説明

電解加工方法、装置および電極

【課題】 断面翼形の翼状部の長手方向両端に翼端板を持つ被加工物を、分割された電極を伸縮させて電解加工する場合に、電極の部品点数を減らし構造を簡単にする。
【解決手段】 翼状部24の長手方向Aに対し相対的に鋭角Θ1方向Bへ主電極54を前進させることによって、翼状部24の一部とこれに連続する一方の翼端部26とを加工する一方、主電極54の翼状部加工面58と鋭角Θ2をなす斜面64に沿ってスライドする1つの補助電極56を前進させることにより、翼状部24の残部とこれに連続する翼端板28とを加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タービンの静翼などを加工するための電解加工方法と、この方法の実施に直接使用する装置および電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンなどに用いる静翼や動翼は、断面翼型の翼状部の両端あるいは一端にこの翼状部の長手方向にほぼ直交する翼端板を持つ構造となっている。この静翼や動翼は耐熱性に優れた特殊な合金で作られるため高精度に機械加工することが非常に困難である一方、高い加工精度が要求される。このため、予め仕上げ加工代を残して粗い機械加工した素材を最後に高精度に仕上げ加工するために電解加工法が用いられている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−318230
【0004】
特許文献1には電極を翼状部の長手方向に3分割して互いに斜面でスライドさせることによって伸縮可能とし、電解加工中にこの電極を次第に伸長させることにより、被加工物(静翼)の加工面と電極との間隙(加工間隙)を適切に保つことが示されている。ここに被加工物の加工面と電極とに電圧(通常は直流電圧)を印加しつつこの間隙(加工間隙)に電解液を流すことにより加工を行うものである。電解液は導電性の液であり、通常食塩水、硝酸ナトリウム(NaNO3)水溶液、硝酸カリウム(KNO3)水溶液などである。
【0005】
特許文献1に開示された方法では、電極を翼状部長手方向に伸縮させるために翼状部長手方向に3分割し、各部を翼状部加工面に対して傾いた斜面でスライド可能としている。すなわち各部の前進位置を相対的に変化させることにより各部を斜面に沿って相対移動させるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように特許文献1に開示されたものは、電極を3分割して各部分を前進方向に相対移動させるものであるため、電極の各部分を相対移動させる駆動手段を少なくとも2組電極に設ける必要が生じる。このため電極の部品点数が増え、構造が複雑になるという問題があった。
【0007】
また部品点数が多いので電極は大型化することになり、小さい被加工物の加工に用いることが難しくなる、という問題もあった。
【0008】
この発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、電極を伸縮させる場合に電極の部品点数を減らし、構造を簡単にすることができ、小さい被加工物の加工に適する電解加工方法を提供することを第1の目的とする。
【0009】
またこの発明は、この方法の実施に直接使用する電解加工装置を提供することを第2の目的とする。さらにこの方法の実施に直接使用する電極を提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明によれば第1の目的は、断面翼形の翼状部の長手方向の両端にこの翼状部の長手方向に対してほぼ直交する翼端板を有する導電性被加工物の電解加工方法において、前記翼状部の長手方向に対して相対的に鋭角方向へ主電極を前進させることによって、翼状部の一部とこれに連続する一方の翼端板とを加工する一方、この主電極の翼状部加工面と鋭角をなす斜面に沿ってスライドする1つの補助電極を前進させることにより、翼状部の残部とこれに連続する他方の翼端板とを加工することを特徴とする電解加工方法、により達成される。
【0011】
また第2の目的は、断面翼形の翼状部の長手方向の両端にこの翼状部長手方向に対してほぼ直交する翼端板を有する導電性被加工物の電解加工装置において、前記被加工物を保持するワーク保持部と、前記翼状部長手方向に対して前進・後退するスピンドルを有する電極送り機構と、前記スピンドルに固定され前記スピンドルと被加工物との相対移動によって前記翼状部と一方の翼端板とで挟まれた隅に向かって前進し翼状部の一部とこれに連続する一方の翼端板とを加工する主電極と、前記主電極の翼状部加工面と鋭角をなす斜面に沿ってスライド可能であり翼状部の残部とこれに連続する他方の翼端板とを加工する1つの補助電極と、前記補助電極を前記斜面に沿ってスライド駆動する補助電極駆動手段と、前記主電極および補助電極と被加工物との間隙に電解液を供給する電解液供給手段と、前記主電極および補助電極と被加工物との間に電圧を印加する電源と、前記主電極と補助電極と被加工物との相対位置を制御しつつ電解加工を行う制御手段と、を備えることを特徴とする電解加工装置、により達成される。
【0012】
さらに第3の目的は、請求項6の電界加工装置に用いる電極であって、翼状部の一部とこれに連続する一方の翼端板とにそれぞれ対向する翼状部加工面および翼端板加工面と、前記翼状部加工面と鋭角をなす斜面とを持つ主電極と;この主電極の斜面に沿ってスライド可能に保持され前記翼状部の残部とこれに連続する他方の翼端板とにそれぞれ対向する翼状部加工面および翼端板加工面とを持つ1つの補助電極と、前記補助電極を前記斜面に沿って移動させる補助電極駆動手段と、を備えることを特徴とする電極、により達成される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、1つの主電極と1つの補助電極とを斜面に沿って互いにスライド可能にすると共に、主電極を被加工物の翼状部長手方向に対して斜めに前進させつつ、補助電極を斜面に沿ってスライドさせるから、電極は主電極と補助電極の2つの部分で形成できる。また補助電極は1つなので補助電極駆動手段も1つで足りることになる。このため電極の構成部品数が少なくなり、構造が簡単になる。従って電極を小さくできるので、小さい被加工物の加工にも適する。
【0014】
請求項6の発明によれば、請求項1の発明の実施に直接使用する電解加工装置が得られる。また請求項10の発明によれば、同様に電極が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
主電極は補助電極より先行して前進させ、主電極が所定前進位置に来た時に補助電極を主電極より相対的に速く前進させ、加工終了時には主電極と補助電極の翼状部加工面を連続させることにより、翼状部を滑らかに加工することができる。このように補助電極の前進動を主電極に遅らせることにより、主電極を前進させる時に補助電極が被加工物の他方の翼端板に干渉するのを防ぐことができる。
【0016】
翼状部の長手方向に対して相対的に鋭角をなす方向へ主電極を前進させるためには、被加工物をその翼状部長手方向が主電極の前進方向(すなわち前進・後退方向、往復方向)に対して傾けた位置に固定すればよい。この場合は被加工物を固定して電極(この場合の電極は、主電極と補助電極と補助電極駆動手段を含む電極組立体である。)だけを前進・後退させればよいので加工装置が単純になる。例えば翼状部を表裏両面から同時に並行して加工する場合には、電極送り機構として被加工物に向かって同一直線上で往復動する一対のスピンドル(ラム)にそれぞれ電極を取付けた2RAM加工機を使うことができる。
【0017】
また被加工物をその翼状部長手方向に移動させると共に主電極を翼状部長手方向に直角またはほぼ直角に前進・後退させるようにしてもよい。例えば翼状部を表裏両面から同時加工する場合には、電極送り機構として共通の直線上を往復動する一対のスピンドルに電極(電極組立体)を取付け、これらのスピンドルに直交するワーク保持部としての他のスピンドルに被加工物を保持し、それぞれを協調(同調)させて進退動させる3RAM加工機を用いることができる。この場合、被加工物や電極(電極組立体)を回動させながら進退動させれば、複雑な曲面を3次元加工することができる。
【0018】
補助電極をスライドさせる補助電極駆動手段は、複動形油圧シリンダで形成することができる。
【実施例1】
【0019】
図1は本発明の一実施例である2RAM加工機を用いた電解加工装置の全体配置を示す平面図、図2は同じく2RAM加工機の拡大平面図、図3は同じく正面図である。図4は被加工物の一例である静翼の斜視図、図5は電極の平面図、図6は電極の動作行程A〜Eを示す図である。
【0020】
図1〜3において符号10は電解加工装置であり、左右一対の駆動部12,12と、中央の加工部14とを持つ。駆動部12,12には共通の直線A上で進退および回動可能なスピンドル(ラム、RAMともいう)16,16が保持されている。加工部14の床面すなわちワークテーブル18には一対のワーク保持台20,20が固定されている。前記スピンドル16,16の先端はこのワーク保持台20,20の中間の上方に延出している。スピンドル16,16は本発明の電極送り機構である。
【0021】
ワーク保持部20,20の中間には被加工物であるタービン・エンジン用の静翼22が固定されている。この静翼22は図4に示すように、翼状部24とその両端の翼端板26,28とを一体に形成したものである。この静翼22は例えばAlTiなどの電気伝導性を持つ耐熱合金で作られる。
【0022】
この静翼22は、ワーク保持部20,20に翼状部24をほぼ水平かつ直線Aと鋭角Θ1をなすように交叉する方向にして治具を用いて固定される。スピンドル16,16の先端には本発明に係る電極30,30が保持され、これら電極30,30は翼状部24の長手方向Bに対して平面視(図5)で斜めに交叉する直線Aに沿って前進・後退する。
【0023】
次に電解液供給手段31を説明する。図1において、32は電解液タンク、34は電解液調温用ヒータ/クーラであり、電解液タンク32内の電解液はこのヒータ/クーラ34によって一定温度に管理される。36は電解液ポンプ、38は電解液フィルタであり、電解液ポンプ36は電解液タンク32から電解液を電解液フィルタ38を介して加工部14に送る。
【0024】
なお電解液ポンプ36から電解液フィルタ38に電解液を導く給液管40には分岐管42が接続され、電解液フィルタ38に導く液圧を一定に保っている。すなわちこの分岐管42は、一定圧で開くリリーフ弁(図示せず)を介して電解液タンク32に接続され、ポンプ36の吐出圧が一定圧以上になるとリリーフ弁が開いてタンク32に逃がす。
【0025】
加工部14に送られた電解液は、静翼22と電極30,30との間隙に導かれ、この間隙を通った電解液は排液管44から電解液タンク32に戻される。以上のように電解液は温度制御されつつ循環する。図1において符号46は制御手段となる操作盤である。
【0026】
静翼22と電極30との間には電圧が印加される。すなわち電源48により静翼22が正電圧に、電極30が負電圧となるように直流電圧が印加される。加工部14はカバー50(図3)で覆われ、カバー50の内部は排気管52により排気されている。
【0027】
次に電極30,30を説明する。一対の電極30,30は同一構造である。電極30は、図5に示すように、1つの主電極54と、一つの補助電極56とを持つ。主電極54はスピンドル16に固定され、その先端すなわち静翼22の翼状部24に対向する先端は、被加工物22の翼状部24の一部とこれに連続する翼端板26または28にそれぞれ対向する翼状部加工面58および翼端板加工面60とを持つ。これら翼状部加工面58と翼端板加工面60とはほぼ直角をなす頂部62を形成し、主電極48はこの頂部62を先端にし翼状部加工面58を翼状部長手方向Bに対して鋭角Θ1傾けた位置となるように、スピンドル16に固定されている。
【0028】
この主電極48には、翼端板加工面60の反対側に翼状部加工面58と鋭角Θ2を形成する斜面64が形成されている。補助電極56はこの斜面64に沿ってスライド可能である。すなわちこの補助電極56は、主電極54に斜面64と平行に取付けた複動式油圧シリンダ66のピストンロッド68に連結され、往復動可能である。この油圧シリンダ66は本発明の補助電極駆動手段となる。
【0029】
この補助電極56の先端は、前記主電極54の翼状部加工面58と平行な翼状部加工面70と、これに直交する翼端板加工面72とを持つ。翼状部加工面70は補助電極56を前進させて加工終了した時点(後記図6の(E)の位置)で、主電極54の翼状部加工面58に滑らかに連続する。なおこの時に翼状部加工面58,70の合計した長さは、被加工材22の翼状部24の長さより翼端板26,28に対する電解加工間隙寸法相当分だけ僅かに短い。
【0030】
シリンダ66には制御盤46(図1)に制御された作動液(作動油)が導かれ、ピストンロッド68を前進または後退させる。この結果補助電極56の往復方向の位置が制御される。
【0031】
次にこの実施例の動作を説明する。図5および図6(A)はスピンドル16,16を初期位置(ホームポジション)に後退させた状態を示す。電極30,30は被加工物22を挟んで互いに点対称に反転させてスピンドル16,16に取付けられる。また被加工物22は、翼状部24の長手方向Bを主電極54,54の翼状部加工面58,58と平行となるように位置決めしてワーク保持台20,20に固定される。この状態では補助電極56は主電極54よりも後退した位置に保持されている(図6(A)の状態)。
【0032】
制御盤46はポンプ36から電解液を被加工物22の加工部分に供給させつつ、また電極30,30と被加工物22との間に電圧を加えつつ、スピンドル16,16を被加工物22に向かって前進させる(図6(B))。この時補助電極56は主電極54より後退しているから被加工物22の翼端板26,28に接触することはない。この状態では、主電極54の翼状部加工面58と翼端板加工部60が、それぞれ被加工物22の翼状部24の一部およびこれに連続する一方の翼端板26または28を電解加工する。
【0033】
主電極54の翼状部加工面58および翼端板加工面60により、翼状部24の一部および翼端板26または28に電解加工が進行し、主電極54が所定の位置に来ると、補助電極56が油圧シリンダ66により斜面64上で前進方向へ押し出される(図6の(C))。この時の主電極54の位置(所定位置)は、補助電極56が前進した時に他方の翼端板28または26に干渉しなくなる位置である。
【0034】
補助電極56の前進により、その翼状部加工面70が翼状部24の残部(すなわち主電極54で加工した翼状部24の残部)を電解加工すると共に、翼端板加工部72が他方の翼端板28または26を加工する(図6の(D))。補助電極56がさらに前進し、翼端板加工面70が主電極54の翼端板58と滑らかに連続する位置まで来ると、加工が終了する(図6の(E))。
【0035】
以上の動作説明では、理解を容易にするために、主電極54と補助電極56とは別々に動作するように説明している。しかし両電極54,56による電解加工は並行して進行するから、両電極54,56は互いに連動して前進する。すなわち主電極54が所定位置までは補助電極56に先行して前進する一方(図6の(A)〜(B))、この所定位置を過ぎると補助電極56の前進速度が主電極54に比べて相対的に速くなり(図6の(C)〜(D))、加工終了位置で両電極54,56の翼状部加工面58,70が連続する(図6の(E))。
【実施例2】
【0036】
図7は3RAM加工機を用いた電解加工装置の全体配置を示す平面図、図8は同じく3RAM加工機の拡大平面図、図9は同じく正面図である。図10は電極の平面図、図11は電極の動作工程(A)〜(D)を示す図である。これらの図7〜11においては、前記図1〜6に示した実施例と対応部分に同一符号を付したのでその説明は繰り返さない。
【0037】
ここで用いる電解加工装置10Aは直線A上で進退動する一対のスピンドル16,16と、直線Aに直交する直線C上で往復動する1つのスピンドル16Aとを持つ。加工部14Aのワークテーブル18Aはスピンドル16Aに結合され、スピンドル16,16の間で直線C方向に往復動可能である。このワークテーブル18Aには、被加工物22が翼状部24の長手方向Bを直線C方向にして固定される。20A,20Aは被加工物22をワークテーブル18Aに固定するワーク保持部である。なお図10,11では一方のワーク保持部20Aだけが示されている。
【0038】
電極30A,30Aは前記図1〜6で示した電極30,30とほぼ同一構造であるが、スピンドル16,16に対する取付角度が異なる。すなわち被加工物22は翼状部24の長手方向Bが直線Aに直交する直線C上に位置するので、主電極54Aの翼状部加工面58Aおよび翼端板加工面60Aがそれぞれこの直線B(C)および直線Aに平行であり、補助電極56Aの翼状部加工面70Aおよび翼端板加工面72がそれぞれ直線B(C)および直線Aに平行である。
【0039】
次にこの装置の動作を説明する。まず補助電極56Aを主電極54Aよりも十分に後退させた位置にして、一対の電極30A,30Aを被加工物22の翼状部24に向かって待機させる(図11の(A)、図10,ホームポジション)。この時被加工物22の一方の翼端板26は主電極54Aの翼端板加工面72Aよりも図10,11で上方に所定距離だけ離れている。
【0040】
この状態から両電極30A,30Aを同期させて被加工物22に向かって前進させて電解加工を行う。この時にスピンドル16Aは図上で下方へ次第に突出し、被加工物22を下方へ移動させる。また油圧シリンダ66は主電極54Aが所定位置に来ると補助電極56Aを主電極54Aよりも速い速度で斜面64A上を前進させる(図11の(B))。
【0041】
このように被加工物22を直線B(C)上で下方へ移動させながら電極30A,30Aを被加工物22に向かって前進させるから、電極30A,30Aは被加工物22に対しては両者の速度ベクトルの合成ベクトル方向に相対移動することになる。主電極54Aが所定前進位置に来ると補助電極56Aの前進速度が速くなり、補助電極56Aは被加工物22の他方の翼端板28に干渉しないように前進し加工を行う(図11の(C))。
【0042】
そして加工終了時点では主電極54Aと補助電極56Aの翼状部加工面58A,70Aは連続する(図11の(D))。以上の動作を、主電極54A、補助電極56Aおよび被加工物22の相対位置を正確に制御しながら連続的に行うことによって被加工物22を高精度に仕上げ加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施例である2RAM加工機を用いた電解加工機の全体は位置を示す平面図
【図2】同じく2RAM加工機の拡大平面図
【図3】同じく正面図
【図4】被加工物である静翼の斜視図
【図5】電極の平面図
【図6】電極の作動を示す斜視図
【図7】3RAM加工機を用いた電解加工装置の全体配置を示す平面図
【図8】同じく3RAM加工機の拡大平面図
【図9】同じく正面図
【図10】電極の平面図
【図11】電極の動作説明図
【符号の説明】
【0044】
10、10A 電解加工装置
16 スピンドル(電極送り機構)
20、20A ワーク保持部
22 静翼(被加工物)
24 翼状部
26、28 翼端板
30、30A 電極
31 電解液供給手段
48 電源
54、54A 主電極
56、56A 補助電極
58、70 翼状部加工面
60、72 翼端板加工面
64、64A 斜面
66 油圧シリンダ(補助電極駆動手段)
A スピンドル往復方向
B 翼状部長手方向
C 被加工物送り方向(進退動方向)
Θ1 翼状部長手方向(B)と主電極前進方向とが挟む鋭角
Θ2 主電極の翼状部加工面と斜面とが挟む鋭角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面翼形の翼状部の長手方向の両端にこの翼状部の長手方向に対してほぼ直交する翼端板を有する導電性被加工物の電解加工方法において、
前記翼状部の長手方向に対して相対的に鋭角方向へ主電極を前進させることによって、翼状部の一部とこれに連続する一方の翼端板とを加工する一方、この主電極の翼状部加工面と鋭角をなす斜面に沿ってスライドする1つの補助電極を前進させることにより、翼状部の残部とこれに連続する他方の翼端板とを加工することを特徴とする電解加工方法。
【請求項2】
主電極を補助電極より先行させて前進させ、補助電極は主電極の所定前進位置から主電極に対して相対的に前進を開始し、加工終了時に主電極と補助電極の翼状部加工面が連続するようにした請求項1の電解加工方法。
【請求項3】
被加工物は翼状部長手方向を主電極の前進・後退方向に対して傾けた位置に固定しておく請求項1または2の電解加工方法。
【請求項4】
被加工物を翼状部長手方向に移動させると共に主電極を翼状部長手方向に直交方向に前進・後退させる請求項1または2の電解加工方法。
【請求項5】
主電極と補助電極とを含む電極を被加工物の翼状部を挟んでほぼ対称に2組配置し、翼状部の両面を同時に加工する請求項1〜4のいずれかの電解加工方法。
【請求項6】
断面翼形の翼状部の長手方向の両端にこの翼状部長手方向に対してほぼ直交する翼端板を有する導電性被加工物の電解加工装置において、
前記被加工物を保持するワーク保持部と、
前記翼状部長手方向に対して前進・後退するスピンドルを有する電極送り機構と、
前記スピンドルに固定され前記スピンドルと被加工物との相対移動によって前記翼状部と一方の翼端板とで挟まれた隅に向かって前進し翼状部の一部とこれに連続する一方の翼端板とを加工する主電極と、
前記主電極の翼状部加工面と鋭角をなす斜面に沿ってスライド可能であり翼状部の残部とこれに連続する他方の翼端板とを加工する1つの補助電極と、
前記補助電極を前記斜面に沿ってスライド駆動する補助電極駆動手段と、
前記主電極および補助電極と被加工物との間隙に電解液を供給する電解液供給手段と、
前記主電極および補助電極と被加工物との間に電圧を印加する電源と、
前記主電極と補助電極と被加工物との相対位置を制御しつつ電解加工を行う制御手段と、
を備えることを特徴とする電解加工装置。
【請求項7】
ワーク保持部は被加工物をその翼状部長手方向を電極送り機構のスピンドルの進退動方向に対して傾けた位置に固定する請求項6の電解加工装置。
【請求項8】
ワーク保持部は被加工物をその翼状部長手方向に進退動可能に保持し、電極送り機構のスピンドルは翼状部長手方向に直交方向に前進・後退する請求項6の電解加工装置。
【請求項9】
補助電極駆動手段は、複動形油圧シリンダで形成される請求項6の電解加工装置。
【請求項10】
請求項6の電界加工装置に用いる電極であって、
翼状部の一部とこれに連続する一方の翼端板とにそれぞれ対向する翼状部加工面および翼端板加工面と、前記翼状部加工面と鋭角をなす斜面とを持つ主電極と;
この主電極の斜面に沿ってスライド可能に保持され前記翼状部の残部とこれに連続する他方の翼端板とにそれぞれ対向する翼状部加工面および翼端板加工面とを持つ1つの補助電極と、
前記補助電極を前記斜面に沿って移動させる補助電極駆動手段と、
を備えることを特徴とする電極。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−979(P2007−979A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185274(P2005−185274)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000168322)エーピーシー エアロスペシャルティ株式会社 (6)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】