説明

電縫管用超音波探傷装置、および電縫管の超音波探傷方法

【課題】電縫管の溶接部の探傷において、管端不感帯を最小限にでき、かつ管端探傷時の誤検出を防止できる超音波探傷装置および超音波探傷方法を提供する。
【解決手段】探傷台車に、その中央に超音波探触子を搭載するとともに、この超音波探触子を挟んで走行方向の前後それぞれに管端を検出可能な一対の管端検出センサを搭載し、探傷台車を走行させて探傷動作を行なっているときに、一対の管端検出センサのいずれか一方が管端を検出した時点から(ステップS1)、探傷台車の走行速度に基づいて当該検出側で超音波探触子が管端に到達する時間を予測し(ステップS2)、その予測時間が経過したときに、探傷動作を完了する(ステップS3〜4)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電縫管の溶接部の探傷に用いられる超音波探傷装置および超音波探傷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電縫管を製造する際には、板端部(開先部)を帯材の搬送方向に沿って突き合わせつつ溶接する。特に、油井のラインパイプ向け等の溶接部靭性が要求される管、あるいは油井のケーシングパイプ等の溶接部強度が要求される管においては、溶接部の探傷を確実に行ない、溶接部の信頼性を保証することは重要である。
ここで、溶接部の信頼性を保証する最終工程に用いられる超音波探傷方法として、所定長に切断された管に対し、超音波探触子と管表面との間に水膜を形成し、超音波探触子を管の長手方向に沿って移動させて溶接部の探傷を行なう方法がある。しかし、超音波探触子が管端を過ぎても探傷を継続している場合には対向方向に管が不在となるので所期の水膜が形成されない。そのため、水膜の形成不良による音響結合不良が発生してしまい、管端探傷の信頼性が低下する。そこで、このような管端検出の問題点に対し、例えば特許文献1には、管端検出センサが管端を検出した時点を起点とし、管端検出センサから探触子間の距離だけ管が移動した時点で探傷を完了させる溶接部超音波探傷方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−121612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の技術の場合、探傷台車の位置検出器が存在しないなどの理由で、探触子の管長手方向の位置検知ができない探傷システムのときには、探傷完了タイミングを正確に計算することは難しい。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、探傷台車の位置検出器を有しない超音波探傷装置においても、管端不感帯を最小限にでき、かつ管端探傷時の誤検出を防止できる電縫管用超音波探傷装置、および電縫管の超音波探傷方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のうち第一の発明は、電縫管の溶接部の探傷に用いられる超音波探傷装置であって、電縫管上方に且つその長手方向に沿って付設された案内レールと、この案内レールに沿って走行可能な探傷台車と、該探傷台車の走行速度を測定するとともに走行状態を規制可能な制御部とを備え、前記探傷台車は、その中央に搭載された超音波探触子と、該超音波探触子を挟んで走行方向の前後それぞれに管端を検出可能に搭載された一対の管端検出センサとを有し、前記制御部は、前記一対の管端検出センサからの検出信号を取得する管端検出信号取得手段と、該管端検出信号取得手段がいずれか一方の管端を検出した時点から、前記探傷台車の走行速度に基づいて当該検出側で前記超音波探触子が管端に到達する予測時間を算出する管端到達時間予測手段と、該管端到達時間予測手段の予測時間が経過したときに、探傷動作を完了させる探傷動作完了手段とを有することを特徴とする。
【0006】
また、本発明のうち第二の発明は、電縫管上方に且つその長手方向に沿って付設された案内レールに沿って走行可能な探傷台車を用いて電縫管の溶接部を探傷する超音波探傷方法であって、前記探傷台車に、その中央に超音波探触子を搭載するとともに、この超音波探触子を挟んで走行方向の前後それぞれに管端を検出可能な一対の管端検出センサを搭載し、前記探傷台車を走行させて探傷動作を行なっているときに、前記一対の管端検出センサのいずれか一方が管端を検出した時点から、前記探傷台車の走行速度に基づいて当該検出側で前記超音波探触子が管端に到達する時間を予測し、その予測時間が経過したときに、探傷動作を完了することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上述のように、本発明によれば、探傷台車が管端方向へ移動するときに、探傷台車の管端側にある管端検出センサが管端を検出した時点で、探傷台車の走行速度に基づいて当該検出側で超音波探触子が管端に到達する時間を予測し、この予測時間の経過後に探傷動作を完了させることができるので、探傷台車に位置検出器を有しない超音波探傷装置においても、管端不感帯を最小限にでき、かつ管端探傷時の誤検出を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る超音波探傷装置を説明する図であり、同図は、超音波探触子と管端検出センサが共に電縫管上に位置するときを示している。
【図2】本発明に係る超音波探傷装置の制御部のブロック図である。
【図3】制御部で実行される管端到達時間予測処理のフローチャートである。
【図4】本発明に係る超音波探傷装置の動作を説明する図であり、同図は、超音波探触子は電縫管上に位置するが、管端検出センサが管端に位置するときを示している。
【図5】本発明に係る超音波探傷装置の動作を説明する図であり、同図は、超音波探触子が管端に位置するときを示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1に示すように、この超音波探傷装置10は、溶接部の探傷をすべき電縫管4の上方にその長手方向に沿って付設された案内レール6と、この案内レール6に沿って走行可能な探傷台車5とを有して構成されている。探傷台車5には、その中央に、超音波探触子1が搭載されている。この超音波探触子1は、超音波探触子1と電縫管4表面との間に水膜を形成し、この水膜を介して超音波による探傷が可能なものである。そして、この探触子1を挟んで走行方向の前後それぞれに、管端4a,4bを検出可能な近接センサが管端検出センサ2,3として搭載されている。そして、この探傷台車5は、制御部8との間で必要なデータを授受可能に制御部8に接続されており、制御部8の指示に基づき、走行・停止および溶接部の探傷が行なわれる。なお、この超音波探傷装置10は、探傷台車5に位置検出器を有しないものである。
【0010】
制御部8は、図2に示すように、所定の制御プログラムに基づいて演算およびシステム全体を制御するCPU30と、所定領域にあらかじめCPU30の制御プログラム等を格納している記憶装置42およびROM32と、この記憶装置42およびROM32等から読み出したデータやCPU30の演算過程で必要な演算結果を格納するためのRAM34と、探傷台車5を案内レール6に沿って走行させるための不図示の走行駆動部や上記センサ類1,2,3に対してデータの入出力を媒介するインターフェース38とを備えて構成されており、これらは、データを転送するための信号線であるバス39で相互にかつデータ授受可能に接続されている。そして、CPU30、上記記憶装置42やROM32の所定領域に格納されている所定のプログラムを起動させ、そのプログラムに従って以下の管端到達時間予測処理を実行するようになっている。
【0011】
管端到達時間予測処理は、超音波探傷装置10が管の長手方向に沿って探傷を開始中に実行されて、図3に示すように、まず、ステップS1に移行して、管端検出センサ2,3のいずれかが管端4a又は4bを検出したか否かを監視する(管端検出信号取得手段)。つまり、管端検出センサ2,3のいずれかが管端4a又は4bを検出すれば(Yes)ステップS2に移行し、そうでなければ(No)ステップS1で待機する。ステップS2では、管端4a又は4bいずれか一方の管端を検出した時点から、探傷台車5の走行速度に基づいて当該検出側で前記超音波探触子1が管端に到達する予測時間を算出する(管端到達時間予測手段)。走行速度は、例えば走行駆動部が備えるロータリーエンコーダのパルス数から算出する。
【0012】
続くステップS3では、ステップS2で算出された予測時間が経過したか否かを判定し、予測時間が経過していれば(Yes)ステップS4に移行し、そうでなければ(No)ステップS3で予測時間が経過するまで待機する。そして、管端到達時間予測手段で予測した予測時間が経過したとき、ステップS4では、探傷動作を完了させ(探傷動作完了手段)一連の処理を終了する。
【0013】
次に、この超音波探傷装置10の動作および作用・効果について説明する。
この超音波探傷装置10による探傷動作は、探傷台車5が、図1に示す状態から、案内レール6に案内されつつ電縫管4の管端4a及び4bの全長に亘って探傷動作を行いつつ電縫管4の長手方向に沿って移動する。その際、図4に示すように、管端検出センサ2が管端4a又は4bを検出したとき(この例ではA側の管端4aを管端検出センサ2が検出したとき)、探傷台車5の制御部8は、その検出した時点で(ステップS1)、探傷台車5の走行速度に基づいて、探触子1が管端4a又は4bに到達する予測時間を算出する(ステップS2)。そして、管端到達時間予測手段が予測した予測時間が経過したとき、探傷動作を完了させる(ステップS3〜S4)。ここで算出した予測時間の経過後の状態が図5であり、この図5の状態の時に制御部8は探傷を完了させる。
【0014】
ただし、管端到達時間予測処理の前提条件として、探傷時は探傷台車5の走行速度を一定にする必要がある。探傷台車5の走行速度が一定の場合、探傷台車5の速度値の大小に関わらず、探触子1が管端4a又は4bに到着するまでの予測時間を正確に算出できる。そのため、この算出された予測時間の経過後に探傷を完了することにより、管端不感帯を最小限にでき、管端探傷の信頼性が向上する。なお、図1、および図4、図5は、A側の管端4aを探傷する様子を示す例であるが、B側の管端4bを探傷するときは、管端検出センサ(B側)3を使用することにより、A側の場合と同一の探傷および管端到達時間予測処理が可能である。
【0015】
以上説明したように、この超音波探傷装置10によれば、管端4a又は4b方向へ移動するときに、探傷台車5の管端4a又は4b側にある管端検出センサ2又は3が管端4a又は4bを検出した時点で、探傷台車5の速度に基づいて当該検出側で超音波探触子1が管端に到達する時間を予測し、この予測時間の経過後に探傷動作を完了させることができるので、探傷台車に位置検出器を有しない超音波探傷装置においても、管端不感帯を最小限にでき、かつ管端探傷時の誤検出を防止できる。
なお、本発明に係る超音波探傷装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0016】
1 超音波探触子
2 管端検出センサ(A側)
3 管端検出センサ(B側)
4 電縫管
5 探傷台車
6 案内レール
8 制御部
10 超音波探傷装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電縫管の溶接部の探傷に用いられる超音波探傷装置であって、
電縫管上方に且つその長手方向に沿って付設された案内レールと、該案内レールに沿って走行可能な探傷台車と、該探傷台車の走行速度を測定するとともに走行状態を規制可能な制御部とを備え、
前記探傷台車は、その中央に搭載された超音波探触子と、該超音波探触子を挟んで走行方向の前後それぞれに管端を検出可能に搭載された一対の管端検出センサとを有し、
前記制御部は、前記一対の管端検出センサからの検出信号を取得する管端検出信号取得手段と、該管端検出信号取得手段がいずれか一方の管端を検出した時点から、前記探傷台車の走行速度に基づいて当該検出側で前記超音波探触子が管端に到達する予測時間を算出する管端到達時間予測手段と、該管端到達時間予測手段の予測時間が経過したときに、探傷動作を完了させる探傷動作完了手段とを有することを特徴とする電縫管用超音波探傷装置。
【請求項2】
電縫管上方に且つその長手方向に沿って付設された案内レールに沿って走行可能な探傷台車を用いて電縫管の溶接部を探傷する超音波探傷方法であって、
前記探傷台車に、その中央に超音波探触子を搭載するとともに、この超音波探触子を挟んで走行方向の前後それぞれに管端を検出可能な一対の管端検出センサを搭載し、前記探傷台車を走行させて探傷動作を行なっているときに、前記一対の管端検出センサのいずれか一方が管端を検出した時点から、前記探傷台車の走行速度に基づいて当該検出側での前記超音波探触子が管端に到達する時間を予測し、その予測時間が経過したときに、探傷動作を完了することを特徴とする電縫管の超音波探傷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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