説明

電解方法及び電解装置

【課題】少ない部品点数で効率的に酸素及び水素を生成でき、また、小型化を有効に行うことができる電解方法及び電解装置を提供すること。
【解決手段】電解装置1は、水を保持すると共に電極3が内部に設けられた容器2と、容器2に水を循環させる循環路4を備える。循環路4には、容器2から水が排出される側から順に、循環する水から水素と酸素を分離して取り出す分離器5と、炭素微粒子と窒素の微細気泡を含む水を供給する供給管6と、水を循環させる循環ポンプ7が介設されている。電極3は、容器2の対抗する内側面に夫々配置された陽極電極31及び陰極電極32と、これら陽極電極31と陰極電極32の間に配置された3つの中間電極33、33、33を有する。炭素微粒子により、水の電気分解による水素及び酸素の生成効率を向上させ、窒素の微細気泡により、電気分解で生成された水素及び酸素の防爆を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の電気分解を行って水素又は酸素を生成する電解方法及び電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水の電気分解を行って水素と酸素の気体を生成する電解装置として、箱体の内部をクランク状に区切って電流の通路を形成し、この通路を横切るように、中央に電極が設けられた仕切板を複数個配設し、両端の仕切板の電極間に電圧を印加するように構成されたものがある(特許文献1参照)。この電解装置は、約100枚の仕切板の相互間に電解室を夫々形成することにより、小電流の通電により、大量の水素と酸素の混合気体が生成できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−268581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の電解装置は、約100個の電極を備えるので部品点数が多く、構造が複雑であり、部品コストと組み立てコストが嵩む不都合がある。また、電極が劣化した場合に電極を交換する手間が大きいという不都合がある。また、約100個の電極の間に電流を流すので、電力の抵抗損失が大きく、水素及び酸素の生成効率が悪いという問題がある。また、約100個の電極の間に電解室を夫々形成するので、電解装置の小型化が難しいという不都合がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、少ない部品点数で効率的に酸素及び水素を生成でき、また、小型化を有効に行うことができる電解方法及び電解装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の電解方法は、
水に炭素微粒子を添加する微粒子添加工程と、
上記炭素微粒子が添加された水を電気分解する電解工程と
を備えることを特徴としている。
【0007】
上記構成によれば、水に炭素微粒子を添加し、この炭素微粒子が添加された水を電気分解すると、電気分解の陰極と陽極の間で炭素微粒子が微小な電極として機能するので、従来のように多数の電極を設置しなくても、水の電気分解を効率的に行うことができる。したがって、この電解方法を行うための電解装置に関し、部品点数を削減でき、部品コストと組み立てコストを安価にできる。また、電極を交換する必要が生じても、電極の交換の手間を少なくできる。また、電極の数を少なくできるので、電極間に印加する電力の抵抗損失を少なくできる。さらに、電極間に印加する電位差が比較的小さくても、水中に分散する炭素微粒子の互いの間に、局所的に高い電位差が形成されるので、効率的に水素や酸素等を生成することができる。また、電極の数を削減できるので、効果的に小型化を行うことができる。
【0008】
ここで、炭素微粒子とは、1nm以上50μm以下の直径を有して炭素で形成された粒子をいう。
【0009】
また、上記炭素微粒子は、電解を行う水に対して1wt%以上50wt%以下の割合で添加するのが好ましい。
【0010】
一実施形態の電解方法は、上記炭素微粒子は、直径が10nm以上500nm以下である。
【0011】
上記実施形態によれば、水に直径が10nm以上500nm以下の炭素微粒子を添加することにより、この炭素微粒子が添加された水の電解効率を効果的に向上することができる。
【0012】
ここで、直径が10nm以上500nm以下の炭素微粒子として、公知のナノカーボン粉末を用いることができる。
【0013】
一実施形態の電解方法は、窒素を含む気体の微細気泡を上記水に供給する窒素供給工程を備える。
【0014】
上記実施形態によれば、電気分解を行う水に、窒素を含む気体の微細気泡が供給されるので、この微細気泡により、電気分解により生成された水素や酸素等の防爆を行うことができる。また、窒素を含む気体の微細気泡は、電極の表面に付着し難いので、電極の表面に付着する気泡による電解効率の低下を防止できる。
【0015】
ここで、窒素を含む気体とは、体積割合で50%以上の窒素を含む気体をいう。また、微細気泡とは、1nm以上50μm以下の直径を有する気泡をいう。
【0016】
一実施形態の電解方法は、上記微細気泡は、直径が10nm以上500nm以下である。
【0017】
上記実施形態によれば、窒素を含む気体は、その微細気泡の直径が10nm以上500nm以下であることにより、電気分解を行う水に安定して保持されるので、生成される水素や酸素等の防爆を安定して行うことができる。
【0018】
本発明の電解装置は、水を保持する容器と、
上記水に接するように容器内に配置された陽極電極及び陰極電極と、
上記容器に水を循環させる循環路と、
上記循環路に水を供給する水供給部と、
上記循環路に、上記水に添加されるべき炭素微粒子を供給する炭素供給部と
を備えることを特徴としている。
【0019】
上記構成によれば、陽極電極及び陰極電極が配置されて水の電気分解が行われる容器に、循環路を通して水が循環し、電気分解によって水が減少するに応じて、水供給部により水が供給される。また、上記水に添加されるべき炭素微粒子が、炭素供給部で循環路に供給される。なお、炭素供給部は、炭素微粒子を予め水に添加した状態で循環路に供給してもよく、また、炭素微粒子のみを循環路に供給してもよい。上記容器では、上記陽極電極と陰極電極に電力が印加され、陽極電極で酸化反応が進む一方、陰極電極で還元反応が進む。ここで、陽極電極と陰極電極の間に存在する水に添加されている炭素微粒子が微小な電極として機能するので、従来のように多数の電極を設置しなくても、水の電気分解を効率的に行うことができる。したがって、この電解装置は、従来の電解装置よりも部品点数を削減でき、部品コストと組み立てコストを安価にできる。また、電極を交換する必要が生じても、交換の手間を少なくできる。また、電極の数を少なくできるので、電極間に印加する電力の抵抗損失を少なくできる。さらに、電極間に印加する電位差が比較的少なくても、水中に分散する炭素微粒子の互いの間に、局所的に高い電位差が形成されるので、効率的に水素及び酸素を生成することができる。また、電極の数を削減できるので、効果的に小型化を行うことができる。
【0020】
ここで、炭素微粒子とは、1nm以上50μm以下の直径を有して炭素で形成された粒子をいう。
【0021】
また、上記炭素微粒子は、電解を行う水に対して1wt%以上50wt%以下の割合で添加するのが好ましい。
【0022】
一実施形態の電解装置は、上記炭素微粒子は、直径が10nm以上500nm以下である。
【0023】
上記実施形態によれば、水に直径が10nm以上500nm以下の炭素微粒子を添加することにより、この炭素微粒子が添加された水の電解効率を効果的に向上することができる。
【0024】
ここで、直径が10nm以上500nm以下の炭素微粒子として、公知のナノカーボン粉末を用いることができる。
【0025】
一実施形態の電解装置は、上記循環路に、窒素を含む気体の微細気泡を供給する窒素供給部を備える。
【0026】
上記実施形態によれば、循環路を通る水に、窒素を含む気体の微細気泡が窒素供給部から供給され、この微細気泡が供給された水が容器に導かれて電気分解が行われる。この微細気泡に含まれる窒素により、電気分解により生成された水素又は酸素の防爆を行うことができる。また、窒素を含む気体の微細気泡は、電極の表面に付着し難いので、電極の表面に付着する気泡による電解効率の低下を防止できる。
【0027】
ここで、窒素を含む気体とは、体積割合が50%以上の窒素を含む気体をいう。また、微細気泡とは、1nm以上50μm以下の直径を有する気泡をいう。
【0028】
一実施形態の電解装置は、上記微細気泡は、直径が10nm以上500nm以下である。
【0029】
上記実施形態によれば、窒素を含む気体は、その微細気泡の直径が10nm以上500nm以下であることにより、電気分解を行う水に安定して保持されるので、生成される水素及び酸素の防爆を安定して行うことができる。
【0030】
一実施形態の電解装置は、上記陽極電極及び陰極電極の少なくとも一方を振動させる振動部を備える。
【0031】
上記実施形態によれば、振動部により、陽極電極及び陰極電極の少なくとも一方に振動が与えられることにより、電極における電解反応を促進し、水素又は酸素の生成量を増大することができる。ここで、振動部により電極に与える振動数を変更することにより、電極における水素又は酸素の生成量を調節することができる。
【0032】
一実施形態の電解装置は、上記陽極電極及び陰極電極は、表面に炭素微粒子が設けられている。
【0033】
上記実施形態によれば、陽極電極及び陰極電極の表面に設けられた炭素微粒子により、電極の表面を平滑に形成した場合よりも、水素及び酸素の生成効率を増大させることができる。ここで、上記炭素微粒子は、1nm以上50μm以下の直径を有して炭素で形成された粒子をいい、好ましくは、直径が10nm以上500nm以下である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態の電解装置を示す模式図である。
【図2】窒素の微細気泡を含む水を生成する微細化混合装置を示す模式図である。
【図3】第2実施形態の電解装置の一部を示す模式図である。
【図4】第3実施形態の電解装置の一部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0036】
第1実施形態の電解装置1は、水を電気分解して水素と酸素を生成する装置であり、図1に示すように、電気分解の対象である水を保持すると共に電極3が内部に設けられた容器2と、容器2に水を循環させる循環路4を備える。循環路4には、容器2から水が排出される側から順に、循環する水から水素と酸素を分離して取り出す分離器5と、炭素微粒子と窒素の微細気泡を含む水を供給する供給管6と、水を循環させる循環ポンプ7が介設されている。
【0037】
容器2は、水が流入する流入口21を下端に有すると共に、水と共に水素及び酸素が排出される排出口22を上端に有する。流入口21に連なる容器2の下部の内壁面は、下端から上方に向かって幅が拡大する形状を有し、容器2の上下方向の中央部に幅方向に配列された複数の電極31,32,33の間に水を分散して導くように形成されている。排出口22に連なる容器2の上部の内壁面は、上端から下方に向かって幅が拡大する形状を有し、複数の電極31,32,33の間から水と気体を集めて排出口22に導くように形成されている。
【0038】
容器2の上下方向の中央に設けられた電極3は、容器2の対抗する内側面に夫々配置された陽極電極31及び陰極電極32と、これら陽極電極31と陰極電極32の間に配置された3つの中間電極33、33、33で構成されている。なお、中間電極33の数は、3つ以外でもよく、また、中間電極33は必ずしも設けなくてよい。各電極31,32,33は、炭素材料で形成された板状体であり、互いに平行に配置されている。陽極電極31と陰極電極32の中間電極33に臨む表面と、中間電極33の両面には、炭素微粒子が担持されている。炭素微粒子は、直径が10nm以上500nm以下の炭素の粒子で形成され、公知のナノカーボン粉末を用いることができる。なお、各電極31,32,33は、金属材料で形成された板状体の表面に炭素微粒子を担持させて形成してもよく、また、炭素微粒子をコンパウンドした樹脂を板状に成形し、表面に炭素微粒子を露出させて形成してもよい。
【0039】
循環路4は、容器2の排出口22と分離器5の入口との間を接続する排出管41と、分離器5の水の出口と循環ポンプ7の吸入口との間を接続する吸入管42と、循環ポンプ7の吐出口と容器2の流入口21との間を接続する流入管43とで構成されている。
【0040】
分離器5には、容器2から排出された混合状態の水素及び酸素と水が、排出管41を通して導かれる。この分離器5は、導かれた水と水素及び酸素とを分離し、さらに、水素と酸素とを分離して個別に排出するように形成されている。分離器5は、水素と酸素を分離する分離膜を内蔵し、これにより、容器2内で生成されて混合状態で排出された水素と酸素を分離する。分離膜は、ゼオライト等のセラミック多孔体や、パラジウム等の金属や、合成樹脂の公知の材料を用いて形成することができる。
【0041】
供給管6は、循環路4の吸入管42に接続されている。電解装置1を動作する前に、炭素微粒子と窒素の微細気泡とを含む水が、供給管6から吸入管42に供給されて、循環路4と容器2の中に満たされる。また、電解装置1の動作に伴い、容器2と循環路4の中の水が減少すると、炭素微粒子又は窒素の微細気泡が適宜混合された水が、供給管6を通して循環路4と容器2に追加される。供給管6から循環路4と容器2に供給される水の量は、バルブ62が制御されて調整される。この供給管6は、炭素微粒子を含んだ水を循環路4に供給するとき、水供給部及び炭素供給部として機能し、窒素の微細気泡を含む水を循環路4に供給するとき、窒素供給部として機能する。
【0042】
水に添加されて循環路4と容器2の中に供給される炭素微粒子は、直径が1nm以上50μm以下、好ましくは10nm以上500nm以下の炭素の粒子で形成され、水に対して1wt%以上50wt%以下の割合で添加するのが好ましい。炭素微粒子は、公知のナノカーボン粉末を用いることができる。
【0043】
供給管6を通して吸入管42に供給され、窒素の微細気泡を含む水は、図2に示す微細化混合装置11によって生成される。
【0044】
微細化混合装置11は、ケーシング12内に、微細化ブロック13を収容して構成される。微細化ブロック13は、ステンレス鋼で構成され、先端が互いに連通する概ね円錐状の2つの旋回室14と、2つの旋回室14の連通位置からブロックの底面に向かって延びる排出路15が内部に形成されている。2つの旋回室14の間に挟まれた排出路15の部分は、窒素を含んだ水の旋回流が衝突する衝突室となっている。
【0045】
ケーシング12は、水供給管12aを通して外部から水が供給され、この供給された水を、ケーシング12と微細化ブロック13との間に所定の圧力が付与された状態で保持して、微細化ブロック13内に導くように構成されている。
【0046】
微細化ブロック13に形成された2つの旋回室14は、中心軸が略一直線上に配置され、これら2つの旋回室14の中心軸と直行する方向に、排出路15が延在している。概ね円錐状の旋回室14の側面には、排出路15から遠い位置に、ケーシング12内と連通する導入路16が夫々形成されている。導入路16は、円錐状の側面に接するように、旋回室14に連通している。また、旋回室14の端面には、ケーシング12の外部から窒素が供給される窒素供給管17が連通している。微細化ブロック13の排出路15は、ケーシング12の外部に連なる排出管12bに接続されている。
【0047】
この微細化混合装置11は、次のようにして窒素の微細気泡を含んだ水を生成する。まず、図示しないポンプにより、水を細化混合装置11へ圧送する。ポンプにより微細化混合装置11に圧送される水の流量は、水供給管12aにおいて1L/min以上50L/min以下であり、かつ、圧力は、0.1MPa以上5MPa以下であるのが好ましい。特に好ましくは、水供給管12aでの水の圧力が0.5MPa以上5MPaである。
【0048】
水供給管12aからケーシング12内に供給された水は、ポンプによる圧送圧力に応じた圧力を呈してケーシング12と微細化ブロック13の間に保持され、導入路16を通って微細化ブロック13の2つの旋回室14に夫々流入する。導入路16が旋回室14の側面に接して連通していることにより、導入路16を通った水は、旋回室4内で旋回流を形成する。旋回室4内で形成される水の旋回流に、窒素供給管7を通して供給された窒素が混合される。水と窒素の混合割合は、例えば水が0.8L/min以上40L/min以下であり、窒素が0.2L/min以上10L/min以下の割合に設定することができる。
【0049】
微細化ブロック13の旋回室14で窒素が混合された水の旋回流は、略円錐形の旋回室14内を先端側に流れ、排出路5内の衝突室に吐出される。2つの旋回室14,14から吐出された水の旋回流が、衝突室で衝突することにより、水に混合していた窒素の泡が破壊され、微細化されて、直径が10nm以上500nmの微細気泡となる。こうして、窒素の微細気泡が混合及び分散された水は、排出路15と排出管12bを通って矢印Wで示すようにケーシング12外に排出され、供給管6に導かれる。
【0050】
供給管6から窒素の微細気泡を混合すると共に炭素微粒子を添加した水を吸入管42に供給する場合、上記微細化混合装置11で水に窒素の微細気泡を混合した後、炭素微粒子を添加して吸入管42に供給してもよく、また、水に炭素微粒子を添加した後、この水を微細化混合装置11に導入して窒素の微細気泡を混合し、吸入管42に供給してもよい。
【0051】
なお、本実施形態では、微細化混合装置11で水に混合する微細気泡は、実質的に窒素のみの微細気泡であるが、体積割合で50%以上の窒素を含む気体の微細気泡であってもよい。
【0052】
循環ポンプ7は、吸入管42の水を吸入して流入管43に圧送する。循環ポンプ7により、容器2と循環路4の間に水を循環させて、容器2から水と共に水素及び酸素を排出すると共に、必要に応じて供給管6から供給された窒素の微細気泡及び炭素微粒子を含む水を容器2に供給する。
【0053】
上記構成の電解装置1は、次のように動作する。
【0054】
まず、窒素の微細気泡を混合すると共に炭素微粒子を添加した水を供給管6から循環路4の吸入管42に供給し、循環ポンプ7を作動させて容器2に水を送り、容器2と循環路4内を、窒素の微細気泡と炭素微粒子を含む水で満たす。容器2と循環路4内の水に添加する炭素微粒子は、水に対して1wt%以上50wt%以下の割合とし、好ましくは、30wt%以上40wt%以下の割合とする。
【0055】
続いて、陽極電極31と陰極電極32に電力を供給し、水の電気分解を行う。すなわち、陽極電極31を通じて水から電子を奪い、酸化反応により酸素を生成する。一方、陰極電極32を通じて水に電子を供給し、還元反応により水素を生成する。ここで、陽極電極31と陰極電極32と3つの中間電極33の相互間に、炭素微粒子を含む水が存在するので、炭素微粒子を含まない場合よりも高い効率で水を電気分解でき、水素及び酸素を効率的に生成することができる。
【0056】
陽極電極31と陰極電極32の間で生成された水素及び酸素は、容器2内の上部に浮上し、循環ポンプ7による水の流れにより、容器2の排出口22から排出されて排出管41を通り、分離器5に導かれる。分離器5に内蔵された分離膜により、水素と酸素が、水から夫々分離されて個別に排出される。水素と酸素が分離された水は、分離器5の出口から排出され、吸入管42を通って循環ポンプ7に吸入され、循環ポンプ7により流入管43へ圧送される。流入管43に圧送された水は、流入口21から容器2内に流入する。
【0057】
容器2内で電気分解により水素及び酸素が生成され、分離器5で分離される間、水素と酸素は互いに混合した状態であるが、容器2及び循環路4内の水に窒素の微細気泡が混合されているので、水素と酸素が爆発的に反応する不都合を防止できる。また、水素と酸素の防爆を行う窒素は微細気泡であり、電極3の表面に付着し難いので、電極3の表面に気泡が付着して水の電解効率が低下する不都合を防止できる。また、窒素の微細気泡は、水中に長期に渡って安定して保持されるので、防爆効果を長期にわたって奏することができる。
【0058】
容器2内での電気分解と、分離器5による水素及び酸素の分離により、容器2及び循環路4内の水の量が減少すると、バルブ62が開き制御されて水が補給される。このとき、容器2及び循環路4内に残存する炭素微粒子及び窒素の微細気泡の量に応じて、炭素微粒子及び窒素の微細気泡を適宜補充してもよい。
【0059】
このようにして、容器2内の水が、排出管41と吸入管42と流入管43とで形成された循環路4を循環して容器2に戻される過程で、電気分解により生成された水素及び酸素が回収され、また、必要に応じて水と炭素微粒子と窒素の微細気泡が補充される。
【0060】
このように、本実施形態の電解装置1によれば、電気分解の対象である水に炭素微粒子を添加したので、従来のように多数の電極を設置しなくても、水の電気分解を効率的に行うことができる。したがって、従来の電解装置よりも部品点数を削減でき、部品コストと組み立てコストを安価にできる。また、電極3を交換する必要が生じても、電極3の交換の手間を少なくできる。また、電極3の数を少なくできるので、各電極31,32間に印加する電力の抵抗損失を少なくできる。さらに、電極31,32間に印加する電位差が比較的小さくても、水中に分散する炭素微粒子の互いの間に、局所的に高い電位の勾配が形成されるので、効率的に水素及び酸素を生成することができる。また、電極3の数を削減できるので、効果的に小型化を行うことができる。
【0061】
図3は、本発明の第2実施形態の電解装置の一部を示す模式図である。第2実施形態の電解装置は、容器2内の陽極電極31及び陰極電極32に、これら陽極電極31及び陰極電極32を振動させる振動部としての振動子34,35が夫々設けられている。第2実施形態の電解装置は、陽極電極31及び陰極電極32に振動子34,35を設けた以外は、第1実施形態の電解装置1と実質的に同様の構成を有する。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成は、第1実施形態の参照番号を引用して詳細な説明を省略する。
【0062】
第2実施形態の電解装置は、水の電気分解を行う際、陽極電極31及び陰極電極32に電力を印加すると共に、振動子34,35によって陽極電極31及び陰極電極32を振動させる。振動子34,35は、例えば、100Hz以上500Hz以下の振動数の振動を陽極電極31及び陰極電極32に与えるのが好ましい。さらに、陽極電極31及び陰極電極32に与える振動は、200Hz以上400Hz以下が好ましく、特に好ましいのは300Hz前後である。
【0063】
ここで、振動子34,35は、図示しない振動数制御部に接続され、この振動数制御部によって振動数が変更されるように構成するのが好ましい。振動子34,35の振動数を変更することにより、陽極電極31及び陰極電極32による酸素及び水素の生成量を変化させることができる。例えば、陽極電極31と陰極電極32との間の電位差が24V、振動子34,35による振動を行わない条件において、毎分0.02mlの水素が発生する。これに対して、振動子34,35を作動させて200Hz及び300Hzの振動数で陽極電極31と陰極電極32を法線方向に振動させると、水素の発生量が毎分0.08ml及び毎分0.1mlに増加することが確認された。
【0064】
なお、第2実施形態において、陽極電極31及び陰極電極32に振動子34,35を夫々設けたが、陽極電極31及び陰極電極32のいずれか一方のみに振動子を設けてもよい。
【0065】
図4は、本発明の第3実施形態の電解装置の一部を示す模式図である。第3実施形態の電解装置は、容器2内の陽極電極31及び陰極電極32を、絶縁体36を挟持させて一体に形成し、この一体に形成した陽極電極31と絶縁体36と陰極電極32の下端に振動子37を設け、中間電極33を削除した以外は、第1実施形態の電解装置1と実質的に同様の構成を有する。第3実施形態において、第1実施形態と同様の構成は、第1実施形態の参照番号を引用して詳細な説明を省略する。
【0066】
第3実施形態の電解装置は、水の電気分解を行う際、陽極電極31及び陰極電極32に電力を印加すると共に、一体に形成された陽極電極31及び陰極電極32を、単一の振動子37で振動させる。振動子37は、例えば、100Hz以上500Hz以下の振動数の振動を陽極電極31及び陰極電極32に与えるのが好ましい。第3実施形態の電解装置についても、第2実施形態の電解装置と同様に、振動数制御部により振動子37の振動数を変更することにより、陽極電極31及び陰極電極32による酸素及び水素の生成量を変化させることができる。第3実施形態の電解装置によれば、陽極電極31及び陰極電極32を一体に形成して単一の振動子37で振動させるので、これら陽極電極31と陰極電極32と振動子37を収容する容器2を小型にでき、電解装置の小型化を図ることができる。
【0067】
上記各実施形態の電解装置で生成された水素は、燃料電池やコジェネレーションシステムや内燃機関等の種々の機器の燃料として用いることができる。また、上記各実施形態の電解装置は、分離器5により水素と酸素を分離して排出したが、水素と酸素を互いに混合された状態で排出し、混合状態の水素と酸素を燃料等として利用してもよい。
【0068】
上記各実施形態において、電気分解の対象の水に、電解質を添加しなくても電気分解を行うことができるが、水素及び酸素の生成すべき量等に応じて電解質を添加してもよい。
【0069】
また、循環路4には、供給管6を通して炭素微粒子と窒素の微細気泡を含む水を供給したが、炭素微粒子と窒素の微細気泡は、互いに異なる供給路を通じて容器2又は循環路4に供給してもよい。
【0070】
また、容器2で生成された水素と酸素を混合状態で容器2から排出し、分離器5で分離したが、容器2内に水素と酸素の分離膜を配置し、水素と酸素を分離した状態で容器2から別個に排出してもよい。
【0071】
また、水の電気分解により、オゾンや次亜塩素酸を生成してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 電解装置
2 容器
3 電極
4 循環路
5 分離器
6 供給管
7 循環ポンプ
31 陽極電極
32 陰極電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に炭素微粒子を添加する微粒子添加工程と、
上記炭素微粒子が添加された水を電気分解する電解工程と
を備えることを特徴とする電解方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電解方法において、
上記炭素微粒子は、直径が10nm以上500nm以下であることを特徴とする電解方法。
【請求項3】
請求項1に記載の電解方法において、
窒素を含む気体の微細気泡を上記水に供給する窒素供給工程を備えることを特徴とする電解方法。
【請求項4】
請求項3に記載の電解方法において、
上記微細気泡は、直径が10nm以上500nm以下であることを特徴とする電解方法。
【請求項5】
水を保持する容器と、
上記水に接するように容器内に配置された陽極電極及び陰極電極と、
上記容器に水を循環させる循環路と、
上記循環路に水を供給する水供給部と、
上記循環路に、上記水に添加されるべき炭素微粒子を供給する炭素供給部と
を備えることを特徴とする電解装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電解装置において、
上記炭素微粒子は、直径が10nm以上500nm以下であることを特徴とする電解装置。
【請求項7】
請求項5に記載の電解装置において、
上記循環路に、窒素を含む気体の微細気泡を供給する窒素供給部を備えることを特徴とする電解装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電解装置において、
上記微細気泡は、直径が10nm以上500nm以下であることを特徴とする電解装置。
【請求項9】
請求項5に記載の電解装置において、
上記陽極電極及び陰極電極の少なくとも一方を振動させる振動部を備えることを特徴とする電解装置。
【請求項10】
請求項5に記載の電解装置において、
上記陽極電極及び陰極電極は、表面に炭素微粒子が設けられていることを特徴とする電解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−214119(P2011−214119A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85554(P2010−85554)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(591119624)株式会社御池鐵工所 (86)
【Fターム(参考)】