜視図である。
第6図は、第5図中のVI−VI線に沿う断面図である。
第7図は、第5図に示された電線の平面図である。
第8図は、第7図中のVII−VII線に沿う断面図である。
第9図は、第5図に示された電線のコーティング層の厚さを変化させた時の着色材の色落ちの度合いの変化を示す説明図である。
第10図は、色落ちの度合いを測定した時の条件などを示す説明図であり、(a)は、第9図に示された色落ちの度合いを測定した時の条件などを模式的に示す説明図であり、(b)は、第10図(a)で用いられたシート材と比較対象のシート材とを示す平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の一実施形態にかかる電線を第1図ないし第10図を参照して説明する。
電線1は、移動体としての自動車などに配索されるワイヤハーネスを構成する。電線1は、第5図などに示すように、導電性の芯線4と、絶縁性の被覆部5とを備えている。芯線4は、複数の素線が撚られて形成されている。芯線4を構成する素線は、導電性の金属からなる。
また、芯線4は、一本の素線から構成されても良い。被覆部5は、例えば、ポリ塩化ビニル(Polyvinylchloride:PVC)などの合成樹脂からなる。被覆部5は、芯線4を被覆している。このため、被覆部5の外表面5aは、電線1の外表面をなしている。
また、被覆部5の外表面5aは、色P(以下単色Pと記す)一色である。なお、被覆部5を構成する合成樹脂に所望の着色剤を混入して、電線1の外表面5aを単色Pにしても良く、被覆部5を構成する合成樹脂に着色剤を混入することなく、単色Pを合成樹脂自体の色として良い。則ち、電線1を無着色としても良い。
被覆部5を構成する合成樹脂に着色剤を混入せずに、単色Pが合成樹脂自体の色の場合、被覆部5即ち電線1の外表面5aは、無着色であるという。このように、無着色とは、被覆部5を構成する合成樹脂に着色剤を混入せずに、電線1の外表面5aが合成樹脂自体の色をなしていることを示している。
また、電線1は、複数の印23と、コーティング層6とを備えている。印23は、被覆部5の外表面5aの一部に形成されている。印23の平面形状は、第7図に示すように、丸形である。複数の印23は、予め定められるパターンにしたがって、芯線4及び被覆部5則ち電線1の長手方向に沿って並べられている。図示例では、電線1の長手方向に沿って、印23が並べられている。また、互いに隣り合う印23の中心間の間隔Dと、各印23の大きさは、予め定められている。
印23は、色B(第5図及び第7図中に平行な二点鎖線で示す)である。色Bは、単色Pと異なる。印23は、後述の着色材CHが電線1の外表面5aの一部に付着して形成されている。印23の色Bを種々変更することで電線1同士を識別可能としている。印23の色Bは、ワイヤハーネスの電線1の線種、電線1が用いられる系統(システム)の識別などを行うために用いられる。即ち、前述した印23の色Bは、ワイヤハーネスの各電線1の使用目的を示しているとともに、この使用目的を識別するために用いられる。
コーティング層6は、第5図ないし第8図に示すように、各印23上に形成されており、これらの印23を覆っている(被覆している)。コーティング層6は、印23上と被覆部5の外表面5a上に形成されている。コーティング層6は、前記印23を構成する後述の染料又は顔料が外表面5aから落ちる(取れる)ことを防止する。
コーティング層6は、ポリビニルアルコール(Polyvinylalcohol:PVA)からなる。コーティング層6の厚さT(第6図に示す)は、0.02mm以上でかつ0.22mm以下である。
前述した構成の電線1は、複数束ねられるとともに端部などにコネクタなどが取り付けられて前述したワイヤハーネスを構成する。コネクタが自動車などの各種の電子機器のコネクタにコネクタ結合して、ワイヤハーネス即ち電線1は、各電子機器に各種の信号や電力を伝える。
前述した電線1は、前述した印23とコーティング層6とが形成されていない長尺の電線が第1図に示す電線切断装置2で所定の長さに切断されて得られる。さらに、電線切断装置2は、コーティング装置3を取り付けている。コーティング装置3は、電線切断装置2で所定の長さに切断される電線1の外表面5aに印23とコーティング層6を形成する。
電線切断装置2は、第1図に示すように、工場などのフロア上などに設置される本体10と、検尺機構11と、切断機構12とを備えている。本体10は、箱状に形成されている。検尺機構11は、一対のベルト送りユニット13を備えている。
ベルト送りユニット13は、駆動プーリ14と、複数の従動プーリ15と、無端ベルト16とを備えている。駆動プーリ14は、本体10内などに収容された駆動源としてモータなどにより回転駆動される。従動プーリ15は、本体10に回転自在に支持される。無端ベルト16は、輪状(無端状)のベルトであり、駆動プーリ14と従動プーリ15とに掛け渡されている。無端ベルト16は、これらのプーリ14,15の周りを回転する。
一対のベルト送りユニット13は、鉛直方向に沿って並べられている。一対のベルト送りユニット13は、互いの間に電線1を挟み、駆動プーリ14を同回転数で逆向きに同期して回転することにより、無端ベルト16を回転させて電線1を所定長さ送り出す。
このとき、一対のベルト送りユニット13は、電線1の長手方向と平行な第1図中の矢印Kに沿って、該電線1を移動する。なお、矢印Kは、本明細書に記した一方向をなしており、水平方向に沿っている。このため、ベルト送りユニット13は、電線1の長手方向に沿って、該電線1を移動する。
切断機構12は、一対のベルト送りユニット13の矢印Kの下流側に配されている。切断機構12は、一対の切断刃17,18を備えている。一対の切断刃17,18は、鉛直方向に沿って並べられている。即ち、一対の切断刃17,18は、鉛直方向に沿って互いに近づいたり離れたりする。一対の切断刃17,18は、互いに近づくと、一対のベルト送りユニット13によって送り出された電線1を互いの間に挟んで、切断する。一対の切断刃17,18は、互いに離れると、勿論、前記電線1から離れる。
前述した構成の電線切断装置2は、切断機構12の一対の切断刃17,18を互いに離した状態で、一対のベルト送りユニット13間に電線1を挟んで、該電線1を矢印Kに沿って送り出す。所定の長さの電線1を送り出した後、一対のベルト送りユニット13の駆動プーリ14が停止する。そして、一対の切断刃17,18が互いに近づいて、これら切断刃17,18間に電線1を挟んで切断する。こうして、電線切断装置2は、電線1を矢印Kに沿って移動する。
コーティング装置3は、前述した構成の印23を電線1の外表面5aに形成した後、この印23上と外表面5a上にコーティング層6を形成する装置である。コーティング装置3は、第2図に示すように、着色材噴出手段としての着色材噴出ユニット31と、噴出手段としての噴出ユニット32と、検出手段としてのエンコーダ33と、制御装置34とを備えている。着色材噴出ユニット31と噴出ユニット32とは、矢印Kに沿って並べられている。
着色材噴出ユニット31は、第1図に示すように、検尺機構11の一対のベルト送りユニット13と、切断機構12の一対の切断刃17,18との間に配されている。着色材噴出ユニット31は、第2図に示すように、ノズル35と弁36とを備えている。ノズル35は、一対のベルト送りユニット13によって矢印Kに沿って移動される電線1に相対している。ノズル35内には、着色材供給源37(第2図に示す)から液状の着色材CH(第4図に示す)が供給される。着色材CHは、前述した色Bである。
弁36は、ノズル35と連結している。また、弁36には、更に、加圧気体供給源38(第2図に示す)が連結している。加圧気体供給源38は、加圧された気体を、弁36を介してノズル35に供給する。また、加圧気体供給源38は、加圧された気体を、後述の弁40を介してノズル39に供給する。弁36が開くと、加圧気体供給源38から供給される加圧された気体により、ノズル35内の着色材CHが電線1の外表面5aに向かって噴出する(滴射される)。
弁36が閉じると、ノズル35内の着色材CHの噴出(滴射)が止まる。前述した構成によって、第4図に示すように、着色材噴出ユニット31は、制御装置34の後述のCPU47などからの信号により、弁36が予め定められる時間開いて、一定量の着色材CHを電線1の外表面5aに向かって噴出(滴射)する。
前述した着色材CHは、色材(工業用有機物質)が水以外の溶媒に溶解、分散した液状物質である。有機物質としては、染料、顔料(大部分は有機物であり、合成品)があり、時には染料が顔料として、顔料が染料として用いられることがある。より具体的な例として、着色材とは、着色液または塗料である。着色液とは、溶媒中に染料が溶けているもの又は分散しているものを示しており、塗料とは、分散液中に顔料が分散しているものを示している。
このため、着色液が電線1の外表面5aに付着すると、染料が被覆部5内にしみ込み、塗料が電線1の外表面5aに付着すると、顔料が被覆部5内にしみ込むことなく外表面5aに接着する。また、着色液の染料と塗料の顔料は、油溶性である。則ち、着色液の染料は、水に溶けないまたは水中に分散しない。塗料の顔料は、水に溶けない。
即ち、着色材噴出ユニット31は、電線1の外表面5aの一部を染料で染める又は電線1の外表面5aの一部に顔料を塗る。このため、電線1の外表面5aをマーキングする(印23を形成する)とは、電線1の外表面5aの一部を染料で染める(染色する)ことと、電線1の外表面5aの一部に顔料を塗ることとを示している。
また、前記溶媒と分散液は、被覆部5を構成する合成樹脂と親和性のあるものが望ましい。この場合、染料が被覆部5内に確実にしみ込んだり、顔料が外表面5aに確実に接着することとなる。
噴出ユニット32は、第1図に示すように、検尺機構11の一対のベルト送りユニット13と切断機構12の一対の切断刃17,18との間に配され、着色材噴出ユニット31より一対のベルト送りユニット13から離れている。このため、着色材噴出ユニット31は、噴出ユニット32より前記電線1の移動方向の上流に設けられている。
噴出ユニット32は、第2図に示すように、ノズル39と弁40とを備えている。ノズル39は、一対のベルト送りユニット13によって矢印Kに沿って移動される電線1に相対している。ノズル39内には、コーティング液供給源41(第2図に示す)からコーティング液C(第4図に示す)が供給される。コーティング液Cは、透明である。
弁40は、ノズル39と連結している。また、弁40には、更に、前述した加圧気体供給源38が連結している。弁40が開くと、加圧気体供給源38から供給される加圧された気体により、ノズル39内のコーティング液Cが電線1の外表面5aに向かって噴出する(滴射される)。弁40が閉じると、ノズル39内のコーティング液Cの噴出(滴射)が止まる。前述した構成によって、第4図に示すように、噴出ユニット32は、制御装置34のCPU47などからの信号により、弁40が予め定められる時間開いて、一定量のコーティング液Cを電線1の外表面5aに向かって噴出(滴射)する。
コーティング液Cは、コート剤と、このコート剤を溶かす溶媒とからなり、ゾル状またはゲル状をなしている。コート剤は、前述したコーティング層6を構成するPVAからなる。
コート剤を溶かす溶媒として、水、アセトン、2−プロピルアルコールなどを用いることができる。コート剤を溶かす溶媒は、コート剤として用いるPVAに応じて、適宜選択して用いることが望ましい。
さらに、滴射とは、着色材噴出ユニット31のノズル35から液状の着色材CHが、液滴の状態即ち滴の状態で、一定量電線1の外表面5aに向かって付勢されて打ち出されることを示している。また、滴射とは、噴出ユニット32のノズル39から液状のコーティング液Cが、液滴の状態即ち滴の状態で、一定量電線1の外表面5aに向かって付勢されて打ち出されることを示している。
このため、本実施形態のコーティング装置3の着色材噴出ユニット31のノズル35は、液状の着色材CHを、液滴の状態即ち滴の状態で、一定量電線1の外表面5aに向かって付勢して打ち出す。また、本実施形態のコーティング装置3の噴出ユニット32のノズル39は、液状のコーティング液Cを、液滴の状態即ち滴の状態で、一定量電線1の外表面5aに向かって付勢して打ち出す。
エンコーダ33は、第2図に示すように、回転子42を備えている。回転子42は、軸芯周りに回転可能である。回転子42の外周面は、一対のベルト送りユニット13間に挟まれた電線1の外表面5aと接触している。回転子42は、矢印Kに沿って、芯線4即ち電線1が走行(移動)すると、回転する。即ち、回転子42は、矢印Kに沿った芯線4即ち電線1の走行(移動)とともに、軸芯周りに回転する。勿論、矢印Kに沿った芯線4即ち電線1の走行(移動)距離と、回転子42の回転数とは比例する。
エンコーダ33は、制御装置34に接続している。エンコーダ33は、回転子42が所定角度ずつ回転すると、制御装置34に向かってパルス状の信号を出力する。即ち、エンコーダ33は、矢印Kに沿った電線1の移動速度に応じた情報を、制御装置34に向かって出力する。
このように、エンコーダ33は、電線1の移動速度に応じた情報を測定して、電線1の移動速度に応じた情報を制御装置34に向かって出力する。通常、エンコーダ33では、電線1とエンコーダ取付ロール(回転子)42の摩擦で電線1の移動量に応じたパルス信号が出力される。しかし、電線1の外表面5aの状態により移動量とパルス数とが必ずしも一致しない場合は、別の場所で速度情報を入手し、その情報をフィードバックし、比較演算しても良い。
制御装置34は、第3図に示すように、箱状の装置本体43(第1図に示す)と、記憶手段としてのメモリ44と、周知のROM(Read−only Memory)45と、RAM(Random Access Memory)46と、CPU(Central Processing Unit)47と、複数の弁駆動回路48と、コネクタとしての複数のインターフェース(第3図中にI/Fと示し、以下I/Fと記す)49とを備えている。制御装置34は、コンピュータである。
制御装置34は、エンコーダ33と各噴出ユニット31,32の弁36,40などに接続して、コーティング装置3全体の制御をつかさどる。装置本体43は、前述したメモリ44とROM45とRAM46とCPU47などを収容している。メモリ44は、前述した電線1の外表面5aに形成する印23のパターンを記憶している。
具体的には、メモリ44は、電線1の外表面5aにおいて前記印23のうち最も矢印Kの下流側の印23を形成する位置と、印23の数と、記印23の中心間の間隔Dと、一つの印23を形成するために必要な弁36の開度と、該弁36を開き続ける時間とを記憶している。
また、メモリ44は、前記印23を覆うことができかつ所望の厚さTとなる量のコーティング液Cを噴出ユニット32のノズル39が噴出するための、弁40の開度と、該弁40を開き続ける時間を記憶している。さらに、メモリ44は、着色材噴出ユニット31のノズル35と、噴出ユニット32のノズル39との間隔Lを記憶している。
なお、この間隔Lは、噴出ユニット31,32間即ち噴出手段と着色材噴出手段との間隔をなしている。メモリ44は、EEPROMなどの周知の不揮発性メモリなどからなる。ROM45は、CPU47の動作プログラムなどを記憶している。RAM46は、CPU47の演算実行時に必要なデータを一時的に保持する。
CPU47は、本明細書に記した制御手段をなしている。CPU47は、エンコーダ33から前記電線1の移動速度に関する情報が入力する。また、CPU47には、前記メモリ44から前述した印23のパターンが入力する。さらに、CPU47には、前記間隔Lと、コーティング層6が印23を覆うことができかつ所望の厚さTとなる弁40の開度と該弁40を開き続ける時間と、が入力する。CPU47は、前記エンコーダ33から入力する電線1の移動速度に基づいて、所定の位置に最も下流側の印23が形成されるタイミングで、弁36を開く。
そして、CPU47は、前記エンコーダ33から入力する電線1の移動速度に応じて、電線1の外表面5aに形成される印23の中心間の間隔が、前述した間隔Dとなるように、前記弁36を開閉する。さらに、電線1の外表面5aに形成される印23の大きさが予め定められる大きさとなるメモリ44が記憶した開度で、弁36を前記メモリ44が記憶した時間開く。こうして、CPU46は、着色材噴出ユニット31に、電線1の外表面5aに向かって着色材CHを噴出させて、前述した印23を形成する。
また、CPU47は、前記エンコーダ33から入力する電線1の移動速度に応じて、前記弁36が一度開いてから前記間隔L分電線1が移動したか否かを判定する。CPU47は、弁36が一度開いてから電線1が間隔L分移動したと判定すると、噴出ユニット32の弁40を、メモリ44が記憶しているコーティング層6で印23を覆うことができかつ所望の厚さTとなる開度で開く。
さらに、CPU47は、メモリ44が記憶している時間、弁40を開いた後、該弁40を閉じる。このように、CPU47は、コーティング液Cで印23即ち電線1の外表面5aに付着した着色材を覆うように、噴出ユニット32を制御する。CPU47は、電線1の外表面5aに付着した着色材に向かって噴出ユニット32にコーティング液Cを噴出させる。
弁駆動回路48とI/F49は、噴出ユニット31,32と同数設けられており、それぞれ各噴出ユニット31,32に対応している。弁駆動回路48には、CPU47と接続している。また、弁駆動回路48は、I/F49を介して、対応する噴出ユニット31,32の弁36,40が接続している。
弁駆動回路48は、CPU47から対応する弁36,40を開く信号が入力すると、該信号をI/F49などを介して弁36,40に向かって出力する。弁駆動回路48が対応する弁36,40を開く信号を弁36,40に向かって出力すると、対応する弁36,40が開く。
こうして、弁駆動回路48は、前述した信号を対応する弁36,40に向かって出力することによって、対応する弁36,40を開閉する。I/F49は、弁駆動回路48などが対応する弁36,40と電気的に接続するために用いられる。I/F49は、装置本体43の外壁などに取り付けられている。
前述した構成のコーティング装置3が、電線1の外表面5aに印23を形成した後、該印23上にコーティング層6を形成する際には、電線切断装置2の一対のベルト送りユニット13が電線1を矢印Kに沿って移動させている。すると、エンコーダ33から所定の順番のパルス状の信号がCPU47に入力すると、まず、メモリ44に記憶した開度とメモリ44に記憶した時間で、CPU47が弁36を前記間隔Dに応じて6回開閉する。
すると、着色材噴出ユニット31は、第4図に示すように、液状の着色材CHを一定量ずつ電線1の外表面5aに向かって噴出(滴射)する。着色材CHは、電線1の外表面5aに付着すると、溶媒または分散液が蒸発して、電線1の外表面5aに染料がしみ込むまたは顔料が接着する。
そして、着色材噴出ユニット31の弁36が一度開いてから、エンコーダ33からの電線1の移動速度に基づいて、CPU47が前記間隔L電線1が移動したと判定すると、CPU47がメモリ44に記憶した開度とメモリ44に記憶した時間で弁40を前記間隔Dに応じて開閉する。
すると、噴出ユニット32は、第4図に示すように、液状のコーティング液Cを一定量ずつ電線1の外表面5aに付着した印23則ち着色材CHに向かって噴出(滴射)する。CPU47は、着色材噴出ユニット31の弁36が一度開いてから、電線1が間隔L移動すると、噴出ユニット32の弁40を開閉する。電線1の外表面5aに付着したコーティング液Cは、前述した溶媒が蒸発して、コート剤で前記印23を覆うこととなる。こうして、印23上と電線1の外表面5a上に前述した厚さTのコーティング層6を形成する。
そして、電線切断装置2のベルト送りユニット13が電線1を所定の長さ送り出した後、停止する。切断機構12の切断刃17,18が、外表面5aに印23が形成された電線1を切断する。こうして、第5図などに示された外表面5aに印23が形成されかつ該印23がコーティング層6で覆われた電線1が得られる。
本実施形態によれば、電線1の外表面5aに形成された印23上にコーティング層6が形成されている。コーティング層6が、PVAからなる。着色材CHとしての着色液の染料と塗料の顔料が油溶性であるので、着色材CHは、水溶性のPVAからなるコーティング層6中を通りにくくなる。
このため、コーティング層6により印23を形成する着色材CHが電線1の外表面5aから落ちること則ち色落ちを防止できる。特に、自動車用の電線1では、コーティング層6が水溶性のPVAからなるので、長期間に渡り過酷な環境下で用いられても、色落ちすることを防止できる。
また、PVAからなるコーティング層6の厚さTが0.02mm以上でかつ0.22mm以下である。このため、コーティング層6により、印23を形成する着色材CHが電線1の外表面5aから落ちること則ち色落ちを確実に防止できる。特に、自動車用の電線1では、コーティング層6が水溶性のPVAからなりかつ前述した厚さTに形成されているので、長期間に渡り過酷な環境下で用いられても、色落ちすることを確実に防止できる。
また、噴出ユニット32が電線1の外表面5aに一定量ずつコーティング液Cを噴出する。このため、コーティング層6に必要な厚みに応じて、コーティング液Cを噴出する間隔及び量を調整することができる。このため、コーティング液Cを効率良く電線1の外表面5aに付着させることができる。したがって、コーティング液Cを無駄にすることなく、コーティング層6を形成できる。
また、エンコーダ33が電線1の移動速度を検出する。CPU47が電線1の移動速度に基づいて外表面5a上の着色材に向かって噴出ユニット32にコーティング液Cを噴出させる。このため、コーティング層6を電線1の外表面5a上の着色材上に確実に形成できる。したがって、時間の経過とともに着色材が落ちることを防止できる。また、着色材上にコーティング層6を形成することにより、コーティング液Cを効率良く電線1の外表面5aに付着させることができる。したがって、コーティング液Cを無駄にすることなく、コーティング層6を形成できる。
また、コーティング装置3は、電線切断装置2に取り付けられている。このため、長尺の電線1を所定の長さに切断する際に、該電線1の外表面5aにコーティング層6を形成できる。このため、設置にかかるスペースを抑制できるとともに、電線1の加工にかかる工数などを抑制できる。
前述した実施形態では、コーティング層6をPVAから構成している。しかしながら、本発明では、コーティング層6をエチレン−ビニルアルコール(Ethylene−vinylalcohol:EVA)共重合体から構成しても良い。この場合、コーティング液Cを構成するコート剤は、前述したコーティング層6を構成するEVA共重合体からなる。さらに、コーティング液Cを構成するコート剤を溶かす溶媒として、トルエン、キシレン、ヘキサンなどを用いることができる。コート剤を溶かす溶媒は、コート剤として用いるEVA共重合体に応じて、適宜選択して用いることが望ましい。
また、コーティング液Cは、前述した溶媒を加熱して、この加熱された溶媒中でEVA共重合体を溶かして得られる。コーティング液供給源41が収容するコーティング液Cの濃度は、コーティング液Cを常温に戻した時にEVA共重合体からなる溶媒が析出しない濃度とする。
コーティング層6をEVA共重合体から構成する際には、コーティング層6の厚さTを0.03mm以上でかつ0.175mm以下にする。
この場合、電線1の外表面5aに形成された印23上にコーティング層6が形成されている。コーティング層6が、EVA共重合体からなる。着色液の染料と塗料の顔料が油溶性であるので、着色材CHは、水溶性のEVA共重合体からなるコーティング層6中を通りにくくなる。このため、コーティング層6により、印23を形成する着色材CHが電線1の外表面5aから落ちること則ち色落ちを防止できる。特に、自動車用の電線1では、コーティング層6が水溶性のEVA共重合体からなるので、長期間に渡り過酷な環境下で用いられても、色落ちすることを防止できる。
また、EVA共重合体からなるコーティング層6の厚さTが0.03mm以上でかつ0.175mm以下である。このため、コーティング層6により、印23を形成する着色材CHが電線1の外表面5aから落ちること則ち色落ちを確実に防止できる。特に、自動車用の電線1では、コーティング層6が水溶性のEVA共重合体からなりかつ前述した厚さTに形成されているので、長期間に渡り過酷な環境下で用いられても、色落ちすることを確実に防止できる。
次に、本発明の発明者らは、種々の材料でコーティング層6を形成したときの色落ちの度合いを測定した。測定結果を、以下の表1に示す。

上記した測定では、種々の材料からなるコーティング液Cを前述したコーティング装置3の噴出ユニット32から電線1の被覆部5と同じ材質からなりかつ電線1の同様に外表面が着色されたシート材100a(第10図に示す)の外表面に向かって一定量ずつ噴出(滴射)した。そして、コーティング層6を前記シート材100aの表面上に形成した。
そして、種々の材料からなるコーティング層6を形成した際に、着色材CHが外表面から落ちる度合いを測定した。コーティング層6の厚さTを0.1mmとした。この測定では、第10図(a)に示すように、シート材100aを無着色でかつコーティング層6が形成されていないとともに被覆部5と同じ材質からなるシート材100cと重ねる。これらのシート材100a,100cをガラスなどからなる一対の部材101間に挟んで、シート材100a,100cが互いに近づく方向に圧力P(例えば140kgf/cm)を加えた。
そして、圧力Pを加えた状態で80℃に加熱された室内などに24時間放置した。24時間放置した後に、シート材100cの外表面の色と、シート材100cと同様に無着色のシート材100bの外表面の色とを比較した。シート材100aからシート材100cに移った(移行した)色の度合いを測定した。シート材100bは、シート材100cと同様に無着色でかつコーティング層6が形成されていないとともに被覆部5と同じ材質からなり前述した加圧及び加熱などが施されていないものである。
表1中の色差(ΔE)とは、比較対象としてのシート材100b(第10図(b)に示す)を基準として、第10図(a)に示す条件で24時間経過したシート材100aのコーティング層6下の着色材がシート材100cに移った(移行した)色の度合いを示している。則ち比較対象としてのシート材100b(第10図(b)に示す)を基準として、第10図(a)に示す条件で24時間経過したシート材100aのコーティング層6下の着色材が外表面から落ちた度合い(以下色落ちと呼ぶ)を示している。
表1では、色差(ΔE)が大きくなる即ち色落ちが大きくなると、着色材が外表面からより落ちることとなって、コーティング層6の効果が小さくなることを示している。また、色差(ΔE)が小さくなる即ち色落ちが小さくなると、着色材が外表面から落ちにくくなって、コーティング層6の効果が大きくなることを示している。
表1中の比較例Aは、コーティング層6をポリオレフィンから構成している。比較例Bは、コーティング層6をポリウレタンから構成している。比較例Cは、コーティング層6をシリコーン樹脂から構成している。比較例Dは、コーティング層6をアクリル樹脂から構成している。比較例Eは、コーティング層6を天然ゴムから構成している。比較例Fは、コーティング層6をフッ素樹脂から構成している。比較例Gは、コーティング層6をラッカーから構成している。これらの比較例Aから比較例Gでは、コーティング層6は水に溶けない油溶性となっている。
また、本発明品Aは、コーティング層6をPVAから構成している。本発明品Bは、コーティング層6をEVA共重合体から構成している。
また、色差(ΔE)が68を越えると、コーティング層6を形成していないものより色落ちが大きくなることを示している。このため、色差(ΔE)が68を越えると、コーティング層6の効果が全くないことを示している。
さらに、色差(ΔE)が20を下回ると、着色材が殆ど落ちないことを示しており、色差(ΔE)が10を下回ると、着色材が落ちないことを示している。
表1によると、比較例Gは、色差(ΔE)が68を越えており、コーティング層6の効果が全くないことが明らかとなった。また、比較例Aから比較例Fは、色差(ΔE)が20を越えており、コーティング層6の効果が少なく、コーティング層6が色落ちを防止できないことが明らかとなった。また、本発明品A及び本発明Bは、共に色差(ΔE)が10以下となっており、コーティング層6が色落ちを防止できることが明らかとなった。
表1の測定結果によれば、コーティング層6をPVAまたはEVA共重合体から構成することで、着色材CHがコーティング層6中を通りにくくなることが明らかとなった。このため、コーティング層6により印23を形成する着色材CHが電線1の外表面5aから落ちること則ち色落ちを防止できることが明らかとなった。特に、自動車用の電線1では、コーテイング層6が水溶性のPVAまたはEVA共重合体からなるので、長期間に渡り過酷な環境下で用いられても、色落ちすることを防止できることが明らかとなった。
また、本発明の発明者らは、PVAとEVA共重合体から構成したコーティング層6の厚さTを変化させたときの色落ちの度合いを測定した。測定結果を、第9図に示す。第9図に結果を示す測定は、表1に結果を示した測定と同条件で行っている。
第9図中の比較例Hは、コーティング層6を形成していない。また、本発明品Aは、コーティング層6をPVAから構成している。本発明品Bは、コーティング層6をEVA共重合体から構成している。
第9図によれば、本発明品A及び本発明品Bともに、厚さTを徐々に厚くしていくと、色落ちしにくくなることが明らかとなった。本発明品Aは、厚さTが0.02mm以上でかつ0.22mm以下となると色差(ΔE)が20以下となり、厚さTが0.023mm以上でかつ0.22mm以下となると色差(ΔE)が10以下となることが明らかとなった。
このため、本発明品Aは、コーティング層6の厚さTを0.02mm以上でかつ0.22mm以下とすることで、殆ど色落ちしないことが明らかとなった。さらに、本発明品Aは、コーティング層6の厚さTが0.023mm以上でかつ0.22mm以下とすることで、色落ちしないことが明らかとなった。
また、本発明品Bは、厚さTが0.03mm以上でかつ0.175mm以下となると色差(ΔE)が20以下となり、厚さTが0.1mm以上でかつ0.175mm以下となると色差(ΔE)が10以下となることが明らかとなった。
このため、本発明品Bは、コーティング層6の厚さTを0.03mm以上でかつ0.175mm以下とすることで、殆ど色落ちしないことが明らかとなった。さらに、本発明品Bは、コーティング層6の厚さTが0.1mm以上でかつ0.175mm以下とすることで、色落ちしないことが明らかとなった。
前述した実施形態では、コーティング層6をPVAから構成した際に、厚さTを0.02mm以上でかつ0.22mm以下としている。しかしながら、本発明では、PVAからなるコーティング層6の厚さTを0.023mm以上でかつ0.22mm以下としても良い。
この場合、第9図によれば、色差(ΔE)が10以下となる。そして、着色材CHがコーティング層6をより通りにくくなり、コーティング層6により、印23を形成する着色材CHが電線1の外表面5aから落ちること則ち色落ちをより一層確実に防止できる。特に、自動車用の電線1では、コーティング層6が水溶性のPVAからなりかつ前述した厚さTに形成されているので、長期間に渡り過酷な環境下で用いられても、色落ちすることをより一層確実に防止できる。
また、コーティング層6をEVA共重合体から構成した際に、厚さTを0.03mm以上でかつ0.175mm以下としている。しかしながら、本発明では、EVA共重合体からなるコーティング層6の厚さTを0.1mm以上でかつ0.175mm以下としても良い。
この場合、第9図によれば、色差(ΔE)が10以下となる。そして、着色材CHがコーティング層6をより通りにくくなり、コーティング層6により、印23を形成する着色材CHが電線1の外表面5aから落ちること則ち色落ちをより一層確実に防止できる。特に、自動車用の電線1では、コーティング層6が水溶性のEVA共重合体からなりかつ前述した厚さTに形成されているので、長期間に渡り過酷な環境下で用いられても、色落ちすることをより一層確実に防止できる。
前述した実施形態では、着色材噴出ユニット31を一つのみ設けている。しかしながら、本発明では、着色材噴出ユニット31を複数設けて、複数の着色材即ち複数の色で印23を形成しても良いことは勿論である。
前述した実施形態では、制御装置34をROM45、RAM46、CPU47などを備えたコンピュータから構成している。しかしながら、本発明では、制御装置34を周知のデジタル回路などから構成しても良い。この場合、前記エンコーダ33からのパルス状の信号を数える回路と、何番目のパルス状の信号が入力した時に前記弁36,40を開閉するかを判定する回路などを用いるのが望ましい。
さらに、前述した実施形態では、自動車に配索されるワイヤハーネスを構成する電線1に関して記載している。しかしながら本発明では、電線1を自動車に限らず、ポータブルコンピュータなどの各種の電子機器や各種の電気機械に用いても良いことは勿論である。
さらに、本発明では、着色液及び塗料として、アクリル系塗料、インク(染料系、顔料系)、UVインクなどの種々のものを用いても良い。
産業上の使用可能性
以上説明したように請求項1に記載の本発明は、電線の外表面に形成された印上にコーティング層が形成されている。コーティング層が、ポリビニルアルコールからなる。着色材としての着色液の染料と塗料の顔料が油溶性であるので、着色材は、水溶性のポリビニルアルコールからなるコーティング層中を通りにくくなる。このため、コーティング層により印を形成する着色材が電線の外表面から落ちること則ち色落ちを防止できる。特に、自動車用の電線では、コーティング層が水溶性のポリビニルアルコールからなるので、長期間に渡り過酷な環境下で用いられても、色落ちすることを防止できる。
請求項2に記載の本発明は、コーティング層の厚さが0.02mm以上でかつ0.22mm以下である。このため、コーティング層により、印を形成する着色材が電線の外表面から落ちること則ち色落ちを確実に防止できる。特に、自動車用の電線では、コーティング層が水溶性のポリビニルアルコールからなりかつ前述した厚さに形成されているので、長期間に渡り過酷な環境下で用いられても、色落ちすることを確実に防止できる。
請求項3に記載の本発明は、コーティング層の厚さが0.023mm以上でかつ0.22mm以下である。このため、コーティング層により、印を形成する着色材が電線の外表面から落ちること則ち色落ちをより一層確実に防止できる。特に、自動車用の電線では、コーティング層が水溶性のポリビニルアルコールからなりかつ前述した厚さに形成されているので、長期間に渡り過酷な環境下で用いられても、色落ちすることをより一層確実に防止できる。
請求項4に記載の本発明は、電線の外表面に形成された印上にコーティング層が形成されている。コーティング層が、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる。着色液の染料と塗料の顔料が油溶性であるので、着色材は、水溶性のエチレン−ビニルアルコール共重合体からなるコーティング層中を通りにくくなる。このため、コーティング層により、印を形成する着色材が電線の外表面から落ちること則ち色落ちを防止できる。特に、自動車用の電線では、コーティング層が水溶性のエチレン−ビニルアルコール共重合体からなるので、長期間に渡り過酷な環境下で用いられても、色落ちすることを防止できる。
請求項5に記載の本発明は、コーティング層の厚さが0.03mm以上でかつ0.175mm以下である。このため、コーティング層により、印を形成する着色材が電線の外表面から落ちること則ち色落ちを確実に防止できる。特に、自動車用の電線では、コーティング層が水溶性のエチレン−ビニルアルコール共重合体からなりかつ前述した厚さに形成されているので、長期間に渡り過酷な環境下で用いられても、色落ちすることを確実に防止できる。
請求項6に記載の本発明は、コーティング層の厚さが0.1mm以上でかつ0.175mm以下である。このため、コーティング層により、印を形成する着色材が電線の外表面から落ちること則ち色落ちをより一層確実に防止できる。特に、自動車用の電線では、コーティング層が水溶性のエチレン−ビニルアルコール共重合体からなりかつ前述した厚さに形成されているので、長期間に渡り過酷な環境下で用いられても、色落ちすることをより一層確実に防止できる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図7】

【図5】

【図6】

【図8】

【図9】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の芯線と、この芯線を被覆しかつ合成樹脂からなる被覆部とを備えた電線において、
前記被覆部の外表面の一部に着色材が付着して形成された印と、
前記印を覆いかつ該印上と被覆部の外表面上に形成されたコーティング層と、
を備え、
前記コーティング層は、ポリビニルアルコールからなることを特徴とする電線。
【請求項2】
前記コーティング層の厚さが、0.02mm以上でかつ0.22mm以下であることを特徴とする請求項1記載の電線。
【請求項3】
前記コーティング層の厚さが、0.023mm以上でかつ0.22mm以下であることを特徴とする請求項1記載の電線。
【請求項4】
導電性の芯線と、この芯線を被覆しかつ合成樹脂からなる被覆部とを備えた電線において、
前記被覆部の外表面の一部に着色材が付着して形成された印と、
前記印を覆いかつ該印上と被覆部の外表面上に形成されたコーティング層と、
を備え、
前記コーティング層は、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなることを特徴とする電線。
【請求項5】
前記コーティング層の厚さが、0.03mm以上でかつ0.175mm以下であることを特徴とする請求項4記載の電線。
【請求項6】
前記コーティング層の厚さが、0.1mm以上でかつ0.175mm以下であることを特徴とする請求項4記載の電線。

【国際公開番号】WO2004/059665
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【発行日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562937(P2004−562937)
【国際出願番号】PCT/JP2003/016709
【国際出願日】平成15年12月25日(2003.12.25)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】