説明

電解コンデンサ用電極端子の製造方法

【課題】生産性が改善されるとともに、電解コンデンサの組立作業性を向上し得る電解コンデンサ用電極端子の製造方法を提供する。
【解決手段】所定の厚みを有する長方形のアルミニウム板10を用意し、アルミニウム板10の長手方向に沿った両端部11を残しその中央部分を圧延して偏平部12を形成し、両端部11をアルミニウム板の長手方向に直交する方向に平行に上下半丸刃A,Aを入れて両端部を半切りして円柱状とし、切り残した連接部12bで接続された円柱状両端部13の両端面12aにそれぞれリード線15を溶接し、連接部12bを上下切断刃B,Bで切断してリード線15を溶接した両円柱状端部13を転動させてその転がり摩擦により連接部12bの切断痕13aを略平坦にし、偏平部14の中央を長手方向に直交する方向に二分割して電極端子を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサに用いられる電極端子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電解コンデンサ用電極端子は、図6〜図8に示すように、断面円形のアルミニウム棒材d等を使用して定寸法に切断し、端部をプレスし偏平部aをつくり、となるCP線を一端面に溶接した後、断面円形部分を残し、他端をプレスして偏平部aとし、他端部にリード線bを溶接した後、偏平部aの周囲に延在する周辺部cをカットして整形し、化成処理して偏平部aに酸化皮膜を形成し、その偏平部aにコンデンサエレメントを溶接して電解コンデンサとするものである。
【0003】
また、図9(a)〜(d)は電極端子の生産性を高める製造方法を示しており、所定厚みの長方形のアルミニウム板1を用意し、その長手方向に沿った両端部2を残しその中央部分を偏平状態に圧延して偏平部3を形成し(図9(a))、アルミニウム板1の長手方向に直交する方向に平行で一定幅をもって切断し、偏平部3aとその両端の端部2aを有する半製品を作り(図9(b))、この半製品の両端部2aにそれぞれリード線5を溶接し(図9(c))、偏平部3aの中央を長手方向に平行な直線に沿って二分割し電極端子を製造する(図9(d))。この製造方法では電極端子の偏平部3bは切除材を出することなく成形できるので材料ロスがなく、しかも不良品の発生もなく能率的な生産が可能であり、大量生産に適した製造工程であり、稼働率や歩留りをも大幅に高められ、生産性も著しく良好になった(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平5−190402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、後者従来例は、生産性に優れているといった利点があるが、電解コンデンサ用の電極端子のベース部である端部が角形形状であり、部品自動供給機に投入して自動組み込みを行う場合、部品の搬送性を考慮すると電極端子の端部を円柱状とする方が好ましく、その場合、従来の製造方法では、個々に切断された角形形状の電極端子の端部を上下半丸刃でプレスしなければならず、生産コストが高騰する欠点があった。また、電極端子のベース部が角形であると、電極端子を部品自動供給機に投入してテーピングする場合にも電極端子に方向性があって、所定位置に整列するのに問題があり、例えば、電極端子の偏平部の偏平面を平行に整列しようとすると、部品自動供給機の種類によっては不揃いになるおそれがあり、電解コンデンサの生産性に影響を与えるおそれがあり、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、これら従来の欠点を排除しようとするものであり、生産性が改善されるとともに、電解コンデンサの組立作業性が向上する電解コンデンサ用電極端子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決したものであり、請求項1の発明は、所定の厚みを有する長方形のアルミニウム板にその長手方向に沿った両端部を残して中央部分を圧延して偏平部を形成する圧延工程と、
前記アルミニウム板の長手方向に直交する方向に平行に上下半丸刃を入れて該アルミニウム板を半切りにし、前記両端部を円柱状とし、かつ前記円柱状の両端部及び該両端部間の偏平部の側部に連接部を形成する半切工程と、
前記連接部で接続される前記円柱状の両端部の両端面にそれぞれリード線を溶接するリード線溶接工程と、
前記連接部を上下切断刃で切断する第1の切断工程と、
前記第1の切断工程により切断して前記円柱状の両端部を回転させてその転がり摩擦により前記連接部の切断痕を略平坦にする成形工程と、
前記成形工程の後、前記偏平部の中央をその長手方向に直交する方向に二分割して電極端子を形成する第2の切断工程とからなることを特徴とする電解コンデンサ用電極端子の製造方法である。
【0008】
また、請求項2の発明は、所定の厚みを有する長方形のアルミニウム板を用意し、該アルミニウム板の長手方向に沿った両端部を残しその中央部分を圧延して偏平部を形成し、該両端部及び該両端部間の偏平部を該アルミニウム板の長手方向に直交する方向に平行に上下半丸刃を入れて半切りし、該両端部を円柱状とし、切り残した連接部で接続される該円柱状の両端部の両端面にそれぞれリード線を溶接し、該連接部を上下切断刃で切断して前記円柱状の両端部を回転させてその転がり摩擦により該連接部の切断痕を略平坦にした後、前記偏平部の中央を長手方向に直交する方向に二分割して電極端子を製造することを特徴とする電解コンデンサ用電極端子の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、所定の厚みを有する長方形のアルミニウム板にその長手方向に沿った両端部を残して中央部分を偏平状に圧延し偏平部を形成する圧延工程と、
前記アルミニウム板の長手方向に直交する方向に平行に上下半丸刃を入れて半切りにし、前記両端部を円柱状とし、かつ前記円柱状の両端部及び該両端部間の偏平部の側部に連接部を形成する半切工程と、
前記連接部で接続される前記円柱状の両端部の両端面にそれぞれリード線を溶接するリード線溶接工程と、
前記連接部を上下切断刃で切断する第1の切断工程と、
前記第1の切断工程により切断して前記円柱状の両端部を回転させてその転がり摩擦により前記連接部の切断痕を略平坦にする成形工程と、
前記成形工程の後、前記偏平部の中央をその長手方向に直交する方向に二分割して電極端子を形成する第2の切断工程とからなることを特徴とする電解コンデンサ用電極端子の製造方法であるので、アルミニウム板をセットし、圧延工程、半切工程、リード線溶接工程、第1の切断工程、成形工程、及び第2の切断工程の各工程を連続して実施することができる利点があり、生産能率が良好であり、材料ロスもなく稼働率や歩留りを大幅に向上でき、生産コストを安価にできる利点がある。また、電極端子が円柱状であるので、電極端子を回転させて搬送させることが可能であり、電極端子にテーピング等を施す際も作業性が改善され、電解コンデンサを能率よく生産できる利点がある。
【0010】
また、請求項2の発明では、所定の厚みを有する長方形のアルミニウム板を用意し、該アルミニウム板の長手方向に沿った両端部を残しその中央部分を圧延して偏平部を形成し、該両端部及び該両端部間の偏平部を該アルミニウム板の長手方向に直交する方向に平行に上下半丸刃を入れて半切りし、該両端部を円柱状とし、切り残した連接部で接続される該円柱状の両端部の両端面にそれぞれリード線を溶接し、該連接部を上下切断刃で切断して前記円柱状の両端部を回転させてその転がり摩擦により該連接部の切断痕を略平坦にした後、前記偏平部の中央を長手方向に直交する方向に二分割して電極端子を製造することを特徴とする電解コンデンサ用電極端子の製造方法であるので、各工程を連続して実行することができ、生産性が良好である利点があり、アルミニウム電極端子を能率よく生産でき、材料ロスもなく稼働率や歩留りを大幅に向上でき、生産コストを安価にできる利点がある。また、電極端子が円柱状であるので、電極端子を回転させて搬送させることが可能であり、電極端子をテーピング等を施す際も作業性が改善され、電解コンデンサを能率よく生産できる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図1〜図5を参照し説明する。なお、図1は本発明に係る電解コンデンサ用電極端子の製造方法の一実施形態に用いる素材を示す斜視図であり、図2は圧延したアルミニウム板を示す斜視図である。図3(a)は本実施形態の製造方法の要部を示すための概略斜視図であり、図3(b)は本実施形態における半切りした素材の側面図であり、図4は半切りした素材を切り離す切断工程を示す斜視図であり、図5は中間素材を切り離す切断工程を示す斜視図である。
【0012】
本実施形態に係る電解コンデンサ用電極端子の製造方法は、図1に示す電極リード部となる厚みを持つ長方形のアルミニウム板10を電極端子の素材として用いられる。先ず、アルミニウム板10は、図2に示すように、アルミニウム板10の長手方向に沿った両端部11,11を残して中央部分を圧延し偏平部12が形成される(圧延工程)。
【0013】
続いて、中央部分を偏平部12としたアルミニウム板10は、図3(a)に示すように、両端部11,11を円柱状に成形するために、上下半丸刃A,A間に挿入され、上下半丸刃A,Aを上下方向からアルミニウム板10の長手方向に直交する方向に平行にプレスするように入れて両端部11,11及び両端部11,11間の偏平部12を半切りする(半切工程)。この半切工程では、上下半丸刃A,Aが半丸状の刃であり、上下半丸刃A,Aを端部11に入れることによって、端部11が円柱状に切り出されて円柱状の端部(以下、円柱状端部と称する)13が形成される。円柱状端部13間に偏平部14が形成され、円柱状端部13及び偏平部14が切り残した連接部12bで接続されて連設した状態となる。また、上下半丸刃A,Aがアルミニウム板10を半切りした後、上下半丸刃A,Aは離れるように上下方向に移動し、再び、アルミニウム板10が上下半丸刃A,A間に挿入され、再び上下半丸刃A,Aにより半切りされる。この動作を繰り返すことによって、アルミニウム板10には偏平部14の両端に円柱状端部13が形成された半製品が多数形成される。この半切工程では、図3(b)に示すように、アルミニウム板10が上下半丸刃A,Aで半切りされて、円柱状端部13及び円柱状端部13間の偏平部14がアルミニウム板10の切り残し部である連接部12bで接続された状態で次工程へと搬送される。
【0014】
上下半丸刃A,Aによる半切工程の後、アルミニウム板10の長手方向に連接部12bで接続された円柱状端部13及び円柱状端部13間の偏平部14が多数形成され、偏平部14の両端の円柱状端部13のそれぞれの端面12aにリード線15、例えばCP線が溶接される(リード線溶接工程)。リード線15の溶接工程の後、両端部を円柱状端部13とした部分を切断上下刃B,Bで連接部12bから切断し切り離され、図4に示すように、偏平部14の両端を円柱状端部13とした半製品が製造される(第1の切断工程)。第1の切断工程では、円柱状端部13及び円柱状端部13間の偏平部14の側縁部には連接部12bの切断痕13aが形成される。続いて、円柱状端部13等の連接部12bの切断痕13aは、円柱状端部13を転動してその転がり摩擦により切断痕13aを削り略平坦に成形する(成形工程)。成形工程の後、図5に示すように、切断上下刃により偏平部14の中央を長手方向に直交する方向に二分割して2個の電極端子17が形成される(第2の切断工程)。このような製造工程を経て、電解コンデンサ用電極端子が製造される。
【0015】
本実施形態では、圧延したアルミニウム板10の両端部12をアルミニウム板10の長手方向に直交する方向に平行に上下半丸刃A,Aが用意され、アルミニウム板10が端子幅の間隔で上下半丸刃A,A間に送り出され、上下半丸刃A,Aをアルミニウム板10にプレスするように入れて半切りすることにより、偏平部13の両端に端部11を円柱状とした円柱状端部13が形成され、偏平部14とその両側の円柱状端部13との側部には切り残しによる連接部12bが形成され、連接部12bで接続された偏平部13とその両側の円柱状端部12aが多数連接されて形成されており、アルミニウム板10を上下半丸刃A,A間を通過する過程で半切りにし送り出され、このような連接状態で電解コンデンサ用電極端子が製造されるので、製造が容易である利点がある。
【0016】
即ち、リード線16の溶接工程は、この連接部12bで連接された状態で行われるので半切工程の直後に上下半丸刃A,A間を通過した直後に溶接を行うことができ、溶接するための特別な治具を必要としないし、また、両円柱状端部13の端面12aにそれぞれリード線16を溶接した半製品の電極端子が作り出され、連続して、偏平部14とその両側の円柱状端部13からなる半製品を連続部12bから切り離す切断工程が実施できる。また、偏平部14とその両側の円柱状端部12aの側縁部の切断痕13aは、二枚の摩擦板間に挟んで転動させることによって、摩擦板との摩擦力により切断痕13aを削って略平坦なものとし、円柱状端部13から切断痕13aを削って成形し、偏平部14の中央を長手方向に直交する方向に平行に切り離され、二つの電極端子17が製造される。これらの製造工程が連接部12bで連接された状態で連続的に処理することができ、電極端子17の製造を比較的狭い範囲に集約した製造できる利点がある。
【0017】
また、アルミニウム板10としては、断面長方形のもので帯状に長い長尺物を用い、その中央部分を電極端子17の偏平部14となる厚さまで圧延し、両端部11,11との境界部分には傾斜面16が形成されて機械的強度を高めるようにしている。両端部11,11は、上下半丸刃A,Aで両端部11,11を押圧して半切りすることによって、円柱状端部12aの外形形状を形成される。なお、リード線溶接工程は半切工程の後工程で行われているが、第1の切断工程の後の行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、電極端子偏平部が切除材を出すことなく成形されるので材料ロスがなく、しかも不良品の発生もなく能率的な生産が可能で大量生産に適した作業で稼働率や歩留りをも大幅に高められ生産性を著しく良好にし、低コストの電極端子とすることができるし、また、この電極端子を用いてアルミニウム電解コンデンサを製造する際、電極端子を転動させて搬送させることが可能であり、生産性を良好なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る電解コンデンサ用電極端子の製造方法の一実施形態に用いる素材を示す斜視図である。
【図2】本実施形態の圧延したアルミニウム板を示す斜視図である。
【図3】(a)は本実施形態の製造方法の要部を示すための概略斜視図であり、(b)は本実施形態における加工した素材の側面図である。
【図4】本実施形態における半製品を切り出す切断工程を示す斜視図である。
【図5】半製品を切り離す切断工程を示す斜視図である。
【図6】従来例の電極端子の素材の斜視図である。
【図7】従来例の圧延工程後の素材の斜視図である。
【図8】従来例の電極端子の斜視図である。
【図9】従来の電極端子の製造工程を示し、(a)は圧延工程、(b)は切断工程、(c)はリード線の溶接工程、(d)は分割切断工程である。
【符号の説明】
【0020】
10 アルミニウム板
11 端部
12 偏平部
12a 端面
12b 連接部
13 円柱状端部
13a 切断痕
14 切り出し後の偏平部
15 リード線
16 傾斜面
17 電極端子
上半丸刃
下半丸刃
切断上刃
切断下刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の厚みを有する長方形のアルミニウム板にその長手方向に沿った両端部を残して中央部分を圧延して偏平部を形成する圧延工程と、
前記アルミニウム板の長手方向に直交する方向に平行に上下半丸刃を入れて該アルミニウム板を半切りにし、前記両端部を円柱状とし、かつ該円柱状の両端部及び該両端部間の偏平部の側部に連接部を形成する半切工程と、
前記連接部で接続される前記円柱状の両端部の両端面にそれぞれリード線を溶接するリード線溶接工程と、
前記連接部を上下切断刃で切断する第1の切断工程と、
前記第1の切断工程により切断した前記円柱状の両端部を回転させてその転がり摩擦により前記連接部の切断痕を略平坦にする成形工程と、
前記成形工程の後、前記偏平部の中央をその長手方向に直交する方向に二分割して電極端子を形成する第2の切断工程とからなることを特徴とする電解コンデンサ用電極端子の製造方法。
【請求項2】
所定の厚みを有する長方形のアルミニウム板を用意し、該アルミニウム板の長手方向に沿った両端部を残しその中央部分を圧延して偏平部を形成し、該両端部及び該両端部間の偏平部を該アルミニウム板の長手方向に直交する方向に平行に上下半丸刃を入れて半切りし、該両端部を円柱状とし、切り残した連接部で接続される該円柱状の両端部の両端面にそれぞれリード線を溶接し、該連接部を上下切断刃で切断して前記円柱状の両端部を回転させてその転がり摩擦により該連接部の切断痕を略平坦にした後、前記偏平部の中央を長手方向に直交する方向に二分割して電極端子を製造することを特徴とする電解コンデンサ用電極端子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−171916(P2008−171916A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−2147(P2007−2147)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【出願人】(000111225)ニューセントラル株式会社 (5)
【Fターム(参考)】