説明

電解水生成装置

【要 約】
【課 題】 電極同士の間隔を精度良くかつ均一の間隔で保持して、電気分解を安定して行う。
【解決手段】 電解水生成装置は、少なくとも一対の電極(1)を備え、この電極の極性を互いに異ならしめて被処理水(3)を電気分解して電解水を生成する。そして、各電極は、導電性金属からなる板状の基板(11)と、この基板の下部表面に形成された基板とは異質の導電性金属の被膜層(12)とを具備するとともに、被膜層の形成された電極の表面同士が対向するように並べられて配置され、前記被膜層は、電極の上部には形成されておらず、かつ、両電極の上部の間には、絶縁性を有する仕切部材(23)が設けられて、両電極の上部の間を仕切っており、この仕切部材の側面に、電極の上部がネジ止めされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の電極を備え、この電極の極性を互いに異ならしめて被処理水を電気分解して電解水を生成する電解水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電解水生成装置は、たとえば、特開2004−66078号公報(特許文献1)に記載のように、電極は、その上端部が棒やワイヤーなどを介して吊り下げられている。
【0003】
この様に、電極が吊り下げられていると、電極同士の間隔の保持を精度良くかつ均一の間隔で行うことができない。ところで、電極に印加する電圧を低くするためには、電極同士の間隔を狭くする必要がある。そして、電極同士の間隔を狭くすると、電極の位置が少しズレても、電極同士の間隔が広い場合と比較して、その影響が相対的に大きく現れ、電気分解が不安定となることがある。
【特許文献1】特開2004−66078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、電極が吊り下げられていると、電極同士の間隔を精度良くかつ均一の間隔で保持することができず、電気分解が不安定となるおそれがある点である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電解水生成装置は、少なくとも一対の電極(1)を備え、この電極の極性を互いに異ならしめて被処理水(3)を電気分解して電解水を生成する。そして、各電極は、導電性金属からなる板状の基板(11)と、この基板の下部表面に形成された基板とは異質の導電性金属の被膜層(12)とを具備するとともに、被膜層の形成された電極の表面同士が対向するように並べられて配置され、前記被膜層は、電極の上部には形成されておらず、かつ、両電極の上部の間には、絶縁性を有する仕切部材(23)が設けられて、両電極の上部の間を仕切っており、この仕切部材の側面に、電極の上部がネジ止めされている。
【0006】
また、電極が、前後方向に延在する没水部(1a)と、この没水部の後部から立ち上がる垂直板部(1b)と、この垂直板部の上部から後方に延在するリード線取付部(1c)とを有しており、被膜層が没水部に形成され、電極のリード線取付部が仕切部材にネジ止めされていることがある。
【0007】
そして、没水部が被処理水に浸かり、電極のリード線取付部の後部が仕切部材にネジ止めされていることがある。
さらに、電極と仕切部材とをネジ止めするネジ止め部(27)にリード線(28)が取り付けられていることがある。
【0008】
また、電極の基板がチタン材であり、被膜層が白金メッキなどの白金層であることがある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、両電極の上部の間には、絶縁性を有する仕切部材が設けられて、両電極の上部の間を仕切っており、この仕切部材の側面に、電極の上部がネジ止めされているので、両電極同士の間隔を小さくすることができる。その結果、電極の印加する電圧を小さくすることができる。しかも、この様にして、電極同士の間隔を小さくしても、電極同士の間隔(特に、電極下部同士の間隔)を精度良くかつ均一の間隔で保持することができるため、電気分解を安定して行うことができる。
【0010】
また、電極が、前後方向に延在する没水部と、この没水部の後部から立ち上がる垂直板部と、この垂直板部の上部から後方に延在するリード線取付部とを有しており、被膜層が没水部に形成され、電極のリード線取付部が仕切部材にネジ止めされている場合には、没水部が前後方向に延在しているため、被処理水の深さを浅くすることができ、それにともなって、被処理水を溜める水槽の高さを小さくでき、コンパクトになる。
【0011】
そして、没水部が被処理水に浸かり、電極のリード線取付部の後部が仕切部材にネジ止めされている場合には、垂直板部の上部から後方に延在するリード線取付部により、ネジ止め部を、被処理水の水面から極力遠ざけることができ、ネジ止め部が、被処理水の水面から立ちのぼる湿気などで汚損したり不良になったりすることを極力防止することができる。
【0012】
さらに、電極と仕切部材とをネジ止めするネジ止め部にリード線が取り付けられている場合には、電極とともにリード線を共締めすることができ、電極およびリード線の取付作業が簡単になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
電極同士の間隔を精度良くかつ均一の間隔で保持して、電気分解を安定して行うという目的を、両電極の上部の間に、絶縁性を有する仕切部材を設けて、両電極の上部の間を仕切り、この仕切部材の側面に、電極の上部をネジ止めすることで実現した。
【実施例1】
【0014】
次に、本発明における電解水生成装置の一実施例について、図1ないし図5を用いて説明する。図1は本発明における電解水生成装置の組み立て分解斜視図である。図2は電解水生成装置の斜視図である。図3は電解水生成装置の側面図である。図4は電解水生成装置の底面図である。図5は下から見た電解水生成装置の斜視図である。なお、図2において、二点鎖線は図示しない水槽に溜められた被処理水の位置を示している。そして、図3において、図示しない水槽に溜められた被処理水の上面の位置を二点鎖線で、また、その下面の位置を一点鎖線で示している。さらに、破線で電極の位置を示している。
【0015】
電解水生成装置は、一対の電解水生成用の電極1と、この電極1を覆う樹脂製のカバー体2とを備えている。各電極1は、導電性金属であるチタン材からなる板状の基板11と、この基板11の下部の片面に、白金メッキされた導電性金属の被膜層12とで形成されている。そして、各電極1は、被処理水3に浸かる前後方向に延在する没水部1aと、この没水部1aの後端部から立ち上がる垂直板部1bと、この垂直板部1bの上端部から後方に延在するリード線取付部1cとを有している。電極1の没水部1a、垂直板部1bおよびリード線取付部1cは基板11で形成され、この電極1の没水部1aにおける基板11の片面に、被膜層12が形成されている。また、リード線取付部1cの前部および後部には各々貫通孔16,17が形成されている。
【0016】
非導電性すなわち絶縁性のカバー体2は、左側カバー21、右側カバー22、および、左側カバー21と右側カバー22との間に配置される仕切部材23で構成されている。各電極1は、被膜層12同士が対向するように、仕切部材23を挟んで配置される。仕切部材23の両側面には、電極1のリード線取付部1cを止めるための突起26およびネジ棒部27が突出している。このネジ止め部としての雄ネジが切られたネジ棒部27は絶縁性を具備する樹脂製であることが好ましい。なお、ネジ棒部27を導電性金属で構成することも可能であるが、その場合には、左右のネジ棒部27同士は絶縁されている。そして、電極1のリード線取付部1cの前側の貫通孔16が仕切部材23の突起26に嵌められて固定される。また、電極1のリード線取付部1cの後側の貫通孔17が仕切部材23のネジ棒部27に、リード線28とともに嵌められて、雌ネジが切られたナット29で固定される。この様にして、仕切部材23の各側面に、電極1がリード線28とともにネジ止めされる。さらに、電極式の丸棒状の水位計31が仕切部材23の側面にリード線32とともにネジ止めされる。この水位計31は、DSE(Dimensionary Stable Electrode)電極で、チタンの丸棒に白金メッキなどの白金被膜層を形成して構成されている。そして、一対の電極1および水位計31が取り付けられた仕切部材23の両側から、左右のカバー21,22が覆う状態で結合され、電解水生成装置が組み立てられる。組み立てられた状態では、電極1の没水部1aの外側の面(被膜層12が形成されていない面)に、左右のカバー21,22の内面が密着する。
【0017】
そして、左右のカバー21,22には、カバー体2の内側と外側とで水が行き来できるように通水開口36が複数形成されている。左右のカバー21,22を結合したカバー体2の下面にも、通水開口37が形成される。
【0018】
組み立てられた電解水生成装置の下部は、図2および図3に図示するように、図示しない水槽に溜められた被処理水3に浸けられる。すると、通水開口36,37を通って、被処理水3がカバー体2の内部に流入し、電極1の没水部1aが水に浸かる。また、水槽の被処理水3の水位は、水位計31で計測される。この水位計31の計測できる計測境界は、図3に図示されており、それ以下の水位では、電解水の生成の処理は行わない。そして、マイコンなどの制御装置(図示しない)が、水位を、図3の電解水生成水位(電解水を生成する水位)の範囲となるように、水槽への給水を制御している。たとえば、給水弁を開閉制御している。なお、電解水生成水位の範囲の最大高さは、電極1の没水部1aの上辺と略同じ高さであり、電解水生成の際には、それ以下の水位にしている。
【0019】
この様に構成されている電解水生成装置で、下記の様にして、水道水などの被処理水を電気分解して電解水を生成する。
組み立てられた電解水生成装置の下部を、図示しない水槽に溜められた被処理水3に浸ける。すると、被処理水3はカバー体2の通水開口36,37を通って、カバー体2内に流入する。そして、電極1の没水部1aや水位計31の下端部などが被処理水3に浸かる。ついで、一方の電極1を陽極側に、他方の電極1を陰極側にリード線28を介して印加し、被処理水3を電気分解する。なお、水位計31は、水位の計測の最中は、陰極側にリード線28を介して印加されている。
【0020】
そして、陽極側の電極1近傍では、水酸化物イオン(OH−)が分解され、相対的に水素イオン(H+)濃度が高まることによって電解水としての強酸性水が生成されるとともに、水道水の塩素イオン(Cl−)がいったん塩素ガスとなった後、水と反応し抗菌成分である電解水としての次亜塩素酸(HClO)が生成される。
一方の陰極側の電極1近傍では、水素イオン(H+)が水素ガスに分解され、相対的に水酸化イオン(OH−)の濃度が高められ電解水としてのアルカリイオン水が生成される。
【0021】
この様にして、電解水が生成されるが、陰極側の電極1の白金メッキの被膜層12の表面には、スケールが付着する。そのため、電極1に印加される極性を制御するマイコンなどの制御装置(図示しない)が、所定時間毎に、電極1の極性を反転(陽極は陰極に、一方、陰極は陽極に)させて、陰極側の電極1へのスケールの付着やその堆積を防止している。電極1の被膜層12に付着するスケールは、電極1の外側の面(被膜層12が形成されていない面)に回り込んで付着しようとするが、この実施例の場合には、外側の面にはカバー体2の内面が密着しているため、スケールは電極1の外側の面側に回り込んで付着することはできない。その結果、電極1の外側の面におけるスケールの堆積を極力防止することができる。
【0022】
一対の板状の電極1は、絶縁性を有する仕切部材23を挟んで配置されるとともに、電極1の上部が仕切部材23の側面にネジ棒部27で各々ネジ止めされているので、電極1同士の間隔を小さくすることができるとともに、電極1の上部が仕切部材23に安定して固定され、電極1の下部の被膜層の形成された表面同士の間隔を精度良くかつ均一にすることができる。その結果、電気分解を安定して行うことができる。
【0023】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例を下記に例示する。
(1)上記実施例では、電極1や水位計31の被膜層は、白金メッキであるが、他の被膜層(たとえば、白金族金属酸化物をコーティングした層など)であることも可能である。また、本体のチタン材の表面に白金を焼成することも可能である。
(2)被膜層は電極の片面に形成されているが、両面に形成することも可能である。
【0024】
(3)電極は少なくとも一対設けられていれば良い。ただし、コンパクトにするためには、電極は一対であることが好ましい。
(4)電解水生成装置で生成される電解水は、必ずしも次亜塩素酸である必要はない。ただし、この実施例の電解水生成装置は、次亜塩素酸の生成に適している。
【0025】
(5)カバー体は、必ずしも、設ける必要はないが、カバー体が一対の電極の略全体を覆っていると、外部からものなどが不用意に、電極に接触することが減少し、安全性が高くなる。
(6)左右のネジ棒部27が樹脂製であれば、この左右のネジ棒部27を一体としても良い。たとえば、一体の左右のネジ棒部27を、仕切部材23の成形金型に予めセットして埋め込むインサート成形で製造したり、また、一体の左右のネジ棒部27を仕切部材23に形成した孔に挿入して固定したりすることができる。さらに、左右のネジ棒部27を仕切部材23とも一体としても良い。ただし、仕切部材23とも一体にとすると、成形及び成型後のネジ切りが非常に困難で実用的ではない。また、左右のネジ棒部27が金属製であれば、この左右のネジ棒部27を仕切部材23により絶縁しなくてはならないため、仕切部材23の厚みが大きくなってしまう。
【産業上の利用可能性】
【0026】
両電極の上部の間には、絶縁性を有する仕切部材が設けられて、両電極の上部の間を仕切っており、この仕切部材の側面に、電極の上部がネジ止めされているので、電極同士の間隔を精度良くかつ均一の間隔で保持して、電気分解を安定して行うことができる。したがって、特に電極への印加電圧が低く、電極同士の間隔を小さくする必要がある電解水生成装置に適用することが最適である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は本発明における電解水生成装置の組み立て分解斜視図である。
【図2】図2は電解水生成装置の斜視図である。
【図3】図3は電解水生成装置の側面図である。
【図4】図4は電解水生成装置の底面図である。
【図5】図5は下から見た電解水生成装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 電極
1a 没水部
1b 垂直板部
1c リード線取付部
3 被処理水
11 電極の基板
12 電極の被膜層
23 仕切部材
27 ネジ棒部(ネジ止め部)
28 リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対の電極を備え、この電極の極性を互いに異ならしめて被処理水を電気分解して電解水を生成する電解水生成装置において、
前記各電極は、導電性金属からなる板状の基板と、この基板の下部表面に形成された基板とは異質の導電性金属の被膜層とを具備するとともに、被膜層の形成された電極の表面同士が対向するように並べられて配置され、
前記被膜層は、電極の上部には形成されておらず、かつ、前記両電極の上部の間には、絶縁性を有する仕切部材が設けられて、両電極の上部の間を仕切っており、
この仕切部材の側面に、電極の上部がネジ止めされていることを特徴としている電解水生成装置。
【請求項2】
前記電極は、前後方向に延在する没水部と、この没水部の後部から立ち上がる垂直板部と、この垂直板部の上部から後方に延在するリード線取付部とを有しており、
前記被膜層は前記没水部に形成され、
前記電極のリード線取付部が仕切部材にネジ止めされていることを特徴としている請求項1記載の電解水生成装置。
【請求項3】
前記没水部が被処理水に浸かり、
前記電極のリード線取付部の後部が仕切部材にネジ止めされていることを特徴としている請求項2記載の電解水生成装置。
【請求項4】
前記電極と仕切部材とをネジ止めするネジ止め部にリード線が取り付けられていることを特徴としている請求項1,2または3記載の電解水生成装置。
【請求項5】
前記電極の基板はチタン材であり、
前記被膜層は白金メッキなどの白金族金属酸化物をコーティングした層であることを特徴としている請求項1ないし4の何れか1項記載の電解水生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−23473(P2008−23473A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200228(P2006−200228)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】